特許第6341862号(P6341862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オルネクス ベルギー エス エーの特許一覧

特許6341862活性エネルギー線硬化性水性エマルジョン
<>
  • 特許6341862-活性エネルギー線硬化性水性エマルジョン 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6341862
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性水性エマルジョン
(51)【国際特許分類】
   C09D 4/02 20060101AFI20180611BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20180611BHJP
   C09D 11/101 20140101ALI20180611BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20180611BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20180611BHJP
   C08F 299/06 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
   C09D4/02
   C09D5/02
   C09D11/101
   C09J4/02
   C09J11/08
   C08F299/06
【請求項の数】22
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2014-561397(P2014-561397)
(86)(22)【出願日】2013年3月11日
(65)【公表番号】特表2015-511645(P2015-511645A)
(43)【公表日】2015年4月20日
(86)【国際出願番号】EP2013054859
(87)【国際公開番号】WO2013135621
(87)【国際公開日】20130919
【審査請求日】2015年12月8日
(31)【優先権主張番号】12159266.1
(32)【優先日】2012年3月13日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505365965
【氏名又は名称】オルネクス ベルギー エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティールマン、ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ボーラン、ジャン − ノエル
(72)【発明者】
【氏名】リンデケン、リュック
(72)【発明者】
【氏名】ペーテル、ステファン
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−247884(JP,A)
【文献】 特表2003−519250(JP,A)
【文献】 特開2009−114040(JP,A)
【文献】 特開2007−191530(JP,A)
【文献】 特開昭61−241308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F299/00−299/08
C08F2/22−2/30
C08F2/44−2/50
C09D4/00−4/06
C09D5/02
C09J4/00−4/06
C09J11/08
C09D11/10−11/108
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)少なくとも1つの水不溶性エチレン性不飽和化合物(A)、及び(II)交互ポリアルキレンオキシドセグメントで本質的に構成される少なくとも1つの乳化剤(B)を含む、コーティング組成物、インク、重ね刷りワニス又は接着剤を作製するための水性放射線硬化性組成物であって、前記乳化剤が、アルキル基、アリール基、ヒドロキシル基及び/又は共重合性エチレン性不飽和基から選択される1つ又は複数の基を任意選択で有し、前記乳化剤(B)が、少なくとも5かつ多くても19のHLB値を有し、
前記乳化剤(B)が、一般式(I):
R−O−(R−O)−(R−O)−(R−O)−R’
(式中、
R1、R2又はR3はそれぞれ独立して、直鎖状又は分岐状のC2〜C12アルキルであり、
R1≠R2であり、R3≠R2であり、
X=6〜100であり、
Y=6〜100であり、
Z=0〜100であり、
R及びR’はそれぞれ独立して、以下のもの:直鎖状又は分岐状のC1〜C18アルキル、直鎖状又は分岐状のC6〜C24アリール、(メタ)アクリロイル又は−Hから選択される。)
により表され、
この組成物が、任意選択で、前記乳化剤(B)以外であってかつジアルキルスルホコハク酸塩ではない乳化剤を含む、
上記水性放射線硬化組成物。
【請求項2】
乳化剤(B)が、交互ポリエチレンオキシドセグメント及びポリプロピレンオキシドセグメントで本質的に構成され、前記乳化剤が、アルキル基、アリール基、アリル基、(メタ)アクリロイル基及び/又はヒドロキシル基から選択される1つ又は複数の基を任意選択で有し、前記乳化剤(B)が、少なくとも6のHLB値を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
化合物(単数又は複数)(A)が、少なくとも4meq/gのエチレン性不飽和基の量を特徴とし、さらに、典型的には1分子当たり少なくとも3つのエチレン性不飽和基の官能性を特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
化合物(単数又は複数)(A)が、ウレタン(メタ)アクリレート(単数又は複数)及び/又はポリエステル(メタ)アクリレート(単数又は複数)から選択される、請求項1から3までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
ウレタン(メタ)アクリレート(単数又は複数)が、400〜20,000ダルトンの分子量を有し、ポリエステル(メタ)アクリレート(単数又は複数)が、200〜20,000ダルトンの分子量を有する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
乳化剤(単数又は複数)(B)が、ジブロック及び/又はトリブロックコポリマーから選択される、請求項1から5までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
乳化剤(B)(単数又は複数)が、(i)6〜100単位を含む重合度を有するポリエチレンオキシド、及び(ii)6〜100単位を含む重合度を有するポリプロピレンオキシドの交互配列を含むジブロックコポリマーであり、前記乳化剤(単数又は複数)が、末端アルキル官能基、ヒドロキシル官能基及び/又は(メタ)アクリロイル官能基から選択される1つ又は複数の基を任意選択で有する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
乳化剤(単数又は複数)(B)が、(i)6〜100単位を含む重合度を有するポリエチレンオキシド、(ii)6〜100単位を含む重合度を有するポリプロピレンオキシド、及び(iii)6〜100単位を含む重合度を有するポリエチレンオキシドの交互配列を含むトリブロックコポリマーであり、前記乳化剤(単数又は複数)が、末端アルキル官能基、ヒドロキシル官能基及び/又は(メタ)アクリロイル官能基から選択される1つ又は複数の基を任意選択で有する、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記乳化剤(単数又は複数)(B)が、少なくとも1つの末端(メタ)アクリロイル基、及び任意選択で少なくとも1つの末端アルキル基を有する、請求項1から8までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記乳化剤(単数又は複数)(B)が、10〜17のHLBを有する、請求項1から9までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記HLB値が、乳化剤のブレンドのHLB値の加重平均である、請求項1から10までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
化合物(A)及び(B)の総重量に対して、50〜99.9wt%の化合物(A)及び0.1〜50wt%の化合物(B)を含む、請求項1から11までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
760mmHgで100℃〜300℃の沸点を有する少なくとも1つの共溶媒、並びに/或いは有機塩基及び/又は無機塩基から選択される少なくとも1つの中和剤を更に含む、請求項1から12までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
5〜75wt%の固形分含有量を有する、請求項1から13までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
水不溶性の化合物(A)が、ウレタン(メタ)アクリレート(A1)、ポリエステル(メタ)アクリレート(A2)、ポリエポキシ(メタ)アクリレート(A3)、ポリカーボネート(メタ)アクリレート(A4)、ポリエーテル(メタ)アクリレート(A5)及びポリアクリル(メタ)アクリレート(A6)から選択される、請求項1から14までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
エマルジョンである、請求項1から15までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
エマルジョンが、水中油型エマルジョンである、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
(I)請求項1から17までのいずれか一項に記載される少なくとも1つの水不溶性エチレン性不飽和化合物(A)、及び(II)交互ポリアルキレンオキシドセグメントを含む少なくとも1つの乳化剤(B)を含む、コーティング組成物、インク、重ね刷りワニス又は接着剤を作製するための水性放射線硬化性組成物であって、前記乳化剤(B)が、エチレン性不飽和基を有しないことを特徴とし、前記乳化剤(B)が、少なくとも5かつ多くても19のHLBを有することを特徴とする上記組成物。
【請求項19】
前記乳化剤(B)が、アルキル基、アリール基及び/又はヒドロキシル基から選択される1つ又は複数の基を有する、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
請求項1から19までのいずれか一項に記載の少なくとも1つの組成物を含むコーティング組成物、インク、重ね刷りワニス又は接着剤。
【請求項21】
物品又は基材をコーティングする方法であって、請求項20に記載の組成物を、物品又は基材の少なくとも1つの表面に塗布する工程、続いて組成物を硬化させる工程を含む、上記方法。
【請求項22】
硬化工程が、水を蒸発させる工程により先行される、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化剤及び水不溶性エチレン性不飽和化合物を含む水性組成物、それらの使用並びに調製に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックコーティングは、コーティング産業の著しく且つ高度な成長分野を象徴し、美的感覚並びに更なる保護特性及び機能特性を網羅する先端表面仕上げ技術に関する挑戦的な要求を標的とする。放射線硬化技術は、30年以上にわたってこの産業で首尾よく使用されており、優れたハードコード特性で特に名高い。高機能性ウレタンアクリレート及びポリエステルアクリレートは、高架橋密度を示し、且つ非常に硬質であるが、頑強な架橋ネットワークをもたらすハードコートを作製する目的に特に適している。
【0003】
多官能性ウレタンアクリレート及びポリエステルアクリレートの高い粘度に起因して、より低い官能性を有する他の(メタ)アクリレートモノマーを使用して、配合物粘度を低減させることができるが、かかる添加は、硬化後のハードコート性能を著しく低下する。別の代替物は、溶媒(最大50%)によるハードコート組成物の希釈に存し、スプレー用途に適した粘度を可能にする。しかしながら、この場合では、製品は、健康、環境及び労働安全に関して重篤な懸念となる高レベルのVOCを被る。
【0004】
放射線硬化性ポリウレタン分散液(UV−PUD)のような低粘性水系代替物が、近代産業で多く使用されている。しかしながら、不飽和ポリマー分散液が非常に高い官能性を示すという事実にも関わらず、(メタ)アクリル酸不飽和の総量(meq/gとして表される)はとても低い。このことは、硬度及び抵抗の両方にとって、濃い架橋密度が望ましいハードコート用途にとって不都合な点である。
【0005】
最小の環境影響(低いVOC)及びスプレーによる塗布のための低い粘度を有する高性能ハードコートに対して需要がある。特に、硬化後に高い架橋密度を提供することが可能な高い官能性及び高レベルのエチレン性不飽和(meq/g)の両方を有利に有するより小さな分子に基づく水性組成物に関して興味が持たれている。
【0006】
DE4343885は、ポリオキシアルキレンアミンに由来するアクリル化乳化剤が使用される水性放射線硬化性分散液を開示している。そこで使用される乳化剤は、(B0)ジ又はポリエポキシ構成成分を(B1)ポリエチレン(プロピレングリコール)モノエーテルの一級又は二級モノアミンと反応させることによって、及び/又は化合物(B0)を(B2)ジ又はポリイソシアネートと反応させ、続いてポリエチレン(プロピレングリコール)モノエーテル、次にアクリル酸又はメタクリル酸と反応させることによって調製される。分子の張力活性(tension−active character)及び水中のポリマー表面を覆って、且つ安定化させるその能力が、分子の両親媒性の部分的損失により低減されるため、この種の連結分子に基づいて作製されるポリブロック構造は最良の安定化を付与しない。
【0007】
(メタ)アクリル化乳化剤のみが、DE4343885に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
最終的な用途に応じ、ハードコート特性に関して最小の有害な影響を伴う高い固体含有量でのポリアクリレートエマルジョンの適切な安定化を提供する、(メタ)アクリル化形態及び非(メタ)アクリル化形態の両方で使用することができる乳化剤が更に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この背景に対して、本発明者等は、(I)少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物(A)、及び(II)交互ポリアルキレンオキシドセグメントを含む少なくとも1つの乳化剤(B)を含む水性放射線硬化性組成物をここで提供し、ここで前記乳化剤が、アルキル基、アリール基、ヒドロキシル基及び/又は共重合性エチレン性不飽和基から選択される1つ又は複数の基を任意選択で有し、また前記乳化剤(B)が、少なくとも4.5のHLBを有する。
【0010】
しかしながら、典型的には、本発明の乳化剤(B)は、交互ポリアルキレンオキシドセグメントを含む(又は、本質的に構成される)が、但し、化合物(B)は、上記で規定するように、アルキル基、アリール基、ヒドロキシル基及び/又は共重合性エチレン性不飽和基から選択される1つ又は複数の基を任意選択で有することができる。
【0011】
「交互」(“alternating”)とは、本発明では、典型的に、少なくとも2つの異なるポリアルキレンオキシドセグメントのブロックが存在することを指すことを意味する。交互ポリアルキレンオキシドセグメントは、典型的には、交互ポリエチレンオキシドセグメント及びポリプロピレンオキシドセグメントである。ジブロック及び/又はトリブロック乳化剤が一般的に好ましい。乳化剤(B)は、有利には非イオン性乳化剤である。
【0012】
特に、(I)少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物(A)、並びに(II)交互ポリエチレンオキシドセグメント及びポリプロピレンオキシドセグメントを含む少なくとも1つの乳化剤(B)を含む水性放射線硬化性組成物が本明細書中で提供され、ここで前記乳化剤が、アルキル基、アリール基、ヒドロキシル基及び/又は共重合性エチレン性不飽和基から選択される1つ又は複数の基を任意選択で有し、また前記乳化剤(B)が、少なくとも4.5のHLB値を有する。
【0013】
更に詳細には、(I)少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物(A)、並びに(II)交互ポリエチレンオキシドセグメント及びポリプロピレンオキシドセグメントを含む少なくとも1つの乳化剤(B)を含む(又は、本質的に構成される)水性放射線硬化性組成物が本明細書中で提供され、ここで前記乳化剤が、アルキル基、アリール基、ヒドロキシル基及び/又は共重合性エチレン性不飽和基から選択される1つ又は複数の基を任意選択で有し、また前記乳化剤(B)が、少なくとも4.5のHLB値を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】HLB=20r/(1+r)の容易な算出を可能にするためのモルエトキシ/プロポキシ比(r)の定義のために参照される図である。
【0015】
本発明の実施形態では、乳化剤(B)は、一般式(I):
R−O−(R−O)−(R−O)−(R−O)−R’
(式中、
R1、R2又はR3はそれぞれ独立して、直鎖状又は分岐状C2〜C12アルキルであり、
R1≠R2であり、R3≠R2であり、
X=6〜100であり、
Y=6〜100であり、
Z=0〜100であり、
R及びR’はそれぞれ独立して、以下のもの:アルキル基(典型的には、直鎖状又は分岐状C1〜C18アルキル)、アリール基(典型的には、直鎖状又は分岐状C6〜C24アリール)、(メタ)アクリロイル基又は−Hから選択される。)
で表される。
【0016】
本発明の1つの実施形態では、R3=R1である。本発明の別の実施形態では、R3≠R1である。典型的には、R1、R2及びR3が、−エチル及び−プロピルから選択される。タイプEO−PO及び/又はタイプEO−PO−EOの乳化剤が好ましい(上記を参照)。本発明の1つの実施形態では、R=R’である。本発明の別の実施形態では、R≠R’である。z≠0である場合、zが典型的には6〜100である。
好ましい重合度はさらに下で見出される。
【0017】
本発明の1つの実施形態では、乳化剤(B)が、式(Ia):
H−O−(R−O)−(R−O)−(R−O)−H
により表されるものである。
【0018】
本発明の1つの実施形態では、乳化剤(B)が、式(Ib):
R−O−(R−O)−(R−O)−(R−O)−H(Rが、−Hとは異なる。)
により表されるものである。
【0019】
本発明の1つの実施形態では、乳化剤(B)が、式(Ic):
R−O−(R−O)−(R−O)−(R−O)−R’(R及びR’がともに、−Hとは異なる。)
により表されるものである。
【0020】
場合によっては、2つ以上の上記乳化剤(B)の混合物が使用される。
【0021】
本発明の組成物は、優れたコロイド安定性(例えば、60℃で10日間よりも優れている)を有する高い固体含有量製品(例えば、65%の)を得ることを可能にする。本発明の組成物から、100%UV樹脂に匹敵する特性を有するハードコートを調製することができる。
【0022】
本発明の化合物(A)は、1分子当たり少なくとも1つ、典型的には少なくとも2つの、本明細書で「エチレン性不飽和官能基」又は「エチレン性不飽和基」とも称される重合性エチレン性不飽和基を含む。「重合性エチレン性不飽和基」とは、本発明では、本明細書全体にわたって、照射の影響下で、全てではないが(光)開始剤の存在下で、ラジカル重合を受けることができる炭素間二重結合を指すことを意味する。かかる基の例は、(メタ)アクリロイル、(メタ)アクリルアミド、ビニル、ビニルエーテル、アリル、マレイル又はフマリル官能基である。重合性エチレン性不飽和基は概して、(メタ)アクリロイル基及び/又はアリル基から選択され、好ましくはそれらは(メタ)アクリロイル基、最も好ましくはアクリロイル基である。本発明では、「(メタ)アクリロイル」という用語は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の両方、又はそれらの誘導体並びに混合物を包含すると理解されるべきである。
【0023】
本発明の化合物(A)は、当該技術分野で既知の任意のタイプの水不溶性化合物であり得る。「水不溶性化合物」とは本発明では、自己乳化性又は自己分散性ではないが、規定されるような1つ又は複数の乳化剤(B)の存在下で水中若しくは水溶液中で、エマルジョン又は分散液を形成するエチレン性不飽和化合物を指すことを意味する。より詳細には、化合物(A)は、非自己分散性、非自己乳化性、非水希釈性(non water−dilutable)化合物である。典型的には、本発明の化合物(A)は、自己分散性化合物ではない。「自己分散性化合物」(“self−dispersible compound”)とは本発明では、水と混合されると、更なる乳化剤の助けを借りずに水中に分散される小さな粒子の安定な2相系を形成する化合物を指すことを意味する。「自己乳化性化合物」(“self−emulsifiable compound”)とは本発明では、水と混合されると、更なる乳化剤の助けを借りずに水中に分散される小さな液滴の安定な2相系を形成する化合物を指すことを意味する。典型的には、本発明の化合物(A)は、水希釈性化合物ではない。「安定な」とは本明細書では、60℃で2日以上後に、典型的には4日以上後に、好ましくは10日後でさえ、不均一系の相分離、クリーム状化(creaming)又は沈降に至る凝集(液滴)もフロック凝集(粒子)も実質的に存在しないことを指すことを意味する。「水希釈性化合物」とは本発明では、化合物が、水及び化合物の総質量における5〜75wt%の濃度範囲の水を上回る水と混合されるとき、乳化剤の非存在下で、均質な単一相混合物を形成するのを可能にする化合物を指すことを意味する。
【0024】
典型的には、本発明の化合物(A)は、化合物を自己分散性、自己乳化性又は水溶性にさせる量で、いかなるペンダント親水性基(カルボン酸基、スルホン酸基若しくはホスホン酸基、又は相当する塩のような)も含まず、いかなるアルキレンオキシドセグメントも含まない。
【0025】
化合物(A)は典型的には、少なくとも4meq/g、典型的には少なくとも5meq/g、好ましくは6meq/g、より好ましくは少なくとも7meq/g、更に好ましくは8meq/g、最も好ましくは少なくとも9meq/gの共重合性エチレン性不飽和基の量を特徴とする。典型的には、この量は、13meq/gを超えず、より好ましくは12meq/gを超えない。
【0026】
エチレン性不飽和基の量は通常、核磁気共鳴スペクトル分光学(NMR)により測定され、固形分材料1g当たりのmeqで表される。乾燥製品のサンプルを、N−メチルピロリジン中に溶解させる。このサンプルは、エチレン性不飽和基のモル濃度を測定するために、内部基準として1,3,5−ブロモベンゼンを使用して、1H−NMR解析に付す。内部基準の芳香族プロトンに帰属されたピークと、エチレン性不飽和二重結合に帰属されたピークとの間の比較によって、式(A×B)/C(式中、Aは、サンプルにより提供される1H二重結合の積分値であり、Bは、サンプル中の内部標準のモルの数であり、Cは、内部基準により提供される1Hの積分値である。)に従って、エチレン性不飽和基のモル濃度を算出することが可能となる。
【0027】
或いは、エチレン性不飽和基の量はまた、(溶媒としての氷酢酸、及び触媒としての酢酸水銀内で)前記不飽和基上での過剰の硫酸ピリジニウムジブロミド添加後の滴定により測定することができる。前記過剰は、ヨウ化カリウムの存在下でヨウ素を遊離させて、続いてヨウ素をチオ硫酸ナトリウムで滴定する。
【0028】
1分子当たり少なくとも3つ、典型的には4つ、より好ましくは少なくとも5つ、更には6つ以上のエチレン性不飽和官能基を含む化合物(A)が好ましい。
【0029】
上記で示されるような官能性及び不飽和度を組み合わせる化合物が更に好ましい。したがって、1分子当たり少なくとも3つのエチレン性不飽和基、典型的には1分子当たり少なくとも4つ、より好ましくは少なくとも5つ、更には6つ以上のエチレン性不飽和基の官能性、並びに少なくとも4meq/g、典型的には少なくとも5meq/g、好ましくは少なくとも6meq/g、より好ましくは少なくとも7meq/g、更に好ましくは少なくとも8meq/g、最も好ましくは少なくとも9meq/gのエチレン性不飽和基の量を特徴とする化合物(A)が特に好ましい。典型的には、エチレン性不飽和基の量は、13meq/gを超えず、より好ましくは12meq/gを超えない。概して、エチレン性不飽和基は、(メタ)アクリロイル基である。
【0030】
典型的には、化合物(A)は、(メタ)アクリル化化合物である。好ましくは、本発明の化合物(A)は、ウレタン(メタ)アクリレート(A1)、ポリエステル(メタ)アクリレート(A2)、ポリエポキシ(メタ)アクリレート(A3)、ポリカーボネート(メタ)アクリレート(A4)、ポリエーテル(メタ)アクリレート(A5)及びポリアクリル(メタ)アクリレート(A6)のうちの1つ又は複数から選択される。ウレタン(メタ)アクリレート及び/又はポリエステル(メタ)アクリレートが最も好ましい。ウレタン(メタ)アクリレート(A1)は典型的には、少なくとも1つのポリイソシアネート(i)、イソシアネート基と反応することが可能な少なくとも1つの反応性基を含有する少なくとも1つの重合性エチレン性不飽和化合物(ii)、及び任意選択で、イソシアネート基と反応することが可能な少なくとも1つの反応性基を含有する少なくとも1つの他の化合物(iii)の反応から得られる。「他の」とは、化合物(iii)が化合物(ii)とは異なることを意味する。「イソシアネート基と反応することが可能な反応性基」は、ヒドロキシル基、アミノ基及び/又はチオール基であり得る。しかしながら、最も典型的には、それらはヒドロキシル基である。
【0031】
ポリイソシアネート(i)とは、少なくとも2つのイソシアネート基を含有する化合物を指すことを意味する。典型的には、ポリイソシアネートは、6個以下のイソシアネート基、より好ましくは3個以下のイソシアネート基を含有する。最も典型的には、それはジイソシアネートである。ポリイソシアネートは概して、脂肪族、脂環式、芳香族及び/又は複素環式ポリイソシアネート、或いはそれらの組合せから選択される。使用され得る脂肪族及び脂環式ポリイソシアネートの例は、1,6−ジイソシアナトヘキサン(HDI)、1,1’−メチレンビス[4−イソシアナトシクロヘキサン](H12MDI)、5−イソシアナト−1−イソシアナトメチル−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)である。2つよりも多いイソシアネート基を含有する脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、1,6−ジイソシアナトヘキサンビウレット及びトリマーのような上述のジイソシアネートの誘導体である。使用され得る芳香族ポリイソシアネートの例は、1,4−ジイソシアナトベンゼン(BDI)、2,4−ジイソシアナトトルエン(TDI)、1,1’−メチレンビス[4−イソシアナトベンゼン](MDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)及びp−フェニレンジイソシアネート(PPDI)である。
【0032】
ウレタン(メタ)アクリレート(A1)の合成に使用されるポリイソシアネート化合物(i)の量は概して、10〜70重量パーセント(wt%)、好ましくは15〜60wt%、より好ましくは20〜50wt%の範囲である。重量パーセントは、本明細書ではウレタン(メタ)アクリレート(A1)を調製するのに使用される化合物の総重量に対するものである。
【0033】
化合物(ii)は典型的には、(メタ)アクリル化化合物である。最も多くの場合、化合物(ii)は、イソシアネート基と反応することが可能な1つの反応性基を本質的に含有する(メタ)アクリル化化合物である。かかる化合物は典型的には、アクリル基又はメタクリル基のような少なくとも1つの不飽和官能性、及びイソシアネートと反応することが可能な1つの求核官能性を含む。これは、ヒドロキシル基、アミノ基及び/又はチオール基であり得るが、典型的にはヒドロキシル基である。
【0034】
典型的には、化合物(ii)は、ヒドロキシル官能性(メタ)アクリレート、より詳細には(メタ)アクリロイルモノヒドロキシ化合物、或いは1つのヒドロキシル基及び1つ又は複数の(メタ)アクリロイル基を含む化合物である。アクリレートが特に好ましい。
【0035】
例えば、約1の残留平均ヒドロキシル官能性を有する(メタ)アクリル酸との脂肪族及び/又は芳香族ポリオールのエステル化生成物が適している。
【0036】
適切なヒドロキシル官能性(メタ)アクリレート(ii)の例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、又は開環反応でこれらのヒドロキシルに付加するラクトン若しくはラクチドと更に反応されるヒドロキシル化モノマーのいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
同様に、約1又はそれよりも高い残留平均ヒドロキシ官能性を有する(メタ)アクリル酸との脂肪族及び/又は芳香族ポリオールのエステル化生成物も適している。三価、四価、五価若しくは六価ポリオール、又はそれらの混合物との(メタ)アクリル酸の部分的エステル化生成物が好ましいが、同様に、望ましい残留ヒドロキシル官能性に達するまで、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド、又はそれらの混合物とのかかるポリオールの反応生成物、或いは開環反応においてこれらのポリオールに付加するラクトン又はラクチドとのかかるポリオールの反応生成物を使用することが可能である。ポリオールの(メタ)アクリル化は、(メタ)アクリレート構成成分の混合物へと進むこと、及びその混合物を特性化するのに容易で且つ適切な方法が、そのヒドロキシル価(mgKOH/g)を測定することによることは当業者に既知である。適切な化合物(ii)は、例えば少なくとも1つのヒドロキシ官能性が遊離状態のままである直鎖状及び分岐状ポリオールの(メタ)アクリル酸エステルである。グリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、並びにそれらの(ポリ)エトキシ化及び/又は(ポリ)プロポキシ化等価体のような少なくとも2つの(メタ)アクリル官能性を含む化合物が特に好ましい。ペンタエリトリトールトリアクリレート(PETIA)、ジペンタエリトリトールヒドロキシペンタアクリレート(DPHA)、並びに、ジペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート及びジペンタエリトリトールヘキサアクリレートを本質的に含有する混合物が特に好ましい。
【0038】
同様に、C1〜4ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート((ポリ)ラクトン)t化合物(ここで、tは、1〜10、好ましくは1〜5の整数である)が適切である。好ましくは、(ポリ)ラクトンは、(ポリ)カプロラクトンである。この分類で有用な化合物の例は、Tone M100(Dow Chemicals)及び/又はBisomer PEMCURE 12A(Cognis)である。適切な化合物(ii)の他の例は、C1〜4ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート((ポリ)ラクチド)n化合物(ここで、nは、1〜10の整数であり、好ましくはnは、1〜5であり、最も好ましくはnは、2〜4である)である。
【0039】
同様に、エポキシ官能性を有し、任意選択で少なくとも1つの(メタ)アクリル官能性を更に有する脂肪族、脂環式又は芳香族化合物との(メタ)アクリル酸の反応生成物が適している。同様に、エポキシ官能性及び少なくとも1つの(メタ)アクリル酸官能性を有する別の化合物との、少なくとも1つのカルボン酸を含有する脂肪族、脂環式又は芳香族化合物の反応から得られる化合物を使用することも可能である。C9〜C11バーサチック酸のグリジジルエステルと(メタ)アクリル酸との反応が特に適している。
【0040】
上記から、特にポリ(メタ)アクリロイルモノヒドロキシ化合物、或いは1つのヒドロキシル基及び2つ以上の(メタ)アクリロイル基を含む化合物が好ましい。
【0041】
ウレタン(メタ)アクリレート(A1)の合成に使用される化合物(ii)の量は概して、10〜90wt%、好ましくは40〜85wt%、より好ましくは50〜80wt%の範囲である。重量パーセントは、本明細書ではウレタン(メタ)アクリレート(A1)を調製するのに使用される化合物の総重量に対するものである。
【0042】
任意選択で、他のヒドロキシル官能性化合物(iii)は、本発明のウレタン(メタ)アクリレート(A1)を調製するのに使用することができる。化合物(iii)は典型的には、ポリオールであり、より詳細にはジオールである。概して、化合物(iii)は飽和ポリオールである。
【0043】
ポリオール(iii)とは、少なくとも2つのヒドロキシル基を含む有機化合物を指すことを意味する。ポリオール(iii)は、300未満、好ましくは200ダルトン未満の数平均分子量を有する低分子量ポリオール、少なくとも300、好ましくは少なくとも400、より好ましくは少なくとも500ダルトンの数平均分子量を有する高分子量ポリオール、或いはそれらの任意の混合物から選択することができる。高分子量ポリオール(iii)は好ましくは、多くても5,000、好ましくは多くても2,000、より好ましくは多くても1,000ダルトンの数平均分子量を有する。適切な低分子量化合物(iii)の例としては、エチレングリコール(EG)、プロピレングリコール(PG)、シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、グリセロール(GLY)、トリメチロールプロパン(TMP)、ジトリメチロールプロパン(di−TMP)、ペンタエリトリトール(PENTA)、ジペンタエリトリトール(di−PENTA)のような脂肪族又は脂環式ポリオール、或いは脂肪二量体ジオールのような任意の他の再生可能なポリオール等のような化合物が挙げられる。高分子量ポリオール(iii)の例は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリアクリレートポリオール及びシリコーンポリコール、並びにそれらの組合せである。500ダルトンを超える分子量を有するポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール及び/又はポリエーテルポリオールが好ましい。ポリヒドロキシル化ポリエステルポリオールが特に好ましい。かかる化合物の例は、当該技術分野で既知である。
【0044】
存在する場合、化合物(iii)は概して、1〜95wt%、好ましくは2〜20wt%、より好ましくは3〜10wt%、最も好ましくは5〜10wt%の量で使用される。重量パーセントは、本明細書ではウレタン(メタ)アクリレート(A1)を調製するのに使用される化合物の総重量に対するものである。
【0045】
本発明のある実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレートは、上記で同定されるような化合物(i)、(ii)及び任意選択の化合物(iii)から調製される。典型的には、化合物(i)、(ii)及び(iii)の重量パーセントの合計は100%に等しい。本発明のある実施形態では、化合物(iii)は、本発明のウレタン(メタ)アクリレート(A11)を調製するのに使用される。本発明の更に別の実施形態では、化合物(iii)は、本発明による化合物(A1)を調製するのに使用されない。少なくとも1つのポリイソシアネート(i)、及び上述するようにイソシアネート基と反応することが可能な少なくとも1つの反応性基を含有する少なくとも1つの重合性エチレン性不飽和化合物(ii)の反応から得られるウレタン(メタ)(アクリレート)(A12)が、特に好ましい。典型的には、化合物(i)及び(ii)の重量パーセントの合計は、本明細書中では100%に等しい。
【0046】
典型的には、本発明で使用されるウレタン(メタ)アクリレート(A1)は、400〜20,000ダルトンの分子量MWを有する。通常、MWは、多くても5,000ダルトン、典型的には多くても2,000ダルトン、最も典型的には多くても1,000ダルトンである。分子量は、ポリスチレン標準物質を使用してゲル浸透クロマトグラフィにより測定することができるが、最も典型的には分子量は、標的分子から算出される。
【0047】
任意選択で、本発明のウレタン(メタ)アクリレート(A1)は、ヒドロキシル官能性の残留量を有し得る。概して、ヒドロキシル官能性の残留量は0〜5meq/gである。典型的には、ヒドロキシル官能性の残留量は、多くても3meq/g、より典型的には多くても1meq/gである。
【0048】
適切なウレタン(メタ)アクリレート(A1)の例は、EBECRYL(登録商標)1290、EBECRYL(登録商標)220、EBECRYL(登録商標)270、EBECRYL(登録商標)264、EBECRYL(登録商標)294/25HD、EBECRYL(登録商標)4883、EBECRYL(登録商標)5129、及びEBECRYL(登録商標)8210として商品化されたものである。これらのウレタン(メタ)アクリレートは、反応性希釈剤で希釈され得るか、又は他の(メタ)アクリル化化合物と組み合わせて使用され得る。
【0049】
本発明で使用されるポリエステル(メタ)アクリレート(A2)は、典型的には少なくとも1つのポリオール(iii)及び少なくとも1つのエチレン性不飽和カルボン酸(iv)又は適切な等価体の反応から得られる。適切な化合物(iv)の例としては、(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、3−(メタ)アクリルアミド−3−メチルブタン酸、10−(メタ)アクリルアミド−ウンデカン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−ヒドロキシ酢酸、ビニル酢酸及び/又はアリル酢酸が挙げられる。アクリル酸及びメタクリル酸(単独で又は組み合わせて使用される)が好ましい。
【0050】
適切なポリエステル(メタ)アクリレート(A2)は、例えば全体的に(メタ)アクリル酸でエステル化されており、且つ分子中に残留ヒドロキシル官能性を含有し得る脂肪族又は芳香族多価ポリオールである。したがって、生成物を特性化するための容易で且つ適切な方法は、そのヒドロキシル価(mgKOH/g)を測定することによるものである。二価、三価、四価、五価及び/又は六価ポリオール、並びにそれらの混合物との(メタ)アクリル酸の部分的又は全体的エステル化生成物が適している。同様に、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド、又はそれらの混合物とのかかるポリオールの反応生成物、或いは開環反応でこれらのポリオールに付加するラクトン又はラクチドとのかかるポリオールの反応生成物を使用することが可能である。この分類由来の多価不飽和化合物の例は、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセロールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート並びにそれらの(ポリ)エトキシ化及び/又は(ポリ)プロポキシ化等価体、並びにそれらの混合物である。これらの例からの部分的アクリル化生成物もまた考慮される。
【0051】
より高分子量(例えば、500ダルトンを超える、好ましくは750ダルトンを超える、より好ましくは1,000ダルトンを超えるMW)を有するポリエステル(メタ)アクリレート(A2)はまた、ヒドロキシル基含有ポリエステルを(メタ)アクリル酸と反応させることによって、或いはカルボン酸基含有ポリエステルを、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−又は3−ヒドロキシプロピルアクリレート等のようなヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと、又はグリシジル(メタ)アクリレートと反応させることによって得ることができる。ポリエステル骨格は、少なくとも1つのモノ及び/又はポリヒドロキシアルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ビスフェノールA、ペンタエリトリトール等)、或いは/並びにそれらのエトキシレート及び/又はプロポキシレートと、少なくとも1つのモノ及び/又はポリカルボン酸(例えば、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等)との重縮合によって、従来の様式で得ることができる。ポリエステル合成用に不飽和化合物(例えば、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等のような)を使用することによって、ポリマー鎖中に(メタ)アクリル酸及びエチレン性不飽和の両方を有するポリエステルを得ることができる。更に、ポリラクトン及び/又はポリラクチドをポリエステル骨格として使用することができる。例えば、任意選択で1つ又は複数のポリヒドロキシアルコールの存在下でのε−カプロラクトンの開環重合により得られるポリ(ε−カプロラクトン)を使用することができる。本発明の特定の実施形態では、ポリエステル(メタ)アクリレート(A2)は、アルキド(alkyd)であり、より詳細には、(メタ)アクリル化アルキドである。本発明の別の実施形態では、ポリエステル(メタ)アクリレート(A2)はアルキドではなく、より詳細には、(メタ)アクリル化アルキドではない。アルキド構造を使用することによって、再生可能な原材料(脂肪酸)の含有量の増加とともに、光沢のある仕上げのようなその典型的なコーティング特性を包含することが可能である。
【0052】
典型的には、ポリエステル(メタ)アクリレート(A2)は、200〜20,000ダルトンのMWを有する。通常、MWは、多くても5,000ダルトン、典型的には多くても1,000ダルトン、最も典型的には多くても500ダルトンを有する。
【0053】
適切なポリエステルアクリレート(A2)は、例えばEBECRYL(登録商標)800、EBECRYL(登録商標)830及びEBECRYL(登録商標)884として商品化されたものである。
【0054】
本発明で使用されるポリエポキシ(メタ)アクリレート(A3)は、(メタ)アクリル酸と、ポリエポキシド、即ち少なくとも2つのエポキシド官能性を含む化合物との反応により得ることができる。ポリエポキシドは概して、芳香族又は脂肪族アルコール、ポリオールのグリシジルエーテルから、及び脂環式ポリエポキシドから選択される。好ましいエポキシドは、芳香族、脂肪族及び/又は脂環式ジオールのジグリシジルエーテル(例えば、ビスフェノール−Aのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ポリ(エチレンオキシド−コ−プロピレンオキシド)のジグリシジルエーテル、ポリプロピレンオキシドのジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、ペンタンジオールのジグリシジルエーテル、ブタンジオールのジグリシジルエーテル)である。ビスフェノール−Aのジグリシジルエーテルが特に好ましい。同様に、エポキシ化された不飽和脂肪酸トリグリセリド又はエポキシ化されたノボラックを使用することができる。例としては、エポキシ化されたダイズ油、エポキシ化されたヒマシ油、エポキシ化されたアマニ油等が挙げられる。
【0055】
本発明で使用されるポリエーテル(メタ)アクリレート(A4)は、ヒドロキシ官能性ポリエーテルと、(メタ)アクリル酸のようなエチレン性不飽和カルボン酸とのエステル化によって調製することができる。より多くの例に関して、上記化合物(iv)を参照されたい。
【0056】
ヒドロキシ官能性ポリエーテルは、テトラヒドロフラン、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドのような環状エーテルの開環単独重合若しくは開環共重合によって得られるか、或いはポリヒドロキシアルコールを、エチレンオキシド及び/プロピレンオキシドと反応させることによって調製することができる。
【0057】
本発明で使用されるポリカーボネート(メタ)アクリレート(A5)は、ヒドロキシ官能性ポリカーボネートと、(メタ)アクリル酸等のようなエチレン性不飽和カルボン酸とのエステル化によって調製することができる。より多くの例に関しては、上記化合物(iv)を参照されたい。
【0058】
本発明で使用されるポリ(メタ)アクリル(メタ)アクリレート(A6)は、熱的ラジカル開始剤、移動剤及び任意選択の(反応性)溶媒の存在下での(メタ)アクリルモノマーのラジカル重合によって調製することができる。適切なモノ又はポリ(メタ)アクリル化化合物による続くグラフトを確実にするために、化学的官能性をアクリル骨格に導入させる。例えば、(メタ)アクリルオリゴマーは、カルボン酸官能性を有しており、グリシジル(メタ)アクリレートでグラフトされる(又は、その逆)。このタイプの適切な(メタ)アクリル化(メタ)アクリルは、EBECRYL(登録商標)1200として商品化されている。
【0059】
1つの特定の実施形態では、本発明の組成物は、上述するような少なくとも1つのウレタン(メタ)アクリレート(A1)、及び任意選択で上述するような少なくとも1つのポリエステル(メタ)アクリレート(A2)を含む。
【0060】
別の特定の実施形態では、本発明の組成物は、上述するような少なくとも1つのポリエステル(メタ)アクリレート(A2)を含む。
【0061】
更に別の特定の実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも1つのウレタン(メタ)アクリレート(A1)、及び少なくとも1つのポリエステル(メタ)アクリレート、より詳細には少なくとも1つのポリエステル(メタ)アクリレート(A2)(上述するような)を含む。
【0062】
本発明のある実施形態では、本発明の組成物は、典型的に、上述するようなウレタン(メタ)アクリレート(A1)、ポリエステル(メタ)アクリレート(A2)、ポリエポキシ(メタ)アクリレート(A3)、ポリエーテル(メタ)アクリレート(A4)、ポリカーボネート(メタ)アクリレート(A5)及び/又はポリ(メタ)アクリル(メタ)アクリレート(A6)の群の2つ以上から選択される2つ以上の異なる化合物(A)を含む。場合によっては、異なるタイプの2つのウレタン(メタ)アクリレート(A1)が存在する。
【0063】
乳化剤(B)は、化合物(A)をエマルジョン又は分散液にさせることが可能である。本発明の乳化剤(B)を使用することによって、広範囲の温度にわたって、例えば4〜60℃、より典型的には室温〜60℃にわたってコロイド安定性を維持することが可能であることは利点である。本発明の利点は、60℃でのコロイド安定性が、少なくとも数日間、典型的には少なくとも4日間、更には最大10日以上間維持させることができることである。
【0064】
最も典型的には、エマルジョン、最も詳細には水中油型エマルジョンが得られる。「水中油型エマルジョン」とは、本発明では、分散された相が液滴として存在する水不溶性有機相であり、且つ分散相が水又は水溶液であるエマルジョンを指すことを意味する。本発明の乳化剤(B)は典型的には、ポリエチレンオキシド部分及びポリプロピレンオキシド部分の交互配列を含む。任意選択で、これらの乳化剤(B)は、アルキル基、アリール基、ヒドロキシル基及び/又は共重合性エチレン性不飽和基から選択される1つ又は複数の残留基を有することができる。通常、これらの任意選択の基は、アルキル基、ヒドロキシル基及び/又は共重合性エチレン性不飽和基から選択される。アルキル基及び/又は共重合性エチレン性不飽和基が更に好ましい。
【0065】
任意選択のアルキル基は、C1〜C18アルキル基であり得るが、典型的にはアルキル基は、C1〜C14アルキル基であり、より典型的にはアルキル基は、C1〜C12アルキル基、最も典型的にはC1〜4アルキル基(例えば、ブチル基のような)である。
【0066】
典型的には、本発明の乳化剤(B)上に存在し得る共重合性エチレン性不飽和基は、アリル基及び/又は(メタ)アクリロイル基から選択される。最も典型的には、それらは、(メタ)アクリロイル基である。上述の任意選択の基は典型的には、末端基である。
【0067】
本発明のある実施形態では、乳化剤(B)は、上記任意選択の基のいずれも有しない。本発明の別の実施形態では、乳化剤(B)は、上記任意選択の基の少なくとも1つを有している。通常、これらの任意選択の基は、アルキル基、ヒドロキシル基及び/又は共重合性エチレン性不飽和基から選択される。アルキル基及び/又は共重合性エチレン性不飽和基が、更に好ましい。
【0068】
典型的には、乳化剤(B)は、乳化剤(B)の総重量に対して少なくとも22.5重量%、通常は少なくとも50重量%である交互ポリアルキレンオキシド単位の含有量を有する。しかしながら、より典型的には、この含有量は、少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%、中でも最も好ましくは98重量%である。この重量%は、最大100%であり得る(上記で指定される任意選択の基が存在しない場合)。しかしながら、好ましい実施形態では、これらの基の少なくとも1つが存在し、好ましくは乳化剤は、末端基が分子の両側で異なることを意味する非対称分子である。
【0069】
交互ポリアルキレンオキシドセグメントは典型的には、交互ポリエチレンオキシドセグメント及びポリプロピレンオキシドセグメントである。ジブロック及び/又はトリブロック乳化剤が一般的に好ましい。トリブロック乳化剤のうち、タイプEO−PO−EOの乳化剤が好ましい。本発明のある実施形態では、乳化剤(B)は、乳化剤(B)の総重量に対して、20重量%〜80重量%のポリエチレングリコールに由来するオキシエチレン単位の量を有する。
【0070】
本発明のある実施形態では、乳化剤(B)は、乳化剤(B)の総重量に対して、20重量%〜80重量%のポリプロピレングリコールに由来するオキシプロピレン単位の量を有する。乳化剤(B)は典型的には、非イオン性乳化剤である。酸性基(カルボン酸基、スルホン酸基又はホスホン酸基のような)、アミノ基又はエポキシ基が、仮に最初に存在する場合、典型的には第2の工程で化学的にグラフトされて、乳化剤に別の官能性(例えば(メタ)アクリロイル基のような)を提供し、その結果、得られた乳化剤(B)が、非イオン性乳化剤である。例えば、カルボン酸基のような酸性基を使用して、前記カルボン酸基並びに少なくとも1つの共重合性エチレン性不飽和基と反応することが可能な官能基を含む(メタ)アクリル化用化合物(D)との反応により、乳化剤(B)に(メタ)アクリロイル基を提供することができる。ジブロック及びトリブロックコポリマーが好ましい。更に、乳化剤(B)がトリブロック乳化剤である場合、典型的には、乳化剤は、タイプEO−PO−EOの乳化剤である。タイプPO−EO−POの乳化剤(B)は、それらが少なくとも9、好ましくは少なくとも10のHLB値(又はHLB値の加重平均)を有した場合を除いて、本発明での使用にあまり適していないと見出された。ジブロックコポリマーが最も好ましい。
【0071】
ポリエチレンオキシド部分(又はセグメント)は、典型的には、6〜100単位を含む重合度を有する。多くの場合、重合度は、少なくとも20、より好ましくは少なくとも40である。多くの場合、重合度は、多くても80、通常多くても60である。ポリプロピレンオキシド部分(又はセグメント)は典型的には、6〜100単位を含む重合度を有する。多くの場合、重合度は、少なくとも10、より好ましくは少なくとも20である。多くの場合、重合度は、多くても80、通常多くても60である。
【0072】
典型的には、少なくとも4.5のHLB値(又はHLB値の加重平均)を有する1つ又は複数の乳化剤(B)が本発明の組成物中に存在する。「HLB」(“Hydrophilic−Lipophilic Balance”)という用語は、乳化剤(単数又は複数)の「親水性親油性バランス」を表し、分子中のポリエチレンオキシドの重量パーセントを5で除算したものと定義される。定義により、HLB値は、非イオン性乳化剤に関しては0及び20の除外値間に制限される。HLB値は、直接的又は間接的な方法によって測定することができる。しかしながら、典型的には、HLB値は、例えば以下の方法を使用して、NMR分光法により決定される。
【0073】
本発明では、乳化剤のHLB値は、溶媒として重水素化クロロホルムCDClを用いてBruker(登録商標)Avance 500MHz分光計でH−COSY NMR分光法により研究した。例えば、Maxemul(登録商標)7101の分析の場合、モルプロポキシ寄与−CH−CH(CH)−O−は、1.15ppmでの化学シフトを有するメチル(CH)の3つのプロトンH1の積分によって決定される。モルエトキシ寄与−CH−CH−O−は、3.30〜3.70ppmの化学シフト範囲にあるエポキシ単位由来のメチレン(−CH−CH−)セグメントの4つのプロトン(H4+H5)の積分から、プロポキシ単位由来のメチレン(−CH−CH)の更なる寄与(H2+H3)を差し引いたものにより決定される。
【0074】
モルエトキシ/プロポキシ比(r)は、
【数1】

として定義され、HLB=20r/(1+r)の容易な算出を可能にする。(図)
【0075】
概して、HLB値(又は、HLB値の加重平均)は、少なくとも5であり、典型的には少なくとも6である。好ましくは、HLB値は、少なくとも7、より好ましくは少なくとも8、更に好ましくは少なくとも9、最も好ましくは少なくとも10である。典型的には、HLB値は、多くても19、好ましくは多くても18、より好ましくは多くても17、最も好ましくは多くても16である。HLB値が高過ぎる場合には、気泡を発生させ、且つ安定化させる危険性が存在する。低すぎるHLB又は高すぎるHLB値は多くの場合、水中油型組成物の安定性に強力な悪影響を与える。
【0076】
7〜19のHLB値(又は、HLB値の加重平均)が好ましく、8〜18の値がより好ましく、9〜17の値が更に好ましく、10〜17の値がより典型的であり、10〜16の値が最も好ましい。
【0077】
高いHLB値を有する乳化剤は、より親水性(水溶性)であり、低いHLB値を有する乳化剤は、より親油性(油溶性)である。本発明のエマルジョンは通常、油構成成分のHLB要件に応じて安定化される。「油」という用語は本明細書中では、本発明の組成物中に存在する(メタ)アクリル化化合物(A)全てを包含する一般名と解釈される。
【0078】
化合物(A)のHLB要件を、乳化剤(B)のHLB値と適合させることにより、最適なエマルジョン安定性及び性能をもたらす。このことは、最も効率的な安定化を提供するためには、乳化剤が油−水相間に優先的に存在すべきであるという事実により説明することができる。この状況は、化合物(A)のHLB要求と、乳化剤(B)のHLB値との間の適合に相当する。例えば乳化剤(B)のHLB値が、化合物(A)のHLB要求と比較して低すぎる場合には、乳化剤(B)は、構成成分(A)に対してより高い親和性を有する傾向にあり、コロイド安定性を提供するのに液滴相間ではあまり効率的ではない。
【0079】
場合によっては、少なくとも4.5、典型的には少なくとも5、より典型的には少なくとも6、及び好ましくは多くても19(好ましい値に関しては、上記を参照)のHLB値の加重平均を有する乳化剤のブレンドが使用される。前記の場合、言及されるHLB値は典型的には、ブレンドされた乳化剤のHLB値の加重平均である。実際に、乳化剤ブレンドのHLB値が、ブレンドされた乳化剤のHLB値の加重平均であることは、一般に当業者に既知であり、即ち、HLB=4及びHLB=16を有する乳化剤の50:50ブレンドは、HLB=10を有する。同様に、油ブレンドのHLB要件(HLB requirement:Req)は、ブレンドされた構成成分のHLB要件の加重平均であり、即ちReq=10及びReq=14を有する油の50:50ブレンドは、Req=12を有する。
【0080】
このことを実際にどのように実践するかの数例を以下に示す:
【0081】
したがって、乳化剤(B)と同じビルディングブロック及び化学構造を有するが、例えば上記で示されるよりも低いか、又は高いHLBを有する1つ又は複数の他の乳化剤(C)と混合して(又はブレンドして)、本発明の1つ又は複数の乳化剤(B)を使用することが可能である。化合物(C)の例は、例えば、交互ポリアルキレンオキシドセグメント(特に、交互ポリエチレンオキシドセグメント及びポリプロピレンオキシドセグメント)を含む(又は、本質的に構成される)乳化剤(C1)であり、ここで前記乳化剤は、上記で規定するようなアルキル基、アリール基、ヒドロキシル基及び/又はエチレン性不飽和基から選択される1つ又は複数の基を任意選択で有し、また前記乳化剤は、化合物(B)のHLB値よりも低いHLB値を有する(例えば、4.5未満)。同様に、1つ又は複数の乳化剤(B)を、交互アルキレンオキシドセグメント(特に、交互ポリエチレンオキシドセグメント及びポリプロピレンオキシドセグメント)を含む(又は、本質的に構成される)1つ又は複数の乳化剤(C2)とブレンドすることが可能であり、ここで前記乳化剤は、上記で規定するようなアルキル基、アリール基、ヒドロキシル基及び/又はエチレン性不飽和基から選択される1つ又は複数の基を任意選択で有し、また前記乳化剤は、化合物(B)のHLB値よりも高いHLB値を有する(例えば、19を超えるか、又は19.5と同じくらい高い)。同様に良好に、ブレンドされる乳化剤のHLB値の加重平均が、少なくとも4.5、好ましくは少なくとも5、最も好ましくは少なくとも6、及び好ましくは多くても19である限りは、上述するように乳化剤(C1)及び(C2)のブレンドを使用することが可能である。好ましいHLB値に関しては、上記を参照されたい。好ましい任意選択の基に関してもまた、上記を参照されたい。
【0082】
本発明のある実施形態では、少なくとも1つの乳化剤(B)及び少なくとも1つの乳化剤(C)のブレンドが使用される。本発明の別の実施形態では、乳化剤(B)以外の乳化剤は使用されない。
【0083】
典型的には、乳化剤(B)は、700〜10,500ダルトンの分子量MWを有する。分子量は典型的に、算出される。典型的には、MWは、少なくとも3,000ダルトンであり、典型的には多くても7,000ダルトンである。
【0084】
最も典型的には、本発明の乳化剤(B)は、交互ポリエチレンオキシドセグメント及びポリプロプレンオキシドセグメントを含み(又は、本質的に構成され)、但し、化合物(B)は、上記で規定するようなアルキル基、アリール基、ヒドロキシル基及び/又は共重合性エチレン性不飽和基から選択される1つ又は複数の基を任意選択で有することができる。
【0085】
ポリエチレンオキシド(EO)部分及びポリプロピレンオキシド(PO)部分の交互配列を含む(又は、本質的に構成される)ジブロック及び/又はトリブロックコポリマーが特に好ましく、この化合物(B)は、少なくとも1つの末端ヒドロキシル基、アルキル基及び/又はエチレン性不飽和基を任意選択で有することができる。また、エチレン性不飽和基は典型的には、(メタ)アクリロイル基である。本発明の第1の変化形では、乳化剤(B)はジブロックコポリマーである。(i)6〜100単位、好ましくは20〜80単位、最も好ましくは40〜60単位を含む重合度を有するポリエチレンオキシド、及び(ii)6〜100単位、好ましくは20〜80単位、最も好ましくは40〜60単位を含む重合度を有するポリプロピレンオキシドの交互配列を含む(又は、本質的に構成される)ジブロックコポリマーが特に好ましい。任意選択で、これらの乳化剤(B)は、末端ヒドロキシル基、アルキル基及び/又はエチレン性不飽和基のような上記で規定するような1つ又は複数の任意選択の基を有することができる。任意選択の基の中でも特に、アルキル基及び/又はエチレン性不飽和基が好ましい。更に、エチレン性不飽和基は典型的には、(メタ)アクリロイル基である。典型的には、このタイプの乳化剤(B)は、700〜10,000ダルトンの分子量MWを有する。好ましくは、MWは、少なくとも2,000ダルトン、より好ましくは少なくとも3,000ダルトン、最も好ましくは少なくとも4,000ダルトンである。好ましくは、MWは、多くても8,000ダルトン、より好ましくは多くても7,000ダルトン、最も好ましくは多くても6,000ダルトンである。
【0086】
本発明の第2の変化形では、乳化剤(B)は、トリブロックコポリマー、特にタイプEO−PO−EOのトリブロックコポリマーである。「EO−PO−EOタイプ」とは、乳化剤が(i)ポリエチレンオキシド、(ii)ポリプリピレンオキシド及び(iii)ポリエチレンオキシド部分の交互配列を含有することを指すことを意味する。(i)6〜100単位、好ましくは10〜80単位、最も好ましくは20〜60単位を含む重合度を有するポリエチレンオキシド、(ii)6〜100単位、好ましくは10〜80単位、最も好ましくは20〜60単位を含む重合度を有するポリプロピレンオキシド、及び(iii)6〜100単位、好ましくは10〜80単位、最も好ましくは20〜60単位を含む重合度を有するポリエチレンオキシドの交互配列を含む(又は、本質的に構成される)トリブロックコポリマーが特に好ましい。任意選択で、これらの乳化剤(B)は、末端ヒドロキシル基、アルキル基及び/又はエチレン性不飽和基のような上記で規定するような1つ又は複数の任意選択の基を有することができる。任意選択の基のうち特に、アルキル基及び/又はエチレン性不飽和基が好ましい。典型的には、エチレン性不飽和基は、(メタ)アクリロイル基である。
【0087】
典型的には、このタイプの乳化剤(B)は、800〜15,000ダルトンの分子量MWを有する。好ましくはMWは、少なくとも2,000ダルトン、より好ましくは少なくとも3,000ダルトン、最も好ましくは少なくとも4,000ダルトンである。好ましくは、MWは、多くても10,000ダルトン、より好ましくは多くても8,000ダルトン、最も好ましくは多くても6,000ダルトンである。
【0088】
本発明の第3の変化形では、第1の変化形による少なくとも1つの乳化剤、及び第2の変化形による少なくとも1つ乳化剤が、本発明の組成物で使用される。
【0089】
しかしながら、上述するようなジブロックコポリマーが特に好ましい。典型的には、化合物(B)は、0〜1meq/gの共重合性エチレン性不飽和基の量を特徴とする。本発明のある実施形態では、共重合性エチレン性不飽和基を有しない乳化剤(B1)が使用される。任意選択で、前記乳化剤(B1)は、アルキル基、アリール基、及び/又はヒドロキシル基から選択される1つ又は複数の基を更に含有してもよい。これらの任意選択の基の中でも、アルキル基及び/又はヒドロキシル基が好ましい。アルキル基が最も好ましい。典型的には、これらの任意選択の基は末端基である。
【0090】
本発明のある実施形態では、少なくとも1つの共重合性エチレン性不飽和基を有する乳化剤(B2)が使用される。任意選択で、前記乳化剤(B2)は、アルキル基、アリール基及び/又はヒドロキシル基から選択される1つ又は複数の基を更に含有してもよい。これらの任意選択の基の中でも、アルキル及び/又はヒドロキシル基が好ましい。アルキル基が最も好ましい。典型的には、これらの任意選択の基は末端基である。
【0091】
本発明の更に別の実施形態では、少なくとも1つの乳化剤(B1)及び少なくとも1つの乳化剤(B2)が使用され得る。
【0092】
乳化剤(B1)は、実際には乳化剤(B2)と同程度に良好に機能したが、後者は、例えば硬化速度、機械的及び化学的抵抗、並びに経年劣化に関して幾らか利点を有することは、幾分驚くべきことであった。更に、移動の問題、続くコート間接着は、乳化剤(B2)を使用することによって低減させることができる。この観察は、乳化剤のアクリル化が最終的な硬化コーティングの性能にとって取るに足りない効果となるハードコード組成物の非常に高いアクリレート官能性に起因した。より特異的なハードコード性能の需要の場合、又はあまり官能基化されていないアクリレート化合物がハードコードの外側での使用のために乳化される場合には、このことはあまり当てはまらない。
【0093】
本発明の別個の態様は、少なくとも1つの共重合性エチレン性不飽和基(これは典型的には、(メタ)アクリロイル基である)を含むエチレン性不飽和非イオン性乳化剤(B2)に関する。(メタ)アクリロイル基は、基の両側に存在し得るが、本発明の特定の実施形態では、片側のみに存在する。交互ポリアルキレンオキシドセグメントを含むエチレン性不飽和非イオン性乳化剤(B2)が典型的である。任意選択で、前記乳化剤は、アルキル基、アリール基及び/又はヒドロキシル基から選択される1つ又は複数の基を更に含有してもよい。典型的には、これらの任意選択の基は末端基である。
【0094】
概して、乳化剤は、交互ポリアルキレンオキシドセグメントを含む(より詳細には、本質的に構成される)。典型的には、乳化剤は、交互ポリエチレンオキシドセグメント及びポリプロピレンオキシドセグメントを含む(より詳細には、本質的に構成される)。任意選択で、前記乳化剤は、アルキル基、アリール基及び/又はヒドロキシル基から選択される1つ又は複数の基を更に含有してもよい。任意選択の基のうち、下記が好ましい:アルキル基及び/又はヒドロキシル基。アルキル基が最も好ましい。
【0095】
特に好ましい化合物(B2)は、一方の側に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基、及び分子の他方の側にアルキル基を有するものである。好ましいアルキル基に関するより多くの情報は、上記に見出すことができる。
【0096】
典型的には、乳化剤は、少なくとも4.5、好ましくは少なくとも5、より好ましくは少なくとも6、及び好ましくは多くても19のHLB値を有する。好ましいHLB値は、上記で与えられる。更に、7〜19のHLB値が典型的であり、8〜18の値がより典型的であり、9〜17の値が好ましく、10〜17の値がより典型的であり、10〜16の値が最も好ましい。
【0097】
多くの場合、共重合性エチレン性不飽和基の量は、化合物(B2)1g当たり少なくとも0.05meqであり、より多くの場合には、この量は、少なくとも0.1meq/g、最も多くの場合には少なくとも0.15meq/gである。この量は、少なくとも0.2meq/gであり得る。典型的には、この量は、多くても1meq/gである。多くの場合、この量は、最大でも0.5meq/g、より多くの場合、最大でも0.4meq/g、最も典型的には最大でも0.3meq/gである。典型的には、共重合性エチレン性不飽和基は、(メタ)アクリロイル基、より詳細にはアクリロイル基である。典型的には、本発明による(メタ)アクリル化乳化剤(B2)は、0.05〜1meq/gの量で、より典型的には0.05〜0.5meq/gの量で、好ましくは0.1〜0.4meq/gの量で、最も好ましくは0.2〜0.3meq/gの量で(メタ)アクリロイル基を有する。
【0098】
エチレン性不飽和(より詳細には、(メタ)アクリロイル基)を、以下で規定するようなエチレン性不飽和化合物(D)と反応するのに使用される乳化剤上に存在する反応性官能基の官能性で選択される多種多様な方法で、直接的に又はリンカー(E)を介してのいずれかで導入することができる。
【0099】
共重合性エチレン性不飽和基を前記乳化剤に付着させることができる考え得る経路の数例を以下に示す。前記乳化剤は、直接的に又はリンカー(E)を介してのいずれかで、化合物(D)との反応に更に適した上記で規定するような乳化剤(B1)であってもよい。或いは、前記乳化剤は、上記で規定するような交互ポリアルキレンオキシドセグメント、並びにエチレン性不飽和基、典型的には(メタ)アクリロイル基を提供する化合物と反応することが可能な反応性基を含む乳化剤(B3)であり得る。適切な官能基の数例:ヒドロキシル基、酸性基(より詳細には、カルボン酸基)、エポキシ基又はアミノ基。任意選択で、前記乳化剤(B3)は、アルキル基及び/又はアリール基を含有し得る。交互ポリアルキレンオキシドセグメントは典型的には、交互ポリエチレンオキシドセグメント及びポリプロピレンオキシドセグメントである。
【0100】
化合物(B2)にエチレン性不飽和を導入する種々の方法が存在する。共重合性エチレン性不飽和基を、例えばエチレン性不飽和化合物(D)上の反応性官能基と、乳化剤(B1)又は(B3)上に存在する反応性官能基との間の直接的な反応を介して結合することができる。或いは、それらを、一方でエチレン性不飽和化合物(D)上の反応性官能基と反応し、他方で乳化剤(B1)又は(B3)上に存在する反応性官能基と反応するリンカー(E)(例えば、無水物又はエピハロヒドリン)を使用して、間接的な方法で導入することができる。
【0101】
エチレン性不飽和化合物(D)とは、少なくとも1つの共重合性エチレン性不飽和基、並びに乳化剤(B1)又は(B3)上に存在する例えばヒドロキシル基、アミン基又はカルボン酸基、或いはこの場合リンカー(E)と反応することが可能な少なくとも1つの反応性基を含む化合物を指すことを意味する。化合物(D)上のエチレン性不飽和基は典型的には、(メタ)アクリロイル、ビニル、ビニルエーテル、アリル、マレイル、フマリル及び/又は(メタ)アクリルアミド官能基から選択される。アリル基及び/又は(メタ)アクリロイル基が典型的である。(メタ)アクリロイル基が好ましい。典型的には、化合物(D)は、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基、並びにヒドロキシル基、アミン基又はカルボン酸基と反応することが可能な少なくとも1つ、より好ましくは本質的に1つ(又は1つ)の反応性基を含む。
【0102】
第1の変化形では、乳化剤(B)の(メタ)アクリル化は、乳化剤(B1)又は(B3)上に存在するヒドロキシル官能性を、不飽和酸及び/又はその適切な等価体(D1)と反応させることによって達成される。適切な等価体の例は、例えば不飽和酸のハロゲン化アシル、又は不飽和酸の相当する無水物である。(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸無水物又は(メタ)アクリル酸ハロゲン化物が本発明での使用に特に適している。適切な(メタ)アクリル酸ハロゲン化物の例は、塩化(メタ)アクリル酸、臭化(メタ)アクリル酸及び/又はヨウ化(メタ)アクリル酸である。(メタ)アクリル酸ハロゲン化物及び/又は(メタ)アクリル酸無水物が使用される場合、分解を回避するために脱水状態で作動させるのが望ましい。
【0103】
第2の変化形では、乳化剤(B)の(メタ)アクリル化は、乳化剤(B1)又は(B3)上に存在するヒドロキシル官能性を、エステル交換プロセスを介して、不飽和酸の低級アルキルエステル(D2)と反応させることによって達成される。低級アルキルエステルとは、特に、(メタ)アクリル酸のような不飽和酸の低級アルコールエステルを指すことを意味する。低級アルコールは好ましくは、脂肪族C1〜C4アルコールである。好ましい低級アルキルエステルは、(メタ)アクリル酸の例えばメチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル及び/又はイソプロピルエステルである。
【0104】
第3の変化形では、幾分あまり好ましくはないが、乳化剤(B)の(メタ)アクリル化は、乳化剤(B3)上に存在するアミン官能性を、少なくとも1つの共重合性エチレン性不飽和基を有するエポキシ官能基化された化合物(D3)と、或いは上述するような化合物(D1)と反応させることによって達成される。これらのアミン官能基化されたEO/POポリエーテルアミン(B3)の例は、例えば、一般式II:
【化1】

で表すことができる例えばJeffamines(登録商標)EDシリーズのようなJeffamines(登録商標)である。
【0105】
エポキシ官能基化された(メタ)アクリル化用化合物(D3)の例は、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートである。
【0106】
第4の変化形では、乳化剤(B)の(メタ)アクリル化は、少なくとも1つのイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物(D4)を、乳化剤(B1)又は(B3)上に存在するヒドロキシル又はアミン官能性と反応させることによって達成される。このことは例えば、TMI(登録商標)(Cytec Industries、式IIを参照)のようなイソシアネート含有ビニル化合物(D4)を、ヒドロキシル又はアミン官能基化された乳化剤(B1)又は(B3)と反応させることによって達成することができる。
【0107】
式III:
【化2】
【0108】
適切な化合物(D4)の他の例は、2−イソシアナトエチルアクリレート(AOI(商標)−Showa Denko)及び2−イソシアナトエチルメタクリラート(MOI(商標)−Showa Denko)である。
【0109】
第5の変化形では、乳化剤(B)の(メタ)アクリル化は、乳化剤(B1)又は(B3)上に存在するアミン又はヒドロキシル官能性を、少なくとも1つのポリイソシアネート(v)、並びにイソシアネート基と反応することが可能な少なくとも1つの反応性基及び少なくとも1つのエチレン性不飽和基(これは典型的には、(メタ)アクリロイル基である)を含有する少なくとも1つの化合物(vi)の反応生成物(D5)(又は、付加体)と反応させることによって達成される。化合物(v)は、上述するような1つ又は複数のポリイソシアネート化合物(i)から、化合物(vi)は、上述するような1つ又は複数の化合物(ii)から選択され得る。好ましい化合物(v)は、イソシアネート基と反応することが可能な少なくとも1つの反応性基、及び少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を含有するものである。少なくとも1つアクリロイル及び/又はメタクリロイル基、並びにイソシアネート基と反応することが可能な1つ(又は、本質的に1つ)の求核官能性(例えば、ヒドロキシル基)を含有するものが最も好ましい。
【0110】
エチレン性不飽和を乳化剤(B)へ組み込む別の適切な経路は、リンカーとして少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物(E)を利用する。これらのエポキシ化合物は、脂肪族、脂環式又は芳香族であり得る。好ましくは、これらのエポキシ化合物は、多価アルコール、多価フェノール、或いはこれらのフェノール及び/又はノボラックの水素添加生成物に基づくポリグリシジルエーテルである。この経路の第1の例は、例えば欧州特許出願公開第2325221号(Cytec surface Specialties、オーストリア)に記載されるように、乳化剤(B1)又は(B3)上に存在するヒドロキシル官能性とのエポキシ基の反応を利用する。ヒドロキシル基及びエポキシ基の量は、乳化剤(B)が縮合反応後に少なくとも1つのエポキシ基を含有するような様式で選択される。三フッ化ホウ素若しくは五フッ化アンチモン、又はエーテル若しくはアミンとのそれらの複合体のようなルイス酸が、この反応にとって好ましい触媒である。ここで乳化剤(B)上に存在するエポキシ基を、続いて第2の工程で、上述するような不飽和酸(D1)と反応させる。
【0111】
同じエポキシ化合物(E)はまた、全てのアミン基がエポキシ基へ変換されるような比率で、例えば上述のJeffamine(登録商標)EDシリーズのようなポリエーテルアミンと反応させることができる。続いて、これらのエポキシ基は第2の工程で、上述するような不飽和酸(D1)と反応させる。乳化剤(B2)を得る類似の様式は、同じエポキシ化合物(E)を、乳化剤(B1)又は(B3)上に存在するカルボン酸官能性と反応させることによるものである。
【0112】
不飽和官能性を乳化剤(B)へ組み込む更に別の適切な経路は、第1に、乳化剤(B1)又は(B3)上に存在するヒドロキシル官能性を、エピハロヒドリン、通常エピクロロヒドリン(E)と反応させることで構成される。第2の工程では、ここで乳化剤(B1’)上に存在するエポキシ官能性が続いて第2の工程で、エポキシ基と反応することが可能な少なくとも1つの反応性基(例えばカルボン酸基のような)を含有する化合物(D)と反応させる。適切な化合物(D)の例は、例えば化合物(D1)(例えば、(メタ)アクリル酸のような)である。
【0113】
更に別の適切な経路は、エチレン性不飽和化合物(D)、好ましくは、1分子当たり少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基、より詳細には少なくとも2つのアクリロイル基を含有するアクリル化化合物との、乳化剤(B1)又は(B3)上に存在する一級又は二級アミン官能性のマイケル付加で構成される。エチレン性不飽和官能性、好ましくは反応性アクリロイル官能性の総量と、反応性アミン基の総量との間の比率は、典型的には少なくとも2である。
【0114】
更に別の適切な経路は、第1の工程で、乳化剤(B1)又は(B3)上に存在するヒドロキシル又はアミン官能性を、無水物(E)と反応させることで構成され、それぞれ、第2の工程で、グリシジル(メタ)アクリレートのようなエポキシ官能基化された化合物(D4)と反応させることができるエステル又はアミド結合、及びカルボン酸官能基を付与する。
【0115】
無水物(E)の典型的な例は、例えばコハク酸無水物、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物及び/又はピロメリット酸無水物である。エチレン性不飽和無水物が使用される場合、プロセスは第1の工程後に停止させることができる。
【0116】
典型的には、化合物(B2)は、乳化剤(B1)又は(B3)上に最初に存在するヒドロキシル、アミノ及び/又は酸官能基(典型的には、カルボン酸官能基)の100%に近い転化率を特徴とする。少なくとも90%、典型的には少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%の転化率を有することが好ましい。
【0117】
典型的には、乳化剤(B2)は700〜15,000ダルトンの分子量MWを有する。
【0118】
詳細には、交互ポリエチレンオキシドセグメント及びポリプロピレンオキシドセグメントを含む(又は、構成される)エチレン性不飽和乳化剤(B2)が本発明で提供され、ここで前記乳化剤は、少なくとも1つのエチレン性不飽和基、及び任意選択でアルキル基、ヒドロキシル基及び/又はアリール基から選択される1つ又は複数の基を有し、前記乳化剤は、少なくとも6のHLB値を有する。任意選択の基から、アルキル基及び/又はヒドロキシル基が好ましく、それらの基は最も多くの場合、末端基である。典型的には、前記乳化剤(B2)は、非イオン性乳化剤である。エチレン性不飽和を導入する方法は、上述されている。典型的には、エチレン性不飽和基は、(メタ)アクリロイル基である。好ましいHLB値、好ましい不飽和レベル、好ましい任意選択の基、好ましい分子量等に関しては、上記を参照されたい。
【0119】
本発明の組成物は、様々な方法で調製することができ、更に典型的には、化合物(A)及び(B)、並びに場合によっては他の成分(共溶媒のような)を、20〜80℃の温度で、例えばコールズ(cowless)プロペラを使用して20〜2000rpmで(コールズ直径、容器直径及び撹拌されるべき容積に応じて)、高せん断下でブレンドすることによって調製される。5〜60分の期間中に、15℃〜80℃の温度で、転相に相当する固体含有量(典型的にはほぼ80%)を有する水性組成物を得るような量で水を添加する。
【0120】
或いは、水中で、化合物(A)を含有する有機相を添加する。この場合、乳化剤(B)は、有機相又は水のいずれか、或いは両方に添加することができる。典型的には、高せん断条件は、5〜60分間維持され、その後、水の第2のポーションを、15〜80℃の温度で添加して、所望の固体含有量に組成物を希釈する。或いは、成分を水に添加することができるが、カタストロフィ的転相プロセスが、通常好ましい。
【0121】
10〜200rpmのせん断速度でブレンドすることを、典型的に15〜30℃の温度で5〜30分の期間、安定なエマルジョンが得られるまで、典型的に継続させる。
【0122】
概して、本発明の組成物は、化合物(A)及び(B)の総重量に対して、50〜99.9重量パーセント(wt%)の化合物(A)を含む。通常、この量は、少なくとも80wt%、多くの場合少なくとも90wt%、より多くの場合少なくとも92wt%である。多くの場合、この量は、最大でも99wt%、より典型的には最大でも98wt%、最も典型的には最大でも96wt%である。典型的には、本発明の組成物は、化合物(A)及び(B)の総重量に対して、80〜99wt%、好ましくは90〜98wt%、最も好ましくは92〜96wt%の化合物(A)を含む。
【0123】
概して、本発明の組成物は、化合物(A)及び(B)の総重量に対して、0.1〜50wt%の化合物(B)を含む。通常、この量は、少なくとも1wt%、多くの場合少なくとも2wt%、より多くの場合少なくとも4wt%を含む。多くの場合、この量は、最大でも20wt%、より典型的には最大でも10wt%、最も典型的には最大でも8wt%である。典型的には、本発明の組成物は、化合物(A)及び(B)の総重量に対して、1〜20wt%、好ましくは2〜10wt%、より好ましくは4〜8wt%の化合物(B)を含む。
【0124】
本発明の組成物は典型的には、組成物の総重量に対して、5〜65wt%、より典型的には55〜65wt%の化合物(A)を含む。本発明の組成物は典型的には、組成物の総重量に対して、0.05〜35wt%、より典型的には2〜6wt%の化合物(B)を含む。
【0125】
本発明の組成物は、任意選択で、少なくとも1つの共溶媒(F)を更に含むことができる。例えば有機相のHLB要求を変更することによって、プロセス粘度を低減させて、且つ最終的なエマルジョンのコロイド安定性を増加させることが可能な高沸点溶媒である共溶媒が好ましい。760mmHgで100℃〜300℃、好ましくは150℃〜250℃、最も好ましくは175℃〜225℃の沸点を有する共溶媒が特に好ましい。酸素化溶媒から選択される共溶媒(F)が特に好ましい。適切な例としては、(i)芳香族、脂肪族若しくは脂環式ポリカルボン酸の完全に及び部分的に反応されたアルキル又はアリールエステル、(ii)芳香族、脂肪族若しくは脂環式ポリグリコールの完全に及び部分的に反応されたアルキル又はアリールエステル、(iii)芳香族、脂肪族若しくは脂環式ポリグリコールの完全に及び部分的に反応されたアルキル又はアリールエーテル、(iv)ニートの環状カーボネート、アルキル及びアリール置換された環状カーボネート、(v)ニートの環状エーテル、アルキル及びアリール置換された環状エーテル、(vi)ニートの環状エステル、アルキル、及びアリール置換された環状エステルが挙げられるが、これらに限定されない。「ニート」(“neat”)とは、化合物が置換されていないことを指すことを意味する。最も典型的な化合物(F)は、(i)芳香族、脂肪族若しくは脂環式ポリグリコールの完全に及び部分的に反応されたアルキル又はアリールエステル、(ii)芳香族、脂肪族若しくは脂環式ポリグリコールの完全に及び部分的に反応されたアルキル又はアリールエーテルから選択されるものである。
【0126】
本発明での使用に適している共溶媒としては、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(DOWANOL(登録商標)DM)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DOWANOL(登録商標)DPM)、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸若しくはフタル酸のジメチルエステル又はジイソブチルエステル及びそれらのブレンド、エチル−3−エトキシプロピオネート(Ektapro(登録商標)EEP、Eastman)、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート(Kodaflex(登録商標)TXBI、Eastman)、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネート、プロピレングリコールジアセタート(DOWANOL(登録商標)PGDA)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(PROGLYDE(登録商標)DMM)、乳酸エチルが挙げられるが、これらに限定されない。しかしながら、好ましくは、凝集性溶媒は、本発明の組成物中には存在しない。存在する場合、共溶媒(F)は典型的には、組成物中の固体の総重量に対して、1〜20wt%、好ましくは2〜10wt%、より好ましくは3〜6wt%の量で存在する。
【0127】
本発明の組成物は任意選択で、例えばエステル化に使用される残留触媒として存在する、例えば残留酸と反応することが可能な少なくとも1つの中和剤(G)を更に含んでもよい。化合物(G)は典型的には、有機及び/又は無機塩基から選択される。適切な中和剤(G)としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N−メチルピペラジン、N−メチルピロリジン及びN−メチルピペリジン、ジブチルアミノエタノール、N−ブチルエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、2−[1−(メチルプロピル)アミノエタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノールのような有機三級アミン、並びに一価金属陽イオン、好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウムのようなアルカリ金属又はカルシウム、及びヒドロキシド又はカーボネートのような陰イオンを含む無機塩基が挙げられる。これらの中和剤の総量は、エマルジョンのpHを中性又はアルカリ性へと上げるように実験的に決定することができ、例えばポリエステル(メタ)アクリレート又はエポキシ(メタ)アクリレートをもたらすエステル化プロセス中に最終的には触媒として存在する残留酸の存在に依存する。
【0128】
本発明の組成物は任意選択で、少なくとも1つの光開始剤(H)を更に含んでもよく、それは典型的には、組成物中に存在する固体の総重量に関して、0.1〜10wt%、好ましくは1〜7wt%、最も好ましくは3〜5wt%の量で存在する。本発明に適した光開始剤の例は、Esacure(登録商標)HBである。
【0129】
望ましい場合、本発明の組成物は任意選択で、組成物中に存在する固体の総重量に対して、0.01〜25wt%の量で少なくとも1つの官能性分子、オリゴマー又はポリマー(J)を更に含んでもよい。存在する場合、それらは典型的には、1〜10wt%、最も好ましくは2.5〜5wt%の量で存在する。化合物(J)は、液体又は固体形態で、非硬化又は硬化形態で、且つそれが組成物に更なる性能値をもたらすような様式で、ポリマー組成物の特性を変更させることが可能である。例としては、IRR154の名称の下で商品化されている製品のようなシリコーン化及び/又はフッ素化エチレン性不飽和化合物が挙げられ、ADDITOL(登録商標)HGX83が特に適している。ハロゲン化分子、特にフッ素化分子は、接着及び/又は表面張力のような有意な表面又は界面効果を提供することが可能である。同様に、Silclean(登録商標)3700のような非エチレン性不飽和シリコーン化化合物も適している。
【0130】
本発明の組成物中に存在する少なくとも2つの異なるタイプの化合物(A)を有することは有利であり得る。最も簡素な様式では、これは、本発明の2つ(又はそれ以上)の異なる組成物をブレンドすることによって実施され得る。或いは、これは、種々の化合物(A)をまずブレンドすること、続いて上述するような本発明による少なくとも1つの乳化剤(B)を使用した乳化の工程により実施され得る。本発明の組成物中に存在する化合物(A)とは異なる少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物(K)を有することが、同様に可能である。このことは、本発明の組成物を、他のエマルジョンであり得るが、同様に(他の)分散液でもあり得る1つ又は複数の他の(放射線硬化性)水性組成物とブレンドすることによって達成することができる。しかしながら、このことはまた、化合物(A)を1つ又は複数の化合物(K)とまずブレンドすること、続いて上述するような本発明による少なくとも1つの乳化剤(B)を使用した乳化の工程により達成することができる。
【0131】
化合物(K)は、水不溶性化合物であり得るが、それはまた、自己分散性、自己乳化性又は水希釈性化合物であり得る。
【0132】
上記アプローチの利点は、異なる分子を使用することによって、想定される最終用途に従ってコーティング組成物の最終的な特性を変更又は微調整することが可能であることである。これらのブレンドの特定の利点は、それらから作製される硬化コーティングの硬度並びに機械的及び化学的抵抗(resistance:耐性)を強化するそれらの能力、或いはそれらから作製される硬化コーティングの可撓性を増加させるそれらの能力に存する。幾つかの実例を以下に示す:
【0133】
本発明の組成物(典型的には、エマルジョン)は、例えばUCECOAT(登録商標)7849、UCECOAT(登録商標)7177、UCECOAT(登録商標)7710、UCECOAT(登録商標)7571、UCECOAT(登録商標)7689、UCECOAT(登録商標)7655及びUCECOAT(登録商標)7699のようなポリウレタン分散液とブレンドすることができる。他のポリマー分散液はまた、それらが反応性アクリレート官能性を含まないとしても使用することができる。この分類の範疇にある製品としては、ポリウレタン分散液(例えば、DAOTAN(登録商標)の名称の下で)、アクリル分散液(例えば、VIACRYL(登録商標)の名称の下で)、ポリエステル及びアルキド分散液(例えば、RESYDROL(登録商標)の名称の下で)、及びポリエポキシ分散液(例えば、BECKOPOX(登録商標)の名称の下で)が挙げられる。
【0134】
高度に官能基化された低分子量化合物(A)に基づくハードコート組成物は、衝撃抵抗を改善するための1つ又は複数の可撓性化合物(K)と混合することで利益を享受することができる。かかる適切な化合物(K)の例は、例えばBECRYL(登録商標)8465、EBECRYL(登録商標)8402、EBECRYL(登録商標)230、EBECRYL(登録商標)270及び/又はEBECRYL(登録商標)244のような軟化用ウレタン(メタ)アクリレートである。
【0135】
類似の様式で、本発明によるコーティング組成物により提供される化学的抵抗又は硬度は、低分子量に関して高レベルのエチレン性不飽和基を有する1つ又は複数の化合物(K)を添加することによって改善することができる。
【0136】
本発明の組成物は任意選択で、二重硬化(dual cure)を可能にする1つ又は複数の外部熱架橋剤を更に含んでもよい。適切な架橋剤の例は、(ブロック化)ポリイソシアネート、ポリアジリジン、ポリカルボジイミド、ポリエポキシド、ポリアルコキシシラン及び炭酸ジルコニウムアンモニウムのような金属塩である。ポリイソシアネート、特にBAYHYDUR(登録商標)3100のような親水性ポリイソシアネートが特に適している。
【0137】
本発明の組成物は、基材上での配合分散液の塗布を改善するのに適しており、且つ非限定的にレオロジー改質剤、沈降防止剤、湿潤剤、平滑化剤、抗クレーター形成剤、消泡剤、スリップ剤、難燃剤、紫外線保護剤、接着促進剤等を含む触媒、阻害剤、酸化防止剤、殺生物剤、充填剤、ナノ粒子、色素、顔料、不活性又は機能性樹脂及び添加剤のような追加の成分を更に含んでもよい。適切な阻害剤の例としては、ヒドロキノン(HQ)、メチルヒドロキノン(THQ)、tert−ブチルヒドロキノン(TBHQ)、ジ−tert−ブチルヒドロキノン(DTBHQ)、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)等が挙げられるが、これらに限定されない。また、適切な阻害剤としては、トリフェニルホスフィン(TPP)及びトリスノニルフェニルホスファイト(TNPP)、フェノチアジン(PTZ)、トリフェニルアンチモン(TPS)、並びにそれらの任意の混合物のようなホスフィンが挙げられ得る。
【0138】
本発明の組成物は典型的には、水性エマルジョン、より典型的には水中油型エマルジョンである。
【0139】
本発明の組成物は典型的には、25〜95wt%の水、より典型的には35〜50wt%の水を含む。
【0140】
本発明の組成物は典型的には、25wt%未満の有機溶媒(水を含まない)を含む。典型的には、それらは、10wt%未満、より典型的には5wt%未満の有機溶媒及び揮発性有機化合物(VOC)を含む。好ましくは、本発明の組成物は、有機溶媒(水を含まない)及びVOCを含まない。
【0141】
本発明の組成物は、それらが、例えば低い粘度、低い液滴サイズ、優れたコロイド安定性及び低い膜形成温度(硬化前の湿潤コーティング)と組み合わせて、低い揮発性有機含有量(VOC)及び非常に高い固体含有量を有するエマルジョンを提供することが可能であるという点で有利である。
【0142】
本発明の組成物は、着色剤、顔料及び充填剤と組み合わせて使用することができる。
【0143】
本発明の組成物は典型的には、下記の1つ又は複数を特徴とする:
− 5〜75wt%、より詳細には20〜75wt%、更により詳細には30〜75wt%の総固体含有量(又は固形分含有量)。(概して、固形分含有量は、少なくとも50wt%、より典型的には少なくとも60wt%である。典型的には、固形分含有量は、多くても70wt%、より典型的には多くても67wt%、更に典型的には多くても65wt%である。かかる高い固形分含有量を有する安定な放射線硬化性水性組成物を得ることができることは、かなり稀である。)
− 20〜2,000mPa・sの25℃で測定される粘度。(典型的には、粘度は、25℃で、少なくとも300mPa・s、及び、典型的に多くても700mPa・sである。)
− 2〜10、好ましくは4〜8のpH値。
− 100〜1,000nm、好ましくは300〜700nmの平均液滴サイズ。
− 0〜40℃、より好ましくは0〜10℃、最も好ましくは0℃未満の最小膜形成温度。
【0144】
本発明の組成物は典型的には、活性エネルギー線硬化前、典型的には放射線硬化前に、湿潤コーティング又は粘着性コーティングを提供する。
【0145】
好ましくは、本発明の組成物は、上記特徴の全てを組み合わせる。
【0146】
本発明の組成物、及び本発明の乳化剤(B)の使用の利点は、それらが、当該技術分野で記載されるプロトコルに習って、必要とされる添加剤とともに適切に配合されて、且つ専用装置で測定される場合に、5%未満から95%を超えるまでの範囲の60°の角度での非常に広い光沢レベルを伴うコーティングを得ることが可能であることである。高い光沢レベルよりもむしろ低い光沢レベルになりやすいこの非常に広い範囲は、一般的に水系ポリマーに非常に特有である。低い光沢コーティングは通常、例えば適切な粒度分布を有する水中のシリカ分散液(例えば、ACEMATT(登録商標)TS100)である艶消し剤の添加により得られる。
【0147】
本発明の態様は、本発明の組成物を含むか、又は本発明の組成物から調製されるコーティング組成物に関する。本発明のある実施形態では、コーティング組成物は、ハードコード組成物である。本発明の特定の実施形態は、本発明の組成物から得ることができるハードコートに関する。
【0148】
本発明の組成物は特に、放射線硬化後に、水、溶媒又は汚染に対する優れた化学的抵抗、並びに引っかき及び磨耗に対する優れた機械的抵抗を示すハードコードを得ることが可能である。これらのコーティングはまた、例えば木材、プラスチック、ガラス、金属及びコンクリートのような多孔質並びに非多孔質基材上で良好な接着を示す。得られたコーティングは典型的には、無色且つ透明であり、高い光沢を有する。
【0149】
プラスチック用のハードコートは、本発明の枠内で特に想定される。この業界における製品用途は無限であり、それらは典型的には、消費者電子機器(携帯電話、コンピュータ、テレビ、コンパクトディスクのような)、内装用途(ダッシュボード、トリムのような)又は外装用途(ヘッドライト、ミラー、バンパー、ホイールカバーのような)のための自動車用プラスチック、及び工業用プラスチック(フィルム、ラベル、箱、玩具、スポーツ用品、庭園家具のような)に関連付けることができる。本発明の組成物の利点は、それらが、スプレー塗布法により塗布することができるハードコート組成物を生産することが可能であることである。硬化後の本発明のハードコートは典型的に、少なくとも300秒、好ましくは少なくとも320秒、より好ましくは少なくとも340秒、最も好ましくは少なくとも360秒の適切な振り子装置により測定される場合のPersoz硬度を有する。
【0150】
本発明による組成物はまた、重ね刷りワニス、インク及び接着剤における使用に適している。本発明の態様は、コーティング(重ね刷りワニスを含む)、接着剤及びインク(密着印刷及び非密着印刷法(インクジェットのような)の両方に関して)の作製のための本発明の組成物の使用に関する。別の態様は、本発明の組成物からのこれらのコーティング、重ね刷りワニス、接着剤及びインクの作製に関する。特に、本発明の組成物は、更なる顔料を含有することができる。本発明の更に別の態様は、本発明の組成物を含むか、又は本発明の組成物から調製されるインク、接着剤又は重ね刷りワニスに関する。本発明の更に別の態様は、物品若しくは基材をコーティング又は処理するプロセスに関し、前記方法は、本発明の組成物を、物品又は基材の少なくとも1つの表面に塗布する工程、続いて例えば活性なエネルギー線を使用して硬化する工程を含む。典型的には、硬化工程は、水を蒸発させる工程に先行される。典型的には、少なくとも98%の水、好ましくは少なくとも99%、好ましくは全ての水が蒸発される。硬化に使用される活性エネルギー線は、好ましくは紫外線、電子ビーム、X線、放射線又は高周波である。180〜400nmの波長を有する紫外線が、経済的観点から特に好ましい。照射による硬化に続いて、適切な外部架橋剤の存在下での熱硬化を行ってもよい。
【0151】
本発明の特定の実施形態では、物品又は基材は、プラスチックを含み、より詳細には、プラスチックから作製される。
【0152】
本発明の組成物は、典型的には、一般的に光開始剤の存在下で、紫外線照射に硬化される。本発明の組成物はまた、電子ビーム照射によって硬化させることができ、光開始剤を含まない組成物の使用を可能にする。本発明による組成物は、より高いライン速度又はより低い照射エネルギー硬化及び生産性の増加を可能にするより高い反応性を特徴とする極めて迅速な硬化を提供する。低エネルギー紫外線光源もまた使用することができる(LEDランプ)。
【0153】
本発明のある実施形態では、放射線硬化は、少なくとも幾分は、水性エマルジョンにおいてインサイチューで(in situ:そのままで)起きる。例えば、UV光は、本発明の組成物に至って、光誘導性重合を開始させて、水相中でエマルジョンをコロイド重合粒子(CPP)の硬質架橋分散液へ変換させることができる。光誘導性重合とは、可視光、紫外線放射、ガンマ線、X線のような化学線への曝露により重合を開始させることが可能な活性種の生産により開始される重合を意味する。典型的には、水性エマルジョンにおける重合は、172nm〜450nmの範囲の波長を有する光への曝露によって誘導される。この放射線は「UVコーティング:基礎、近年の開発及び新たな応用(UV Coatings: Basics,Recent Developments and New Applications)」、Reinhold Schwalm、Elsevier(2007)、p45〜48、又は「放射線硬化:コーティング及び印刷用インク(Radiation Curing:Coatings and Printings Inks)」、Patrick Glockner、Vincentz Network(2008)、p118〜120で更に詳述されているように、炭素アーク光、低圧、中圧及び高圧水銀蒸気ランプ、プラズマアークランプ、キセノンフラッシュランプ、発光ダイオード、紫外光放出レーザー及びエキシマランプを含む任意のタイプの光源により放出され得る。
【0154】
この変換は、乳化剤(単数又は複数)(B)の存在下で水中での乳化に先立って、エマルジョンに添加されるか、又は化合物(A)と混合される光開始剤の使用によって促進させることができる。本発明の特定の実施形態では、硬化ポリマー粒子に化合物(L)を封入するために、且つ水系分散液内に、又は水蒸発及び膜形成後に得られる(硬化)コーティング中で化合物(L)の徐放性を提供するために、更なる化合物(L)は、乳化剤(B)の存在下で水中での乳化に先立って、化合物(L)を化合物(A)に添加することによって組み込ませることができる。
【0155】
本発明の更に別の態様は、本発明によるプロセスを介してコーティング若しくは処理された物品又は基材に関する。
【0156】
本発明の組成物はまた、硬化後の最終的なコーティング特性を変更させるために、任意の他の水系ポリマー分散液(放射線硬化性又は非放射線硬化性)とブレンドするのに使用することができる。水系ポリマー分散液は、例えばアクリルラテックス、ポリウレタン分散液、ポリエステル分散液、又はこれらの任意の放射線硬化性の変形物であり得る。
【0157】
本発明の全体にわたって、及び実施例の項目において、下記測定方法を使用して、本発明の化合物及び組成物、並びにそれらを用いて得られるコーティングを特性化した。
【0158】
エマルジョンの特性化:固体含有量は、105℃で2時間の乾燥による重力法を使用することによって測定した。分散液の粘度は、50rpmでスピンドルN°1を使用して、Brookfield粘度計により25℃で測定した。水性ポリマー分散液の平均液滴サイズは、Malvern Autosizer粒子分析器を使用してレーザー光散乱によって測定した。分散液の最小膜形成温度(MFFT)は、標準的な方法ISO2115:1996に従って、自動勾配加熱金属板上で測定した。
【0159】
コロイド安定性:コロイド安定性は、室温で1日間及び60℃で10日間のサンプル50gでの多重光散乱(Turbiscan(登録商標)、Formulactionによる)を使用することによって、相分離(高さ全体のパーセントで表される)を観察することによって評価した。65%の固体含有量を有するエマルジョンに関して、最大の相分離に相当するより悪いコロイド安定性が、上部水層の35%の値で到達されることを実感することが重要である。
【0160】
分子量:アクリル化されたオリゴマーの分子量は、組成物の最大分画を表す標的分子に基づいて算出されるか、又はより高分子量の分子の場合にはゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によって測定される。したがって、オリゴマーの小さいポーションをテトラヒドロフラン(THF)中に溶解させて、予備濾過後に液体クロマトグラフに注入する。サンプルの構成成分は典型的には、流速1ml/分で移動相溶媒(THF)により溶出され、温度40℃でポリスチレン−ジビニルベンゼンカラムの組合せによって分離される。既知の分子量及び狭い多分散性を有するポリスチレンの標準物質を使用して、検量線を作成する。
【0161】
HLB値:乳化剤のHLB値(疎水性−親油性バランスを表す)は、分子中のポリエチレンオキシドのパーセントを5で除算したものと定義される。定義により、HLB値は、0及び20の除外値の間に制限される。HLB値は、上記で提示した方法に従って決定された。
【0162】
透明度:コーティングの透明度は、硬質PCシート上で評価される。結果は、可視的に判断して、スケール1〜5で記録する:5=完全に透明、4=非常にわずかにかすんでいる(非常にわずかに曇っている)、3=わずかにかすんでいる、2=かすんでいる、1=不透明。高い値(5)は、コーティングされた物体の最良の外観及び機能性を提供すると予測される。
【0163】
接着性(クロスハッチテープ):接着性(ADH)は、クロスハッチ試験を使用して評価される。およそ1cm長で、且つおよそ1mm分の間隔を空けた5つの切開を、ナイフを使用してコーティングに行った後、5つの同様の切開を横断方向に行った。接着性は、クロスカットしたコーティング上にしっかり押し付けられ、且つ迅速に除去される接着テープ(Scotch(登録商標))を使用して測定した。接着損失に起因したコーティングのクロスカットした表面積に対する損傷をスケール0〜5で表す。5=最良。高い接着性は、コーティングと基材との間に強力な永続的結合を保証するのに必要である。
【0164】
耐汚染性(PC上でのArtline(登録商標)70Nブラックマーカー):ブラックアルコールマーカー(Artline(登録商標)70N)を用いて、汚染を作製し、5分後に周囲温度で、イソプロパノールで飽和させたティッシュを使用して洗浄する。結果は、目視で判断し、スケール1〜5で記録する:5=汚染なし、4=非常に軽い汚染、3=中程度の汚染、2=強力な汚染、1=非常に強力な汚染。高い値(5)は、コーティングされた物体のいかなる劣化に対しても最良の防御を提供すると予測される。
【0165】
耐溶媒性(PC上でのアセトン二重摩擦):耐溶媒性(溶媒抵抗性)は、コーティングされた表面上の後方移動及び前方移動で、アセトンで飽和させたコットンラグを圧迫することによるアセトン二重摩擦(ADR)を用いて評価される。1回の二重摩擦は、コーティングされた表面上の後方ストローク及び前方ストロークに等しい。報告される数字は、コーティングを突き破るのに必要とされる二重摩擦の回数である。高い耐溶媒性(100回を超えるアセトン二重摩擦)は、任意の家庭用又は工業用製品のこぼれ(spillage)に対するコーティング及び基材の良好な保護を保証するのに必要である。
【0166】
耐水性I:コーティングされたプラスチックを、室温で24時間の間、水中に入れる。その後、コーティングの態様を検査して、クロスハッチテープ接着を、浸漬直後、並びに浸漬の1時間後に実施する。接着損失に起因したコーティングのクロスカットした表面積に対する損傷をスケール0〜5で表す。5=最良である。
【0167】
耐水性II:コーティングされたプラスチックを80℃で2時間の間、水中に入れる。その後、コーティングの態様を検査して、クロスハッチテープ接着を、浸漬直後、並びに浸漬の1時間後に実施する。接着損失に起因したコーティングのクロスカットした表面積に対する損傷をスケール0〜5で表す。5=最良である。
【0168】
耐水性III:コーティングされたプラスチックを、90℃及び相対湿度95%での72時間の曝露に相当するVW「TL 226」試験プロトコルに従って、加速風化に曝露させる。その後、コーティングの態様を検査して、クロスハッチテープ接着を、浸漬直後、並びに浸漬の1時間後に実施する。接着損失に起因したコーティングのクロスカットした表面積に対する損傷をスケール0〜5で表す。5=最良である。
【0169】
耐引っかき性(PC上でのスチールウール):試験は、10回の二重摩擦用のスチールウールを用いてコーティングを引っかくことにより実施される。結果は目視で判断して、スケール1〜5で記録する:5=引っかき傷なし、4=非常に軽い引っかき傷、3=中程度の引っかき傷、2=強い引っかき傷、1=非常に強い引っかき傷。高い値(5)は、コーティングされた物体のいかなる劣化に対しても最良の保護を提供すると予測される。
【0170】
ここで、本発明を更に、下記実施例においてより詳細に記載する。実施例は、いかなる場合でも、本発明又はその適用を限定するものと意図されない。
【実施例】
【0171】
(例1):65%固体エマルジョンは、ポリエステルアクリレート中に希釈したCytecによる特許(proprietary)のウレタンアクリレート(不飽和レベル約8meq/g)(化合物A)、非イオン性ジブロック乳化剤(化合物B)及び共溶媒(化合物F)から調製する。Maxemul(登録商標)7101(Croda)は、およそ11.5のHLBを有するポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシド部分で本質的に構成される、特許のジブロックコポリマーである。Dowanol(登録商標)DPM(Dow Chemicals)は、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルの構造を有する共溶媒である。
【0172】
(例2):例1に由来する65%固体エマルジョンは、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート(DPHA)(化合物A)、非イオン性ジブロック乳化剤(化合物B)及び共溶媒(化合物F)から調製する。DPHA(Cytec)は、不飽和レベル(不飽和濃度)約11.4meq/gを有するポリエステルアクリレートである。
【0173】
(例3〜5):様々な量の非イオン性ブロック乳化剤(Maxemul(登録商標)7101)及び共溶媒(Dowanol(登録商標)DPM)を用いた例1に由来する65%固体のエマルジョン。
【0174】
(例6〜11):様々な性質の非イオン性ブロック乳化剤及び共溶媒(Dowanol(登録商標)DPM)を用いた例1に由来する65%固体のエマルジョン。Maxemul(登録商標)7102(Croda)は、ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシド部分で基本的に構成され、且つ特許請求の範囲のHLBを有する、特許のジブロックコポリマーである。Pluronic(登録商標)PE6200、Pluronic(登録商標)PE6400及びPluronic(登録商標)PE6800(BASF)は、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド及びポリエチレンオキシド部分で基本的に構成され、且つそれぞれ、およそ4、およそ8及びおよそ16のHLBを有する、特許の非イオン性トリブロック乳化剤である。およそ4のHLBは、本発明の範囲外である(例7R)。例11Rは、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシド部分で基本的に構成され、且つより低いHLB値を有する、特許の非イオン性トリブロック乳化剤に関する。
【0175】
(例12):乳化剤のアクリル化変形体が使用されることを除いて、例1に基づく65%固体エマルジョン。20mgKOH/g(0.36meq/g)の[OH]を有するMaxemul(登録商標)7101のアクリル化変形体上での作製に関しては、例1Pを参照されたい。
【0176】
(例13):別の共溶媒が使用されることを除いて、例1に基づく65%固体エマルジョン。EBECRYL(登録商標)11は、Cytecからのポリエチレングリコール(600)ジアクリレートで構成される、特許のアクリル化共溶媒である。
【0177】
(例14〜15):様々な性質の中和剤を用いた、例1に基づく65%固体のエマルジョン。Advantex(登録商標)(Taminco)は、N−ブチルエタノールアミンで構成される、特許のアミンである。或いは、水酸化ナトリウム(NaOH)が、エマルジョンを中和するための無機アルカリとして選択された。
【0178】
(比較例16R〜19R):本発明の範囲外である様々な性質の陰イオン性又は非イオン性乳化剤を用いた例1に基づく65%固体のエマルジョン。Maxemul(登録商標)7201(Croda)は、特許の陰イオン性乳化剤である。Aerosol(登録商標)A102(Cytec)は、アルキルスルホスクシナート構造に基づく陰イオン性乳化剤である。Dowfax(登録商標)2A1(Dow Chemicals)は、アルキルジフェニルオキシドジスルホナート塩で構成される、特許の陰イオン性乳化剤である。Tergitol 15S40(Dow Chemicals)は、およそ18のHLBを有する二級アルコールエトキシレート(41モル)で構成される、特許の非イオン性乳化剤である。
【0179】
(例20〜21):乳化プロセス中に組み込まれる様々な性質の添加剤を用いた例1に基づく65%固体のエマルジョン。IRR(登録商標)668(Cytec)は、撥水性、洗浄しやすさ及び抗指紋特性(改善された耐候性と関連付けられる)を含む望ましい表面効果を提供することが可能な、特許のフッ素化ウレタンアクリレートである。Esacure(登録商標)HB(Lamberti)は、紫外光の作用下でコーティングを硬化させることが可能なベンゾフェノン型組成物を有する光開始剤である。
【0180】
(例22):不飽和ポリウレタンオリゴマー、非イオン性ブロック乳化剤(Maxemul(登録商標)7101)及び共溶媒(Dowanol(登録商標)DPM)の65%固体のエマルジョン。
【0181】
(例23):特許の放射線硬化性ポリウレタン分散液であるUcecoat(登録商標)7849(Cytec)を、例1のエマルジョンと混合することによって得られるブレンド。
【0182】
(例24R):塗布に要求されるレベルにまで製品粘度を減少させるために、有機溶媒で更に希釈した、ハードコート組成物に対する参照として役立つ純粋な(100%)形態の例1のウレタンアクリレート。
【0183】
転相プロセスを使用した乳化(中和なし)−例1
60℃の加熱浴と接続された二重壁ステンレス鋼容器に、例1の化合物(A)55.9g(86部)、MAXEMUL(登録商標)7101 5.2g(8部)及びDOWANOL(登録商標)DPM3.9g(6部)を入れる。温度が60℃に到達するまで、直径60mmを有するコールズ(cowless)プロペラを用いて、回転速度100rpmでブレンドを撹拌する。続いて、回転速度2000rpmで混合物を撹拌する一方で、水16.25gを室温で、蠕動ポンプを使用して約5分の間に一定流速で添加して、約80%の固体含有量に到達させる。最大の粘度に相当する転相点を観察して、回転速度2000rpmで、更に20分間、60℃の一定温度で、混合物を更にせん断する。次に、更なる量の水18.75gを室温で、蠕動ポンプを使用して約5分の間に一定流速で混合物に添加する一方で、コールズ回転速度を、200rpmにまで徐々に減少させて、温度を室温に減少させる。最終的なエマルジョンは、約65%の固体含有量を有する。
【0184】
転相プロセスを使用した乳化(中和なし)−例2
60℃の加熱浴と接続された二重壁ステンレス鋼容器に、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート(DPHA)55.9g(86部)、MAXEMUL(登録商標)7101 5.2g(8部)、及びDOWANOL(登録商標)DPM3.9g(6部)を入れる。温度が60℃に到達するまで、直径60mmを有するコールズプロペラを用いて、ブレンドを回転速度100rpmで撹拌する。続いて、回転速度2000rpmで混合物を撹拌する一方で、水16.25gを室温で、蠕動ポンプを使用して5分の間に一定流速で添加して、約80%の固体含有量に到達させる。最大の粘度に相当する転相点を観察して、回転速度2000rpmで、更に20分間、60℃の一定温度で混合物を更にせん断する。次に、更なる量の水18.75gを室温で、蠕動ポンプを使用して、約5分の間に一定流速で混合物に添加する一方で、コールズ回転速度を、200rpmまで徐々に減少させて、温度を室温に減少させる。最終的なエマルジョンは、約65%の固体含有量を有する。
【0185】
転相プロセスを使用した乳化(中和あり)−例14
60℃の加熱浴と接続された二重壁ステンレス鋼容器に、例1の化合物(A)55.9g(86部)、MAXEMUL(登録商標)7101 5.2g(8部)及びDOWANOL(登録商標)DPM3.9g(6部)を入れる。温度が60℃に到達するまで、直径60mmを有するコールズプロペラを用いて、ブレンドを回転速度100rpmで撹拌する。続いて、回転速度2000rpmで撹拌する一方で、水16.25gを室温で、蠕動ポンプを使用して5分の間に一定流速で添加して、約80%の固体含有量に到達させる。最大の粘度に相当する転相点を観察して、回転速度2000rpmで、更に20分間、60℃の一定温度で混合物を更にせん断する。次に、更なる量の水18.75g及びAdvantex(登録商標)0.75gを室温で、蠕動ポンプを使用して約5分の間に一定流速で混合物に添加する一方で、コールズ回転速度を、200rpmまで徐々に減少させて、温度を室温に減少させる。最終的なエマルジョンは、約65%の固体含有量を有する。
【0186】
転相プロセスを使用した乳化(添加剤あり)−例20
60℃の加熱浴と接続された二重壁ステンレス鋼容器に、例1の特許のウレタンアクリレート51.9g(86部)、MAXEMUL(登録商標)7101 5.2g(8部)及びDOWANOL(登録商標)DPM3.9g(6部)を入れる。温度が60℃に到達するまで、直径60mmを有するコールズプロペラを用いて、ブレンドを回転速度100rpmで撹拌する。更なる量の4gのIRR(登録商標)768を均質になるまで添加する。続いて、混合物を回転速度2000rpmで撹拌する一方で、水16.25gを室温で、蠕動ポンプを使用して約5分の間に一定流速で添加して、約80%の固体含有量に到達させる。最大の粘度に相当する転相点を観察して、回転速度2000rpmで、更に20分間、60℃の一定温度で混合物を更にせん断する。次に、更なる量の水18.75gを室温で、蠕動ポンプを使用して約5分の間に一定流速で混合物に添加する一方で、コールズ回転速度を、200rpmまで徐々に減少させて、温度を室温に低下させる。最終的なエマルジョンは、約65%の固体含有量を有する。
【0187】
水分散性ポリウレタンとのブレンドの調製−例23
容器に100gのUcecoat(登録商標)7849を入れ、100rpmの速度で機械的撹拌器を使用して周囲温度で混合する。例1のエマルジョン30gを、約5分間で容器へ徐々に添加する。最終的な水ベースの生成物は、約45%の固体含有量を有する。
【0188】
(例1P):例12で使用されるアクリル化乳化剤の調製
油加熱浴と接続され、且つ撹拌器、冷却器、ディーン−スターク、及び散気装置を装着した二重壁ガラス反応器に、60℃で予め溶融されたMaxemul(登録商標)7101(IOH 18〜22mg KOH/g)300g、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.67g、p−tert−ブチルカテコール0.5g、50%での次亜リン酸0.4g、リン酸0.6g、65%でのp−トルエンスルホン酸1.53g、トルエン31.57g及びアクリル酸15.7gを、速度100rpmで撹拌しながら入れる。2リットル/時間の一定気流を用いて、温度60℃にまで加熱する。連続して、反応媒質を最大128℃に加熱する(150℃でのジャケット温度を用いて)。酸価を反応の6時間後に測定して、アクリル酸のエステル化を制御する。定常値には、典型的に12〜15時間後に到達し、ディーン−スタークの底部にある水2.31gに相当する。続いて、温度を105℃に冷却させて、MeHQを更に0.67g添加する。ストリッピングは、100℃〜105℃の温度で6時間の間に、徐々に完全真空にすることによって開始される。溶媒が残存しない場合には、生成物を最大温度60℃に冷却させて、反応器をたたき出す。
【0189】
代替的プロセス:油加熱浴と接続され、且つ撹拌器、冷却器、ディーン−スターク及び散気装置を装着した二重壁ガラス反応器に、60℃で予め溶融されたMaxemul(登録商標)7101(IOH 20mg KOH/g)250g、及びヒドロキノンモノメチルエーテル0.1285gを、速度100rpmで撹拌しながら入れる。1リットル/時間の一定気流を用いて、それを温度50℃にまで冷却させる。塩化アクリロイル7.27gを連続して滴下して、空気乾燥機を取り付けた添加漏斗を使用することによって、発熱性を制御する。反応中に形成される塩酸を気流により排除して、水を含有する洗浄ビン中に収集する。最終滴下の2時間後に、サンプルを採取して、1mg KOH/g未満であるはずであるヒドロキシル価(mgKOH/g)を検査する。予測値に到達しない場合、標的ヒドロキシル価に到達するまで、50℃でさらに30分間、反応を続ける。次に、生成物を反応器からたたき出して、室温に冷却する。
【0190】
配合物及び塗布の記述
例1〜23は、水ベースのプロトコル(水性エマルジョン)に従って配合された一方で、例24は、以下の表に記載されるような溶媒ベースのプロトコル(溶媒中に希釈)に従って配合された。
【表1】
【0191】
配合された生成物は、およそ10g/mの乾燥膜厚(DFT)を標的とするためにMeyerバーを使用してプラスチック基材上に塗布した。80℃で2分(水ベースのプロトコル)、又は50℃で5分(溶媒ベースのプロトコル)の強制乾燥を行った後、120W/cm Hgランプを使用して、10m/分で2回通過でUV硬化させた。コーティングされたパネルを、室温で24時間調整した後に、試験した。考慮される基材は、ポリカーボネート(PC)、ポリ(エチレンテレフタラート)(PET)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリスチレン(PS)、ポリ(塩化ビニル)(PVC)、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、コロナ処理したポリエチレン(PE)及びコロナ処理したポリプロピレン(PP)であった。プラスチック表面は、使用前にIPAで清浄化した。
【0192】
コーティングしたプラスチックを、態様、透明度、接着性、耐引っかき性、耐溶媒性及び耐水性試験について試験した。
【0193】
水系配合物及び溶媒系配合物の組成は、以下の表2〜4に付与する。試験結果は表5〜7に示す。
【表2】

【表3】

【表4】

【表5】
【0194】
室温で安定ではないエマルジョンは、配合されず、塗布されず、性能に関してプラスチックで試験していない(NA=適用不可能)。
【表6】

【表7】

本発明に包含され得る諸態様は、以下のとおり要約されます。
[態様1]
(I)少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物(A)、及び(II)交互ポリアルキレンオキシドセグメントで本質的に構成される少なくとも1つの乳化剤(B)を含む水性放射線硬化性組成物であって、前記乳化剤が、アルキル基、アリール基、ヒドロキシル基及び/又は共重合性エチレン性不飽和基から選択される1つ又は複数の基を任意選択で有し、前記乳化剤(B)が、少なくとも5のHLB値を有する上記水性放射線硬化組成物。
[態様2]
前記乳化剤(B)が、一般式(I):
R−O−(R−O)−(R−O)−(R−O)−R’
(式中、
R1、R2又はR3はそれぞれ独立して、直鎖状又は分岐状のC2〜C12アルキルであり、
R1≠R2であり、R3≠R2であり、
X=6〜100であり、
Y=6〜100であり、
Z=0〜100であり、
R及びR’はそれぞれ独立して、以下のもの:直鎖状又は分岐状のC1〜C18アルキル、直鎖状又は分岐状のC6〜C24アリール、(メタ)アクリロイル又は−Hから選択される。)
により表される、上記態様1に記載の組成物。
[態様3]
乳化剤(B)が、交互ポリエチレンオキシドセグメント及びポリプロピレンオキシドセグメントで本質的に構成され、前記乳化剤が、アルキル基、アリール基、アリル基、(メタ)アクリロイル基及び/又はヒドロキシル基から選択される1つ又は複数の基を任意選択で有し、前記乳化剤(B)が、少なくとも6のHLB値を有する、上記態様1又は2に記載の組成物。
[態様4]
化合物(単数又は複数)(A)が、少なくとも4meq/gのエチレン性不飽和基の量を特徴とし、さらに、典型的には1分子当たり少なくとも3つのエチレン性不飽和基の官能性を特徴とする、上記態様1から3までのいずれか一項に記載の組成物。
[態様5]
化合物(単数又は複数)(A)が、ウレタン(メタ)アクリレート(単数又は複数)及び/又はポリエステル(メタ)アクリレート(単数又は複数)から選択される、上記態様1から4までのいずれか一項に記載の組成物。
[態様6]
ウレタン(メタ)アクリレート(単数又は複数)が、400〜20,000ダルトンの分子量を有し、ポリエステル(メタ)アクリレート(単数又は複数)が、200〜20,000ダルトンの分子量を有する、上記態様5に記載の組成物。
[態様7]
乳化剤(単数又は複数)(B)が、ジブロック及び/又はトリブロックコポリマーから選択される、上記態様1から6までのいずれか一項に記載の組成物。
[態様8]
乳化剤(B)(単数又は複数)が、(i)6〜100単位を含む重合度を有するポリエチレンオキシド、及び(ii)6〜100単位を含む重合度を有するポリプロピレンオキシドの交互配列を含むジブロックコポリマーであり、前記乳化剤(単数又は複数)が、末端アルキル官能基、ヒドロキシル官能基及び/又は(メタ)アクリロイル官能基から選択される1つ又は複数の基を任意選択で有する、上記態様7に記載の組成物。
[態様9]
乳化剤(単数又は複数)(B)が、(i)6〜100単位を含む重合度を有するポリエチレンオキシド、(ii)6〜100単位を含む重合度を有するポリプロピレンオキシド、及び(iii)6〜100単位を含む重合度を有するポリエチレンオキシドの交互配列を含むトリブロックコポリマーであり、前記乳化剤(単数又は複数)が、末端アルキル官能基、ヒドロキシル官能基及び/又は(メタ)アクリロイル官能基から選択される1つ又は複数の基を任意選択で有する、上記態様7に記載の組成物。
[態様10]
前記乳化剤(単数又は複数)(B)が、少なくとも1つの末端(メタ)アクリロイル基、及び任意選択で少なくとも1つの末端アルキル基を有する、上記態様1から9までのいずれか一項に記載の組成物。
[態様11]
前記乳化剤(単数又は複数)(B)が、10〜17のHLBを有する、上記態様1から10までのいずれか一項に記載の組成物。
[態様12]
前記HLB値が、乳化剤のブレンドのHLB値の加重平均である、上記態様1から11までのいずれか一項に記載の組成物。
[態様13]
化合物(A)及び(B)の総重量に対して、50〜99.9wt%の化合物(A)及び0.1〜50wt%の化合物(B)を含む、上記態様1から12までのいずれか一項に記載の組成物。
[態様14]
760mmHgで100℃〜300℃の沸点を有する少なくとも1つの共溶媒、並びに/或いは有機塩基及び/又は無機塩基から選択される少なくとも1つの中和剤を更に含む、上記態様1から13までのいずれか一項に記載の組成物。
[態様15]
5〜75wt%の固形分含有量を有する、上記態様1から14までのいずれか一項に記載の組成物。
[態様16]
(I)上記態様1から15までのいずれか一項に記載される少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物(A)、及び(II)交互ポリアルキレンオキシドセグメントを含む少なくとも1つの乳化剤(B)を含む水性放射線硬化性組成物であって、前記乳化剤(B)が、エチレン性不飽和基を有しないことを特徴とし、前記乳化剤(B)が、少なくとも5のHLBを有することを特徴とする上記組成物。
[態様17]
前記乳化剤(B)が、アルキル基、アリール基及び/又はヒドロキシル基から選択される1つ又は複数の基を有する、上記態様16に記載の組成物。
[態様18]
交互ポリアルキレンオキシドセグメントで本質的に構成されるエチレン性不飽和非イオン性乳化剤(B2)であって、少なくとも1つの共重合性エチレン性不飽和基、並びに任意選択でアルキル基及び/又はヒドロキシル基から選択される少なくとも1つの基を有する上記乳化剤。
[態様19]
ポリエチレンオキシドセグメント及びポリプロピレンオキシドセグメントを含む上記態様18に記載の乳化剤であって、少なくとも1つの共重合性エチレン性不飽和基、並びに任意選択でアルキル基及び/又はヒドロキシル基から選択される少なくとも1つの基を有し、少なくとも5、好ましくは少なくとも6のHLB値を有する上記乳化剤。
[態様20]
(i)6〜100単位を含む重合度を有するポリエチレンオキシド、及び(ii)6〜100単位を含む重合度を有するポリプロピレンオキシドの交互配列を含むジブロックコポリマー、又は(i)6〜100単位を含む重合度を有するポリエチレンオキシド、(ii)6〜100単位を含む重合度を有するポリプロピレンオキシド、及び(iii)6〜100単位を含む重合度を有するポリエチレンオキシドの交互配列を含むトリブロックコポリマーである上記態様18に記載の乳化剤であって、前記ジブロック又はトリブロックコポリマーが、少なくとも1つの末端(メタ)アクリロイル基、並びに任意選択で少なくとも1つの末端ヒドロキシル基及び/又はアルキル基を有する上記乳化剤。
[態様21]
上記態様1から17までのいずれか一項に記載の少なくとも1つの組成物を含むコーティング組成物、インク、重ね刷りワニス又は接着剤。
[態様22]
物品又は基材をコーティングする方法であって、上記態様21に記載の組成物を、物品又は基材の少なくとも1つの表面に塗布する工程、続いて組成物を硬化させる工程を含み、硬化工程が典型的には、水を蒸発させる工程により先行される上記方法。
図1