(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、車両のフロントガラス内面には、後方を視認するためのインナーミラーが取り付けられている。一般に、インナーミラーは、フロントガラス内面に固着されたステーの先端部に対して角度調整可能に揺動機構を介して取り付けられる。
【0003】
また、車両のフロントガラス内面には、例えばオートワイパーの雨滴感知センサーや、前方撮影用カメラ、各種信号の送受信器等の車載機器が取り付けられる場合がある(例えば、特許文献1、2参照)。このような車載機器は、乗員の前方視界の妨げにならないようにフロントガラスの上部中央に配置されるので、インナーミラーの配設位置と同じような位置に配置されることになる。
【0004】
特許文献1では、複数の車載機器を車室内側から覆うカバーをフロントガラス内面に設けており、このカバーによってインナーミラーのステーの基端部も覆われている。カバーは、車両左右方向の中央部において、インナーミラーのステーを左右両側から挟むように、左右に分割されている。
【0005】
また、特許文献2も、複数の車載機器及びステーの基端部を覆うカバーを設けている。特許文献2のカバーは、車両前側部分が下方へ膨出するように形成されており、前側部分が他の部分から分離する分割構造となっている。
【0006】
特許文献1、2のカバーのように、分割構造とすることで、インナーミラーのステーとの干渉を回避しながら、ステーの基端部を車載機器と一緒に覆うことができるようにカバーを取り付けることが可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1、2では、インナーミラーを、ステーを介してフロントガラスに取り付け、しかも、車載機器及びステーの基端部を覆うカバーを設けているので、ステー及びカバーを設けることによる部品点数の増加は避けられない。特に、カバーを分割しなければならないのでカバーを構成する部品点数が増え、トータルとしての部品点数はより一層増加することになる。
【0009】
また、カバーは車室内の上部に配置されて下方へ膨出するような形状となるため目立つものであるが、特許文献1、2のように分割構造とした場合にはカバーを構成する部材同士の合わせ部が見えてしまい、見栄えが非常に悪いという問題がある。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、フロントガラス内面に取り付けられた車載機器を覆うカバーを設ける場合に、部品点数を削減するとともに、見栄えを良好にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明では、カバーにインナーミラーを取り付けることができるようにしてインナーミラーのステーを省略した。
【0012】
第1の発明は、
車両のフロントガラス内面に取り付けられた車載機器を覆うカバーと、
車室内に配設され、後方を視認するためのインナーミラーとを備え、
上記カバーには、車室内側へ突出する閉断面の突出筒部が設けられ、
上記突出筒部の突出方向先端部には、該突出筒部の基端部へ向けて窪むように湾曲する湾曲板部からなるピボット受け部が一体成形され、
上記湾曲板部の中央部には、車両後側へ突出する固定筒部が一体成形され、該固定筒部の外周面には、係合突部が径方向に突出するように形成され、
上記インナーミラーには、該インナーミラーを揺動させるためのピボットが、車両前側へ膨出し、上記湾曲板部に対し車両後側から接触して摺動可能に設けられ、
上記ピボットの中央部には、上記固定筒部が挿入される開口部が該固定筒部の外径よりも大きく形成され、
上記ピボットの車両後側には、固定金具が設けられ、
上記固定金具には、上記固定筒部が挿入される貫通孔が形成され、上記係合突部が上記貫通孔の周縁部に係合して上記ピボットが上記湾曲板部と上記固定金具とで挟持されることにより、上記インナーミラーが上記カバーに取り付けられていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、インナーミラーをカバーの取付部に取り付けることができるので、従来例のフロントガラスに固着されるステーを省略することが可能になる。このため、カバーがステーを覆わなくてもよくなるので、カバーの分割構造は不要になる。これにより、部品点数が削減されるとともに、車室内にカバーの構成する部材同士の合わせ部が見えることはない。
【0014】
また、インナーミラーのピボットをカバーのピボット受け部で受けることで、インナーミラーの角度調整が可能になる。このピボット受け部がカバーに一体成形されているので、部品点数が少なくて済む。
【0015】
また、突出筒部の閉断面構造によって取付部近傍の強度が十分に確保されるので、インナーミラーの取り付け強度が高まる。
【0016】
第2の発明は、第1の発明において、
上記
湾曲板部及び上記固定筒部は、上記カバーに一体成形されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、部品点数がより一層低減される。また、インナーミラーの組み付け工数も低減される
。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明によれば、車両のフロントガラス内面に取り付けられた車載機器を覆うカバーにインナーミラーの取付部を設けたので、部品点数を削減できるとともに、見栄えを良好にすることができる。
【0019】
また、カバーに、インナーミラーのピボット外面を受けるピボット受け部を一体成形したので、インナーミラーの角度調整を行うための構造を、部品点数の増加を招くことなく、得ることが可能になる。
【0020】
また、閉断面の突出筒部に取付部を設けたので、インナーミラーの取り付け強度を高めることができる。
【0021】
第2の発明によれば、インナーミラーの取付部をカバーに一体成形したので、部品点数及び組み付け工数をより一層低減することができる
。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用インナーミラー構造Aの分解斜視図である。車両用インナーミラー構造Aは、自動車等の車両の車室内においてフロントガラスGの内面に配設されるものである。
図3にも示すように、車両用インナーミラー構造Aは、車両のフロントガラスGの内面に取り付けられた車載機器1(
図2に示す)を覆うカバー10と、後方を視認するためのインナーミラー20とを備えている。
【0025】
尚、この実施形態の説明では、説明の便宜を図るために、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」といい、車両左側を単に「左」といい、車両右側を単に「右」というものとする。
【0026】
上記車載機器1は、例えば、オートワイパーの雨滴感知センサー、車両前方を撮影するための前方撮影用カメラ、各種信号の送受信器等であり、この車両では、複数の車載機器1がフロントガラスGの内面における上部の左右方向中央部に設けられている。車載機器1は、ブラケット2に固定されている。ブラケット2は、フロントガラスGの内面に対して接着等の方法によって固着されている。
【0027】
カバー10は、複数の車載機器1及びブラケット2をまとめて覆うことができるように形成されており、樹脂成形品である。
図4〜
図8にも示すように、カバー10は、本体板部11を備えている。本体板部11は、フロントガラスGの内面から車室内側へ所定距離だけ離れて配置されており、この本体板部11とフロントガラスGとの間に、車載機器1及びブラケット2が位置している。本体板部11は、前側へ行くほど下に位置するようにフロントガラスGの内面と略同方向に傾斜している。また、本体板部11は、全体的に車室内側へ向けて湾曲している。本体板部11の幅(左右方向の長さ)は、下側へ行くほど狭くなっている。
【0028】
本体板部11の周縁部には、該本体板部11の周方向に連続する周壁部12が設けられている。周壁部12は、フロントガラスGの内面へ向けて突出しており、突出方向先端部がフロントガラスGの内面に当接ないし近接するようになっている。図示しないが、周壁部12の内面に、ブラケット2の外周部が係合するようになっており、周壁部12とブラケット2とを係合させることにより、カバー10がフロントガラスGに取り付けられた状態になる。
【0029】
周壁部12の上部及び下部は左右方向に延びている。周壁部12の左側部分及び右側部分は、本体体部11の左右両縁部の形状に対応して下側へ行くほど左右方向中央に近づくように延びている。周壁部12の上部には切欠部12aが形成されている。この切欠部12aは、車載機器1に接続されるハーネス(図示せず)を通すためのものである。
【0030】
本体板部11の上側寄りの部位において左右方向中央部には、車室内側へ突出する閉断面の突出筒部13が設けられている。突出筒部13は、本体板部11に一体成形されているが、別部材として本体板部11に固定することもできる。
【0031】
突出筒部13は、この実施形態では略円筒形状とされているが、これに限られるものではなく、楕円形断面を有する筒部であってもよいし、多角形断面を有する筒部であってもよい。突出筒部13の断面形状は基端部(本体板部11側の端部)が最も大きく、突出方向先端部へ向かって徐々に小さくなっている。
【0032】
突出筒部13の突出方向先端部には、該突出筒部13の先端部を覆うように湾曲板部14が一体成形されている。この湾曲板部14は、後述するインナーミラー20のピボット23d外面を受けるピボット受け部である。湾曲板部14は、突出筒部13の基端部へ向けて窪むように湾曲する円弧面で構成されている。
【0033】
湾曲板部14の中央部には、インナーミラー20を固定するための固定筒部15が一体成形されている。湾曲板部14と固定筒部15とによってインナーミラー20を取り付けるための取付部16が構成される。固定筒部15は、湾曲板部14の中央部から突出筒部13の突出方向に沿う方向に突出する円筒形状である。固定筒部15の内部は、カバー10の内外方向に貫通しており、この固定筒部15の内部には、例えばインナーミラー20に接続されるハーネス(図示せず)を挿通させることが可能となっている。
【0034】
固定筒部15の突出方向先端部は、突出筒部13の先端部の内方に位置するようになっている。この固定筒部15の外周面には、係合突部15aが径方向に突出するように形成されている。係合突部15aは、固定筒部15の先端側に形成されている。
【0035】
図1に示すように、インナーミラー20は、ミラー21と、プレート22と、ハウジング23とを備えている。ミラー21は、左右方向に長い形状である。プレート22は、ミラー21の裏面に貼り付けられるものであり、これも左右方向に長い形状である。ハウジング23は、左右方向に長い前板部23aと、前板部23aの周縁部から後側へ突出して該前板部23aの周縁部に沿って延びる周壁部23bとを備えている。周壁部23bの内方にプレート22が収容された状態で、ミラー21の周縁部が周壁部23bの内周面に嵌合してミラー21がハウジング23に取り付けられるようになっている。
【0036】
ハウジング23の周壁部23bの下部には、開口部23cが形成されている。この開口部23cは、インナーミラー20が有するレバー26を取り付けるためのものである。
【0037】
また、
図3に示すように、ハウジング23の前板部23aの中央部には、ピボット23dが設けられている。このピボット23dは、ハウジング23の外方、即ち、前側へ向けて膨出するように湾曲した円弧面で構成されており、その曲率は、カバー10の湾曲板部14と略同じに設定されている。ピボット23dの外面は、カバー10の湾曲板部14に接触した状態で摺動可能となっている。
図2に示すように、ピボット23dの中央部には、開口部23eが形成されている。この開口部23eに固定筒部15が挿入されるようになっている。ピボット23dの開口部23eは、固定筒部15の外径よりも十分に大きくなっており、インナーミラー20を傾動させる際に固定筒部15がピボット23dの開口部23eの周縁部に接触しないようになっている。
【0038】
また、
図1に示すように、インナーミラー20は、固定金具25を備えている。
図2に示すように、固定金具25は、ハウジング23の内部においてプレート22と前板部23aとの間に収容され、具体的には、ピボット23dの内方に位置している。固定金具25は、ピボット23dの内面に沿うように湾曲形成されている。
図1に示すように、固定金具25の外周側には、複数のスリット25aが形成されている。
図2に示すように、固定金具25の中央部には、固定筒部15が挿入される貫通孔25bが形成されている。また、貫通孔25bの周縁部には、
図3に示すように複数の切欠部25cが周方向に間隔をあけて形成されている。貫通孔25bに固定筒部15が挿入された状態で、貫通孔25bの周縁部に係合突部15aが係合するようになっている。この状態で、インナーミラー20のハウジング23のピボット23dが、カバー10の湾曲板部14と固定金具25とで挟持され、インナーミラー20がカバー10に取り付けられた状態となる。
【0039】
カバー10の湾曲板部14がインナーミラー20のピボット23dを受けているので、インナーミラー20を手で持って力を加えることで、インナーミラー20を湾曲板部14に沿って傾動させることができる。インナーミラー20の傾動は、上下方向、左右方向の他、斜め方向にも可能である。
【0040】
上記のように構成された車両用インナーミラー構造AをフロントガラスGに取り付ける場合には、インナーミラー20を予め取り付けておいたカバー10をフロントガラスGに取り付けるようにする。このとき、カバー10をフロントガラスGに接着してもよい。
【0041】
車両用インナーミラー構造AをフロントガラスGに取り付けると、カバー10によって全ての車載機器1が覆われるとともに、インナーミラー20が車室の所定位置に取り付けられる。
【0042】
以上説明したように、この実施形態に係る車両用インナーミラー構造Aによれば、インナーミラー20をカバー10の取付部16に取り付けることができるので、従来例のフロントガラスGに固着されるステーを省略することができる。このため、カバー10がステーを覆わなくてもよくなるので、カバー10の分割構造は不要になる。これにより、部品点数を削減して低コスト化を図ることができるとともに、カバーを構成する部材同士の合わせ部が車室内に見えることはないので、見栄えを良好にすることができる。
【0043】
また、インナーミラー20の取付部16をカバー10に一体成形したので、部品点数及び組み付け工数をより一層低減することができる。
【0044】
また、カバー10に、インナーミラー20のピボット23d外面を受ける湾曲板部14を一体成形したので、インナーミラー20の角度調整を行うための構造を、部品点数の増加を招くことなく、得ることが可能になる。
【0045】
また、閉断面の突出筒部13に取付部16を設けたので、インナーミラー20の取り付け強度を高めることができる。
【0046】
また、取付部16の形状は上記した形状に限られるものではなく、インナーミラーを取り付けることができる形状であればよい。また、図示しないが、インナーミラー20のハウジング23を省略して、ミラー21をカバー10に直接取り付けるようにしてもよい。この場合、ミラー21が嵌合する嵌合部(例えば嵌合孔等)を取付部としてカバー10に形成すればよい。
【0047】
尚、図示しないが、例えば自動防眩機能をミラー21に付加する場合には、ミラー21側から延びるハーネスを固定筒部15の内部に挿入することができる。
【0048】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。