【実施例】
【0046】
例1−人工フォリソームでの酵素の固定化
I. フォリソーム遺伝子MtSEO−F1、MtSEO−F2又はMtSEO−F4は、翻訳終止コドンの有無にかかわらず、以下のオリゴヌクレオチドを有するタルウマゴヤシcDNAに基づいて増幅された(制限部位には下線を引いた)。
MtSEO-F1 fw NcoI: 5’-AGA A
CC ATG GGA TCA TTG TCC AAT GGA ACT AAA C-3’
MtSEO-F1 rev XhoI with stop codon: 5’-AGA
CTC GAG TCA TAT CTT GCC ATT CTG TGG AGC-3’
MtSEO-F1 rev XhoI without stop codon: 5’-AGA
CTC GAG CAT ATC TTG CCA TTC TGT GGA GC-3’
MtSEO-F2 fw NcoI: 5’-AGA A
CC ATG GGA TCC ACT GCA TTG TCC TAT AAT G-3’
MtSEO-F2 rev XhoI with stop codon: 5’-AGA
CTC GAG TCA AAT GCA GCA ACT ATC TGG-3’
MtSEO-F2 rev XhoI without stop codon: 5’-AGA
CTC GAG ATG CAG CAA CTA TCT GGA-3’
MtSEO-F4 fw NcoI: 5’- AGA A
CC ATG GGA TCC CTT TCC AAC TTA GGA AG-3’
MtSEO-F4 rev XhoI with stop codon: 5’-AGA
CTC GAG TCA AAC ACC AAG ATT GTT TGG-3’
MtSEO-F4 rev XhoI without stop codon: 5’- AGA
CTC GAG ACA CCA AGA TTG TTT GGT TC-3’
【0047】
増幅産物は、制限酵素NcoI/XhoIで制限され、pENTR4
TMベクター(インビトロジェン社、独国)の対応する切断部位にクローニングされた。こうして、pENTR4
TM−MtSEO−Fベクターが、翻訳終止コドンの有無にかかわらず生成された。
【0048】
II. サッカロマイセス・セレビシエ由来の酵素ヘキソキナーゼ2(HXK2)、ホスホグルコイソメラーゼ(PGI)及びグルコース−6−リン酸脱水素酵素(G6PDH)の遺伝子は、以下のオリゴヌクレオチドを有するcDNAに基づいて増幅された(制限部位には下線を引いた)。
G6PDH fw XhoI: 5’-AGA
CTC GAG AAT GAG TGA AGG CCC CGT C-3’
G6PDH rev XhoI: 5’- AGA
CTCGAGCTAATTATCCTTCGTATCTTC
HXK2 fw XhoI: 5’-AGA
CTCGAGAATGGTTCATTTAGGTCCAAA
HXK2 bw XhoI: 5’-AGA
CTCGAGTTAAGCACCGATGATACCA
PGI XhoI fw: 5’-AGA
CTCGAGAATGTCCAATAACTCATTCAC
PGI XhoI rev: 5’- AGA
CTCGAGATCACATCCATTCCTTGAATTG
Invertase XhoI fw: 5’-AGA
CTCGAGAGCATCAATGACAAACGAAAC
Invertase XhoI rev: 5’- AGA
CTCGAGCTATTTTACTTCCCTTACTTGG
【0049】
増幅産物は、制限酵素NcoI/XhoIで制限され、翻訳終止コドンなしのpENTR4−MtSEO−Fベクターの対応する切断部位にクローニングした(a)I.参照)。こうして、pENTR4−MtSEO−F1−G6PDH、pENTR4−MtSEO−F2−G6PDH、pENTR4−MtSEO−F4−G6PDH、pENTR4−MtSEO−F1−HXK2、pENTR4−MtSEO−F2−HXK2、pENTR4−MtSEO−F4−HXK2、pENTR4−MtSEO−F1−PGI、pENTR4−MtSEO−F2−PGI及びpENTR4−MtSEO−F4−PGIの各ベクターが得られた。
【0050】
III. 翻訳終止コドンを有するpENTR4−MtSEO−F1及び翻訳終止コドンを有するpENTR4−MtSEO−F4の各ベクターは、酵母ベクター425GPD−ccdB(アドジーン、米国)に組み換えられた。結果として得られた発現構築物425GPD−MtSEO−F1及び425GPD−MtSEO−F4が、酵母株InvSc1(インビトロジェン社、独国)に形質転換された。選択のために、酵母株のロイシン栄養要求性の相補が利用された。結果として得られた酵母が、MtSEO−F1又はMtSEO−F4から人工フォリソームを生成し、この人工フォリソームが、酵素結合の基礎として使用される。
【0051】
IV. 上記のMtSEO−F・酵素間の融合(1.II参照)を伴うpENTR4ベクターは、酵母ベクター425GPD−ccdB(アドジーン、米国)によって組み換えられた。結果として得られたベクター(424GPD−MtSEO−F1−G6PDH、424GPD−MtSEO−F2−G6PDH、424GPD−MtSEO−F4−G6PDH、424GPD−MtSEO−F1−HXK2、424GPD-MtSEO−F2−HXK2、424GPD -MtSEO−F4−HXK2、424GPD−MtSEO−F1−PGI、424GPD−MtSEO−F2−PGI、424GPD−MtSEO−F4−PGI)は、酵母に形質転換され、この酵母は、MtSEO−F1又はMtSEO−F4から成る人工フォリソームの生成のために、プラスミドを得ている(a)III参照)。それゆえ、結果として得られた二重変異体(たとえば、425GPD−MtSEO−F1/424GPD−MtSEO−F2−G6PDH)は、ロイシン栄養要求性又はトリプトファン栄養要求性との関連で相補される。
【0052】
V. 酵素結合フォリソームを生成する(a)I〜IV参照)発現酵母は、OD600nmが5〜7の範囲までは、50mLの規模で培養され、遠心分離(1000×g、10分間)を用いて回収される。酵母ペレットは、50mLのV培地(10 mMのTRIS、 10 mMのEDTA、 100 mMのKCl、 pH 7.4)で洗浄され、再度遠心分離(1000×g、10分間)を行った後、−20℃で凍結される。凍結された酵母ペレットは、1mLのV培地で再懸濁され、約500mg(425〜600μm)のガラスビーズで移し替える。細胞の分解は、1.5mLの容器中で、ミキサーミルMM400(レッチ、独国)内で30Hzの周波数で行われる。次いで、人工フォリソームが、不溶性の細胞成分と共に遠心分離され、0.5mLのV培地で再懸濁される。次いでこの溶液が、スクロース又はナイコデンツによる密度勾配にかけられ、ここで、スクロース又はナイコデンツの濃度は、40%〜70%の勾配で増加する。この勾配が、ベックマン超遠心分離機を用いて、163,000×g、4℃の条件で、3時間遠心分離された。
【0053】
その後、勾配中のフォリソーム含有相は、ピペットを用いて収集され、V培地を用いて1:2に希釈され、2つの等量のアリコートに分けられる。アリコートは10分間100×gで遠心分離され、上清が除去された。第1のアリコートのフォリソームは、次いで50μLのV培地に加えられ、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)を用いた酵素結合した人工フォリソームの質量・濃度測定に使用された。第2のアリコートは、50μLの酵素緩衝液に加えられた(G6PDHに結合したフォリソーム用:250mMグリシルグリシン緩衝液、pH7.4;HXK2に結合したフォリソーム用:13.3mMのMgCl
2を加えた0.05Mtris−HCl緩衝液、pH8;PGIに結合したフォリソーム用:250mMグリシルグリシン緩衝液、pH7.4)。このアリコートは、特異的酵素アッセイを用いた、フォリソームに結合した酵素の活性の測定に使用された。
【0054】
VI. 酵素結合した人工フォリソーム(a)IV参照)は、その質量及び濃度に関して、SDS−PAGEを用いて検証された。ここで、酵素結合した人工フォリソームが構成される元となるフォリソームタンパク質(たとえば、MtSEO−F1及びMtSEO−F2酵素融合タンパク質)が分離された。個々のタンパク質の存在は、生物情報から予測された質量(たとえば、MtSEO−F2−G6PDH=124.7キロダルトン)と、ゲル中の実際の質量(MtSEO−F2−G6PDH=約130kDa)と比較することで確認される。タンパク質の濃度測定は、規定されたタンパク質の量の標準系列を追加で加えたものを用いるか、又はタンパク質マーカ、プレシジョンPlusプロテイン未着色スタンダード(バイオラッド社)を用いて行われる。50mLの発現培養物から、選択されたフォリソームタンパク質及び酵素融合に応じて、タンパク質の総量(個々のMtSEO−Fタンパク質+MtSEO−F酵素融合)56〜124μg分の酵素結合した人工フォリソームが得られる。ここで、タンパク質の総含有量に占めるMtSEO−F酵素融合の割合は、融合パートナーに応じて、10%〜50%となる。タンパク質総量(50mLの発現培養物当たり124μg)においても、酵素融合タンパク質(50mLの発現培養物当たり37μg)においても、最大量は、PGIに結合した酵素フォリソーム(MtSEO−F1/MtSEO−F2−PGI)の生成時に得られた。
【0055】
フォリソームによって固定化された酵素の活性は、特異的分光光度測定用酵素アッセイを用いて測定された。グルコース−6−リン酸脱水素酵素については、シグマ・アルトリッチ社(独国)の推奨プロトコルが使用された。アッセイは、G6PDHに触媒された、グルコース−6−リン酸の6−ホスホグルコノラクトンへの変換に依拠している。この反応の際に、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)が、以下の通り、NADPHに還元される。
【化1】
【0056】
340nmの波長域におけるNADPHの消失は、分光光度測定によって測定可能であり、この消失を用いて、酵素活性が計算可能となる。アッセイのために、第2のアリコート(a)V参照)から精製された酵素フォリソームが使用される。酵素結合されたフォリソームの算出された濃度を用いて、人工フォリソーム1グラム当たりで測定された酵素活性が計算可能である。構造物(a)III参照)に応じて、フォリソームによって固定化されたグルコース−6−リン酸脱水素酵素については、人工フォリソーム1グラム当たり2000〜2700単位の活性が得られた。これに比較して、シグマ・アルトリッチ社(独国)によって市販品として入手可能となった固定化されたグルコース−6−リン酸脱水素酵素では、アガロース1グラム当たり1000〜1750単位の活性しか得られなかった。それゆえ、本発明のグルコース−6−リン酸脱水素酵素は、明らかにより高い特異的酵素活性(担体の量に対する酵素活性)を有する。
図6は、SEO−F1及びSEO−F2に由来する本発明のフォリソーム体に結合されるグルコース−6−リン酸脱水素酵素の酵素活性試験を示す。
【0057】
フォリソームによって固定化されたヘキソキナーゼ2及びホスホグルコイソメラーゼの活性も、同様のアッセイ原理に基づいて測定された。ここでは、340nmにおけるNADPHの吸光増加を用いて酵素活性を測定するために、相前後して推移する2つの酵素反応のみが利用された。ヘキソキナーゼ2については、ワーシントン社(レークウッド、ニュージャージー州、米国)の推奨プロトコルが使用され、このプロトコルの基礎は、以下に示す反応である。
【化2】
【0058】
2番目の反応に必要とされたグルコース−6−リン酸脱水素酵素は、本アッセイのアプローチに、市販品として入手可能な、可溶性の酵素として所定の活性を有するものの形で添加された。構造物(a)III参照)に応じて、フォリソームによって固定化されたヘキソキナーゼ2については、人工フォリソーム1グラム当たり6000〜8000単位の活性が得られた。これに対して、シグマ・アルトリッチ社の提供するアガロースによって固定化されたヘキソキナーゼについては、わずか50〜75単位の活性しか得られなかった。
【0059】
ホスホグルコイソメラーゼについては、シグマ・アルトリッチ社(独国)の推奨プロトコルが使用され、このプロトコルの基礎は、以下に示す反応である。
【化3】
【0060】
構造物(a)III参照)に応じて、フォリソームによって固定化されたホスホグルコイソメラーゼについては、人工フォリソーム1グラム当たり6000〜8000単位の活性が得られた。これに対して、シグマ・アルトリッチ社の提供するアガロースによって固定化されたヘキソキナーゼについては、わずか300〜600単位の活性しか得られなかった。
【0061】
例2−タンパク質の精製
2.1a 未変異のフォリソーム遺伝子を用いるか、又は未変異のフォリソーム遺伝子の不在時の組換えタンパク質の精製
I. マラリア表面抗原MSPの断片(MSP1
19)のコードされた配列は、以下のオリゴヌクレオチドを有するベクターに基づいて増幅された(制限部位には下線を引いた)。
MSP1
19 NcoI fw: 5’- AGA
CCATGGACCTGCGTATTTCTCAG-3’
MSP1
19 NcoI FaXa rev: 5’- AGA
CCATGGTACGACCTTCGATCCTGCATATAGAAATGCC-3’
MSP1
19 XhoI FaXa fw: 5’- AGA
CTCGAGAATCGAAGGTCGTGACCTGCGTATTTCTCAG-3’
MSP1
19 XbaI rev: 5’- AGA
TCTAGATCACCTGCATATAGAAATG-3’
【0062】
プライマーMSP1
19NcoI FaXa rev及びMSP1
19 XhoI FaXa fwは、遺伝子特異的な配列に加えて、プロテアーゼ因子Xaの認識部位(斜体にて表記)を含んでいる。第1の増幅産物は、制限酵素NcoIで処理され、終止コドンを有するベクターpENTR4−MtSEO−F1、終止コドンを有するベクターpENTR4−MtSEO−F2及び終止コドンを有するベクターpENTR4−MtSEO−F4それぞれのNcoI切断部位においてクローニングされる(a)I参照)ことで、ベクターpENTR4− MSP1
19−MtSEO−F1、 pENTR4− MSP1
19−MtSEO−F2及びpENTR4− MSP1
19−MtSEO−F4を得る。第2の増幅産物−Mtは、制限酵素XhoI及びXbaIで処理され、終止コドンなしのベクターpENTR4−MtSEO−F1、終止コドンなしのベクターpENTR4−MtSEO−F2及び終止コドンなしのベクターpENTR4−MtSEO−F4それぞれのXhoI/XbaI切断部位においてクローニングされる(a)I参照)ことで、ベクターpENTR4SEO−F1− MSP1
19、 pENTR4−MtSEO−F2− MSP1
19及びpENTR4−MtSEO−F4− MSP1
19を得る。発現ベクター424GPD−MSP1
19−MtSEO−F1、424GPD−MSP1
19−MtSEO−F2、424GPD−MSP1
19−MtSEO−F4、424GPD−MtSEO−F1−MSP1
19、424GPD−MtSEO−F2−MSP1
19及び424GPD−MtSEO−F4−MSP1
19の生成のために、生成されたベクターは、酵母ベクター424GPD−ccdB(アドジーン、米国)によって組み換えられた。
【0063】
II. ベクター424GPD−MSP1
19−MtSEO−F4及び424GPD−MtSEO−F4−MSP1
19が、酵母株InvSc1(インビトロジェン社、独国)に形質転換された。選択のために、酵母株のトリプトファン栄養要求性の相補が利用された。MSP1
19及びMtSEO−F4から成る融合タンパク質が、他のMtSEO−Fタンパク質のこれ以上の発現を伴わずに、フォリソームを形成する。
【0064】
ベクター424GPD−MSP1
19−MtSEO−F1、424GPD−MSP1
19−MtSEO−F2、 424GPD−MtSEO−F1−MSP1
19及び424GPD−MtSEO−F2−MSP1
19は、酵母に形質転換され、この酵母は、MtSEO−F1から成る人工フォリソームの生成のために、プラスミド(425GPD−MtSEO−F1)を得ている(a)III参照)。それゆえ、結果として得られた酵母(たとえば、425GPD−MtSEO−F1/424GPD−MSP1
19−MtSEO−F1)は、ロイシン栄養要求性又はトリプトファン栄養要求性との関連で相補され、MSP1
19タンパク質と融合する人工フォリソームを生成する。
【0065】
MSP1
19と融合する人工フォリソームは、1.Vに記載した通り精製され、SDS−PAGE及びウェスタンブロット法を用いて検証され、定量化された。全ての構造物は精製に利用可能であった。細胞培養物1L当たりの0.49mgのMSP1
19の最適な精製については、発明者は、424GPD−MSP1
19−MtSEO−F4構造物でも達成した。培養と精製の適応による最適化は、将来、より大量のタンパク質量の精製をもたらすことになる。更に、プロテアーゼ因子Xaを用いたインキュベーションによって、MSP1
19タンパク質が、人工タンパク質から分離可能になる。加えて、発明者は、いくつかの還元性を有し、カルシウムを含有するという緩衝条件が、人工フォリソームの溶解をもたらす可能性がある(特に、MtSEO−F1タンパク質の615位及び620位におけるシステインの変異の場合)ことを認めた。この不溶相から可溶相への転移は、タンパク質精製に利用可能である。
図7は、フォリソーム体SEO−F1及びSEO−F4を用いたMSP1
19の精製を示す。MSP1
19の免疫学的検出が図示されている。
【0066】
2.1b システインにより変異されたフォリソーム遺伝子を用いた組換えタンパク質の精製
MtSEO−F1遺伝子において、シークエンスロゴでシステインNo.3及び8(
図5)は、アジレントテクノロジー社(カリフォルニア州、米国)のQuickChangeII部位特異的突然変異誘発キットを用いて、製造者の注意事項に従い、セリンに変異させた。出発物質として使用されたのは、ベクターpENTR4−MtSEO−F1として、終止コドンを有するものと終止コドンなしのもの(例1)である。システインNo.3及び8は、MtSEO−F1タンパク質のアミノ酸の615位及び620位に相当する。それゆえ、結果として得られた変異MtSEO−F1遺伝子は、以下においてMtSEO−F1(C615S/C620S)と言う。
【0067】
マラリア表面抗原の断片(MSP1
19)のコードされた配列は、例2.1aにおいて記載された通り、pENTR4
TMベクター(インビトロジェン社、独国)のベクターにおいては、MtSEO−F1(C615S/C620S)のアップストリーム領域及びダウンストリーム領域でクローニングされる。
【0068】
酵母ベクター425GPD−ccdB(アドジーン、米国)によるベクターpENTR4−MtSEO−F1(C615S/C620S)の組換え及び酵母ベクター424GPD−ccdB(アドジーン、米国)によるベクターpENTR4−MSP1
19−MtSEO−F1(C615S/C620S)及びpENTR4−MtSEO−F1(C615S/C620S)−MSP1
19の組換えを用いて、発現ベクター425GPD− MtSEO−F1 (C615S/C620S)、424GPD−MSP1
19−MtSEO−F1(C615S/C620S)、 424GPD−MtSEO−F1(C615S/C620S)−MSP1
19が生成される。
【0069】
酵母ベクターは、以下の組み合わせ、すなわち
【化4】
で、酵母株InvSc1(インビトロジェン社、独国)に形質変換される。選択のために、酵母株のロイシン栄養要求性及びトリプトファン栄養要求性の相補が利用された。結果として得られた酵母は、MSP1
19タンパク質を含有するMtSEO−F1(C615S/C620S)由来の人工フォリソームを生成する。
【0070】
結果として得られた人工フォリソームは、還元性の緩衝液中で、カルシウムイオン(4mMのCaCl、200μMのNaHSO
3、10mMのTRIS、100mMのKCl、pH 7.2)によって約100%可溶性の形状に転移され、変異なしのバージョンでは、わずかな部分しか可溶性の形状に転移しない。
【0071】
それゆえ、精製プロセスが短縮可能となる。培養後、MSP1
19タンパク質を含有する酵母細胞は分解され、人工フォリソーム及び酵母破片は、遠心分離によって可溶性部分から分離し、次いで、タンパク質・フォリソーム融合が可溶相に転移することが可能となる。
【0072】
2.2 人工フォリソーム遺伝子を用いた抗体の精製
I. ゴム小粒子結合蛋白質3(SRRP3)のコードされた配列は、以下のオリゴヌクレオチドを有するベクターに基づいて増幅された(制限部位には下線を引いた)。
SRPP3 XhoI fw: 5‘-AGA
CTCGAGA ATGACCGACGCTGCTTC-3‘
SRPP 3 XhoI rev: 5‘-AGA
CTCGAG TCATGTTTCCTCCACAATC-3‘
【0073】
増幅産物は、制限酵素XhoIで処理され、翻訳終止コドンなしのpENTR4−MtSEO−F1ベクターのXhoI切断部位にクローニングされる(a)I.参照)ことで、ベクターpENTR4−MtSEO−F1−SRPP3を得る。発現ベクター424GPD−MtSEO−F1−SRPP3の生成のために、生成されたベクターは、酵母ベクター424GPD−ccdB(アドジーン、米国)によって組み換えられた。
【0074】
II. ベクター424GPD−MtSEO−F1−SRPP3は、酵母に形質転換され、この酵母は、MtSEO−F1から成る人工フォリソームの生成のために、すでにプラスミド(425GPD−MtSEO−F1)を含んでいる(1.III参照)。結果として得られた酵母(たとえば、425GPD−MtSEO−F1/424GPD−MtSEO−F1−SRPP3)は、ロイシン栄養要求性及びトリプトファン栄養要求性との関連で相補され、SRPP3タンパク質と融合する人工フォリソームを生成する。酵母は、OD600nmまでは、50mLの規模で培養され、遠心分離され、1mLのV培地(10mMのTRIS、 10mMのEDTA、 100mMのKCl、pH7.4)で、ボールミルを用いて分解される。ここで、抗原を担持する人工フォリソームは、遊離した状態で溶液中に存在し、以下において、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体の精製に利用可能となる。
【0075】
III. 抗原を含む人工フォリソームは、500μLのポリクローナル抗体血清を用いて、ウサギにおいて生成されたSRPP3との比較で、30分間インキュベートされる。ここで、特異的抗体は、人工フォリソームに結合する。フォリソームは遠心分離(4000×g、4分間)され、1mLのPBS(137mMのNaCl、2.7mMのKCl、10mMのNa
2HPO
4、2 mMのKH
2PO
4、pH7.4)で三度洗浄された。次いで、抗体は、450μLの0.1Mグリシン・HCl溶液(pH2.7)で5分間溶離される。その後、抗体は、450μLの0.1Mtris−HCl溶液(pH8.5)で中和される。以下のブロットにおいては、精製される抗体(血清不純物のない状態)の高い特異性が確認される。フォリソームを用いて精製された抗体は、さまざまな用途(ウェスタンブロット、ELISA免疫沈降、抗体療法その他)に利用可能となる。このような精製の原理は、
図7に示している。
図8は、人工フォリソームの固定化のための、IgG抗体とBドメインとの相互作用の利用を示している。Bドメインと結合されたSEO−F1サブユニットから成る人工フォリソームは、蛍光IgG抗体を形成する。
【0076】
例3−人工フォリソームの技術的表面への固定(表面結合)
I. グルタチオンS−転移酵素(GST)のコードされた配列は、以下のオリゴヌクレオチドを有するpGex−3Xベクター(GEヘルスケア社、米国)に基づいて増幅された(制限部位には下線を引いた)。
GST fw NcoI XhoI fw: 5’-AGA
CCA TGG GA
C TCG AGA ATG TCC CCT ATA CTA GGT TA-3’
GST SalI rev: 5’-AGA
GTC GAC TTA ACG ACC TTC GAT CAG ATC-3’
【0077】
この断片は、制限酵素NcoI/SalIで処理され、NcoI/XhoIで切断されたベクターpENTR4
TMでクローニングされ、この結果、ベクターpENTR4−GSTが生成される。以下において、終止コドンを有するMtSEO−F1遺伝子の増幅産物(1.I参照)が、結果として生成されるベクターのNcoI/XhoI部位でクローニングされることで、ベクターpENTR4−GST−MtSEO−F1を得る。発現ベクター424GPD−GST−MtSEO−F1の生成のために、ベクターpENTR4−GST−MtSEO−F1は、酵母ベクター424GPD−ccdB(アドジーン、米国)によって組み換えられた。発現ベクターは、酵母に形質転換され、この酵母は、MtSEO−F1から成る人工フォリソームの生成のために、すでにプラスミド(425GPD−MtSEO−F1)を含んでいる(a)III参照)。結果として得られた酵母(425GPD−MtSEO−F1/424GPD−GST−MtSEO−F1)は、ロイシン栄養要求性及びトリプトファン栄養要求性との関連で相補され、GSTタグを有する人工フォリソームを生成する。この酵母は、a)Vに記載の通り精製され、SDS−PAGEを用いて、それぞれのタンパク質(MtSEO−F1及びGST−MtSEO−F1)の存在が検証可能となった。更に、結果として得られた人工のGST結合されたフォリソームが、グルタチオン結合されたマトリックス(グルタチオンセファロース4B、アマシャムバイオサイエンス社、米国)に接着することも証明された。
【0078】
II. 黄色ブドウ球菌タンパク質A由来Bドメインのコードされた配列は、以下のオリゴヌクレオチドを有する424GPD−ccdB−TAPベクター(GEヘルスケア社、米国)に基づいて増幅された(制限部位には下線を引いた)。
B-Domain NcoI fw: 5’- AGA
CCATGGCGGATAACAAATTCAACA-3’
B-Domain NcoI rev: 5’-AGA
CCATGGCTTTTGGTGCTTGAGCATC-3’
B-Domain XhoI fw: 5’- AGA
CTCGAGAGCGGATAACAAATTCAAC-3’
B-Domain XhoI rev: 5’- AGA
CTCGAGTCATTTTGGTGCTTGAGCATC-3’
【0079】
第1の増幅産物は、制限酵素NcoIで処理され、終止コドンを有するベクターpENTR4−MtSEO−F1及び終止コドンを有するベクターpENTR4−MtSEO−F4のNcoI切断部位でクローニングされる(a)I.参照)ことで、ベクターpENTR4−B−domain−MtSEO−F1及びpENTR4−B−domain−MtSEO−F4を得る。第2の増幅産物は、制限酵素XhoIで処理され、終止コドンなしのベクターpENTR4−MtSEO−F1及び終止コドンなしのベクターpENTR4−MtSEO−F4のXhoI切断部位でクローニングされる(a)I.参照)ことで、ベクターpENTR4− MtSEO−F1−B−domain及びpENTR4−MtSEO−F4−B−domainを得る。発現ベクター424GPD−B−domain−MtSEO−F1、424GPD−B−domain−MtSEO−F4、424GPD−MtSEO−F1−B−domain、424GPD−MtSEO−F4−B−domainの生成のために、生成されたベクターは、酵母ベクター424GPD−ccdB(アドジーン、米国)によって組み換えられた。
【0080】
ベクター424GPD−B−domain−MtSEO−F4及び424GPD−MtSEO−F4−B−domainは、酵母株InvSc1(インビトロジェン社、独国)に形質変換された。選択のために、酵母株のトリプトファン栄養要求性の相補が利用された。Bドメイン及びMtSEO−F4から成る融合タンパク質が、他のMtSEO−Fタンパク質のこれ以上の発現を伴わずに、フォリソーム構造を形成する。
【0081】
ベクター424GPD−B−domain−MtSEO−F1及び424GPD−MtSEO−F1−B−domainは、酵母に形質転換され、この酵母は、MtSEO−F1から成る人工フォリソームの生成のために、すでにプラスミド(425GPD−MtSEO−F1)を含んでいる(1.III参照)。結果として得られた酵母(たとえば、425GPD−MtSEO−F1/424GPD−B−domain−MtSEO−F1)は、ロイシン栄養要求性及びトリプトファン栄養要求性との関連で相補され、Bドメインと融合する人工フォリソームを生成する。以上生成されたBドメインを含む人工フォリソームは全て、IgGに結合されたセファロース(GEヘルスケア社、米国)に固定化される。
【0082】
2.3 異なるSEO−Fタンパク質から成る人工SEO−Fフォリソームの生成及び精製
2.3.1 MtSEO−F4のアミノ酸1〜96とMtSEO−F1のアミノ酸73〜648との融合
N末端側のMtSEO−F4断片及びC末端側のMtSEO−F1断片は、以下のオリゴヌクレオチド、すなわち
MtSEO-F4 MSLSN NcoI fw 5’-AGACCATGGGATCCCTTTCCAACTTAGGAAGTG -3’
MtSEO-F4 LISCQ NcoI rev 5‘-AGACCATGGCCTGACAAGAAATCAGCTT-3‘
MtSEO-F1 MITTR NcoI fw 5‘-AGACCATGGGAATGATAACCACCCCTC-3’
MtSEO-F1 QNGKI XhoI rev 5'-AGACTCGAGGTCATATCTTGCCATTCTGTGGAG-3'
によって増幅され、NcoI/XhoIによって制限されたpENTR4ベクターIIクローニングされた。その後、生成されたベクターpENTR4−MtSEO−F4(1−288bp)/MtSEO−F1(219−1944bp)は、植物発現ベクターpBatTL及び酵母発現ベクター425GPD−ccdBによって組み換えられた。生成されたpBatTL−MtSEO−F4(1−288bp)/MtSEO−F1(219−1944bp)は、アグロバクテリウムに形質転換され、このアグロバクテリウムで、ベンサミアナタバコ植物体が浸透を受けた(ミュラー他、2010)。生成されたベクター425GPD−MtSEO−F4(1−288bp)/MtSEO−F1(219−1944bp)は、酵母株InvSc1に形質転換された。2つの系ではいずれも、人工フォリソームの形成が顕微鏡で観察可能であった。精製は、上の例1.Vに記載した通り実施された。
【0083】
2.3.2 MtSEO−F1のアミノ酸1〜583とMtSEO−F2のアミノ酸620−670との融合
N末端側のMtSEO−F1断片及びC末端側のMtSEO−F2断片は、以下のオリゴヌクレオチド、すなわち
MtSEO-F1 MSLNS NcoI fw 5'-AGACCATGGGATCATTGTCCAATGGAACTA-3'
MtSEO-F1 FKEYY XhoI rev 5‘-AGACTCGAGTGATAGTATTCTTTGAATGCAAT-3‘
MtSEO-F2 DTKLS XhoI fw 5‘-AGACTCGAGTGATACTAAGCTTTCAGAGAT-3‘
MtSEO-F2 DSCCI XhoI bw 5'-AAACTCGAGTCAAATGCAGCAACTATCTGGATCATC-3'
によって増幅され、NcoI/XhoIによって制限されたpENTR4ベクターIIクローニングされた。その後、生成されたベクターpENTR4−MtSEO−F4(1−288bp)/MtSEO−F1(219−1944bp)は、植物発現ベクターpBatTL及び酵母発現ベクター425GPD−ccdBによって組み換えられた。生成されたpBatTL−MtSEO−F1(1−1749bp)/MtSEO−F2(1860−2010bp)は、アグロバクテリウムに形質転換され、このアグロバクテリウムで、ベンサミアナタバコ植物体が浸透を受けた(ミュラー他、2010)。生成されたベクター425GPD−MtSEO−F1(1−1749bp)/MtSEO−F2(1860−2010bp)は、酵母株InvSc1に形質転換された。2つの系ではいずれも、人工フォリソームの形成が顕微鏡で観察可能であった。精製は、上の例1.Vに記載した通り実施された。