特許第6341846号(P6341846)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6341846
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】貯氷庫
(51)【国際特許分類】
   F25C 5/18 20180101AFI20180604BHJP
   F25D 21/14 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   F25C5/18 312Z
   F25D21/14 A
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-249321(P2014-249321)
(22)【出願日】2014年12月9日
(65)【公開番号】特開2016-109385(P2016-109385A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(72)【発明者】
【氏名】門脇 静馬
【審査官】 笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−12920(JP,A)
【文献】 特開2000−356460(JP,A)
【文献】 特開2010−139173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25C 5/18
F25D 21/14
F25D 23/02
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に貯氷室(14)を画成した筐体(12)と、前記筐体(12)の前面開放部(12A)に配設されて、裏側が前記貯氷室(14)の一部をなす扉ユニット(30)と、前記扉ユニット(30)に開設した矩形開口部(34)の上下に設けたレール部(52A,52B)により支持され、左右に移動して該矩形開口部(34)を開閉するスライド扉(64,64)と、前記矩形開口部(34)における前記下レール部(52B)の後方に設けられ、前記貯氷室(14)に向けて斜め下方に傾斜するスロープ(68)とを備える貯氷庫において、
前記下レール部(52B)の後方でかつ前記スロープ(68)の下方に、前記貯氷室(14)に向けて斜め下方に傾斜する庇部(42)を設けると共に、
前記スロープ(68)と前記庇部(42)との間には、前記下レール部(52B)に溜まった結露水が該庇部(42)を伝って前記貯氷室(14)へ落下するのを許容する隙間(S)を形成した
ことを特徴とする貯氷庫。
【請求項2】
前記庇部(42)は、前記扉ユニット(30)の裏面を構成する裏板(40)に一体的に形成される請求項1記載の貯氷庫。
【請求項3】
前記下レール部(52B)の直立面と前記スロープ(68)の端縁との間に、該下レール部(52B)に溜まった結露水を受け入れる通路(84)を形成し、該結露水を該通路(84)に沿って前記隙間(S)へ案内するよう構成された請求項1または2記載の貯氷庫。
【請求項4】
前記スロープ(68)の前記通路(84)に臨む端縁には、前記通路(84)に達した結露水を前記隙間(S)へ案内する切欠き(92)を形成した請求項3記載の貯氷庫。
【請求項5】
前記スロープ(68)の左右両端は、前記矩形開口部(34)の左右側縁(36C,36D)に対し内側へ離間して位置し、
前記扉ユニット(30)の裏面に、前記矩形開口部(34)の下縁(36B)の左右端部から上方へ突出して、該下縁(36B)の左右端部に達した結露水を内側へ案内する堰部(44)を左右に形成した請求項1〜4の何れか一項に記載の貯氷庫。
【請求項6】
結露水は、前記スロープ(68)と前記堰部(44)との間を通過して前記隙間(S)へ案内される請求項5記載の貯氷庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯氷室に臨む開口部を開閉するスライド扉を設けた貯氷庫に関し、殊に、該スライド扉での結露水を好適に放出する構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
喫茶店やレストラン等では、製氷機構で製造された所要形状の氷を貯氷室に貯留する貯氷庫が広く使用されている。この貯氷庫の一種として、貯氷室に連通する開口部をスライド扉で開閉するタイプが存在する(例えば、特許文献1参照)。図7図10は、スライド扉64,64を備える従来の貯氷庫10を示している。貯氷庫10は、図7に示す如く、前方および上方に開放する断熱構造の筐体12からなり、該筐体12の内部に貯氷室14が画成されている。この貯氷室14の内部上方には、氷を連続的に製造する製氷機構16が配設されている。また、前記筐体12の貯氷室14に対応する前面開放部12Aには、扉ユニット30が着脱自在に配設されている。
【0003】
前記筐体12の前面開放部12Aの下縁は、図9に示す如く、貯氷室14の底部から所定高さで立ち上がる土手部22によって形成されている。この土手部22は、前面に扉ユニット30の裏面下部が当接すると共に、貯氷室14側の面は、後方へ向かうにつれて下方へ傾斜するようになっている。また、前記筐体12の上面には、該筐体12の上方開口を塞ぐ天板20が着脱自在に配設される。図7に示すように、貯氷庫10における貯氷室14の下方には機械室18が画成され、該機械室18に凝縮器、圧縮機、ファンモータ等の冷凍機器(何れも図示せず)が配設される。そして貯氷庫10は、前記製氷機構16の蒸発器に冷媒を循環させて氷を製造し、該氷を貯氷室14に落下させて貯留するよう構成される。
【0004】
図8に示すように、前記扉ユニット30は、矩形の開口部34を開設した扉本体32と、前記矩形開口部34に配設されるスライドレール46と、該スライドレール46にスライド移動可能に支持される2枚のスライド扉64,64と、前記矩形開口部34に配設されて前記貯氷室14に向けて斜めに傾斜するスロープ68とを備えている。前記扉本体32は、金属製の扉フロントパネル38と、合成樹脂製の扉バックパネル40とを前後に組付けて構成され、両パネル38,40の間に断熱材41(図9参照)が充填されている。前記スライド扉64,64は、例えば透明な合成樹脂からなり、前記矩形開口部34に応じた矩形状に形成される。なお、スライド扉64,64には、作業者が開閉するための取っ手66が配設されている。
【0005】
図8および図9に示すように、前記スライドレール46は、上枠48A、下枠48B、左枠48Cおよび右枠48Dを相互に連結して矩形枠状に形成される。前記矩形開口部34の上下に設けられる前記上枠48Aおよび下枠48Bには、該矩形開口部34の内側(他方の枠側)へ突出すると共に、該矩形開口部34の対応する開口上縁36Aおよび開口下縁36Bに沿って左右方向に延在する仕切り50,50,50が、前後方向に離間して3つ設けられている。前記上枠48Aには、3つの前記仕切り50,50,50により、前後に2つの上溝54A,54Aが形成された上レール部52Aが構成されている。また、下枠48Bには、3つの前記仕切り50,50,50により、前後に2つの下溝54B,54Bが形成された下レール部52Bが構成されている。前記スライド扉64は、上レール部52Aの上溝54A,54Aに上端部が遊嵌されると共に、下レール部52Bの下溝54B,54Bに下端部が遊嵌されて、左右にスライド自在になっている。
【0006】
前記下レール部52Bに形成された下溝54B,54Bには、スライド扉64,64を該下溝54B,54Bの底部から離間した位置に保持するスペーサ56(図9参照)が部分的に配設されている。前記スペーサ56の厚みは、下溝54Bの深さより小さくなるよう設定されている。また、下レール部52Bを構成する後側の2つの仕切り50,50には、前後方向に貫通する排水孔62が左右方向に離間して複数開設されている。この排水孔62は、前記仕切り50の下側で前記スペーサ56と干渉しない位置に設定され、スライド扉64やスペーサ56によって該排水孔62が閉成されないようになっている。なお、前記2つの仕切り50,50に開設された排水孔62は、前後に整列して配置されている。
【0007】
図8および図9に示すように、前記スライドレール46を構成する左枠48Cおよび右枠48Dには、前記矩形開口部34の内側(他方の枠側)へ突出すると共に、該矩形開口部34の対応する左右の開口側縁36C,36Dに沿って上下方向に延在する仕切り51,51,51が、前後方向に離間して3つ設けられている。そして、左枠48Cおよび右枠38Dの3つの仕切り51,51,51により前後に2つの溝55,55が形成されている。左枠48Cおよび右枠48Dに夫々形成された溝55,55は、スライド扉64,64の対応の側端部が挿入され、スライド扉64,64で矩形開口部34を閉成した際の密封性を確保するべく機能する。なお、貯氷室14からの氷の取り出しは、スライド扉64をスライドさせて開放した前記矩形開口部34を介して行われる。
【0008】
スライドレール46を構成する各枠48A,48B,48C,48Dには、最後部の仕切り50a,51aから後方へ所定長さで延出する延出部58が形成されている。また、各枠48A,48B,48C,48Dにおける最前部の仕切り50b,51bには、対向する枠48B,48A,48D,48Cと反対側(矩形開口部34の外側)へ突出するフランジ部60が形成されている。スライドレール46は、前記矩形開口部34に対して前側から挿入し、各枠48A,48B,48C,48Dのフランジ部60を前記扉フロントパネル38に当接させると共に、上枠48A、左枠48Cおよび右枠48Dの延出部58を矩形開口部34の対応の開口縁36A,36C,36Dに当接させて位置決めされる。なお、下枠48Bの延出部58Bと、前記扉本体32の開口下縁36Bとの間には、後述するスロープ68の水平部70を挿入する隙間が形成される。そして、スライドレール46は、各延出部58に開設された通孔58aを介して、ネジ59を扉本体32の開口縁36に設けたネジ孔36aに螺挿することで、扉本体32に固定される。
【0009】
図8図10に示すように、前記スロープ68は、前記矩形開口部34の開口下縁36Bにおいて、前記下レール部52Bの後方に設けられている。スロープ68は、前記下枠48Bの延出部58Bに沿って水平に延在する水平部70と、該水平部70の後端から貯氷室14に向けて斜め下方に傾斜する傾斜部72とを備えている。前記傾斜部72は、前記土手部22の頂部22aよりも貯氷室14側まで延出すると共に、下面が該土手部22の貯氷室14側の面に当接する。また、前記傾斜部72には、左右の両端から立ち上がる側壁部74,74が形成されている。スロープ68は、前述の如くスライドレール46を位置決めした後、下枠48Bの延出部58Bと矩形開口部34の開口下縁36Bとの間に水平部70の前端部を挿入し、延出部58Bの前記通孔58aと該通孔58aに対応して水平部70に開設した挿通孔70aとに挿入したネジ59を、開口下縁36Bの対応する前記ネジ孔36aに螺挿することで、スライドレール46と共に扉本体32に固定される。
【0010】
前記スライド扉64は、断熱材41が配設された扉ユニット30の他の部分に比べて断熱性能が低く、貯氷室14の冷たい空気との接触により冷却され易い。このため、スライド扉64の外面と庫外の空気との温度差が大きくなると、スライド扉64の外面には、空気中の水蒸気が凝縮して結露を生ずる。図9に示すように、スライド扉64に生じた結露は、凝結すると水滴になって重力で該スライド扉64に沿って流下し、下レール部52Bに溜まる。下レール部52Bに溜まった結露水は、該下レール部52Bに形成した前記排水孔62を通り後方へ流下する。そして、下枠48Bの延出部58Bからスロープ68に達した結露水は、スロープ68の傾斜部72の上面に沿って流下して貯氷室14内へ案内される。このように、貯氷庫10では、下レール部52Bに溜まった結露水をスロープ68上に案内することで、結露水が矩形開口部34の開口下縁36Bから扉バックパネル40の裏面を伝って庫外へ漏出するのを防いでいる。なお、貯氷室14に流下した結露水は、貯氷室14の底部に設けた図示しない排水口を介して庫外へ排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実開平6−51766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述したように、前記製氷機構16で製造された氷は前記貯氷室14に落下して該貯氷室14に貯留されるが、氷の貯留が進行するにつれて、図9に示す如く前記スロープ68に接触して堆積される。この場合に、前記スロープ68の上面を結露水が流れる従来の構成では、該スロープ68上の氷に、結露水が接触して融かされてしまう。殊に、スライド扉64に接触する庫外の空気と貯氷室14の温度との差が大きい夏場には、結露水が多く発生するために、前記スロープ68上の氷の融解が促進される問題がある。
【0013】
本発明は、従来技術に内在する前記諸問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、スライド扉からの結露水がスロープ上を流れるのを防止し、結果として該スロープ上の氷が結露水により融解されないようにした貯氷庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項1の発明に係る貯氷庫は、
内部に貯氷室を画成した筐体と、前記筐体の前面開放部に配設されて、裏側が前記貯氷室の一部をなす扉ユニットと、前記扉ユニットに開設した矩形開口部の上下に設けたレール部により支持され、左右に移動して該矩形開口部を開閉するスライド扉と、前記矩形開口部における前記下レール部の後方に設けられ、前記貯氷室に向けて斜め下方に傾斜するスロープとを備える貯氷庫において、
前記下レール部の後方でかつ前記スロープの下方に、前記貯氷室に向けて斜め下方に傾斜する庇部を設けると共に、
前記スロープと前記庇部との間には、前記下レール部に溜まった結露水が該庇部を伝って前記貯氷室へ落下するのを許容する隙間を形成したことを要旨とする。
【0015】
請求項1に係る発明によれば、スロープの下方に貯氷室へ向けて下方傾斜する庇部を設け、該庇部とスロープとの間に、結露水が該庇部を伝って貯氷室へ落下するのを許容する隙間を形成したので、下レール部に溜まった結露水がスロープの下側を通る。すなわち、スロープに堆積された氷に結露水が接触しないので、該スロープ上にある氷の融解を抑制できる。
【0016】
請求項2に係る発明は、前記庇部は、前記扉ユニットの裏面を構成する裏板に一体的に形成されることを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、扉ユニットの裏板に庇部を設け、該庇部とスロープとの間に前記隙間を形成したので、結露水を排水させる専用の別部材を用いる必要がない。すなわち、部品点数の増加によるコストアップを抑制できる。
【0017】
請求項3に係る発明は、前記下レール部の直立面と前記スロープの端縁との間に、該下レール部に溜まった結露水を受け入れる通路を形成し、該結露水を該通路に沿って前記隙間へ案内するよう構成されたことを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、下レール部に溜まった結露水は、下レール部とスロープとの間に設けた通路に受け入れられて、該通路に沿って前記隙間へ案内される。すなわち、結露水をスロープの下側へ確実に案内できるので、スロープ上の氷の融解をより抑制できる。
【0018】
請求項4に係る発明は、前記スロープの前記通路に臨む端縁には、前記通路に達した結露水を前記隙間へ案内する切欠きを形成したことを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、前記通路に達した結露水を、スロープの端縁に設けた切欠きから前記通路へ確実に案内できる。
【0019】
請求項5に係る発明は、前記スロープの左右両端は、前記矩形開口部の左右側縁に対し内側へ離間して位置し、
前記扉ユニットの裏面に、前記矩形開口部の下縁の左右端部から上方へ突出して、該下縁の左右端部に達した結露水を内側へ案内する堰部を左右に形成したことを要旨とする。
請求項5に係る発明によれば、矩形開口部の下縁の左右端部に達した結露水は、堰部により内側へ案内される。すなわち、結露水が、矩形開口部の下縁の左右端部から扉ユニットの裏面に伝わって庫外へ漏出するのを防ぐことができる。
【0020】
請求項6に係る発明は、結露水は、前記スロープと前記堰部との間を通過して前記隙間へ案内されることを要旨とする。
請求項6に係る発明によれば、結露水を堰部とスロープとの間を通して前記隙間へ案内できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る貯氷庫によれば、結露水がスロープ上を流れないため、該スロープ上に堆積する氷の融解を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】(a)は、実施例1に係る貯氷庫の扉ユニットを後方から見た斜視図であって、(b)は(a)に示す円Xの拡大図である。
図2】(a)は、実施例1に係る貯氷庫を、図1のII−II線の位置で破断した概略断面図であって、(b)は(a)に示す円Yの拡大図である。
図3図1に示す扉バックパネルを後方から見た斜視図である。
図4図1に示すスライドレールの下枠を後方から見た斜視図である。
図5】実施例1の貯氷庫における結露水の排水状態を、貯氷庫の内方から観察した説明図である。
図6】実施例2の貯氷庫における結露水の排水状態を、貯氷庫の内方から観察した説明図である。
図7】従来例に係る貯氷庫を一部分解して示す斜視図である。
図8図7に示す扉ユニットの構成部材を分解して示す斜視図である。
図9図7に示す貯氷庫における上部前方概略縦断面図である。
図10図7に示す貯氷庫の扉ユニットを後方から見た部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明に係る貯氷庫につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して説明する。従来例の貯氷庫は、下レール部に溜まった結露水をスロープの上面を伝わせて貯氷室へ案内する構成であった。これに対し、実施例の貯氷庫は、前記スロープ上を伝わらせることなく結露水を貯氷室へ案内する構成とした点で従来例と異なっている。なお、従来技術で説明した部材については、同じ符号を付して説明を省略する。
【実施例】
【0024】
〔実施例1〕
図1図5に示す実施例1の貯氷庫80は、従来例で説明した貯氷庫10と同様に、内部に貯氷室14を画成した筐体12と、前記筐体12の前面開放部12Aに配設される扉ユニット30と、前記扉ユニット30に開設した矩形開口部34を開閉するスライド扉64,64と、前記矩形開口部34に設けられ、前記貯氷室14に向けて斜め下方に傾斜するスロープ68とを備えている。なお、実施例1の貯氷庫80において、扉ユニット30を除いた基本的な構成は、従来例の貯氷庫10と同じである。
【0025】
図1に示すように、実施例1の扉ユニット30は、従来例と同様に、扉フロントパネル38および扉バックパネル40を前後に組付けて構成され、矩形開口部34を開設した扉本体32と、前記矩形開口部34に配設されるスライドレール46と、該スライドレール46にスライド移動可能に支持される2枚のスライド扉64,64と、前記矩形開口部34に配設されるスロープ68とを備えている。扉ユニット30については、従来例と異なる構成を中心に説明する。
【0026】
(スロープについて)
図1および図2に示すように、前記スロープ68は、前記矩形開口部34に位置してスライド扉64,64の下端部を支持する下レール部52Bの後方に設けられている。すなわち、スロープ68は、図2(b)から判明するように、前記スライドレール46における下枠48Bの延出部58Bに沿って横方向へ延在し、該延出部58Bに載置される水平部70と、該水平部70から貯氷室14に向けて斜め下方に傾斜する傾斜部72とを備えると共に、前記矩形開口部34の左右開口幅より小さい左右幅寸法に設定されている。なお、前記水平部70の前方開放端は、下レール部52Bに設けた3条の前記仕切り50,50,50のうち、最後部の仕切り50aとの間に所要の隙間を保持している。また、前記水平部70には、図4に示す下枠48Bの延出部58Bに形成される通孔58aと対応する位置に、図5に示す如くネジ59を挿入するための挿通孔70aが開設されている。また、前記傾斜部72は、前記筐体12の前面開放部12A下縁に位置する前記土手部22の頂部22aより貯氷室14側へ延在すると共に、該土手部22から離間して配置される。そして、前記製氷機構16から放出され、貯氷の進行に伴い堆積した氷は前記スロープ68の傾斜部72にも堆積するに至る。
【0027】
図2を参照して、前記扉本体32に対するスロープ68の固定について説明する。先ず、前記スライドレール46を扉本体32の矩形開口部34に対して前側から嵌挿して位置決めする。この際、スライドレール46は、該スライドレール46を構成する各枠46A,46B,46C,46Dのフランジ部60が扉フロントパネル38に当接すると共に、各枠46A,46B,46C,46Dの延出部58が矩形開口部34の対応の開口縁36A,36B,36C,36Dに当接する。次に、スライドレール46における下枠48Bの延出部58Bに前記スロープ68の水平部70を重ね、該水平部70の挿通孔70a(図5参照)および延出部58Bの通孔58a(図4参照)にネジ59を挿通して、矩形開口部34の開口下縁36Bに設けたネジ孔36a(図3参照)に螺挿することで、スロープ68がスライドレール46と共に扉本体32に固定される。
【0028】
(第1受入通路について)
図1および図5に示すように、下レール部52Bに形成した3条の仕切り50,50,50の内で最も貯氷室14側に位置する仕切り50a(下レール部52Bの鉛直面)と、前記スロープ68における水平部70の前端縁70b(スロープ68の端縁)との間には、下レール部52Bに溜まった結露水を受け入れる第1受入通路(通路)84が形成されている。すなわち、第1受入通路84は、下レール部52Bにおける最後部の仕切り50aの後面と、下枠48Bの延出部58Bの上面と、前記スロープ68の水平部70の前端縁70bとにより溝状の上方開放部になっている。この第1受入通路84は、前記最後部の仕切り50aに開設した前記排水孔62を介して、下レール部52Bの前記下溝54Bに連通している。また、第1受入通路84における前後の幅および深さは、該第1受入通路84に流下した結露水が、左右に移動し得る寸法に設定されている。そして、前記下レール部52Bの下溝54Bから排水孔62を通って第1受入通路84に流下した結露水は、該第1受入通路84に沿って左右へ移動可能である。
【0029】
(第2受入通路について)
図1および図5に示すように、前記水平部70における左右の側端縁70c,70c(スロープ68の左右両端)は、前記矩形開口部34における左右の開口側縁36C,36D(矩形開口部34の左右側縁)よりも内側へ離間して配置されている。また、前記水平部70の左右の側端縁70c,70cと矩形開口部34の左右の開口側縁36C,36Dとの間には、結露水が後方へ移動するのを許容する第2受入通路86が夫々形成されている。この第2受入通路86は、前端部において前記第1受入通路84の左右端部に連通し、該第1受入通路84の左右端部付近に到達した結露水は、スロープ68の端縁70b,70cに沿って第2受入通路86へ自然に案内されるようになっている。第2受入通路86の左右の幅および深さは、前記水平部70の側端縁70c,70cを伝って、結露水が後方へ移動するのを許容する寸法に設定されている。
【0030】
(庇部について)
図3に示すように、前記扉ユニット30の裏面を構成し、該扉ユニット30取付後は前記貯氷室14の一部になる前記扉バックパネル40には、前記矩形開口部34の開口下縁36Bから貯氷室14へ向けて斜め下方に傾斜する庇部42が一体的に形成されている。この庇部42は、図1に示すように、矩形開口部34の全幅に亘って延在し、前記スロープ68の幅よりも左右外側へ延出するよう寸法設定されている。また、図2(b)に示す如く、前記庇部42が貯氷室14側へ延出する端部42aは、前面開放部12Aの下縁を構成する前記土手部22の頂部22aより奥へ延出している。更に、庇部42は、前記スロープ68の下方に位置すると共に、その上端から前記延出端部42aに亘って該スロープ68の下面に当接しないようになっている。すなわち、庇部42の上面とスロープ68の下面との間には、下レール部52Bからの結露水が該庇部42を伝って貯氷室14へ落下するのを許容する隙間Sが設定されている。このため庇部42の上端に達した結露水は、庇部42の傾斜に沿って斜め下方へ流下し、延出端部42aで貯氷室14へ落下する。すなわち、前記隙間Sは、結露水をスロープ68の下側を通過させて貯氷室14へ案内する排水通路82を形成している。
【0031】
(堰部について)
図3に示すように、前記扉バックパネル40の矩形開口部34には、前記開口下縁36Bの左右端部から上方へ突出する堰部44が一体的に形成されている。特に図1(b)および図5から判明するように、各堰部44は、前記下枠48Bにおける延出部58Bの左右端部に後方から当接すると共に、該延出部58Bより上方まで延在し、その外側端は矩形開口部34における対応の開口側縁36C,36Dに当接している。そして前記堰部44は、前記第2受入通路86において左右の外側端部に及んでいる結露水を、該堰部44の左右内側へ案内するようになっている(図1(b)の矢印参照)。すなわち、第2受入通路86へ到達した結露水は、前記堰部44の存在により、前記開口下縁36Bの左右端部から前記矩形開口部34の外側への流出が防止される。
【0032】
更に、図1図3および図5に示すように、前記堰部44は前記庇部42の上端から上方へ突出するよう扉バックパネル40に形成されており、該堰部44と前記スロープ68における左右の側端縁70c,70cとの間には、結露水の通過を許容する通過口88が夫々形成されている。この通過口88は、前記第2受入通路86と前記排水通路82とを空間的に連通し、該第2受入通路86の後端部に達した結露水を通過させて排水通路82へ導くようになっている。
【0033】
〔実施例1の作用〕
次に、実施例1の貯氷庫80の作用について説明する。先ず、図5を参照してスライド扉64,64に発生した結露水の流れについて説明する。スライド扉64,64に沿って流下して下レール部52Bの下溝54Bに溜まった結露水は、前記最後部の仕切り50aに開設された排水孔62を通って、該仕切り50aとスロープ68の前端縁70bとの間に設けられた前記第1受入通路84に流下する。この第1受入通路84に沿って左右に案内されて該第1受入通路84の左右端部に達した結露水は、スロープ68の前端縁70bおよび側端縁70cに沿って前記第2受入通路86に受け入れられる。そして、第2受入通路86を該通路86に沿って後方へ流下した結露水は、前記堰部44とスロープ68との間に設けた前記通過口88を通過して、前記排水通路82へ案内される。この排水通路82に達した結露水は、前記庇部42の上端から該庇部42の上面に沿って斜め下方へ流下する。庇部42の延出端部42aまで達した結露水は、前記土手部22の貯氷室14側の面に落下して、貯氷室14の底部に設けた排水口からドレンパイプ(いづれも図示せず)を介して庫外へ排出される。なお、庇部42は土手部22の頂部22aより後方まで延出しているので、庇部42の延出端部42aから落下した結露水が、前記筐体12における前面開放部12Aの下縁から庫外へ漏出することはない。
【0034】
すなわち、スロープ68の下方に、矩形開口部34における開口下縁36Bから貯氷室14へ向けて斜め下方へ傾斜する庇部42を設け、該庇部42とスロープ68との間に形成した排水通路82に下レール部52Bに溜まった結露水を案内するようにしたので、該結露水がスロープ68の下側を通る。従って、スロープ68に堆積した氷に結露水が掛からないので、該氷の融解を抑制できる。また、扉バックパネル40に庇部42を一体的に形成し、該庇部42とスロープ68とにより前記排水通路82を形成したので、下レール部52Bに溜まった結露水を排水するために専用の別部材を用いる必要がなく、部品点数の増加に伴うコストアップを生じない。
【0035】
また、スロープ68の前端縁70bと最後部の仕切り50aとの間に、下レール部52Bに溜まった結露水を受け入れる前記第1受入通路84を設けたので、下レール部52Bに溜まった結露水を第1受入通路84に沿って円滑に案内できる。更に、第1受入通路84の左右端部に連通し、スロープ68の側端縁70cに沿って延在する第2受入通路86を設けたので、第1受入通路84の左右端部に到達した結露水を、第2受入通路86に沿って円滑に案内できる。そして、第2受入通路86の結露水を、スロープ68の側端縁70cに沿って通過口88から排水通路82へ案内するよう構成したので、第2受入通路86の結露水を自然に排水通路82まで導くことができる。すなわち、下レール部52Bに溜まった結露水を、スロープ68の端縁70b,70cに沿わせて第1受入通路84、第2受入通路86および通過口88を通過させて、排水通路82まで確実に案内できる。このように、下レール部52Bに溜まった結露水が、スロープ68上を流れるのは防止される。
【0036】
ここで、図10に示すように、従来の貯氷庫10では、矩形開口部34における開口下縁36Bの左右端部に達した結露水が、該矩形開口部34の外側へ流出する問題がある。この矩形開口部34の外側へ流出した結露水は、扉バックパネル40におけるスロープ68と貯氷室14の内側壁(図10に2点鎖線で示す)との間を伝って庫外へ漏出してしまう(図10の矢印参照)。これに対して、実施例1の貯氷庫80では、図1(b)に示すように、矩形開口部34における開口下縁36Bの左右端部に堰部44を設けたことで、前記第2受入通路86において左右の外側端部を後方へ流下する結露水が、該堰部44に沿って左右の内側へ案内される。この堰部44によって内側へ案内された結露水は、該堰部44とスロープ68との間に設けた前記通過口88を通って前記排水通路82へ流下する。すなわち、堰部44を設けたことで、矩形開口部34における開口下縁36Bの左右端部に達した結露水が、該矩形開口部34の外側へ流出するのを防ぐことができる。
【0037】
〔実施例2〕
次に、図6を参照して第2実施例について説明する。図5に示す如く、前述の実施例1に係る貯氷庫80は、前記堰部44とスロープ68との間の通過口88を通して結露水を排水通路82へ案内する構成であった。これに対して、図6に示す実施例2に係る貯氷庫90は、スロープ68に形成した切欠き92からも結露水を排水通路82へ案内する構成である。なお、実施例2の貯氷庫90において、従来例および実施例1と同じ部材については同じ符号を付すものとする。
【0038】
図6に示すように、実施例2では、スロープ68における第1受入通路84に臨む前端縁(端縁)70bに、該第1受入通路84内の結露水を排水通路82へ案内する切欠き92が形成されている。切欠き92は、スロープ68の前端縁70bから、矩形開口部34において前記庇部42の上端が位置する開口下縁36Bより後方まで形成されている。なお、貯氷庫90は、実施例1と同様に、堰部44とスロープ68の側端縁70cとの間に設けた通過口88からも結露水を排水通路82へ案内し得るようになっている。
【0039】
〔実施例2の作用〕
前記第1受入通路84の結露水は、スロープ68の前端縁70bに沿って切欠き92に侵入し、該切欠き92に沿って下枠48Bにおける延出部58Bの上面を後方へ流下する。そして、前記延出部58Bの後端から前記庇部42の上端に達した結露水は、該庇部42の上面に沿って貯氷室14内へ向けて斜め下方へ流下する。実施例1と同様に、庇部42の延出端部42aに達した結露水は、土手部22の貯氷室14側の面に滴下され、貯氷室14の底部に設けた排水口から庫外へ排出される。このように、実施例2では、スロープ68の前端縁70bに設けた切欠き92から結露水を排水通路82へ案内することで、結露水を確実に排水通路82へ導くことができる。また、切欠き92は、スロープ68の前端縁70bの任意の位置に複数設定できるので、複数の切欠き92により結露水を複数の経路に分散して排水することもできる。
【0040】
〔変更例〕
本発明に係る貯氷庫は前述した構成に限定されるものでなく、例えば以下のように変更することが可能である。
(1) 実施例では、製氷機構を内部に備える貯氷庫を例に挙げて説明したが、製氷機構のない貯氷庫であってもよい。
(2) 実施例では、庇部を扉バックパネルに一体に形成する例を挙げて説明したが、庇部を扉バックパネルとは別の部材に形成してもよい。また、実施例では、庇部を矩形開口部における左右の開口幅の全長に亘って形成したが、結露水が流下する範囲にのみ形成してもよい。
(3) 実施例では、矩形開口部の左右端部に堰部を設けた構成を採用したが、堰部のない構成であってもよい。
(4) 実施例2では、スロープの側端縁に沿った経路と、切欠きを介した経路とにより結露水を排水通路へ案内したが、何れか一方の経路により結露水を排水通路へ案内する構成であってもよい。また、切欠きの形状は、実施例の形状に限定されることはなく、例えば、V字形状やU字形状等でもよい。
【符号の説明】
【0041】
12 筐体,12A 前面開放部,14 貯氷室,30 扉ユニット,34矩形開口部,
36B 開口下縁(下縁),36C 左開口側縁(左側縁),36D 右開口側縁(右側縁),
40 扉バックパネル(裏板),42 庇部,44 堰部,52A 上レール部(レール部),
52A 上レール部(レール部),52B 下レール部(レール部),64 スライド扉,
68 スロープ,80 貯氷庫,84 第1受入通路(通路),90 貯氷庫,
92 切欠き,S 隙間
図1
図2
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図10