特許第6341812号(P6341812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6341812
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】測定装置および信号種類判別方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/00 20060101AFI20180604BHJP
   G01R 19/02 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   G01R19/00 Z
   G01R19/00 M
   G01R19/02
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-181153(P2014-181153)
(22)【出願日】2014年9月5日
(65)【公開番号】特開2016-57077(P2016-57077A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】今泉 憲
(72)【発明者】
【氏名】中村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】平尾 貴志
【審査官】 名取 乾治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−197223(JP,A)
【文献】 特開平6−249887(JP,A)
【文献】 実開平7−19046(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/00
G01R 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1信号をサンプリングして生成された当該第1信号についての波形データに基づいて当該第1信号についての平均値Nmeanおよび実効値Nrmsを算出する算出処理、並びに前記平均値Nmeanおよび前記実効値Nrmsに基づいて前記第1信号が直流信号であるか正弦波信号であるか正弦波信号についての整流信号であるかを判別する判別処理を実行する処理部を備えた測定装置であって、
前記処理部は、前記判別処理において、前記算出処理で算出した前記平均値Nmeanおよび前記実効値Nrmsが下記の式(1)を満たすときには、当該第1信号は直流信号であると判別し、当該平均値Nmeanおよび当該実効値Nrmsが下記の式(2)を満たすときには、当該第1信号は正弦波信号であると判別し、当該平均値Nmeanおよび当該実効値Nrmsが下記の式(3)を満たすときには、当該第1信号は正弦波信号についての整流信号であると判別する測定装置。
実効値Nrms<A×平均値Nmean ・・・(1)
実効値Nrms>B×平均値Nmean ・・・(2)
B×平均値Nmean≧実効値Nrms≧A×平均値Nmean ・・・(3)
但し、Aは、1を超え、1.11未満の任意の値であり、Bは、2以上の値である。
【請求項2】
入力信号に含まれる直流成分を除去して交流成分信号を出力するACカップリング部と、
前記入力信号および前記交流成分信号を入力すると共にこれらの信号のうちから選択された一方の信号を前記第1信号として出力する信号選択部と、
前記第1信号をサンプリングして当該第1信号についての前記波形データを生成するA/D変換部とを備え、
前記処理部は、
前記信号選択部に対して前記入力信号および前記交流成分信号のうちの任意の一方を前記第1信号として出力させる制御処理を実行可能に構成されて、
前記算出処理において前記平均値Nmeanおよび前記実効値Nrmsを算出する際の前記波形データについては、前記信号選択部に対して前記入力信号を前記第1信号として出力させる前記制御処理を実行したときに前記A/D変換部で生成された前記波形データを使用し、
前記判別処理において前記第1信号が正弦波信号であると判別したときには前記信号選択部に対して前記交流成分信号を前記第1信号として出力させる前記制御処理を実行すると共に前記A/D変換部で生成される当該交流成分信号についての前記波形データを使用して新たな前記実効値Nrmsを算出する再算出処理を実行する請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
第1信号をサンプリングして生成された当該第1信号についての波形データに基づいて当該第1信号についての平均値Nmeanおよび実効値Nrmsを算出する算出処理と、
前記平均値Nmeanおよび前記実効値Nrmsに基づいて前記第1信号が直流信号であるか正弦波信号であるか正弦波信号についての整流信号であるかを判別する判別処理とを実行する信号種類判別方法であって、
前記判別処理において、前記算出処理で算出した前記平均値Nmeanおよび前記実効値Nrmsが下記の式(1)を満たすときには、当該第1信号は直流信号であると判別し、当該平均値Nmeanおよび当該実効値Nrmsが下記の式(2)を満たすときには、当該第1信号は正弦波信号であると判別し、当該平均値Nmeanおよび当該実効値Nrmsが下記の式(3)を満たすときには、当該第1信号は正弦波信号についての整流信号であると判別する信号種類判別方法。
実効値Nrms<A×平均値Nmean ・・・(1)
実効値Nrms>B×平均値Nmean ・・・(2)
B×平均値Nmean≧実効値Nrms≧A×平均値Nmean ・・・(3)
但し、Aは、1を超え、1.11未満の任意の値であり、Bは、2以上の値である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力される第1信号の種類(直流信号、正弦波信号、および正弦波信号についての整流信号のいずれかであるか)を自動的に判別して、第1信号の平均値および実効値を正確に測定する測定装置、および第1信号の種類を判別する信号種類判別方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の測定装置として、本願出願人は、下記の特許文献1に開示された測定装置を既に提案している。この測定装置では、まず、A/D変換部が、入力される第1信号(接触電流を示す電圧信号)をサンプリングすることにより、第1信号についての波形データを生成する。次いで、処理部が、この波形データを入力して記憶部に記憶させ、この波形データの記憶が完了した後に、この波形データに基づいて第1信号の種類を判別する測定処理を実行する。
【0003】
この測定処理では、処理部は、まず、記憶されている波形データに基づいて、第1信号の直流成分についての絶対値(第1信号の平均値)と、第1信号の交流成分についての振幅とを測定(算出)し、次いで、この第1信号の直流成分についての絶対値と、この絶対値に対して予め規定された基準値との比較結果、および第1信号の交流成分についての振幅と、この振幅に対して予め規定された基準値との比較結果に基づいて、第1信号の種類(第1信号が、交流成分に直流成分が重畳している信号であるか、直流信号であるか、交流信号であるか)を判別する。
【0004】
続いて、処理部は、判別した第1信号の種類に応じて予め規定された式に従い、第1信号の実効値を測定(算出)する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−169600号公報(第6−7頁、第3−4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記した従来の測定装置のように入力される第1信号の種類を判別する測定装置において、第1信号が交流成分に直流成分が重畳している信号であるかを判別する機能に代えて、第1信号が正弦波信号についての整流信号(全波整流信号や半波整流信号)であるかを判別し得る機能を備えたものが望まれている。この機能については、上記した従来の測定装置においても、整流信号(全波整流信号や半波整流信号)の直流成分についての絶対値に対する基準値と、整流信号の交流成分についての振幅に対する基準値とを予め規定しておき、測定(算出)した第1信号の交流成分の振幅と対応する基準値とを比較すると共に、測定(算出)した第1信号の直流成分についての絶対値と対応する基準値とを比較することで、実現することも可能であると考えられる。
【0007】
また、上記した従来の測定装置のように入力信号の種類を判別しつつ、入力信号の実効値だけを測定するのでなく、入力信号の種類(直流信号、正弦波信号、および正弦波信号についての整流信号)に応じて実効値や平均値を測定し得る測定装置の実現も望まれている。この場合、このような測定装置を、上記した従来の測定装置の構成を採用して実現しようとしたときには、この従来の測定装置では、処理部が、入力信号の波形データに基づいて、入力信号の平均値(入力信号の直流成分についての絶対値)および実効値だけでなく、入力信号の種類の判別のためだけに入力信号の交流成分についての振幅を測定(算出)する必要があることから、その分だけ処理部の演算量が増加するという改善すべき課題が存在している。
【0008】
本発明は、かかる課題を改善するためになされたものであり、演算量を抑制しつつ入力信号の種類を判別可能とする測定装置および信号種類判別方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく請求項1記載の測定装置は、第1信号をサンプリングして生成された当該第1信号についての波形データに基づいて当該第1信号についての平均値Nmeanおよび実効値Nrmsを算出する算出処理、並びに前記平均値Nmeanおよび前記実効値Nrmsに基づいて前記第1信号が直流信号であるか正弦波信号であるか正弦波信号についての整流信号であるかを判別する判別処理を実行する処理部を備えた測定装置であって、前記処理部は、前記判別処理において、前記算出処理で算出した前記平均値Nmeanおよび前記実効値Nrmsが下記の式(1)を満たすときには、当該第1信号は直流信号であると判別し、当該平均値Nmeanおよび当該実効値Nrmsが下記の式(2)を満たすときには、当該第1信号は正弦波信号であると判別し、当該平均値Nmeanおよび当該実効値Nrmsが下記の式(3)を満たすときには、当該第1信号は正弦波信号についての整流信号であると判別する。
実効値Nrms<A×平均値Nmean ・・・(1)
実効値Nrms>B×平均値Nmean ・・・(2)
B×平均値Nmean≧実効値Nrms≧A×平均値Nmean ・・・(3)
但し、Aは、1を超え、1.11未満の任意の値であり、Bは、2以上の値である。
【0010】
請求項2記載の測定装置は、請求項1記載の測定装置において、入力信号に含まれる直流成分を除去して交流成分信号を出力するACカップリング部と、前記入力信号および前記交流成分信号を入力すると共にこれらの信号のうちから選択された一方の信号を前記第1信号として出力する信号選択部と、前記第1信号をサンプリングして当該第1信号についての前記波形データを生成するA/D変換部とを備え、前記処理部は、前記信号選択部に対して前記入力信号および前記交流成分信号のうちの任意の一方を前記第1信号として出力させる制御処理を実行可能に構成されて、前記算出処理において前記平均値Nmeanおよび前記実効値Nrmsを算出する際の前記波形データについては、前記信号選択部に対して前記入力信号を前記第1信号として出力させる前記制御処理を実行したときに前記A/D変換部で生成された前記波形データを使用し、前記判別処理において前記第1信号が正弦波信号であると判別したときには前記信号選択部に対して前記交流成分信号を前記第1信号として出力させる前記制御処理を実行すると共に前記A/D変換部で生成される当該交流成分信号についての前記波形データを使用して新たな前記実効値Nrmsを算出する再算出処理を実行する。
【0011】
請求項3記載の信号種類判別方法は、第1信号をサンプリングして生成された当該第1信号についての波形データに基づいて当該第1信号についての平均値Nmeanおよび実効値Nrmsを算出する算出処理と、前記平均値Nmeanおよび前記実効値Nrmsに基づいて前記第1信号が直流信号であるか正弦波信号であるか正弦波信号についての整流信号であるかを判別する判別処理とを実行する信号種類判別方法であって、前記判別処理において、前記算出処理で算出した前記平均値Nmeanおよび前記実効値Nrmsが下記の式(1)を満たすときには、当該第1信号は直流信号であると判別し、当該平均値Nmeanおよび当該実効値Nrmsが下記の式(2)を満たすときには、当該第1信号は正弦波信号であると判別し、当該平均値Nmeanおよび当該実効値Nrmsが下記の式(3)を満たすときには、当該第1信号は正弦波信号についての整流信号であると判別する。
実効値Nrms<A×平均値Nmean ・・・(1)
実効値Nrms>B×平均値Nmean ・・・(2)
B×平均値Nmean≧実効値Nrms≧A×平均値Nmean ・・・(3)
但し、Aは、1を超え、1.11未満の任意の値であり、Bは、2以上の値である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の測定装置および請求項3記載の信号種類判別方法によれば、第1信号についての平均値Nmeanおよび実効値Nrmsだけで第1信号の種類を判別することができるため、従来の信号種類判別方法では必要な第1信号の交流成分についての振幅の測定(算出)を省くことができることから、その分だけ演算量を抑制しつつ第1信号の種類を判別することができる。
【0013】
また、請求項2記載の測定装置では、処理部は、入力信号が正弦波信号であると判別したときに、信号選択部に対する制御処理を実行して、ACカップリング部において直流成分が除去された入力信号(交流成分信号)を出力させると共に、再算出処理を実行してこの交流成分信号の実効値Nrmsを算出する。したがって、この測定装置によれば、正弦波信号である入力信号に何らかの原因で若干の直流成分が重畳していたとしても、この不要な直流成分を除去して、正弦波信号である本来の入力信号についての実効値Nrmsを精度良く算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】測定装置1の構成図である。
図2】入力信号S1が直流信号のときの波形図である。
図3】入力信号S1が正弦波信号のときの波形図である。
図4】入力信号S1が整流信号(全波整流信号)のときの波形図である。
図5】入力信号S1が整流信号(半波整流信号)のときの波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、測定装置および信号種類判別方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0016】
最初に、測定装置の構成について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1に示す測定装置としての測定装置1は、一例として、ACカップリング部2、信号選択部3、増幅部4、A/D変換部5、処理部6、記憶部7および出力部8を備え、入力信号S1の平均値Nmeanおよび実効値Nrmsを算出すると共にこの平均値Nmeanおよび実効値Nrmsに基づいて入力信号S1の種類を判別し、平均値Nmeanおよび実効値Nrmsのうちの入力信号S1の種類に応じて予め規定された一方を入力信号S1についての被測定量として測定可能に構成されている。
【0018】
まず、この測定装置1で入力信号S1として測定される信号について、図2図5を参照して説明する。図2に示す信号の波形は、入力信号S1が直流信号であるときの信号波形である。この場合、この入力信号S1のレベル(電圧レベル)をVmとしたときには、この入力信号S1についての平均値NmeanはVmであり、実効値NrmsもVmである。また、図3に示す信号の波形は、入力信号S1が正弦波信号であるときの信号波形である。この場合、この正弦波信号の振幅をVmとしたときには、この入力信号S1についての平均値Nmeanは0であり、実効値Nrmsは(1/√2)×Vmである。
【0019】
また、図4に示す信号の波形は、入力信号S1が整流信号(正弦波信号を全波整流したときの信号。全波整流信号)であるときの信号波形である。この場合、この正弦波信号の振幅をVmとしたときには、この入力信号S1についての平均値Nmeanは(2/π)×Vmであり、実効値Nrmsは(1/√2)×Vmである。また、図5に示す信号の波形は、入力信号S1が整流信号(正弦波信号を半波整流したときの信号。半波整流信号)であるときの信号波形である。この場合、この正弦波信号の振幅をVmとしたときには、この入力信号S1についての平均値Nmeanは(1/π)×Vmであり、実効値Nrmsは(1/2√2)×Vmである。
【0020】
次に、測定装置1の各構成要素について説明する。ACカップリング部2は、コンデンサを有して構成されて、入力信号S1に含まれる直流成分を除去して交流成分信号(入力信号S1に含まれる交流成分で構成される信号)S4として出力する。信号選択部3は、処理部6によって内部の接続状態が制御されるリレーやアナログスイッチなどで構成されて、入力信号S1および交流成分信号S4を入力すると共に、これらの信号S1,S4のうちから処理部6によって選択された一方の信号を選択信号S2として出力する。
【0021】
増幅部4は、例えば、演算増幅器、および演算増幅器の帰還回路を構成する抵抗回路などで構成されて、選択信号S2を増幅することにより、後段のA/D変換部5の入力定格に合致したレベルの第1信号としての増幅信号S3に変換して出力する。この場合、この入力定格に合致したレベルとは、必要とされる規定のS/N比を確保し得る下限値以上であって、A/D変換部5の飽和を確実に防止し得る上限値以下の第1範囲内のレベルをいうものとする。
【0022】
また、増幅部4は、処理部6によって抵抗回路の抵抗値が変更されることで、増幅率を多段階に変更可能に構成されている。この構成により、測定装置1は、広い電圧範囲に亘る入力信号S1を、A/D変換部5の入力定格に合致したレベルの増幅信号S3に変換してA/D変換部5に供給することが可能となっている。
【0023】
A/D変換部5は、増幅信号S3を所定の周波数(入力信号S1が正弦波信号や整流信号であるときの周波数よりも十分に速い周波数)のサンプリングクロックでサンプリングすることにより、増幅信号S3の瞬時値を示す波形データD1を生成して出力する。
【0024】
処理部6は、例えば、コンピュータを備えて構成されて、信号選択部3および増幅部4に対する制御処理、並びに波形データD1に基づいて増幅信号S3についての平均値Nmeanおよび実効値Nrms(ひいては、入力信号S1についての平均値Nmeanおよび実効値Nrms)を算出する算出処理を実行する。また、処理部6は、増幅信号S3についての平均値Nmeanおよび実効値Nrmsに基づいて、増幅信号S3の種類(直流信号であるか、正弦波信号であるか、正弦波信号についての整流信号であるか。選択信号S2として選択されている入力信号S1の種類でもある)を判別する判別処理(信号種類判別処理)を実行する。また、処理部6は、増幅信号S3が正弦波信号である(選択信号S2として選択されている入力信号S1が正弦波信号である)と判別したときに、ACカップリング部2から出力される交流成分信号S4に基づいて入力信号S1の実効値Nrmsを再度算出する再算出処理を実行する。
【0025】
記憶部7は、半導体メモリやハードディスク装置などで構成されて、処理部6の動作プログラムが予め記憶されていると共に、処理部6が判別処理で使用する下記の判別式(1),(2),(3)が予め記憶されている。また、記憶部7は、処理部6の制御に従い、算出した平均値Nmeanおよび実効値Nrmsを記憶する。
【0026】
実効値Nrms<A×平均値Nmean ・・・(1)
実効値Nrms>B×平均値Nmean ・・・(2)
B×平均値Nmean≧実効値Nrms≧A×平均値Nmean ・・・(3)
但し、Aは、1を超え、1.11未満の任意の値(例えば、1.05)であり、Bは、2以上の値(例えば、2)である。
【0027】
この判別式(1),(2),(3)について説明する。
【0028】
上記したように、増幅信号S3が直流信号である(選択信号S2として選択されている入力信号S1も直流信号である)ときには、入力信号S1についての平均値Nmeanおよび実効値Nrmsが共にVmであり(図2参照)、実効値Nrmsは平均値Nmeanの1倍となる。また、増幅信号S3の平均値Nmeanおよび実効値Nrmsについても、同様にして、実効値Nrmsは平均値Nmeanの1倍となる。
【0029】
また、増幅信号S3が正弦波信号である(選択信号S2として選択されている入力信号S1が正弦波信号である)ときには、入力信号S1についての平均値Nmeanは0(零)であり、実効値Nrmsは(1/√2)×Vmであることから(図3参照)、正弦波信号である入力信号S1(選択信号S2)に若干の直流成分が重畳していたとしても、この直流成分がVmの1/5以下程度であれば、実効値Nrmsは平均値NmeanのB倍(本例では一例として上記のように2倍)を超える値となっている。これは、増幅信号S3の平均値Nmeanおよび実効値Nrmsについても同様である。
【0030】
また、増幅信号S3が整流信号(全波整流信号)である(選択信号S2として選択されている入力信号S1が整流信号(全波整流信号))であるときには、入力信号S1についての平均値Nmeanは(2/π)×Vmであり、実効値Nrmsは(1/√2)×Vmであることから(図4参照)、実効値Nrmsは、理論上、平均値Nmeanの1.11倍となる。これにより、実効値Nrmsは、平均値NmeanのA(1.11>A>1)倍を超える値ではあるが、B倍(例えば、2倍)までには達しない値となっている。また、増幅信号S3が整流信号(半波整流信号)である(選択信号S2として選択されている入力信号S1が整流信号(半波整流信号))であるときにも、上記した全波整流信号のときと同様にして、実効値Nrmsは平均値Nmeanの1.11倍となることから、実効値Nrmsは、平均値NmeanのA(1.11>A>1)倍を超える値ではあるが、B倍(例えば、2倍)までには達しない値となっている。これは、増幅信号S3の平均値Nmeanおよび実効値Nrmsについても同様である。
【0031】
以上のことから、増幅信号S3(選択信号S2として選択されている入力信号S1)が直流信号であるときにのみ、その実効値Nrmsおよび平均値Nmeanが上記の判別式(1)を満たすことから、この判別式(1)を満たす実効値Nrmsおよび平均値Nmeanが算出された増幅信号S3(選択信号S2として選択されている入力信号S1)については、直流信号であると判別することができる。また、増幅信号S3(選択信号S2として選択されている入力信号S1)が正弦波信号であるときにのみ、その実効値Nrmsおよび平均値Nmeanが上記の判別式(2)を満たすことから、この判別式(2)を満たす実効値Nrmsおよび平均値Nmeanが算出された増幅信号S3(選択信号S2として選択されている入力信号S1)については、正弦波信号であると判別することができる。また、増幅信号S3(選択信号S2として選択されている入力信号S1)が整流信号(全波整流信号および半波整流信号)であるときにのみ、その実効値Nrmsおよび平均値Nmeanが上記の判別式(3)を満たすことから、この判別式(3)を満たす実効値Nrmsおよび平均値Nmeanが算出された増幅信号S3(選択信号S2として選択されている入力信号S1)については、上記の整流信号であると判別することができる。
【0032】
出力部8は、一例として、表示装置で構成されて、処理部6から出力される平均値Nmeanおよび実効値Nrmsを画面に表示させる。なお、出力部8を外部インターフェース回路で構成して、処理部6から出力される平均値Nmeanおよび実効値Nrmsを、外部インターフェース回路に接続されている外部装置に出力するようにしてもよい。
【0033】
続いて、測定装置1による平均値Nmeanおよび実効値Nrmsの測定動作について、信号種類判別方法と併せて説明する。
【0034】
まず、処理部6は、入力信号S1に対する測定処理を開始したときには、まず、入力信号S1が選択信号S2として出力されるように信号選択部3に対する制御処理を実行する。また、処理部6は、この状態においてA/D変換部5から出力される波形データD1に基づいて、A/D変換部5に入力される増幅信号S3のレベルがA/D変換部5に対して適切なレベルとなるように(上記した第1範囲内のレベルとなるように)、増幅部4の増幅率を設定する制御処理を実行する。
【0035】
次いで、処理部6は、A/D変換部5から出力される波形データD1に基づいて増幅信号S3の瞬時値を算出すると共に、算出した増幅信号S3の瞬時値に基づいて算出処理を実行する。この算出処理では、処理部6は、動作プログラム中に規定された平均値Nmeanを算出する公知の算出式および実効値Nrmsを算出する公知の算出式に、算出した増幅信号S3の瞬時値を代入することにより、増幅信号S3についての平均値Nmeanおよび実効値Nrmsを算出すると共に、算出した平均値Nmeanおよび実効値Nrmsに増幅部4の増幅率を乗算することにより、入力信号S1の平均値Nmeanおよび実効値Nrmsを算出する。
【0036】
続いて、処理部6は判別処理を実行する。この判別処理では、処理部6は、算出した増幅信号S3についての平均値Nmeanおよび実効値Nrmsが、記憶部7から読み出した上記の判別式(1),(2),(3)のうちのいずれの判別式を満たすかを検出することにより、増幅信号S3が、直流信号であるか、正弦波信号であるか、正弦波信号についての整流信号であるかを判別する(すなわち、選択信号S2として選択されている入力信号S1が、直流信号であるか、正弦波信号であるか、正弦波信号についての整流信号であるかを判別する(信号種類を判別する))。なお、算出した入力信号S1についての平均値Nmeanおよび実効値Nrmsが、記憶部7から読み出した上記の判別式(1),(2),(3)のうちのいずれの判別式を満たすかを検出することにより、選択信号S2として選択されている入力信号S1の信号種類を判別するようにしてもよい。
【0037】
具体的には、処理部6は、実効値Nrmsおよび平均値Nmeanが判別式(1)を満たすことを検出したときには、増幅信号S3(すなわち、選択信号S2として選択されている入力信号S1)は図2に示すような直流信号であると判別する。また、処理部6は、実効値Nrmsおよび平均値Nmeanが判別式(2)を満たすことを検出したときには、増幅信号S3(すなわち、選択信号S2として選択されている入力信号S1)は図3に示すような正弦波信号であると判別する。また、処理部6は、実効値Nrmsおよび平均値Nmeanが判別式(3)を満たすことを検出したときには、増幅信号S3(すなわち、選択信号S2として選択されている入力信号S1)は図4または図5に示すような整流信号であると判別する。
【0038】
この判別処理での結果、処理部6は、増幅信号S3(すなわち、選択信号S2として選択されている入力信号S1)が直流信号であると判別したとき、および整流信号であると判別したときには、すなわち、増幅信号S3(すなわち、選択信号S2である入力信号S1)が正弦波信号ではないと判別したときには、算出した入力信号S1の平均値Nmeanを出力部8に出力して画面に表示させる。
【0039】
一方、判別処理での結果、処理部6は、増幅信号S3(すなわち、選択信号S2として選択されている入力信号S1)が正弦波信号であると判別したときには、交流成分信号S4(ACカップリング部2において直流成分が除去された入力信号S1)が選択信号S2として出力されるように信号選択部3に対する制御処理を実行する。また、処理部6は、この状態においてA/D変換部5から出力される波形データD1に基づいて増幅信号S3の瞬時値を算出すると共に、算出した増幅信号S3の瞬時値に基づいて再算出処理を実行する。この再算出処理では、処理部6は、動作プログラム中に規定された平均値Nmeanを算出する公知の算出式および実効値Nrmsを算出する公知の算出式に、算出した増幅信号S3の瞬時値を代入することにより、増幅信号S3についての平均値Nmeanおよび実効値Nrmsを算出すると共に、算出した平均値Nmeanおよび実効値Nrmsに増幅部4の増幅率を乗算することにより、交流成分信号S4の実効値Nrmsを算出する。また、処理部6は、算出した交流成分信号S4についての実効値Nrmsを出力部8に出力して画面に表示させる。
【0040】
この場合、選択信号S2として選択されている交流成分信号S4はACカップリング部2において直流成分が除去された入力信号S1であるため、正弦波信号である入力信号S1に何らかの原因で若干の直流成分(本例では、Vmの1/5以下程度の直流成分)が重畳していたとしても、測定装置1は、この不要な直流成分を除去して、正弦波信号である本来の入力信号S1についての実効値Nrmsを精度良く算出することが可能になっている。
【0041】
このように、この測定装置1の処理部6が実行する信号種類判別方法、および測定装置1では、算出処理を実行して、選択信号S2である入力信号S1を増幅して得られる増幅信号S3の波形データD1についての平均値Nmeanおよび実効値Nrmsを算出し、この平均値Nmeanおよび実効値Nrmsが上記の判別式(1),(2),(3)のうちのいずれの判別式を満たすかを検出することにより、増幅信号S3(すなわち、選択信号S2として選択されている入力信号S1)が、直流信号であるか、正弦波信号であるか、正弦波信号についての整流信号であるかを判別する。
【0042】
したがって、この信号種類判別方法および測定装置1によれば、増幅信号S3についての平均値Nmeanおよび実効値Nrmsだけで入力信号S1の種類を判別することができるため、従来の信号種類判別方法では必要な増幅信号S3の交流成分についての振幅の測定(算出)を省くことができることから、その分だけ処理部6での演算量を抑制しつつ(処理部6の負荷を軽減しつつ)、入力信号S1の種類を判別することができる。
【0043】
また、この測定装置1では、処理部6は、増幅信号S3(すなわち、選択信号S2として選択されている入力信号S1)が正弦波信号であると判別したときに、信号選択部3に対する制御処理を実行して、交流成分信号S4(ACカップリング部2において直流成分が除去された入力信号S1)を選択信号S2として出力させると共に、再算出処理を実行して交流成分信号S4の実効値Nrmsを算出する。したがって、この測定装置1によれば、正弦波信号である入力信号S1に何らかの原因で若干の直流成分が重畳していたとしても、この不要な直流成分を除去して、正弦波信号である本来の入力信号S1についての実効値Nrmsを精度良く算出することができる。
【0044】
なお、上記の測定装置1では、増幅率を多段階に変更可能に構成された増幅部4をA/D変換部5の前段に配置する構成を採用しているが、入力信号S1が狭い電圧範囲に亘る信号であって、A/D変換部5の入力定格に合致したレベルの信号であるときには、入力信号S1を増幅部4で増幅してA/D変換部5の入力定格に合致させる必要が無いことから、増幅部4を省略する構成を採用することもできる。この構成を採用したときには、選択信号S2として選択された入力信号S1が第1信号としてA/D変換部5に入力される。
【0045】
また、入力信号S1が正弦波信号のときに直流成分の重畳の可能性が殆どない場合には、入力信号S1を常に選択信号S2として増幅部4に入力する構成を採用することができるため、ACカップリング部2および信号選択部3を省いて測定装置1を構成することもできる。また、入力信号S1が狭い電圧範囲に亘る正弦波信号であって、かつ直流成分の重畳の可能性が殆どない場合には、ACカップリング部2、信号選択部3および増幅部4を省いて測定装置1を構成することもできる。この構成では、入力信号S1は常に第1信号としてA/D変換部5に入力される。
【符号の説明】
【0046】
1 測定装置
5 A/D変換部
6 処理部
D1 波形データ
mean 平均値
rms 実効値
S1 入力信号
S3 増幅信号
図1
図2
図3
図4
図5