【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述した特許文献1乃至4に開示された従来の技術は、何れも基板だけの熱伝導の制限を技術的課題とするものであり、かかる基板を含む機器全体の放熱に関する工夫ではなかった。従って、密閉された狭い空間内に基板が収納される場合、発熱源から他部品に基板を介して熱が伝わらなくても、発熱源からの輻射熱や空間内で加熱された空気を伝わって、他部品が許容値を超える温度まで上昇する虞がある。よって、他部品の熱による損傷を確実に防止することはできないという問題があった。
【0010】
また、前述した特許文献4,5に開示された従来の技術では、発熱源から発せられた輻射熱が他部品に直接当たることを防止できるが、輻射熱を反射させる方向までは何ら考慮されていなかった。すなわち、遮蔽板は輻射熱の流れに単に垂直に交差する向きであり、反射した輻射熱はそのまま戻るように反射されてしまう。そのため、これらの部品を閉じられた筐体内に収納するような場合、筐体内に熱が留まって筐体内の部品の温度が下がらないという問題があった。
【0011】
本発明は、以上のような従来の技術の有する問題点に着目してなされたものであり、部品点数や組付工数を少なくして小型化やコスト低減が可能であり、閉じられた狭い筐体内であっても、発熱源から他部品への熱の伝達を抑えると共に、簡易な構成で効率良く放熱することができ、熱に弱い部品の損傷を確実に防止することができる放熱構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、以下の各項の発明に存する。
[1]機器(10)の閉じられた筐体(11)内に各種部品が配設された基板(20)が収納され、各種部品中には熱を発する発熱部品(21)と熱から保護が必要な保護部品(24)が含まれ、前記保護部品(24)の温度もしくは前記筐体(11)内の温度を前記保護部品(24)の周囲で許容値以下に抑える放熱構造において、
前記発熱部品(21)は、放熱手段(23)を介して前記基板(20)上に配設され、
前記基板(20)上の前記放熱手段(23)と前記保護部品(24)の間に、熱伝導を遮断する遮熱手段(30)を設けると共に、前記発熱部品(21)及び前記発熱部品(21)より伝わった熱で暖められた放熱手段(23)から前記保護部品(24)のある方向に発せられた輻射熱を別方向に反射させる反射手段(40)を設けたことを特徴とする放熱構造。
【0013】
[2]前記遮熱手段(30)は、前記基板(20)の一部を分断する遮熱溝であり、前記放熱手段(23)と前記保護部品(24)の間に亘り長手方向に延びるように設けられ、
前記反射手段(40)は、前記基板(20)上より立ち上がる反射板であり、基端縁(41)が前記基板(20)上に固定され、立ち上がる先端縁(42)に向けて傾斜するように設けられたことを特徴とする前記[1]に記載の放熱構造。
【0014】
[3]前記筐体(11)は、金属により箱状に形成され、その前面開口はガラスカバー(13)によって閉じられ、
前記基板(20)は、前記筐体(11)内で前記ガラスカバー(13)と平行に配設され、
前記筐体(11)の設置状態における前記基板(20)上では、前記発熱部品(21)及び前記放熱手段(23)は前記保護部品(24)の上方となる位置に配設され、
前記反射板(40)は、前記基板(20)上にて、前記発熱部品(21)及び前記発熱部品(21)より伝わった熱で暖められた前記放熱手段(23)から前記保護部品(24)のある下方に発せられた輻射熱を前方の前記ガラスカバー(13)に向けて反射させるように斜め下方に傾斜させたことを特徴とする前記[2]に記載の放熱構造。
【0015】
[4]前記基板(20)は、前記筐体(11)の金属よりも熱伝導率の高い材質から形成され、前記筐体(11)の背面部(12)の内壁に沿って密着した状態に取り付けられたことを特徴とする前記[3]に記載の放熱構造。
【0016】
[5]前記放熱手段(23)による前記筐体(11)内の対流により、該筐体(11)の内壁面及び前記ガラスカバー(13)に加熱空気が接する外部放熱のための有効面積を増やしたことを特徴とする前記[3]または[4]に記載の放熱構造。
【0017】
次に、前述した解決手段に基づく作用を説明する。
前記[1]に記載の放熱構造では、1つの基板(20)上の放熱手段(23)(発熱部品(21))と保護部品(24)の間に、熱伝導を遮断する遮熱手段(30)を設けるだけでなく、発熱部品(21)及び発熱部品(21)より伝わった熱で暖められた放熱手段(23)から保護部品(24)のある方向に発せられた輻射熱を別方向に反射させる反射手段(40)を設けた。ここで別方向とは、発熱部品(21)及び放熱手段(23)がある方向とは別の方向という意味である。
【0018】
これにより、反射手段(40)によって、発熱部品(21)及び発熱部品(21)より伝わった熱で暖められた放熱手段(23)から発せられた輻射熱が保護部品(24)に直接当たることを防止するだけでなく、閉じられた筐体(11)内における放熱効果も高めることができる。すなわち、反射手段(40)で反射された輻射熱が、そのまま発熱部品(21)及び放熱手段(23)のある方向に戻ることはなく、輻射熱が発熱部品(21)及び放熱手段(23)と反射手段(40)の間で反射を繰り返して筐体(11)内に熱が留まることを防ぐことができる。
【0019】
このような反射手段(40)による輻射熱の反射方向の工夫が、前記遮熱手段(30)による熱伝導の遮断と相俟って、閉じられた筐体(11)内における保護部品(24)の温度上昇を抑制することができる。ここで遮熱手段(30)とは、例えば前記[2]に記載したように、基板(20)の一部を分断する遮熱溝である。かかる簡易な構成の遮熱溝は、放熱手段(23)と保護部品(24)の間に亘り長手方向に延びるように設けると良い。
【0020】
また、反射手段(40)とは、例えば前記[2]に記載したように、基板(20)上より立ち上がる反射板であり、基端縁(41)が基板(20)上に固定され、立ち上がる先端縁(42)に向けて傾斜するように設けると良い。かかる簡易な構成の反射板の傾斜の向きや角度は、反射させる輻射熱を外部に効率良く放出すべく、基板(20)と接していない筐体(11)の何れかの壁面に向かうように設定すると良い。
【0021】
前記筐体(11)は、機器(10)の外壁をなし内部の空間を閉じるものであるが、例えば前記[3]に記載したように、金属により箱状に形成され、その前面開口はガラスカバー(13)によって閉じられた構成とする。そして、前記基板(20)は、この筐体(11)内でガラスカバー(13)と平行に配設する。
【0022】
このような筐体(11)を、実際に設置した状態における内部の基板(20)の姿勢にて、発熱部品(21)及び放熱手段(23)が保護部品(24)よりも上方に位置するように配設する。これにより、閉じられた筐体(11)内で発熱部品(21)により加熱された空気の上方へ向かう対流が保護部品(24)に向かうことはなく、筐体(11)内の対流で保護部品(24)が暖められる事態を防止することができる。
【0023】
また、前記反射板(40)は、前記基板(20)上にて、発熱部品(21)及び発熱部品(21)より伝わった熱で暖められた放熱手段(23)から保護部品(24)のある下方に発せられた輻射熱を、前方のガラスカバー(13)に向けて反射させるように斜め下方に傾斜させると良い。これにより、反射板(40)で反射させた輻射熱を、一般的に金属より輻射率の高いガラス製のガラスカバー(13)から外部に効率良く放出することができる。
【0024】
さらに、輻射と対流による放熱効率を高めるべく、前記[4]に記載したように、前記基板(20)を、筐体(11)の金属よりも熱伝導率の高い材質から形成して、該基板(20)を、筐体(11)の背面部(12)の内壁に沿って密着した状態に取り付けると良い。ここで基板(20)の具体的な材質としては、例えば筐体(11)の素材がステンレスであれば、これよりも熱伝導率の高いアルミニウム等で形成すると良い。
【0025】
これにより、発熱部品(21)からの熱を基板(20)の表面全体より筐体(11)の背面部(12)側の広い範囲に迅速に伝達することが可能となる。よって、筐体(11)の外表面から周囲へ放熱有効面積が増えることになり、輻射と対流による周囲への放熱効率も高めることができる。なお、基板(20)は、筐体(11)の背面部(12)の内壁に合致する大きさ形状にすると良い。
【0026】
さらに、前記発熱部品(21)は、そのまま基板(20)上に直接配設するのではなく、放熱手段(23)を介して前記基板(20)上に配設されているため、前記[5]に記載したように、この放熱手段(23)によって、筐体(11)内の対流が促され、筐体(11)内の空気が全体的に暖められると共に、空気が接する筐体(11)の内壁やガラスカバー(13)も広い範囲で暖めることができる。よって、筐体(11)の外表面から周囲への放熱有効面積が増えることになり、周囲への放熱効率もいっそう高めることができる。