特許第6341916号(P6341916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6341916イソシアネートモノマー移行に対するフィルムバリヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6341916
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】イソシアネートモノマー移行に対するフィルムバリヤ
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20180604BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20180604BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   B32B27/32 Z
   B32B27/32 103
   B32B27/28 102
   B65D65/40 D
【請求項の数】5
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-529986(P2015-529986)
(86)(22)【出願日】2013年8月28日
(65)【公表番号】特表2015-528405(P2015-528405A)
(43)【公表日】2015年9月28日
(86)【国際出願番号】US2013057023
(87)【国際公開番号】WO2014036106
(87)【国際公開日】20140306
【審査請求日】2016年8月19日
(31)【優先権主張番号】61/695,679
(32)【優先日】2012年8月31日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/695,654
(32)【優先日】2012年8月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100114409
【弁理士】
【氏名又は名称】古橋 伸茂
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】シューミン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・エル・マギー
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィット・イー・ヴィエッティ
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン・ミヤケ
(72)【発明者】
【氏名】ラリー・エフ・ブリンクマン
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−320438(JP,A)
【文献】 特表2010−514852(JP,A)
【文献】 特開平03−042244(JP,A)
【文献】 特開2005−335374(JP,A)
【文献】 特開2000−238208(JP,A)
【文献】 特開平02−015414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/32
B32B 27/28
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの層A1およびB:
A1.ヒドロキシル(OH)官能化エチレン系ポリマーおよび/またはアミン官能化エチレン系ポリマーの少なくとも1つを含む組成物A1から形成される第1フィルム層A1、および
B.少なくとも1つのイソシアネートを含む組成物Bから形成される第2フィルム層Bを含み、前記第1フィルム層A1が前記第2フィルム層Bと接触している、食品の柔軟性パッケージ用多層フィルム。
【請求項2】
組成物A1から形成される前記第1フィルム層A1が少なくとも1つのヒドロキシル(OH)官能化エチレン系ポリマーを含む、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項3】
少なくとも2つの層A2およびB:
A2.無水物官能化エチレン系ポリマーを含む組成物A2から形成される第1フィルム層A2;および
B.少なくとも1つのイソシアネートを含む組成物Bから形成される第2フィルム層Bを含み、前記第1フィルム層A2が前記第2フィルム層Bと接触している、食品の柔軟性パッケージ用多層フィルム。
【請求項4】
フィルム層Bと接触するフィルム層Cをさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の多層フィルムを含む物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本願は、2012年8月31日に出願された米国特許仮出願第61/695,654号および同第61/695,679号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
食品をはじめとする多くの商品は、多層フィルム中に包装されている。それらの構造および組成に応じて、これらのフィルムは、強度、柔軟性、光学的性質、印刷適性、酸素および/または水に対するバリヤ、ならびに低コストなどの多くの望ましい特性を提供することができる。これらの多層フィルムの個々の層は、熱ラミネーション、様々なコーティング技術、そしてもちろん接着剤をはじめとする多種多様な技術によって結合させることができる。例えば、国際特許公開第2013/043635号および同第2013/043652号を参照のこと。
【0003】
多層フィルム構造の2層を結合するための一般的でしばしば用いられる接着剤の1種はポリウレタンである。2成分硬化性ポリウレタン接着剤において、1つの成分はイソシアネート基含有成分であり、もう1つの成分は複数の活性水素を有する1以上の化合物を含む成分である。2つの成分を合わせて混合することによって2成分接着剤を調製し、混合物を次いで2以上の基体に施用する。
【0004】
ある2成分接着剤配合物は、通常2官能性である1以上のモノマー芳香族イソシアネート化合物と、1以上のポリオールとを含有する。そのような配合物は、ウレタンポリマーを形成する化学反応を受けることができ、これらの反応は典型的には有用な硬化反応である。モノマー芳香族イソシアネートは反応して、ポリマーおよび/または接着剤結合を強化する架橋を形成する。
【0005】
接着剤は充分に硬化して良好な接着強度を発現するが、一部のモノマーイソシアネート化合物は接着アセンブリとして存在する可能性がある。モノマーイソシアネート化合物は有毒かつ反応性であると考えられるので、これらの化合物の存在は望ましくないと考えられる。また、これらの化合物は水と反応してアミンを形成することができる。例えば、過剰のモノマーイソシアネートは、水(例えば、接着剤のコーティング中に形成されるトラップされた水、または高湿度下の大気からの水)と反応して、第1アミンを形成する可能性がある。そのようなアミンは望ましくないと考えられる。そのようなアミンのうち、第1芳香族アミン(PAA)は特に望ましくないと考えられる。食品容器のためには、容器と食品との間の接触は、食品中に相当量のPAAを生じるべきではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は少なくとも2つの層A1およびB:
A1.ヒドロキシル(OH)官能化エチレン系ポリマーおよび/またはアミン官能化エチレン系ポリマーの少なくとも1つを含む組成物A1から形成される第1フィルム層A1;ならびに
B.少なくとも1つのイソシアネートを含む組成物Bから形成される第2フィルム層B
を含む多層フィルムを提供する。
【0007】
本発明はまた、少なくとも2つの層A2およびB:
A2.無水物官能化エチレン系ポリマーを含む組成物A2から形成される第1フィルム層A2;および
B.少なくとも1つのイソシアネートを含む組成物Bから形成される第2フィルム層B
を含む多層フィルムも提供する。
【0008】
1つの実施形態において、本発明は、前述の多層フィルムを含む物品である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
概説
柔軟性食品パッケージは、概して接着剤によって合わせてラミネートされた複数のフィルム層からなる。外層は多くの場合、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含むフィルムのような反転印刷されたフィルムである。パッケージ構造は、アルミニウム、金属化フィルム、または食品に空気および水分が出入りするのを防止する他のフィルムから作製されるバリヤ層も含んでよい。最内層は通常、ポリオレフィン、例えばポリエチレン、パッケージの端部をヒートシールする働きをするシーラントフィルムである。ポリウレタン接着剤は通常、様々なフィルム層を合わせてラミネートするために使用される。
【0010】
接着剤の硬化は8〜24時間かかる可能性があり、この間、フィルムのさらなる加工は保留される。このさらなる加工は、典型的には、切断または密封してバッグまたはパウチを作製することを含む。あるイソシアネートを完全に反応させ、パッケージ内容物中に移行し得るPAAがほとんどないことを確実にするためには、さらに5〜14日が必要である可能性がある。本発明は、PAA消失のための停止時間、または接着強度を増大させるための時間の短縮を可能にして、さらなる加工を可能にし、このことは、食品容器の製造業者には有利である。本発明は、フィルムを作製するポリマーを高温で加工するための十分なポットライフを可能にする、すなわちポリマーは加工を妨害するほど急速に粘度を増大させないが、周囲温度では急速に硬化する。ポットライフの要件は、硬化を促進するための接着剤における触媒の使用を制限する。
【0011】
シーラントフィルム中のある成分は、PAAの硬化および消費を促進することが見いだされた。1つの方法は、OHまたは他のNCO反応性官能基をシーラントフィルム中に存在させることである。これは、環境湿度の存在および湿度に起因するばらつきにあまり依存することなく接着剤中のNCOの反応を完了させることができる。
【0012】
若干異なる組成の複数の層でエチレン系フィルムを構築することができる。シーラントフィルムは単層または多層であり得る。例えば、5層ポリエチレンフィルムは、活性水素(すなわち、酸素、窒素もしくはイオウに結合した水素)を有する官能基または無水物官能基がPU接着剤と直接接触する層の表面上もしくは表面付近に集中するように構築することができる。内層、すなわちPU接着剤と直接接触しない層は、シーラントフィルムを通した水分、空気、PAAまたはイソシアネートモノマー移行をさらに減少させるさらなる官能基またはバリヤを提供することができる。フィルムは加工(例えばスリップ剤)またはシーリングを改善するための添加剤または官能基も含んでよい。
【0013】
様々な官能基をシーラントフィルム中に組み入れて、イソシアネートと反応させることができるか、またはPAAと結合することができ、PAAが包装された食品中へ移行するのを防止することができる。そのような官能基としては、ヒドロキシル、アミン、無水物、カルボン酸などが挙げられる。我々は、無水物基を有するPE樹脂が、特に試験の第1日で観察されるPAAの減少に有効であることを見いだした。OH基はカルボン酸/無水物官能基のようにアミンと結合しないと予想されるが、OH基はラミネート抽出物で観察されるPAAの減少を加速するのに驚くほど充分に機能することが見いだされた。無水物およびOH官能基は、OH官能化エチレン系ポリマー樹脂と同様にフィルムと結合することができる(スキーム1、米国特許出願第2010/0143651A1号)。
【0014】
スキーム1。OH−g−EO官能性樹脂の調製
【化1】
【0015】
また、エチレンビニルアルコール(EVOH)樹脂はOH官能基を有するが、これらはビニルアルコール濃度が高すぎる場合はPE樹脂に充分に接着しない。しかしながら、EVOHおよびOH官能性ポリオレフィンのブレンドは、PEとともに共押出することができる層を形成し、ブレンドされた層はヒートシール剥離強度によって示されるようにPE層に接着することが見いだされた。これらのOH官能性樹脂は、抽出性PAAをはるかに急速に低下させる。これらのフィルムを溶媒系接着剤でラミネートさせる場合、初期接着性(green bond)(数分以内のラミネーションで測定されるT型剥離接着)が有意に改善される。
【0016】
実施形態
本発明は少なくとも2つの層A1およびB:
A1.ヒドロキシル(OH)官能化エチレン系ポリマーおよび/またはアミン官能化エチレン系ポリマーの少なくとも1つを含む組成物A1から形成される第1フィルム層A1;ならびに
B.少なくとも1つのイソシアネートを含む組成物Bから形成される第2フィルム層B
を含む多層フィルムを提供する。
【0017】
1つの実施形態において、層A1は層Bと接触している。
【0018】
1つの実施形態では、ヒドロキシル(OH)官能化エチレン系ポリマーおよび/または第2アミン官能化エチレン系ポリマーの少なくとも1つを含む組成物A1から形成される第1フィルム層A1。
【0019】
1つの実施形態では、少なくとも1つのヒドロキシル(OH)官能化エチレン系ポリマーを含む組成物A1から形成される第1フィルム層A1。
【0020】
1つの実施形態では、ヒドロキシル(OH)官能化エチレン系ポリマーは、ポリマー中に存在するヒドロキシル基の総モル基準で90モル%超、さらには95モル%超、さらには99モル%超の第1ヒドロキシル基を含む。
【0021】
1つの実施形態において、ヒドロキシル(OH)官能化エチレン系ポリマーは第2ヒドロキシル基を含まない。
【0022】
1つの実施形態において、OH官能化エチレン系ポリマーはイミド基をさらに含む。さらなる実施形態において、イミド基はヒドロキシルアルキルマレイミドである(例えば、スキーム1を参照のこと)。さらなる実施形態において、アルキルはC2〜C6アルキル、さらにはC2〜C5アルキル、さらにはC2〜C4アルキル、さらにはC2〜C3アルキルである。
【0023】
1つの実施形態において、OH官能化エチレン系ポリマーは、OH官能化エチレン/アルファ−オレフィンインターポリマー、さらにはOH官能化エチレン/アルファ−オレフィンコポリマーである。好適なα−オレフィンとしては、C3〜C10α−オレフィン、さらにはプロピレン、ブテン、ヘキセンおよびオクテンが挙げられる。
【0024】
1つの実施形態において、OH官能化エチレン系ポリマーは、ポリマーの重量基準で0.01重量%〜10重量%、さらには0.1重量%〜5.0重量%、さらには0.5重量%〜2.0重量%のOH基を含む。
【0025】
1つの実施形態において、ヒドロキシル(OH)官能化エチレン系ポリマーはヒドロキシル(OH)末端エチレン系ポリマーである。
【0026】
ヒドロキシル官能化エチレン系ポリマーは、本明細書中で記載するような2以上の実施形態の組み合わせを含み得る。
【0027】
1つの実施形態において、少なくとも1つのアミン官能化エチレン系ポリマー、さらなる実施形態では、少なくとも1つの第2アミン官能化エチレン系ポリマーを含む組成物A1から形成される第1フィルム層A1。
【0028】
1つの実施形態において、少なくとも1つのヒドロキシル(OH)官能化エチレン系ポリマーと少なくとも1つのアミン官能化エチレン系ポリマー、さらなる実施形態では、少なくとも1つの第2アミン官能化エチレン系ポリマーを含む組成物A1から形成される第1フィルム層A1。
【0029】
1つの実施形態において、組成物A1のOHおよび/またはアミン官能化エチレン系ポリマーは、0.87〜0.96g/ccの密度および0.1〜1,000g/10分のメルトインデックス(I)を有するエチレン系ポリマーから形成される。
【0030】
1つの実施形態において、組成物A1のOHおよび/またはアミン官能化エチレン系ポリマーは、エチレン/α−オレフィンインターポリマー、さらにはエチレン/α−オレフィンコポリマーから形成される。好適なα−オレフィンとしては、C3−C10α−オレフィン、さらにはプロピレン、ブテン、ヘキセンおよびオクテンが挙げられる。
【0031】
1つの実施形態において、組成物A1のOHおよび/またはアミン官能化エチレン系ポリマーはイミド基をさらに含む。
【0032】
1つの実施形態において、組成物A1はEVOHをさらに含む。
【0033】
1つの実施形態において、組成物A1は組成物A1の重量基準で50重量%未満のEVOHを含む。
【0034】
1つの実施形態において、組成物A1はエチレン系ポリマーをさらに含む。さらなる実施形態において、エチレン系ポリマーはエチレン/α−オレフィンインターポリマーである。さらなる実施形態において、組成物A1はエチレン/α−オレフィンコポリマーをさらに含む。好適なα−オレフィンとしては、C3−C10α−オレフィン、さらにはプロピレン、ブテン、ヘキセンおよびオクテンが挙げられる。
【0035】
本発明は、少なくとも2つの層A2およびB:
A2.無水物官能化エチレン系ポリマーを含む組成物A2から形成される第1フィルム層A2;および
B.少なくとも1つのイソシアネートを含む組成物Bから形成される第2フィルム層B
を含む多層フィルムも提供する。
【0036】
1つの実施形態において、層A2は層Bと接触している。
【0037】
1つの実施形態において、組成物A2の無水物官能化エチレン系ポリマーは、0.87〜0.96g/ccの密度および0.1〜1,000g/10分、さらには0.5〜200g/10分、さらには1〜50g/10分のメルトインデックス(I)を有するエチレン系ポリマーから形成される。
【0038】
1つの実施形態において、無水物官能化エチレン系ポリマーは、ポリマーの重量基準で1重量%〜15重量%、さらには1.5重量%〜10重量%、さらには2.0重量%〜5.0重量%の無水物基を含む。
【0039】
1つの実施形態において、組成物A2の無水物官能化エチレン系ポリマーは、エチレン/α−オレフィンインターポリマー、さらにはエチレン/α−オレフィンコポリマーから形成される。好適なα−オレフィンとしては、C3−C10α−オレフィン、さらにはプロピレン、ブテン、ヘキセンおよびオクテンが挙げられる。
【0040】
1つの実施形態において、組成A2の無水物官能化エチレン系ポリマーはイミド基をさらに含む。
【0041】
1つの実施形態において、組成物A2はEVOHをさらに含む。
【0042】
1つの実施形態において、組成物A2は組成物A2の重量基準で50重量%未満のEVOHを含む。
【0043】
1つの実施形態において、組成物A2はエチレン系ポリマーをさらに含む。さらなる実施形態において、エチレン系ポリマーはエチレン/α−オレフィンインターポリマーである。さらなる実施形態において、組成物A2はエチレン/α−オレフィンコポリマーをさらに含む。好適なα−オレフィンとしては、C3−C10α−オレフィン、さらにはプロピレン、ブテン、ヘキセンおよびオクテンが挙げられる。
【0044】
1つの実施形態において、第1フィルム層A2は外部フィルム層であり、無水物官能化エチレン系ポリマーは5g/10分以上のメルトインデックス(I2)を有する。さらなる実施形態において、無水物官能化エチレン系ポリマーは、5〜50g/10分、さらには5〜20g/10分、さらには5〜15g/10分のメルトインデックス(I2)を有する。
【0045】
無水物官能化エチレン系ポリマーは、本明細書中で記載される2以上の実施形態の組み合わせを含み得る。
【0046】
1つの実施形態において、フィルム層Bは2成分ポリウレタン(PU)接着剤を含む。
【0047】
1つの実施形態において、フィルム層Bは1成分PU接着剤を含む。
【0048】
1つの実施形態において、多層フィルムは少なくとも3つの層を含む。
【0049】
1つの実施形態において、フィルム層Bと接触するフィルム層Cをさらに含む多層。さらなる実施形態において、フィルム層Cは:ポリエチレンテレフタレート(PET)または金属ホイルのうちの1つから形成される。
【0050】
1つの実施形態において、本明細書中に記載される1以上の実施形態による多層フィルムは、層A1および層B、または層A2および層Bから本質的になる。
【0051】
1つの実施形態において、組成物A1はヒドロキシル官能化エチレン系ポリマーを含む。
【0052】
1つの実施形態において、組成物A1は第2アミン官能化エチレン系ポリマーを含む。
【0053】
1つの実施形態において、組成物A1はヒドロキシル官能化エチレン系ポリマーと第2アミン官能化エチレン系ポリマーとの両方を含む。
【0054】
1つの実施形態において、組成物A2は無水物官能化エチレン系ポリマーを含む。
【0055】
1つの実施形態において、多層フィルムは少なくとも3層を含む。
【0056】
1つの実施形態において、多層フィルムは少なくとも5層を含む。
【0057】
1つの実施形態において、多層フィルム層は、組成物A1から形成される層A1と、組成物A以外の組成物、例えば、ヒドロキシル官能化エチレン系ポリマーおよび第2アミン官能化エチレン系ポリマーの一方または両方を含まない組成物Aから形成される1以上のさらなる層とを含む。
【0058】
1つの実施形態において、多層フィルム層は、組成物A2から形成される層A2と、組成物A以外の組成物、例えばヒドロキシル官能化エチレン系ポリマーおよび第2アミン官能化エチレン系ポリマーの一方または両方を含む組成物Aから形成される1以上のさらなる層とを含む。
【0059】
1つの実施形態において、組成物A1のOHまたは第2アミン官能化エチレン系ポリマーは、HDPE、LDPE、LLDPE、均一に分枝した線状エチレン/α−オレフィンインターポリマー、均一に分枝した実質的に線状のエチレン/α−オレフィンインターポリマー、またはこれらのエチレン系ポリマーの2以上の組み合わせから形成される。
【0060】
1つの実施形態において、組成物A2の無水物官能化エチレン系ポリマーは、HDPE、LDPE、LLDPE、均一に分枝した線状エチレン/α−オレフィンインターポリマー、均一に分枝した実質的に線状のエチレン/α−オレフィンインターポリマー、またはこれらのエチレン系ポリマーの2以上の組み合わせから形成される。
【0061】
1つの実施形態において、組成物A1のOHまたはアミン(およびさらには第2アミン)官能化エチレン系ポリマーは、0.87〜0.96g/cc、または0.89〜0.95g/cc、または0.90〜0.94g/cc、または0.90〜0.93g/ccの密度;および0.1〜1,000g/10分、または0.1〜500g/10分、または0.5〜50g/10分、または1〜10g/10分、または2〜5g/10分のメルトインデックス(I)を有するエチレン系ポリマーから形成される。さらなる実施形態では、組成物A1のOHまたは第2アミン官能化エチレン系ポリマーは、エチレン/α−オレフィンインターポリマーから形成され、さらなる実施形態では、それはエチレン/α−オレフィンコポリマーから形成される。
【0062】
1つの実施形態において、組成物A1のOH官能化エチレン系ポリマーは、0.87〜0.96g/cc、または0.89〜0.95g/cc、または0.90〜0.94g/cc、または0.90〜0.93g/ccの密度;および0.1〜1,000g/10分、または0.1〜500g/10分、または0.5〜50g/10分、または1〜10g/10分、または2〜5g/10分のメルトインデックス(I)を有するエチレン系ポリマーから形成される。
【0063】
1つの実施形態において、組成物A2の無水物官能化エチレン系ポリマーは、0.87〜0.96g/cc、または0.89〜0.95g/cc、または0.90〜0.94g/cc、または0.90〜0.93g/ccの密度;および0.1〜1,000g/10分、または0.1〜500g/10分、または0.5〜50g/10分、または1〜10g/10分、または2〜05g/10分のメルトインデックス(I)を有するエチレン系ポリマーから形成される。さらなる実施形態では、組成物A2の無水物官能化エチレン系ポリマーは、エチレン/α−オレフィンインターポリマーから形成され、さらなる実施形態では、エチレン/α−オレフィンコポリマーから形成される。
【0064】
1つの実施形態において、組成物A1のOHまたはアミン(さらには第2アミン)官能化エチレン系ポリマーは、均一に分枝した実質的に線状のエチレン/α−オレフィン(「EAO」)インターポリマー、およびさらにコポリマーから形成される。さらなる実施形態において、インターポリマー、およびさらなるコポリマーは、官能化前に4〜70の加工レオロジー比(processing rheology ratio)(「PRR」)を有する。
【0065】
1つの実施形態において、組成物A1のOH官能化エチレン系ポリマーは、均一に分枝した実質的に線状のエチレン/α−オレフィン(「EAO」)インターポリマー、およびさらにはコポリマーから形成される。さらなる実施形態において、インターポリマー、およびさらなるコポリマーは、官能化前に4〜70の加工レオロジー比(「PRR」)を有する。
【0066】
1つの実施形態において、組成物A2の無水物官能化エチレン系ポリマーは、均一に分枝した実質的に線状のエチレン/α−オレフィン(「EAO」)インターポリマー、およびさらにはコポリマーから形成される。さらなる実施形態において、インターポリマー、およびさらなるコポリマーは、官能化前に4〜70の加工レオロジー比(「PRR」)を有する。
【0067】
1つの実施形態において、組成物A1のOHまたはアミン(さらには第2アミン)官能化エチレン系ポリマーはイミド基をさらに含む。
【0068】
1つの実施形態において、組成物A1のOH官能化エチレン系ポリマーはイミド基をさらに含む。
【0069】
1つの実施形態において、組成物A2の無水物官能化エチレン系ポリマーはイミド基をさらに含む。
【0070】
1つの実施形態において、組成物A1または組成物A2はEVOHをさらに含む。
【0071】
1つの実施形態において、EVOHは50重量%未満の組成物A1または組成物A2を含む。
【0072】
1つの実施形態において、フィルム層Bは、組成物Bから形成される層Bと、組成物B以外の組成物から形成される1以上のさらなる層とを含む。
【0073】
1つの実施形態において、組成物Bのイソシアネートは、芳香族、脂肪族、および脂環式ジイソシアネートの少なくとも1つである。
【0074】
1つの実施形態において、組成物Bのイソシアネートは、4,4’−異性体、2,4’−異性体、およびそれらの混合物、ならびにその様々な異性体を含むメチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)をはじめとするメチレンビス(フェニルイソシアネート)である。
【0075】
1つの実施形態において、多層フィルム構造はフィルム層Bと接触した層Cを含む。
【0076】
1つの実施形態において、層Cは、ポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなど;ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(PET);ナイロン;金属ホイルもしくは金属化プラスチックフィルム;またはナイロンを含む。
【0077】
本発明はまた、本明細書中で記載される1以上の実施形態による多層フィルムを含む物品も提供する。
【0078】
1つの実施形態において、先の実施形態の物品は食品容器である。さらなる実施形態において、物品は、食品の保持および/または保管のためのパウチである。
【0079】
1つの実施形態において、フィルム層A1またはフィルム層A2は腐敗しやすい材料に隣接している。
【0080】
1つの実施形態において、腐敗しやすい材料は食品または医薬品である。
【0081】
1つの実施形態において、多層フィルムは少なくとも3層を含み、ここで、1つの層は組成物A1または組成物A2から作製され、1つの層はプラスチックフィルム、金属ホイルまたは他の基体であり、2つの層は、PU接着剤を含む第3の層によって結合される。
【0082】
1つの実施形態において、多層フィルムは少なくとも5層を含み、ここで、1つの層は組成物A1または組成物A2から作製され、3つの層は独立してプラスチックフィルム(組成物Aから作製されるプラスチックフィルムであり得る)、金属ホイルまたは他の基体、および組成物Aから作製される層を他の層のいずれか1つと結合させる接着剤層である。
【0083】
多層フィルムは、本明細書中に記載するような2以上の実施形態の組み合わせを含み得る。
【0084】
本発明の物品は、本明細書中に記載されるような2以上の実施形態の組み合わせを含み得る。
【0085】
組成物A1は、本明細書中に記載されるような2以上の実施形態の組み合わせを含み得る。
【0086】
組成物A2は、本明細書中に記載されるような2以上の実施形態の組み合わせを含み得る。
【0087】
組成物Bは本明細書中に記載するような2以上の実施形態の組み合わせを含み得る。
【0088】
フィルム層A1は、本明細書中に記載されるような2以上の実施形態の組み合わせを含み得る。
【0089】
フィルム層A2は、本明細書中に記載されるような2以上の実施形態の組み合わせを含み得る。
【0090】
フィルム層Bは、本明細書中に記載されるような2以上の実施形態の組み合わせを含み得る。
【0091】
エチレン系ポリマー
好適なポリオレフィンポリマーの例としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、均一に分枝した線状エチレン/.アルファ.−オレフィンインターポリマーまたは均一に分枝した実質的に線状のエチレン/.アルファ.−オレフィンインターポリマー、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0092】
エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、典型的には、最終ポリマー中、重合性モノマーの総重量基準で2重量パーセント超、さらに特徴的には5重量パーセント超のコモノマー(複数可)組み入れを有する。コモノマー(複数可)組み入れの量は重合性モノマーの総重量基準で10重量パーセント超であり得、さらには15または20重量パーセント超であり得る。
【0093】
コモノマーとしては、限定されるものではないが、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、および1−オクテン、非共役ジエン、ポリエン、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、ヘキサジエン(例えば、1,4−ヘキサジエン)、オクタジエン、スチレン、ハロ置換スチレン、アルキル置換スチレン、テトラフルオロエチレン、ビニルベンゾシクロブテン、ナフテン系物質(naphthenics)、シクロアルケン(例えば、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン)、およびそれらの混合物が挙げられる。典型的にそして好ましくは、エチレンを1つのC〜C20α−オレフィンと共重合させる。好ましいコモノマーとしては、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテンおよび1−オクテンが挙げられ、さらに好ましくはプロペン、1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンが挙げられる。
【0094】
例示的インターポリマーとしては、エチレン/プロピレン(EP)コポリマー、エチレン/ブテン(EB)コポリマー、エチレン/ヘキセン(EH)コポリマー、エチレン/オクテン(EO)コポリマー、エチレン/α−オレフィン/ジエン(EAODM)インターポリマー、例えばエチレン/プロピレン/ジエン(EPDM)インターポリマーおよびエチレン/プロピレン/オクテンターポリマーが挙げられる。好ましいコポリマーとしては、EP、EB、EHおよびEOポリマーが挙げられる。
【0095】
本発明の均一に分枝した線状エチレン/α−オレフィンインターポリマーまたは均一に分枝した実質的に線状のエチレン/α−オレフィンインターポリマーは、特徴的には0.01g/10分〜30g/10分、さらに特徴的には0.1g/10分〜20g/10分、そしてなお一層特徴的には0.1g/10分〜15g/10分のメルトインデックス(「I」)を有する。
【0096】
1つの実施形態において、エチレン系ポリマーは、線状(短鎖分枝または分枝なし)エチレン/α−オレフィンインターポリマーと比較して、長鎖分枝を含む均一に分枝した実質的に線状のエチレン/α−オレフィン(「EAO」)インターポリマーである。「長鎖分枝」(「LCB」)は、α−オレフィンをエチレン/α−オレフィンポリマー骨格中に組み入れることに起因する、短鎖の鎖長を超える鎖長を意味する。別の実施形態において、エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、インターポリマー骨格内の長鎖分枝を形成し得る少なくとも1つの触媒から調製される。
【0097】
LCBポリマーは米国特許第5,272,236号で開示され、ここで、LCB度は0.01LCB/1000炭素原子から3LCB/1000炭素原子であり、そして触媒は束縛構造触媒である。P. Doerpinghaus and D. Baird, in The Journal of Rheology, 47(3), pp 717−736 May/June 2003, “Separating the Effects of Sparse Long−Chain Branching on Rheology from Those Due to Molecular Weight in Polyethylenes,”によると、フリーラジカル法、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)を調製するために使用されるものによって、非常に高レベルのLCBを有するポリマーが産生される。例えば、Doerpinghaus and Bairdの表I中の樹脂NA952はフリーラジカル法によって調製されるLDPEであり、表IIによると、3.9LCB/1000炭素原子を含む。平均レベルのLCBを有すると考えられる、The Dow Chemical Company (Midland, Mich., USA)から入手可能なエチレン/.アルファ.−オレフィン(エチレン−オクテンコポリマー)は、樹脂Affinity PL1880およびAffinity PL1840を含み、それぞれ0.018および0.057LCB/1000炭素原子を含む。
【0098】
インターポリマー粘度を使用してポリマー中のLCBの推定レベルを算出する加工レオロジー比(「PRR」)などの、ポリマー中のLCB度を規定するために使用できる様々な方法がある。
【0099】
インターポリマー粘度は、0.1〜100ラジアン/秒(rad/sec)の範囲内の剪断速度および190℃にて窒素雰囲気下で、動的機械的分光計(例えばRheometricsから得られるRMS−800またはARES)を使用し、0.1〜100rad/secで行われる動的掃引下でポアズ(ダイン・秒/平方センチメートル(d−sec/cm))で都合よく測定される。0.1rad/secおよび100rad/secでの粘度はそれぞれV0.1およびV100として表すことができ、両者の比はRRと呼ばれ、V0.1/V100として表される。
【0100】
ある用途では、エチレン/α−オレフィンインターポリマーは4〜70、好ましくは8〜70、さらに好ましくは12〜60、なお一層好ましくは15〜55、そして最も好ましくは18〜50のPRRを有する。PRR値は、式:
PRR=RR+[3.82−インターポリマームーニー粘度(125℃でのML1+4)]×0.3(式1)
によって算出され;PRR測定は米国特許第6,680,361号で記載されている。
【0101】
本発明の別の実施形態では、特にポリオレフィンの改善された溶融強度を必要とする適用について、エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、5cN以上、特徴的には6cN以上、さらに特徴的には7cN以上の溶融強度(MS)を有する。ここで用いられる溶融強度は、0.24センチメートル/秒(cm/sec)の割合で1cm/secの初期速度からフィラメントを加速する1対のニップローラーによってフィラメントを延伸させつつ、33秒の逆数(sec−1)の一定剪断速度でキャピラリーレオメータダイから押し出されたポリマー溶融物の溶融フィラメントで測定される最大張力(cN)である。溶融フィラメントは、好ましくは、Instronキャピラリーレオメータのバレル中に充填された10グラム(g)のポリマーを加熱し、ポリマーを190℃で5分(min)間平衡化させ、次いで2.54cm/分のピストン速度にて、0.21cmの直径および4.19cmの長さを有するキャピラリーダイを通して押し出すことによって生成される。張力は、好ましくは、フィラメントがキャピラリーダイから出る地点のすぐ下10cmにニップローラーがあるように配置されたGoettfert Rheotens溶融張力試験装置で測定する。
【0102】
エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、本明細書中で記載される2以上の実施形態の組み合わせを含み得る。
【0103】
エチレン/α−オレフィンコポリマーは、本明細書中で記載される2以上の実施形態の組み合わせを含み得る。
【0104】
官能化エチレン系ポリマー
組成物Aは、ヒドロキシル官能化エチレン系ポリマー、第2アミン官能化ポリマーおよび無水物官能化エチレン系ポリマーまたはそれらの組み合わせを含む。官能化エチレン系ポリマーは、無水物、ヒドロキシルおよび/または第2アミン官能基でグラフトされた上述のエチレン系ポリマーであり得るか、またはエチレン由来の単位とヒドロキシルおよび/またはアミン官能基を含むコモノマーとを含むコポリマーであり得る。
【0105】
1つの実施形態において、ヒドロキシル官能化エチレン系ポリマー(少なくとも1つのヒドロキシル基を含む)としては、限定されるものではないが、以下の化合物が挙げられる:無水マレイン酸、ポリビニルアルコール(PVA)、およびエチレンビニルアルコール(EVOH)でグラフトされたエチレン系ポリマー由来のヒドロキシル官能性イミド。
【0106】
1つの実施形態において、官能化エチレン系ポリマーは下記構造I:
【0107】
【化2】
(式中、波線は分枝していてもしていなくてもよいポリマー鎖であり、Lは連結基であり、Xはヒドロキシル基および第2アミン基から選択される官能基である)で示される。
【0108】
1つの実施形態において、官能化エチレン系ポリマーは下記構造II:
【0109】
【化3】
(式中、波線は分枝していてもしていなくてもよいポリマー鎖であり、YおよびY’はそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシル基、およびアミン基から選択される基であり、YまたはY’の少なくとも1つはヒドロキシル基および第2アミン基である)で示される。
【0110】
1つの実施形態において、官能化エチレン系ポリマーは下記構造III:
【0111】
【化4】
(式中、波線は分枝していてもしていなくてもよいポリマー鎖であり、Y、Y’およびY”はそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシル基、および第2アミン基から選択され、Y、Y’またはY”の少なくとも1つはヒドロキシル基である)で示される。
【0112】
官能化エチレン系ポリマーは、以下のものを含むポリマーである:(a)過半重量パーセントの重合したエチレン、すなわちエチレン由来のモノマー単位であり、ここで重量パーセントは官能化ポリマーの重量に基づく、および(b)少なくとも1つの重合したコモノマーまたは反応した官能化剤であって、それぞれ少なくとも1つの官能基を含むもの。
【0113】
官能化エチレン系ポリマーは、官能化部分として機能する極性基、すなわちヒドロキシル基(例えば、加水分解されたPE−コ−EVA)と第2アミンとを含む。
【0114】
1つの実施形態において、官能化エチレン系ポリマーは、0.1モル/kg〜8モル/kg、または0.1モル/kg〜5モル/kg、または0.1モル/kg〜3.5モル/kgのヒドロキシル官能基(ポリマーのキログラム数に基づく)を含む。
【0115】
モル/kgで表された官能基の量は、ポリマー1キロあたりの官能基の重量(ポリマー中の官能基のモル数から決定される;例えば滴定法)を官能基の分子量で割ることによって算出される。
【0116】
官能基の量はまた、ポリマー1キロあたりの重合したモノマー単位もしくは反応した官能化剤(またはその反応生成物、例えば加水分解産物)の重量を重合したモノマー単位もしくは反応した官能化剤(またはその反応生成物、例えば加水分解産物)の分子量で割り、続いて重合したモノマー単位または反応した官能化剤(またはその反応生成物、例えば加水分解産物)あたりの官能基の数を乗じることによって算出することもできる。
【0117】
1つの実施形態において、官能化エチレン系ポリマーは、0.86〜0.96g/cc、または0.87〜0.95g/cc、または0.88〜0.94g/ccの密度を有する。
【0118】
1つの実施形態において、官能化エチレン系ポリマーは、0.5g/10分〜50g/10分、または1g/10分〜30g/10分のメルトインデックス(I:2.16kg/190℃)を有する。
【0119】
1つの実施形態において、官能化エチレン系ポリマーはPVAまたはEVOHである。
【0120】
1つの実施形態において、官能化エチレン系ポリマーは、ヒドロキシルまたはアミン含有化合物でグラフトされたポリエチレン、例えば限定されるものではないが、ヒドロキシルグラフト化エチレン系ポリマー(例えばベースポリマーとして使用されるENGAGE 8407)およびアミングラフト化エチレン系ポリマー(例えばベースポリマーとして使用されるENGAGE 8407)である。
【0121】
好適な市販の官能性オレフィ系ポリマーとしては、Kurarayから入手可能なEVAL F101(EVOH)ポリマーが挙げられる。
【0122】
官能化エチレン系ポリマーは、本明細書中に記載される2以上の好適な実施形態の組み合わせを含み得る。
【0123】
添加剤
1つの実施形態において、本発明の組成物は少なくとも1つの添加剤を含む。好適な添加剤としては、限定されるものではないが、フィラー、抗酸化剤、UV安定剤、発泡剤、難燃剤、着色剤または顔料、ブロッキング防止剤、スリップ剤、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0124】
抗酸化剤としては、限定されるものではないが、ヒンダードフェノール;ビスフェノール;およびチオビスフェノール;置換ヒドロキノン;トリス(アルキルフェニル)ホスファイト;ジアルキルチオ−ジプロピオネート;フェニルナフチルアミン;置換ジフェニルアミン;ジアルキル、アルキルアリール、およびジアリール置換p−フェニレンジアミン;モノマーおよびポリマージヒドロキノリン;2−(4−ヒドロキシ−3,5−t−ブチルアニリン)−4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン;ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル−s−トリアジン;2,4,6−トリス(n−1,4−ジメチルペンチル−フェニレン−ジアミノ)−1,3,5−トリアジン;ならびにトリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートが挙げられる。
【0125】
ポリウレタン
組成物Bは少なくとも1つのイソシアネートを含む。1つの実施形態において、組成物Bは少なくとも1つのイソシアネートを含む熱硬化性ポリウレタンを含む。本発明のポリウレタンは、本来熱硬化性であることを除いてその配合に関して制限はない。米国特許出願第2010/0143651A1号は、少なくとも1つのアミン、ヒドロキシル、イミド無水物またはカルボン酸官能化ポリマーとのポリオレフィブレンドがポリオレフィンと熱可塑性ポリウレタン(TPU)との間の接着性を改善することを教唆する。熱可塑性ポリウレタンは実質的に2官能性成分、例えば、有機ジイソシアネートおよび活性水素含有基において実質的に2官能性である成分から調製される。しかしながら、場合によって2より高い官能価を有する少量の成分を用いてもよい。さらに、ほぼ化学量論当量(stoichiometric equivalent)のイソシアネートおよびヒドロキシル基を使用してTPUを作成する(Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, Wiley, 1988, Vol. 13, p. 275−276;)。反応性化学作用(reactive chemistry)はTPUが作成される際に起こる。したがって、それらは未反応イソシアネートをほとんどまたは全く含まない。TPUは室温で固体であるが、加熱すると柔軟かつ加工可能になる。それらを粉砕し、射出成形(Kolycheck E. G.;米国特許第3,493,634号)または加熱により軟質フィルムとしてキャストしてもよい。(Agger, R. T.; Taylor J. R., and Cosby A. H.米国特許第5,068,143号)。
【0126】
TPUは分枝または架橋がほとんどない実質的に線状のポリマーであるので、それらは概して耐熱性、耐薬品性および耐溶媒性が低い。一方、熱硬化性ポリウレタンは多くの場合、2よりも多い官能価を有する成分を含み、多くの場合、ポリオールまたは他の反応性官能基に対して超過のイソシアネートを用いる。熱硬化性ポリウレタンを加熱下で粉砕または成形することはできない。それらはより汎用性であり、良好な耐熱性および耐薬品性を有するように処方することができる(Doyle, E. N.; The Development and Use of Polyurethane Products, McGraw−Hill, 1971, p. 323,)。
【0127】
パッケージに柔軟性フィルムをラミネートするために使用されるポリウレタン接着剤は、概して熱、水、油、水、弱酸、溶媒などに対する耐性を必要とする。したがって、それらは熱硬化性ポリウレタンである。熱硬化性ポリウレタンラミネート接着剤を低粘度液体(25℃で250〜30,000MPa)としてニートで、または酢酸エチルなどの溶媒中で施用する。それらは通常、1成分が多官能性イソシアネートまたはNCO末端プレポリマーであり、第2成分が多官能性ポリオールである2成分系である。イソシアネートと反応するアミンまたは他の基をある程度用いることができる。
【0128】
高分子量ポリウレタンを構築する硬化反応は、2つの接着剤成分がフィルム基体に施用され、そして2枚のフィルムがあわせて挟まれた後に起こる。ヒドロキシルに対して実質的に超過のイソシアネートが存在するように商業的接着剤を処方する。したがって、水と過剰のイソシアネートとの反応およびその後のアミンおよび尿素架橋の形成は硬化プロセスの必須部分である。芳香族イソシアネートはパッケージ接着剤で広く使用されている。硬化を完了するために必要な時間で、フィルム層B中のイソシアネートと水との反応から形成される芳香族アミンはポリオレフィンシーラント(フィルム層A)を通して移動し、パッケージされた成分を有害な第1芳香族アミン(PAA)で汚染する。先に記載したように、ポリオレフィンシーラント層中にOH官能基が存在することは、硬化反応を完了するための時間および検出されるPAAの減少に驚くほど有効であった。
【0129】
好ましいポリウレタンMOR−FREE 698Aおよび共反応物質(co−reactant)MOR−FREE C−79(100:50)(Rohm and Haasから入手可能な2パート無溶媒PU接着剤)、およびADCOTE 536A(The Dow Chemical Companyから入手可能なイソシアネート成分を含む2成分溶媒系接着剤)。
【0130】
実施形態の実施で使用されるブレンドのポリウレタン成分は、記載するような2以上の好適な実施形態の組み合わせを含み得る。
【0131】
所望により、ポリウレタンは調製の適切な段階で、通常、ポリウレタン接着剤とあわせて用いられる、顔料、フィラー、潤滑剤、安定剤、抗酸化剤、着色剤、難燃剤、触媒または接着促進剤などの添加剤を組み入れることができる。
【0132】
多層フィルム
本発明の多層フィルムは上述のように少なくとも2つの層を含む。1つの実施形態において、多層フィルムは少なくとも3つの層:接着剤層Bによって基体層Cに結合されたフィルム層A1またはA2を含む。
【0133】
1つの実施形態において、フィルム層A1は、OHまたはアミン官能性エチレン系ポリマーとブレンドされたエチレン系ポリマーを含む組成物A1から形成される。接着剤層Bは、少なくとも1つのイソシアネート基を含有するPU接着剤を含む。基体層Cは、PU接着剤が接着するどんなものでも、例えばプラスチックフィルム、金属ホイル、紙などを含む。
【0134】
1つの実施形態において、フィルム層A2は、無水物官能性エチレン系ポリマーとブレンドされたエチレン系ポリマーを含む組成物A2から形成される。接着剤層Bは、少なくとも1つのイソシアネート基を含むPU接着剤を含む。基体層Cは、PU接着剤が接着するどんなものでも、例えばプラスチックフィルム、金属ホイル、紙などを含む。
【0135】
定義
特に記載があるか、文脈から暗示されるか、または当該技術分野で慣例的である場合を除いて、全ての部およびパーセンテージは重量基準であり、全ての試験方法は本願の出願日現在で最新のものである。米国特許実務のために、任意の引用される特許、特許出願または刊行物の内容は、特に合成技術、定義(本願で具体的に提供される定義と矛盾しない程度まで)、および当該技術分野での一般常識の開示に関して、それらの全体が参照により組み込まれる。(またはその等価な米国版はしたがって参照により組み込まれる)。
【0136】
「組成物」、「配合物」および類似の用語は、2以上の成分の混合物またはブレンドを意味する。フィルム層が作製される材料の混合物またはブレンドに関連して、組成物は、混合物の全成分、例えばポリマー添加剤、フィラーなどを含む。
【0137】
「ポリマー」および類似の用語は、同一または異なる種類であるか否かによらず、モノマーを重合することによって調製される化合物を意味する。ポリマーという総称は、したがって、ホモポリマーという用語を包含する(微量の不純物がポリマー構造中に組み込まれる可能性があるという理解のもとで、ただ1種のモノマーから調製されるポリマーを指すために用いられる)。
【0138】
「インターポリマー」および類似の用語は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合によって調製されるポリマーを意味する。インターポリマーという総称は、したがって、コポリマー(2つの異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを指すために用いられる)、および2より多い異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを包含する。
【0139】
「エチレン系ポリマー」および類似の用語は、重合形態で、過半量のエチレンモノマー(ポリマーの重量基準で)を含み、場合によって1以上のコモノマーを含み得るポリマーを意味する。
【0140】
「エチレン/α−オレフィンインターポリマー」などの用語は、重合形態で、過半量のエチレンモノマー(インターポリマーの重量基準)と、少なくとも1つのα−オレフィンとを含むインターポリマーを意味する。
【0141】
「エチレン/α−オレフィンコポリマー」および類似の用語は、ただ2つのモノマー種として、重合形態で、過半量のエチレンモノマー(コポリマーの重量基準)、およびα−オレフィンを含むコポリマーを意味する。
【0142】
「官能化ポリマー」および類似の用語は、共有結合によって連結された、少なくとも1つのヘテロ原子を含む化学基(化学置換基)を含むポリマーを意味する。ヘテロ原子は、炭素または水素でない原子として定義される。一般的なヘテロ原子は、酸素、窒素、イオウ、およびリンである。
【0143】
「官能基」および類似の用語は、少なくとも1つのヘテロ原子を含む化学置換基を意味する。
【0144】
「官能基を含む重合したモノマー単位(たとえば、共重合したアクリル酸、および共重合した無水マレイン酸)」および類似の用語は、重合反応で用いられ、前記定義の官能基を含む、重合した官能性コモノマーからなる(コ/インター)ポリマー中の化学単位を意味する。官能基は、重合反応中または後に修飾されてもよい(たとえば、無水マレイン酸単位を加水分解してジカルボン酸を形成する)。
【0145】
「官能基を含む反応した官能化剤(例えば、ポリマーにMAHグラフトされた末端アミノ基)」および類似の用語は、前記定義のような、重合したモノマー単位の一部でなかった官能基を含む化学単位を意味する。これは、グラフトコポリマー、たとえばPE−g−MAHの無水コハク酸単位、および末端官能化(コ)ポリマー、たとえばポリオキシアルキレンアミンの末端アミノ基を含む。官能基は、官能化反応中または後に修飾されてもよい(たとえば:無水マレイン酸単位を加水分解してジカルボン酸を形成する)。
【0146】
「イソシアネート含有化合物」および類似の用語は、少なくとも1つのイソシアネート基を含む有機化合物またはポリマーを意味する。
【0147】
「ヒドロキシル官能化エチレン系ポリマー」および類似の用語は、エチレン系ポリマーと、少なくとも1つの化合物が少なくとも1つのヒドロキシル基を含む1以上の他の化合物とから形成されるポリマーを意味する。
【0148】
「アミン官能化エチレン系ポリマー」および類似の用語は、エチレン系ポリマーと、少なくとも1つの化合物がアミン基を含有する1以上の他の化合物とから形成されるポリマーを意味する。
【0149】
「第2アミン官能化エチレン系ポリマー」および類似の用語は、エチレン系ポリマーと、少なくとも1つの化合物が第2アミン基を含有する1以上の他の化合物とから形成されるポリマーを意味する。
【0150】
「無水物官能化エチレン系ポリマー」および類似の用語は、エチレン系ポリマーと、少なくとも1つの化合物が無水物基を含有する1以上の他の化合物とから形成されるポリマーを意味する。
【0151】
「腐敗しやすい材料」および類似の用語は、腐敗もしくは崩壊する可能性がある、または時間とともにその活性成分の1以上の活性が減少する有機物を意味する。
【0152】
「含む」、「包含する」、「有する」およびそれらの派生語は、それが具体的に開示されているか否かを問わず、任意のさらなる成分、ステップ、手順の存在を排除することを意図しない。誤解を避けるために、「含む」という用語の使用によって記載されるすべての組成物は、特に記載のない限り、ポリマーであるか否かを問わず、任意のさらなる添加剤、アジュバントまたは化合物を含み得る。対照的に、「〜から本質的になる」という用語は、操作性に必須でないものを除いて、任意の他の成分、ステップまたは手順を後に続く記載の範囲から除外する。「〜からなる」という用語は、具体的に説明または列挙されていない成分、ステップまたは手順を除外する。
【0153】
試験方法
密度
ポリマー密度をASTM D−792にしたがって測定する。
【0154】
メルトインデックス
エチレン系ポリマーのメルトインデックス(I)をASTM D−1238、条件190℃/2.16kgにしたがって測定する。エチレン系ポリマーのメルトインデックス(I)をASTM D−1238、条件190℃/5.0kgにしたがって測定する。エチレン系ポリマーのメルトインデックス(I10)をASTM D−1238、条件190℃/10.0kgにしたがって測定する。エチレン系ポリマーの高負荷メルトインデックス(I21)をASTM D−1238、条件190℃/21.0kgにしたがって測定する。
【0155】
本出願は、例えば以下の発明を提供する。
[1] 少なくとも2つの層A1およびB:
A1.ヒドロキシル(OH)官能化エチレン系ポリマーおよび/またはアミン官能化エチレン系ポリマーの少なくとも1つを含む組成物A1から形成される第1フィルム層A1、および
B.少なくとも1つのイソシアネートを含む組成物Bから形成される第2フィルム層
を含む多層フィルム。
[2] 前記層A1が層Bと接触している、[1]に記載の多層フィルム。
[3] 組成物A1から形成される前記第1フィルム層A1が少なくとも1つのヒドロキシル(OH)官能化エチレン系ポリマーを含む、[1]または[2]のいずれかに記載の多層フィルム。
[4] 組成物A1から形成される前記第1フィルム層A1が少なくとも1つのヒドロキシル(OH)官能化エチレン系ポリマーと少なくとも1つのアミン官能化エチレン系ポリマーとを含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の多層フィルム。
[5] 組成物A1の前記OHおよび/またはアミン官能化エチレン系ポリマーがエチレン/α−オレフィンインターポリマーから形成される、[1]〜[4]のいずれかに記載の多層フィルム。
[6] 組成物A1の前記OHおよび/またはアミン官能化エチレン系ポリマーがイミド基をさらに含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の多層フィルム。
[7] 組成物A1がEVOHをさらに含む、[1]〜[6]のいずれかに記載の多層フィルム。
[8] 少なくとも2つの層A2およびB:
A2.無水物官能化エチレン系ポリマーを含む組成物A2から形成される第1フィルム層A2;および
B.少なくとも1つのイソシアネートを含む組成物Bから形成される第2フィルム層B
を含む、多層フィルム。
[9] 前記層A2が層Bと接触している、[8]に記載の多層フィルム。
[10] 組成物A2の前記無水物官能化エチレン系ポリマーがエチレン/α−オレフィンインターポリマーから形成される、[8]〜[9]のいずれかに記載の多層フィルム。
[11] 組成物A2の前記無水物官能化エチレン系ポリマーがイミド基をさらに含む、[8]〜[10]のいずれかに記載の多層フィルム。
[12] 組成物A2がEVOHをさらに含む、[8]〜[11]のいずれかに記載の多層フィルム。
[13] フィルム層Bが2成分ポリウレタン(PU)接着剤を含む、[1]〜[12]のいずれかに記載の多層フィルム。
[14] フィルム層Bと接触するフィルム層Cをさらに含む、[1]〜[13]のいずれかに記載の多層フィルム。
[15] [1]〜[14]のいずれかに記載の多層フィルムを含む物品。

以下の実施例は本発明を例示するが、明示的にも暗示的にも制限しない。
【0156】
実験
I.材料
以下の樹脂およびフィルムを実施例で使用した。
【0157】
ADCOTE 550/Coreactant F(The Dow Chemical Co.)とともにソフトラミネーショングレードAMCORアルミホイル(厚さ9μm)にラミネートされたポリエチレンテレフタレート(PET、厚さ12ミクロン(μm))から作成されたプレラミネートフィルム。このラミネート構造はAMPAC Company, Cary, ILから入手した。
【0158】
DOWLEX 5056NGポリエチレン樹脂は、The Dow Chemical Companyから入手可能な、0.919g/ccの密度および1.1g/10分のIを有する線状低密度PEである。
【0159】
ELITE 5400Gは、The Dow Chemical Companyから入手可能な、0.92g/ccの密度および1g/10分のIを有する二峰性エチレン/オクテンコポリマーである。
【0160】
OH−g−EOは、米国特許出願第2010/0143651号で記載されているような、0.88g/ccの密度および1g/10分のIを有する第1ヒドロキシル官能性エチレン系ポリマーである。
【0161】
エチレンビニルアルコール(EVOH)は、Kuraray, Japanから得られるEVAL F101であり;32モル%のエチレンビニルアルコールコポリマーを含有する。
【0162】
ポリウレタン接着剤:それぞれThe Dow Chemical Company)から入手可能な(PU2A)MOR−FREE 698A(イソシアネート末端成分)および(PU2B) MOR−FREE C79(ヒドロキシル末端成分)。
【0163】
LOTADER 4201は、9g/10分(190℃、2.16Kg)のIおよび0.94g/cmの密度を有するエチレン、ブチルアクリレート(6%)および無水マレイン酸(MAH、3.8%)のランダムターポリマーである。
【0164】
II.プレラミネート(PE−フィルム)−代表的手順
ELITE 5400GおよびOH−g−EOおよび/またはEVOH)をあるブレンド比で乾式ブレンドすることによって、PEフィルム(2層フィルム)用の組成物Aを作製した。下記フィルムサンプルを、小インフレーションフィルムラインを使用するインフレーションフィルム押出によって調製した。ラインは約0.033”ダイギャップを有する直径2”のインフレーションフィルムダイを備える。
【0165】
Colinキャストフィルムラインを使用することによりDOWLEX 5056NGおよびLOTADER 4210(10重量%)を乾式ブレンドすることによって、組成物Aから得られるPEフィルム(単層フィルム)を作製した。フィルムを200〜220℃の範囲の溶融温度でキャストした。フィルム厚さは50マイクロメートルであった。
【0166】
III.ラミネートの調製−代表的手順
PU接着剤ラミネーション層構造およびラミネーション条件を後述する。
【0167】
【表A】
【0168】
接着剤を酢酸エチルで約40%固形分に希釈した。巻き線ロッド(wire wound rod)を使用して、接着剤を表1で記載するプレラミネートフィルムのシート(約20×30cm)のアルミホイル側に施用した。幅約5cm、長さ20cmの紙片をシートの中央に置いて非ラミネート条片部分を提供し、剥離試験のためのフィルムを分離した。接着剤を約2.0g/mのコーティング重量で施用した。ポリエチレンフィルム(上記組成物A)をコロナ処理し、次いでスチールニップロールで約180°F(82℃)にてプレスすることによって接着剤でコーティングされたアルミホイルにラミネートした。シートを2枚の鋼板間に置き、乾燥窒素でフラッシュした密封容器中で保存した。下表で特定される間隔で、幅15mmの3つの条片を切り出し、Thwing Albert試験装置を10cm/分の分離速度で用いるASTM D1876(ASTM International, West Conshohocken, PA, USA)を使用して、T剥離粘着性を試験した。
【0169】
PET/Alプレラミネートを上側(固定)アゴに保持させ、実験フィルムを下側(移動)アゴに保持させた。この試験は、ポリオレフィン層(組成物A)をプレラミネートのアルミホイルから引きはがすために必要な力を測定する。力は液体接着剤が硬化するにつれ増加する。接着剤が硬化し、充分な結合力を発現すると、ポリオレフィンフィルムはホイルから剥離または分離しないが、加えられた力のためにポリオレフィンフィルムは伸びるかまたは破損する。以下の実施例におけるT型剥離接着データは、3つのサンプルの平均である。
【0170】
ヒートシール接着をサンプルが少なくとも7日間硬化した後に測定した。この試験は、1”(25.4mm)の条片を切り出し、条片の端部をSencorp 12ASL/1とあわせてヒートシールすることを含む。PE系ラミネートのシーリング条件は175℃で2.8バールであった。
【0171】
Instron model 5569によって条片をバラバラにする。結果はシールの強度を示し、損傷モードは、接着剤がシーリング条件に耐えるために充分な接着性および耐熱性を有する(PEが剥離することなく破損する)か否かを示す。
【0172】
IV.パウチ調整およびPAAレベル測定
模擬食品中の第1芳香族アミン(PAA)、たとえばMDA(メチレンジフェニルジアミン)およびTDA(トルエンジアミン/メチルフェニレンジアミン)のレベルを、PAAの濃度を比色分析によって測定することができるようにPAAをジアゾ化することによって分析した。試験溶液中に存在する芳香族アミンを塩化物溶液中でジアゾ化し、続いてN−(1−ナフチル)−エチレンジアミン二塩酸塩とカップリングさせて、すみれ色溶液を得た。固定相抽出カラムで色の濃縮を行う。PAAの量を550nmの波長で測光的に決定する。PAAの濃度は、「アニリン塩酸塩当量」として知られ、パウチの内面(シーラント層)4dmの面積あたり100ml(または50ml)の模擬食品あたりのアニリン塩酸塩のマイクログラム数として報告する。
【0173】
ラミネートを上述のようにして調製した。ラミネートの中央部分(幅)から約「28cm×16.3cm」の条片を切り出すことによって各パウチを形成した。各条片を折りたたんで「14cm×16.3cm」の表面部分を形成し、折りたたまれた条片の各縦方向開放端部に沿って約1cmの端部をヒートシールして、ヒートシールされた端部を除いて「14cm×14.3cm」のパウチを形成した。内層から外層までのパウチ壁のフィルム構造は次のとおりであった:多層フィルム構造(内側から外側へ):(PE−フィルム/PU接着剤/プレラミネート(Al−接着剤−PET)。端部をヒートシーリングするために使用した装置はSENCORP 12ASL/1であった。PE系ラミネートのシーリング条件は160℃で2.8バールであった。
【0174】
それぞれが約14.0cm×14.3cmの内面部分を有する4つのパウチ(2つのブランクと2つの試験パウチ)をこの実験で各々の発明のフィルムとして使用した。各々のラミネートの形成から2日後に各パウチを形成した。各日について2つの試験パウチおよび1日あたり2つのブランクパウチを各ラミネートから調製した。パウチを形成する前に、ラミネートを室温にて周囲雰囲下で保存した。各パウチを100mlの3%酢酸水溶液(すなわち、模擬食品)で満たした。これらのパウチを、70℃にて空気循環オーブン中2時間保存した。試験溶液(パウチの内容物)を室温に冷却した後、100mlの試験溶液を12.5mlの塩酸溶液(1N)および2.5mlの亜硝酸ナトリウム溶液(100mlの溶液あたり0.5g)と混合し、そして内容物を10分間反応させた。硫酸アンモニウム(5ml;100mlの水溶液あたり2.5g)を添加し、10分間反応させた。カップリング試薬(5ml;100gの水溶液あたり1gのN−(1−ナフチル)−エチレンジアミン塩酸塩)を添加し、120分間反応させた。各添加後、結果として得られる混合物をガラス棒で撹拌した。「ブランクパウチについて、100mlの試験溶液を、亜硝酸ナトリウムを除く前述の誘導試薬と混合した。ODS固相抽出カラム(ODS逆相C18エンドキャップ)を通して溶出させることによって溶液を濃縮し、そして消光を、EVOLUTION 300 Spectrophotometer(Thermo−Fisher Companyから得られる)を使用して、550nmで測定した。まず12mlのメタノールを使用し、次いで12mlの溶出溶媒、次いで12mlの塩酸水溶液(0.1N)を使用してカラムを調整した。3mlの塩酸水溶液(0.1N)で2回あらかじめすすいだガラスビーカーを使用して各誘導サンプルをカラムに添加した。カラムを1分間真空(約127mmHg)吸引して、すべてのリンスを除去した。次いで5mlの溶出溶媒をカラムに添加し、10mlの溶離液が集められるまでこのステップを繰り返した。溶離液の消光(吸収)を5cmキュベット中550nmにて測定した。PAAの濃度を測定するために、反応生成物の消光を、5cmキュベット中550nmにて試薬ブランク溶液および既知濃度のアニリン塩酸塩を有する一連の標準に対して測定し、これらは並行して処理した。
【0175】
実施例1
共反応物質ADCOTE536Bの存在下および非存在下で、市販の接着剤ADCOTE 536Aでラミネートを作製した。第1試験セットの結果を表1に示す。サンプル1〜7は、ポリオール共反応物質536BなしでADCOTE 536A(NCO末端)のみを使用して作製した。目的は、フィルム中の官能基が乾燥雰囲気中で硬化に役立つかどうかを調べることであった。官能性フィルムを有するサンプル3、5および7は、官能性添加剤を含まない対照フィルム1よりも高い初期接着性を示した。ポリエチレンフィルムの第2層中のEVOHの量が50%以上である場合(サンプル2、3、および4)、または共押出された層が100%OH−g−EOである場合(サンプル6)、共押出されたポリエチレンフィルムの2層はT剥離またはヒートシール試験を実施するとバラバラになった。接着剤は、ポリエチレンフィルムの1つの層をアルミホイルに接着させたが、共押出された層は分離した。フィルム2〜4および6について初期段階での低接着力は、接着剤の障害ではなくポリエチレンの共押出された層の分離によるものであった。OH−g−EOのブレンド(サンプル5)は試験の間中まとまっていたが、PEはT剥離試験中にホイルから剥がれるか、またはヒートシール試験中にフィルムが破れた(破損した)。ブレンドOH−EO/ポリエチレン/EVOH(サンプル7)は剥離試験を実施した場合、PE層が若干分離したが、分離はさらに高い値で起こり、ヒートシール接着は保持された(PEフィルムは剥がれるのではなく、むしろ破れた)。OH−g−EO/EVOH/PEブレンドはまとまって共押出された。サンプル番号5(OH−g−EO/PE)層はよくまとまり、比較サンプル番号1よりも良好な初期接着性および迅速な接着力発現をもたらした。
【0176】
【表1】
【0177】
サンプル2および4ではEVOH層はPE層から容易に分離した。また、番号4は、粗く、しわになっていた。EVOH樹脂がOH−g−EO樹脂とブレンドされているフィルム3、7、および8は、より良好な外観とより良好な層間接着性を有していた。
【0178】
実施例2
表1のフィルム1、5および7のサンプルを、The Dow Chemical Companyから得られるMOR−FREE 98Aと共反応物質MOR−FREE 79商業的ラミネート用接着剤を使用して前述のようなPET/ホイルフィルムのホイル側にラミネートした。ラミネートをプレート間でプレスし、周囲条件(乾燥窒素下の容器中ではない)で硬化させた。パウチをラミネートから作製し、上述のようにPAA移行について試験した。表2は、官能化フィルム5および7が2、3および7日で検出されるPAAレベルを大幅に減少させたことを示す。
【0179】
【表2】
【0180】
ラミネートの別のセットを上述のように作製し、試験した。このセットは無水物官能性PE(LOTADER 4210)を含んでいた。表3にまとめた結果は、OHおよび無水物官能基がどちらも抽出物中のPAAをより速く減少させることを示す。無水物は早期では低いPAAを示すが、OH官能性樹脂は長期(9日)でより良好な結果を提供する。両官能性フィルムは良好な剥離結果を提供する。表3を参照のこと。
【0181】
【表3】