(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ピストン部材の往復作動方向で、そのピストン部材に対してスラストベアリングを介して隣り合う位置に、前記往復作動方向に沿って往復移動、及び回転可能な回転操作体を備えるとともに、前記回転操作体に対して駆動力を断続する駆動回転体を備え、
前記回転操作体と前記駆動回転体とは、互いの対向面に形成された爪部を備える爪クラッチによって駆動力の断続が行われるように構成してあり、
前記爪クラッチは、前記ピストン部材の前記最退入位置側への移行に伴って前記爪部同士を係合させた入り状態となり、前記ピストン部材の前記最突出位置側への移行に伴って前記爪部同士を離間させた切り状態となるように構成されている請求項1又は3記載のトランスミッション。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態の一例を、図面の記載に基づいて説明する。
【0019】
〔コンバインの全体構成〕
図1は、本発明に係るトランスミッション4を適用した作業車の一例である普通形コンバイン(全稈投入形コンバイン)の全体を示している。
この普通型コンバインは、左右一対のクローラ走行装置1で走行する自走機体Aを備えている。この自走機体Aに対して、その前部位置に運転部Bと、刈取処理装置C(刈取部に相当する)とが備えられている。そして自走機体Aの後部位置には、刈取処理装置Cで刈り取られた穀稈が送り込まれる全稈投入型の脱穀装置Dと、脱穀装置Dから供給される穀粒を貯留するグレンタンクE(穀粒貯留部に相当する)と、グレンタンクEに貯留された穀粒を機外に排出するためのアンローダFとが備えられている。また、自走機体Aの後端部でグレンタンクEと脱穀装置Dとの間に相当する箇所の機体フレーム10上に燃料タンク17が備えられている。
【0020】
そして、機体フレーム10における前部の左右中央側箇所に、エンジン3の出力軸(図示せず)から伝達される動力を、左右のクローラ走行装置1,1に伝える静油圧式無段変速装置30(以下、HSTと称する)、及びトランスミッション4(伝動装置に相当する)が配備されている。
図3及び
図4に示すように、エンジン3の出力軸に備えた出力プーリ(図示せず)と、HST30の入力軸38の入力プーリ38aとの間には、エンジン3の駆動力を伝える伝動ベルト37が掛け渡されている。入力軸38及び入力プーリ38aを支承する入力ケース39は、入力プーリ38aが存在する側とは反対側の端部がHST30の変速ケース35に連結固定され、入力軸38の長手方向での中間部に相当する箇所がトランスミッション4のミッションケース40の上部に固定されている。
【0021】
〔運転部〕
機体フレーム10上に搭載されたエンジン3は、運転部Bの運転座席2の下方位置にあって、そのエンジン3の上方側が箱状のエンジンカバー11で覆われている。運転座席2はエンジンカバー11の上面に備え付けられていて、エンジンカバー11が運転座席2の支持台として用いられている。
このエンジンカバー11は、外側部には吸気ケース11Aが形成され、吸気ケース11Aの外面側には冷却風の吸気するため防塵網が張設された吸気部11Bが形成されている。
【0022】
運転座席2の前方側には操縦塔12が立設され、操縦塔12の上面側に、自走機体Aの操向制御を行う操作具と、刈取処理装置Cの昇降制御を行う操作具とを兼ねる操作レバー13が、前後及び左右に揺動自在に設けられている。
図1に示すように、運転座席2の左側部には、操縦塔12の左横端部位置から後方側へ向けて延設されたサイドパネル14が設けられている。このサイドパネル14の前端部の上面には、自走機体Aの走行速度を制御する変速操作具として、主変速レバー15と副変速レバー16とが設けられている。
【0023】
さらに、サイドパネル14上には排出クラッチレバー(図示せず)が設けられている。排出クラッチレバーは、エンジン3からの駆動力をグレンタンクEの底スクリュー21に対して断続する排出クラッチG(
図1参照)の入り切り操作を行って、アンローダFによる穀粒排出を可能にする状態と穀粒排出を停止する状態とに切換操作するための操作具である。
【0024】
〔刈取処理装置〕
刈取処理装置Cは、植立穀稈の穂先側を掻き込みリール5の回転作動により掻き起こし、その穀稈の株元をカッター6で切断するように構成されている。刈り取られた穀稈(刈取穀稈)は、横送りオーガ7によって横送りされてフィーダ8の入り口近くに寄せ集められる。その全稈がフィーダ8により後方送りされて脱穀装置Dに送り込まれるように構成されている。
また、刈取処理装置Cは、フィーダ8の後端部側に備えたフィーダ駆動軸(図示せず)を支点にして上下揺動自在に構成されている。フィーダ8の上下揺動は、機体フレーム10とフィーダ8の下部とにわたって設けられた油圧シリンダ等のアクチュエータ18によって行われる。このアクチュエータ18の作動による揺動量の設定により穀稈の刈高さの調節が可能に構成されている。
【0025】
フィーダ8の前端側の上方位置に配備された掻き込みリール5は、後端部側の揺動支点(図示せず)回りで前側を上下揺動することにより、フィーダ8に対する掻き込み高さ位置を変更可能に構成されている。このように掻き込みリール5のフィーダ8に対する相対高さを変更することで、刈り高さを変えずに植立穀稈などの刈取対象作物に対する掻き込み高さを変更することができる。この掻き込みリール5の高さ位置の変更は、フィーダ8の上部との間に介装した油圧シリンダで構成されるリール昇降装置(図示せず)の伸縮作動によって行われる。リール昇降装置による昇降作動は、操作レバー13の握り部に設けた図示しない押しボタンスイッチ等の操作入力部からの指令によって行われる。
【0026】
〔脱穀装置〕
脱穀装置Dは、扱室に供給された刈取穀稈の扱き処理を行うように自走機体Aの前後方向に沿う姿勢の軸心周りに駆動回転する軸流型の扱胴(図示せず)、及び扱き処理によって得られた処理物から穀粒を選別する選別処理装置(図示せず)を備えている。
この選別処理装置においては、選別された穀粒のうち、一番物は揚穀装置9によってグレンタンクEに供給し、二番物は二番還元装置19によって扱胴が旋回する扱室(図示せず)に戻され、穀粒以外の藁屑等は、選別処理装置の後部から自走機体Aの後方に落下放出される。
【0027】
〔グレンタンク〕
グレンタンクEは、揚穀装置9から供給される穀粒を貯留するためのタンク本体20を備えている。
このタンク本体20は、自走機体Aへの収納姿勢で、機体前方側に向く前壁20aと、機体後方側に向く後壁20bと、左右の横壁20cとを備えて、ほぼ矩形箱状に形成されている。また、タンク本体20は、自走機体Aの後部位置の縦向き姿勢の上下軸心Y周りでの旋回により自走機体Aに収納される作業姿勢(
図2において実線で示す姿勢)と、自走機体Aから横方向に張り出す点検姿勢(
図2において仮想線で示される姿勢)とに、姿勢切換自在に支持されている。
このグレンタンクEの旋回中心となる前記上下軸心Yは、タンク本体20の後面側に設けたアンローダFが備える縦搬送筒23の筒軸心と合致するように構成されている。
【0028】
図1乃至
図4に示すように、前記グレンタンクEは、タンク本体20に貯留した穀粒を後方に向けて送り出す底スクリュー21をタンク本体20の底部に備えている。
タンク本体20の底壁の大部分は、タンク本体20が自走機体Aに収納された作業姿勢において、揚穀装置9から供給される穀粒がタンク本体20の左右方向での底部中央側へ集められるように、左右方向で中央側ほど低位となる先細り形状の傾斜面に形成されている。このような構造であるため、底スクリュー21は、タンク本体20の左右方向でのほぼ中央位置に配設されている。
【0029】
底スクリュー21は、そのスクリュー軸21Aの前端がタンク本体20の前壁20aよりも前方側に突出されている。このスクリュー軸21Aの前端に対してエンジン3からの駆動力が伝達されるように、かつ伝動上手側に設けてある排出クラッチG(
図1参照)を介して、エンジン3からの駆動力が断続可能であるように構成されている。
タンク本体20の後壁20bには、底スクリュー21から送られる穀粒をアンローダFに送る排出用筒部22が後方向きに突出する状態で設けられている。排出用筒部22は、後端側が上向きに屈曲形成され、その上向きの端面にアンローダFの縦搬送筒23の下端側が接続されている。
縦搬送筒23の内部に設けられた縦スクリュー軸23Aの下端部のベベルギヤ(図示せず)に対して、底スクリュー21のスクリュー軸21Aの後端部に備えたベベルギヤ(図示せず)を噛合させて動力を伝達するように構成されている。これによって、底スクリュー21からアンローダFの縦搬送筒23側へ穀粒が搬出される状態となる。
【0030】
〔アンローダ〕
アンローダFは、上向きに立設された直管状の縦搬送筒23と、その縦搬送筒23の上端部に接続された横搬送筒24とを備えて構成されている。横搬送筒24は、縦搬送筒23とともに前記上下軸心Y回りで左右揺動可能に、かつ、水平横軸心X回りで起伏揺動可能に構成されている。
縦搬送筒23は、内部に前記縦スクリュー軸23Aを内装していて、底スクリュー21の後端部から送り出される穀粒を上昇搬送する上向きの縦搬送経路を構成している。縦搬送筒23の上端部に接続された横搬送筒24は、内部に横スクリュー軸24Aを内装していて、縦搬送筒23の上端部から受け継いだ穀粒を、水平方向などの機体外方側へ向けて搬送する横向きの搬送経路を構成している。
【0031】
アンローダFは、その縦搬送筒23が、グレンタンクEの排出用筒部22に対して、縦搬送筒23の筒軸心に沿う上下軸心Y回りで旋回可能に接続されている。そして、縦搬送筒23の上下軸心Y回りでの旋回作動は、旋回駆動機構26によって行われる。旋回駆動機構26は、縦搬送筒23の下端部外周に備えた旋回用ギヤ部(図示せず)を電動モータ(図示せず)のピニオンギヤで駆動するように構成されている。
また、横搬送筒24の水平横軸心X回りでの起伏揺動は、縦搬送筒23の上部との間にわたって設けられた油圧シリンダ25の伸縮作動によって行われるように構成されている。
【0032】
〔油圧駆動系〕
刈取処理装置Cの昇降作動や、走行変速、及び操向操作を行うための油圧駆動系について説明する。
刈取処理装置Cは、
図2に示すように、昇降用の油圧制御ユニット27の作動によって昇降作動するように構成されている。油圧制御ユニット27には、オイルタンク28に貯留されているオイルが第1油圧ポンプ29の作動によって供給される。油圧制御ユニット27は、機体フレーム10とフィーダ8とにわたって架設した前記油圧シリンダ等のアクチュエータ18、及び、このアクチュエータ18に対する操作圧を変更する昇降用のバルブユニット(図示せず)、などを備えている。
【0033】
昇降用のバルブユニットは、操作レバー13に昇降用の機械式連係機構(図示せず)を介して連係している。そして、操作レバー13の前後方向での揺動操作に基づいて、オイルタンク28と第1油圧ポンプ29と昇降シリンダとの間におけるオイルの流れを制御することにより、アクチュエータ18に対する操作圧を変更するように構成している。この構成から、操作レバー13を前後方向に揺動操作することにより、刈取処理装置Cを、収穫対象の未刈り穀稈を収穫する下側の作業領域と収穫しない上側の非作業位置とに昇降させることができる。
【0034】
HST30を構成する油圧ポンプ31と油圧モータ32とは、変速ケース35に内蔵されている。変速ケース35は、油圧ポンプ31と油圧モータ32とを収納するケース本体35A、及びポートブロック35Bを備えている。そして、油圧ポンプ31のポンプ軸がHST30の入力軸33になり、かつ、油圧モータ32のモータ軸がHST30の出力軸34になるように構成されている。その入力軸33及び出力軸34が左右向きになる状態で、かつ油圧ポンプ31の真下に油圧モータ32が位置する縦長の左右向き姿勢で、HST30が自走機体Aに装備されている。油圧ポンプ31には、アキシャルプランジャ形の可変容量ポンプを採用している。油圧モータ32には、アキシャルプランジャ形の固定容量モータを採用している。
【0035】
HST30は、油圧ポンプ31のポンプ斜板(図示せず)を操作する変速操作軸36を、変速ケース35の前壁から前方に突出する状態で備えている。変速操作軸36は、主変速レバー15の前後方向での揺動操作に連動して、ポンプ斜板の操作角が主変速レバー15の操作位置に対応した角度に変更されるように、その前端部に備えた連係アーム36aを、主変速用の機械式連係機構36bを介して主変速レバー15に連係している。
つまり、HST30は、走行変速用の主変速装置として機能するように構成した状態で自走機体Aに装備されている。
【0036】
図2に示すように、ミッションケース40に配備されている各サイドクラッチブレーキユニット48の油室100には、第2油圧ポンプ102の作動によって、ミッションケース40に貯留している潤滑用のオイルが作動用として供給される。この第2油圧ポンプ102から各サイドクラッチブレーキユニット48の油室100への作動油の供給は、ステアリング用のバルブユニット103を介して行われる。
ステアリング用のバルブユニット103は、操作レバー13の左右方向での操作に基づいて各サイドクラッチブレーキユニット48の油室100に対するオイルの流れを切り替える切替バルブ104、及び、操作レバー13の操作に基づいて左右のサイドクラッチブレーキユニット48の油室100に対するリリーフ圧を変更する可変リリーフバルブ105、などを備えている。このように、操作レバー13の左右方向での揺動操作によって、自走機体Aの操向操作が行われる。
【0037】
〔トランスミッション〕
次に、トランスミッション4の構成について説明する。
図3〜6に示すように、トランスミッション4は、鋳造品で構成されたミッションケース40に、左右向きの入力軸44と従動軸45とサイドクラッチ軸46、コンスタントメッシュ式の選択歯車式に構成した副変速機構47、一対のサイドクラッチブレーキユニット48、及び、左右の伝動機構49、などを内蔵して、入力軸44から入力された動力を変速して伝動下手側の走行駆動軸50へ出力するように構成されている。ミッションケース40の下部には、左右の対応するクローラ走行装置1にわたる左右向きの左右の走行駆動軸50、及び、左右の走行駆動軸50を個別に外囲した状態で回転可能に支持する左右の駆動軸ケース51、などを備えている。各伝動機構49は、サイドクラッチ軸46と走行駆動軸50との間に中継軸98を備え、その中継軸98を含めた配設された減速ギヤ伝動機構によって構成されている。
【0038】
ミッションケース40は、上下方向の分割線SLに沿う分割面を境にして左右に分割可能に構成された左側の半割ケース40Lと右側の半割ケース40Rとを備えて構成されている。そして、左右の半割ケース40L,40Rをボルト連結することにより、その内部に副変速機構47やサイドクラッチブレーキユニット48等を配設するための機器配設用空間40Sが形成され、かつ、その機器配設用空間40Sが作動油の貯留用空間を兼ねている。
また、ミッションケース40には、
図5及び
図6に示すように、ミッションケース40の上部に、サイドクラッチブレーキユニット48等の油圧機器で使用された作動油が戻されてくる給油口41と、ミッションケース40の空気を抜くためのエアー抜き孔42とが設けられている。給油口41には油圧機器からの作動油を導く給油管41aが接続されている。エアー抜き孔42には、取り外すことでエアー抜きを行い易くでき、装着することで外部からの異物が侵入しないようにするための栓体42aが装着されている。
【0039】
そして、ミッションケース40の内部側には、給油口41の下側に対向する箇所に、庇状の流下ガイド板部43が設けられている。この流下ガイド板部43では、給油口41から注入された作動油がエアー抜き孔42側へ短絡的に流れ込まないように規制しながら、下方に流下案内するためのものである。
流下ガイド板部43は、給油口41から注入される作動油が直接に機器配設用空間40Sの液面に落下しないように、給油口41の直下に対向する箇所に庇状の案内面43aを備えている。この案内面43aは、給油口41の下方に近い側がエアー抜き孔42に近い側よりも低くなるように、給油口41の下方に近い側ほど下位となる傾斜状に形成されている。
案内面43aのうち、エアー抜き孔42に近い側の端部は、エアー抜き孔42よりも手前で、エアー抜き孔42側と給油口41側とが隔絶されるようにミッションケース40の内面に一体に接続している。給油口41の下方に近い側では、案内面43aの一部が給油口41の下方近くでV字状に屈曲形成されて、案内面43aの上に注入された作動油を集めながら流下させる注ぎ口部43bが設けられている。
【0040】
図6に示すように、ミッションケース40は、その前壁の一部にオイル吸込口40a、及び内部油路40bを形成してあり、その内部油路に接続したオイルフィルタ106を経て、サイドクラッチブレーキユニット48等の油圧機器に作動油を供給する第2油圧ポンプ102側への作動油供給が可能であるように構成されている。
【0041】
図4及び
図5に示すように、ミッションケース40は、搭乗運転部側となる右側壁の上部に(
図4中では左側)、HST30のポートブロック35Bに備えた出力部に連接する入力部を備えている。そして、その入力部にポートブロック35Bの出力部を連接させた状態で、その右側壁の上部にHST30をボルト連結によって装備している。
トランスミッション4の入力軸44は、その入力側の端部となる右端部(
図4中では左側)を、HST30の出力軸34に、筒軸59を介してスプライン嵌合することにより、出力軸34の軸心を中心にして出力軸34と一体回転するように構成されている。
【0042】
図5及び
図6に示すように、副変速機構47は、ミッションケース40における機器配設用空間40Sの上部に、畦越え走行時などに使用する使用頻度が最も低い低速伝動用の低速駆動ギヤ60と低速従動ギヤ61、作業走行時などに使用する使用頻度が比較的高い中速伝動用の中速駆動ギヤ62と中速従動ギヤ63、作業走行時や移動走行時などに使用する使用頻度が最も高い高速伝動用の高速駆動ギヤ64と高速従動ギヤ65、及び、それらのギヤ選択操作を可能にするシフト機構66、などを配備して、シフト機構66のギヤ選択操作による3段の変速が可能となるように構成している。
シフト機構66は、低速従動ギヤ61又は高速従動ギヤ65の何れかを選択する第1シフタ67、及び中速従動ギヤ63を選択する第2シフタ68を備えて、選択された何れかの従動ギヤ61,63,65から変速動力を取り出して従動軸45に伝えるように構成されている。
【0043】
第1シフタ67及び第2シフタ68は、第1シフタ操作用の第1フォーク部69Aと第2シフタ操作用の第2フォーク部69Bとを備えたシフトフォーク69が、左右向きの変速支軸70上を相対摺動し、位置保持用のデテント機構71で位置保持されることによって各従動ギヤ61,63,65の選択操作を行うように構成されている。
シフトフォーク69は、変速支軸70上でシフトフォーク69を左右方向に摺動操作する操作アーム72、及び、操作アーム72を支持する前後向きの変速操作軸73、連係アーム77などの、副変速用の機械式連係機構78を介して副変速レバー16に連係されている。
【0044】
上記のように、副変速機構47は、トランスミッション4の入力軸44から従動軸45に伝動する状態で、トランスミッション4の入力軸44と従動軸45とにわたって装備されている。そして、副変速レバー16の操作に連動したシフト機構66のギヤ選択操作によって従動軸45に連動連結する従動ギヤ61,63,65を選択することにより、その伝動状態が、HST30の出力軸34からの動力を、低速駆動ギヤ60及び低速従動ギヤ61を介して従動軸45に伝達する低速伝動状態と、中速駆動ギヤ62及び中速従動ギヤ63を介して従動軸45に伝達する中速伝動状態と、高速駆動ギヤ64及び高速従動ギヤ65を介して従動軸45に伝達する高速伝動状態とに、択一的に切り替わる副変速装置として機能するように構成されている。
【0045】
図4〜6に示すように、従動軸45は、その中央部における中速従動ギヤ63と高速従動ギヤ65との間の部位に、副変速機構47の出力回転体として機能する小径の出力ギヤ81を、従動軸45と出力ギヤ81とが一体回転するようにスプライン嵌合している。
サイドクラッチ軸46は、ミッションケース40における機器配設用空間40Sの上下中間部に配備している。そして、その左右中間位置に、出力ギヤ81と噛み合い連動する伝動回転体としての大径の伝動ギヤ82を、サイドクラッチ軸46と伝動ギヤ82とが相対摺動不能な状態で一体回転するようにスプライン嵌合している。つまり、従動軸45からサイドクラッチ軸46にわたる伝動構造を、出力ギヤ81及び伝動ギヤ82によるギヤ伝動式に構成して、副変速機構47による変速後の動力を、従動軸45からサイドクラッチ軸46に減速伝達するように構成している。
【0046】
〔サイドクラッチブレーキユニット〕
次に、トランスミッション4における左右のサイドクラッチブレーキユニット48に関する構成について説明する。
【0047】
図4及び
図5に示すように、各サイドクラッチブレーキユニット48は、それぞれ、伝動ギヤ82から対応するクローラ走行装置1への伝動を断続する噛み合い式のサイドクラッチ83と、対応するクローラ走行装置を制動する多板式のサイドブレーキ84とを備えている。
そして、サイドクラッチ軸46の軸上において、伝動ギヤ82を中心にした左右対称になるように伝動ギヤ82を挟んだ状態で左右に分散配備してある。左側のサイドクラッチブレーキユニット48が、左側の伝動機構49及び左側の走行駆動軸50を介して左側のクローラ走行装置1に作用し、かつ、右側のサイドクラッチブレーキユニット48が、右側の伝動機構49及び右側の走行駆動軸50を介して右側のクローラ走行装置1に作用するように構成されている。
このサイドクラッチブレーキユニット48に対して、伝動上手側から伝えられる動力を伝達する駆動軸に相当するところの軸が前記サイドクラッチ軸46である。
【0048】
〔サイドクラッチに関して〕
出力ギヤ81及び伝動ギヤ82を介して伝動上手側の従動軸45からの駆動力が伝えられるサイドクラッチ軸46に対して、そのサイドクラッチ軸46の軸心方向での摺動により着脱可能な筒軸85が、相対回転可能な状態で外嵌されている。
そして、サイドクラッチ軸46の軸端部近くに形成したスプライン部46Aに駆動側クラッチ体87(駆動回転体に相当する)が、サイドクラッチ軸46と一体回動するようにスプライン嵌合されている。そのサイドクラッチ軸46に外嵌する筒軸85の外端側の軸端部近くに形成した第1スプライン軸部85Aに、従動側クラッチ体86(回転操作体に相当する)が筒軸85と一体回動するようにスプライン嵌合されている。
駆動側クラッチ体87と従動側クラッチ体86とは、サイドクラッチ軸46の軸心方向で互いに対向する面のそれぞれに、歯部86A,87A(爪部に相当する)を備え、駆動側クラッチ体87に対する従動側クラッチ体86の遠近移動に伴って互いの歯部86A,87Aが係脱されるように、ドッグクラッチ型式のサイドクラッチ83(爪クラッチに相当する)を構成している。
【0049】
各サイドクラッチ83は、駆動側クラッチ体87と従動側クラッチ体86との歯部86A,87Aが噛み合う入り位置に向けて従動側クラッチ体86を付勢する圧縮バネ88(付勢手段に相当する)、従動側クラッチ体86を入り位置にて受け止めるC字形のサークリップからなる止め輪89、及び、圧縮バネ88の一端部を受け止めるバネ受け90、などを備えている。
したがって、従動側クラッチ体86が、圧縮バネ88の作用によって入り位置に摺動することにより、従動側クラッチ体86の歯部86Aと駆動側クラッチ体87の歯部87Aとが噛み合う伝動状態に切り替わり、かつ、圧縮バネ88の作用に抗して切り位置に摺動することにより、従動側クラッチ体86の歯部86Aと駆動側クラッチ体87の歯部87Aとが噛み合いを解除する遮断状態に切り替わるように構成されている。
【0050】
各筒軸85は、伝動ギヤ82に近接する内端側に前記第1スプライン軸部85Aよりも大径の第2スプライン軸部85Bを備えている。そして、第2スプライン軸部85Bの外端に位置する段差部85Cがバネ受けとして機能するように構成している。又、第1スプライン軸部85Aの外端部に、前記止め輪89が着脱可能に係入する周溝部分85Dを形成している。
【0051】
各従動側クラッチ体86は、それらの内周部に、筒軸85の第1スプライン軸部85Aに相対摺動可能にスプライン嵌合するスプラインボス部86Bを備え、筒軸85と一体回動するように構成されている。
従動側クラッチ体86の径方向で、内周側のスプラインボス部86Bと外周側のリム部86Cとの中間位置で、前記歯部86Aよりも径方向での外方側箇所には、サイドクラッチ軸46の軸心方向で前記駆動側クラッチ体87が存在する機体横外方側にスラストベアリング80を装着してある。このスラストベアリング80は、従動側クラッチ体86とその従動側クラッチ体86を押圧操作するための押圧ピストン101(ピストン部材に相当する)との間に介在されていて、押圧ピストン101の押圧作用を受けて従動側クラッチ体86を駆動側クラッチ体87から離れる側へ押圧操作するように構成されている。
従動側クラッチ体86の歯部86A、及び、これに噛合する駆動側クラッチ体87の外歯状の歯部87Aは、スラストベアリング80の装着箇所よりも径方向での内方側箇所に位置する状態で、かつ周方向に一定ピッチで形成されている。
【0052】
各駆動側クラッチ体87は、サイドクラッチ軸46に対するサイドクラッチ軸46の軸心方向での摺動による着脱が可能な状態でサイドクラッチ軸46と一体回転するように、サイドクラッチ軸46における対応する筒軸85よりも軸端側の両端部位に、筒軸85と隣接する状態でスプライン嵌合している。これにより、各駆動側クラッチ体87が、左右のサイドクラッチ83において、サイドクラッチ軸46を介して伝動ギヤ82と一体回転する駆動側回転体として機能するように構成されている。
【0053】
〔サイドブレーキに関して〕
サイドブレーキ84は、摺動ユニット91に外嵌して一体回転する複数のセパレータプレート95、複数のセパレータプレート95とサイドクラッチ軸46の軸心方向に交互に配置する複数のブレーキディスク96と単一のプレッシャプレート97、及び、複数のブレーキディスク96と単一のプレッシャプレート97とを回り止め状態で支持するブレーキハウジング94、などを備えて構成されている。
【0054】
摺動ユニット91は、筒軸85と一体回転するように第2スプライン軸部85Bに外嵌するスプラインボス92を伝動ギヤ82の左右両側に備えている。各スプラインボス92は、ミッションケース40内の左右中央側に位置する内端側が駆動ギヤ部分92Aとして機能し、かつ、ミッションケース40内の左右一端側に位置する外端側がブレーキハブ部分92Bとして機能するように兼用部品に構成されている。サイドクラッチ軸46の軸上における伝動ギヤ82と左右の摺動ユニット91との間には、それらの間においてサイドクラッチ軸46の軸心方向に働く力を受け止めるスラストカラー(図示せず)を介装している。
スプラインボス92と筒軸85と従動側クラッチ体86と圧縮バネ88と止め輪89とバネ受け90とによって、サイドクラッチ軸46に対して、サイドクラッチ軸46の軸心方向に着脱可能に一体摺動する摺動ユニット91を構成している。
【0055】
ブレーキハウジング94は、セパレータプレート95及びブレーキディスク96などを外囲する略筒状で、ミッションケース40における左右の側壁の上下中間部位に一体形成している。そして、複数のブレーキディスク96と単一のプレッシャプレート97とを、サイドクラッチ軸46の軸心方向に摺動可能な状態で回転不能に支持している。又、それらの内端部位に、サイドクラッチ軸46の軸心に沿ってミッションケース40の内部側に摺動するセパレータプレート95及びブレーキディスク96を受け止める受止部94Aを備えている。
【0056】
各従動側クラッチ体86のリム部86Cが、対応するサイドブレーキ84のセパレータプレート95及びブレーキディスク96に作用する押圧部として機能する状態に構成している。これにより、各サイドブレーキ84は、対応する従動側クラッチ体86が、圧縮バネ88の作用に抗して、前述した切り位置から、入り位置とは反対方向に位置する制動位置に向けて摺動するのに伴って、複数のセパレータプレート95及びブレーキディスク96がリム部86Cの押圧作用による圧接を解除する制動解除状態から、複数のセパレータプレート95及びブレーキディスク96がリム部86Cの押圧作用により圧接する制動状態に切り替わる。そして、圧縮バネ88の作用によって制動位置から切り位置に向けて摺動するのに伴って、制動状態から制動解除状態に切り替わるように構成されている。
【0057】
〔クラッチブレーキ操作構造について〕
従動側クラッチ体86を押圧操作するための押圧ピストン101は次のように構成されている。
摺動ユニット91は、従動側クラッチ体86がミッションケース40に備えた環状のシリンダ空間となる油室100(シリンダ室に相当する)に対向する状態でサイドクラッチ軸46の軸上に装備されている。そして、この油室100に、従動側クラッチ体86を摺動操作する環状の押圧ピストン101を、サイドクラッチ軸46の軸心方向に摺動可能な状態で嵌入装備している。このように、押圧ピストン101及び油室100が、ともに環状(中空筒状に相当する)に形成されている。
【0058】
押圧ピストン101は、ステアリング用のバルブユニット103の作動によりサイドクラッチ軸46の軸心方向に摺動し、この摺動により、対応する従動側クラッチ体86をサイドクラッチ軸46の軸心方向に摺動操作するように構成している。具体的には、バルブユニット103の作動による油室100の昇圧に伴って、サイドクラッチ軸46の軸心に沿ってサイドクラッチ軸46の中央側に摺動し、この摺動により、対応する従動側クラッチ体86を圧縮バネ88の作用に抗してクラッチ入り位置からクラッチ切り位置に摺動操作し、その後、クラッチ切り位置から制動位置に摺動操作する。
又、バルブユニット103の作動による油室100の減圧に伴って、サイドクラッチ軸46の軸心に沿ってサイドクラッチ軸46の軸端側に摺動し、この摺動により、対応する従動側クラッチ体86を圧縮バネ88の作用によって制動位置からクラッチ切り位置に摺動し、その後、クラッチ切り位置からクラッチ入り位置に摺動操作される。
【0059】
ステアリング用のバルブユニット103は、操作レバー13の左右方向での揺動操作に基づいて作動状態が切り替わるように、操作レバー13にステアリング用の機械式連係機構79を介して連係している。具体的には、操作レバー13が中立位置に位置する状態では、各押圧ピストン101に対する操作圧を減圧する減圧状態を維持する。操作レバー13が中立位置から左方に揺動操作されると、減圧状態から左側の押圧ピストン101に対する操作圧を昇圧する左昇圧状態に切り替わる。操作レバー13が中立位置から右方に揺動操作されると、減圧状態から右側の押圧ピストン101に対する操作圧を昇圧する右昇圧状態に切り替わる。操作レバー13が中立位置に揺動操作されると、左昇圧状態又は右昇圧状態から減圧状態に切り替わる。
【0060】
この構成から、操作レバー13を中立位置に保持することにより、ステアリング用のバルブユニット103を減圧状態に維持することができ、これにより、各従動側クラッチ体86を入り位置に維持することができる。その結果、走行状態を、左右のクローラ走行装置1を等速駆動する直進状態に維持することができる。又、操作レバー13を中立位置から左方に揺動操作することにより、ステアリング用のバルブユニット103を減圧状態から左昇圧状態に切り替えることができ、これにより、右側の従動側クラッチ体86を入り位置に維持しながら、左側の従動側クラッチ体86を入り位置から切り位置又は制動位置に摺動させることができる。その結果、走行状態を、直進状態から左側のクローラ走行装置1を従動又は制動させて車体を左方向に旋回させる左旋回状態に切り替えることができる。
【0061】
逆に、操作レバー13を中立位置から右方に揺動操作することにより、ステアリング用のバルブユニット103を減圧状態から右昇圧状態に切り替えることができ、これにより、左側の従動側クラッチ体86を入り位置に維持しながら、右側の従動側クラッチ体86を入り位置から切り位置又は制動位置に摺動させることができる。その結果、走行状態を、直進状態から右側のクローラ走行装置1を従動又は制動させて車体を右方向に旋回させる右旋回状態に切り替えることができる。そして、左旋回状態又は右旋回状態において、操作レバー13を中立位置に揺動操作することにより、ステアリング用のバルブユニット103を左昇圧状態又は右昇圧状態から減圧状態に切り替えることができ、これにより、切り位置又は制動位置に位置する左右いずれか一方の従動側クラッチ体86を入り位置に摺動させることができる。その結果、走行状態を、左旋回状態又は右旋回状態から直進状態に切り替えることができる。
【0062】
〔ピストン部材の構造〕
従動側クラッチ体86を押圧操作するための押圧ピストン101は、次のように構成されている。
図7乃至
図9に示すように、自走機体Aの横外方側から横内方側へ向けて従動側クラッチ体86を押圧操作する押圧ピストン101は、ミッションケース40のケース内壁側に形成された油室100に横外方側を挿嵌され、横内方側へ向く端部が、スラストベアリング80を介して従動側クラッチ体86を横内方側へ押圧するように構成されている。
【0063】
前記油室100に挿嵌される押圧ピストン101は、環状の油室100と同様に、サイドクラッチ軸46の軸心と同心の環状に形成されており、従動側クラッチ体86及びスラストベアリング80も同心の環状に形成されている。
押圧ピストン101を戻し側へ操作する圧縮バネ88は、サイドクラッチ軸46に外嵌された筒軸85に対して外装された状態のコイルスプリングによって構成されている。この圧縮バネ88の横外方側の端部が、従動側クラッチ体86の前記押圧ピストン101が当接する側とは反対側の面に対して、ほぼ全周に当接するように配設されている。
【0064】
押圧ピストン101には、
図7乃至
図9、及び
図10(a),(b)に示すように、環状の押圧ピストン101の内周面101a(内向きの周面に相当する)の一部に、上向きの凹部101cが形成されている。
つまり、環状の押圧ピストン101は、その横内方側の端部における内周面101aが、横外方側の端部における内周面101aよりも、段差d1分だけ径の大きな部分となるように形成してあり、この段差d1分だけ径の大きな部分の内周面101aが、環状の押圧ピストン101のうちの下部で上向きの凹部101cを構成している。
押圧ピストン101の外周面101b(外向きの周面に相当する)は、油室100の内向きの外側周面100b(内向きの周面に相当する)に摺接した状態で摺動可能であるように、左右方向(伸縮作動方向)では平坦な周面に形成されている。
【0065】
このように上向きの凹部101cが設けられた押圧ピストン101では、
図10(a)に示すように、環状の押圧ピストン101のうちの下部における上向きの凹部101cと、その上向きの凹部101cと対向する位置で下向き面となるところの、油室100の内側周面100aとの間に、前述した段差d1に相当する上下方向幅を有した空間s1が生じた状態となる。
この空間s1が存在することによって、
図8、
図9、及び
図10に示すように、上向きの凹部101c上に堆積した異物C1等が、その凹部101cの上側に載ったままで押圧ピストン101の摺動作動が行われても、その摺動作動に伴って異物C1等が油室100の内側周面100aと押圧ピストン101の内周面101aとの摺接面内に引き込まれる可能性が少なくて済む。
【0066】
この上向きの凹部101cは、
図8に示すように、あるいは
図10(a)に仮想線で示すように、押圧ピストン101が最突出位置にある状態では、油室100から所定量L1だけ横内方側へ突出している範囲の内周面101aにのみ存在するように形成されている。この最突出位置で油室100の内部に入り込んでいる範囲の押圧ピストン101の内周面101aには形成されていない。
したがって、
図9及び
図10(a)に実線で示すところの最退入位置から、
図8、及び
図10(a)の仮想線で示すところの最突出位置にわたる押圧ピストン101の伸縮ストロークL2での作動範囲では、押圧ピストン101のうち、上向きの凹部101cが形成されている範囲が油室100に対して出退作動する。しかし、上向きの凹部101cが形成されている範囲以外の押圧ピストン101の横外方側の部分は、油室100の内部のみで往復移動し、油室100から横内方側へは露出しないように構成されている。
【0067】
図7乃至
図9、及び
図10に示されているように、上向きの凹部101cは、従動側クラッチ体86の歯部86Aと駆動側クラッチ体87の歯部87Aとが噛み合う箇所の下方に位置している。この位置では、歯部86A,87A同士が噛み合い始める際、あるいは離間し始める際などに、互いに摺接することによって生じた摩耗粉等の異物C1が、
図10(a)に実線で示すように、円弧状に湾曲した上向きの凹部101cの最下点近くで堆積し易い。しかし、その堆積した異物C1は、内側周面100aと押圧ピストン101の内周面101aとの摺接面よりも下方側に位置しているので、その摺接面内に異物C1が引き込まれる虞は少ない。
仮に、このような上向きの凹部101cが存在しなければ、
図10(a)に仮想線で示すように、異物C1が、内側周面100aと押圧ピストン101の内周面101aとの摺接面と同じ箇所に多く位置している状態となるので、その摺接面内に異物C1が引き込まれ易くなる虞がある。
【0068】
また、上向きの凹部101cは、
図7及び
図9に示すように、従動側クラッチ体86の歯部86Aと駆動側クラッチ体87の歯部87Aとが噛み合ったクラッチ入り状態では、油室100の内部に入り込むように位置している。
そして、上向きの凹部101cと内側周面100aの下向き面との間の空間s1は、油室100の開口側及び押圧ピストン101の横内方側の端部近くが開放されていて、その開放された端部近くにスラストベアリング80が存在している。
したがって、従動側クラッチ体86の歯部86Aと駆動側クラッチ体87の歯部87Aとが噛み合ったクラッチ入り状態で、スラストベアリング80の従動側クラッチ体86に当接する側のケース部分が従動側クラッチ体86の回転とともに回転する。このように前記空間s1の開放側に位置するスラストベアリング80の、従動側クラッチ体86に当接している側のケース部分や、従動側クラッチ体86自体が回転していることで、ミッションケース40内の作動油に前記空間s1内での流れが生じて、その空間s1内に堆積していた異物C1が空間s1外へ流れ出やすくなる。
そして、上向きの凹部101cが形成されている範囲以外の押圧ピストン101の内周面101aのうち、横外方側の部分は、油室100の内部のみで往復移動して、油室100から露出しないように構成されているので、この上向きの凹部101cが形成されている範囲以外の押圧ピストン101の内周面101aの横外方側の部分には、異物C1が堆積する虞はない。
【0069】
〔シール材の配置〕
図7乃至
図9に示すように、押圧ピストン101を往復摺動自在に内装する油室100には、押圧ピストン101の最突出位置を定めるための逃がし溝107と、押圧ピストン101と油室100の内面との間で、外部の異物が侵入することを抑制するためのシール機構108とが設けられている。
前記逃がし溝107は、油室100の外側周面100bに開口する環状溝によって構成してある。したがって、押圧ピストン101が最退入位置側に存在している状態では、この逃がし溝107は押圧ピストン101によって閉塞されているが、押圧ピストン101が横内方側へ移動して、その横外方側の端部が、逃がし溝107の存在箇所にまで到達すると、油室100内の圧油が室外へ排出されて、押圧ピストン101はそれ以上の横内方側への移動を停止する。この位置が押圧ピストン101の最突出位置である。
【0070】
油室100の内面には、前記逃がし溝107よりも横内方側で、かつ油室100の外側周面100bの横内方側の端部よりも横外方側寄りの箇所に、前記シール機構108が設けられている。
このシール機構108は、油室100の内側周面100aで左右方向に所定間隔を隔てて配設された2本のシール材108aと、油室100の外側周面100bに配設された1本のシール材108bとを備えたものである。この油室100の外側周面100bに配設された1本のシール材108bは、左右方向で、内側周面100aに配設された2本のシール材108aの中間に位置するように設けてある。
【0071】
これによって、油室100の内側周面100aで左右方向に所定間隔を隔てて配設された2本のシール材108aと、油室100の外側周面100bに配設された1本のシール材108bとが、押圧ピストン101の往復作動方向での前後に位置ずれして、前記2本のシール材108a同士の間に別の1本のシール材108bが位置し、左右方向に沿う縦断面視では、ほぼ三角形状に配設されている。
【0072】
シール機構108をこのように配設することで、次のような利点がある。
つまり、内側周面100aで左右方向に所定間隔を隔てて2本のシール材108aを配設したことにより、油室100の内奥側に位置するシール材108aによって、押圧ピストン101を押し出し操作する際の圧油の漏れを抑制し、油室100の開放端側に位置するシール材108aによって、異物C1の入り込みを抑制し得る。
また、油室100の外側周面100bには2本ではなく、1本のシール材108bが配設されている。これは外側周面100b側では、押圧ピストン101の周面との間で異物C1が入り込む虞がないと考えられ、圧油の漏れを抑制するためのものを設けるだけのものであるから、構造の簡素化を図り得る。
【0073】
さらに、シール機構108が、油室100の内側周面100a側に配設された2本のシール材108aと、外側周面100b側に配設された1本のシール材108bとを三角形状に配置して押圧ピストン101を支持するので、押圧ピストン101の姿勢を安定させやすい。つまり、内側周面100a側と外側周面100b側とのそれぞれに各1本のシール材108a,108bを配設して押圧ピストン101を2点で支持する構造のものに比べると、押圧ピストン101の姿勢を3点で安定良く支持し易い。
【0074】
〔止め輪の構造〕
従動側クラッチ体86を入り位置にて受け止めるC字形のサークリップからなる止め輪89は、
図11に示すように、従動側クラッチ体86との当接箇所に傾斜面89a(傾斜した面に相当する)を備えている。
この構造では、筒軸85に摺動自在に外嵌している従動側クラッチ体86が、圧縮バネ88の付勢力f0を受けて、図中右方向へ押圧されている。従動側クラッチ体86が止め輪89の傾斜面89aに当接すると、圧縮バネの付勢力f0が、右方向と下方向との二方向への分力f1,f2として作用する。
右方向への分力f1は、従動側クラッチ体86をクラッチ入り側へ戻し操作する作用力となるが、下方向への分力f2は、止め輪89を周溝部分85Dの奥側へ押し込む方向に作用し、止め輪89を縮径するように作用する。
【0075】
したがって、例えば、上記のような傾斜面89aを備えていず、圧縮バネの付勢方向に対して垂直な面を有した止め輪89で従動側クラッチ体86の移動を止めるような構造を採用したものに比べて、止め輪89の脱落を避けやすい点で有利である。つまり、周溝部分85Dで保持されている止め輪89に対して、筒軸85の軸線方向である図中右方向へ向けて、圧縮バネ88の付勢力によって従動側クラッチ体86が衝撃的に、かつ頻繁に当接する状態が繰り返され易い。そのため、周溝部分85Dの幅が広がったり、止め輪89自体が変形したりして、周溝部分85Dから止め輪89が抜け出してしまう虞がある。
これに比べて、前記傾斜面89aを備えた止め輪89では、従動側クラッチ体86をクラッチ入り側へ戻し操作する圧縮バネ88の作用力の一部を、止め輪89を周溝部分85Dの奥側へ押し込む方向への作用力として利用できるので、止め輪89が周溝部分85Dから抜け出す可能性を低減できる。
【0076】
〔別実施形態の1〕
上記の実施形態では、上向きの凹部101cが、押圧ピストン101が最突出位置にある状態で、油室100から所定量L1だけ横内方側へ突出している内周面101aにのみ存在するように形成された構造のものを例示したが、この構造に限られるものではない。
例えば、
図12(b)に実線で示すように、押圧ピストン101が最退入位置にある状態で、油室100から所定量L1だけ横内方側へ突出している内周面101aに上向きの凹部101cを形成し、この最退入位置で油室100の内部に入り込んでいる箇所の押圧ピストン101の内周面101aには上向きの凹部101cを形成していないように構成してもよい。
この構造では、最退入位置で従動側クラッチ体86が駆動されているとき、上向きの凹部101cの上側が全体的に大きく開放されているので、異物C1が存在した場合の、作動油の流れによる除去を行い易い。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0077】
〔別実施形態の2〕
上記の実施形態では、油室100や押圧ピストン101が環状に形成された構造のものにおいて、上向きの凹部101cを備えたものを例示したが、これに限られるものではない。
例えば
図12(a)に示すように、油室100や押圧ピストン101を丸孔状や丸棒状に形成して、丸棒状の押圧ピストン101の上部側の一部を切除して上向きの凹部101cを備えるように構成してもよい。
尚、この油室100や押圧ピストン101を丸孔状や丸棒状に形成した構造のものにおいても、押圧ピストン101が最退入位置にある状態で油室100の内部に入り込んでいるように構成しても良いことは勿論である。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0078】
〔別実施形態の3〕
上記の実施形態では、支軸となる筒軸85側に止め輪89を装着し、筒軸85に外嵌する従動側クラッチ体86の移動規制を行うように構成された構造のものを例示したが、これに限られるものではない。
例えば、
図13に示すように、支軸部分に対して外嵌する側の部材に対して周溝部分85Dを設け、この周溝部分85Dに、穴サークリップとなる止め輪89を装着し、その止め輪89に対して傾斜面89aを形成してある。
そして、圧縮バネ88で押される部材との当接で、圧縮バネ88の付勢力f0の分力f1,f2が、圧縮バネ88の付勢方向の延長方向と、止め輪89の半径方向外方側へ向く直交方向とに作用するように構成してある。これにより、直交方向の分力f2が止め輪89を周溝部分85Dへ押し込むように作用する。
この止め輪89の傾斜面89aを利用した止め輪89の抜け止めの構造は、従動側クラッチ体86の押圧のための構造に限らず、各種の機構に適用できる。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。