(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記偏心駆動部材の前記円環経路に沿った移動による、前記第1の内側ポンプ室及び前記第1の外側ポンプ室からの吐出流量の変化が逆相で、前記第2の内側ポンプ室及び前記第2の外側ポンプ室からの吐出流量の変化が逆相である
ことを特徴とする請求項1記載の容積型ポンプ。
前記偏心駆動部材の前記円環経路に沿った移動による、前記第1の内側ポンプ室及び前記第2の内側ポンプ室からの吐出流量の変化が逆相で、前記第1の外側ポンプ室及び前記第2の外側ポンプ室からの吐出流量の変化が逆相である
ことを特徴とする請求項2記載の容積型ポンプ。
前記偏心駆動部材の前記円環経路に沿った移動による、前記第1の内側ポンプ室及び前記第2の内側ポンプ室からの吐出流量の変化が同相で、前記第1の外側ポンプ室及び前記第2の外側ポンプ室からの吐出流量の変化が同相である
ことを特徴とする請求項2記載の容積型ポンプ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る容積型ポンプについて詳細に説明する。
【0019】
[第一の実施形態]
[全体構成]
図1は本発明の第一の実施形態に係る容積型ポンプの一部を切欠して示す正面図であり、
図2は、同容積型ポンプの側面から見た断面図である。また、
図3は、同容積型ポンプの分解斜視図である。
【0020】
本実施形態に係る容積型ポンプは、図示しないモータ等の回転駆動源からの回転駆動力を伝達する回転軸11を中心とした回転駆動力伝達部1と、回転駆動力伝達部1の回転軸11に偏心状態で装着されたディスク状の偏心駆動部材2と、この偏心駆動部材2の回転軸方向の前方側から対向し、第1の流路から流体を供給され、偏心駆動部材2と共に第1のポンプ室6を形成する第1のポンプヘッド3と、偏心駆動部材2の回転軸方向の後方側から対向し、第2の流路から流体を供給され、偏心駆動部材2と共に第2のポンプ室7を形成する第2のポンプヘッド4と、第1のポンプヘッド3及び第2のポンプヘッド4に挟まれて、内部に偏心駆動部材2を収容する第3のポンプヘッド5とを備える。これら回転駆動力伝達部1、第1のポンプヘッド3、第2のポンプヘッド4及び第3のポンプヘッド5は、
図3に示すボルト貫通孔319,329,519,419を貫通するボルト61及びトンボねじ62によって固定される。尚、第1のポンプヘッド3の前面は、前面カバー34によって覆われている。
【0021】
回転駆動力伝達部1は、回転軸11と、この回転軸11を回転可能に支持する軸受部17とを有する。軸受部17は、ラジアル方向及びスラスト方向(アキシャル方向)の荷重を受ける面対称配置された一対の円錐ころ軸受171,172から構成されている。これらの円錐ころ軸受171,172は、筒状の軸受ケーシング122の内部に収容され、両端に配置されたシール部材173,174によって内部がシールされている。軸受ケーシング122は、その前端がフランジ121に固定され、フランジ121を介して第2のポンプヘッド4に固定されている。また、フランジ121には、この容積ポンプを床面や壁面等の固定部に取り付けるための取付部13が固定されている。
【0022】
回転軸11にはメカニカルシール14が装着されている。また、回転軸11の第1〜第3のポンプヘッド3〜5の内側に配置された部分は、回転軸11に対して偏心した偏心軸15となっている。偏心駆動部材2は、この偏心軸15に軸受16を介して回転可能に装着されている。これにより、偏心駆動部材2は、回転軸11の回転に伴い、回転軸11を中心とする円環経路に沿って移動する。
【0023】
図4は、偏心駆動部材2の側面図である。また、
図5は、この偏心駆動部材2を第3のポンプヘッド5に収容した状態の正面図、
図6は同じく背面図である。偏心駆動部材2は、同軸配置された第1のディスク部材22及び第2のディスク部材23と、これらを連結する連結部21とを備えて構成されている。第1のディスク部材22及び第2のディスク部材23には、中心に軸受16(
図2)を介して偏心軸15に装着するための挿通孔211が形成された軸受筒体221,231が形成されている。第1及び第2のディスク部材22,23の軸方向外側の面は、それぞれ後述する第1のシリンダ312及び第2のシリンダ412と共に第1のポンプ室6及び第2のポンプ室7を形成するポンプ室形成面223,224,233,234として機能する。また、第1及び第2のディスク部材22,23の軸方向外側の面には、それぞれ互いの開放端の位置を180°ずらして配置されたC字状又は円弧状の第1の隔壁222及び第2の隔壁232がそれぞれ軸方向外側に向けて突設されている。これら第1の隔壁222及び第2の隔壁232は、第1及び第2のディスク部材22,23の各外側の面における、軸受筒体221,231とディスク部材22,23の外周縁との間の径方向の中間位置に、挿通孔211と同軸に形成されている。また、第1のディスク部材22及び第2のディスク部材23には、それぞれ第1の隔壁222及び第2の隔壁232の開放端に近い、隔壁222,232を挟んだ内外位置に、ディスク部材22,23を貫通する内側ポンプ室吐出口225,235及び外側ポンプ室吐出口226,236がそれぞれ形成されている。なお、第1のディスク部材22に形成された吐出口225,226と、第2のディスク部材23に形成された吐出口235,236も、互いに180°ずれた位置に形成されている。
【0024】
図7は、第1のポンプヘッド3の背面図である。第1のポンプヘッド3は、第1のフレーム31と、第2のフレーム32とを備えて構成される(
図2及び
図3参照)。第1のフレーム31には、中心部に軸受筒体221(
図5)を収容する第1の軸受筒体収容口311が、その外側には第1の隔壁222(
図5)を収容し、C字状又は円弧状の第1のポンプ室6を形成する第1のシリンダ312が形成されている。また、その更に外周にはポンプ室形成面224(
図5)と対向する対向面314が形成され、その更に外側には外周フランジ315が形成されている。第1の軸受筒体収容口311と第1のシリンダ312との間の枠部分313は連結部316を介して第1のフレーム31の対向面314と結合されている。連結部316の位置は、偏心駆動部材2の第1の隔壁222の開放端の位置と対応している。また、
図7に示す通り、外周フランジ315には、ボルト貫通孔319が形成されている。
【0025】
図7に示す通り、第2のフレーム32の第1のポンプ室6を形成するポンプ室形成面323には、連結部316の近傍位置に第2のフレーム32を貫通する吸込口322が形成されている。この吸込口322と、偏心駆動部材2の吐出口225,226(
図5)とは、連結部316に対して互いに反対側に配置されている。
図2に示す通り、第2のフレーム32には、第1の流体経路321が形成されており、この第1の流体経路321と吸込口322とが連通している。第1の流体流路321の上端はキャップ33によって開閉可能に閉じられている。
【0026】
図8は、第2のポンプヘッド4の正面図である。この第2のポンプヘッド4も、先に説明した第1のポンプヘッドと位置関係が180°異なる他はほぼ同様に構成されている。すなわち、第2のポンプヘッド4は、第3のフレーム41を備える。第3のフレーム41には、中心部に第3のフレーム41を貫通し、軸受筒体231(
図6)を収容する第2の軸受筒体収容口411が、その外側には第2の隔壁232(
図6)を収容し、C字状又は円弧状の第2のポンプ室7を形成する第2のシリンダ412が形成されている。また、その更に外周にはポンプ室形成面234(
図6)と対向する対向面415が形成され、その更に外側には外周フランジ410が形成されている。第2の軸受筒体収容口411と第2のシリンダ412との間の枠部分413は連結部418を介して第3のフレーム41の対向面415と結合されている。連結部418の位置は、偏心駆動部材2の第2の隔壁232の開放端の位置と対応している。また、
図8に示す通り、外周フランジ410には、ボルト貫通孔419が形成されている。
【0027】
図8に示す通り、第3のフレーム41の第2のポンプ室7を形成するポンプ室形成面414には、連結部418の近傍位置に第3のフレーム41内の第2の流体経路416(
図2)に連通する吸込口417が形成されている。この吸込口417と、偏心駆動部材2の吐出口235,236(
図6)とは、連結部418に対して互いに反対側に配置されている。
図2に示す通り、第3のフレーム41には、第2の流体経路416が形成されており、この第2の流体経路416と吸込口417とが連通している。第2の流体流路416の上端はキャップ42によって開閉可能に閉じられている。
【0028】
また、
図1〜
図3に示すように、第3のポンプヘッド5には、上端に移送流体(液体又は気体)を導入する吸込口512と、この吸込口512から流体を第1の流体経路321及び第2の流体経路416に分岐供給する流体分岐経路513が設けられている。流体分岐経路513と第1の流体経路321及び第2の流体経路416とは、シールされた継手52,53を介して接続している。第3のポンプヘッド5の偏心駆動部材2が収容される空間は、第1及び第2のポンプ室6,7から吐出された移送流体が収容される吐出流体流路511となる。第3のポンプヘッド5には、この吐出流体流路511に連通し、移送流体を外部に吐出する吐出口514が形成されている。
【0029】
[動作]
次に、本実施形態に係る容積型ポンプの動作について説明する。モータ等の回転駆動源によって回転軸11に回転駆動力を与えると、回転運動が偏心軸15に伝達され、偏心駆動部材2は、回転軸11の中心軸を中心とする偏心量に応じた半径の円環経路に沿って移動する。なお、偏心駆動部材2は、軸受16を介して偏心軸15に対して回転自在に装着されているので、偏心駆動部材2自体の回転が規制されていることと相俟って、前記円環経路に沿って並行移動をする。この円環軌道に沿った1回転分の並行移動がポンプの1サイクルとなる。
【0030】
図9は、同容積型ポンプの1サイクルの各時点での第1のポンプ室6における偏心駆動部材2の位置を示す図であり、
図10は同じく第2のポンプ室7における偏心駆動部材2の位置を示す図である。これらの図から明らかなように、第1の隔壁222は第1のポンプ室6を内周側と外周側とで第1の内側ポンプ室6aと第1の外側ポンプ室6bとに区画し、第2の隔壁232は第2のポンプ室7を内周側と外周側とで第2の内側ポンプ室7aと第2の外側ポンプ室7bとに区画している。
【0031】
図9及び
図10においては、偏心駆動部材2が共に正面から見て反時計回りに移動する様子を示しており、偏心駆動部材2の中心位置が
図9(a)及び
図10(a)では0°の位置に、
図9(b)及び
図10(b)では90°の位置に、
図9(c)及び
図10(c)では180°の位置に、
図9(d)及び
図10(d)では270°の位置にそれぞれ位置している。また、
図11には、各ポンプ室からの移送流体の吐出量の変化を示すグラフを示す。
【0032】
偏心駆動部材2が、
図9(a)に示す0°に位置するときには、第1の内側ポンプ室6aの吐出口225からの移送流体の吐出流量は、最小値に達し、第1の外側ポンプ室6bの吐出口226からの移送流体の吐出流量は、最大値に達している。また、第1の内側ポンプ室6aへの吸込口322を介した吸込みが開始される。
【0033】
偏心駆動部材2が、
図9(b)に示す90°の位置を通過する段階では、第1の内側ポンプ室6aの吐出口225からの移送流体の吐出流量は、最小値から最大値に至る途中の段階にあり、第1の外側ポンプ室6bの吐出口226からの移送流体の吐出流量は、最大値から最小値に至る途中の段階となっている。第1の内側ポンプ室6aへの吸込口322を介した吸込量は増大している。
【0034】
偏心駆動部材2が、
図9(c)に示す180°の位置を通過する段階では、第1の内側ポンプ室6aの吐出口225からの移送流体の吐出流量は、最大値に達し、第1の外側ポンプ室6bの吐出口226からの移送流体の吐出流量は、最小値に達している。また、第1の外側ポンプ室6bへの吸込口322を介した吸込が開始される。
【0035】
一方、偏心駆動部材2が、
図10(a)に示す0°に位置するときには、第2の内側ポンプ室7aの吐出口235からの移送流体の吐出流量は、最大値に達し、第2の外側ポンプ室7bの吐出口236からの移送流体の吐出流量は、最小値に達している。第2の外側ポンプ室7bへの吸込口417を介した吸込が開始される。
【0036】
偏心駆動部材2が、
図10(c)に示す180°の位置を通過する段階では、第2の内側ポンプ室7aの吐出口235からの移送流体の吐出流量は、最小値に達し、第2の外側ポンプ室7bの吐出口236からの移送流体の吐出流量は、最大値に達する。第2の内側ポンプ室7aへの吸込口417を介した吸込が開始される。
【0037】
図11に示すように、第1の内側ポンプ室6aからの吐出流量の変化と、第1の外側ポンプ室6bからの吐出流量の変化とは、互いに180°位相が異なっている。しかし、ポンプ容積等の関係で、第1の内側ポンプ室6aからの流量に比べ、第1の外側ポンプ室6bからの流量が僅かに大きいため、第1のポンプ室6の吐出流量には、僅かに脈動が生じてしまう。同様に、第2の内側ポンプ室7aからの吐出流量の変化と、第2の外側ポンプ室7bからの吐出流量の変化とは、互いに180°位相が異なっている。しかし、ポンプ容積等の関係で、第2の内側ポンプ室7aからの流量に比べ、第2の外側ポンプ室7bからの流量が僅かに大きいため、第2のポンプ室7の吐出流量には、僅かに脈動が生じてしまう。しかしながら、本実施形態においては、第1のポンプ室6の流量変化と、第2のポンプ室7の流量変化とが、180°異なる位相となっている。従って、第1のポンプ室6からの流量と第2のポンプ室7からの流量を合計することにより、脈動の無い流体の供給を実現することが可能となる。
【0038】
また、本実施形態に係る容量ポンプにおいては第1のポンプ室と第2のポンプ室によって常に吸込が行われ、且つ第1のポンプ室の吸込によって生じる力と第2のポンプ室の吸込によって生じる力は逆方向である。従って、クランクシャフト(回転軸11)の軸方向に対する荷重を軽減し、例えば
図2に示す円錐ころ軸受171,172(ベアリング)等の負担を軽減することが可能である。従って、円錐ころ軸受171,172として、小型のベアリングを適用することが可能であり、また、ポンプ室周りをほぼ完全な非摺動状態に保つことができ、これによるコンタミの発生を効果的に抑制することが可能である。
【0039】
このようなことから、移送流体をエアーとすると、回転軸11を高速回転駆動することにより、高性能のエアコンプレッサを提供することも可能である。
【0040】
また、当然回転方向を逆転させることが可能で、逆回転させた場合は吸込み吐出は反転する。
【0041】
[第2の実施形態]
[構成]
次に、本発明の第2の実施形態に係る容積型ポンプについて説明する。
図12は本発明の第二の実施形態に係る容積型ポンプの一部を切欠して示す正面図であり、
図13は、同容積型ポンプの側面から見た断面図である。また、
図14は、同容積型ポンプの分解斜視図である。
【0042】
例えば
図14に示す通り、本実施形態に係る容積型ポンプは、偏心駆動部材2を軸方向に2つに分割するようにそれぞれ独立して形成された第1のディスク部材24及び第2のディスク部材25を備えており、これら第1のディスク部材24及び第2のディスク部材25を回転軸方向に組み合わせて偏心駆動部材2を構成している。また、本実施形態に係る容積型ポンプは、回転軸18及び偏心軸15に対する第1のディスク部材24及び第2のディスク部材25の回転軸方向の位置を調整可能に構成されている。尚、本実施形態に係る容積型ポンプは、それ以外の態様においては、第一の実施形態に係る容積型ポンプと同様に構成されている。
【0043】
本実施形態に係る容積型ポンプの回転軸18及び偏心軸15は、例えば
図13に示す通り、回転動作を伝達する駆動側回転軸部180と、駆動側回転軸部180の先端側に回転軸方向から結合し、先端側に偏心軸15が一体形成されて駆動側回転軸部180に対して回転軸方向の位置を調整可能な先端側回転軸部181と、偏心軸15の先端側に回転軸方向から結合し、偏心軸15との回転軸方向の位置を調整可能なキャップ部材(取り付け部材)191とからなる。
【0044】
駆動側回転軸部180は、図示しないモータ等の回転駆動源からの回転駆動力を伝達するシャフトであり、
図13に示す通り、上述した軸受部17によって回転可能に支持されている。また、駆動側回転軸部180にはメカニカルシール14が装着されている。駆動側回転軸部180の前方部分は略円筒状に形成されており、この前方部分には先端側回転軸部181がスライド可能に挿入される。
【0045】
先端側回転軸部181は、例えば
図13に示す通り、駆動側回転軸部180の先端部分と同軸の略円筒状の部材である。偏心軸15の後端には、回転軸に対して外周方向に突出し、軸受16を介して第2のディスク部材25の背面に当接し、これによって第2のディスク部材25の回転軸方向の位置決めを行う位置決め部182が形成されている。また、例えば
図14に示す通り、先端側回転軸部181の後端部分は複数のスリット183によって複数のセグメント184に分割されており、テーパ状に形成されたコレット186及びドローバ188と共にコレットチャックを構成している。また、
図13に示す通り、先端側回転軸部181及び偏心軸15には、これらを回転軸に沿って貫通するドローバ挿通孔187が形成されている。
【0046】
キャップ部材191は、例えば
図13に示す通り、偏心軸15の前方部分に、前方から挿入されるキャップである。また、キャップ部材191の前端には、偏心軸15に対して外周方向に突出し、軸受16を介して第1のディスク部材24の前面に当接し、これによって第1のディスク部材24の回転軸方向の位置決めを行う位置決め部192が形成されている。また、例えば
図14に示す通り、キャップ部材191の後端部分は複数のスリット193によって複数のセグメント194に分割されており、テーパ状に形成されたコレット196及びドローバ198と共にコレットチャックを構成している。また、
図13に示す通り、キャップ部材191には、キャップ部材191を回転軸方向に沿って貫通するドローバ挿通孔197が形成されている。
【0047】
図15は、本実施形態に係る偏心駆動部材2の側断面図である。また、
図16は、同偏心駆動部材2の第1のディスク部材24の正面図、
図17は第1のディスク部材24の背面図、
図18は第2のディスク部材25の背面図である。
【0048】
図15に示す通り、本実施形態に係る偏心駆動部材2は、それぞれ独立して形成された第1のディスク部材24及び第2のディスク部材25を備えている。第1のディスク部材24及び第2のディスク部材25の中心には、これら第1のディスク部材24及び第2のディスク部材25を、軸受16(
図13)を介して偏心軸15に装着するための挿通孔240及び250が形成されている。
【0049】
また、
図15に示す通り、第1のディスク部材24及び第2のディスク部材25は、互いの対向面側に結合ベース部201及び206が突設され、これら結合ベース部201及び206が所定の間隔を介して対向している。第2のディスク部材25の前面に形成された結合ベース部206には、ガイドピン26を係止するガイドピン係止穴207と、スプリング27を係止するスプリング係止穴208が形成されている。更に、第1のディスク部材24の背面に形成された結合ベース部201にもガイドピン26を係止するガイドピン係止穴202と、スプリング27を係止するスプリング係止穴203が形成されている。ここで、ガイドピン係止穴202の内径は、ガイドピン26の外径と比較して大きく形成されている。即ち、第1のディスク部材24及び第2のディスク部材25は、回転方向に対していわゆるガタを有しており、所定の角度範囲において独立して回転可能である。尚、第1のディスク部材24及び第2のディスク部材25の角度は、偏心ディスクポンプの動作中に自然に好適な位置へと調整される。尚、
図17に示す通り、スプリング係止穴203及びガイドスプリング係止穴202は、挿通孔240の中心から、それぞれ所定の角度毎にほぼ均等に設けられている。
【0050】
尚、
図16に示す通り、本実施形態に係る第1のディスク部材24は、その他の点においては第1の実施形態に係る第1のディスク部材22と同様に形成されている。同様に、
図18に示す通り、本実施形態に係る第2のディスク部材25も、その他の点においては第1の実施形態に係る第2のディスク部材23と同様に形成されている。即ち、
図16及び
図18に示す通り、第1のディスク部材24及び第2のディスク部材25には、中心に挿通孔240及び250が形成されている。第1及び第2のディスク部材24,25の軸方向外側の面は、それぞれポンプ室形成面243,244,253,254として機能する。また、第1及び第2のディスク部材24,25の軸方向外側の面には、それぞれ互いの開放端の位置を180°ずらして配置されたC字状又は円弧状の第1の隔壁242及び第2の隔壁252がそれぞれ軸方向外側に向けて突設されている。これら第1の隔壁242及び第2の隔壁252は、第1及び第2のディスク部材24,25の各外側の面における、軸受筒体241,251とディスク部材24,25の外周縁との間の径方向の中間位置に、挿通孔240,250と同軸に形成されている。また、第1のディスク部材24及び第2のディスク部材25には、それぞれ第1の隔壁242及び第2の隔壁252の開放端に近い、隔壁242,252を挟んだ内外位置に、ディスク部材24,25を貫通する内側ポンプ室吐出口245,255及び外側ポンプ室吐出口246,256がそれぞれ形成されている。なお、第1のディスク部材24に形成された吐出口245,246と、第2のディスク部材25に形成された吐出口255,256も、互いに180°ずれた位置に形成されている。
【0051】
[第1のディスク部材24及び第2のディスク部材25の位置の調整]
本実施の形態に係る容積型ポンプにおいては、第1のディスク部材24及び第2のディスク部材25の位置を調整する事が可能である。以下に、その方法を説明する。
【0052】
まず、
図19に示す通り、偏心軸15に軸受16及び第2のディスク部材25を、第2のディスク部材25の背面が位置決め部182に当接するようにしっかりと装着し、第2のディスク部材25と第2のポンプヘッド4との間に、予め目標とするクリアランスを確保した状態で、先端側回転軸部181を駆動側回転軸部180の先端に挿入し、ドローバ挿通孔187を介してドローバ188を回転させ、これによってコレット186を前方へ引き締める。これにより、テーパ状に形成されたコレット186の側面によってセグメント184が外周方向に押圧され、先端側回転軸部181と駆動側回転軸部180の前端部分との位置関係が固定される。クリアランスを設定するには、例えば第2のポンプヘッド4の対向面415の前面と第2のディスク部材25のポンプ室形成面254の間に数十μmのスペーサを挿入し、位置決め後に、第2のディスク部材25を少し前方に引き出してスペーサを引き抜くようにすれば良い。
【0053】
尚、先端側回転軸部181を駆動側回転軸部180の前方部分に押し込む時点で、予めドローバ188によってコレット186をある程度引き締めておき、先端側回転軸部181の駆動側回転軸部180に対する摩擦力を調整しておいても良い。
【0054】
次に、
図20に示す通り、第2のディスク部材25に、ガイドピン26及びスプリング27を組み付け、第2のディスク部材25が組み付けられた偏心軸15の前方部分に軸受16及び第1のディスク部材24を組み付け、第3のフレーム41に第3のポンプヘッド5を組み付ける。
【0055】
続いて、
図20に示す通り、第1のディスク部材24と第1のフレーム31との間に上述と同様に所定のクリアランスを確保するためのスペーサ等を介在させた状態で、第1のフレーム31を組み付け、その状態で、偏心軸15の前方部分に、キャップ部材191を挿入する。次に、キャップ部材191のドローバ挿通孔197を介してドローバ198を回転させ、これによってコレット196を前方へ引き締める。これにより、テーパ状に形成されたコレット196の側面によってセグメント194が外周方向に押圧され、キャップ部材191と偏心軸15の前端部分との位置関係が固定される。次に、第1のフレーム31を外すなどしてスペーサを引き抜く。
【0056】
以上の処理により、第1のディスク部材24と第1のフレーム31とのクリアランス、及び第2のディスク部材25と第3のフレーム41とのクリアランスを好適に調整する事が出来る。
【0057】
尚、キャップ部材191の後方部分を偏心軸15の前方部分に押し込む時点で、予めドローバ198によってコレット196をある程度引き締めておき、キャップ部材191の偏心軸15に対する摩擦力を調整しておいても良い。
【0058】
本実施形態に係る容積型ポンプによれば、次のような効果を奏する。例えば
図4に示す通り、第一の実施形態に係る偏心駆動部材2は、第1のディスク部材22及び第2のディスク部材23を一体として形成しており、形成には高度な加工技術を要求される場合がある。特に、第1及び第2のディスク部材24,25と第1及び第2のシリンダ312,412との間隔は、容積型ポンプの移送性能に大きく影響する。例えばこの間隔が広すぎる場合、移送能力の低下を招く場合がある。一方、この間隔が狭すぎる場合、第1及び第2のディスク部材24,25が第1及び第2のシリンダ312,412に摺動し、これらの間における摩擦係数が増大し、偏心駆動部材2の移動を阻害して、移送能力の低下を招く場合がある。また、当該摺動部分においてコンタミが発生する場合がある。
【0059】
ここで、容積型ポンプを駆動させる条件によっては、第1及び第2のディスク部材24,25と第1及び第2のシリンダ312,412との好適な間隔が変わる場合もある。例えば、容積型ポンプを高温下で動作させる場合等には、偏心駆動部材2等の熱膨張を考慮する必要が生じる。また、移送対象が液体である場合、この液体の粘度によっても好適な間隔は異なる。
【0060】
この点、本実施の形態に係る容積型ポンプにおいては、位置決め部182,192の回転軸方向に対する位置を調整し、これによって第1のディスク部材24と第2のディスク部材25との間隔を調整する事が可能である。従って、第1及び第2のディスク部材24,25と、第1及び第2のシリンダ312,412との間隔を条件に応じて好適に調整する事が可能な、汎用性の高い容積型ポンプを提供する事が出来る。
【0061】
また、本実施形態のように、第1のディスク部材24及び第2のディスク部材25をそれぞれ独立して形成し、両者を緩やかに結合した場合、一体型で形成した場合よりも、両者の角度方向の誤差に対しての許容度が増す。例えば一体型の場合、第1の隔壁222及び第2の隔壁232の開放端の位置精度、及び開放端と係合するシリンダ側の連結部316,414の位置精度が確保されないと、両者の間で接触が生じ、摩耗、騒音等が発生し、容積型ポンプの好適な動作に影響を及ぼす場合がある。この点、本実施の形態に係る容積型ポンプは、第1のディスク部材24及び第2のディスク部材25を、所定の角度範囲において独立して回転可能である様に構成している。このような態様においては、第1及び第2のディスク部材24,25の第1及び第2のシリンダ312,412に対する回転角度は、動作中に好適に調整される。従って、本実施の形態に係る第1のディスク部材24及び第2のディスク部材25は、お互いに対する回転角度を精密に調整する必要が無く、容易に製造する事が可能である。
【0062】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る容積型ポンプについて説明する。
図21は本発明の第三の実施形態に係る容積型ポンプを側面から見た断面図である。
図21に示す通り、本実施形態に係る容積型ポンプにおいては、第1の流体経路321が下端において第1のポンプ室吸込口317に連通しており、同様に、第2の流体経路461が下端において第2のポンプ室吸込口457に連通している。更に言えば、第1のポンプ室吸込口317及び第2のポンプ室吸込口457は、共に回転軸18に対して下方に位置している。換言すると、先の実施形態では、第1のポンプ室6及び第2のポンプ室7の吐出流量が互いに逆相であったが、本実施形態では、第1のポンプ室6及び第2のポンプ室7の吐出流量が同相になっている。
【0063】
また、
図13に示す通り、第二の実施形態においては、第2のポンプヘッド4が一体形成された第3のフレーム41を備えて構成されていた。一方、
図21に示す通り、本実施形態においては、加工上の都合から、独立して形成された第4のフレーム45及び第5のフレーム46を備えて構成されている。更に、
図13に示す通り、第二の実施形態においては、第1のフレーム31が第2のフレーム32の背面全域を覆い、前面カバー34が第2のフレーム32の前面に取り付けられていた。一方、
図21に示す通り、本実施形態においては、第1のフレーム31が第2のフレーム32背面の回転軸近傍のみを覆い、第2のフレーム32の前面は一体に形成されている。尚、本実施形態に係る容積型ポンプは、それ以外の態様においては、第二の実施形態に係る容積型ポンプとほぼ同様に構成されている。
【0064】
次に、
図22及び
図23を参照して、本実施形態に係る偏心駆動部材2について説明する。
図22は、偏心駆動部材2を第3のポンプヘッド5に収容した状態の正面図、
図23は同じく背面図である。本実施の形態に係る偏心駆動部材2は、第二の実施形態に係る偏心駆動部材2と同様に、それぞれ独立して形成された第1のディスク部材24及び第2のディスク部材25を備えている。第1のディスク部材24及び第2のディスク部材25は、第二の実施形態に係る第1のディスク部材24及び第2のディスク部材25とほぼ同様に形成されているが、隔壁242及び252の開放端の位置が、それぞれ挿通孔240及び250の直下に位置している点において異なる。また、本実施の形態に係る第1のディスク部材24及び第2のディスク部材25は、略円形の一部を切り欠いて形成されておりこの切り欠きを外側ポンプ室吐出口247及び257としている。尚、その他の構成については、
図15〜
図18を参照して説明したため、説明を省略する。
【0065】
次に、
図24を参照して、第1のポンプヘッド3の構成について説明する。
図24は、第1のポンプヘッド3の背面図である。本実施形態に係る第1のポンプヘッド3においては、第1のポンプ室吸込口317が第1の軸受筒体収容口311中心の直下に位置している。また、第1のフレーム31が第2のフレーム32背面の回転軸近傍のみを覆っている。尚、第1のポンプヘッド3は、その他の点においては、第一の実施形態に係る第1のポンプヘッド3とほぼ同様に形成されている。
【0066】
即ち、
図24に示す通り、第1のポンプヘッド3は、第1のフレーム31及び第2のフレーム32とを備える(
図21参照)。第1のフレーム31には、中心部に第1のフレーム31を貫通し、軸受筒体241(
図22)を収容する第1の軸受筒体収容口311が、その外側には第1の隔壁242(
図22)を収容し、C字状又は円弧状の第1のポンプ室6を形成する第1のシリンダ312が形成されている。また、その更に外周にはポンプ室形成面244(
図22)と対向する対向面314が形成されている。第1の軸受筒体収容口311と第1のシリンダ312との間の枠部分313は、第1のポンプ室6を形成するポンプ室形成面318及び連結部316を介して第1のフレーム31の対向面314と結合されている。連結部316の位置は、偏心駆動部材2の第1の隔壁242の開放端の位置と対応している。また、ポンプ室形成面318には、連結部316の近傍位置に第1のフレーム31を貫通し、第2のフレーム32内の第1の流体経路321(
図21)に連通する吸込口317が形成されている。この吸込口317と、偏心駆動部材2の吐出口245,247(
図22)とは、連結部316に対して互いに反対側に配置されている。
【0067】
図21に示す通り、第2のフレーム32には、第1の流体経路321が形成されており、この第1の流体経路321と吸込口317とが連通している。第1の流体流路321の上端はキャップ33によって開閉可能に閉じられている。また、
図24に示す通り、第2のフレーム32の外周側には外周フランジ325が形成されており、外周フランジ325には、ボルト貫通孔329が形成されている。
【0068】
次に、
図25を参照して、第2のポンプヘッド4の構成について説明する。
図25は、第2のポンプヘッド4の背面図である。本実施形態に係る第2のポンプヘッド4においては、第2のポンプ室吸込口457が軸受筒体収容口451中心の直下に位置している。また、第4のフレーム45が第5のフレーム46前面の回転軸近傍のみを覆っている。尚、第2のポンプヘッド4は、その他の点においては、第一の実施形態に係る第2のポンプヘッド4とほぼ同様に形成されている。
【0069】
即ち、
図25に示す通り、第2のポンプヘッド4は、第4のフレーム45及び第5のフレーム46を備える(
図21参照)。第4のフレーム45には、中心部に第4のフレーム45を貫通し、軸受筒体251(
図23)を収容する軸受筒体収容口451が、その外側には第2の隔壁252(
図23)を収容し、C字状又は円弧状の第2のポンプ室7を形成する第2のシリンダ452が形成されている。また、その更に外周にはポンプ室形成面254(
図23)と対向する対向面454が形成されている。軸受筒体収容口451と第2のシリンダ452との間の枠部分453は、第2のポンプ室7を形成するポンプ室形成面458及び連結部456を介して第4のフレーム45の対向面454と結合されている。連結部456の位置は、偏心駆動部材2の第2の隔壁252の開放端の位置と対応している。また、ポンプ室形成面458には、連結部456の近傍位置に第4のフレーム45を連通し、第5のフレーム46内の第2の流体経路461(
図21)に連通する吸込口457が形成されている。この吸込口457と、偏心駆動部材2の吐出口255,257(
図23)とは、連結部456に対して互いに反対側に配置されている。
【0070】
図21に示す通り、第5のフレーム46には、第2の流体経路461が形成されており、この第2の流体経路461と吸込口457とが連通している。第2の流体流路461の上端はキャップ42によって開閉可能に閉じられている。また、
図25に示す通り、第5のフレーム46の外周側には外周フランジ465が形成されており、外周フランジ465には、ボルト貫通孔469が形成されている。
【0071】
図21に示す通り、本実施形態に係る容積型ポンプにおいては、第1のポンプ室吸込口317の第1の流体経路321と連通する位置と、第2のポンプ室吸込口457の第2の流体経路461と連通する位置とは、回転軸18の回転方向において略一致している。従って、例えば第1のポンプ室吸込口317及び第2のポンプ室吸込口457が回転軸18に対して下方に位置するように容積型ポンプを設置することにより、第1及び第2の流体経路321及び461の下端から移送対象を第1及び第2のポンプ室6及び7に吸い込む事が出来、移送対象を第1及び第2の流体経路321及び461から好適に排出する事が出来る。
【0072】
本実施形態によれば、第1のポンプ室吸込口317の第1の流体経路321と連通する位置と、第2のポンプ室吸込口457の第2の流体経路461と連通する位置とが、回転軸18の回転方向において略一致しているため、これらが180°異なっている場合に比べ、シール構造が容易であるという利点がある。また、偏心駆動部材2の吐出口255,257が同じ位置にあるので、残液の排出処理が容易であり、ポンプ室内部の洗浄もし易いという利点がある。