特許第6341804号(P6341804)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コイト電工株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6341804-放熱構造 図000002
  • 特許6341804-放熱構造 図000003
  • 特許6341804-放熱構造 図000004
  • 特許6341804-放熱構造 図000005
  • 特許6341804-放熱構造 図000006
  • 特許6341804-放熱構造 図000007
  • 特許6341804-放熱構造 図000008
  • 特許6341804-放熱構造 図000009
  • 特許6341804-放熱構造 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6341804
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】放熱構造
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20180604BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20180604BHJP
【FI】
   H05K7/20 Y
   H05K7/20 B
   F21S2/00 630
   F21S2/00 375
   F21S2/00 373
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-169540(P2014-169540)
(22)【出願日】2014年8月22日
(65)【公開番号】特開2016-46382(P2016-46382A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104237
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 秀昭
(74)【代理人】
【識別番号】100084261
【弁理士】
【氏名又は名称】笹井 浩毅
(72)【発明者】
【氏名】穂積 順一
(72)【発明者】
【氏名】長尾 裕
(72)【発明者】
【氏名】山本 壮晃
【審査官】 白石 圭吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−089987(JP,A)
【文献】 特開2010−199056(JP,A)
【文献】 特開2012−094865(JP,A)
【文献】 米国特許第06250780(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
F21S 2/00
F21V 23/00 − 99/00
H01L 33/00; 33/48 − 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の閉じられた筐体内に各種部品が配設された基板が収納され、各種部品中には熱を発する発熱部品と熱から保護が必要な保護部品が含まれ、前記保護部品の温度もしくは前記筐体内の温度を前記保護部品の周囲で許容値以下に抑える放熱構造において、
前記発熱部品は、放熱手段を介して前記基板上に配設され、
前記基板上の前記放熱手段と前記保護部品の間に、熱伝導を遮断する遮熱手段を設けると共に、前記発熱部品及び前記発熱部品より伝わった熱で暖められた放熱手段から前記保護部品のある方向に発せられた輻射熱を別方向に反射させる反射手段を設けたことを特徴とする放熱構造。
【請求項2】
前記遮熱手段は、前記基板の一部を分断する遮熱溝であり、前記放熱手段と前記保護部品の間に亘り長手方向に延びるように設けられ、
前記反射手段は、前記基板上より立ち上がる反射板であり、基端縁が前記基板上に固定され、立ち上がる先端縁に向けて傾斜するように設けられたことを特徴とする請求項1に記載の放熱構造。
【請求項3】
前記筐体は、金属により箱状に形成され、その前面開口はガラスカバーによって閉じられ、
前記基板は、前記筐体内で前記ガラスカバーと平行に配設され、
前記筐体の設置状態における前記基板上では、前記発熱部品及び前記放熱手段は前記保護部品の上方となる位置に配設され、
前記反射板は、前記基板上にて、前記発熱部品及び前記発熱部品より伝わった熱で暖められた前記放熱手段から前記保護部品のある下方に発せられた輻射熱を前方の前記ガラスカバーに向けて反射させるように斜め下方に傾斜させたことを特徴とする請求項2に記載の放熱構造。
【請求項4】
前記基板は、前記筐体の金属よりも熱伝導率の高い材質から形成され、前記筐体の背面部の内壁に沿って密着した状態に取り付けられたことを特徴とする請求項3に記載の放熱構造。
【請求項5】
前記放熱手段による前記筐体内の対流により、該筐体の内壁面及び前記ガラスカバーに加熱空気が接する外部放熱のための有効面積を増やしたことを特徴とする請求項3または4に記載の放熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器の閉じられた筐体内に各種部品が配設された基板が収納され、各種部品中には熱を発する発熱部品と熱から保護が必要な保護部品が含まれ、前記保護部品の温度もしくは前記筐体内の温度を前記保護部品の周囲で許容値以下に抑える放熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の放熱構造を備える機器としては照明装置があり、例えばトンネル内に設置するトンネル灯が知られている。トンネル灯は、トンネル内部の天井両脇に沿って、下方の道路を照射するよう斜め下向きに設置される。トンネル内では湿気や排ガス濃度等による腐食環境が厳しいため、トンネル灯は全体的に密閉構造であり、筐体は金属により箱状に形成され、前面はガラスカバーによって閉じられ、その内部に、光源のLED(発光ダイオード)のほか、電源やトランス等の各種部品が配設された基板が収納されていた。
【0003】
トンネル灯は一般的に大型の照明装置であったが、最近では軽量化や取り付け作業性の向上、それに製造コスト低減の要請により、いっそうの小型化が求められていた。そのため、先ずは機器の全体形状を定める筐体を小型化すると、狭い内部空間にて高い発熱源となるLEDと高温に弱く耐熱温度の許容値が低い電源が密に配置されることになるため、電源を熱から如何に保護するかが重要な課題となる。
【0004】
特に、LEDと電源を1枚の基板上に配設した場合、LEDからの熱は基板を介して電源に直に伝導するため、電源の温度が許容値を超えてしまって損傷するという問題があった。ここで簡単な保護の方策として、LEDの基板と電源の基板を別々に分けた上で、それぞれ離して配置することが考えられる。しかしながら、2枚の基板を前提とすれば、当然部品点数は多くなり、その管理費用も多くなり、製造時の組立工数も嵩むことになる。
【0005】
このような問題を解決し得る従来の技術として、例えば特許文献1乃至4には、前述したトンネル灯とは技術分野が異なるが、複数の電子部品を搭載した1枚の基板において、溝やスリット等を設けて熱伝導を制限することにより、発熱部品から周辺の他の電子部品への熱影響の低減を図るものが開示されている。
【0006】
また、特許文献4には、高温となる側(基板や放熱器)と放熱器との間に、高温となる側からの輻射熱を遮断する遮蔽板を設けた技術も開示されている。ここで遮蔽板は、輻射熱の流れに対して垂直に交差する向きに配置され、反射した輻射熱は高温となる側に反射されていた。
【0007】
また、別の従来の技術として、例えば特許文献5には、電源スイッチをスイッチカバーで覆い光源ランプの輻射熱が直接当たらないように遮蔽したものが開示されている。すなわち、スイッチカバーの一部に、光源ランプの輻射熱が電源スイッチに伝達することを防ぐ遮蔽板を設けていた。ここで遮蔽板は、前記特許文献4の場合と同様に、輻射熱の流れに対して垂直に交差する向きに配置され、反射した輻射熱は光源ランプのある方向に戻されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平1−93792号公報
【特許文献2】特開平7−321423号公報
【特許文献3】特開平11−40901号公報
【特許文献4】特許第3094780号公報
【特許文献5】特許第3833833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述した特許文献1乃至4に開示された従来の技術は、何れも基板だけの熱伝導の制限を技術的課題とするものであり、かかる基板を含む機器全体の放熱に関する工夫ではなかった。従って、密閉された狭い空間内に基板が収納される場合、発熱源から他部品に基板を介して熱が伝わらなくても、発熱源からの輻射熱や空間内で加熱された空気を伝わって、他部品が許容値を超える温度まで上昇する虞がある。よって、他部品の熱による損傷を確実に防止することはできないという問題があった。
【0010】
また、前述した特許文献4,5に開示された従来の技術では、発熱源から発せられた輻射熱が他部品に直接当たることを防止できるが、輻射熱を反射させる方向までは何ら考慮されていなかった。すなわち、遮蔽板は輻射熱の流れに単に垂直に交差する向きであり、反射した輻射熱はそのまま戻るように反射されてしまう。そのため、これらの部品を閉じられた筐体内に収納するような場合、筐体内に熱が留まって筐体内の部品の温度が下がらないという問題があった。
【0011】
本発明は、以上のような従来の技術の有する問題点に着目してなされたものであり、部品点数や組付工数を少なくして小型化やコスト低減が可能であり、閉じられた狭い筐体内であっても、発熱源から他部品への熱の伝達を抑えると共に、簡易な構成で効率良く放熱することができ、熱に弱い部品の損傷を確実に防止することができる放熱構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、以下の各項の発明に存する。
[1]機器(10)の閉じられた筐体(11)内に各種部品が配設された基板(20)が収納され、各種部品中には熱を発する発熱部品(21)と熱から保護が必要な保護部品(24)が含まれ、前記保護部品(24)の温度もしくは前記筐体(11)内の温度を前記保護部品(24)の周囲で許容値以下に抑える放熱構造において、
前記発熱部品(21)は、放熱手段(23)を介して前記基板(20)上に配設され、
前記基板(20)上の前記放熱手段(23)と前記保護部品(24)の間に、熱伝導を遮断する遮熱手段(30)を設けると共に、前記発熱部品(21)及び前記発熱部品(21)より伝わった熱で暖められた放熱手段(23)から前記保護部品(24)のある方向に発せられた輻射熱を別方向に反射させる反射手段(40)を設けたことを特徴とする放熱構造。
【0013】
[2]前記遮熱手段(30)は、前記基板(20)の一部を分断する遮熱溝であり、前記放熱手段(23)と前記保護部品(24)の間に亘り長手方向に延びるように設けられ、
前記反射手段(40)は、前記基板(20)上より立ち上がる反射板であり、基端縁(41)が前記基板(20)上に固定され、立ち上がる先端縁(42)に向けて傾斜するように設けられたことを特徴とする前記[1]に記載の放熱構造。
【0014】
[3]前記筐体(11)は、金属により箱状に形成され、その前面開口はガラスカバー(13)によって閉じられ、
前記基板(20)は、前記筐体(11)内で前記ガラスカバー(13)と平行に配設され、
前記筐体(11)の設置状態における前記基板(20)上では、前記発熱部品(21)及び前記放熱手段(23)は前記保護部品(24)の上方となる位置に配設され、
前記反射板(40)は、前記基板(20)上にて、前記発熱部品(21)及び前記発熱部品(21)より伝わった熱で暖められた前記放熱手段(23)から前記保護部品(24)のある下方に発せられた輻射熱を前方の前記ガラスカバー(13)に向けて反射させるように斜め下方に傾斜させたことを特徴とする前記[2]に記載の放熱構造。
【0015】
[4]前記基板(20)は、前記筐体(11)の金属よりも熱伝導率の高い材質から形成され、前記筐体(11)の背面部(12)の内壁に沿って密着した状態に取り付けられたことを特徴とする前記[3]に記載の放熱構造。
【0016】
[5]前記放熱手段(23)による前記筐体(11)内の対流により、該筐体(11)の内壁面及び前記ガラスカバー(13)に加熱空気が接する外部放熱のための有効面積を増やしたことを特徴とする前記[3]または[4]に記載の放熱構造。
【0017】
次に、前述した解決手段に基づく作用を説明する。
前記[1]に記載の放熱構造では、1つの基板(20)上の放熱手段(23)(発熱部品(21))と保護部品(24)の間に、熱伝導を遮断する遮熱手段(30)を設けるだけでなく、発熱部品(21)及び発熱部品(21)より伝わった熱で暖められた放熱手段(23)から保護部品(24)のある方向に発せられた輻射熱を別方向に反射させる反射手段(40)を設けた。ここで別方向とは、発熱部品(21)及び放熱手段(23)がある方向とは別の方向という意味である。
【0018】
これにより、反射手段(40)によって、発熱部品(21)及び発熱部品(21)より伝わった熱で暖められた放熱手段(23)から発せられた輻射熱が保護部品(24)に直接当たることを防止するだけでなく、閉じられた筐体(11)内における放熱効果も高めることができる。すなわち、反射手段(40)で反射された輻射熱が、そのまま発熱部品(21)及び放熱手段(23)のある方向に戻ることはなく、輻射熱が発熱部品(21)及び放熱手段(23)と反射手段(40)の間で反射を繰り返して筐体(11)内に熱が留まることを防ぐことができる。
【0019】
このような反射手段(40)による輻射熱の反射方向の工夫が、前記遮熱手段(30)による熱伝導の遮断と相俟って、閉じられた筐体(11)内における保護部品(24)の温度上昇を抑制することができる。ここで遮熱手段(30)とは、例えば前記[2]に記載したように、基板(20)の一部を分断する遮熱溝である。かかる簡易な構成の遮熱溝は、放熱手段(23)と保護部品(24)の間に亘り長手方向に延びるように設けると良い。
【0020】
また、反射手段(40)とは、例えば前記[2]に記載したように、基板(20)上より立ち上がる反射板であり、基端縁(41)が基板(20)上に固定され、立ち上がる先端縁(42)に向けて傾斜するように設けると良い。かかる簡易な構成の反射板の傾斜の向きや角度は、反射させる輻射熱を外部に効率良く放出すべく、基板(20)と接していない筐体(11)の何れかの壁面に向かうように設定すると良い。
【0021】
前記筐体(11)は、機器(10)の外壁をなし内部の空間を閉じるものであるが、例えば前記[3]に記載したように、金属により箱状に形成され、その前面開口はガラスカバー(13)によって閉じられた構成とする。そして、前記基板(20)は、この筐体(11)内でガラスカバー(13)と平行に配設する。
【0022】
このような筐体(11)を、実際に設置した状態における内部の基板(20)の姿勢にて、発熱部品(21)及び放熱手段(23)が保護部品(24)よりも上方に位置するように配設する。これにより、閉じられた筐体(11)内で発熱部品(21)により加熱された空気の上方へ向かう対流が保護部品(24)に向かうことはなく、筐体(11)内の対流で保護部品(24)が暖められる事態を防止することができる。
【0023】
また、前記反射板(40)は、前記基板(20)上にて、発熱部品(21)及び発熱部品(21)より伝わった熱で暖められた放熱手段(23)から保護部品(24)のある下方に発せられた輻射熱を、前方のガラスカバー(13)に向けて反射させるように斜め下方に傾斜させると良い。これにより、反射板(40)で反射させた輻射熱を、一般的に金属より輻射率の高いガラス製のガラスカバー(13)から外部に効率良く放出することができる。
【0024】
さらに、輻射と対流による放熱効率を高めるべく、前記[4]に記載したように、前記基板(20)を、筐体(11)の金属よりも熱伝導率の高い材質から形成して、該基板(20)を、筐体(11)の背面部(12)の内壁に沿って密着した状態に取り付けると良い。ここで基板(20)の具体的な材質としては、例えば筐体(11)の素材がステンレスであれば、これよりも熱伝導率の高いアルミニウム等で形成すると良い。
【0025】
これにより、発熱部品(21)からの熱を基板(20)の表面全体より筐体(11)の背面部(12)側の広い範囲に迅速に伝達することが可能となる。よって、筐体(11)の外表面から周囲へ放熱有効面積が増えることになり、輻射と対流による周囲への放熱効率も高めることができる。なお、基板(20)は、筐体(11)の背面部(12)の内壁に合致する大きさ形状にすると良い。
【0026】
さらに、前記発熱部品(21)は、そのまま基板(20)上に直接配設するのではなく、放熱手段(23)を介して前記基板(20)上に配設されているため、前記[5]に記載したように、この放熱手段(23)によって、筐体(11)内の対流が促され、筐体(11)内の空気が全体的に暖められると共に、空気が接する筐体(11)の内壁やガラスカバー(13)も広い範囲で暖めることができる。よって、筐体(11)の外表面から周囲への放熱有効面積が増えることになり、周囲への放熱効率もいっそう高めることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る放熱構造によれば、部品点数や組付工数を少なくして小型化やコスト低減が可能であり、閉じられた狭い筐体内であっても、発熱源から他部品への熱の伝達を抑えると共に、簡易な構成で効率良く放熱することができ、熱に弱い部品の損傷を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施の形態に係る放熱構造を備えたトンネル灯の内部を示す斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係る放熱構造を備えたトンネル灯の内部を示す正面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る放熱構造を備えたトンネル灯の全体を示す正面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る放熱構造を備えたトンネル灯の全体を示す側面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る放熱構造を備えたトンネル灯の全体を示す底面図である。
図6】本発明の実施の形態に係る放熱構造を備えたトンネル灯の構成部品を示す分解斜視図である。
図7】本発明の実施の形態に係る放熱構造を備えたトンネル灯の基板の放熱作用を示す説明図である。
図8】本発明の実施の形態に係る放熱構造を備えたトンネル灯の放熱フィンの放熱作用を示す説明図である。
図9】本発明の実施の形態に係る放熱構造を備えたトンネル灯の反射板の傾斜角度を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面に基づき、本発明を代表する実施の形態を説明する。
図1図9は、本発明の一実施の形態を示している。
本実施の形態に係る放熱構造は、筐体11内に各種部品が配設された基板20が収納された機器10に関して、その筐体11内の温度を抑えるための構造である。以下、機器10として、照明装置としてトンネル内に設置するトンネル灯に適用した場合を例に説明する。
【0030】
機器10であるトンネル灯は、図示省略したトンネル内部の天井両脇に沿って、下方の道路を照射するように斜め下向きに設置されるものであり、LEDを光源として採用している。かかるトンネル灯は、機器10の外壁をなす筐体11と、各種部品が配設された基板20を備え、基板20上には、光源のLED21のほか、電源24やトランス25等の各種部品が配設されている。
【0031】
図1に示すように、筐体11は全体的には横長矩形で底浅な箱状に形成されている。筐体11の素材は、金属のうち防水性や耐食性に優れたステンレスが適するが、熱伝導率は一般的には低い。筐体11の背面部12の内壁に沿って、基板20が密着した状態に取り付けられている。また、筐体11の前面開口は、ガラスカバー13によって閉じられている。なお、ガラスカバー13は、例えば透過性に優れた無色透明の強化ガラスが採用され、筐体11の開口周縁にパッキン等を介して密閉可能かつ着脱可能に取り付けると良い。
【0032】
基板20は、筐体11の背面部12と同形状の板状に形成され、前述したように背面部12の内壁に密着させることで、筐体11内でガラスカバー13と平行に配設される。基板20の素材は、筐体11の金属(例えばステンレス)よりも軽量で熱伝導率も高い材質としてアルミニウムが適する。なお、基板20の厚さは、後述する熱伝導を早める意図や相当の強度を保つ上では厚い方が良いが、なるべく軽量化を図ることも必要であるため、これらの観点より適宜設定すれば良い。
【0033】
基板20上における各種部品のレイアウトは、上方にLED21を含むLED基板22が配設され、その下方に電源24が配設され、一側端にはトランス25が配設されている。このうち、LED21、電源24、トランス25が発熱源であるが、特に高熱を発するLED21が「発熱部品」に相当し、同じ発熱源であっても比較的低温で高熱から保護する必要のある電源24が「保護部品」に相当する。さらに基板20には、詳しくは後述するがLED21と電源24の間に遮熱手段と反射手段が設けられている。
【0034】
LED基板22上には複数のLED21が実装されている。ここでLED21は、例えばリード線上に設けた発光素子のみからなるLEDチップが適している。なお、LED基板22は、複数に分割されたものを平面状に組み合わせて、複数のLED21がマトリックス状に並ぶように配置すると良い。また、LED21の発光色は、適宜選択し得る設計事項である。
【0035】
このようなLED基板22は、基板20に対して直接取り付けられることはなく、「放熱手段」である放熱フィン23を介して基板20上に配設されている。ここで放熱フィン23は、基板20に対する取付側の面と上下面とが開口したハウジングの内側に、互いに平行に上下に延びる羽根を固定して成り、ハウジング両側壁の脚を基板20に取り付けるものである。放熱フィン23のハウジング正面部の内壁に各羽根は固定され、ハウジング正面部の外壁に前記LED基板22が取り付けられる。
【0036】
放熱フィン23は、そのハウジング正面部が前記LED基板22の表面積に合致する大きさのブロック状のユニットとして構成されている。放熱フィン23の素材は、金属のうち加工しやすく熱伝導率の高い銅やアルミニウム等が適している。図1に示す例では、3つのある放熱フィン23として、大きさの異なる2種類の放熱フィン23A,23Bが横一列に並ぶように配設されている。以下、放熱フィン23とは、個々のユニットを指すほか、各ユニットをまとめて総称する場合もある。
【0037】
また、基板20上にて前記放熱フィン23の下方に、後述の遮熱手段を間にして電源24が配設されている。電源24は、外部から給電された交流電力をLED点灯用の直流に変換して各LED21に供給するものである。電源24は前述したように保護部品であり、高温に耐え得る許容値(例えば73℃)が他の部品に比べて低く、LED21から発せられる高熱から保護する必要がある。
【0038】
電源24は専用ケースで密閉されており、支持ブラケット24aを介して基板20より離隔した状態に取り付けられている。図1に示す例では、3つの電源24のユニットが筐体11内の一側端寄りの底部に横2列でその片側のみ上下2段に並ぶように配設されている。また、筐体11内の他側端寄りに配設されたトランス25は、交流電力の電圧の高さを変換するものであり、専用ケースで密閉されており、支持ブラケット25aを介して基板20に取り付けられている。
【0039】
図3図6に示すように、基板20上の放熱フィン23(LED21)と電源24の間には、熱伝導を遮断する遮熱手段が設けられており、また、LED21及びLED21より伝わった熱で暖められた放熱フィン23から電源24のある方向に発せられた輻射熱を別方向に反射させる反射手段が設けられている。ここで遮熱手段は、本実施の形態では基板20の一部を分断する遮熱溝30であり、LED21と電源24の間に亘り長手方向に延びるように設けられている。
【0040】
詳しく言えば、遮熱溝30は、LED21が実装されたLED基板22が取り付けられている各放熱フィン23の下側で、両側方向に一続きに延びるように細幅で開口している。この遮熱溝30の下方に電源24は位置している。遮熱溝30は、LED21から発せられた熱が放熱フィン23を介して基板20に伝わった時、基板20を通じて電源24に熱が極力伝わらないように熱伝導を遮断するものである。なお、遮熱溝30は必ずしも一続きの溝とする必要はなく、他に例えば、複数の溝を所定間隔で並べるように配置しても良い。
【0041】
また、前記反射手段は、本実施の形態では基板20上より立ち上がる反射板40であり、前記遮熱溝30に沿って基端縁41が固定され、立ち上がる先端縁42が下方に傾斜するように設けられている。反射板40の素材は、金属のうち鏡面加工が容易であり、輻射熱の反射にも優れたものであれば何でも良く、例えばステンレスやアルミニウム等と様々な金属を採用することができる。
【0042】
詳しく言えば、反射板40は、前記遮熱溝30に沿って所定幅に延びる金属板から成り、長手方向に延びる基端縁41が折り返されて、前記遮熱溝30の長手方向に延びる上端縁に沿って固定されている。この反射板40の下方に、前記遮熱溝30を間にして電源24は位置している。反射板40は、前記LED21及び前記LED21から伝わった熱で暖められた前記放熱フィン23より、前記LED21の光軸と直交する下方、すなわち電源24がある方向に発せられた輻射熱を、前記LED21及び前記放熱フィン23がある方向とは別方向に反射させるものである。
【0043】
ここで別方向とは、LED21及びLED21から伝わった熱で暖められた放熱フィン23がある上方とは別の方向という意味である。具体的には反射板40は、LED21及びLED21より伝わった熱で暖められた放熱フィン23から電源24に向かう輻射熱を、ガラスカバー13と交差する前方に向けて反射させる傾斜角度で斜め下方に傾斜した状態に固定されている。ガラスカバー13の素材であるガラスは、熱伝導率は金属全般に比べて低いが輻射率が高いため、反射された輻射熱を外部に効率良く放出することができる。
【0044】
次に、本実施の形態に係る放熱構造の作用について説明する。
図1に示すように、機器10は、軽量化や取り付け作業性の向上等を目的として、筐体11の大きさ・容量を極力小型化したものである。よって、筐体11の狭い内部空間にて、高い発熱源となるLED21と高温に弱い電源24が密に配置されている。しかも、機器10であるトンネル灯の筐体11は全体的に密閉構造とする必要があるため、電源24の温度もしくは筐体11内の温度を電源24の周囲で許容値以下に抑える放熱対策が重要となる。
【0045】
かかる放熱対策としては、先ず筐体11を実際に設置した状態、すなわち図8に示すように、筐体11を前方へ傾けたトンネル内での取り付け状態を前提として、その内部の基板20の実際の姿勢を基準としたLED21と電源24の位置関係については、LED21を電源24よりも上方に位置させる。これにより、閉じられた筐体11内で、LED21により加熱された空気の上方へ向かう対流が電源24に直接流れることはなく、筐体11内の対流で電源24が暖められる事態を防止することができる。
【0046】
また、本放熱構造では、筐体11から積極的に放熱するために、筐体11周囲の空気の流れによる放熱を促進すると共に、電磁波(主に赤外線)の形でエネルギーを筐体11の外部に直接放出する輻射を活用する。ここで、放熱効果を高めるためには、筐体11で放熱に有効な表面積を増やすことが重要であり、図7(b)に示すように、筐体11の金属(ステンレス)よりも熱伝導率の高い材質(アルミニウム)から基板20を形成し、該基板20を筐体11の背面部12の内壁に沿って密着した状態に取り付ける。前述したように、筐体11の放熱有効面積が増えれば、輻射も対流も放熱効率が高まる。
【0047】
仮に、図7(a)に示すように、基板20を設けることなく、LED21の放熱フィン23を筐体11の背面部12の内壁に直接取り付けた場合には、この背面部12において放熱に有効な範囲は、放熱フィン23の脚が接続されている部分だけとなる。ここで背面部12を含む筐体11の熱伝導率は材質的には比較的低いため、LED21から発せられた熱を筐体11の外表面の狭い範囲で局所的にしか熱伝達することができず、筐体11周囲への放熱効果は低くなる。
【0048】
そこで、熱伝導率の高い基板20を筐体11の背面部に密着させることにより、LED21からの熱を基板20の表面全体から筐体11の背面部側の広い範囲に迅速に伝達することが可能となる。従って、筐体11の外表面から周囲へ放熱有効面積が増えることになり、輻射と対流による周囲への放熱効率をいっそう高めることができる。
【0049】
また、従来の技術と同様に、1つの基板20上のLED21と電源24を一緒に配設することで、部品点数や組立工数を削減しているが、基板20上のLED21と電源24の間に遮熱溝30を設けるだけでなく、遮熱溝30に沿って反射板40を設けた。これらの遮熱溝30や反射板40によって、電源24に熱が直接伝わることを遮断するだけでなく、反射板40によって、LED21及びLED21より伝わった熱で暖められた放熱フィン23から発せられた輻射熱を外部に向けて積極的に反射させる。
【0050】
このように、遮熱溝30や反射板40による熱伝導の遮断のみならず、反射板40による輻射熱の反射と相俟って、特に閉じられた筐体11内における電源24の温度上昇を抑えることができる。特に反射板40は、LED21及びLED21から伝わった熱で暖められた放熱フィン23から、LED21の光軸と直交する下方(電源24がある方向)に発せられた輻射熱を、前方のガラスカバー13に向けて反射させるように斜め下方に傾斜している。かかる反射板40の傾斜によれば、輻射率が高いガラスカバー13に向けて反射させた輻射熱を外部に効率良く放出することができる。
【0051】
仮に、反射板40が基板20に対して垂直に立ち上がって下方に傾斜しない場合には、反射板40で反射された輻射熱は、そのままLED21及びLED21より伝わった熱で暖められた放熱フィン23のある方向に戻ることになる。これでは、輻射熱がLED21及び放熱フィン23と反射板40の間で反射を繰り返して筐体11内に熱が留まってしまうが、前述したように反射板40を傾斜させることにより、筐体11内に熱が留まることを確実に防ぐことができる。
【0052】
図9に示すように、反射板40の傾斜角度は、反射させた輻射熱がガラスカバー13に対して直交するように下向き45度が理想である。ただし、実際には図4に示したように、筐体11内の限られたスペースの関係上、反射板40が他の部材に干渉しない範囲で下方に傾斜した角度に設定することになる。また、反射板40の先端縁42は、なるべくガラスカバー13に近接させることで、反射板40で上下間の空間を仕切るようにすると良い。
【0053】
また、反射板40の基端縁41を基板20上に固定する取り付け位置は、前述したように遮熱溝30の上端縁であり、反射板40は、遮熱溝30を間にして電源24側ではなくLED21側の位置に配置される。これにより、反射板40がLED21からの輻射熱や基板20からの熱伝導で熱せられても、遮熱溝30で分断された電源24側に熱が伝わることを防ぐことができる。
【0054】
また、筐体11内の対流により、間接的に電源24が暖められる事態をより効果的に防止することができる。すなわち、反射板40により筐体11内の空気を上下2分割することができ、反射板40の上下で空気の温度が全く異なることになる。小さい筐体11の中で下側の電源24の周囲温度を下げるには、上側の高温な空気は少しでも筐体11の上側の空間に押し込める必要があり、これにより、下側の電源24の周囲に少しでも冷たい空気を容量多く残すことができる。
【0055】
さらに、放熱効果を高めるための工夫として、図8(a)に示すように、LED21を、そのまま基板20上に直接配設するのではなく、図8(b)に示すように、放熱フィン23を介して基板20上に配設している。この放熱フィン23によって、筐体11内の対流が促され、筐体11内の空気が全体的に暖められると共に、空気が接する筐体11の内壁のみならずガラスカバー13も含む広い範囲を暖めることができる。
【0056】
これにより、筐体11全体の外表面から周囲への放熱有効面積が増えることになり、特にガラスカバー13は、筐体11の素材であるステンレスに比べて輻射率が高く、周囲への放熱効率をいっそう高めることができる。仮に図8(a)に示すように、放熱フィン23を用いることなく、LED21を基板20上に直接取り付けた場合には、筐体11内の空気が全体的に暖められることはなく、LED21が接する局所的な狭い範囲でしか暖めることができない。
【0057】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は前述したような実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、機器10としてトンネル灯を例に説明したが、特にトンネル灯に限定されるものではなく、配線類を備えた様々な装置に適用することができる。
【0058】
また、筐体11の形状や筐体11内の各種部品の配置も、図示した例に限定されることはない。また、遮熱手段として遮熱溝30を例に説明したが、遮熱手段は溝状のものに限定されることはなく、他に例えば、基板20よりも熱伝導の低い部材を基板20と電源24の間に配置するように構成しても良い。
【0059】
さらに、反射手段として反射板40を例に説明したが、このように薄板状のものに限定されることはなく、LED21及びLED21から伝わった熱で暖められた放熱フィン23からの輻射熱を反射できるものであれば良い。また、放熱手段として放熱フィン23を採用した例を説明したが、これに限らず、ヒートパイプや該ヒートパイプが貫通する放熱フィンを組み合わせて構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係る放熱構造は、照明装置のトンネル灯に限られることなく、各種部品を配設する基板を備えた様々な機器に幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
10…機器
11…筐体
12…背面部
13…ガラスカバー
20…基板
21…LED
22…LED基板
23…放熱フィン
24…電源
25…トランス
30…遮熱溝
40…反射板
41…基端縁
42…先端縁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9