【実施例】
【0024】
〔実施例1〕
図1〜
図5に示す実施例1の貯氷庫80は、従来例で説明した貯氷庫10と同様に、内部に貯氷室14を画成した筐体12と、前記筐体12の前面開放部12Aに配設される扉ユニット30と、前記扉ユニット30に開設した矩形開口部34を開閉するスライド扉64,64と、前記矩形開口部34に設けられ、前記貯氷室14に向けて斜め下方に傾斜するスロープ68とを備えている。なお、実施例1の貯氷庫80において、扉ユニット30を除いた基本的な構成は、従来例の貯氷庫10と同じである。
【0025】
図1に示すように、実施例1の扉ユニット30は、従来例と同様に、扉フロントパネル38および扉バックパネル40を前後に組付けて構成され、矩形開口部34を開設した扉本体32と、前記矩形開口部34に配設されるスライドレール46と、該スライドレール46にスライド移動可能に支持される2枚のスライド扉64,64と、前記矩形開口部34に配設されるスロープ68とを備えている。扉ユニット30については、従来例と異なる構成を中心に説明する。
【0026】
(スロープについて)
図1および
図2に示すように、前記スロープ68は、前記矩形開口部34に位置してスライド扉64,64の下端部を支持する下レール部52Bの後方に設けられている。すなわち、スロープ68は、
図2(b)から判明するように、前記スライドレール46における下枠48Bの延出部58Bに沿って横方向へ延在し、該延出部58Bに載置される水平部70と、該水平部70から貯氷室14に向けて斜め下方に傾斜する傾斜部72とを備えると共に、前記矩形開口部34の左右開口幅より小さい左右幅寸法に設定されている。なお、前記水平部70の前方開放端は、下レール部52Bに設けた3条の前記仕切り50,50,50のうち、最後部の仕切り50aとの間に所要の隙間を保持している。また、前記水平部70には、
図4に示す下枠48Bの延出部58Bに形成される通孔58aと対応する位置に、
図5に示す如くネジ59を挿入するための挿通孔70aが開設されている。また、前記傾斜部72は、前記筐体12の前面開放部12A下縁に位置する前記土手部22の頂部22aより貯氷室14側へ延在すると共に、該土手部22から離間して配置される。そして、前記製氷機構16から放出され、貯氷の進行に伴い堆積した氷は前記スロープ68の傾斜部72にも堆積するに至る。
【0027】
図2を参照して、前記扉本体32に対するスロープ68の固定について説明する。先ず、前記スライドレール46を扉本体32の矩形開口部34に対して前側から嵌挿して位置決めする。この際、スライドレール46は、該スライドレール46を構成する各枠46A,46B,46C,46Dのフランジ部60が扉フロントパネル38に当接すると共に、各枠46A,46B,46C,46Dの延出部58が矩形開口部34の対応の開口縁36A,36B,36C,36Dに当接する。次に、スライドレール46における下枠48Bの延出部58Bに前記スロープ68の水平部70を重ね、該水平部70の挿通孔70a(
図5参照)および延出部58Bの通孔58a(
図4参照)にネジ59を挿通して、矩形開口部34の開口下縁36Bに設けたネジ孔36a(
図3参照)に螺挿することで、スロープ68がスライドレール46と共に扉本体32に固定される。
【0028】
(第1受入通路について)
図1および
図5に示すように、下レール部52Bに形成した3条の仕切り50,50,50の内で最も貯氷室14側に位置する仕切り50a(下レール部52Bの鉛直面)と、前記スロープ68における水平部70の前端縁70b(スロープ68の端縁)との間には、下レール部52Bに溜まった結露水を受け入れる第1受入通路(通路)84が形成されている。すなわち、第1受入通路84は、下レール部52Bにおける最後部の仕切り50aの後面と、下枠48Bの延出部58Bの上面と、前記スロープ68の水平部70の前端縁70bとにより溝状の上方開放部になっている。この第1受入通路84は、前記最後部の仕切り50aに開設した前記排水孔62を介して、下レール部52Bの前記下溝54Bに連通している。また、第1受入通路84における前後の幅および深さは、該第1受入通路84に流下した結露水が、左右に移動し得る寸法に設定されている。そして、前記下レール部52Bの下溝54Bから排水孔62を通って第1受入通路84に流下した結露水は、該第1受入通路84に沿って左右へ移動可能である。
【0029】
(第2受入通路について)
図1および
図5に示すように、前記水平部70における左右の側端縁70c,70c(スロープ68の左右両端)は、前記矩形開口部34における左右の開口側縁36C,36D(矩形開口部34の左右側縁)よりも内側へ離間して配置されている。また、前記水平部70の左右の側端縁70c,70cと矩形開口部34の左右の開口側縁36C,36Dとの間には、結露水が後方へ移動するのを許容する第2受入通路86が夫々形成されている。この第2受入通路86は、前端部において前記第1受入通路84の左右端部に連通し、該第1受入通路84の左右端部付近に到達した結露水は、スロープ68の端縁70b,70cに沿って第2受入通路86へ自然に案内されるようになっている。第2受入通路86の左右の幅および深さは、前記水平部70の側端縁70c,70cを伝って、結露水が後方へ移動するのを許容する寸法に設定されている。
【0030】
(庇部について)
図3に示すように、前記扉ユニット30の裏面を構成し、該扉ユニット30取付後は前記貯氷室14の一部になる前記扉バックパネル40には、前記矩形開口部34の開口下縁36Bから貯氷室14へ向けて斜め下方に傾斜する庇部42が一体的に形成されている。この庇部42は、
図1に示すように、矩形開口部34の全幅に亘って延在し、前記スロープ68の幅よりも左右外側へ延出するよう寸法設定されている。また、
図2(b)に示す如く、前記庇部42が貯氷室14側へ延出する端部42aは、前面開放部12Aの下縁を構成する前記土手部22の頂部22aより奥へ延出している。更に、庇部42は、前記スロープ68の下方に位置すると共に、その上端から前記延出端部42aに亘って該スロープ68の下面に当接しないようになっている。すなわち、庇部42の上面とスロープ68の下面との間には、下レール部52Bからの結露水が該庇部42を伝って貯氷室14へ落下するのを許容する隙間Sが設定されている。このため庇部42の上端に達した結露水は、庇部42の傾斜に沿って斜め下方へ流下し、延出端部42aで貯氷室14へ落下する。すなわち、前記隙間Sは、結露水をスロープ68の下側を通過させて貯氷室14へ案内する排水通路82を形成している。
【0031】
(堰部について)
図3に示すように、前記扉バックパネル40の矩形開口部34には、前記開口下縁36Bの左右端部から上方へ突出する堰部44が一体的に形成されている。特に
図1(b)および
図5から判明するように、各堰部44は、前記下枠48Bにおける延出部58Bの左右端部に後方から当接すると共に、該延出部58Bより上方まで延在し、その外側端は矩形開口部34における対応の開口側縁36C,36Dに当接している。そして前記堰部44は、前記第2受入通路86において左右の外側端部に及んでいる結露水を、該堰部44の左右内側へ案内するようになっている(
図1(b)の矢印参照)。すなわち、第2受入通路86へ到達した結露水は、前記堰部44の存在により、前記開口下縁36Bの左右端部から前記矩形開口部34の外側への流出が防止される。
【0032】
更に、
図1、
図3および
図5に示すように、前記堰部44は前記庇部42の上端から上方へ突出するよう扉バックパネル40に形成されており、該堰部44と前記スロープ68における左右の側端縁70c,70cとの間には、結露水の通過を許容する通過口88が夫々形成されている。この通過口88は、前記第2受入通路86と前記排水通路82とを空間的に連通し、該第2受入通路86の後端部に達した結露水を通過させて排水通路82へ導くようになっている。
【0033】
〔実施例1の作用〕
次に、実施例1の貯氷庫80の作用について説明する。先ず、
図5を参照してスライド扉64,64に発生した結露水の流れについて説明する。スライド扉64,64に沿って流下して下レール部52Bの下溝54Bに溜まった結露水は、前記最後部の仕切り50aに開設された排水孔62を通って、該仕切り50aとスロープ68の前端縁70bとの間に設けられた前記第1受入通路84に流下する。この第1受入通路84に沿って左右に案内されて該第1受入通路84の左右端部に達した結露水は、スロープ68の前端縁70bおよび側端縁70cに沿って前記第2受入通路86に受け入れられる。そして、第2受入通路86を該通路86に沿って後方へ流下した結露水は、前記堰部44とスロープ68との間に設けた前記通過口88を通過して、前記排水通路82へ案内される。この排水通路82に達した結露水は、前記庇部42の上端から該庇部42の上面に沿って斜め下方へ流下する。庇部42の延出端部42aまで達した結露水は、前記土手部22の貯氷室14側の面に落下して、貯氷室14の底部に設けた排水口からドレンパイプ(いづれも図示せず)を介して庫外へ排出される。なお、庇部42は土手部22の頂部22aより後方まで延出しているので、庇部42の延出端部42aから落下した結露水が、前記筐体12における前面開放部12Aの下縁から庫外へ漏出することはない。
【0034】
すなわち、スロープ68の下方に、矩形開口部34における開口下縁36Bから貯氷室14へ向けて斜め下方へ傾斜する庇部42を設け、該庇部42とスロープ68との間に形成した排水通路82に下レール部52Bに溜まった結露水を案内するようにしたので、該結露水がスロープ68の下側を通る。従って、スロープ68に堆積した氷に結露水が掛からないので、該氷の融解を抑制できる。また、扉バックパネル40に庇部42を一体的に形成し、該庇部42とスロープ68とにより前記排水通路82を形成したので、下レール部52Bに溜まった結露水を排水するために専用の別部材を用いる必要がなく、部品点数の増加に伴うコストアップを生じない。
【0035】
また、スロープ68の前端縁70bと最後部の仕切り50aとの間に、下レール部52Bに溜まった結露水を受け入れる前記第1受入通路84を設けたので、下レール部52Bに溜まった結露水を第1受入通路84に沿って円滑に案内できる。更に、第1受入通路84の左右端部に連通し、スロープ68の側端縁70cに沿って延在する第2受入通路86を設けたので、第1受入通路84の左右端部に到達した結露水を、第2受入通路86に沿って円滑に案内できる。そして、第2受入通路86の結露水を、スロープ68の側端縁70cに沿って通過口88から排水通路82へ案内するよう構成したので、第2受入通路86の結露水を自然に排水通路82まで導くことができる。すなわち、下レール部52Bに溜まった結露水を、スロープ68の端縁70b,70cに沿わせて第1受入通路84、第2受入通路86および通過口88を通過させて、排水通路82まで確実に案内できる。このように、下レール部52Bに溜まった結露水が、スロープ68上を流れるのは防止される。
【0036】
ここで、
図10に示すように、従来の貯氷庫10では、矩形開口部34における開口下縁36Bの左右端部に達した結露水が、該矩形開口部34の外側へ流出する問題がある。この矩形開口部34の外側へ流出した結露水は、扉バックパネル40におけるスロープ68と貯氷室14の内側壁(
図10に2点鎖線で示す)との間を伝って庫外へ漏出してしまう(
図10の矢印参照)。これに対して、実施例1の貯氷庫80では、
図1(b)に示すように、矩形開口部34における開口下縁36Bの左右端部に堰部44を設けたことで、前記第2受入通路86において左右の外側端部を後方へ流下する結露水が、該堰部44に沿って左右の内側へ案内される。この堰部44によって内側へ案内された結露水は、該堰部44とスロープ68との間に設けた前記通過口88を通って前記排水通路82へ流下する。すなわち、堰部44を設けたことで、矩形開口部34における開口下縁36Bの左右端部に達した結露水が、該矩形開口部34の外側へ流出するのを防ぐことができる。
【0037】
〔実施例2〕
次に、
図6を参照して第2実施例について説明する。
図5に示す如く、前述の実施例1に係る貯氷庫80は、前記堰部44とスロープ68との間の通過口88を通して結露水を排水通路82へ案内する構成であった。これに対して、
図6に示す実施例2に係る貯氷庫90は、スロープ68に形成した切欠き92からも結露水を排水通路82へ案内する構成である。なお、実施例2の貯氷庫90において、従来例および実施例1と同じ部材については同じ符号を付すものとする。
【0038】
図6に示すように、実施例2では、スロープ68における第1受入通路84に臨む前端縁(端縁)70bに、該第1受入通路84内の結露水を排水通路82へ案内する切欠き92が形成されている。切欠き92は、スロープ68の前端縁70bから、矩形開口部34において前記庇部42の上端が位置する開口下縁36Bより後方まで形成されている。なお、貯氷庫90は、実施例1と同様に、堰部44とスロープ68の側端縁70cとの間に設けた通過口88からも結露水を排水通路82へ案内し得るようになっている。
【0039】
〔実施例2の作用〕
前記第1受入通路84の結露水は、スロープ68の前端縁70bに沿って切欠き92に侵入し、該切欠き92に沿って下枠48Bにおける延出部58Bの上面を後方へ流下する。そして、前記延出部58Bの後端から前記庇部42の上端に達した結露水は、該庇部42の上面に沿って貯氷室14内へ向けて斜め下方へ流下する。実施例1と同様に、庇部42の延出端部42aに達した結露水は、土手部22の貯氷室14側の面に滴下され、貯氷室14の底部に設けた排水口から庫外へ排出される。このように、実施例2では、スロープ68の前端縁70bに設けた切欠き92から結露水を排水通路82へ案内することで、結露水を確実に排水通路82へ導くことができる。また、切欠き92は、スロープ68の前端縁70bの任意の位置に複数設定できるので、複数の切欠き92により結露水を複数の経路に分散して排水することもできる。
【0040】
〔変更例〕
本発明に係る貯氷庫は前述した構成に限定されるものでなく、例えば以下のように変更することが可能である。
(1) 実施例では、製氷機構を内部に備える貯氷庫を例に挙げて説明したが、製氷機構のない貯氷庫であってもよい。
(2) 実施例では、庇部を扉バックパネルに一体に形成する例を挙げて説明したが、庇部を扉バックパネルとは別の部材に形成してもよい。また、実施例では、庇部を矩形開口部における左右の開口幅の全長に亘って形成したが、結露水が流下する範囲にのみ形成してもよい。
(3) 実施例では、矩形開口部の左右端部に堰部を設けた構成を採用したが、堰部のない構成であってもよい。
(4) 実施例2では、スロープの側端縁に沿った経路と、切欠きを介した経路とにより結露水を排水通路へ案内したが、何れか一方の経路により結露水を排水通路へ案内する構成であってもよい。また、切欠きの形状は、実施例の形状に限定されることはなく、例えば、V字形状やU字形状等でもよい。