特許第6341830号(P6341830)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6341830
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】車両用視認装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 1/074 20060101AFI20180604BHJP
【FI】
   B60R1/074
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-210114(P2014-210114)
(22)【出願日】2014年10月14日
(65)【公開番号】特開2016-78555(P2016-78555A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】遠山 弘幸
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−142349(JP,U)
【文献】 特開2007−263282(JP,A)
【文献】 特表2006−527340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/06−1/078
F16F 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側に設けられる支持体と、
前記支持体に回動可能に支持され、車両の乗員の視認を補助する視認手段と、
前記支持体側に設けられる係合部と、
前記視認手段側に設けられる回動部と、
隙間が設けられると共に、前記隙間を縮小されて付勢力を発生し、付勢力により前記係合部を前記回動部に係合させることで前記視認手段の回動が制限されると共に、付勢力に抗して前記係合部の前記回動部への係合が解除されることで前記視認手段が回動を許容されて格納されるコイルスプリングと、
帯状にされると共に、前記コイルスプリングに外周側のみから貼付けられて前記コイルスプリングの前記隙間を挟む一側部分と他側部分との間に設けられ、前記コイルスプリングが付勢力により前記係合部に前記回動部を係合させた際に発生する音を減衰させる減衰部材と、
を備えた車両用視認装置。
【請求項2】
前記減衰部材が前記隙間に侵入する請求項1記載の車両用視認装置。
【請求項3】
前記減衰部材を前記コイルスプリングの付勢方向における全ての前記隙間に対し設ける請求項1又は請求項2記載の車両用視認装置。
【請求項4】
前記減衰部材を前記隙間全体に対し設ける請求項1〜請求項3の何れか1項記載の車両用視認装置。
【請求項5】
前記減衰部材を前記コイルスプリングに前記コイルスプリング付勢方向に交差する方向に設ける請求項1〜請求項4の何れか1項記載の車両用視認装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の乗員の視認を視認手段が補助する車両用視認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の自動車用ドアミラー装置では、コイルスプリングが付勢力によりベースプレート側のクラッチ(クラッチ溝)をミラー側のメインギヤ(クラッチ爪)に係合させることで、ミラーの回動が制限される。さらに、コイルスプリングの付勢力に抗してクラッチ(クラッチ溝)のメインギヤ(クラッチ爪)への係合が解除されることで、ミラーの回動が許容される。
【0003】
ここで、この自動車用ドアミラー装置では、クラッチ(クラッチ溝)のメインギヤ(クラッチ爪)への係合が解除された状態から、コイルスプリングが付勢力によりクラッチ(クラッチ溝)をメインギヤ(クラッチ爪)に係合させた際に、音が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−85470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、コイルスプリングが付勢力により係合部を回動部に係合させた際に発生する音を減衰させることができる車両用視認装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の車両用視認装置は、車体側に設けられる支持体と、前記支持体に回動可能に支持され、車両の乗員の視認を補助する視認手段と、前記支持体側に設けられる係合部と、前記視認手段側に設けられる回動部と、隙間が設けられると共に、前記隙間を縮小されて付勢力を発生し、付勢力により前記係合部を前記回動部に係合させることで前記視認手段の回動が制限されると共に、付勢力に抗して前記係合部の前記回動部への係合が解除されることで前記視認手段が回動を許容されて格納されるコイルスプリングと、帯状にされると共に、前記コイルスプリングに外周側のみから貼付けられて前記コイルスプリングの前記隙間を挟む一側部分と他側部分との間に設けられ、前記コイルスプリングが付勢力により前記係合部に前記回動部を係合させた際に発生する音を減衰させる減衰部材と、を備えている。
【0007】
請求項2に記載の車両用視認装置は、請求項1に記載の車両用視認装置において、前記減衰部材が前記隙間に侵入している。
【0008】
請求項3に記載の車両用視認装置は、請求項1又は請求項2に記載の車両用視認装置において、前記減衰部材を前記コイルスプリングの付勢方向における全ての前記隙間に対し設けている。
【0009】
請求項4に記載の車両用視認装置は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車両用視認装置において、前記減衰部材を前記隙間全体に対し設けている。
【0010】
請求項5に記載の車両用視認装置は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の車両用視認装置において、前記減衰部材を前記コイルスプリングに前記コイルスプリング付勢方向に交差する方向に設けている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の車両用視認装置では、車体側に支持体が設けられると共に、支持体に視認手段が回動可能に支持されており、視認手段が車両の乗員の視認を補助する。また、支持体側に係合部が設けられると共に、視認手段側に回動部が設けられており、コイルスプリングが付勢力により係合部を回動部に係合させることで、視認手段の回動が制限される。さらに、コイルスプリングの付勢力に抗して係合部の回動部への係合が解除されることで、視認手段が回動を許容されて格納される。
【0012】
ところで、コイルスプリングが付勢力により係合部を回動部に係合させた際に、音が発生する。
【0013】
ここで、コイルスプリングに隙間が設けられており、減衰部材が、コイルスプリングの隙間を挟む一側部分と他側部分との間に設けられて、当該音を減衰させる。このため、当該音を減衰させることができる。
【0014】
請求項2に記載の車両用視認装置では、減衰部材がコイルスプリングの隙間に侵入している。このため、当該音を効果的に減衰させることができる。
【0015】
請求項3に記載の車両用視認装置では、減衰部材がコイルスプリングの付勢方向における全ての隙間に対し設けられている。このため、当該音を効果的に減衰させることができる。
【0016】
請求項4に記載の車両用視認装置では、減衰部材がコイルスプリングの隙間全体に対し設けられている。このため、当該音を効果的に減衰させることができる。
【0017】
請求項5に記載の車両用視認装置では、減衰部材がコイルスプリングコイルスプリング付勢方向に交差する方向に設けられている。このため、減衰部材をコイルスプリングの隙間を挟む一側部分と他側部分との間に容易に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る車両用ドアミラー装置を示す車両後方から見た正面図である。
図2】本発明の実施形態に係る車両用ドアミラー装置における格納機構を示す車両後方から見た正面図である。
図3】本発明の実施形態に係る車両用ドアミラー装置における格納機構を示す車両後方から見た断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る車両用ドアミラー装置における格納機構を示す上方から見た断面図(図2の4−4線断面図)である。
図5】本発明の実施形態に係る車両用ドアミラー装置における格納機構のギアプレート及びクラッチプレートを示す平面図である。
図6】(A)及び(B)は、本発明の実施形態に係る車両用ドアミラー装置における格納機構のギアプレート及びクラッチプレートを示す断面図であり、(A)は、ギアプレートとクラッチプレートとの係合状態を示す図(図5の6−6線断面図)であり、(B)は、ギアプレートとクラッチプレートとの係合解除状態を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る車両用ドアミラー装置における格納機構のコイルスプリング及びブチルテープを示す分解斜視図である。
図8】実験例の測定結果を示す表である。
図9】実験例の測定結果を示すグラフである。
図10】実験例における発生音の周波数特性についての測定結果を示すグラフである。
図11】実験例における発生音の時間軸波形についての測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1には、本発明の実施形態に係る車両用視認装置としての車両用ドアミラー装置10が車両後方から見た正面図にて示されている。なお、図面では、車両前方を矢印FRで示し、車幅方向外方(車両右方)を矢印OUTで示し、上方を矢印UPで示している。
【0020】
本実施形態に係る車両用ドアミラー装置10は、車両のドアとしてのサイドドア(特にフロントサイドドア)の上下方向中間部かつ車両前側端に設けられて、車両外側に配置されている。
【0021】
図1に示す如く、車両用ドアミラー装置10は、設置部材としてのステー12を備えており、ステー12の車幅方向内側端がサイドドア(車体側)に固定されることで、車両用ドアミラー装置10がサイドドアに設置されている。
【0022】
ステー12の車幅方向外側部分の上側には、回動機構としての格納機構14(電動格納機構、リトラクタ)が支持されている。
【0023】
図2図4にも示す如く、格納機構14には、支持体としてのスタンド16が設けられている。スタンド16の下端には、略円板状の固定部16Aが設けられており、固定部16Aがステー12に固定されることで、スタンド16がステー12に固定されて、格納機構14がステー12に支持されている。固定部16Aの上側には、略円筒状の支持軸16Bが一体に設けられており、支持軸16Bの軸方向は、上下方向に配置されている。
【0024】
支持軸16Bには、回動体18が回動可能に支持されている。
【0025】
回動体18の下側部分には、回動部材としての樹脂製で容器状のケース20が設けられており、ケース20の上面は、開放されている。ケース20の下壁の車幅方向内側部分には、スタンド16の支持軸16Bが貫通かつ嵌合されており、ケース20は、支持軸16Bに回動可能に支持されている。
【0026】
ケース20の上部内には、組付部材としての樹脂製のモータベース22が固定されている。モータベース22の車幅方向内側部分には、略円筒状の収容筒22Aが設けられており、収容筒22A内には、スタンド16の支持軸16Bが同軸上に収容されている。モータベース22の車幅方向外側部分には、略矩形板状の底壁22Bが設けられており、底壁22Bは、収容筒22Aの下端部と一体にされている。底壁22Bの上面には、略楕円筒状の組付筒22Cが一体に設けられており、組付筒22Cは、底壁22Bから上側に突出されている。
【0027】
ケース20及びモータベース22の上側には、被覆部材としての樹脂製で容器状のカバー24が設けられており、カバー24の下面は、開放されている。カバー24の下端は、ケース20の上端部外周に固定されており、カバー24は、ケース20及びモータベース22の上側を被覆している。
【0028】
格納機構14内には、駆動手段としてのモータ26が設けられている。モータ26には、略楕円柱状の本体部26Aが設けられており、本体部26Aは、モータベース22の組付筒22C内に上側から組付けられて固定されている。本体部26Aからは、金属製の出力軸26B(モータシャフト)が同軸上に延出されている。出力軸26Bの軸方向は、上下方向に配置されており、出力軸26Bは、モータベース22の底壁22Bを貫通して、モータベース22の下側に延出されている。また、モータ26が駆動されて、出力軸26Bが回転されることで、格納機構14が作動される。
【0029】
ケース20内には、ギア機構28が設けられている。
【0030】
ギア機構28には、モータ26の下側において、初段ギアとしての樹脂製のウォームギア30が設けられており、ウォームギア30は、軸方向が上下方向に配置されると共に、下部がケース20の下壁に回転自在に支持されている。ウォームギア30には、上側からモータ26の出力軸26Bが同軸上に挿入されており、出力軸26Bが回転されることで、ウォームギア30が出力軸26Bと一体に回転される。
【0031】
ギア機構28には、ウォームギア30の車幅方向内側において、中間ギアとしてのウォームシャフト32が設けられており、ウォームシャフト32は、軸方向が水平方向に配置されると共に、ケース20の下壁に回転自在に支持されている。ウォームシャフト32の一端側部分(車両後側部分)には、樹脂製のヘリカルギア部32Aが同軸上に設けられており、ウォームシャフト32の他端側部分(車両前側部分)には、ウォームとしての金属製のウォームギア部32Bが同軸上に設けられている。ヘリカルギア部32Aは、ウォームギア30に噛合されており、ウォームギア30が回転されることで、ヘリカルギア部32A及びウォームギア部32Bが一体に回転されて、ウォームシャフト32が回転される。
【0032】
ギア機構28には、ウォームシャフト32の車幅方向内側において、回動部(最終ギア)としての金属製のギアプレート34(ウォームホイール)が設けられている。ギアプレート34には、スタンド16の支持軸16Bが同軸上に貫通されており、ギアプレート34は、支持軸16Bに回転(回動)自在に支持されると共に、ケース20の下壁に下側から支持されている。
【0033】
図5に詳細に示す如く、ギアプレート34の上面には、平面視円状の凹部34Aが同軸上に形成されており、凹部34Aは、上側に開放されている。凹部34Aの下面には、被係合部位としての節度凹部34B(図6(A)参照)が複数(本実施形態では4個)形成されており、複数の節度凹部34Bは、ギアプレート34の周方向に等間隔に配置されている。節度凹部34Bは、断面逆台形状にされており、節度凹部34Bの両側面は、それぞれ節度凹部34Bのギアプレート34周方向外側へ向かうに従い上側へ向かう方向に傾斜されている。
【0034】
ギアプレート34の上側には、係合部としての金属製で略円筒状のクラッチプレート36が設けられている。クラッチプレート36には、スタンド16の支持軸16Bが同軸上に貫通されており、クラッチプレート36は、支持軸16Bに回転不能に支持されると共に、支持軸16Bに対し上下方向に移動可能にされて、ギアプレート34の凹部34A内に嵌入されている。
【0035】
クラッチプレート36の下面には、係合部位としての節度凸部36A(図6(A)参照)が複数(本実施形態では4個)形成されており、複数の節度凸部36Aは、クラッチプレート36の周方向に等間隔に配置されている。節度凸部36Aは、断面逆台形状にされており、節度凸部36Aの両側面は、それぞれ節度凸部36Aのクラッチプレート36周方向内側へ向かうに従い下側へ向かう方向に傾斜されている。節度凸部36Aの断面形状は、ギアプレート34の節度凹部34Bの断面形状に対し、僅かに小さい相似形状にされており、節度凸部36Aが節度凹部34Bに挿入されることで、クラッチプレート36の下面がギアプレート34の凹部34A下面に接触(面接触)されている。
【0036】
クラッチプレート36の上側には、付勢手段としての金属製で螺旋棒状のコイルスプリング38が設けられており、コイルスプリング38内には、スタンド16の支持軸16Bが同軸上に挿入されている。コイルスプリング38の外周部には、隙間38Aが螺旋状に形成されており、隙間38Aは、コイルスプリング38の軸方向(付勢方向)において、所定数配置されている。
【0037】
図7に詳細に示す如く、コイルスプリング38の外周には、減衰部材としての帯状のブチルテープ40が貼付けられており(接着されており)、ブチルテープ40は、弾性及び粘性を有する軟質のブチル製にされて、制振性能を有している。ブチルテープ40は、コイルスプリング38にコイルスプリング38の周方向(軸方向に垂直な方向(交差する方向))に沿って巻付けられており、ブチルテープ40は、コイルスプリング38の隙間38Aより上側部分と下側部分とに掛渡されると共に、隙間38Aの全体に配置されている。ブチルテープ40は、隙間38A内に侵入されており、ブチルテープ40は、コイルスプリング38の隙間38Aより上側部分と下側部分とに挟まれている(図3参照)。
【0038】
コイルスプリング38の上側には、係止部材としての略円環板状のプッシュナット42が設けられており、プッシュナット42は、スタンド16の支持軸16Bに同軸上に固定されている。プッシュナット42は、コイルスプリング38を下側に押圧して圧縮させており、コイルスプリング38は、クラッチプレート36を下側に付勢している。このため、コイルスプリング38は、付勢力により、クラッチプレート36をギアプレート34に係合させて、クラッチプレート36の節度凸部36Aがギアプレート34の節度凹部34Bに挿入された状態を保持しており、ギアプレート34の回転がクラッチプレート36によって制限されている。
【0039】
ギアプレート34には、ウォームシャフト32のウォームギア部32Bが噛合されており、これにより、ウォームギア部32Bのギアプレート34回りの回動が係止されて、回動体18のギアプレート34に対する回動が係止されている。上述の如く、ウォームギア部32Bが回転される際には、ウォームギア部32Bがギアプレート34の回りを回動されることで、回動体18がウォームギア部32Bと一体にギアプレート34に対し回動される。
【0040】
図1に示す如く、回動体18は、収容部材としての略直方体形容器状のバイザ44の車幅方向内側部分内に収容されており、バイザ44の車両後側面は、開放されている。バイザ44内には、車両後側面(開放部分)近傍において、視認手段としての略矩形板状のミラー46が配置されており、バイザ44は、ミラー46の全周及び車両前側面を被覆している。
【0041】
バイザ44及びミラー46は、回動体18に連結されて支持されており、バイザ44及びミラー46は、回動体18と共に、サイドドアに対して突出されて、起立(展開)されている。ミラー46の鏡面46Aは、車両後側へ向けられており、これにより、ミラー46が、車両の乗員(特に運転手)の車両後側の視認を可能にして、乗員の視認を補助している。また、バイザ44及びミラー46は、回動体18と一体にスタンド16の支持軸16Bの回りを回動可能にされている。
【0042】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0043】
以上の構成の車両用ドアミラー装置10では、格納機構14において、コイルスプリング38が付勢力によりクラッチプレート36をギアプレート34に係合させており(クラッチプレート36の節度凸部36Aがギアプレート34の節度凹部34Bに挿入された状態を保持しており)、クラッチプレート36に対するギアプレート34の後倒方向(図4等の矢印Aの方向)及び前倒方向(図4等の矢印Bの方向)への回転が制限されて、回動体18、バイザ44及びミラー46の後倒方向(後格納方向)及び前倒方向(前格納方向)への回転が制限されている。
【0044】
格納機構14が作動される際には、モータ26が駆動されることで、出力軸26Bが回転される。このため、ギア機構28において、ウォームギア30が出力軸26Bと一体に回転されて、ウォームシャフト32(ヘリカルギア部32A及びウォームギア部32B)が回転されることで、ウォームギア部32Bがギアプレート34の回りを回動されて、回動体18、バイザ44及びミラー46がウォームギア部32Bと一体にギアプレート34に対し回動される。
【0045】
モータ26が駆動されて、出力軸26Bが一方向へ回転される際には、ウォームギア部32Bがギアプレート34の回りを後倒方向へ回動されて、回動体18、バイザ44及びミラー46が後倒方向(車両後側かつ車幅方向内側)へ回動される。これにより、回動体18、バイザ44及びミラー46が、サイドドアに対する突出を解除されて、格納(後格納)される。
【0046】
その後、モータ26が駆動されて、出力軸26Bが他方向へ回転される際には、ウォームギア部32Bがギアプレート34の回りを前倒方向へ回動されて、回動体18、バイザ44及びミラー46が前倒方向(車両前側かつ車幅方向外側)へ回動される。これにより、回動体18、バイザ44及びミラー46が、サイドドアに対して突出されて、起立(復帰)される。
【0047】
また、バイザ44及びミラー46の少なくとも一方に後倒方向及び前倒方向の一方への高荷重の外力が作用される際には、回動体18のウォームギア部32Bからギアプレート34に後倒方向及び前倒方向の一方への高荷重の回転力が入力される。このため、コイルスプリング38の付勢力に抗して、クラッチプレート36が上側に移動されつつ、クラッチプレート36のギアプレート34への係合が解除されて(節度凸部36Aの節度凹部34Bへの挿入が解除されて)、節度凸部36Aの下側にギアプレート34の凹部34A下面が配置されることで(図6(B)参照)、クラッチプレート36に対するギアプレート34の後倒方向及び前倒方向の一方への回転が許容されて、回動体18、バイザ44及びミラー46の後倒方向及び前倒方向の一方への回動が許容される。
【0048】
その後、バイザ44及びミラー46の少なくとも一方に後倒方向又は前倒方向への外力が作用される際、又は、モータ26が駆動されてウォームギア部32Bが回転される際には、ウォームギア部32Bからギアプレート34に後倒方向又は前倒方向への回転力が入力される。このため、クラッチプレート36に対しギアプレート34が後倒方向又は前倒方向に回転されて、コイルスプリング38が付勢力によりクラッチプレート36を下側に移動させつつギアプレート34に係合させる(節度凸部36Aを節度凹部34Bに挿入する)ことで(図6(A)参照)、クラッチプレート36に対するギアプレート34の後倒方向及び前倒方向への回転が制限されて、回動体18、バイザ44及びミラー46の後倒方向及び前倒方向への回転が制限される。
【0049】
ところで、上述の如く、クラッチプレート36に対しギアプレート34が後倒方向又は前倒方向に回転されて、コイルスプリング38が付勢力によりクラッチプレート36を下側に移動させつつギアプレート34に係合させる(節度凸部36Aを節度凹部34Bに挿入する)際には、コイルスプリング38の付勢力により金属製のクラッチプレート36(特に下面)が金属製のギアプレート34(特に凹部34Aの下面)に衝突する衝突音が発生すると共に、当該衝突音が金属製のコイルスプリング38に伝達されて残響音が発生する。
【0050】
ここで、コイルスプリング38の外周にブチルテープ40が貼付けられており、ブチルテープ40が、コイルスプリング38の隙間38Aより上側部分と下側部分とに掛渡されて、コイルスプリング38の振動を抑制(吸収)する。このため、上記衝突音及び残響音を減衰させることができる。
【0051】
さらに、ブチルテープ40が、コイルスプリング38の隙間38A内に侵入されて、コイルスプリング38の隙間38Aより上側部分と下側部分とに挟まれている。このため、ブチルテープ40がコイルスプリング38の振動を効果的に抑制(吸収)でき、上記衝突音及び残響音を効果的に減衰させることができる。
【0052】
しかも、ブチルテープ40が、コイルスプリング38の軸方向における全ての隙間38Aに配置されるのみならず、コイルスプリング38の隙間38A全体に配置されている。このため、ブチルテープ40がコイルスプリング38の振動を一層効果的に抑制(吸収)でき、上記衝突音及び残響音を一層効果的に減衰させることができる。
【0053】
また、コイルスプリング38の外周部に隙間38Aが螺旋状に形成されており、ブチルテープ40がコイルスプリング38にコイルスプリング38の周方向に沿って巻付けられている。このため、ブチルテープ40をコイルスプリング38の隙間38Aより上側部分と下側部分とに容易に掛渡すことができる。
【0054】
(実験例)
本実験例では、上記ステー12及びブチルテープ40が設けられていない格納機構14(以下「非対策品」という)と、上記ステー12及び格納機構14(以下「対策品」という)と、について、上記衝突音及び残響音(以下「発生音」という)を測定した。
【0055】
測定場所は、暗騒音31.8dBの防音室とし、測定器は、騒音計として小野測器製のLA−5560を使用し、FFT(Fast Fourier Transform)アナライザとして小野測器製のDS0221を使用した。LA−5560では、周波数特性をA特性にし、動特性をFASTにし、測定レンジを非対策品で60dB以上120dB以下にすると共に対策品で40dB以上100dB以下にした。DS0221では、周波数レンジを20kHzにし、サンプリング数を4096にし、平均回数を50にし、Gap量を1にした。
【0056】
本実験例では、起立状態より後倒方向に回動されてクラッチプレート36のギアプレート34への係合(節度凸部36Aの節度凹部34Bへの挿入)が解除された回動体18を手動で前倒方向に回動させて起立状態に復帰させることで、コイルスプリング38の付勢力によりクラッチプレート36を下側に移動させつつギアプレート34に係合させて(節度凸部36Aを節度凹部34Bに挿入して)、発生音を発生させた。さらに、格納機構14の周面から水平方向に300mm離間させた位置に設置した騒音計によって発生音を測定した。
【0057】
図8に示す如く、本実験例では、非対策品と対策品とについて、発生音をr1、r2及びr3の3回発生させて測定した。なお、図8では、「Ave.」が平均値であり、「σ」が標準偏差である。
【0058】
図8及び図9に示す如く、非対策品では、発生音が高く大きくかつ長い。一方、対策品では、非対策品に対し、発生音の音圧レベルが約18dB減少し、発生音の90%減衰時間が1/3程度まで減少した。
【0059】
図10に示す如く、発生音の周波数特性については、対策品は非対策品に対し発生音の音圧レベルが全体的に低く、対策品は非対策品に対し発生音の周波数特性の形状が似ていて音圧レベルの低い側にオフセットされた形状になった。
【0060】
図11に示す如く、発生音の時間軸波形については、対策品は非対策品に対し、発生音の音圧が低いと共に、発生音の減衰時間が短くなった。
【0061】
ここで、格納機構14では、コイルスプリング38が付勢力によりクラッチプレート36を下側に移動させつつギアプレート34に係合させて発生音を発生するため、コイルスプリング38の振動が発生音に影響し易いと考えられる。このため、ブチルテープ40がコイルスプリング38の振動を抑制(吸収)することで、発生音の音圧を低くできると共に、発生音の減衰時間を短くできると考えられる。
【0062】
なお、上記実施形態では、ブチルテープ40をコイルスプリング38の隙間38A内に侵入させた。しかしながら、ブチルテープ40をコイルスプリング38の隙間38A内に侵入させなくてもよい。
【0063】
さらに、上記実施形態では、ブチルテープ40をコイルスプリング38の隙間38A全体に配置した。しかしながら、ブチルテープ40をコイルスプリング38の軸方向における全ての隙間38Aに配置すればよい。この場合、ブチルテープ40のコイルスプリング38周方向寸法は、例えば5mm以上が好ましい。
【0064】
また、上記実施形態では、減衰部材をブチルテープ40にした。しかしながら、減衰部材は、高分子物質であればよく、ゴム(天然ゴム又は合成ゴム)の他に、樹脂(酢酸ビニル系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、ポリエステル系樹脂又はポリイソブチレン系樹脂等)にしてもよい。しかも、減衰部材を高分子合成の際に生成物が不溶化するゲル状物質(オルガノゲル、ゲルゴム、ポリマー系ゲル、シリコン系ゲル又はフッ素イオン交換樹脂等)又は粘土にしてよい。
【0065】
さらに、上記実施形態では、減衰部材をブチルテープ40にして、コイルスプリング38の外周にブチルテープ40を貼付けた。しかしながら、減衰部材を減衰塗料(ウレタン系、アクリル系又はシリコン系の樹脂塗料)にして、コイルスプリング38に減衰塗料を塗布してもよい。この場合、コイルスプリング38の隙間38A側の面に減衰塗料を塗布して、コイルスプリング38の隙間38Aより上側部分と下側部分との間に減衰塗料を配置してもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、格納機構14にモータ26及びギア機構28を設けた。しかしながら、格納機構14にモータ26及びギア機構28を設けなくてもよい。この場合、例えば、本発明の係合部をケース20にして、ケース20の下壁に節度凹部34Bを設けることで、クラッチプレート36(節度凸部36A)をケース20(節度凹部34B)に係合させる。
【0067】
さらに、上記実施形態では、本発明の車両用視認装置を車両用ドアミラー装置10にした。しかしながら、本発明の車両用視認装置を他の車両用ミラー装置(車両外部の他の車両用アウタミラー装置(例えば車両用フェンダミラー装置)又は車両内部の車両用インナミラー装置)や車両用カメラ装置(撮像することで乗員の視認を補助するもの)等にしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 車両用ドアミラー装置(車両用視認装置)
16 スタンド(支持体)
34 ギアプレート(回動部)
36 クラッチプレート(係合部)
38 コイルスプリング(付勢手段)
46 ミラー(視認手段)
図1
図2
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図5
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図11