特許第6341831号(P6341831)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6341831エリア毎のデータトラヒック量を推定する装置、プログラム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6341831
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】エリア毎のデータトラヒック量を推定する装置、プログラム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 24/08 20090101AFI20180604BHJP
   H04M 3/00 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   H04W24/08
   H04M3/00 D
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-211297(P2014-211297)
(22)【出願日】2014年10月16日
(65)【公開番号】特開2016-82366(P2016-82366A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年8月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135068
【弁理士】
【氏名又は名称】早原 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】廣田 祐生
(72)【発明者】
【氏名】泉川 晴紀
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雄
【審査官】 石原 由晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−022855(JP,A)
【文献】 特開2009−239780(JP,A)
【文献】 特開2011−061535(JP,A)
【文献】 特開2014−060687(JP,A)
【文献】 米国特許第6085095(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00−99/00
H04M 3/00
H04L 12/24
H04L 12/70
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エリアi毎に、各基地局mのデータトラヒック量Tmiを推定するトラヒック推定装置であって、
基地局m毎に、基地局トラヒック量Tmを蓄積する基地局トラヒック量蓄積手段と、
エリアi毎に、移動端末の総ログ数Liを蓄積するログ数蓄積手段と、
エリアi毎に、各基地局mにおける移動端末のログ数Lmiを用いて、各基地局mの接続率Bmiを蓄積する基地局接続率蓄積手段と、
前記総ログ数Li及び前記接続率Bmiを用いて、基地局m毎に、各エリアiのログ割合Rmiを算出するログ割合算出手段と、
エリアi毎に、前記基地局トラヒック量Tm及び前記ログ割合Rmiを用いて、各基地局mにおける当該エリアiのデータトラヒック量Tmiを算出するエリアトラヒック量推定手段と
を有することを特徴とするトラヒック推定装置。
【請求項2】
移動端末の前記総ログ数Liは、移動端末が生成したコール数、又は、コールを生成した移動端末数である
ことを特徴とする請求項1に記載のトラヒック推定装置
【請求項3】
移動端末の前記総ログ数Liは、エリアi毎に、所定条件の一部の移動端末、及び/又は、所定条件の一部の通信、によって生成されたものである
ことを特徴とする請求項2に記載のトラヒック推定装置
【請求項4】
前記データトラヒック量Tmiを用いて、当該エリアiにおける総データトラヒック量Tiを算出する総トラヒック量推定手段を
更に有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のトラヒック推定装置。
【請求項5】
前記移動端末のログには、更に時刻が対応付けられており、
前記基地局トラヒック量蓄積手段は、基地局m及び時間帯tの組毎に、基地局トラヒック量Tmtを対応付けて蓄積し、
前記ログ数蓄積手段は、エリアi及び時間帯tの組毎に、移動端末の総ログ数Litを対応付けて蓄積し、
前記ログ割合算出手段は、基地局m毎に、エリアi及び時間帯tの各組のログ割合Rmitを算出し、
前記エリアトラヒック量推定手段は、エリアi及び時間帯tの組毎に、前記基地局トラヒック量Tmt及び前記ログ割合Rmitを用いて、各基地局mにおけるデータトラヒック量Tmitを算出する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のトラヒック推定装置。
【請求項6】
前記時間帯は、「時刻」又は「日付+時刻」である
ことを特徴とする請求項5に記載のトラヒック推定装置。
【請求項7】
前記ログ数蓄積手段は、平日/休日別に、移動端末の総ログ数Liを蓄積し、
前記ログ割合算出手段は、平日/休日別に、各エリアiのログ割合Rmiを算出する
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のトラヒック推定装置。
【請求項8】
2次元(x−y)領域を区分したエリアi毎に、各基地局mのデータトラヒック量Tmiをz軸方向に描画した3次元のトラヒックマップを生成するトラヒックマップ生成手段を更に有することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項2に記載のトラヒック推定装置。
【請求項9】
地図に、前記トラヒックマップを重畳して表示するトラヒックマップ表示手段を更に有することを特徴とする請求項8に記載のトラヒック推定装置。
【請求項10】
エリアi毎に、各基地局mのデータトラヒック量Tmiを推定する装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
基地局m毎に、基地局トラヒック量Tmを蓄積する基地局トラヒック量蓄積手段と、
エリアi毎に、移動端末の総ログ数Liを蓄積するログ数蓄積手段と、
エリアi毎に、各基地局mにおける移動端末のログ数Lmiを用いて、各基地局mの接続率Bmiを蓄積する基地局接続率蓄積手段と、
前記総ログ数Li及び前記接続率Bmiを用いて、基地局m毎に、各エリアiのログ割合Rmiを算出するログ割合算出手段と、
エリアi毎に、前記基地局トラヒック量Tm及び前記ログ割合Rmiを用いて、各基地局mにおける当該エリアiのデータトラヒック量Tmiを算出するエリアトラヒック量推定手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項11】
装置を用いて、エリアi毎に、各基地局mのデータトラヒック量Tmiを推定する方法であって、
前記装置は、
基地局m毎に、基地局トラヒック量Tmを蓄積する基地局トラヒック量蓄積部と、
エリアi毎に、移動端末の総ログ数Liを蓄積するログ数蓄積部と、
エリアi毎に、各基地局mにおける移動端末のログ数Lmiを用いて、各基地局mの接続率Bmiを蓄積する基地局接続率蓄積部と
を有し、
前記装置は、
前記総ログ数Li及び前記接続率Bmiを用いて、基地局m毎に、各エリアiのログ割合Rmiを算出する第1のステップと、
エリアi毎に、前記基地局トラヒック量Tm及び前記ログ割合Rmiを用いて、各基地局mにおける当該エリアiのデータトラヒック量Tmiを算出する第2のステップと
を有することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エリア毎のデータトラヒック量を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のモバイル通信サービスによれば、アプリケーションの大容量化と共に、LTELong Term Revolution)に代表される高速且つ大容量な通信網の発達によって、時々刻々と大量のデータトラヒックが発生している。これに対し、通信事業者は、通信品質の向上やトラヒック収容の観点から、多数の基地局を設置して、サービスエリアを構築する。通信事業者は、基地局毎に、呼接続数やデータトラヒック量を管理することによって、サービスエリアを維持・管理している。
【0003】
従来、移動端末から発信される通信ログを収集し、無線通信品質に基づくエリアマップを作成する技術がある(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、移動端末が管理装置へ送信する無線通信品質の範囲を変更することによって、移動端末から送信する通信ログの数を削減することができる。例えばセルラシステムのような広域システムについては、移動端末は、所定品質以下に無線通信品質が劣化した際に、無線通信品質及び位置情報を取得する。移動端末は、これら取得した通信ログを逐次又は一括して管理装置へ送信し、管理装置は、無線通信品質に基づくエリアマップを作成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−306240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
移動端末が送信する通信ログには、無線通信品質及び位置情報に加えて、データトラヒック量に関する情報を更に含めることもできる。また、これら大量の通信ログを収集した管理装置は、「当該移動端末が、何処のエリアで、どの程度のデータトラヒック量を発生させたか?」を知ることができる。これら情報を集計することによって、エリア毎に、移動端末数や、呼接続数や、発生したデータトラヒック量を知ることもできる。即ち、エリア側からみたデータトラヒック量を、監視することができる。
【0006】
ここで、本願の発明者らは、全ての移動端末から全ての通信ログを収集した場合、移動端末の負荷(計算量、電池消費等)が増大すると考えた。即ち、一部の移動端末の一部の通信ログのみを収集するだけで、空間的・時間的に、各基地局のデータトラヒック量を表示したエリアマップを作成することができれば、移動端末の負荷を軽減しつつ、設備設計やサービス品質を向上させることができると考えた。
【0007】
しかしながら、一部の移動端末の一部の通信ログだけでは、空間的・時間的な密度が疎になる。そのために、各基地局のデータトラヒック量を表示したエリアマップを作成したり、何処のエリアでどの程度のデータトラヒック量が発生したかを知ることは難しい。
勿論、基地局毎に、例えば、後述する基地局統計情報によって、単位時間内に発生した全てのエリアに対する総データトラヒック量は知ることはできる。しかし、基地局は、データトラヒックが何れのエリアから多く発生しているか?を知ることは難しい。そのために、通信事業者としては、データトラヒックの収容の観点から、全体的なエリア設計をすることが難しいとする問題がある。
【0008】
通信事業者は、例えば前述の「基地局統計情報」に加え、「サービスエリア情報」及び「ログ分布情報」を管理しているものとする。
「基地局統計情報」は、基地局毎・時間帯毎の総データトラヒック量である。しかし、この情報からは、移動端末がトラヒックを発生させた位置が不明であるために、エリア毎のトラヒック分布を推定することはできない。
「サービスエリア情報」は、エリアシミュレータ等により、各基地局がカバーするサービスエリアを推定したものである。エリアシミュレータを用いる代わりに、多数の移動端末の通信ログを収集し、各基地局がカバーするサービスエリアを推定したものであってもよい。しかし、各基地局がカバーするサービスエリアからでは、エリア毎又は時間帯毎に、データトラヒック量を推定することはできない。
「ログ分布情報」は、一部の移動端末の一部の通信ログを収集し、移動端末の分布を推定したものである。しかし、一部の移動端末の一部の通信ログの分布からは、当該エリアについて、そのデータトラヒック量を推定することはできない。
【0009】
そこで、本発明によれば、エリア毎にデータトラヒック量を推定する装置、プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、エリアi毎に、各基地局mのデータトラヒック量Tmiを推定するトラヒック推定装置であって、
基地局m毎に、基地局トラヒック量Tmを蓄積する基地局トラヒック量蓄積手段と、
エリアi毎に、移動端末の総ログ数Liを蓄積するログ数蓄積手段と、
エリアi毎に、各基地局mにおける移動端末のログ数Lmiを用いて、各基地局mの接続率Bmiを蓄積する基地局接続率蓄積手段と、
総ログ数Li及び接続率Bmiを用いて、基地局m毎に、各エリアiのログ割合Rmiを算出するログ割合算出手段と、
エリアi毎に、基地局トラヒック量Tm及びログ割合Rmiを用いて、各基地局mにおける当該エリアiのデータトラヒック量Tmiを算出するエリアトラヒック量推定手段と
を有することを特徴とする。
【0011】
本発明のトラヒック推定装置における他の実施形態によれば、
移動端末の総ログ数Liは、移動端末が生成したコール数、又は、コールを生成した移動端末数であることも好ましい。
【0012】
本発明のトラヒック推定装置における他の実施形態によれば、
移動端末の総ログ数Liは、エリアi毎に、所定条件の一部の移動端末、及び/又は、所定条件の一部の通信、によって生成されたものであることも好ましい。
【0013】
本発明のトラヒック推定装置における他の実施形態によれば、
データトラヒック量Tmiを用いて、当該エリアiにおける総データトラヒック量Tiを算出する総トラヒック量推定手段を
更に有することも好ましい。
【0014】
本発明のトラヒック推定装置における他の実施形態によれば、
移動端末のログには、更に時刻が対応付けられており、
基地局トラヒック量蓄積手段は、基地局m及び時間帯tの組毎に、基地局トラヒック量Tmtを対応付けて蓄積し、
ログ数蓄積手段は、エリアi及び時間帯tの組毎に、移動端末の総ログ数Litを対応付けて蓄積し、
ログ割合算出手段は、基地局m毎に、エリアi及び時間帯tの各組のログ割合Rmitを算出し、
エリアトラヒック量推定手段は、エリアi及び時間帯tの組毎に、基地局トラヒック量Tmt及びログ割合Rmitを用いて、各基地局mにおけるデータトラヒック量Tmitを算出することも好ましい。
【0015】
本発明のトラヒック推定装置における他の実施形態によれば、
時間帯は、「時刻」又は「日付+時刻」であることも好ましい。
【0016】
本発明のトラヒック推定装置における他の実施形態によれば、
ログ数蓄積手段は、平日/休日別に、移動端末の総ログ数Liを蓄積し、
ログ割合算出手段は、平日/休日別に、各エリアiのログ割合Rmiを算出する
ことも好ましい。
【0017】
本発明のトラヒック推定装置における他の実施形態によれば、
2次元(x−y)領域を区分したエリアi毎に、各基地局mのデータトラヒック量Tmiをz軸方向に描画した3次元のトラヒックマップを生成するトラヒックマップ生成手段を更に有することも好ましい。
【0018】
本発明のトラヒック推定装置における他の実施形態によれば、
地図に、トラヒックマップを重畳して表示するトラヒックマップ表示手段を更に有することも好ましい。
【0019】
本発明によれば、エリアi毎に、各基地局mのデータトラヒック量Tmiを推定する装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
基地局m毎に、基地局トラヒック量Tmを蓄積する基地局トラヒック量蓄積手段と、
エリアi毎に、移動端末の総ログ数Liを蓄積するログ数蓄積手段と、
エリアi毎に、各基地局mにおける移動端末のログ数Lmiを用いて、各基地局mの接続率Bmiを蓄積する基地局接続率蓄積手段と、
総ログ数Li及び接続率Bmiを用いて、基地局m毎に、各エリアiのログ割合Rmiを算出するログ割合算出手段と、
エリアi毎に、基地局トラヒック量Tm及びログ割合Rmiを用いて、各基地局mにおける当該エリアiのデータトラヒック量Tmiを算出するエリアトラヒック量推定手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、装置を用いて、エリアi毎に、各基地局mのデータトラヒック量Tmiを推定する方法であって、
装置は、
基地局m毎に、基地局トラヒック量Tmを蓄積する基地局トラヒック量蓄積部と、
エリアi毎に、移動端末の総ログ数Liを蓄積するログ数蓄積部と、
エリアi毎に、各基地局mにおける移動端末のログ数Lmiを用いて、各基地局mの接続率Bmiを蓄積する基地局接続率蓄積部と
を有し、
装置は、
総ログ数Li及び接続率Bmiを用いて、基地局m毎に、各エリアiのログ割合Rmiを算出する第1のステップと、
エリアi毎に、基地局トラヒック量Tm及びログ割合Rmiを用いて、各基地局mにおける当該エリアiのデータトラヒック量Tmiを算出する第2のステップと
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の装置、プログラム及び方法によれば、エリア毎にデータトラヒック量を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明におけるシステム構成図である。
図2】本発明におけるトラヒック推定装置の機能構成図である。
図3】本発明における装置のトラヒック推定方法を表すフローチャートである。
図4】各基地局のサービスエリア及びデータトラヒック量を表す説明地図である。
図5】移動端末のログ分布を表す説明地図である。
図6】エリアi毎に、移動端末の総ログ数Liを表す説明図である。
図7】エリアi毎に、各基地局mのログ数Lmiを表す説明図である。
図8】エリアi毎に、各基地局mの接続率Bmiを表す説明図である。
図9】エリア1におけるログ割合Rmiを表す説明図である。
図10】エリアi毎に、データトラヒック量Tmiをz軸方向に描画した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明におけるシステム構成図である。
【0025】
図1によれば、エリア(i=1〜N)毎に区分された全体領域に、複数の基地局3が配置されている。エリアは、例えば数メートルから数キロ程度の四方の範囲であって、2次元(x−y)の全体領域をエリア状に区分したものである。各基地局3は、その電波到達範囲(基地局サービスエリア)に位置する移動端末2と通信する。また、各基地局3は、通信事業者の移動通信網に接続される。移動通信網は、例えば広域をカバーする携帯電話網(例えばLTEや3G(3rd Generation)のような通信事業者網)であって、移動端末2は、ユーザによって所持される例えばスマートフォンやタブレット端末であってもよい。
【0026】
通信事業者は、例えば駅周辺のように、移動端末を所持するユーザが多い領域では、1つの基地局がカバーするサービスエリアを比較的狭く設定し、狭い距離間隔で多くの基地局を配置する。一方で、移動端末を所持するユーザが少ない領域では、1つの基地局がカバーするサービスエリアを比較的広く設定し、広い距離間隔で基地局を配置する。
【0027】
スマートフォンのような移動端末2は、一般的に測位部を搭載しており、現在位置を測位することができる。測位部は、例えば、移動端末の位置情報は、衛星からの測位電波に基づくGPS(Global Positioning System)測位方式、又は、基地局からの通信用電波に基づくネットワーク測位方式に基づくものである。
【0028】
GPS測位方式では、測位精度は比較的高く、木造建物の屋内等のGPS衛星からの信号を受信しづらい環境でも、測位誤差は〜100m程度である。一方、ネットワーク測位では、移動端末2が、周囲の基地局の識別子とそれらの間の遅延時間とを、ネットワーク内の測位サーバへ送信し、測位サーバが位置を推定し、その推定位置情報を移動端末2へ返信する。
【0029】
図1によれば、移動通信網には、基地局統計装置5及びログ収集装置6が接続されている。
【0030】
[基地局統計装置5]
基地局統計装置5は、基地局3毎の様々な基地局情報を蓄積する。その中で、本発明における必須情報は、基地局3毎の「基地局トラヒック量」である。本実施形態によれば、基地局トラヒック量とは、音声通信(呼接続数や呼接続時間)に基づくものではなく、移動端末2のデータ通信に基づくトラヒック量を指すが、音声通信(VoLTE等IPベースを含む)に基づいてもよい。
【0031】
[ログ収集装置6]
ログ収集装置6は、各移動端末2から、所定のタイミングで、少なくとも以下の情報を含む通信ログを受信する。尚、通信ログとは、移動端末2の全ての通信を対象にする必要はなく、所定のタイミングや所定のアプリケーション動作時を対象としたものであってもよい。
通信ログ:[位置情報、基地局識別子]
他の実施形態によれば、時刻(又は日付+時刻)を更に含むものであってもよい。
通信ログ:[位置情報、基地局識別子、時刻]
通信ログは、当然、移動端末識別子を含むことが好ましい。
【0032】
ログ収集装置6は、多数の移動端末2からの通信ログを収集し蓄積する。ログ収集装置6は、例えば、移動端末の位置情報を蓄積したLAS−DB (Location information and Available System information DataBase)であってもよい。
【0033】
図1によれば、本発明の「トラヒック推定装置1」が、移動通信網に更に接続されている。トラヒック推定装置1は、基地局統計装置5及びログ収集装置6の情報に基づいて、エリアi毎に、各基地局mのデータトラヒック量Tmiを推定する。
【0034】
図2は、本発明におけるトラヒック推定装置の機能構成図である。
図3は、本発明における装置のトラヒック推定方法を表すフローチャートである。
【0035】
図2によれば、トラヒック推定装置1は、基地局トラヒック量蓄積部101と、ログ数蓄積部102と、基地局接続率蓄積部103と、地図蓄積部104と、ログ割合算出部11と、エリアトラヒック量推定部12と、総トラヒック量推定部13と、トラヒックマップ生成部14と、トラヒックマップ表示部15とを有する。これら機能構成部は、装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。また、これら機能構成部の処理の流れは、図3に表されたようにトラヒック推定方法としても理解できる。
【0036】
[基地局トラヒック量蓄積部101]
基地局トラヒック量蓄積部101は、基地局m毎に、基地局トラヒック量Tmを蓄積する。それら情報は、基地局統計装置5から取得されたものであってもよいし、予め蓄積したものであってもよい。
例えば、任意の時間帯に、以下のように各接続基地局の基地局トラヒック量[TB:テラバイト]が取得されたとする。
基地局aの基地局トラヒック量Ta: 6[TB]
基地局bの基地局トラヒック量Tb: 1[TB]
基地局cの基地局トラヒック量Tc:10[TB]
尚、「時間帯」とは、実施形態として「時刻」帯又は「日付+時刻」帯であるとする。
【0037】
図4は、各基地局のサービスエリア及びデータトラヒック量を表す説明地図である。
【0038】
図4によれば、各基地局について、複数のエリアを含むサービスエリア1〜4が表されている。例えばエリア2は、基地局aのサービスエリアとしてカバーされている。しかしながら、エリアaに位置する移動端末は、基地局aを必ず接続基地局(アクティブ基地局、サービング基地局)とするものではなく、基地局b又はcを接続基地局とするかもしれない。あくまで、通信事業者から見て、基地局aがカバーするサービスエリアに、エリアaが位置するに過ぎない。
【0039】
他の実施形態によれば、基地局トラヒック量蓄積部101は、「基地局m及び時間帯tの組」毎に、基地局トラヒック量Tmtを対応付けて蓄積したものであってもよい。基地局のデータ量は、例えば平日/休日のような日毎に、及び、1日の中でも時間帯毎に、異なるためである。
【0040】
[ログ数蓄積部102]
ログ数蓄積部102は、エリアi毎に、移動端末の総ログ数Liを蓄積する。それら情報は、ログ収集装置6から取得された多数の通信ログを用いたものであってもよいし、予め蓄積したものであってもよい。
【0041】
移動端末の「総ログ数Li」は、移動端末が生成したコール数、又は、コールを生成した移動端末数であってもよい。「コール」とは、呼接続やセッション接続であってもよい。勿論、総ログ数Liは、エリアi毎に、所定条件の一部の移動端末、及び/又は、所定条件の一部の通信、によって生成されたものであってもよい。例えば、ログに含まれる移動端末識別子によって区分してもよいし、通信対象となるアプリケーションによって区分してもよい。
【0042】
他の実施形態によれば、ログ数蓄積部102は、「エリアi及び時間帯tの組」毎に、移動端末の総ログ数Litを対応付けて蓄積したものであってもよい。
【0043】
図5は、移動端末のログ分布を表す説明地図である。
【0044】
図5によれば、エリア毎に区分された全体領域に、多数の移動端末2が分布しており、そこから発信された通信ログが記録されている。ここで、1つのエリアに属する移動端末から送信される複数のログは、異なる基地局との通信したものが混在して含まれるものであってもよい。例えばエリア2に位置する移動端末は、ある時は、基地局aと接続したログを送信し、ある時は、基地局bと接続したログを送信するものであってもよい。
【0045】
図6は、エリアi毎に、移動端末の総ログ数Liを表す説明図である。
【0046】
図6によれば、エリアi毎に、以下のような移動端末の総ログ数Liが観測されている。
エリア1の総ログ数L:100個
エリア2の総ログ数L:200個
エリア3の総ログ数L:150個
エリア4の総ログ数L:300個
【0047】
[基地局接続率蓄積部103]
基地局接続率蓄積部103は、エリアi毎に、各基地局mにおける移動端末のログ数Lmiを用いて、各基地局mの接続率Bmiを蓄積する。
【0048】
図7は、エリアi毎に、各基地局mのログ数Lmiを表す説明図である。
【0049】
図7によれば、以下のように、エリアi毎に、各基地局mのログ数Lmiが観測されている。
[エリア1]La=70個、 Lb=20個、Lc=10個
[エリア2]La=120個、Lb=80個、Lc=0個
[エリア3]La=0個、 Lb=45個、Lc=105個
[エリア4]La=210個、Lb=30個、Lc=60個
【0050】
図8は、エリアi毎に、各基地局mの接続率Bmiを表す説明図である。
【0051】
図8によれば、エリアi毎に、以下のような各基地局mの接続率Bmiを算出することができる。
基地局mの接続率Bmi=Lmi/ΣmLmi
[エリア1]
基地局aの接続率:Ba=70/(70+20+10)=0.7
基地局bの接続率:Bb=20/(70+20+10)=0.2
基地局cの接続率:Bc=10/(70+20+10)=0.1
[エリア2]
基地局aの接続率:Ba=120/(120+80+0)=0.6
基地局bの接続率:Bb=80/(120+80+0) =0.4
基地局cの接続率:Bc =0
[エリア3]
基地局aの接続率:Ba =0
基地局bの接続率:Bb=45/(0+45+105) =0.3
基地局cの接続率:Bc=105/(0+45+105)=0.7
[エリア4]
基地局aの接続率:Ba=210/(210+30+60)=0.7
基地局bの接続率:Bb=30/(210+30+60) =0.1
基地局cの接続率:Bc=60/(210+30+60) =0.2
【0052】
[ログ割合算出部11]
(S11)ログ割合算出部11は、総ログ数Li及び接続率Bmiを用いて、基地局m毎に、各エリアiのログ割合Rmiを算出する。
ログ割合:Rmi=(Bmi×Li)/Σi=1N(Bmi×Li)
【0053】
図9は、エリア1におけるログ割合Rmiを表す説明図である。
【0054】
図9によれば、以下のように、エリア1におけるログ割合Rmiを算出する。
[エリア1]
基地局aのログ割合:
Ra=(0.7×100)/{(0.7×100)+(0.6×200) +(0.7×300)}
=0.175
基地局bのログ割合:
Rb=(0.2×100)/{(0.2×100)+(0.4×200)+(0.3×150)+(0.1×300)}
=0.114
基地局cのログ割合:
Rc=(0.1×100)/{(0.1×100) +(0.7×150)+(0.2×300)}
=0.057
【0055】
他の実施形態として、時間帯tを考慮して、ログ割合算出部11は、基地局m毎に、エリアi及び時間帯tの各組のログ割合Rmitを算出することも好ましい。
【0056】
[エリアトラヒック量推定部12]
(S12)エリアトラヒック量推定部12は、エリアi毎に、基地局トラヒック量Tm及びログ割合Rmiを用いて、各基地局mにおける当該エリアiのデータトラヒック量Tmiを算出する。
Tmi=Tm×Rmi
【0057】
図10は、エリアi毎に、データトラヒック量Tmiをz軸方向に描画した説明図である。
【0058】
図10によれば、エリア1における基地局a、b、cのデータトラヒック量Ta、Tb、Tcは、以下のように計算される
[エリア1]
基地局aの推定したデータトラヒック量:
Ta=Ta×Ra= 6[TB]×0.175=1.050[TB]
基地局bの推定したデータトラヒック量:
Tb=Tb×Rb= 1[TB]×0.114=0.114[TB]
基地局cの推定したデータトラヒック量:
Tc=Tc×Rc=10[TB]×0.057=0.570[TB]
【0059】
尚、他の実施形態として、時間帯tを考慮して、エリアトラヒック量推定部12は、エリアi及び時間帯tの組毎に、基地局トラヒック量Tmt及びログ割合Rmitを用いて、各基地局mにおけるデータトラヒック量Tmitを算出することも好ましい。
【0060】
[総トラヒック量推定部13]
総トラヒック量推定部13は、データトラヒック量Tmiを用いて、当該エリアiにおける総データトラヒック量Tiを算出する。
Ti=ΣmTmi
これによって、当該エリアiにおけるデータトラヒック量Tiを推定することができる。例えば、当該エリアにおけるサービング基地局に注目して、データトラヒック量の割合を推定することもできる。
【0061】
尚、他の実施形態によれば、ログ数蓄積部102は、平日/休日別に、移動端末の総ログ数Liを蓄積し、ログ割合算出部11も、平日/休日別に、各エリアiのログ割合Rmiを算出するものであってもよい。これによって、平日/休日別に、エリア毎のデータトラヒック量を推定することができる。
【0062】
[トラヒックマップ生成部14]
(S14)トラヒックマップ生成部14は、2次元(x−y)領域を区分したエリア毎に、各基地局識別子のデータトラヒック量をz軸方向に描画した3次元のトラヒックマップを生成する。
【0063】
図10によれば、各エリアについて、各基地局a,b,cのデータトラヒック量をz軸方向に描画したものである。これは、3次元のトラヒックマップとして描画される。このトラヒックマップは、ネットワーク又はディスプレイを介して管理者によって閲覧される。管理者は、一見して、エリア毎の各基地局のデータトラヒック量を認識することができる。
【0064】
[トラヒックマップ表示部15]
(S15)トラヒックマップ表示部15は、地図に、トラヒックマップを重畳して表示する。これによって、トラヒックマップを閲覧する管理者は、具体的な地図上に、各基地局のデータトラヒック量を認識することができる。
【0065】
尚、前述の実施形態によれば、本発明は、通信ログが基地局識別子を含むものとして説明したが、これを必須とするものではない。移動端末が、スマートフォンやタブレット端末である場合、OSバージョン等の違いにより、基地局識別子が取得できない場合もある。このような場合、本発明によれば、基地局接続率Rmiについて、基地局識別子を含まない通信ログは考慮されない。一方で、基地局トラヒック量Tmや移動端末の総ログ数Liには、基地局識別子が未知の通信ログもそのまま混在することとなる。このような実施形態であっても、各基地局mにおける当該エリアiのデータトラヒック量Tmiは、大凡正しい推定値となる。
【0066】
以上、詳細に説明したように、本発明の装置、プログラム及び方法によれば、エリア毎にデータトラヒック量を推定することができる。
【0067】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0068】
1 トラヒック推定装置
101 基地局トラヒック量蓄積部
102 ログ数蓄積部
103 基地局接続率蓄積部
104 地図蓄積部
11 ログ割合算出部
12 エリアトラヒック量算出部
13 総トラヒック量算出部
14 トラヒックマップ生成部
15 トラヒックマップ表示部
2 移動端末
3 基地局
4 GPS衛星
5 基地局統計装置
6 ログ収集装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10