(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
吸気管内には、吸気量を制御するためにスロットルバルブが設けられている。ここで、スロットルバルブが急激に開いた際に、異音が発生する問題がある。この異音が発生するメカニズムについて、
図10を参照して、説明する。
図10は吸気管内においてスロットルバルブの開き始めの空気の流れを説明する図である。図示のように、吸気管200内にはスロットルバルブ300が設けられている。一般的に、スロットルバルブ300は水平方向に伸びるように設置された回転軸を中心に回転するように構成されている。そのため、スロットルバルブ300の開き始めの状態においては、吸気管200内の上部側の空気の流れX1と、下部側の空気の流れX2が生じる。この上部側の空気の流れX1と下部側の空気の流れX2が合流する際に異音が発生すると考えられている。
【0003】
そこで、従来、上記のような異音が発生することを抑制するために、整流ネットや整流板を設けることで、空気の流れを整流させる技術が知られている(特許文献1参照)。また、上部側の空気の流れと下部側の空気の流れが合流しないように、隔壁を設ける技術も知られている(特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、整流板や隔壁を設ける場合には、空気が流れる際に抵抗となる。このような抵抗は、吸気の効率を低下させる原因となってしまう。これに対して、整流ネットの場合には、空気が流れる際の抵抗はそれほど大きくならない。しかし、従来例に係る整流ネットの場合には、整流機能はある程度発揮されるものの、上部側の空気の流れX1と下部側の空気の流れX2との合流を十分に抑制することが難しかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、吸気管内での異音を抑制可能とする吸気音低減装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0008】
すなわち、本発明の吸気音低減装置は、
吸気管内においてスロットルバルブの下流側に配置され、空気の流れを整流させる整流ネットを備える吸気音低減装置において、
前記整流ネットは、吸気管内の流路の中央付近の網目が細かく、中央付近から遠ざかるにつれて網目が粗く構成されることを特徴とする。
【0009】
スロットルバルブの開き始めにおいては、スロットルバルブの回転軸から最も離れた2箇所からの空気の流れが主流となる。すなわち、背景技術の中でも説明したように、回転軸が水平方向に伸びるように設けられた場合には、上部側の空気の流れと下部側の空気の流れが主流となる。そして、本発明においては、スロットルバルブの下流側に配置された整流ネットの網目が、吸気管内の流路の中央付近が細かく、中央付近から遠ざかるにつれて粗くなるように構成されている。そのため、空気は網目の粗いところに流れやすいため、吸気管内のうち中央付近から遠い領域ほど多く流れるように整流される。従って、2箇所からの空気の流れの合流を抑制することができる。また、網目によって、2箇所からの空気の流れの合流を抑制することができる。そのため、隔壁によって2箇所からの空気の流れの合流を抑制する場合に比べて、空気が流れる際の抵抗が高くなってしまうことを抑制できる。
【0010】
また、前記整流ネットは、吸気管内の流路の中央付近から外側に向かって放射状に伸びる複数の放射状部分と、前記中央付近から同心円状に設けられる複数の同心円状部分とによって、網目が形成され
ている。なお、本発明における「同心円状部分」は、完全な円形状の場合だけではなく、半円などの円弧状の場合も含む。
【0011】
これにより、吸気管内の流路の中央付近の網目が細かく、中央付近から遠ざかるにつれて網目が粗く構成される整流ネットを実現できる。また、整流ネットを弾性体により構成した場合には、空気の流れによって整流ネットは弾性的に変形する。しかし、上記のように構成される整流ネットを、空気の流れる方向に投影した形状は、変形前も変形後も変化が少ない。そのため、安定的に整流機能が発揮される。また、整流ネットを弾性体により構成したとしても、空気の流れにより弾性変形した際には、放射状部分に対して均一的な力が働き、整流ネット全体に対して均一的な力が働く。そのため、耐久性に優れる。
【0012】
更に、吸気管を構成する2つの管のうち一方の管の端面と他方の管の端面との間の隙間を封止する環状のガスケット部を備え、
前記整流ネットは、前記ガスケット部に対して、該ガスケット部の内側に設けられてい
る。
【0013】
これにより、吸気音を低減する機能とガスケットとしての機能を兼ね備えさせることができる。
【0014】
また、前記整流ネットの表面が前記ガスケット部と一体に設けられた弾性体製の被覆部によって覆われているとよい。
【0015】
これにより、整流ネットとガスケット部を別部材で構成しても、整流ネットとガスケット部の結合力を十分に高くすることができる。従って、整流ネットがガスケット部から離脱してしまうことを抑制できる。
【0016】
前記整流ネットをインサート部品として、インサート成形によって前記ガスケット部及び前記被覆部が成形されるとよい。
【0017】
これにより、整流ネットの表面を、ガスケット部と一体に設けられた弾性体製の被覆部により容易に覆うことができる。
【0018】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、吸気管内での異音を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0022】
(実施例1)
図1〜
図3を参照して、本発明の実施例1に係る吸気音低減装置について説明する。
【0023】
<吸気音低減装置>
図1及び
図2を参照して、本実施例に係る吸気音低減装置の構成について説明する。
図1は本発明の実施例1に係る吸気音低減装置の平面図である。
図2は本発明の実施例1に係る吸気音低減装置の使用時の様子を示す模式的断面図である。なお、
図2中の吸気音低減装置は、
図1におけるAA断面図である。
【0024】
本実施例に係る吸気音低減装置100は、吸気管内においてスロットルバルブ300の下流側に配置される。また、本実施例においては、吸気管を構成するインテークマニホールド210とスロットルボディ220との接続部付近に、吸気音低減装置100が配置される。なお、本実施例においては、スロットルバルブ300の回転軸は水平方向に伸びるように設置される。また、このスロットルバルブ300は、
図2中矢印方向に回転することで、弁を開くように構成されている。以上の構成により、スロットルバルブ300の開き始めの状態においては、吸気管内の上部側の空気の流れと、下部側の空気の流れが生じる。この点については、背景技術の中で、
図10を参照して説明した通りである。
【0025】
本実施例に係る吸気音低減装置100は、整流ネット110と、ガスケット部120とから構成される。また、吸気音低減装置100は、各種ゴム材や樹脂エラストマーなどの弾性体により構成されている。そして、整流ネット110とガスケット部120とは一体となっている。ただし、整流ネット110に関しては、金属などの剛体で構成しても良い。この場合には、整流ネット110とガスケット部120とは別部材で構成される。しかしながら、例えば、整流ネット110をインサート部品として、インサート成形を行うことによって、整流ネット110とガスケット部120を一体的にさせることが可能となる。
【0026】
本実施例においては、吸気管の管は円筒形状である。そのため、ガスケット部120は円環形状となっている。このガスケット部120は、インテークマニホールド210の端面の内周に沿って形成された環状の切り欠き211に配置される。これにより、ガスケット部120は、インテークマニホールド210の端面と、スロットルボディ220の端面との間に挟み込まれることで、これらの端面間の隙間を封止する機能を発揮する。
【0027】
整流ネット110は、ガスケット部120に対して、ガスケット部120の内側に設けられている。そして、整流ネット110は、平面形状が円形であるガスケット部120の円の中心から外側に向かって放射状に伸びる複数の放射状部分111a,111b,111c,111d,111e,111f,111gと、上記円の中心から同心円状に設けられる複数の同心円状部分112a,112b,112c,112d,112eとから構成される。これら複数の放射状部分111a,111b,111c,111d,111e,111f,111gと、複数の同心円状部分112a,112b,112c,112d,112eによって、網目が形成される。なお、上記ガスケット部120の円の中心は、吸気音低減装置100が吸気管内に配置された場合に、吸気管内の流路の中央付近に位置する。つまり、整流ネット110は、吸気管内の流路の中央付近から外側に向かって放射状に伸びる複数の放射状部分111a,111b,111c,111d,111e,111f,111gと、吸気管内の流路の中央付近から同心円状に設けられる複数の同心円状部分112a,112b,112c,112d,112eとから構成されると言うこともできる。
【0028】
上記のように構成された整流ネット110においては、ガスケット部120の円の中心付近の網目が細かく、中心から遠ざかるにつれて網目が粗く構成される。つまり、吸気音低減装置100が吸気管内に配置された状態においては、整流ネット110の網目は、吸気管内の流路の中央付近が細かく、中央付近から遠ざかるにつれて粗く構成される。なお、本実施例においては、複数の放射状部分111a,111b,111c,111d,111e,111f,111gは、隣り合う放射状部分の間の角度がほぼ等しく設定されている。また、複数の同心円状部分112a,112b,112c,112d,112eは、隣り合う同心円状部分の径方向の間隔がほぼ等しく設定されている。これにより、整流ネット110の網目は、ガスケット部120の円の中心付近が細かく、中心から遠ざかるにつれて粗くなっている。
【0029】
また、本実施例においては、
図2に示すように、スロットルバルブ300と整流ネット110との間隔が、スロットルバルブ300のバルブ本体部分の長さよりも短い。そのため、スロットルバルブ300が整流ネット110に突き当たらないように、整流ネット110は、平面形状が円形であるガスケット部120の内側のほぼ半分の領域を占めるように設けられている。なお、残りのほぼ半円形の領域は空洞となっている。そして、吸気音低減装置100が吸気管内に配置された状態においては、整流ネット110が設けられている半円形の領域が上部に配置され、空洞状の半円形の領域が下部に配置される。これにより、スロットルバルブ300が完全に開いた状態においても、スロットルバルブ300が整流ネット110に突き当たることはない(
図2参照)。
【0030】
<本実施例に係る吸気音低減装置の優れた点>
スロットルバルブ300の開き始めにおいては、スロットルバルブ300の回転軸から最も離れた2箇所からの空気流れが主流となる。すなわち、本実施例においては、上部側の空気の流れと下部側の空気の流れが主流となる。そして、本実施例に係る吸気音低減装置100においては、スロットルバルブ300の下流側に配置された整流ネット110の網目が、吸気管内の流路の中央付近が細かく、中央付近から遠ざかるにつれて粗くなるように構成されている。これにより、空気は網目の粗いところに流れやすいため、吸気管内のうち中央付近から遠い領域ほど多く流れるように整流される。ただし、本実施例においては、吸気管内のうち、上半分の領域に整流ネット110が配置されているので、上部側の空気の流れについて、上記のように空気の流れが整流される。つまり、上部側の空気の流れについて、下方に向かう流れを少なくすることができる。
【0031】
従って、上部側の空気の流れと下部側の空気の流れの合流を抑制することができる。これにより、異音を抑制させることができる。また、網目によって、これらの空気の流れの合流を抑制することができるので、隔壁によって2箇所からの空気の流れの合流を抑制する場合に比べて、空気が流れる際の抵抗が高くなってしまうことを抑制できる。
【0032】
また、本実施例に係る整流ネット110は、吸気管内の流路の中央付近から外側に向かって放射状に伸びる複数の放射状部分111a,111b,111c,111d,111e,111f,111gと、中央付近から同心円状に設けられる複数の同心円状部分112a,112b,112c,112d,112eとによって、網目が形成される。
【0033】
これにより、吸気管内の流路の中央付近の網目が細かく、中央付近から遠ざかるにつれて網目が粗く構成される整流ネット110を実現できる。また、本実施例においては、整流ネット110を弾性体により構成している。そのため、空気の流れによって整流ネット110は弾性的に変形する。しかし、上記のように、複数の放射状部分111a,111b,111c,111d,111e,111f,111gと、複数の同心円状部分112a,112b,112c,112d,112eとにより網目が形成されるため、整流ネット110を空気の流れる方向に投影した形状は、変形前も変形後も変化が少ない。従って、安定的に整流機能が発揮される。また、弾性的に整流ネット110が変形した場合には、放射状部分111a,111b,111c,111d,111e,111f,111gに対して均一的な力が働き、整流ネット110全体に対して均一的な力が働くため、耐久性に優れる。
【0034】
また、本実施例に係る吸気音低減装置100は、ガスケット部120を備えているので、吸気音を低減する機能とガスケットとしての機能を兼ね備えている。
【0035】
ここで、各種サンプルについて、異音の音圧を測定した実験結果について説明する。
図3は各種サンプルにおける異音の音圧比を示すグラフである。この実験においては、内径が66mmの吸気管を用い、スロットルバルブ300の開き始めにおける音圧を測定した。また、スロットルバルブ300と吸気音低減装置との距離L(
図2参照)を20mmとした。
【0036】
また、
図3では、整流ネットを備えておらず、内径が66mmのガスケット部120のみで構成されるサンプルS11を用いた場合の音圧を1として、音圧の比をグラフで示している。サンプルS12,S13,S14は、いずれも内径が66mmのガスケット部120の内側の上半分の半円領域に整流ネットが設けられている。
【0037】
そして、サンプルS12の場合には、整流ネットの網目が、従来のように矩形で構成されており、各網目の大きさは等しくなるように構成されている。より具体的には、線幅が0.5mmの線状部分を縦横に複数設け、各網目の縦横の長さがいずれも6mmとなるように構成されている。また、各線状部分は金属で構成されている。
【0038】
サンプルS13,S14は上述した実施例に係る吸気音低減装置100を用いた。ただし、サンプルS13は整流ネット110を金属により構成し、サンプルS14は整流ネット110をゴムにより構成した。網目の形状(放射状部分及び同心円状部分の形状)については、
図1に示す通りである。なお、放射状部分及び同心円状部分の線幅は0.5mmである。
【0039】
図3に示すように、本実施例に係る吸気音低減装置100の構成を採用し、かつ整流ネット110を金属により構成する場合が最も異音を抑制できることが確認できた。また、本実施例に係る吸気音低減装置100の構成を採用することにより、整流ネット110をゴムで構成した場合でも、整流ネットが金属で構成された従来品よりも異音を抑制できることを確認できた。
【0040】
(実施例2)
図4及び
図5には、本発明の実施例2が示されている。本実施例においては、吸気音低減装置を構成する整流ネットとガスケット部との間に、筒状部分を設ける場合の構成について示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0041】
上述した実験で用いた吸気管及びサンプルS13を用いて、スロットルバルブ300と吸気音低減装置100との距離L(
図2参照)を変えて、スロットルバルブ300の開き始めにおける音圧を測定した実験結果について説明する。
図4はスロットルバルブ300と吸気音低減装置100との距離Lを変えた際の異音の音圧比を示すグラフである。
【0042】
グラフ中、S21は距離Lが20mmの場合、S22は距離Lが26mmの場合、S23は距離Lが29mmの場合、S24は距離Lが33mmの場合、S25は距離Lが36mmの場合をそれぞれ示している。また、距離Lが33mmの場合の音圧を1として、音圧の比をグラフで示している。この実験結果から、スロットルバルブ300と吸気音低減装置100との距離Lによって、異音の抑制効果が異なることが分かった。
【0043】
なお、最も異音を抑制することが可能な距離Lが、諸条件によって変わることは言うまでもない。ここで、上記実施例1に係る吸気音低減装置100を用いた場合、スロットルバルブ300と吸気音低減装置100との距離Lは、スロットルボディ220に設けられたスロットルバルブ300の配置位置により決まる。この配置位置を諸条件に応じて変更するには、コストが大幅に高くなってしまう。そこで、本実施例においては、吸気音低減装置100によって、上記距離Lを変更可能とする構成を説明する。
【0044】
図5は本発明の実施例2に係る吸気音低減装置の使用時の様子を示す模式的断面図である。本実施例に係る吸気音低減装置100は、整流ネット110と、ガスケット部120と、筒状部130とから構成される。また、吸気音低減装置100は、各種ゴム材や樹脂エラストマーなどの弾性体により構成されており、整流ネット110とガスケット部120と筒状部130は一体となっている。整流ネット110とガスケット部120の構成については、実施例1の場合と同一の構成のため、その説明は省略する。
【0045】
実施例1で説明したように、ガスケット部120は円環形状であるので、ガスケット部120と整流ネット110とを繋いでいる筒状部130は、円筒形状である。この筒状部130の軸線方向の長さを適宜調整することによって、スロットルバルブ300と吸気音低減装置100との距離Lを調整することが可能である。
【0046】
なお、本実施例では、整流ネット110とガスケット部120と筒状部130が一体となる場合を示した。しかしながら、実施例1でも説明したように、整流ネット110を金属などの剛体で構成してもよい。この場合には、整流ネット110とガスケット部120とは別部材で構成される。この場合、筒状部130については、整流ネット110に一体に設けても良いし、ガスケット部120に一体に設けても良い。前者の場合には、筒状部130が一体に設けられた整流ネット110をインサート部品として、インサート成形を行うことによって、整流ネット110とガスケット部120を一体的にさせることが可能となる。また、後者の場合には、整流ネット110をインサート部品として、インサート成形を行うことによって、整流ネット110とガスケット部120とを、ガスケット部120に一体に設けられた筒状部130を介して一体的にさせることが可能となる。
【0047】
(実施例3)
図6には、本発明の実施例3が示されている。上記実施例1では、整流ネットがガスケット部の内側の略半円形の領域に設けられる場合を示した。本実施例においては、整流ネットがガスケット部の内側の全領域に亘って設けられる場合の構成を示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0048】
本実施例に係る吸気音低減装置100においても、上記実施例1の場合と同様に、整流ネット110と、ガスケット部120とから構成される。また、吸気音低減装置100は、各種ゴム材や樹脂エラストマーなどの弾性体により構成されており、整流ネット110とガスケット部120とは一体となっている。ただし、整流ネット110に関しては、金属などの剛体で構成しても良いことは、実施例1で説明した通りである。
【0049】
そして、本実施例における整流ネット110は、上記実施例1の場合と同様に、平面形状が円形であるガスケット部120の円の中心から外側に向かって放射状に伸びる複数の放射状部分111と、上記円の中心から同心円状に設けられる複数の同心円状部分112とから構成される。上記実施例1の場合、整流ネット110は、平面形状が円形であるガスケット部120の内側のほぼ半分の領域を占めるように設けられているのに対して、本実施例の場合には、ガスケット部120の内側の全領域に亘って整流ネット110が設けられている。その他の構成については、上記実施例1で示した構成と同一である。
【0050】
本実施例においても、上記実施例1の場合と同様の効果を得ることができる。そして、本実施例の場合には、ガスケット部120の内側の全領域に亘って整流ネット110が設けられているので、下部側の空気の流れについても、上部側の空気の流れと同様に、空気の流れを整流させることができる。従って、より一層、異音を抑制させることができる。なお、本実施例に係る整流ネット110の構成は、上記実施例2に示す吸気音低減装置100にも適用可能である。
【0051】
(実施例4)
図7〜
図9には、本発明の実施例4が示されている。上記実施例1の中で説明したように、整流ネットとガスケット部を別部材で構成することもできる。本実施例においては、整流ネットとガスケット部を別部材で構成する場合の好適な例を説明する。基本的な構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。なお、本実施例においては、上記実施例1で示す構成において、整流ネットとガスケット部を別部材に構成する場合を例にして説明する。ただし、本実施例は、上記実施例2,3にも適用可能である。
【0052】
図7は本発明の実施例4に係る整流ネットの平面図である。
図8は本発明の実施例4に係る吸気音低減装置の平面図の一部であり、吸気音低減装置の平面図の一部を拡大した図である。
図9は本発明の実施例4に係る吸気音低減装置の模式的断面図である。なお、
図9は
図8中のBB断面図である。
【0053】
本実施例に係る吸気音低減装置100も、上記各実施例の場合と同様に、整流ネット110Xと、ガスケット部120Xとから構成される。そして、本実施例の場合には、整流ネット110Xとガスケット部120Xが別部材により構成されている。整流ネット110Xは、金属や硬質の樹脂材により構成される。ガスケット部120Xについては、上記各実施例の場合と同様に、各種ゴム材や樹脂エラストマーなどの弾性体により構成されている。
【0054】
また、本実施例に係る吸気音低減装置100においては、整流ネット110Xの表面がガスケット部120Xと一体に設けられた弾性体製の被覆部140によって覆われている。なお、本実施例では、整流ネット110Xの全体が被覆部140によって覆われている。
【0055】
以上のように、本実施例に係る吸気音低減装置100によれば、整流ネット110Xの表面がガスケット部120Xと一体に設けられた弾性体製の被覆部140によって覆われている。従って、整流ネット110Xとガスケット部120Xを別部材で構成しても、整流ネット110Xとガスケット部120Xの結合力を十分に高くすることができる。従って、整流ネット110Xがガスケット部120Xから離脱してしまうことを抑制できる。
【0056】
また、本実施例に係る吸気音低減装置100は、整流ネット110Xをインサート部品として、インサート成形を行うことにより得られる。すなわち、整流ネット110Xをインサート部品として、インサート成形によってガスケット部120X及び被覆部140が成形される。これにより、整流ネット110Xの表面を、ガスケット部120Xと一体に設けられた弾性体製の被覆部140により容易に覆うことができる。ただし、その他の製法を採用することもできる。
【0057】
(その他)
上記各実施例においては、吸気管の管が円筒形状で構成される場合を示した。これに伴い、吸気音低減装置100におけるガスケット部120は円環形状で構成される場合を示した。しかしながら、本発明に係る吸気音低減装置は、吸気管の管が円筒形状でない場合にも適用できる。例えば、吸気管の管が、空気の流れ方向に対して垂直な断面で見た場合に矩形の場合には、ガスケット部120も、平面形状が矩形となるように構成すればよい。なお、この場合にも、ガスケット部120の内側に設けられる整流ネット110については、上記実施例1や実施例3で示す構成と同様のものを用いることができる。ただし、この場合には、複数の同心円状部分について、外側のいくつかの同心円状部分は、半円形や円形にはならず、円弧状になることは言うまでもない。
【0058】
上記各実施例では、整流ネット110において、吸気管内の流路の中央付近から外側に向かって放射状に伸びる複数の放射状部分と、中央付近から同心円状に設けられる複数の同心円状部分とによって、網目が形成される場合の構成を示した。これは、整流ネット110を弾性体で構成する場合に、特に効果的である。ただし、整流ネットが、吸気管内の流路の中央付近の網目が細かく、中央付近から遠ざかるにつれて網目が粗く構成されさえすれば、2箇所の空気の流れの合流を抑制することができる。従って、使用条件等によっては、上述したような放射状部分と同心円状部分とにより網目を形成するのではなく、例えば、縦横に伸びる部分によって網目を形成してもよい。この場合には、縦横の間隔を均一にするのではなく、吸気管内の流路の中央付近ほど間隔を狭くすることで、吸気管内の流路の中央付近の網目が細かく、中央付近から遠ざかるにつれて網目が粗い整流ネットを得ることができる。