(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
押し込み操作するための操作面を設けたボタンと、押し込まれた前記ボタンを初期位置に押し戻す付勢部材と、前記ボタンを押し込み可能に保持するボタンベースと、を備え、押し込み操作が検出される押込位置に前記ボタンを押し込み可能である一方、押し込み操作が行われないときには前記初期位置にボタンが復帰する押し込み操作型のボタンスイッチであって、
ばね線材がコイル状に巻回されたコイル巻回部を含む付勢部材には、前記操作面側の巻回端が接線方向に沿って延長された第1のトーションバーが設けられ、
前記ボタンベースには、前記ボタンの押し込みに応じて前記第1のトーションバーを周方向に押し込んで回動変位させる当接面が設けられたトーションバー当接部が設けられ、
前記ボタンが前記押込位置に押し込まれた時、前記ボタンの押込変位量に対する前記第1のトーションバーの回動変位量の変位割合が変動して操作感が発生するように構成されているボタンスイッチ。
請求項1において、前記トーションバー当接部では、前記ボタンの押込変位量に対する前記第1のトーションバーの回動変位量の変位割合を左右する傾斜角度が異なる2つの当接面が隣接する角部が前記押込位置に対応して設けられ、
当該角部の両側の当接面は、前記初期位置側に対応する一方の当接面の方が他方の当接面よりも前記変位割合が大きくなるように前記傾斜角度が設定されているボタンスイッチ。
請求項1〜3のいずれか1項において、前記ボタンと前記ボタンベースとの間には、押し込み方向に沿って延設された進退軸と、この進退軸を挿入可能な軸孔と、の組み合わせによる嵌め合い構造が設けられており、前記付勢部材のコイル巻回部が前記嵌め合い構造に外挿されているボタンスイッチ。
動力源が発生する回転運動を車輪に伝達する際の伝達比を変更するために操作されるシフトレバーユニットであって、動力伝達経路への入力回転数よりも動力伝達経路からの出力回転数が高くなるオーバードライブ状態を発生させるオーバードライブ機能を備える車両に適用され、
オーバードライブ機能の有効/無効を切り換えるための操作手段として、請求項1〜5のいずれか1項に記載のボタンスイッチを備えるシフトレバーユニット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来のボタンスイッチでは、次のような問題がある。押し込み操作が機械側で検出されたことを操作者が認知できるよう、クリック感等の操作感を発生させる構成を組み込めば操作の確実性を向上できる一方、例えばクリック感の発生源として板ばね等が利用され、これに起因して部品点数が多くなっているという問題がある。
【0007】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、部品点数を抑制しながら良好な操作感が得られるボタンスイッチ、及びこのボタンスイッチを採用したシフトレバーユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、押し込み操作するための操作面を設けたボタンと、押し込まれた前記ボタンを初期位置に押し戻す付勢部材と、前記ボタンを押し込み可能に保持するボタンベースと、を備え、押し込み操作が検出される押込位置に前記ボタンを押し込み可能である一方、押し込み操作が行われないときには前記初期位置にボタンが復帰する押し込み操作型のボタンスイッチであって、
ばね線材がコイル状に巻回されたコイル巻回部を含む付勢部材には、前記操作面側の巻回端が接線方向に沿って延長された第1のトーションバーが設けられ、
前記ボタンベースには、前記ボタンの押し込みに応じて前記第1のトーションバーを周方向に押し込んで回動変位させる当接面が設けられたトーションバー当接部が設けられ、
前記ボタンが前記押込位置に押し込まれた時、前記ボタンの押込変位量に対する前記第1のトーションバーの回動変位量の変位割合が変動して操作感が発生するように構成されているボタンスイッチにある(請求項1)。
【0009】
本発明の第2の態様は、動力源が発生する回転運動を車輪に伝達する際の伝達比を変更するために操作されるシフトレバーユニットであって、動力伝達経路への入力回転数よりも動力伝達経路からの出力回転数が高くなるオーバードライブ状態を発生させるオーバードライブ機能を備える車両に適用され、
オーバードライブ機能の有効/無効を切り換えるための操作手段として、前記第1の態様のボタンスイッチを備えるシフトレバーユニットある(請求項6)。
【0010】
本発明に係るボタンスイッチでは、前記ボタンを押し込み操作すると、ばね線材をコイル状に巻回した前記付勢部材が弾性的に圧縮変形し、これにより、前記ボタンを押し戻す付勢力が発生する。さらに、このボタンスイッチでは、前記ボタンの押し込みに応じて、前記付勢部材の巻回端が延設された第1のトーションバーに回動変位が生じ、その回動変位に由来する反力が発生する。
【0011】
本発明に係るボタンスイッチでは、前記ボタンを前記押込位置に押し込んだときに、前記第1のトーションバーの前記変位割合が変動して操作感が発生するようになっている。このボタンスイッチでは、前記付勢部材の巻回端が接線方向に延長された前記第1のトーションバーを利用して操作感を発生させることで、前記ボタンの押し戻しと操作感の生成という2つの機能を前記付勢部材により実現している。前記ボタンの押し戻しのための前記付勢部材を利用して操作感を発生できれば、例えば板ばね等の他の部品を利用して操作感を生じさせる場合と比べて部品点数を少なくできる。
【0012】
本発明に係るシフトレバーユニットは、上記のように部品点数が少なく軽量で低コストなボタンスイッチを採用しており、軽量かつ低コストの優れた特性の製品となっている。
【0013】
本発明におけるボタンの押し込み限度としては、前記押込位置を越える位置に設定するのが良い。ただし、前記押込位置から押し込み限度までの距離が長すぎると、操作フィーリングが悪くなるおそれがある。
【0014】
本発明の好適な一態様のボタンスイッチにおけるトーションバー当接部では、前記ボタンの押込変位量に対する前記第1のトーションバーの回動変位量の変位割合を左右する傾斜角度が異なる2つの当接面が隣接する角部が前記押込位置に対応して設けられ、
当該角部の両側の当接面は、前記初期位置側に対応する一方の当接面の方が他方の当接面よりも前記変位割合が大きくなるように前記傾斜角度が設定されている(請求項2)。
【0015】
上記のように、前記第1のトーションバーの回動変位は、この第1のトーションバーが前記トーションバー当接部の当接面に押し当たって発生する。前記ボタンの押込変位量に対する前記第1のトーションバーの回動変位量の変位割合は、前記トーションバー当接部の当接面の傾斜角度に左右される。前記トーションバー当接部では、この傾斜角度が異なる2つの当接面が隣接する前記角部が設けられている。この角部は、押し込み操作が検出される前記押込位置にボタンが押し込まれたときに前記第1のトーションバーが当接する箇所に対応して設けられている。
【0016】
この角部で隣接する初期位置側に対応する一方の当接面と、他方の当接面と、を比較すると、前記一方の当接面の方が前記変位割合が大きく、前記他方の当接面の方が前記変位割合が小さくなっている。そうすると、前記ボタンを前記押込位置に向かって押し込む際、前記第1のトーションバーが前記角部に到達して前記他方の当接面に当接すると、前記第1のトーションバーの回動変位量の増加度合いが小さくなり、反力の増加度合いが小さくなる。
【0017】
ここで例えば、押し戻し方向の付勢力の発生源として通常のコイルスプリングを採用した一般的なボタンスイッチの場合、前記押込変位量に応じて反力が略比例して増加していく。本発明における付勢部材においても、ばね線材をコイル状に巻回した部分については、上記のコイルスプリングと同様の反力を発生させる。一方、前記第1のトーションバーについては、前記角部に到達した後、前記押込変位量に対する前記回動変位量の変位割合が小さくなる。つまり、前記第1のトーションバーが前記角部に達するまでのボタンの押し込みに応じた反力の増加度合いに対して、前記角部に達した後では、その反力の増加度合いが小さくなる。
【0018】
操作者にとっては、一般的に、ボタンを押し込むに従って反力が次第に増加していくのが自然に感じられ、押し込み操作中に反力の増加度合いが変化すれば、操作する側に何らかの感触が生じる。本発明に係るボタンスイッチでは、押し込み操作が検出される前記押込位置に対応して前記角部が形成されている。そのため、前記押込位置に対応して上記の感触が発生することになり、操作する側では、前記押込位置にボタンを操作したことによる操作感となる。
【0019】
なお、前記第1のトーションバーが押し当たる当接面としては、断面直線状の平面的なものであっても良いし、断面曲線状の曲面であっても良い。前記角部で隣接する2つの当接面としては、前記角部で隣接する2つの当接面の各端部の傾斜角度が異なっていれば良い。前記一方の当接面及び前記他方の当接面の傾斜角度が場所によらずに一定、すなわち当接面が平面である必要はない。各当接面は、傾斜角度が場所に応じて次第に変化する曲面であっても良い。
【0020】
前記角部で隣接する初期位置側に対応する一方の当接面については、前記ボタンの押込変位量が増えるに伴って前記第1のトーションバーの回動変位量が大きくなる傾斜角度である必要がある。一方、反対側の前記他方の当接面の傾斜角度については、前記ボタンの押込変位量に対する前記第1のトーションバーの回動変位量の変位割合が、前記一方の当接面よりも小さくなる傾斜角度であれば良い。その傾斜角度としては、前記変位割合がマイナス側に転じる角度であっても良く、ゼロとなる角度であっても良く、前記一方の当接面に対応する変位割合よりも小さい正の変位割合となる角度であっても良い。
【0021】
本発明の好適な一態様のボタンスイッチにおける付勢部材には、前記第1のトーションバーとは反対側の巻回端が接線方向に延設されて第2のトーションバーが設けられ、
前記ボタンベースには、前記付勢部材の第2のトーションバーの回動変位を規制する回り止め部と、が設けられている(請求項3)。
【0022】
前記トーションバー当接部に加えて、前記第2のトーションバーの回動変位を規制する前記回り止め部を前記ボタンベースに設ければ、前記第1のトーションバーの回動変位に伴う前記コイル巻回部の連れ回りを規制できる。前記コイル巻回部の連れ回りを規制すれば、前記第1のトーションバーの弾性的な反力が設計仕様に沿って発生するようになり、本発明の作用効果を確実性高く発生できる。
【0023】
本発明の好適な一態様のボタンスイッチにおいて、前記ボタンと前記ボタンベースとの間には、押し込み方向に沿って延設された進退軸と、この進退軸を挿入可能な軸孔と、の組み合わせによる嵌め合い構造が設けられており、前記付勢部材のコイル巻回部が前記嵌め合い構造に外挿されている(請求項4)。
【0024】
この場合には、前記ボタンの押し込み方向の進退動作を支持する前記嵌め合い構造と、前記付勢部材と、を効率良く配置できるようになり、コンパクト設計が可能になる。さらに、前記ボタンの外周側に、押し込み方向の進退動作を支持する構造を設けることも良い。そうすれば、前記ボタンの進退精度を一層向上できる。
【0025】
本発明の好適な一態様のボタンスイッチは、前記押込位置にボタンが押し込み操作されたときに音を発生させる操作音生成構造を備えている(請求項5)。
前記押込位置へのボタンの押し込みに応じて音が発生すれば、操作完了を表す操作音のように作用し、前記押込位置にボタンを押し込んだ際の上記の操作感を強調できる。
【0026】
前記操作音生成構造としては、例えば、前記第1のトーションバーが前記トーションバー当接部に接触して生じる接触音を利用する構造であっても良い。例えば前記第1のトーションバーが前記角部を越えたときに、前記第1のトーションバーが当接面を叩く音であっても良い。この場合には、前記付勢部材と前記トーションバー当接部を利用することで、部品点数の増加を抑制しながら前記操作音生成構造を構成できる。
【0027】
例えば、前記ボタンスイッチに対して、電気的な接点を備えるコンタクトスイッチ等を付設する場合であれば、電気的な接点が閉じるときに音が発生するコンタクトスイッチを採用すると良い。前記押込位置にボタンが押し込まれたときに電気的な接点が閉じて音が発生するようになる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
本例は、所定のシフト方向にシフトレバー10を操作可能なシフトレバーユニット1に関する例である。この内容について、
図1〜
図14を用いて説明する。
【0030】
本例のシフトレバーユニット1は、
図1及び
図2のごとく、図示しない車両の前後方向に当たるシフト方向にシフトレバー10を操作可能なストレート式のシフトレバーユニットである。このシフトレバーユニット1は、運転者がシフトレバー10を操作しやすいように運転席と助手席との間のセンターコンソールや、運転者に対面するダッシュパネル等に設置される。
【0031】
このシフトレバーユニット1によれば、車両の前側からシフト方向に沿って配列されたパーキングレンジ(Pレンジ)、リバースレンジ(Rレンジ)、ニュートラルレンジ(Nレンジ)、ドライブレンジ(Dレンジ)、スポーツレンジ(Sレンジ)のうちの何れかをシフト位置として選択できる。シフトレンジを変更すれば、動力源である車両エンジンが発生する回転運動を車輪に伝達する動力伝達機構を構成する図示しない自動変速機の伝達比等を変更できる。
【0032】
シフトレバーユニット1は、シフトレバー10がベースブラケット3に回動可能な状態で軸支されて構成され、シフトパネル18を介してシフトレバー10の先端が車室側に突き出すように車両に取り付けられる。
【0033】
シフトレバー10は、
図1〜
図4のごとく、先端にシフトノブ5が取り付けられるレバー本体2を中心として構成されている。
レバー本体2は、中空棒状の筒部21の両側面にシフト軸20が立設された樹脂部品であり、ベースブラケット3により回動可能に軸支される。レバー本体2には、シフトレバー10を貫通させるシフトパネル18の長孔を内側からカバーする断面円弧状の湾曲カバー201や、図示しないシフトケーブルを係止するコントロールピン281が立設されたコントロールレバー28等が設けられている。シフトレバーユニット1では、コントロールピン281に係止されたシフトケーブル(図示略)を介してシフトレバー10の回動動作が自動変速機(図示略)側に伝達される。
【0034】
レバー本体2の両側面のシフト軸20のうち、後述するベースブラケット3の第1の側壁部31側のシフト軸20A(
図4参照。)は、円形状の一定の断面形状を呈している一方、第2の側壁部32側のシフト軸20B(
図3参照。)の根元には、断面樽形状の根元部200が設けられている。この根元部200は、円形状の両側を削り取ったような断面樽形状をなし、削り残した部分の幅がシフト軸20Bの直径よりも狭くなっている。詳しくは後述するが、シフト軸20Bの直径よりも幅狭のこの根元部200は、ベースブラケット3に対してシフトレバー10を組み付けるために必須の構成となっている。
【0035】
図3及び
図4に示す筒部21には、断面円形状の中空部(図示略)が軸方向に貫通形成され、シフト操作を規制するロックピン615を設けたディテントロッド61や、シフト操作に適度な操作感を与えるディテントプランジャ62等が内挿配置される。シフトノブ5とは反対側の筒部21の下端側の側壁面には、端面に連通するスリット孔210(
図4参照。)が穿設されている。このスリット孔210は、ディテントロッド61のロックピン615を進退させるための溝である。
【0036】
ディテントロッド61は、
図3のごとく、略棒状の軸部611と、円筒状のホルダ部610と、が軸方向に連結された樹脂部品である。
ホルダ部610は、コイルスプリングであるディテントスプリング616及びディテントプランジャ62を内挿保持するように構成されている。ホルダ部610の外周面には、径方向外周側に突出するようロックピン615が立設されている。ロックピン615は、後述するシフトロックリンク15(
図4)やディテント部7(
図5)との組み合わせにより、不用意なシフト操作を規制するための構成である。
【0037】
ディテントプランジャ62は、ホルダ部610に内挿される略円筒状のプランジャ胴部621を有し、その先端側に、大径部をなす環状部622と断面末窄まり形状の先端部623とを設けた樹脂部品である。
なお、レバー本体2の先端に取り付けられるシフトノブ5の構成については、後で詳しく説明する。
【0038】
ベースブラケット3は、
図1〜
図5のごとく、図示しない車両側に固定された状態でシフトレバー10を軸支する部材である。このベースブラケット3には、シフトパネル18やシフトレバー10のほか、シフトロックリンク15やソレノイド(アクチュエータ)17等により構成されるシフトロック機構が組み付けられる。
【0039】
ベースブラケット3は、シフトレバー10の一方のシフト軸20Aを収容する軸孔310を設けた第1の側壁部31を中心に形成され、他方のシフト軸20Bを収容する軸孔320を設けた第2の側壁部32が隙間を空けて対面している。
第1の側壁部31の軸孔310が完全な円形である一方、第2の側壁部32の軸孔320は、シフトパネル18側に向けて外部に開口するスリット溝321が連通する不完全な円形となっている。このスリット溝321は、シフトレバー10のシフト軸20Bの幅狭の根元部200を差し入れ可能な幅で形成されている。
【0040】
ベースブラケット3に対してシフトレバー10を組み付けるに当たっては、シフト軸20Aの先端が第1の側壁部31の手前に位置するようにし、シフト軸20Bの根元部200を第2の側壁部32のスリット溝321に沿って差し入れる。第2の側壁部32の軸孔320に対してシフト軸20Bが一致するまで差し入れた後、第1の側壁部31側にシフトレバー10全体を移動させて第1の側壁部31側のシフト軸20Aを軸孔310に挿入すれば、ベースブラケット3に対してシフトレバー10を組み付けできる。
【0041】
第1及び第2の側壁部31、32は、シフトレバー10の回動空間を取り囲む外周のうち、車両の進行方向後ろ側部分及びシフトノブ5とは反対側の下側部分に形成された外周側壁301を介して相互に連結され、シフトレバー10の回動空間を介して対面している。シフトノブ5側に当たる第1及び第2の側壁部31、32の上部には、外周側壁301に代えて、シフトパネル18を支持するためのクランプ300が配置されている。
【0042】
シフトレバー10の回動空間の下側に当たる外周側壁301の内側表面には、確実なシフト操作を実現するディテント機構を構成する摺動面77が形成されている。摺動面77は、シフトレバー10を操作したときにディテントプランジャ62の先端が押し当たりながら摺動するよう、軸孔310、320と同心、かつ、大径円弧状をなすように形成されている。シフトレバー10の操作範囲に対応する範囲に形成された摺動面77には、DレンジやPレンジ等の各シフト位置に対応して、それぞれ、凹状の節度溝77T等が設けられている。
【0043】
第1の側壁部31には、ディテント機構を構成するディテント部7が設けられている。ディテント部7は、円弧状の外周壁面70と、軸孔310、320の中心からの距離が異なる内周側の階段状の底面71と、階段状に隣り合う底面71間の規制面710と、により形成された空間である。底面71は、シフトレバー10のシフト位置に対応しており、
図5中、反時計回り上流側から順番に、Pレンジの底面71P、Rレンジの底面71R、Nレンジ及びDレンジに共通する底面71ND、セカンドレンジの底面71Sが形成されている。また、Rレンジの底面71RとPレンジの底面71Pとの間には、非常に浅い底面の境界部71Vが設けられている。
【0044】
第1の側壁部31には、シフトロックリンク15が回動可能に保持されていると共に、このシフトロックリンク15を回動変位させるソレノイド17が保持されている。シフトロックリンク15は、ソレノイド17への通電に応じて
図6のロック位置から
図7のアンロック位置に回動変位する。ロック位置は、シフトレバー10がPレンジに操作されたときのロックピン615の進退経路をシフトロックリンク15が塞ぐ回動位置である。アンロック位置は、シフトレバー10がPレンジのときのロックピン615の進退を許容する回動位置である。なお、シフトロックリンク15は、トーションスプリング15Sによりロック位置側に付勢され、ソレノイド17への非通電状態では、ロック位置に変位する。
【0045】
次に、レバー本体2の先端に取り付けられるシフトノブ5について説明する。このシフトノブ5は、
図1及び
図8のごとく、シフト操作に際して運転者が把持する持ち手をなす部分である。車両搭載時に運転者側を向くシフトノブ5の側面には、シフトボタン50とODボタン4が配設されている。これらの操作ボタンは、シフトノブ5を左手で把持した運転者が親指等で操作可能である。
【0046】
シフトノブ5は、シフト方向に沿って縦に2分割した構造を呈している。助手席側の分割部分がノブ本体51であり、運転者側の分割部分がノブカバー511である。
ノブ本体51には、シフトボタン50を収容するための有底筒状のシフトボタン収容部500と、ODボタン4を保持するODボタンベース(ボタンベース)54と、が設けられている。
【0047】
シフトボタン収容部500には、押し出し方向の付勢力を発生するコイルスプリング507を介在してシフトボタン50が収容される。シフトボタン50は、シフトレバー10の回動操作を可能にする操作ボタンである。例えば、Dレンジのシフトレバー10をRレンジやPレンジやSレンジ等にシフト操作するためには、シフトボタン50の操作が必要になる。シフトボタン50の押し込みに応じてディテントロッド61が押し出されるように軸方向に変位し、ディテント部7の円弧状の外周壁面70(
図7参照。)に近づく方向にロックピン615が移動する。このようにロックピン615が外周側に移動すると、規制面710によってその回動変位が規制されなくなり、シフトレバー10の回動操作であるシフト操作が可能になる。
【0048】
ODボタン4は、車両のオーバードライブ機能をオンオフするためのボタンスイッチ4Sを構成するボタンである。オーバードライブ機能は、車両の自動変速機(図示略)に対する入力回転数よりも出力回転数が高くなるオーバードライブ状態を発生させる機能である。ODボタン4は、押し込み位置を保持するラッチ機構を備えておらず、非操作中は押し出された状態の初期位置に位置する。ODボタン4を押し込み操作する毎に、オーバードライブ機能のオンオフ(有効/無効)を交互に切り換え可能である。
【0049】
特に、本例では、
図8及び
図9のごとく、ODボタン4を押し戻すための付勢部材の一例として、バネ線材をコイル状に巻回すると共に両端を接線方向に延ばしたトーションスプリング40を採用している。以下の説明では、このトーションスプリング40のコイル状の部分をコイル巻回部40Cという。なお、本例のトーションスプリング40では、両端のトーションバー40A・Bの開き角がおよそ120度に設定されている。
【0050】
ODボタン4は、
図8〜
図10のごとく、表面側に操作面を設けた略円柱状のボタン頭部401を含み、反対側の押し込み奥側の端面であるボタン裏面に、コイル巻回部40Cを外挿するボタン軸(進退軸)405(
図10参照。)が立設された樹脂部品である。ボタン頭部401のボタン裏面側の外周部には、ラッチ部403が押し込み方向に立設されている。
【0051】
ラッチ部403は、周方向の2箇所に対向するように一対配置されている。ラッチ部403の外側面には、押込み方向先端側の傾斜面と、反対側の棚面と、により凸状に形成されたラッチ爪403Tが設けられている。ODボタン4は、ラッチ部403を介してODボタンベース54の後述のサポート部543により押し込み方向に進退可能な状態で支持されている。さらに、一方のラッチ部403には、外周に沿って外周壁部409(
図8参照。)が延設されている。
【0052】
ラッチ部403に対して約半分の立設高さの外周壁部409は、ボタン頭部401の操作面側から見て、左回転方向側に形成されている。さらに、外周壁部409の周方向の形成範囲のうち、操作面側から見て左回転側の約半分には、トーションバー(第1のトーションバー)40Aを収容するためのスリット溝409Sがボタン裏面401Bに沿って形成されている。さらに、ボタン頭部401の外周面には、ラッチ部403の周方向位置を避けて、外周側に張り出す断面略矩形状のスイッチ押込部407が設けられている。
【0053】
ノブ本体51のODボタンベース54では、
図8、
図9及び
図11のごとく、ODボタン4を押し戻す付勢力を発生するトーションスプリング40のコイル巻回部40Cを内挿配置するスプリングホルダ540が立設され、その外周に、ODボタン4を押し込み可能に支持するサポート部543、トーションバー当接部544、545、コンタクトスイッチ45等が配置されている。なお、
図11では、理解のし易さを優先し、サポート部543等の図示を省略している。
【0054】
コンタクトスイッチ45は、可動レバー450を備え、可動レバー450先端の変位を検知するスイッチである。コンタクトスイッチ45は、ODボタン4の外周面に設けられた凸状のスイッチ押込部407が、可動レバー450の先端に干渉するように配置されている。ODボタン4が押し込み操作されたとき、スイッチ押込部407により可動レバー450が押し込まれて、コンタクスイッチ45に内蔵された電気的な接点が閉じられる。なお、電気的な接点が閉じるときのODボタン4の押し込み方向の位置が後述の押込位置となる。
【0055】
スプリングホルダ540は、雨樋のような断面円弧状の一対の湾曲保持部541が対向配置され(
図11参照。)、全体として、円筒形状を元にして軸方向に延在する隙間542A・Bを周方向2箇所の位置に設けて分断したような形状を呈している。また、スプリングホルダ540の内側底面には、ODボタン4のボタン軸405を内挿する軸孔54Hが穿孔され、ODボタン4の押し込み方向の進退動作を可能とする嵌め合い構造が形成されている。
【0056】
図11に示すごとく、スプリングホルダ540の第2の隙間542Bに対しては、接線方向に沿うように延設された平板状の第2のトーションバー当接部544が隣接している。回り止め部の一例である第2のトーションバー当接部544に対しては、スプリングホルダ540にトーションスプリング40のコイル巻回部40Cを収容した際、押し込み奥側のトーションバー(第2のトーションバー)40Bが第2の隙間542Bを介して外周側に延在して押し当たる。
【0057】
スプリングホルダ540の第1の隙間542Aの外周側には、接線方向に対して直交するように延設された平板状の第1のトーションバー当接部545が立設されている。第1のトーションバー当接部545には、ODボタン4のスリット溝409Sを貫通して接線方向に延在するトーションバー40Aが当接する。
【0058】
スプリングホルダ540の中心側から径方向外周側に向かってトーションバー当接部545を見込んだときの正面形状は、
図12のような左下がりの傾斜形状になっている。トーションバー当接部545の左下がりの傾斜形状をなす側面には、トーションスプリング40のトーションバー40Aが押し当たる当接面545A、Bが設けられている。
【0059】
図12では、ODボタン4を押し込んだときのトーションバー40Aの押し込み方向のストロークの範囲が図示してある。同図中の上側の範囲端が、ODボタン4の初期位置側に対応し、下側の範囲端が押し込み限度に対応している。押込位置は、角部545Pに対応して押し込み限度に近く位置している。
【0060】
ここで、初期位置及び押し込み限度は、ODボタン4とODボタンベース54との構造によって決定される位置である。押込位置は、スイッチ押込部407を備えるODボタン4とコンタクトスイッチ45との関係により決定される位置である。トーションバー当接部545の角部545Pは、ODボタン4が押し込まれて押込位置に到達したときに、押込み方向においてトーションバー40Aが到達する位置である。
【0061】
トーションバー当接部545の当接面545A、Bは、
図12のごとく、角部545Pを介して隣接しており、その傾斜角度が異なっている。初期位置側に対応する一方の当接面545Aは、ODボタン4の押し込みに応じてトーションバー40Aを
図11中の左回転方向に回動変位させる斜めの傾斜面である。押し込み限度側の他方の当接面545Bは、ODボタン4の押し込み方向に略平行をなす垂直面であり、ODボタン4を押し込んでもトーションバー40Aに新たな回動変位を生じさせない当接面となっている。
【0062】
サポート部543は、神社にある鳥居のようなゲート形状をなし、ODボタン4のラッチ部403を立設方向に進退可能に係止する。サポート部543は、ODボタン4が備える2つのラッチ部403に対応して、それぞれ設けられている。ODボタン4のラッチ爪403Tが係止されるサポート部543の内周形状は、ラッチ爪403Tが進退可能なように縦長の矩形状になっている。ODボタンベース54では、サポート部543とラッチ部403との組み合わせがボタン頭部401を介在して対向配置されており、この組み合わせによりODボタン4の押し込み方向の進退が可能になっている。
【0063】
以上のような各部品を組み合わせたシフトレバーユニット1の基本動作を簡単に説明する。Pレンジにシフトレバー10が位置するとき、ロックピン615がディテント部7の底面71Pに押し付いている。ブレーキペダルの非操作中は、ソレノイド17が非通電状態となり、上記のようにシフトロックリンク15がロック位置(
図6)となる。これにより、境界部71Vを乗り越えられる位置へのロックピン615の移動が不可能となり、シフトボタン50を操作してもPレンジから他のシフトレンジへのシフト操作ができなくなる。
【0064】
図示しない車両のブレーキペダルが踏み込み操作されると、ソレノイド17への通電に応じてシフトロックリンク15がアンロック位置(
図7)に回動変位し、境界部71Vを乗り越え可能な位置へのロックピン615の移動が可能な状態となる。シフトボタン50を操作すれば境界部71Vを乗り越え可能な位置へロックピン615を移動でき(
図7参照。)、DレンジやNレンジなど他のレンジへのシフト操作が可能になる。
【0065】
次に、ODボタン4の操作について説明する。ODボタン4を押し込み操作すると、トーションスプリング40のコイル巻回部40Cが弾性的に圧縮変形し、これにより、ODボタン4を押し戻す付勢力が操作反力のように作用する。さらに、シフトレバーユニット1では、ODボタン4の押し込みに応じて、トーションスプリング40の押込み手前側の巻回端であるトーションバー40Aに回動変位が生じる。なお、他方の巻回端であるトーションバー40Bは、トーションバー当接部544によって回動変位が規制されているため、コイル巻回部40Cの自転が生じることがない。そのため、トーションバー40Aの回動変位に応じて、トーションスプリング40の弾性的な反力が発生する。
【0066】
ODボタン4が押込位置まで押し込まれてトーションバー40Aが角部545Pに到達すると、ODボタン4の外周の凸状のスイッチ押込部407によってコンタクトスイッチ45の可動レバー450が押し込まれる。これによりコンタクトスイッチ45の電気的な接点が導通し、ODボタン4の操作が検出されてオーバードライブ機能のオンオフの切換が実行される。オーバードライブ機能がオンのときのODボタン4の押し込み操作であれば、オーバードライブ機能がオフに切り換えられる。オフのときの押し込み操作であれば、オーバードライブ機能がオンに切り換えられる。
【0067】
上記のようにODボタン4の押し込みに応じたトーションバー40Aの回動変位は、このトーションバー40Aがトーションバー当接部545の当接面545A、Bに押し当たって発生する。ODボタン4の押込変位量に対するトーションバー40Aの回動変位量の変位割合は、トーションバー当接部545の当接面545A、Bの傾斜角度に依存している。トーションバー当接部545では、傾斜角度が斜めの当接面545Aと、傾斜角度が垂直な当接面545Bと、が隣接する角部545Pが設けられている。この角部545Pは、上記の通り、コンタクトスイッチ45の電気的な接点が閉じて押し込み操作が検出される押込位置までODボタン4が押し込まれたときにトーションバー40Aが当接する箇所である。
【0068】
この角部545Pで接続された一方の当接面545Aと他方の当接面545Bとを比較すると、斜めの当接面545Aの方が、ODボタン4の押込変位量に対するトーションバー40Aの回動変位量の変位割合が大きく、垂直な当接面545Bではこの変位割合がゼロと小さくなっている。したがって、ODボタン4を押込位置に向かって押し込む際、トーションバー40Aが角部545Pに到達すると、トーションバー40Aの変位割合がゼロとなって回動変位量の増加がゼロとなり、反力が増加しなくなる。
【0069】
例えば、押し戻し方向の付勢力の発生源として通常のコイルスプリングを採用した一般的なボタンスイッチの場合、前記押込変位量に応じて反力が略比例して増加していく。本例のトーションスプリング40においても、ばね線材をコイル状に巻回したコイル巻回部40Cについては、上記のコイルスプリングと同様の反力を発生させる。一方、トーションバー40Aについては、角部545Pに到達した後、ODボタン4の押込変位量に対する回動変位量の変位割合が小さくなる。つまり、トーションバー40Aが角部545Pに達するまでのODボタン4の押し込みに応じた反力の増加度合いに対して、角部545Pに達した後は、その反力の増加度合いが小さくなる。
【0070】
操作者にとっては、一般的に、ボタンを押し込むに従って反力が次第に増加していくのが自然に感じられ、押し込み操作中に反力の増加度合いが変化すれば、操作する側に何らかの感触が伝わることになる。本例のODボタン4を含むボタンスイッチ4Sでは、押し込み操作が検出される押込位置に対応して角部545Pが形成されている。そのため、押込位置に対応して上記の感触が発生することになり、操作する側では、押込位置にODボタン4を操作したことによる操作感となる。
【0071】
シフトレバーユニット1では、ODボタン4を押し戻すためのトーションスプリング40にトーションバー40Aを設けることで、押込位置までODボタン4を操作したときの操作感を生じさせている。ODボタン4を操作用のボタンとしたボタンスイッチ4Sでは、ODボタン4の押し戻しのためのトーションスプリング40を利用して操作感を発生でき、それ故、板ばね等を利用して操作感を生じさせる機構を設ける場合と比べて部品点数が少なくなっている。
【0072】
シフトレバーユニット1は、上記のように部品点数が少なく軽量で低コストなボタンスイッチ4Sを採用したことで、軽量かつ低コストの優れた特性の製品となっている。
【0073】
本例のODボタン4を含むボタンスイッチ4Sでは、ODボタン4を押し込んで行く際にトーションバー40Aが押し当たる当接面545Aを傾斜する面とする一方、押込位置にODボタン4を押し込んだときにトーションバー40Aが垂直な当接面545Bに押し当たるように構成している。押込位置にODボタン4を押し込んだときにトーションバー40Aが押し当たる当接面を、初期位置側に対応する当接面よりも傾斜角度が緩く前記変位割合が小さい傾斜面としても良い(
図13参照。)。あるいは、傾斜が逆の当接面とし、角部545Pを越えたときにトーションバー40Aの回動変位の一部あるいは全部が弾性復帰するようにしても良い(
図14参照。)。
【0074】
本例は、ODボタン4とボタンベース54との間に、ボタン軸405と軸孔54Hとの嵌め合い構造を形成した例である。ODボタン4及びボタンベース54のいずれか一方に円筒状の立設形状を設けると共に、他方に円筒形状の収容部を設けて、両者の嵌め合い構造によってODボタン4の進退動作を可能としても良い。この場合には、円筒形状の立設形状に対してトーションスプリング40を外挿すると良い。
ODボタン4の進退動作を可能とする嵌め合い構造に抜け止めのためのラッチ機構を設ける一方、サポート部543を省略することもできる。
【0075】
トーションバー40Aが角部545Pを越えたとき、当接面との接触音が発生するように構成しても良い。例えばトーションバー40Aがトーションバー当接部545の角部545Pを越えたときにその回動変位の一部あるいは全部が開放されるように構成し、トーションバー40Aが当接面を叩いて音が発生するようにしても良い。このように構成すれば、トーションバー40Aと当接面との組み合わせによる操作音生成構造を形成でき、押込位置にODボタン4を操作したときに音を発生でき、操作する者に操作音のように聴かせることができる。ボタンスイッチの構成を利用して操作音生成構造を形成すれば、操作音を発生させるために部品点数が増加することもない。
【0076】
コンタクトスイッチ45の電気的な接点が導通したとき、可動レバー450から音が発生するように構成しておくことも良い。この場合には、操作音生成構造としてのコンタクトスイッチ45が発生する音により、ODボタン4の操作感が強調されるという作用効果が生じる。
【0077】
以上のごとく本発明の実施例を詳細に説明したが、これらの実施例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、実施例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して実施例を多様に変形、変更、あるいは適宜組み合わせた技術を包含している。