(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、対象の核酸配列の方向性のあるクローニングを行う改良法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、方向性クローニングに使用する方法及びベクターを提供する。一実施形態では、対象のオープンリーディングフレームを含むベクター(ドナーベクター)は、そのオープンリーディングフレーム(対象のDNA配列)に隣接した少なくとも2つの制限酵素認識部位(「制限酵素部位」、「制限部位」、又は「認識部位」)と、宿主細胞におけるベクターの複製及び/又は維持のための他のベクター配列(バックボーン配列)と、任意選択で、1つ又は複数の検出可能なマーカー遺伝子、例えば選択マーカー遺伝子とを含み、隣接部位の少なくとも1つは第1の制限酵素の部位であり、第1の制限酵素は、ハパックス末端(hapaxoterministic end)を生成し、例えば、一本鎖末端を産生する、縮重認識配列を有する制限酵素、又は認識配列の外側を切断する制限酵素である。一実施形態では、オープンリーディングフレームに隣接した少なくとも2つの制限酵素部位をドナーベクターが含み、隣接部位の少なくとも1つは第1の制限酵素の部位であり、第1の制限酵素はハパックス末端制限酵素、例えば、縮重認識配列を有する制限酵素であり、その部位は、切断された場合に、自己相補的一本鎖DNAオーバーハング又は平滑末端を生成しない。すなわち、その末端は非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングである。別の実施形態では、ドナーベクターはオープンリーディングフレームに隣接した少なくとも2つの制限酵素部位を含み、これら少なくとも2つの隣接部位は、ハパックス認識配列(hapaxomeric recognition sequence)を有する第1の制限酵素の部位であり、かつ、場合によっては同一制限酵素の部位であり、この部位は、切断された場合に、自己相補的一本鎖DNAオーバーハング又は平滑末端をもたない線状DNA断片を産生する。そのようなベクターは、連結されたオープンリーディングフレームを発現するベクター(レシピエントベクター又は発現ベクター)を調製するためのオープンリーディングフレームの供給源として利用することができる。レシピエントベクター中のバックボーン配列は、通常、アクセプターベクターから得られ、これは、転写制御配列、及び、場合によっては、融合タンパク質を生産するための配列を含有する。アクセプターベクターは、ハパックス認識配列を有する第2の制限酵素の制限酵素部位が少なくとも2つ隣接した非必須DNA配列と、任意選択で、1つ又は複数の検出可能なマーカー遺伝子、例えば選択マーカー遺伝子とを含む。一実施形態では、アクセプターベクター中の、第2の制限酵素の2つの隣接制限酵素部位は、切断された場合に、自己相補的一本鎖DNAオーバーハング又は平滑末端を生成しないが、第1の制限酵素によって生成された2つのDNAオーバーハングの1つと相補的な一本鎖DNAオーバーハングを有する線状DNA断片を産生する部位である。線状化されたDNA断片が連結されて、レシピエントベクターが形成されれば、オープンリーディングフレームによって少なくとも一部がコードされているタンパク質を発現する形質転換細胞を産生するように、レシピエントベクターを細胞、例えば、大腸菌(E.coli)細胞などの原核細胞、昆虫細胞、植物細胞、哺乳類細胞、又はこれらの溶解物に導入するか、或いはin vitro転写/翻訳混合物に導入することができる。
【0014】
一実施形態では、本発明は、DNA断片の方向性サブクローニングの方法を提供する。この方法は、第1の選択的マーカー遺伝子及び対象のDNA配列を含む第1のベクターを準備するステップを含み、その際、対象のDNA配列には少なくとも2つの制限酵素部位が隣接し、隣接制限酵素部位のうち少なくとも2つが第1の制限酵素の部位であり、第1の制限酵素はハパックス末端制限酵素であり、第1の制限酵素で第1のベクターを消化することによって、第1の選択マーカー遺伝子を欠くが、対象のDNA配列及び第1対の非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングを含む第1の線状DNA断片が生成される。この方法に用いる第2のベクターが提供されるが、このベクターは、対抗選択可能な遺伝子が任意選択で含まれ、第1の選択マーカー遺伝子及び非必須DNA配列から識別可能な第2の選択マーカー遺伝子を含み、非必須DNA配列には少なくとも2つの制限酵素部位が隣接し、これらの隣接制限酵素部位のうち2つ以上が第2の制限酵素の部位であり、第2の制限酵素はハパックス末端制限酵素であり、第2の制限酵素で第2のベクターを消化することによって、非必須DNA配列を欠くが、第2の選択マーカー遺伝子及び第2対の非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングを含む第2の線状DNA断片が生成され、第2対の非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングのそれぞれは、第1対の非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングの一本鎖DNAオーバーハングのうちの1つのみと相補的であり、第1の線状DNA断片が第2の線状DNA断片に一定方向で結合するのを可能にする。第1対及び第2対の非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングを介して一定方向で結合している第1の線状DNA分子及び第2の線状DNA分子を含む第3のベクターを任意選択で含む混合物を産生する消化及び、任意選択で連結をもたらすのに効果的な条件下において、適当な緩衝液中で、ハパックス末端制限酵素である1つ又は複数の制限酵素、及び任意選択でDNAリガーゼを用いて、第1のベクター及び第2のベクター、第1のベクター及び第2の線状DNA断片、又は第2のベクター及び第1の線状DNA断片を一体にする。一実施形態では、リガーゼを、1つ又は複数の制限酵素と同時に添加し、別の実施形態では、リガーゼを、1つ又は複数の制限酵素の後に添加する。前述の混合物は、任意選択で宿主細胞内に導入し、形質転換された宿主細胞は、任意選択で、第2の選択マーカー遺伝子を発現するもの、或いは、対抗選択可能な遺伝子を発現しないものを選択する。また、この方法は、第3のベクターの同定を含むこともあり、このベクター中では、対象のDNA配列が第2の線状DNA断片に方向性をもって導入されている。一実施形態では、第1の制限酵素がSfiI、SapI、又はこれらのアイソシゾマーである。一実施形態では、第1の制限酵素がSfiI又はそのアイソシゾマーであり、第2の制限酵素がBglI又はアイソシゾマーである。一実施形態では、第2の制限酵素がEarI又はそのアイソシゾマーである。別の実施形態では、第1の制限酵素及び第2の制限酵素が同一である。任意選択で、対象のDNA配列は、第1の制限酵素又は第2の制限酵素の部位を1つ又は複数含むオープンリーディングフレームを含む。この実施形態では、これら1つ又は複数の制限酵素で消化する前に、オープンリーディングフレーム中のこれら1つ又は複数の制限酵素の部位の保護、例えば、HaeIIIメチラーゼ、SapIメチラーゼ、又はSfiIメチラーゼなどを用いたメチル化による保護を、消化が阻止されるように、任意選択で行う。別法では、メチル化の前に、第1の制限酵素又は第2の制限酵素の隣接部位を、その隣接制限酵素部位に相補的なオリゴヌクレオチド及びRecAと接触させる。一実施形態では、連結及び一定方向での結合によって、対象のDNA配列及び第2の線状DNA断片の3’末端の5’側にある核酸配列によってコードされているN末端融合タンパク質をコードする第3のベクターが産生される。別の実施形態では、連結及び一定方向での結合によって、対象のDNA配列及び第2の線状DNA断片の5’末端の3’側にある核酸配列によってコードされているC末端融合タンパク質をコードする第3のベクターが産生される。さらに別の実施形態では、連結及び一定方向での結合によって、対象のDNA配列及び第2の線状DNA断片の3’末端及び5’末端のそれぞれ5’側及び3’側にある核酸配列によってコードされている融合タンパク質をコードする第3のベクターが産生される。さらに別の実施形態では、連結及び一定方向での結合によって、対象のDNA配列と、一定方向での結合によって生成された置換部位とによってコードされている融合タンパク質をコードする第3のベクターが産生される。
【0015】
したがって、本発明は、クローニング用のベクター系を提供する。一実施形態では、このシステムは、選択マーカー遺伝子及び対象のDNA配列を含む第1のベクターを含み、対象のDNA配列には、少なくとも2つの制限酵素部位が隣接し、これらの隣接制限酵素部位のうち2つ以上が第1の制限酵素の部位であり、第1の制限酵素はハパックス末端制限酵素であり、第1の制限酵素で第1のベクターを消化することによって、第1の選択マーカー遺伝子を含まないが、対象のDNA配列及び第1対の非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングを含む第1の線状DNA断片を生成し、第1の制限酵素部位は、第1の線状DNA断片を第2のベクターに直接再連結できるように設計されている。このシステムは、第2のベクターを任意選択で含み、第2のベクターは、対抗選択可能な遺伝子が任意選択で含まれ、第1の選択マーカー遺伝子及び非必須DNA配列から識別可能な第2の選択マーカー遺伝子を含み、非必須DNA配列には少なくとも2つの制限酵素部位が隣接し、第2のベクター中の隣接部位のうち2つ以上が第2の制限酵素の部位であり、第2の制限酵素はハパックス末端制限酵素であり、第2の制限酵素で第2のベクターを消化することによって、非必須DNA配列を欠くが、第2の選択マーカー遺伝子及び第2対の非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングを含む第2の線状DNA断片を生成し、第2対の非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングのそれぞれは、第1対の非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングの一本鎖DNAオーバーハングのうちの1つのみと相補的であり、第1の線状DNA断片が第2の線状DNA断片に一定方向で結合するのを可能にする。さらに、このベクター系の1つ又は複数のベクターを含むキットも提供する。
【0016】
対象のアミノ酸配列の発現に適したベクターを作製する方法も提供する。この方法は、第3のベクターを任意選択で含む混合物を産生する、消化及び任意選択で連結をもたらすのに効果的な条件下において、適当な緩衝液中で、1つ又は複数の制限酵素及び任意選択でDNAリガーゼを用いて、少なくとも2つのベクターを一体にするステップを含む。この方法に使用する第1のベクターは、第1の選択マーカー遺伝子及び対象のDNA配列を含み、対象のDNA配列には、少なくとも2つの制限酵素部位が隣接し、これらの隣接制限酵素部位のうち2つ以上が第1の制限酵素の部位であり、第1の制限酵素はハパックス末端制限酵素であり、第1の制限酵素で第1のベクターを消化することによって、第1の選択マーカー遺伝子を欠くが、対象のDNA配列及び第1対の非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングを含む第1の線状DNA断片を生成する。第2のベクターは、対抗選択可能な遺伝子が任意選択で含まれ、第1の選択マーカー遺伝子及び非必須DNA配列から識別可能な第2の選択マーカー遺伝子を含み、非必須DNA配列には2つ以上の制限酵素部位が隣接し、第2のベクター中の隣接部位のうち2つ以上が第2の制限酵素の部位であり、第2の制限酵素はハパックス末端制限酵素である。第2の制限酵素で第2のベクターを消化することによって、非必須DNA配列を欠くが、第2の選択マーカー遺伝子及び第2対の非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングを含む第2の線状DNA断片を生成し、第2対の非自己相補的DNAオーバーハングのそれぞれは、第1対の非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングの一本鎖DNAオーバーハングのうちの1つのみと相補的であり、第1の線状DNA断片が第2の線状DNA断片に一定方向で結合するのを可能にする。一実施形態では、対象のDNA配列は、1つ又は複数のタンパク質の1つ又は複数のドメインをコードする。
【0017】
一実施形態では、対象のオープンリーディングフレームに隣接する少なくとも1つの制限酵素部位は、内部パリンドロームを認識する制限酵素、例えば、SfiI又はBglIなどのII型酵素であり、これには、限定されるものではないが、塩基認識のあいまい性によって2つを超えるタイプの付着末端(DNAオーバーハング)を生成する制限酵素、例えば、AhdI、AIwNI、ApaBI、BglI、BlpI、BstAPI、BstEII、BstXI、Bsu36I、DraII、DraIII、DrdI、Eam1105I、EcoNI、PflMI、PssI、SauI、SfiI、XcmI、及びこれらのアイソシゾマーが含まれるが、平滑末端を生成する制限酵素は含まれない。別の実施形態では、対象のオープンリーディングフレームに隣接する少なくとも1つの制限酵素部位は、限定されるものではないが、
【化1】
及び、これらのアイソシゾマーを含めた、認識部位の外に末端を生成する制限酵素など、IIS型酵素、例えばSapI又はEarIである。別の実施形態では、前述の制限酵素の1つがクラスIIS制限酵素であり、これには、限定されるものではないが、
【化2】
又は、
【化3】
と同一の認識部位を有する制限酵素、又は、
【化4】
と同一の認識部位を有する制限酵素である。一実施形態では、前述の制限酵素の1つがAarI、AscI、BbrCI、CspI、DraI、FseI、NotI、NruI、PacI、PmeI、PvuI、SapI、SdaI、SfiI、SgfI、SplI、SrfI、SwaI、又は、AarI、AscI、BbrCI、CspI、DraI、FseI、NotI、NruI、PacI、PmeI、PvuI、SapI、SdaI、SfiI、SgfI、SplI、SrfI、若しくはSwaIと同一の認識部位を有する制限酵素である。
【0018】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2つの制限酵素部位が隣接した、対象のオープンリーディングフレームを含むドナーベクターを提供し、これらの隣接部位の1つは第1の制限酵素の部位であり、第1の制限酵素は、ある特定の種における、複数、例えば、100、1000、10000、又はそれより大きな数を含めた3以上の数のcDNA又はオープンリーディングフレームにおいて、低頻度、例えば約25%未満、例えば約20%未満、10%未満、5%未満、又はさらに少ない頻度、例えば約1%の認識部位を有し(「低頻度切断酵素」)、かつ一本鎖DNAオーバーハングを生成し、また、これらの隣接部位のもう一方は第2の制限酵素の部位であり、第2の制限酵素は、ある特定の種、例えば、第1の制限酵素と同一の種の複数におけるcDNA又はオープンリーディングフレームにおいて低頻度の認識部位を有し、かつ、第1の制限酵素によって生成されたオーバーハングとは相補的でない末端を生成する。一実施形態では、第2の制限酵素は平滑末端(「平滑末端切断酵素」)を生成する。1つ又は複数の核酸分子における特定の制限酵素認識部位の頻度は、当技術分野で周知の方法で決定することができる。例えば、そのような頻度を決定するために、ある特定の生物における複数のcDNA配列又はオープンリーディングフレームを備えたデータベースを利用することができる。本発明のドナーベクターは、本発明のレシピエントベクターを調製するための、対象のオープンリーディングフレームの供給源として利用することができる。レシピエントベクター中のバックボーン配列は、通常、対象の転写制御配列と、任意選択で、融合タンパク質を生成するための配列とを有するアクセプターベクターから得る。アクセプターベクターは、少なくとも2つの制限酵素部位が隣接した非必須DNA配列と、1つ又は複数の検出可能なマーカー遺伝子とを含む。一実施形態では、アクセプターベクター中の隣接部位の1つは、一本鎖DNAオーバーハングを生成する第3の制限酵素の部位であり、この一本鎖DNAオーバーハングは、ドナーベクターが第1の制限酵素で消化された際に生成される一本鎖DNAオーバーハングと相補的である。アクセプターベクター中のもう一方の隣接部位は第4の制限酵素の部位であり、第4の制限酵素は、第1の制限酵素又は第3の制限酵素によって生成される末端とは相補的でないが、第2の制限酵素によって生成される末端と適合性を有する末端、すなわち、それに連結できる末端を生成する。一実施形態では、第2の制限酵素及び第4の制限酵素が平滑末端切断酵素であり、第2の制限酵素及び第4の制限酵素の制限部位は同一の制限酵素によって認識されない。一実施形態では、前述のオープンリーディングフレームが1つ又は複数のタンパク質の1つ又は複数のドメインをコードする。
【0019】
したがって本発明は、DNA断片の方向性サブクローニングの方法を提供する。この方法は、第1の選択的マーカー遺伝子及び対象のDNA配列を含む第1のベクターを準備するステップを含み、対象のDNA配列には、少なくとも2つの制限酵素部位が隣接し、隣接制限酵素部位の少なくとも1つは第1の制限酵素の部位であり、第1の制限酵素は、少なくとも一生物種のcDNA又はオープンリーディングフレームで低頻度である制限部位を有し、かつ相補的な一本鎖DNAオーバーハングを生成し、隣接制限酵素部位の少なくとも1つは第2の制限酵素の部位であり、第2の制限酵素は、少なくとも一生物種のcDNA又はオープンリーディングフレームで低頻度である制限部位を有し、かつ第1の制限酵素によって生成されたオーバーハングとは相補的でない末端を生成し、第1の制限酵素及び第2の制限酵素部位で第1のベクターを消化することによって、第1の選択マーカー遺伝子を欠くが対象のDNA配列を含む第1の線状DNA断片が生成される。また、第2の選択マーカー遺伝子を含む第2のベクターも提供され、第2の選択マーカー遺伝子は、第1の選択マーカー遺伝子及び非必須DNA配列から識別可能であり、これには対抗選択可能な遺伝子が任意選択で含まれ、非必須配列には少なくとも2つの制限酵素部位が隣接し、第2のベクター中の隣接制限酵素部位の少なくとも1つは第3の制限酵素の部位であり、第3の制限酵素は、第1の線状DNA断片において第1の制限酵素によって生成される一本鎖DNAオーバーハングに相補的な一本鎖DNAオーバーハングを生成し、第2のベクター中の隣接制限部位の少なくとも1つは第4の制限酵素の部位であり、第4の制限酵素は、第1の制限酵素又は第3の制限酵素によって生成される末端には相補的でないが第2の制限酵素によって生成された末端には連結できる末端を生成し、第3の制限酵素及び第4の制限酵素で第2のベクターを消化することによって、非必須DNA配列を欠くが第2の選択マーカーを含む第2の線状DNA断片が生成され、第2の線状DNA断片には、第1の線状DNA断片が第2の線状DNA断片に一方向で結合するのを可能にする末端が隣接する。一定方向で結合している第1の線状DNA分子及び第2の線状DNA分子を含む第3のベクターを任意選択で含む混合物を産生する消化及び、任意選択で連結をもたらすのに効果的な条件下において、適当な緩衝液中で、1つ又は複数の制限酵素、及び任意選択でDNAリガーゼを用いて、第1のベクター及び第2のベクター、第1のベクター及び第2の線状DNA断片、又は第2のベクター及び第1の線状DNA断片を一体にする。1つ又は複数の制限酵素で消化を行う前に、オープンリーディングフレーム中の1つ又は複数の制限酵素部位を、消化されないように保護する。一実施形態では、これらの部位がメチル化によって保護され、さらに、任意選択で、メチル化の前に、第1の制限酵素又は第2の制限酵素の隣接部位に、それらの隣接制限酵素部位に相補的なオリゴヌクレオチド及びRecAを接触させる。一実施形態では、第2の制限酵素が平滑末端を生成し、かつ、第1の線状DNA断片には第1の一本鎖DNAオーバーハング及び平滑末端が隣接する。一実施形態では、第1の制限酵素及び第3の制限酵素が同一でない。別の実施形態では、第2の制限酵素及び第4の制限酵素が同一でないか、或いは、それぞれが平滑末端を生成する。別の実施形態では、対象のDNA配列は、第1の制限酵素又は第2の制限酵素の部位を1つ又は複数含むオープンリーディングフレームを含む。
【0020】
さらに、クローニング用のベクター系を提供する。このベクター系は、第1の選択マーカー遺伝子及び対象のDNA配列を含む第1のベクターを含み、対象のDNA配列には、少なくとも2つの制限酵素部位が隣接し、隣接制限酵素部位の少なくとも1つは第1の制限酵素の部位であり、第1の制限酵素は、少なくとも一生物種のcDNA又はオープンリーディングフレームで低頻度である制限部位を有し、かつ相補的な一本鎖DNAオーバーハングを生成し、隣接制限酵素部位の少なくとも1つは第2の制限酵素の部位であり、第2の制限酵素は、少なくとも一生物種のcDNA又はオープンリーディングフレームで低頻度である制限部位を有し、かつ、第1の制限酵素によって生成されたオーバーハングとは相補的でない末端を生成し、第1のベクターの消化によって、第1の選択マーカー遺伝子を欠くが、対象のDNA配列を含む第1の線状DNA断片が生成され、これらの制限酵素部位は、第1の線状DNA断片を第2のベクターに直接再連結できるように設計されている。第2のベクターは、対抗選択可能な遺伝子が任意選択で含まれ、第1の選択マーカー遺伝子及び非必須DNA配列から識別可能な第2の選択マーカー遺伝子を含み、非必須DNA配列には少なくとも2つの制限酵素部位が隣接し、第2のベクター中の隣接制限酵素部位の少なくとも1つは第3の制限酵素の部位であり、第3の制限酵素は、第1の制限酵素によって生成される一本鎖DNAオーバーハングに相補的な一本鎖DNAオーバーハングを生成し、第2のベクター中の隣接制限部位の少なくとも1つは第4の制限酵素の部位であり、第4の制限酵素は、第1の制限酵素又は第3の制限酵素によって生成される末端には相補的でないが第2の制限酵素によって生成された末端には連結できる末端を生成する。第3の制限酵素及び第4の制限酵素で第2のベクターを消化することによって、非必須DNA配列を欠くが第2の選択マーカーを含む第2の線状DNA断片が生成され、第2の線状DNA断片には、第1の線状DNA断片が第2の線状DNA断片に一方向で結合するのを可能にする末端が隣接する。このベクター系の1つ又は複数のベクターを含むキットも提供する。
【0021】
一実施形態では、第2の制限酵素は平滑末端を生成し、かつ、第1の線状DNA断片には第1の一本鎖DNAオーバーハング及び平滑末端が隣接する。一実施形態では、第1の制限酵素及び第3の制限酵素が同一でない。別の実施形態では、第2の制限酵素及び第4の制限酵素が同一でないか、或いは、それぞれが平滑末端を生成する。例えば、一実施形態では、これらの制限酵素の1つがAarI、AscI、BbrCI、CspI、DraI、FseI、NotI、NruI、PacI、PmeI、PvuI、SapI、SdaI、SfiI、SgfI、SplI、SrfI、SwaI、又はAarI、AscI、BbrCI、CspI、DraI、FseI、NotI、NruI、PacI、PmeI、PvuI、SapI、SdaI、SfiI、SgfI、SplI、SrfI、若しくはSwaIと同一の認識部位を有する制限酵素である。
【0022】
一実施形態では、対象のオープンリーディングフレームに隣接する少なくとも1つの制限酵素部位が、SgfI、PvuI、若しくはPacI、SgfIと適合性を有する末端を生成する制限酵素、例えば、SgfI、PvuI、BstKTI、若しくはPacI、又は、適切な3’TAオーバーハングを有するように選択することができる末端を生成する制限酵素、例えば、
【化5】
若しくは、これらのアイソシゾマーの1つの部位である。一実施形態では、対象のオープンリーディングフレームに隣接する少なくとも1つの制限酵素部位は、SgfI(AsiSI)、PacI、又はPvuI(Afa22MI、Afal6RI、BspCI、EagBI、ErhB9I、MvrI、NblI、Ple19I、Psu161I、RshI、XorII)の1つの部位である。
【0023】
別の実施形態では、対象のオープンリーディングフレームに隣接する少なくとも1つの制限酵素部位は、PmeI(MssI)、DraI、AhaIII(DraI、PauAII、SruI)、NruI(Bsp68I、MIuB2I、Sbo13I、SpoI)、SnaBI(BstSNI、Eco105I)、SrfI、又はSwaI(BstRZ246I、BstSWI、MspSWI、SmiI)の部位である。別の実施形態では、対象のオープンリーディングフレームに隣接する少なくとも1つの制限酵素部位は、別の平滑末端と連結した後に終止コドンを生成できる平滑末端を生成する制限酵素の部位、例えば、PmeIによって生成された末端と連結した後に終止コドンを生成できるもの、例えば、EcaBC3I(TC^GA)、SciI(CTC^GAG)、HincII(GTYRACの1バージョンであるGTC^GAC、)、HpaI(GTT^AAC)、HincII(GTYRACの1バージョンであるGTT^AAC)、DraI(TTT^AAA)、SwaI(ATTT^AAAT)、若しくはこれらのアイソシゾマー、又は、5’GA、5’AG、若しくは5’AAなど、平滑末端を有するように選択できる末端を生成する制限酵素、例えば、BsaBI、Cac8I、Hpy8I、MlyI、PshAI、SspD5I、若しくはこれらのアイソシゾマーの部位である。例えば、PmeI及びDraIによって生成された末端の連結は、終止部位を生成することができ、NがそれぞれA、T、G又はCである場合に、NTT及びGAN、NCT及びAGN、又はNTT及びAANの連結も同様であろう。一実施形態では、PmeIによって生成された末端と、別の平滑末端切断酵素によって生成された末端との平滑末端連結から形成された置換部位は、タンパク質融合体のコード配列を産生しうる。例えば、PmeIによって生成された末端で終止するオープンリーディングフレームと、
【化6】
又は、これらのアイソシゾマーによって生成された末端の連結は、3’末端でオープンリーディングフレームを伸長させることもできる。
【0024】
一実施形態では、第1の制限酵素がSgfIであり、任意選択で、第2の制限酵素がPmeIである。別の実施形態では、第3の制限酵素が3’TAオーバーハングを生成し、例えば、第3の制限酵素がPvuI又はPacIである。
【0025】
一実施形態では、本発明は、対象のDNA配列の、方向性のあるクローニングを行う方法を提供し、この方法は、少なくとも2つの制限酵素部位が隣接した対象のDNA配列、例えば、任意選択で融合タンパク質をコードする対象のDNA配列を含むレシピエントベクターを利用し、これらの隣接部位の1つは第1の制限酵素の部位であり、第1の制限酵素は、ある特定の種における複数のcDNA又はオープンリーディングフレーム中で低頻度である認識部位を有し、かつ一本鎖DNAオーバーハングを生成し、隣接部位のもう一方は第2の制限酵素の部位であり、第2の制限酵素は、ある特定の種における複数のcDNA又はオープンリーディングフレーム中で低頻度である認識部位を有し、かつ平滑末端を生成する。アクセプターベクターは、少なくとも2つの制限酵素部位が隣接した対抗選択可能なマーカーを含みうる。アクセプターベクター中の隣接部位の1つは第3の制限酵素の部位であり、第3の制限酵素は、レシピエントベクターが第1の制限酵素で消化された際に生成される一本鎖DNAオーバーハングと相補的な一本鎖DNAオーバーハングを生成する。アクセプターベクター中のもう一方の隣接部位は第4の制限酵素の部位であり、第4の制限酵素は平滑末端を生成する。この方法は、第1の制限酵素及び第2の制限酵素を有するレシピエントベクター並びに第3の制限酵素及び第4の制限酵素を有するアクセプターベクターを接触させるステップと、この結果得られた線状分子を連結するステップと、連結混合物で宿主細胞を形質転換するステップと、所望の組換え分子、すなわち対象のDNA配列及びアクセプターベクターのバックボーンを有するベクター、例えば、対抗選択可能な遺伝子を持たず、アクセプターベクターのバックボーンに存在する選択マーカーを任意選択で含むベクターを有する宿主細胞を選択するステップとを含む。一実施形態では、第1の制限酵素及び第3の制限酵素が同一である。一実施形態では、第2の制限酵素及び第4の制限酵素が同一である。このようにして、例えば、アクセプターベクター配列、置換部位、及び対象のDNA配列の融合体によってコードされた融合タンパク質を発現させるために、対象のDNA配列をある発現ベクターから別の発現ベクターに移動させることができる。
【0026】
本発明は、対象のアミノ酸配列を発現させるのに適したベクターを作製する方法も提供する。この方法は、第3のベクターを任意選択で含む混合物を産生する、消化及び任意選択で連結をもたらすのに効果的な条件下において、適当な緩衝液中で、1つ又は複数の制限酵素及び任意選択でDNAリガーゼを用いて、少なくとも2つのベクターを一体にするステップを含む。第1のベクターは、第1の選択マーカー遺伝子及び対象のDNA配列を含み、対象のDNA配列には、少なくとも2つの制限酵素部位が隣接し、隣接制限酵素部位の少なくとも1つは第1の制限酵素の部位であり、第1の制限酵素は、少なくとも一生物種のcDNA又はオープンリーディングフレームで低頻度である制限部位を有し、かつ相補的な一本鎖DNAオーバーハングを生成し、隣接制限酵素部位の少なくとも1つは第2の制限酵素の部位であり、第2の制限酵素は、少なくとも一生物種のcDNA又はオープンリーディングフレームで低頻度である制限部位を有し、かつ、第1の制限酵素によって生成されたオーバーハングとは相補的でない末端を生成し、第1のベクターの消化によって、第1の選択マーカー遺伝子を欠くが、対象のDNA配列を含む第1の線状DNA断片が生成される。第2のベクターは、対抗選択可能な遺伝子が任意選択で含まれ、第1の選択マーカー遺伝子及び非必須DNA配列から識別可能な第2の選択マーカー遺伝子を含み、非必須DNA配列には少なくとも2つの制限酵素部位が隣接し、第2のベクター中の隣接制限酵素部位の少なくとも1つは第3の制限酵素の部位であり、第3の制限酵素は、第1の制限酵素によって生成される一本鎖DNAオーバーハングに相補的な一本鎖DNAオーバーハングを生成し、第2のベクター中の隣接制限部位の少なくとも1つは第4の制限酵素の部位であり、第4の制限酵素は、第1の制限酵素又は第3の制限酵素によって生成される末端には相補的でないが第2の制限酵素によって生成された末端には連結できる末端を生成する。第3の制限酵素及び第4の制限酵素で第2のベクターを消化することによって、非必須DNA配列を欠くが第2の選択マーカー遺伝子を含む第2の線状DNA断片が生成され、第2の線状DNA断片には、第1の線状DNA断片が第2の線状DNA断片に一方向で結合するのを可能にする末端が隣接する。一実施形態では、第2の制限酵素は平滑末端を生成し、かつ、第1の線状DNA断片には第1の一本鎖DNAオーバーハング及び平滑末端が隣接する。別の実施形態では、第1の制限酵素及び第3の制限酵素が同一でない。さらに別の実施形態では、第2の制限酵素及び第4の制限酵素が同一でない。さらに別の実施形態では、第2の制限酵素及び第4の制限酵素が平滑末端を生成する。
【0027】
一実施形態では、連結及び一定方向での結合によって、対象のDNA配列及び第2の線状DNA断片の3’末端の5’側にある核酸配列によってコードされているN末端融合タンパク質をコードする第3のベクターが産生される。別の実施形態では、連結及び一定方向での結合によって、対象のDNA配列及び第2の線状DNA断片の5’末端の3’側にある核酸配列によってコードされているC末端融合タンパク質をコードする第3のベクターが産生される。別の実施形態では、連結及び一定方向での結合によって、対象のDNA配列及び第2の線状DNA断片の3’末端及び5’末端のそれぞれ5’側及び3’側にある核酸配列によってコードされている融合タンパク質をコードする第3のベクターが産生される。さらに別の実施形態では、連結及び一定方向での結合によって、対象のDNA配列と、一定方向での結合によって生成された置換部位とによってコードされている融合タンパク質をコードする第3のベクターが産生される。この融合タンパク質は、任意選択で、GST融合タンパク質、GFP融合タンパク質、チオレドキシン融合タンパク質、マルトース結合タンパク質融合タンパク質、プロテアーゼ切断部位融合タンパク質、金属結合ドメイン融合タンパク質、又はデハロゲナーゼ融合タンパク質であり、かつ/又は、対応する非融合タンパク質と比較して、より可溶性であるか、より精製しやすいか、又は、より検出しやすいものである。
【0028】
したがって、本発明の方法は、対象のオープンリーディングフレームをクローニングするに、ユニークな末端を生成する1つ又は複数の制限酵素と任意選択でリガーゼとを利用する。ユニークな末端を生成する制限酵素の1つ又は複数の制限酵素部位を有するベクターは、方向性クローニング及び秩序だった遺伝子集合に特に有用である。さらに、本発明のベクター及び方法の使用は、簡便、安価、迅速、かつ、自動化可能であり、高い信頼度とオープンリーディングフレームの移動とをもたらす。さらに、本発明のベクターは、N末端、C末端、又はN末端及びC末端の両方に0又は1アミノ酸残基から数アミノ酸残基、例えば7アミノ酸残基未満が融合した融合タンパク質を発現するように設計することができる。例えば、対象のDNA配列に隣接したSfiI部位を用いて生成された融合体は、N末端及びC末端に4ミノ酸残基を有する融合タンパク質を産生しうるが、一方、対象のDNA配列に隣接したSgfI/PmeI部位又はSapI部位を用いて生成された融合体は、C末端のみに単一のアミノ酸残基を有する融合タンパク質を産生しうる。対象のDNA配列にSfiI又はPmeI部位を、例えば増幅反応を用いて付加する場合、切断効率を増大させるために、認識部位に隣接させて、3から5bpを追加に含めることができる。さらに、精製の際、例えばin vitro若しくはin vivoにおける、例えば、固定、可溶化、in situ検出、タンパク質ドメイン調査、及びタンパク質間相互作用に有用な融合パートナー配列を有するN末端又はC末端融合体を調製することができ、その場合、融合パートナー配列はアクセプターベクター配列及び/又は置換部位がコードする。
【0029】
ベクターからの意図していない発現を低減するのに有用な組換え宿主細胞も提供する。一実施形態では、この宿主細胞は、1つ又は複数の誘導性遺伝子を欠失しており、例えば宿主細胞は1つ又は複数のラムノース触媒遺伝子を発現しない細胞であり、例えば宿主細胞がrhaBADであり、かつ発現ベクター、例えば宿主細胞に安定に導入された発現ベクターを含む。この発現ベクターは、1つ又は複数の遺伝子の誘導性プロモーターを含み、このプロモーターは、非誘導時の発現レベルが低いものであり、好ましくは、比較的遅い誘導プロフィールを有するが最終の発現レベルが高いもの、例えばrhaBADプロモーターであり、このプロモーターは、異種(非天然)の転写調節遺伝子産物、例えばRNAポリメラーゼのオープンリーディングフレームなど、オープンリーディングフレームに作用可能に連結されている。一実施形態では、組換え宿主細胞がラムノース異化作用を欠失しており、異種RNAポリメラーゼのオープンリーディングフレームに作用可能に連結したラムノース誘導プロモーターを含む組換えDNA分子を有する。一実施形態では、宿主細胞が原核細胞、例えば大腸菌(E.coli)細胞である。一実施形態では、異種RNAポリメラーゼが、T7RNAポリメラーゼなどのファージRNAポリメラーゼである。異種RNAポリメラーゼのプロモーター及び対象のオープンリーディングフレームを含む発現ベクターと、ラムノースとを、例えば、同時、或いは逐次的に組換え宿主細胞に接触させることができる。
【0030】
したがって、本発明は、対象のDNA配列の発現を宿主細胞中で誘導する方法を提供する。この方法は、ラムノース異化作用を欠失しており、かつ異種RNAポリメラーゼのオープンリーディングフレームに作用可能に連結したラムノース誘導プロモーターを含む組換えDNA分子を有する組換え宿主細胞を、ラムノース、及び、対象のDNA配列に作用可能に連結した異種RNAポリメラーゼのプロモーターを含む発現ベクターと接触させるステップを含む。一実施形態では、対象のDNA配列には、2つの制限酵素部位が隣接しており、隣接制限酵素部位の1つは第1の制限酵素の部位であり、第1の制限酵素は、少なくとも一生物種のcDNA又はオープンリーディングフレームで低頻度である制限部位を有し、かつ一本鎖DNAオーバーハングを生成し、別の隣接制限酵素部位は第2の制限酵素の部位であり、第2の制限酵素は、少なくとも一生物種のcDNA又はオープンリーディングフレームで低頻度である制限部位を有し、かつ第1の制限酵素によって生成されたオーバーハングとは相補的でない末端を生成する。一実施形態では、発現ベクターは、転写ターミネーター配列、例えばrrnBと、対象のオープンリーディングフレームの5’側にあって、異種転写調節遺伝子産物によって上方制御されるプロモーターと、オープンリーディングフレームに隣接する1つ又は複数の、低頻度切断酵素の制限部位と、任意選択で、ベクターバックボーン中に、選択マーカー遺伝子、ベクターが高コピー数になることを指定する配列、及びベクター多量体化を低減する配列、例えばcerとを含む。RNAポリメラーゼなどの異種転写調節遺伝子産物のプロモーターなど、対象のオープンリーディングフレームに作用可能に連結したプロモーターを含む発現ベクターは、in vitroの転写/翻訳システムにも利用できる。
【0031】
さらに、分泌性ドメイン(シグナル)を欠失したバルナーゼをコードする単離された核酸断片と、この核酸断片を含むベクター、例えばこの核酸断片に連結されたλP
Lプロモーターなど、プロモーターを含むベクターと、この核酸断片にコードされた単離されたタンパク質と、このベクターを含む宿主細胞とを提供する。任意選択で、宿主細胞はバルスターを発現する。一実施形態では、宿主細胞は、原核細胞で構成的に発現されるプロモーターからバルスターを発現する。任意選択で、宿主細胞は大腸菌(E.coli)細胞である。一実施形態では、バルスターのオープンリーディングフレームは4cプロモーターから発現される。一実施形態では、本発明のベクター系は、分泌性ドメインを欠失したバルナーゼをコードする核酸断片を含む対抗選択可能な遺伝子を含む第2のベクターを含む。例えば、本発明は、分泌性ドメインを欠失したバルナーゼをコードする核酸断片を含むベクターを、原核細胞で構成的に発現されるプロモーターからバルスターを発現する組換え宿主細胞中に導入するステップを含む方法を提供する。
【0032】
本発明のベクター系を宿主細胞内に導入するステップを含む方法であって、第2のベクターが、分泌性ドメインを欠失したバルナーゼをコードする核酸断片を含む対抗選択可能な遺伝子を含む、方法も提供する。
【0033】
30塩基対未満のDNA断片の3’側にオープンリーディングフレームを含むベクターも提供する。このDNA断片は、リボソーム結合部位と、SgfI認識部位と、mRNA中に存在する場合にそのmRNAが真核生物リボソームのスモールサブユニットに結合するのを促進する配列とを含む。一実施形態では、このDNA断片は、AAGGAGCGATCGCCATGX(配列番号1)を含み、配列中、Xは、A、T、G、又はCである。
【0034】
さらに、SgfI認識部位と、mRNA中に存在する場合にそのmRNAが真核生物リボソームのスモールサブユニットに結合するのを促進する、ATGを含む配列と、この配列中のATGで開始するオープンリーディングフレームとを含むベクターを提供する。
【0035】
本発明は、平滑末端を生成する第2の制限酵素の認識部位の5’側に3’TAオーバーハングを生成する第1の制限酵素の認識部位を含むベクターも含み、このベクターは、第1の制限酵素及び第2の制限酵素で消化して、SgfIによって生成された末端、及び第3の制限酵素によって生成された末端が隣接したオープンリーディングフレームを含むDNA断片に連結すると、このオープンリーディングフレームを含む組換えベクターを産生し、この場合、第3の制限酵素は、少なくとも一生物種のcDNA又はオープンリーディングフレームで低頻度である制限部位を有し、かつ平滑末端を生成する。一実施形態では、第2の制限酵素及び第3の制限酵素が同一である。別の実施形態では、第1の制限酵素の認識部位がSgfIの認識部位である。
【0036】
3’TAオーバーハングを生成する第1の制限酵素の認識部位と、オープンリーディングフレーム中に存在しない、平滑末端を生成する第2の制限酵素の認識部位とを含む第1のオープンリーディングフレームを含むベクターも提供され、このベクターは、第1の制限酵素及び第2の制限酵素で消化して、SgfIによって生成され末端及び第3の制限酵素によって生成された末端が隣接した第2のオープンリーディングフレームを含むDNA断片に連結すると、第1のオープンリーディングフレーム及び第2のオープンリーディングフレームを含む第3のオープンリーディングフレームを含む組換えベクターを産生し、この場合、第3の制限酵素は、少なくとも一生物種のcDNA又はオープンリーディングフレームで低頻度である制限部位を有し、かつ平滑末端を生成し、第3のオープンリーディングフレームは融合ペプチド又はタンパク質をコードする。
【0037】
さらに、SgfI認識部位との1ヌクレオチドのオーバーラップを任意選択で有するリボソーム結合部位と、平滑末端を生成する第1の制限酵素の認識部位とを含むベクターも提供され、このベクターは、SgfI及び第1の制限酵素で消化して、
【化7】
及び第2の制限酵素によって生成された平滑末端が隣接した、ペプチド又はポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むDNA断片と連結すると、このペプチド又はポリペプチドをコードする組換えベクターを産生し、この場合、第2の制限酵素は、少なくとも一生物種のcDNA又はオープンリーディングフレームで低頻度である制限部位を有し、かつ平滑末端を生成し、配列中、X
1は、このオープンリーディングフレームの開始コドンの3’側にある最初のコドンであり、X
2はX
1に対して相補的であり、Y
1はこのオープンリーディングフレームの残部であり、Y
2はYに対して相補的である。一実施形態では、X
1=GR
1R
2であり、配列中、R
1又はR
2=A、T、C、又はGである。
【0038】
さらに、PmeI認識部位を含み、かつ第1の制限酵素の認識部位が5’末端に隣接した第1のオープンリーディングフレームを含むベクターであって、第1の制限酵素が相補的な一本鎖DNAオーバーハングを生成するベクターも提供され、このベクターは、PmeI及び第1の制限酵素で消化されて、第2のオープンリーディングフレームの5’末端に平滑末端を含み、さらに第2の制限酵素によって生成された末端を含むDNA断片に連結されれば、第1のオープンリーディングフレーム及び第2のオープンリーディングフレームを含む第3のオープンリーディングフレームを含む組換えベクターを産生し、この場合、第2の制限酵素は、第1の制限酵素によって生成される一本鎖DNAオーバーハングに相補的な一本鎖DNAオーバーハングを生成する。一実施形態では、第3のオープンリーディングフレームが、N
1N
2N
3GTTTN
4N
5R(配列番号72)を含み、配列中、N
1N
2N
3及びTN
4N
5は、終止コドンをコードしないコドンであり、Rは、1つ又は複数のコドンである。別の実施形態では、このDNA断片の平滑末端が、PmeI以外の制限酵素によって生成される。さらに別の実施形態では、このDNA断片の平滑末端がPmeI消化によって生成される。
【0039】
本発明は、PmeI認識部位を含みかつ第1の制限酵素の部位が5’末端に隣接している第1のオープンリーディングフレームを含むベクターであって、第1の制限酵素が相補的な一本鎖DNAオーバーハングを生成するベクターを含む。このベクターは、PmeI及び第1の制限酵素で消化して、平滑末端、及び第2の制限酵素によって生成された末端を含むDNA断片に連結すると、N
1N
2N
3GTTTN
4N
5を含む組換えベクターを産生し、この場合、第2の制限酵素は、第1の制限酵素によって生成される一本鎖DNAオーバーハングに相補的な一本鎖DNAオーバーハングを生成し、配列中、N
1N
2N
3GTTTは、消化された発現ベクターの3’末端の配列である。一実施形態では、N
1N
2N
3のトリプレットは終止コドンをコードせず、N
4及びN
5=A、又はN
4=AかつN
5=G、又はN
4=GかつN
5=Aである。別の実施形態では、N
1N
2N
3のトリプレットが終止コドンをコードする。一実施形態では、このDNA断片の平滑末端がPmeI消化によって生成される。別の実施形態では、このDNA断片の平滑末端が、PmeI以外の制限酵素によって生成される。
【0040】
本発明は、第1の制限酵素の認識部位を含むベクターを第1の制限酵素及び第2の制限酵素で消化して、SgfIによって生成された末端、及び第3の制限酵素によって生成された末端が隣接したオープンリーディングフレームを含むDNA断片に、消化されたベクターを連結することによって調製された組換えベクターであって、第1の制限酵素は、平滑末端を生成する第2の制限酵素の認識部位の5’側に3’TAオーバーハングを生成し、第3の制限酵素は、少なくとも一生物種のcDNA又はオープンリーディングフレームで低頻度である制限部位を有し、かつ平滑末端を生成するベクターを提供する。
【0041】
複数の組換えベクターを含む支持体であって、これらの組換えベクターのうち1つ又は複数が、異なるオープンリーディングフレームを含む、支持体も提供する。これらの組換えベクターの少なくとも1つは、プロモーターと、2つの置換部位が隣接した第1のオープンリーディングフレームとを含む。これらの置換部位は、平滑末端を生成する第1の制限酵素の認識部位の5’側に3’TAオーバーハングを生成する第1の制限酵素の認識部位の5’側にプロモーターを含むベクターであって、第1の制限酵素及び第2の制限酵素で消化されたベクターと、SgfIによって生成された末端、及び第3の制限酵素によって生成された末端が隣接した第1のオープンリーディングフレームを含むDNA配列であって、第3の制限酵素は、少なくとも一生物種のcDNA又はオープンリーディングフレームで低頻度である制限部位を有し、かつ平滑末端を生成する、DNA配列とを連結することによって形成される。少なくとも1つの組換えベクターを含む組換え細胞のライブラリー、又は、少なくとも1つの組換えベクターを含むベクターのライブラリーも提供される。
【0042】
別の実施形態では、この支持体は複数の組換えベクターを含み、これらの組換えベクターのうち2つ以上が、異なるポリペプチドのオープンリーディングフレームを含む。少なくとも1つの組換えベクターが、プロモーターと、第2のオープンリーディングフレーム、及び第2のオープンリーディングフレームとインフレームである1つ又は複数のコドンを含む第1のオープンリーディングフレームとを含み、第2のオープンリーディングフレームには、2つの置換部位が隣接する。これらの置換部位は、PmeI認識部位を含み、かつ、相補的な一本鎖DNAオーバーハングを生成する第1の制限酵素の認識部位が5’末端に隣接している第2のオープンリーディングフレームを含むDNA配列であって、PmeI及び第1の制限酵素で消化されたDNA配列と、前述の1つ又は複数のインフレームのコドンの5’側にある5’末端に平滑末端を含み、さらに、第2の制限酵素によって生成された末端の5’側にあるプロモーターを含むベクターであって、第2の制限酵素は、第1の制限酵素によって生成される一本鎖DNAオーバーハングに相補的な一本鎖DNAオーバーハングを生成するベクターとを連結することによって形成される。少なくとも1つの組換えベクターを含む組換え細胞のライブラリー、又は、少なくとも1つの組換えベクターを含むベクターのライブラリーも提供される。
【0043】
複数の組換えベクターを含む支持体であって、これらの組換えベクターのうち2つ以上が、異なるポリペプチドのオープンリーディングフレームを含み、少なくとも1つの組換えベクターが、プロモーターと、2つの置換部位が隣接したオープンリーディングフレームとを含む、支持体も提供される。これらの置換部位は、ハパックス末端制限酵素である第1の制限酵素の制限酵素部位が少なくとも2つ隣接したオープンリーディングフレームを含むDNA配列であって、このDNA配列を第1の制限酵素で消化することによって、第1対の非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングが隣接した第1のDNA断片が生成される、DNA配列と、プロモーター、及び、第2の制限酵素の制限酵素部位が2つ隣接した非必須DNA配列を含むベクターであって、第2の制限酵素はハパックス末端制限酵素であり、このベクターを第2の制限酵素で消化することによって第2のDNA断片が生成され、第2のDNA断片は、非必須DNA配列が欠失していて、かつ第2対の非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングが隣接しているベクターとを連結することによって形成される。第2対の非自己相補的DNAオーバーハングのそれぞれは、第1対の非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングの一本鎖DNAオーバーハングのうちの1つのみと相補的である。少なくとも1つの組換えベクターを含む組換え細胞のライブラリー、又は、少なくとも1つの組換えベクターを含むベクターのライブラリーも提供される。
【0044】
本発明はさらに、複数の組換えベクター又は組換え細胞を含む支持体を調製する方法を提供する。この方法は、複数の組換えベクター又は組換えベクターを含む組換え細胞を選択するステップを含み、これらの組換えベクターのうち2つ以上が異なるポリペプチドのオープンリーディングフレームを含み、少なくとも1つの組換えベクターが、プロモーターと、2つの置換部位が隣接した第1のオープンリーディングフレームとを含む。これらの置換部位は、平滑末端を生成する第2の制限酵素の認識部位の5’側に3’TAオーバーハングを生成する第1の制限酵素の認識部位の5’側にプロモーターを含むベクターであって、第1の制限酵素及び第2の制限酵素で消化されたベクターと、SgfIによって生成された末端、及び第3の制限酵素によって生成された末端が隣接した第1のオープンリーディングフレームを含むDNA配列であって、第3の制限酵素は、少なくとも一生物種のcDNA又はオープンリーディングフレームで低頻度である制限部位を有し、かつ平滑末端を生成する、DNA配列とを連結することによって形成される。選択された組換えベクター又は組換え細胞は、次に、支持体の1つ又は複数の容器に導入する。
【0045】
さらに、複数の組換えベクター又は組換え細胞を含む支持体を調製する方法も提供する。この実施形態では、複数の組換えベクター又は組換えベクターを含む組換え細胞が選択され、これらの組換えベクターのうち2つ以上が異なるポリペプチドのオープンリーディングフレームを含み、これらの組換えベクターの少なくとも1つが、プロモーターと、第2のオープンリーディングフレーム、及び第2のオープンリーディングフレームとインフレームである1つ又は複数のコドンを含む第1のオープンリーディングフレームとを含み、第2のオープンリーディングフレームには、2つの置換部位が隣接する。これらの置換部位は、PmeI認識部位を含み、かつ、相補的な一本鎖DNAオーバーハングを生成する第1の制限酵素の認識部位が5’末端に隣接している第2のオープンリーディングフレームを含むDNA配列であって、PmeI及び第1の制限酵素で消化されたDNA配列と、前述の1つ又は複数のコドンの5’側にある5’末端に平滑末端を含み、さらに、第2の制限酵素によって生成された末端の5’側にあるプロモーターを含むベクターであって、第2の制限酵素は、第1の制限酵素によって生成される一本鎖DNAオーバーハングに相補的な一本鎖DNAオーバーハングを生成するベクターとを連結することによって形成される。選択された組換えベクター又は組換え細胞は、支持体の1つ又は複数の容器に導入する。
【0046】
一実施形態では、本発明は、複数の組換えベクター又は組換え細胞を含む支持体を調製する方法を提供し、この方法は、複数の組換えベクター又は組換えベクターを含む組換え細胞を選択するステップを含み、これらの組換えベクターのうち2つ以上が異なるポリペプチドのオープンリーディングフレームを含む。少なくとも1つの組換えベクターが、プロモーターと、2つの置換部位が隣接したオープンリーディングフレームとを含み、ハパックス末端制限酵素である第1の制限酵素の制限酵素部位が、少なくとも2つ隣接したオープンリーディングフレームを含むDNA配列であって、このDNA配列を第1の制限酵素で消化することによって、第1対の非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングが隣接した第1のDNA断片が生成される、DNA配列と、プロモーター、及び、第2の制限酵素の制限酵素部位が2つ隣接した非必須DNA配列を含むベクターであって、第2の制限酵素はハパックス末端制限酵素であり、このベクターを第2の制限酵素で消化することによって第2のDNA断片が生成され、第2のDNA断片は、非必須DNA配列が欠失していて、かつ第2対の非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングが隣接しているベクターとを連結することによって置換部位が形成される。第2対の非自己相補的DNAオーバーハングのそれぞれは、第1対の非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングの一本鎖DNAオーバーハングのうちの1つのみと相補的である。選択された組換えベクター又は組換え細胞は、支持体の1つ又は複数の容器内に導入する。
【0047】
複数の変異型組換えベクターを調製する方法も提供する。この方法は、3’TAオーバーハングを生成する第1の制限酵素の認識部位、及び第2の制限酵素の部位が隣接した複数の変異型オープンリーディングフレームを含むDNAを準備するステップを含み、第2の制限酵素は、少なくとも一生物種のcDNA又はオープンリーディングフレームで低頻度である制限部位を有し、かつ平滑末端を生成する。このDNAを第1の制限酵素及び第2の制限酵素で消化して、平滑末端を生成する第3の制限酵素の認識部位の5’側にあるSgfI認識部位の5’側にあるプロモーターを含むベクターであって、SgfI及び第3の制限酵素で消化されたベクターに連結することによって、複数の変異型組換えベクターが産生される。
【0048】
一実施形態では、複数の変異型オープンリーディングフレームを含むDNAには、SgfI認識部位及び第1の制限酵素の部位が隣接し、第1の制限酵素は、少なくとも一生物種のcDNA又はオープンリーディングフレームで低頻度である制限部位を有し、かつ平滑末端を生成し、このDNAをSgfI及び第1の制限酵素で消化して、平滑末端を生成する第3の制限酵素の認識部位の5’側に3’TAオーバーハングを生成する第2の制限酵素の認識部位の5’側にプロモーターを含むベクターであって、第2の制限酵素及び第3の制限酵素で消化されたベクターに連結することによって、複数の変異型組換えベクターが産生される。
【0049】
本発明は、複数の変異型組換えベクターを調製する方法も含み、この方法は、ハパックス末端制限酵素であり、かつ第1対の非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングを生成する第1の制限酵素の制限酵素部位が2つ隣接した複数の変異型オープンリーディングフレームを含むDNAを準備するステップを含む。このDNAを第1の制限酵素で消化して、プロモーター、及び、第2の制限酵素の制限酵素部位が2つ隣接した非必須DNA配列を含むベクターに連結することによって、複数の変異型組換えベクターが産生し、第2の制限酵素はハパックス末端制限酵素であり、このベクターを第2の制限酵素で消化することによって、非必須DNA配列を欠くが第2対の非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングを含むDNA断片が生成され、第2対の非自己相補的DNAオーバーハングのそれぞれは、第1対の非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングの一本鎖DNAオーバーハングのうちの1つのみと相補的である。
【0050】
本発明のベクター及びこれらのベクターを用いた本発明の方法は、オープンリーディングフレームの方向性クローニングに特に有用である。しかし、本発明のベクター及び方法が他の適用にも有用であり、それらは、例えば、バクテリオファージポリメラーゼなどのポリメラーゼに特異的なプロモーターを有するベクターを用いて、例えばプローブ、例えば放射性又は非放射性のプローブを調製するのに、或いは、一本鎖のセンス若しくはアンチセンスプローブ又は治療用のアンチセンスRNAを調製するのに、或いは、アンチセンスの方向性で遺伝子を挿入して、それによって、その遺伝子が発現されないようにするか、例えば、Cre/lox(米国特許第5,658,772号)、FLP/FRT、MuのGinリコンビナーゼ、大腸菌(E.coli)のPinリコンビナーゼ、及びpSR1プラスミドのR/RSシステムを用いた組換えを介した構造再編成の後にのみ発現されるようにする(条件的遺伝子不活性化)のに利用することができる。
【0051】
遺伝子解析を行う方法も提供する。この方法は、遺伝子データのデータベースに遺伝子データを格納して、複数の遺伝子記録を生成するステップを含む。遺伝子データを含有するデータベースを検索して、遺伝子記録の第1のサブセットを同定するが、その際、1セットの所定の制限酵素に含まれる制限酵素の認識部位を、各記録が少なくとも1つ有し、第1のサブセット中の少なくとも第2のサブセットの遺伝子記録の制限酵素認識部位に関連した1セットの統計を決定する。
【0052】
一実施形態では、この1セットの統計を決定するステップは、ある所定の制限酵素、又は所定の制限酵素前記1セットに含まれる各制限酵素の認識部位を含む遺伝子記録の数を決定することを含む。別の実施形態では、この1セットの統計を決定するステップは、第2のサブセット中の1遺伝子記録における、所定の1制限酵素、又は前記所定の制限酵素の少なくとも1つの部位の発生数を決定することを含む。さらに別の実施形態では、遺伝子記録が核酸配列を含む。一実施形態では、サブセットの遺伝子記録をふるい分けて、選択された1つ又は複数の特性を有する遺伝子記録を含めるか、或いは排除することをさらに含む。さらに別の実施形態では、サブセットの遺伝子記録をふるい分けて、所定の値より大きなサイズを有する遺伝子記録を排除することをさらに含む。一実施形態では、この所定の値が21000字である。この方法は、認識部位中の不確定塩基として存在する特定の塩基、又は制限酵素の認識部位と、認識部位を含有するDNAを前記制限酵素が切断する位置との間に存在する特定の塩基の配列を決定することをさらに含む。一実施形態では、これらの制限酵素の少なくとも1つが、6bp、7bp、又は8bpの認識部位を有する。一実施形態では、これらの制限酵素の少なくとも1つがハパックス末端制限酵素である。
【0053】
さらに、遺伝子解析を行う方法を実行するための、コンピュータで実施可能な指令を有するコンピュータ読み込み可能な媒体を提供する。この媒体は、遺伝子データのデータベースに複数の遺伝子記録を格納すること、所定の1制限酵素、又は1セットの所定の制限酵素に含まれる制限酵素の認識部位を各記録が少なくとも1つ有する遺伝子データのデータベースを検索して、第1のサブセットの遺伝子記録を同定すること、及び、第1のサブセット中の少なくとも第2のサブセットの遺伝子記録の制限酵素認識部位に関連した1セットの統計を決定することを含む。遺伝子解析用の計算機化されたシステムも提供する。このシステムは、遺伝子データのデータベースと、プロセッサーと、第1のサブセットの遺伝子記録を同定するための、遺伝子データのデータベースの検索であって、所定の1制限酵素、又は1セットの所定の制限酵素に含まれる制限酵素の認識部位を各記録が少なくとも1つ有する、検索、及び、第1のサブセット中の少なくとも第2のサブセットの遺伝子記録の制限酵素認識部位に関連した1セットの統計の決定を行わせる、プロセッサーによって実行される1セットの1つ又は複数のプログラムとを含む。一実施形態では、この1セットの統計は、ある所定の制限酵素、又は所定の制限酵素の1セットに含まれる各制限酵素の認識部位を含む遺伝子記録の数を含み、例えばこれを決定することを含む。一実施形態では、この1セットの統計は、第2のサブセット中の1遺伝子記録における、所定の1制限酵素、又は前記所定の制限酵素の少なくとも1つの部位の発生数を含み、例えばこれを決定することを含む。一実施形態では、遺伝子記録が核酸配列を含む。一実施形態では、サブセットの遺伝子記録をふるい分けて、選択された1つ又は複数の特性を有する遺伝子記録を含めるか、或いは排除することが、この方法にさらに含まれるか、或いは、プロセッサーによってさらに実行可能である。別の実施形態では、サブセットの遺伝子記録をふるい分けて、所定の値より大きなサイズを有する遺伝子記録を排除することが、この方法にさらに含まれるか、或いは、プロセッサーによってさらに実行可能である。一実施形態では、所定の値が21000字である。別の実施形態では、認識部位中の不確定塩基として存在する特定の塩基、又は、制限酵素の認識部位と、認識部位を含有するDNAを前記制限酵素が切断する位置との間に存在する特定の塩基の配列を決定することが、この方法にさらに含まれるか、或いは、プロセッサーによってさらに実行可能である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
定義
「ユニークな制限酵素部位」という用語は、所与の制限酵素の認識配列が核酸分子中に1つ存在することを示す。
【0056】
「ポリリンカー」又は「多重クローニング部位」という用語は、遺伝子及びlox部位などのコード領域など、核酸配列の挿入及び/又は切り出しに使用される、核酸コンストラクトにおける制限酵素部位のクラスターを指す。
【0057】
「原核細胞の終止配列」という用語は、原核細胞宿主細胞のRNAポリメラーゼによって認識され、その結果、転写の終結をもたらす核酸配列を示す。原核細胞の終止配列は、通常、二回転対称のGCリッチ領域と、それに続くATリッチ配列とを含む。一般的に使用されている原核細胞の終止配列は、T7及びrrnBの終止配列である。バクテリオファージラムダ由来のT
INT、T
L1、T
L2、T
L3、T
R1、T
R2、及びT
6S終止シグナル、並びに、大腸菌(E.coli)のtrp遺伝子などの細菌遺伝子由来の終止シグナルを含めた様々な終止配列が当技術分野で知られており、本発明の核酸コンストラクトで利用できる。
【0058】
「真核細胞ポリアデニル化配列」(「ポリA部位」又は「ポリA配列」とも呼ばれる)という用語は、本明細書で使用される場合、新生RNA転写産物の終止及びポリアデニル化の両方を指示するDNA配列を指す。ポリAテールを欠く転写産物は不安定であり、迅速に分解されるので、組換え転写産物の効率的なポリアデニル化が望ましい。発現ベクターで用いるポリAシグナルは、「異種」のものでも、「内在性」のものでもよい。内在性ポリAシグナルは、ゲノム中における所与の遺伝子のコード領域の3’末端に天然に見出されるものである。異種ポリAシグナルは、ある遺伝子から単離されて、別の遺伝子の3’に配置されているものである。一般的に使用されている異種ポリAシグナルは、SV40ポリAシグナルである。SV40ポリAシグナルは、237bpのBamHI/BclI制限断片に含有されており、終止及びポリアデニル化の両方を指示し(Sambrookら、「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」、Cold Spring Harbor社、(1989年))、多数のベクターがSV40ポリAシグナルを含有する。一般的に使用されている別の異種ポリAシグナルはウシ成長ホルモン(BGH)遺伝子に由来するものであり、BGHポリAシグナルは市販されている多数のベクターで利用可能である。単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV tk)遺伝子由来のポリAシグナルも、発現ベクターで、ポリAシグナルとして使用される。
【0059】
本明細書で使用する場合、「選択マーカー」又は「選択マーカー遺伝子」という用語は、それなしには、必須栄養素であろうものを欠失した培地中で増殖する能力を与える酵素活性をコードする遺伝子(例えば酵母細胞のTRP1遺伝子)の使用を意味し、さらに、選択マーカーは、選択マーカーが発現されている細胞に、抗生物質又は薬物に対する耐性を与えるものでもよい。選択マーカーは、宿主細胞に特定の表現型を与えるために使用することもできる。宿主細胞が選択培地中で増殖するのに選択マーカーを発現しなければならない場合に、このマーカーは正の選択マーカーであるという(例えば、適当な抗生物質の存在下で増殖する能力を与える抗生物質抵抗性遺伝子)。選択マーカーは、特定の遺伝子を含有する宿主細胞に対して否定的な選択を行うのに使用することもでき(例えばsacB遺伝子、この遺伝子は発現された場合に、5%のショ糖を含有する培地中で培養された細菌宿主細胞を殺す)、この様に用いられた選択マーカーは負の選択マーカー又は対抗選択可能なマーカーと呼ばれる。
【0060】
本明細書で使用する場合、「ベクター」という用語は、1つの細胞から別の細胞にDNAセグメントを導入する核酸分子について使用する。「ビークル」という用語は、「ベクター」と互換性をもって使用される。「ベクター」は「核酸コンストラクト」の1種である。「核酸コンストラクト」という用語には、プラスミドコンストラクト、プラスミドコンストラクト、及びコスミドベクター環状核酸コンストラクトが含まれ、線状核酸コンストラクト(例えば、ラムダ、ファージコンストラクト、PCR産物)も同様に含まれる。核酸コンストラクトはプロモーター、そして/又は、エンハンサーなどの発現シグナルを含んでもよい(このような場合にはそれは発現ベクターと呼ばれる)。
【0061】
「発現ベクター」という用語は、本明細書で使用される場合、所望のコード配列と、特定の宿主生物における、作用可能に連結されたコード配列の発現に必要な適当な核酸配列とを含有する組換えDNA分子を指す。原核細胞での発現に必要な核酸配列には、通常、プロモーター、オペレーター(任意選択)、及びリボソーム結合部位が含まれるが、他の配列が含まれることも多い。真核細胞は、プロモーター、エンハンサー、終止シグナル、及びポリアデニル化シグナルを用いることが知られている。
【0062】
「作用可能な組合せ」、「作用可能な順序」、及び「作用可能に連結した」という用語は、本明細書で使用される場合、所与の遺伝子の転写及び/又は所望のタンパク質分子の合成を指示できる核酸分子が生成されるような方法での核酸配列の連結を意味する。この用語は、機能タンパク質が生成される方法でのアミノ酸配列の連結も意味する。
【0063】
「形質転換」及び「形質移入」という用語は、本明細書で使用される場合、原核細胞又は真核細胞の中に外来DNAを導入することを意味する。原核細胞の形質転換は、コンピテント細胞を作製するための、CaCl
2での宿主細胞の処理、及びエレクトロポレーションなどを含めた、当技術分野で知られている様々な方法によって実施することができる。真核細胞の形質移入は、カルシウムリン酸DNA共沈、DEAEデキストラン媒介トランスフェクション、ポリブレン媒介形質移入、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション法、リポソーム融合、リポフェクション、プロトプラスト融合法、レトロウイルス感染、及びバイオリスティクスを含めた、当技術分野で知られている様々な方法によって実施することができる。
【0064】
本明細書で使用する場合、「制限エンドヌクレアーゼ」及び「制限酵素」という用語は、それぞれ、特定のヌクレオチド配列において、或いはその近傍で二本鎖DNAを切断する細菌酵素を指す。
【0065】
本明細書で使用する場合、「組換えDNA分子」という用語は、分子生物学的技法によって一体にされたDNAセグメントから成るDNA分子を指す。
【0066】
本明細書で使用する場合、「認識部位」は、その配列が二本鎖DNAに存在する場合は、制限酵素によって認識される特定の塩基配列;或いは、その配列が一本鎖RNAに存在する場合は、そのRNAがcDNAに逆転写されて、そのcDNAを鋳型として用いてDNAポリメラーゼで二本鎖DNAを生成させた場合に、制限酵素によって認識されるであろう特定の塩基配列;或いは、その配列が一本鎖DNAに存在する場合は、その一本鎖DNAを鋳型として用いてDNAポリメラーゼで二本鎖DNAを生成させた場合に、制限酵素によって認識されるであろう特定の塩基配列;或いは、その配列が二本鎖RNAに存在する場合は、RNAのいずれかの鎖がcDNAに逆転写されて、そのcDNAを鋳型として用いてDNAポリメラーゼで二本鎖DNAを生成させた場合に、制限酵素によって認識されるであろう特定の塩基配列を指す。
【0067】
「オープンリーディングフレーム」は、終止コドンでないコドンを少なくとも3つ連続して含む。
【0068】
DNA分子は、「5’末端」及び「3’末端」を有すると言われるが、これは、1つのモノヌクレオチドペントース環の5’リン酸が、ホスホジエステル結合を介して、その近傍のものの3’酸素に一定方向で結合する様式で、モノヌクレオチドが反応してオリゴヌクレオチドを生成するためである。したがって、オリゴヌクレオチドの末端は、その5’リン酸がモノヌクレオチドペントース環の3’酸素に連結されていなければ、「5’末端」と呼び、3’酸素が後続のモノヌクレオチドペントース環の5’リン酸に連結されていなければ、「3’末端」と呼ぶ。本明細書で使用する場合、核酸配列は、さらに大きなオリゴヌクレオチドの内部にある場合にも、5’末端及び3’末端を有するということができる。線状のDNA分子でも、環状のDNA分子でも、個別のエレメントは、「下流」又は3’側のエレメントの「上流」又は5’側にあるという。この用語は、転写がDNA鎖に沿って5’から3’に向かって進行するという事実を反映している。連結している遺伝子の転写を指示するプロモーター及びエンハンサーエレメントは、通常、コード領域の5’側又は上流に見出される。しかし、エンハンサーエレメントは、プロモーターエレメント及びコード領域の3’側に位置する場合にも、その作用を及ぼすことができる。転写終止シグナル及びポリアデニル化シグナルは、コード領域の3’側又は下流に位置する。
【0069】
本明細書で使用する場合、「遺伝子をコードするヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチド」という用語は、その遺伝子のコード領域を含む核酸配列、又は、換言すれば、遺伝子産物をコードする核酸配列を意味する。コード領域は、cDNA、ゲノムDNA、又はRNAの形態で存在しうる。DNAの形態で存在する場合、このオリゴヌクレオチドは、一本鎖(すなわちセンス鎖)か、又は二本鎖でありうる。エンハンサー/プロモーター、スプライス部位、ポリアデニル化シグナルなどの適当な調節エレメントは、転写の適切な開始及び/又は一次RNA転写物の正しいプロセシングを可能にするのに必要な場合には、遺伝子のコード領域の極めて近傍に配置することができる。別法として、本発明のベクターで使用されるコード領域は、内在性のエンハンサー/プロモーター、スプライス部位、介在配列、ポリアデニル化シグナルなど、又は内在性の調節エレメント及び外来性の調節エレメント両方の組合せを含むこともある。
【0070】
本明細書で使用する場合、「調節エレメント」という用語は、核酸配列の発現における何らかの様相を制御する遺伝子エレメントを指す。例えば、プロモーターは、作用可能に連結したコード領域の転写の開始を促進する調節エレメントである。他の調節エレメントには、スプライシングシグナル、ポリアデニル化シグナル、終止シグナル、及び同様のものが含まれる。
【0071】
真核細胞の転写調節シグナルには、「プロモーター」及び「エンハンサー」エレメントが含まれる。プロモーター及びエンハンサーは、転写に関与する細胞性タンパク質と特異的に相互作用するDNA配列の短いアレイから成る(Maniatisら、Science、236:1237(1987年))。プロモーター及びエンハンサーエレメントは、酵母、昆虫、哺乳類細胞、及びウイルスの遺伝子を含めた様々な真核細胞供給源から単離されている(類似の調節エレメント、すなわちプロモーターは原核細胞にも見出されている)。特定のプロモーター及びエンハンサーの選択は、対象のタンパク質を発現させるのに、どの細胞型が使用されるかによる。一部の真核細胞プロモーター及びエンハンサーは、広範な宿主を有し、一方、他のものは限定されたサブセットの細胞型で機能する(概説には、Vossら、Trends Biochem.Sci.11:287(1986年)及びManiatisら、同上(1987年)を参照)。例えば、SV40初期遺伝子エンハンサーは、多数の哺乳類種に由来する様々な細胞型で非常に活性が強く、哺乳類細胞でのタンパク質発現に広範に使用されている(Dijkemaら、EMBO J.、4:761(1985年))。広範な哺乳類細胞型で活性の高いプロモーター/エンハンサーエレメントの他の2つ例が、ヒト伸長因子10遺伝子由来のエレメント(Uetsukiら、J.Biol.Chem、264:5791(1989年)、Kimら、Gene、21:217(1990年)、及び、Mizushimaら、Nuc.Acids Res.、18:5322(1990年))、並びに、ラウス肉腫ウイルス(Gormanら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、79:6777(1982年))及びヒトサイトメガロウイルス(Boshartら、Cell、41:521(1985年))の長末端反復である。
【0072】
本明細書で使用する場合、「プロモーター/エンハンサー」という用語は、プロモーター及びエンハンサーの機能の両方(すなわち、プロモーターエレメントによって提供される機能と、エンハンサーエレメントによって提供される機能、これらの機能に関する論述は上記参照)を提供できる配列を含有するDNAセグメントを指す。例えば、レトロウイルスの長末端反復は、プロモーター及びエンハンサーの両方の機能を含有する。エンハンサー/プロモーターは、「内在性」でも、「外来性」でも、「異種」でもよい。「内在性」のエンハンサー/プロモーターは、ゲノム中における所与の遺伝子と自然な状態で連結されているものである。「外来性」又は「異種」のエンハンサー/プロモーターは、遺伝操作(すなわち分子生物学的技法)によって、ある遺伝子の近位に、その遺伝子の転写が、連結されているエンハンサー/プロモーターによって指示されるように配置されているものである。
【0073】
発現ベクターに「スプライシングシグナル」が存在すると、組換え転写産物の発現がより高いレベルになることが多い。スプライシングシグナルは、一次RNA転写物からのイントロンの除去を媒介し、スプライシングドナー部位及びアクセター部位から成る(Sambrookら、「分子クローニング:実験室マニュアル(Sambrook et al., Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press社、New York、16.7−16.8(1989年))。一般的に使用されているスプライシングドナー及びアクセプター部位は、SV40の16SRNA由来のスプライス部位である。
【0074】
真核細胞における組換えDNA配列の効率的発現は、結果として生成される転写産物の効率的な終止及びポリアデニル化を指示するシグナルの発現が必要である。転写終止シグナルは、通常、ポリアデニル化シグナルの下流に見出され、長さが数100ヌクレオチドである。「ポリA部位」又は「ポリA配列」という用語は、本明細書で使用する場合、新生RNA転写産物の終止及びポリアデニル化の両方を指示するDNA配列を指す。ポリAテールを欠く転写産物は不安定であり、迅速に分解されるので、組換え転写産物の効率的なポリアデニル化が望ましい。発現ベクターで用いるポリAシグナルは、「異種」のものでも、「内在性」のものでもよい。内在性ポリAシグナルは、ゲノム中における所与の遺伝子のコード領域の3’末端に天然に見出されるものである。異種ポリAシグナルは、ある遺伝子から単離されて、別の遺伝子の3’に配置されているものである。
【0075】
真核細胞の発現ベクターは、「ウイルスレプリコン」又は「ウイルスの複製開始点」も含有しうる。ウイルスレプリコンは、適切な複製因子を発現する宿主細胞内でベクターの染色体外の複製を可能にするウイルスDNA配列である。SV40又はポリオーマウイルスの複製開始点を含有するベクターは、適切なウイルス性T抗原を発現する細胞で高コピー数(最大10
4コピー/細胞)に複製される。ウシ乳頭腫ウイルス又はエプスタインーバーウイルスのレプリコンを含有するベクターは、染色体外において低コピー数(約100コピー/細胞)で複製される。
【0076】
本明細書で使用する場合、「コードする核酸分子」、「コードするDNA配列」、及び「コードするDNA」という用語は、デオキシリボ核酸の鎖に沿ったデオキシリボヌクレオチドの順序又は配列を意味する。これらのデオキシリボヌクレオチドの順序は、ポリペプチド(タンパク質)鎖に沿ったアミノ酸の順序を決定する。したがって、DNA配列は、アミノ酸配列をコードする。
【0077】
本明細書で使用する場合、「遺伝子」という用語は、ある遺伝子、例えば、構造遺伝子のコード領域と、遺伝子が完全長mRNAの長さに相当するように、両末端から約1kbの距離にわたって、コード領域の5’末端及び3’末端の両方に隣接した位置に含まれる配列とを含むデオキシリボヌクレオチド配列を意味する。コード領域の5’側に位置し、かつmRNA中に存在する配列を5’非翻訳配列と呼ぶ。コード領域の3’側又は下流に位置し、かつmRNA中に存在する配列を3’非翻訳配列と呼ぶ;これらの配列。「遺伝子」という用語は、遺伝子のcDNA形態及びゲノム形態の両方を包含する。遺伝子のゲノム形態又はゲノムクローンは、「イントロン」、「介在領域」又は「介在配列」と呼ばれる非コード配列によって分断されたコード領域を含有する。イントロンは、核RNA(hnRNA)に転写された遺伝子のセグメントであり;イントロンは、エンハンサーなどの調節エレメントを含有しうる。イントロンは、核転写産物又は一次転写産物から除去又は「スプライスアウト」され;したがって、イントロンは、メッセンジャーRNA(mRNA)転写産物から欠失している。mRNAは、翻訳中、新生ポリペプチドのアミノ酸の配列又は順序を特定する機能を有する。
【0078】
イントロンを含有することに加えて、ゲノム形態の遺伝子は、RNA転写物存在する配列の5’末端及び3’末端の両方に位置する配列を含みうる。これらの配列は、「隣接」配列又は領域と呼ばれる(これらの隣接配列は、mRNA転写物に存在する非翻訳配列の5’側又は3’側に位置する)。5’隣接領域は、プロモーター及びエンハンサーなど、遺伝子の転写を制御するか、これに影響を与える調節配列を含有しうる。3’隣接領域は、転写、転写後切断、及びポリアデニル化の終止を指示する配列を含有しうる。
【0079】
本明細書で使用する場合、「精製された」又は「精製する」という用語は、試料から夾雑物の除去することを意味する。
【0080】
本明細書で使用する場合、「組換えDNA分子」という用語は、分子生物学的技法によって一体にされたDNAセグメントから成るDNA分子を指す。
【0081】
「組換えタンパク質」又は「組換えポリペプチド」という用語は、本明細書で使用する場合、組換えDNA分子から発現されるタンパク質分子を指す。
【0082】
「天然タンパク質」という用語は、本明細書で使用する場合、タンパク質が、ベクター配列によってコードされたアミノ酸残基を含有しないことを示し、すなわち、天然タンパク質は、天然に存在するタンパク質に見出されるアミノ酸のみを含有する。天然タンパク質は、組換えによる方法によって生成しても、或いは天然に存在する供給源から単離してもよい。
【0083】
本明細書で使用する場合、「部分」という用語は、タンパク質に関して言及する場合(「所与のタンパク質の部分」などにおいて)、そのタンパク質の断片を指す。断片は、2アミノ酸残基又はそれより大きなものから、全アミノ酸配列から1アミノ酸を引いた大きさのものにまで及びうる。
【0084】
本明細書で使用する場合、「融合タンパク質」は、対象のタンパク質と、これに結合した別のペプチド又はタンパク質断片とを含有するキメラタンパク質を指す。融合パートナーは、結合している、対象のタンパク質の溶解性を促進するものでも、例えばその融合体を発現する宿主細胞若しくはその細胞の培養上清、又はこれら両方から、組換え融合タンパク質の同定及び/又は精製を可能にするエピトープタグ又は親和性ドメインを提供するものでも、或いは、別の特性又は活性を有するものでもよく、例えば2つの機能性酵素を融合させて、複数の酵素活性を有する単一タンパク質を生成させることができる。それが望しい場合には、当技術分野で知られている様々な酵素的又は化学的方法によって、対象のタンパク質から融合タンパク質を除去することができる。したがって、本発明のベクターで有用な配列を生成する融合タンパク質の例には、エピトープタグをコードする配列、親和性ドメインをコードする配列、又は他の機能タンパク質をコードする配列、及び同様のものが含まれる。本明細書で使用する場合、「機能タンパク質をコードする配列」という用語の使用は、融合タンパク質を生成するベクターエレメントが、酵素活性、例えばルシフェラーゼ又はデハロゲナーゼ、結合活性、並びに同様のもの、例えばチオレドキシンなど、特定の活性を有するタンパク質又はペプチドをコードすることを示す。例えば、機能タンパク質をコードする配列は、キナーゼ触媒ドメイン(Hanks及びHunter、FASEB J、9:576−595、1995年)をコードするものでもよく、この場合、特定のアミノ酸にリン酸部分を酵素的に付加できる融合タンパク質が生成され、或いは、Src相同性2(SH2)ドメイン(Sadowskiら、Mol.Cell Bio.、6:4396、1986年;Mayer及びBaltimore、Trends Cell Biol.、3:8、1993年)をコードするものでもよく、この場合、リン酸化チロシンに特異的に結合する融合タンパク質が生成される。
【0085】
I.本発明のベクター及び方法において有用な制限酵素部位及び酵素
本発明では、方向性クローニング及び秩序ある遺伝子集合に対する2つの一般的アプローチを使用する。1つのアプローチでは、ハパックス末端制限酵素、例えば、縮重認識又は開裂配列を有する制限酵素認識部位(
図1〜2参照)の制限部位を使用する。ハパックス末端酵素は、ユニークな末端を生成することが可能な酵素である(表1)。IIS型酵素のFokIが含まれ、分断されたパリンドロームのAlwNIも含まれる。切断部位は不特定の塩基内に位置しているので、末端はNで表される。分断又は隣接する認識部位の完全なヌクレオチド配列が書かれていない限り、末端の詳細な性質を述べることはできない。統計学的に述べると、すべての一本鎖のオーバーハングは異なっている。また、これらのオーバーハングが対称要素を有することも考えられない。一般的に、このことは、突出塩基は逆方向の相補配列が後に続く非対称単位の構成はとらず、末端は自己相補的とはならず、そのような末端を有する断片を有するコンカテマーを形成することは不可能となる、ことを意味する。EcoRIなどの非ハパックス末端酵素では、反対の状況が支配的である。認識部位G↓AATTC及び切断によって生成されるオーバーハング末端AATTの両方は、常にパリンドローム様エレメントを示し、あらゆる断片のオーバーハングは、それ自体と相補的であり、同じ酵素によって生成された他のすべての断片の突出末端と相補的である。
【表1】
【0086】
平滑末端を生成する酵素は、決してハパックス末端となることはできない。例えば、BsaBIの制限部位はNを有するが、この酵素は平滑末端を生成する。
【0087】
外見的にハパゾマーであるが、機能的にはハパゾマーでない酵素がある。制限エンドヌクレアーゼは、このカテゴリーであり、それぞれAlwI及びBpmIなどのわずか1種又は2種の不特定の塩基のオーバーハングを生成する(表2)。反対に、複数の縮重を有する部位を認識するそれらのII型酵素は、機能的にハパゾマーであるが、外見的にハパゾマーではない。例えば、いくつかの位置でBsp1286Iによって断片が切断された場合(表2)、一本鎖の伸長のアレイ、例えば、GGCC、TGCA、AGCT、GGCA、GGCT、AGCC、AGCA、TGCC及びTGCTが生じる。これらの最初の3つは、考慮の対象から除外される明らかな対称要素を有する。後半の6つの突出は、対称要素を持たず、したがって、自己相補的でも、自己連結的でもない。これらはユニークとなる可能性がある。その上で、Bsp1286Iはハパゾマーである。ハパゾターミニシティは、対称性を欠くオーバーハングを有限割合で生じる能力である。制限酵素認識部位の対称性又はその欠如は、全く重要でない。
【表2】
【0088】
Bsp1286Iは、各鎖上に4つの塩基のオーバーハングを有する。2つの塩基はユニークのものとして特定され、2つの塩基は3つの可能性のうちの1つに限定される。明らかに、末端がユニークである統計的な可能性は、2つの完全に不特定のオーバーハング塩基を生成するより少ない。そのような酵素は、BcgI、BpmI、BsaJI、BsgI、BsrDI、DrdI及びEco57Iを含む。
【0089】
本発明の一実施形態において、ドナーベクターを入手又は調製する。このドナーベクターは、少なくとも2つの制限酵素部位が隣接し、このうち少なくとも1つが縮重認識配列を有する第1の制限酵素の部位である、対象のDNA配列を含む。他の実施形態では、対象のDNA配列には、縮重認識配列を有する制限酵素のための2つの制限酵素部位が隣接し、この部位は同一ではなく、それゆえに、ドナーベクターがその酵素によって切断されると、非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングを有する線状DNAが産生される。また、ドナーベクターは、場合によっては、対象のDNA配列ではない、例えば、選択マーカー遺伝子がベクター骨格の一部である、少なくとも1つの選択マーカー遺伝子も含む。ドナーベクターは、一定方向で、対象のDNA配列をアクセプターベクターに導入して、得られたレシピエントベクターにおいて対象のDNA配列を発現させるために有用である。アクセプターベクターは、非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングを生成する縮重認識配列を有する第2の制限酵素のための少なくとも2つの制限酵素部位が隣接する非必須DNA配列を含む。これらの部位は、切断されると、第1の制限酵素によって生成された2つの一本鎖DNAオーバーハングのうちの1つだけにそれぞれが相補的である一本鎖DNAオーバーハングを生じる。一実施形態では、第1の制限酵素と第2の制限酵素は同一である。他の実施形態では、第1の制限酵素と第2の制限酵素は異なり、及びアイソシゾマーではなく、したがって、得られた連結配列(交換部位)は、対象のDNA配列を導入するために使用される縮重認識配列を有する制限酵素のうちの少なくとも1つによって切断することはできない。例えば、BglIによって生成した一本鎖DNAオーバーハングとSfiIによって生成した一本鎖DNAオーバーハングの融合により、SfiIには切断できないが、BglIには切断できる交換部位が生じる。同様に、SgfIによって生成した一本鎖DNAオーバーハングとPvuIによって生成した一本鎖DNAオーバーハングの融合により、SgfIには切断できないが、PvuIには切断できる交換部位が生じる。さらに、PmeIによって産生した末端とDraIによって産生した末端との融合により、PmeIには切断できないが、DraIには切断できる交換部位が生じる。
【0090】
別のアプローチでは、少なくとも2つの制限酵素部位が隣接した対象のDNA配列を含むドナーベクターを得るか、調製する。そして、これら部位のうちの1つは、少なくとも一生物種のcDNA又はオープンリーディングフレーム内の、低頻度である制限部位を有し、一本鎖DNAオーバーハングを生成する第1の制限酵素のものであり、もう1つの部位は、少なくとも一生物種のcDNA又はオープンリーディングフレーム内で低頻度である制限部位を有し、かつ第1の制限酵素によって生成されたオーバーハングと相補的でない末端を生成する第2の制限酵素のものである。一実施形態では、第2の制限酵素は、平滑末端を生成する。また、ドナーベクターは、場合によっては、対象のDNA配列ではない少なくとも1つの選択マーカー遺伝子も含む。ドナーベクターは、一定方向で、対象のDNA配列をアクセプターベクターに導入して、レシピエントベクターを生じる対象のDNA配列を発現させるために有用である。アクセプターベクターは、少なくとも2つの制限酵素部位が隣接する非必須DNA配列を含む。一実施形態では、非必須DNA配列は、対抗選択可能な遺伝子、例えば、雌雄不稔遺伝子(バルナーゼ遺伝子)、ccdB遺伝子又はSacB遺伝子を含む。アクセプターベクターにおける隣接する制限部位のうちの1つは、一本鎖DNAオーバーハングを生成する第3の制限酵素のためのものであり、このオーバーハングは、第1の制限酵素を有するドナーベクターの消化によって生成された一本鎖DNAオーバーハングに相補的である。一実施形態では、第3の制限酵素の制限部位は、第1の制限酵素の制限部位とは異なり、この部位は同一の制限酵素によって切断されない。他の実施形態では、第1の制限酵素及び第3の制限酵素は同一である。アクセプターベクターの他の隣接した制限部位は、第4の制限酵素のもので、第1の制限酵素又は第3の制限酵素によって生成した末端に相補的でない末端を生成する。一実施形態では、第2の制限酵素及び第4の制限酵素は、平滑末端を生成する。一実施形態では、第4の制限酵素の制限部位は、第2の制限酵素の制限部位とは異なり、この部位は同一の制限酵素によって切断されない。このように、交換部位は第2の制限酵素又は第4の制限酵素によって切断が不可能と思われる。他の実施形態では、第2の制限酵素及び第4の制限酵素は同一である。
【0091】
したがって、選択された制限酵素部位を有し、この部位が適切に配置されているドナーベクター及びアクセプターベクターをデザインすることによって、これらのベクターがそれぞれの制限酵素で消化されたら、対象のDNA配列はアクセプターベクター骨格内で一方向のみで配置させることができる。
【0092】
本発明の実施において有用な制限酵素部位は、平滑末端を生成する酵素によって認識される制限酵素部位だけでなく、クラスII酵素又はクラスIIS酵素によって認識されるハパゾメリック配列を含むがこれに限定されず、及び、1種又は複数の種で低頻度切断酵素である酵素を含む。
【0093】
適切なクラスIIS制限酵素は、5塩基隣接配列を認識する酵素含み、それらの酵素は次に掲げる酵素及びそれらのアイソシゾマー(カッコで示す)を含むがこれらに限定されるものではない。Alw26I(BsmAI)、AlwI(AclWI、BinI)、AsuHPI(HphI)、BbvI(Bst71I)、BcefI、BstF5I(BseGI、FokI)、FauI、HgaI、MboII、PleI、SfaNI及びTspRI。6塩基隣接配列を認識するクラスIIS制限酵素は、次に掲げる酵素及びそれらのアイソシゾマーを含むがこれらに限定されるものではない。
【化8】
SapI及びそのアイソシゾマーVapK32Iは7塩基隣接配列を認識し、SfiIは8塩基隣接配列を認識し、これらの酵素も使用可能である。有用な酵素のさらなる例は、4塩基分離配列を認識する酵素(例えば、Bse4I(BseLI、MsiYI、BslI)、MwoI)及び6塩基分離配列を認識する酵素(例えば、AccB7I(Esp1396I、PflMI、Van91I)、AdeI(DraIII)、AhdI(AspEI Eam1105I、EchHKI、NruGI)、AhwNI、ApaBI(BstAPI)、AspI(PflFI、Tth111I)、BglI、BstXI、DrdI(DseDI)及びEcoNI(XagI)、XcmI)を含む。さらなる適切なクラスIIS制限酵素は、当業者に知られている(例えば、Szybalskiら、Gene100:13(1991年)参照)。
【0094】
クラスIIS酵素でない、非パリンドローム末端を生成する他の酵素がある。そのような酵素の例は、次に掲げる酵素を含むが、これらに限定されるものではない。
【化9】
【0095】
本発明で有用な他の酵素は、1種又は複数の生物体の、DNA内、例えば、cDNA内に認識部位がほとんどない酵素である(「低頻度切断酵素」)。本発明のこの実施形態のための制限酵素部位を選択するために、生物体由来の複数のmRNA、オープンリーディングフレーム及び/又はcDNAに関する配列の分析を、例えば、コンピュータソフトウェアを使用して実施して、その生物体内におけるそれらの部位の相対的頻度を算出する(
図3〜5参照)。例えば、ヒトのcDNAでは、例えば、38〜43%の多数の認識部位を有するが、ヒトのcDNAでSgfI及びPmeIの組合せ、並びにSfiIは、例えば、それぞれ2〜3%、13〜14%と比較的認識部位が少ない。SgfIに相補的な末端を生成することができる酵素は、次に掲げる酵素を含むが、これらに限定されるものではない。
【化10】
【0096】
平滑末端を生成する酵素は、次に掲げる酵素を含むが、これらに限定されるものではない。
【化11】
【0097】
一実施形態において、本発明のベクター内の制限酵素部位は、平滑末端を生成して、好ましくは、特定の生物体における比較的少ない認識部位を有する制限酵素のためのものであって、これらの制限酵素は、例えば、PmeI(MssI)、NruI(Bsp68I、MluB21、Sbo13I、SpoI)、SnaBI(BstSNI、Eco105I)、SrfI及びSwaI(BstRZ246I、BstSWI、MspSWI、SmiI)、並びに、
【化12】
又はそのアイソシゾマー、
である。
【0098】
II.認識部位の頻度を特定する方法
図3は、本発明の実施形態に従って遺伝分析を実施するための方法300のフローチャートである。この方法は、1つ又は複数のコンピュータプログラム又はコンピュータ実行形式の指示から成るモジュールによって実行することができる。フローチャートを参照することによって、この方法を説明することは、当業者がそのようなプログラム又はモジュールを開発することを可能にし、これには適切なコンピュータ上(RAM、ROM、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ドライブ及びその他のそのようなメディアなどのコンピュータ可読メディアからの指示を実行するコンピュータの1つ又は複数のプロセッサー)でその方法を実行するためのそのような指示が含まれる。
図3に示す方法は、本発明の典型的な実施形態を実行する操作環境によって実行できる行為を含む。
【0099】
この方法を実行するシステムは、データベースにソースデータベース(ブロック302)から得た遺伝子記録を読み込むことによって立ち上がる。データベースの読む込みは、何らかの操作マニュアルを使用して実行してもよい。一部の実施形態では、遺伝子記録は、例えば、cDNA又はその部分のオープンリーディングフレームを有する遺伝子配列を含む。一部の実施形態では、公的に利用可能なソースデータベースから得ることができる遺伝子記録を使用して、データベースに読み込まれる。例えば、一部の実施形態では、ヒトの遺伝子データは、インターネットのURL(Uniform Resource Locator)「ftp.ncbi.nih.gov/refseq/H_sapiens/mRNA_Prot/hs_fna.gz」又はURL mgc.nci.nih.gov/を通して得ることができる。パン酵母の遺伝子データは、URL「genome−ftp.stanford.edu/pub/yeast/data_download/sequence/genormic_sequence/orf_dna.」を使用して得ることができる。大腸菌(E.coli)の遺伝子データは、URL「www.genome.wisc.edu/sequencing/k12.htm.」から得ることができる。シノラブディス・エレガンス(C.elegans)の遺伝子データは、URL「ftp.wormbase.org/pub/wormbase/confirmed_genes_current.gz」を使用して得ることができる。シロイヌナズナ(Arabidopsis)の遺伝子データは、URL「tairpub:tairpub@ftp.arabidopsis.org/home/tair/Sequences/blast_datasets/fi1e=ATH1.cds.」を使用して得ることができる。本発明の実施形態は、遺伝子データのいかなる特定のソースも限定するものではなく、多くの公的及び私的に利用可能なソースも利用できることに留意する必要がある。一実施形態において、遺伝子記録は、選択した生物体のゲノム内の、少なくとも10%以上、例えば、25%、50%又は50%超のオープンリーディングフレームを表す。
【0100】
ソースデータベースのデータフォーマットは、遺伝子データベースのために望ましいフォーマットと異なる可能性がある。一部の実施形態において、ソースデータベースは、遺伝子データベースに保存するための共通フォーマットに変換される。
【0101】
所定の制限酵素又は一連の所定の制限酵素の少なくとも1つの認識部位を有する遺伝子データベースにおいて、一部の記録を検索するために照会される(ブロック304)。一実施形態において、1種又は複数の所定の制限酵素は、6、7又は8bpの認識部位を有することができ、例えば、1セットが、7bpの認識部位を有する所定の制限酵素及び8bpの認識部位を有する他の所定の制限酵素を含むことができる。しかし、本発明は、セットに含まれる制限酵素のいかなる特定の数、又は所定の制限酵素の1種若しくはセットの認識部位におけるbpの特定の数にも限定されない。得られた記録のサブセットを、テンポラリテーブル、単独の結果テーブル又は単独のデータベースに保管してもよい。
【0102】
一部の実施形態において、得られた遺伝子記録のサブセットをふるいにかけて、誤った結果、歪曲した結果、又は有用でない結果(ブロック306)につながる可能性のある記録を除外し、或いは選択された特性の記録を含める。例えば、最も大きなオープンリーディングフレームのうちの1つの代表例と思われる、21,000bpを超える非常に長い配列が、典型的に、誤った結果、歪曲した結果、又は有用でない結果につながることが認められている。他のふるい分け特性を使用してもよく、これも本発明の範囲内である。そのようなふるい分け特性の例は、特定のGC含量、イントロンの有無、オープンリーディングフレームの予測される翻訳生成物における特異的アミノ酸組成、特異的な遺伝子ファミリーにおける既知の遺伝子に対する類似性、オープンリーディングフレームの予測されるタンパク質生成物の特定の等電点及び/又はオープンリーディングフレーム内の予測される膜貫通タンパク質(を除外又は含めるための)のふるい分けを含む。ふるい分けは、この方法のいずれの時点でも生じる可能性があることに留意する必要がある。例えば、記録を遺伝子データベースに読み込む前にふるいにかけてもよく、又は照会の一部としてふるいにかけてブロック2204で記録のサブセットを作製してもよい。
【0103】
次に、一連の1つ又は複数の統計値を、少なくとも1つの制限酵素認識部位(ブロック308)を有する記録のサブセットに関する1つ又は複数の照会を出すことによって得ることができる。一部の実施形態では、照会はパターンマッチング照会を含む。このパターンは、当技術分野で公知の方法のいずれかの数で特定することができる。例えば、ワイルドカード文字を使用して、パターンの1つ又は複数の位置を特定するか、正規表現を使用して、パターンを特定してもよい。本発明は、パターンを特定するためのいかなる特定の様式にも限定されない。さらに、このパターンを照会の一部として、データベースエンジンに送信するか、パターンマッチングを、照会によって得た記録に対してビジュアルベーシックなどのプログラムによって実行してもよい。
【0104】
一部の実施形態では、特定の制限酵素認識部位を有する記録の数を、算出及び報告する(ブロック310)。一部の実施形態では、統計に含めるために、各記録は、解析する制限酵素のすべての所定のセットに対する認識部位を含む。
【0105】
代替の実施形態では、記録中に存在する制限酵素標的部位の数を算出及び報告する(ブロック312)。これら代替の実施形態の一部では、記録は、解析する制限酵素のすべての所定のセットに対する認識部位を含む。
【0106】
さらなる代替の実施形態では、ハパゾメリック制限酵素によって認識又は切断される不明瞭な位置の塩基に関する統計を算出及び報告する(ブロック314)。統計は、それらの制限酵素の不明瞭な位置で、塩基の分布を算出するために望ましい。そのような不明瞭性の2つの例は、
図1で示しているように、SfiI及びSapIによって認識又は切断される部位でのNの存在である。これら代替の実施形態では、認識部位内、或いは認識部位と一部又はすべての所定の制限酵素との間の塩基内のあらゆる不明瞭な塩基の身元を、これら塩基の身元に関する1つ又は複数の統計と共に判定及び報告する。
【0107】
図4〜5は、ここに記載の方法によって算出された、様々な生物体における様々な制限酵素認識部位の頻度を提供する。
【0108】
III.本発明のベクター
ドナー又はレシピエントベクターを使用して、別のベクター、例えば、発現ベクター又は分離した断片、例えば、PCR断片から得たベクター内の対象のDNA配列、例えば、ライブラリー、例えば、cDNAライブラリー内のDNA配列で、所望の制限酵素認識部位が隣接する対象のDNA配列を、別のベクター(アクセプターベクター)に導入して、レシピエント(発現)ベクター、例えば、対象のDNA配列の発現に有用なベクターを作製する。アクセプターベクター内及び対象のDNA配列に隣接している所望の制限酵素認識部位の存在及び配置は、対象のDNA配列をアクセプターベクターに一定方向で迅速にサブクローニング又は挿入することを可能にする。
【0109】
アクセプターベクターは、ペプチド又はポリペプチド(融合パートナー)をコードする所望の制限酵素認識部位の5’及び/又は3’側の配列であって、対象のDNA配列に作用可能に結合させ、細胞、細胞可溶化物又はin vitroの転写/翻訳システム内で発現させると、融合タンパク質を産生する配列を含むことができる。そのようなペプチド又はポリペプチドを、融合タンパク質のN末端又はC末端に配置させてもよい。代わりに、融合タンパク質はN末端又はC末端の両方にペプチド又はポリペプチドを含むことができ、各ペプチド又はポリペプチドは異なってもよい。代わりに、対象のDNAは、それ自体融合タンパク質をコードすることができ、アクセプターベクターと結合すると、組換えポリペプチドをコードするレシピエントベクターで、組換えポリペプチドがN末端、C末端、又はN末端及びC末端の両方に1つ又は複数の残基をさらに含み、例えば、所望の制限酵素認識部位の5’及び/又は3’側の配列によってコードされる残基など、この残基がアクセプターベクター内の配列によってコードされる、レシピエントベクターを生じる。さらに、1つ又は複数のアミノ酸残基は、対象のDNA配列の末端とアクセプターベクターとの連結によって生成した交換部位によってコードされることができる。
【0110】
一実施形態において、ペプチド又はポリペプチドの融合パートナーは、エピトープ標識、親和性ドメイン、例えば、プロテアーゼ認識部位、或いは酵素、例えば、チオレドキシン又はデハロゲナーゼである。エピトープ標識は、エピトープ特異的抗体によって認識される短いペプチド配列である。エピトープ標識を含む融合タンパク質は、クロマトグラフィー樹脂と結合した抗体を使用して、単純かつ容易に精製することができる。エピトープ標識の存在は、組換えタンパク質自身に特異的な抗体を作製する必要なしに、ウエスタンブロット法などのその後の分析で、組換えタンパク質を検出することをさらに可能にする。一般に使用されるエピトープ標識の例には、V5、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、赤血球凝集素(HA)、FLAG、c−myc、RYIRS、カルモジュリン結合ドメイン、ペプチドPhe−His−His−Thr−Thr、キチン結合ドメインなどが含まれる。
【0111】
親和性ドメインは、固体支持体上に固定された結合パートナーなどの結合パートナーと相互作用の可能なペプチド配列が一般的である。複数の連続的な単一アミノ酸、例えば、ヒスチジンなどの金属イオン親和性配列をコードするDNA配列は、発現タンパク質と融合すると、ニッケルセファロースなどの、樹脂カラムに結合する高い親和性によって、組換えタンパク質の一段階精製に使用することができる。エンドペプチダーゼ認識配列を、ポリアミノ酸標識と対象のタンパク質の間で操作して、エンテロキナーゼ及びその他のプロテアーゼで消化することによりリーダーペプチドのその後の除去を可能にすることができる。キチン結合ドメイン(キチンに結合する)、GST(グルタチオンと結合する)、ビオチン(アビジン及びストレプトアビジンと結合する)、マルトース結合タンパク質(MBP)、一部のブドウ球菌プロテインA(SPA)、ポリヒスチジントラクト(HIS
n)などのペプチド又はタンパク質をコードする配列も、対象のタンパク質の精製を促進するために使用することができる。親和性ドメインは、インテイン(タンパク質自己スプライシングエレメント、Chongら、Gene192:271(1997年))の使用を含む、当技術分野において周知の方法によって対象のタンパク質から分離することができる。一実施形態において、複数の融合パートナーの配列を、対象のペプチド又はポリペプチドの配列に結合させることができ、例えば、親和性ドメインを対象のポリペプチドに結合するプロテアーゼ切断認識部位に結合させる。
【0112】
オープンリーディングフレームの5’末端で、定義された融合を起こすことを目的とした発現ベクターを作製するために(例えば、アクセプターベクターは、融合のためのペプチド又はタンパク質をコードした交換部位の5’側の配列を含まない)、所望の制限酵素認識部位を、ベクター内の所望の翻訳開始点に置く。注意を払い、不適切に翻訳を開始する恐れのある交換部位の上流へのATG又は開始コドンの導入を防止する。例えば、適合するオーバーハングを、DNA断片内のオープンリーディングフレームの開始コドンの5’側に有するアクセプターベクターのSgfI消化によって生成されたオーバーハングの融合により、そのオープンリーディングフレームのための新規開始部分を含む組換えベクターを産生することができる。組換えベクターに存在するアクセプターベクター由来の配列は、SgfI消化によって生成されたオーバーハングの5’側の配列を含み、場合によって、適切に配置されたRBSを含む。場合によって、オープンリーディングフレームの5’末端の配列は、Kozak配列又はその部分を含み、mRNA内に存在すると、真核細胞リボソームの小サブユニットを結合することが可能である。
【0113】
融合タンパク質のN末端に位置するペプチド又はタンパク質をコードしたベクターを対象のDNA配列に融合(すなわち、翻訳融合)することによって融合タンパク質を生成することを目的とした発現ベクターを作製するために、制限酵素認識部位を、1)オープンリーディングフレームが、アクセプターベクターの制限酵素認識部位の中に維持され、2)アクセプターベクターの制限酵素認識部位のリーディングフレームが、ドナーベクター内に含まれる制限酵素認識部位で発見されるリーディングフレームのフレーム内にあるというように、正しいリーディングフレームに配置する。さらに、アクセプターベクターの適切な制限酵素認識部位は、インフレームの終止コドンの導入を避けるようにデザインする。ドナーベクター内に含まれる対象のDNA配列は、したがって、所望のN末端融合タンパク質の作製を促進するために、アクセプターベクターの特定のリーディングフレームにクローンを作る。例えば、対象のDNA配列の5’末端とアクセプターベクターの3’末端のSgfI部位の融合により、読み過し配列が作製される。
【0114】
同様に、融合タンパク質のC末端に位置するペプチド又はタンパク質をコードしたベクターを対象のDNA配列と融合することによって融合タンパク質を生成することを目的とした発現ベクターを作製するために、制限酵素認識部位を、1)オープンリーディングフレームが、アクセプターベクターの制限酵素認識部位の中に維持され、2)アクセプターベクターの制限酵素認識部位のリーディングフレームが、ドナーベクター内に含まれる制限酵素認識部位で発見されるリーディングフレームのフレーム内にある(すなわち、3’末端の対象のDNA配列に隣接する部位)というように、正しいリーディングフレームに配置する。したがって、ドナーベクター内に含まれる対象のDNA配列は、C末端融合タンパク質の作製を促進するために、特定のリーディングフレームでクローンを作ることができる。例えば、PmeI部位とEcoRV部位又はBalI部位との融合は、C末端で加えられた少なくとも2つのアミノ酸を有するC末端融合を生成することができるが、2つのPmeI部位又はPmeI部位とDraI部位の融合は、C末端で加えられた1つのアミノ酸を有するC末端融合を生成することができる。
【0115】
一実施形態において、発現ベクターは、複数の融合パートナー、例えば、精製のための親和性標識及び対象のタンパク質に融合するプロテアーゼ切断部位を有するタンパク質をコードする。
【0116】
本明細書のクローニング系を使用することで、タンパク質配列をN末端及び/又はC末端の融合パートナーの極めて近位で発現させることを可能にする。特別の利点は、リーディングフレームを選択することが可能であるということである。このことは、対象のDNA配列を正確に配置するだけでなく、融合遺伝子の末端を明確にすることを可能にする。
【0117】
また、本発明の実施において使用されるベクターは、1種又は複数の選択マーカー遺伝子に加えて、ベクターの複製、維持又は完全性における、ある機能を一般に有する1種又は複数の核酸配列を、例えば、複製開始点に含む。複製開始点は、ユニークなDNA断片であり、多量体開始点−結合タンパク質によって認識される短い複数の反復配列を含み、開始部位でDNA複製酵素を組み立てることにおいて、主要な役割を果たす。ここで使用される発現ベクターに使用するための適切な複製開始点は、大腸菌oriC、colE1プラスミド開始点、2μ及びARS(両方とも酵母システムに有用)、sfl、SV40 EBV oriP(哺乳類のシステムに有用)、p15、又はpSC101で発見される複製開始点などを含む。
【0118】
選択マーカー配列は、選択マーカー配列を含むベクターによって首尾よく形質転換され、このマーカーを発現しているか、細胞が成長したかどうかを選択する手段を提供するのでベクターの有用なエレメントである。そのようなマーカーには、一般に薬剤耐性及び栄養要求性の2つのタイプがある。薬剤耐性マーカーは、さもなければ細胞を殺すと思われる外から加えられた薬剤を、細胞が解毒することを可能にする。栄養要求性マーカーは、必須成分を欠く培地で増殖中に、必須要素(通常、アミノ酸)を合成する。
【0119】
多種多様な選択マーカー遺伝子が利用可能である(例えば、以下を参照。Kaufman、Meth.Enzymol.、185:487(1990年);Kaufman、Meth.Enzymol、185:537(1990年);Srivastava and Schlessinger、Gene、103:53(1991年);Romanosら、「DNAクローニング2、発現システム(in DNA Cloning2:Expression Systems)」、2.sup.nd Edition、123−167ページ(IRL Press 1995年);Markie、Methods Mol.Biol.、54:359(1996年);Pfeiferら、Gene、188:183(1997年);Tucker and Burke、Gene.199:25(1997);Hashida−Okadoら、FEBS Letters、425:117(1998年))。通常の選択マーカー遺伝子配列は、アンピシリン、テトラサイクリン、カナマイシン、ブレオマイシン、ストレプトマイシン、ハイグロマイシン、ネオマイシン、Zeocin(商標)などの抗生物質に対する耐性の配列を含む。選択可能な栄養要求性遺伝子配列は、例えば、hisDを含み、ヒスチジノールの存在下でヒスチジンを含まない培地における成長を可能にする。
【0120】
適切な選択マーカー遺伝子は、ブレオマイシン耐性遺伝子、メタロチオネイン遺伝子、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ遺伝子、AURI遺伝子、アデノシンデアミナーゼ遺伝子、アミノグリコシド系ホスホトランスフェラーゼ遺伝子、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子、チミジンキナーゼ遺伝子、キサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子などを含む。
【0121】
代わりのアプローチは、対応する野生型酵素より活性の低い突然変異酵素をコードする選択可能な遺伝子標識を使用することである。例として、Munirら、Protein Eng.、7:83(1994年)は、活性低下を示す変異体チミジンキナーゼ酵素のデザインについて記載している(また、以下も参照。Liu and Summers、Virology、163:638(1988年);Mendelら、Antimicrob.Agents Chemother39:2120(1995年))。また、低活性変異体は、アデノシンデアミナーゼ及びジヒドロ葉酸レダクターゼについても記載されている(例えば、以下を参照。Prendergastら、Biochemistry、27:3664(1988年);Jiangら、Hum.Mol、Genet.、6:2271(1997年);Ercikan−Abaliら、Mol.Pharmacol.、49:430(1996年))。
【0122】
マーカー遺伝子の別の種類は、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、酵素(例えば、胎盤アルカリ燐酸分解酵素、β−ガラクトシダーゼ、β−ラクタマーゼ又はルシフェラーゼ)、或いは抗体(例えばCD4、CD8、クラスI主要組織適合遺伝子複合体(MHC)タンパク質など)によって検出できる細胞表面タンパク質などの容易に検出可能なタンパク質を産生する遺伝子である。そのような選択マーカー遺伝子の発現生成物は、非形質移入細胞から形質移入細胞を、そのような標準的手段、例えば、FACS選別又は磁気ビーズ分離技術によって選別するために使用することができる。
【0123】
メタロチオネイン遺伝子は、カドミウム、亜鉛及び銅などの有害金属に対して高い親和性を有するタンパク質をコードする(Beach and Palmiter、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA、78:2110(1981年);Huangら、EXS、52:439(1987年);Czajaら、J.Cell.Physiol.、147:434(1991年))。したがって、メタロチオネイン遺伝子は、本明細書に記載の方法のために適切な滴定可能な標識を提供する。
【0124】
一実施形態において、アクセプターベクターは、所望の制限酵素部位が隣接する対抗選択可能な遺伝子を含む。この点に関して好ましい遺伝子は、構成的活性が低いか、持たない誘導性の致死遺伝子(好ましくは、さらに一部の免疫因子を有する)、例えば、bar(バルスター)などの遺伝子、制限酵素をコードする致死遺伝子(対応するメチラーゼをコードする遺伝子)、或いはヌクレアーゼコリシンをコードする致死遺伝子、例えば、E9デオキシリボヌクレアーゼ並びにコリシンリボヌクレアーゼ及びtリボヌクレアーゼ、又はギラーゼA、並びにMazF(ChpAK)、Doc(Phd)、ParE、PasB、StbOrf2、HigB、z、RelE、Txe、YeoB、SacB、KilR、KorA、KorB、Kid(Kis)、PemK(PemI)、Hok(Sok)、Dcc(Pno)、CcdB(CcdA)、F’プラスミドなどの致死遺伝子を含むが、これらに限定されるものではない。
【0125】
その他の選択アプローチは、調節転写調節物質、例えば、テトラサイクリン誘導又は抑制系(例えば、WO96/01313参照)の使用を含む。
【0126】
また、本発明の実施において使用されるアクセプターベクターは、タンパク質発現において一部の機能を有する1つ又は複数の核酸配列、すなわち、転写制御配列、例えば、プロモーター配列又はエンハンサー配列などの誘導又は抑制可能な制御配列も含む。
【0127】
プロモーター−エンハンサー配列は、RNAポリメラーゼが結合して、転写を開始するDNA配列である。このプロモーターは、どの鎖が転写されるかについて特定することにより転写物の極性を判定する。細菌のプロモーターは、転写の開始に関連した−35及び−10ヌクレオチドのコンセンサス配列からなり、特異的シグマ因子及びRNAポリメラーゼによって結合される。真核生物のプロモーターは、より複雑である。ベクターに利用される大部分のプロモーターは、RNAポリメラーゼIIによって転写される。基本転写因子(GTF)は、最初に開始点近くの特定の配列に結合し、次に、RNAポリメラーゼIIの結合を受け入れる。これらの最小限のプロモーターエレメントに加えて、小さな配列要素が、特定のプロモーターの活性を調節するモジュラーDNA結合/トランス活性化タンパク質(例えば、AP−1、SP−1)によって特異的に認識される。ウイルスのプロモーターは、細菌又は真核生物プロモーターと同様の機能を提供し、さらに、trans(バクテリオファージT7)において特異的RNAポリメラーゼを提供するか、細胞性因子及びRNAポリメラーゼ(SV40、RSV、CMV)を補充する。ウイルスのプロモーターは、これらが一般に特に強力なプロモーターであることが好ましい。
【0128】
さらに、プロモーターは、構成的又は制御可能(すなわち、誘導性又は抑制解除可能)のいずれか一方にすることができる。誘導性要素は、プロモーターと共に働くDNA配列であり、リプレッサー(例えば、大腸菌のlacO/LAC Iqリプレッサー系)又はインデューサー(例えば、酵母菌のGalI/GAL4インデューサー系、大腸菌のrhaBAD/ラムノース)のいずれか一方と結合する。いずれの場合でも、プロモーターが抑制解除又は誘発されるまで(この時点で、「オンの状態」になる)、プロモーターは実質的に「オフの状態」なっている。
【0129】
構成的なプロモーターの例には、バクテリオファージλのintプロモーター、pBR322のβ−ラクタマーゼ遺伝子配列のblaプロモーター、pBR325のクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子配列のCATプロモーターなどが含まれる。誘導性の原核生物のプロモーターの例には、バクテリオファージの主要な右及び左のプロモーター(P
L及びP
R)、大腸菌のtrp、reca、lacZ、lacI、araC及びgalプロモーター、α−アミラーゼ(Ulmanenら、J.Bacteriol.、162:176(1985年))、araBADプロモーター、rhaBADプロモーター、及び枯草菌(B.subtilis)のσ−28−特異的プロモーター(Gilmanら、Gene Sequence、32:11(1984年))、かん菌(Bacillus)のバクテリオファージのプロモーター、(Gryczan、「かん菌の分子学的生物学(In:The Molecular Biology of the Bacilli)」、Academic Press、Inc.、NY、1982年)、ストレプトミセス属(Streptomyces)のプロモーター(Wardら、Mol.Gen.Genet.、203:468(1986年))、ピキア属(Pichia)プロモーター(米国特許第4,855,231号及び同第4,808,537号)などが含まれる。典型的な原核生物のプロモーターは、Glick(J.Ind.Microbiol.、1:277(1987年))、Cenatiempo(Biochimie.68:505(1986年))及びGottesman(Ann.Rev.Genet.、18:415(1984年))によって概説されている。一実施形態では、プロモーターはT7プロモーター又はSP6プロモーターである。
【0130】
例えば、好ましい真核生物のプロモーターは、マウスのメタロチオネインI配列のプロモーター(Hamerら、J.Mol.Appl.Gen.、1:273(1982年))、ヘルペスウイルスのTKプロモーター(McKnight、Cell、31:355(1982年))、SV40初期プロモーター(Benoistら、Nature(London)、290:304(1981年))、酵母菌GalI遺伝子配列プロモーター(Johnstonら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)、79:6971(1982年)、Silverら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)、81:5951(1984年))、バキュロウイルスプロモーター、CMVプロモーター、EF−1プロモーター、エクジソン反応性プロモーター、テトラサイクリン反応性プロモーターなどを含む。
【0131】
適切な原核生物のベクターは、大腸菌において複製が可能なプラスミド(例えば、pBR322、ColE1、pSC101、PACYC184、itVX、pRSET、pBAD(Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)など)などのプラスミドを含む。そのようなプラスミドは、Sambrookによって明らかにされている(参照「分子クローニング:実験マニュアル」(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)、第2版、Sambrook,Fritsch,& Maniatis編、Cold Spring Harbor Laboratory、1989年)。かん菌プラスミドは、pC194、pC221、pT127などを含み、Gryczanによって明らかにされている(「かん菌の分子学的生物学(The Molecular Biology of the Bacilli)」前出、pp.307−329中)。適切なストレプトマイセス属プラスミドは、plJ101(Kendallら、J.Bacteriol、169:4177(1987年))及びphi.C31などのストレプトマイシーズバクテリオファージ(Chaterら、「放線菌目生物学に関する第6回国際会議(Sixth International Symposium on Actinomycetales Biology)」Akademiai Kaido、Budapest、Hungary、pp.45−54、1986年中)を含む。シュードモナス属(Pseudomonas)プラスミドは、Johnら(Rev.Infect.Dis.、8:693(1986年))及びIzaki(Jpn.J.Bacteriol.、33:729(1978年))によって概説されている。大腸菌の連鎖配列の発現に関するアクセプターベクターのベクター骨格は、amp
R遺伝子、T7転写制御要素、及びGST、チオレドキシン又はデハロゲナーゼと対象のタンパク質との融合などの融合タンパク質を産生する配列を含む。
【0132】
適切な真核生物プラスミドは、例えば、BPV、EBV、ワクシニア、SV40、2−ミクロンサイクル、pCI−neo、pcDNA3.1、pcDNA3.1/GS、pYES2/GS、pMT、pIND、pIND(Spl)、pVgRXR(Invitrogen)、など、又はこれらの誘導体を含む。そのようなプラスミドは、当技術分野において周知である(Botsteinら、Miami Wntr.Symp.、19:265(1982年)、Broach「酵母菌サッカロミセス属(Saccharomyces)の分子生物学:生活環及び遺伝(The Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces:Life Cycle and Inheritance)」Cold Spring,Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor、N.Y.pp.445−470、1981年中)、Broach、Cell、28:203(1982年)、Dilonら、J.Clin.Hematol.Oncol.、10:39(1980年)、Maniatis、「細胞生物学:包括的論文、第3巻、遺伝子発現配列(Cell Biology:A Comprehensive Treatise、Vol.3、Gene Sequence Expression)」Academic Press、NY、pp.563−608、1980年中)。一実施形態では、哺乳類の細胞における連鎖配列の発現又はin vitroでの真核生物の転写/翻訳反応に関するアクセプターベクターのベクター骨格は、pCMVTnT(Promega Corp.)及びGST又はデハロゲナーゼと対象のタンパク質の融合などの融合タンパク質を産生する配列である。
【0133】
プロモーター/プラスミドの組合せを、適切な宿主細胞と共に使用し、適切な宿主細胞として、例えば、大腸菌、ストレプトマイセス属、シュードモナス属及びかん菌などの原核細胞又は酵母菌、例えば、ピシア(Picchia)、サッカロミセス属若しくは分裂酵母(Schizosaccharomyces)などの真核生物細胞、昆虫細胞、トリ細胞、植物細胞、或いは哺乳類細胞、例えば、ヒト、サル、ブタ、ヒツジ、げっ歯類、ウシ、ウマ、ヤギ、イヌ又はネコの細胞、並びにその溶解産物、例えば、TNT、小麦麦芽溶解産物又はS30溶解産物が挙げられる。
【0134】
一実施形態において、宿主細胞は組換え細胞、例えば組換え原核細胞である。一実施形態では、組換え宿主細胞は、誘導経路、例えば、ラムノース異化経路などの糖経路に1種又は複数の遺伝子に欠損があり、異種のRNAポリメラーゼのオープンリーディングフレームと作用可能に結合させた1種又は複数の遺伝子のための誘導プロモーターを含む組換えDNAを含む。組換え宿主細胞若しくはそこの溶解産物、又は異種RNAポリメラーゼを補充されたin vitroの転写/翻訳混合物を、対象のDNA配列と作用可能に結合させた異種RNAポリメラーゼのためのプロモーターを含む本発明のベクターと接触させる。一実施形態では、組換え宿主細胞はラムノース異化反応が不完全な組換え大腸菌であって、T7RNAポリメラーゼオープンリーディングフレームと作用可能に結合させたrhaBADプロモーターを含む。ラムノースの非存在下で、そのような細胞は、T7RNAポリメラーゼを欠くか、低濃度であり、したがって、特に毒性遺伝子のクローン化に有用である。
【0135】
他の実施形態では、組換え宿主細胞は、細胞に致死性である遺伝子産物に対する免疫因子を発現する。免疫因子は、好ましくは構成的プロモーターから発現される。致死性の遺伝子産物をコードする発現ベクターは、繁殖した組換え細胞及び形質転換細胞に導入することができる。一実施形態では、遺伝子産物はバルナーゼであって、分泌断片(1つのペプチド)の配列を除去し、場合によって、分泌配列の最終コドンの代わりにATGを加えることによって修飾している。
【0136】
IV.制限酵素部位を保護するためのDNA結合タンパク質の使用
対象のDNA配列をドナーベクターへ、又はドナーベクターからアクセプターベクターへ導入する工程において、対象のDNA配列に隣接する制限酵素部位、すなわち、クローニングに有用な制限酵素部位は、対象のDNA配列又はベクター配列のいずれか一方に存在することもできる。特定の制限酵素を含む部位を対応する酵素による切断から保護するために、DNA結合タンパク質及びメチル化を使用してもよい。例えば、RecA(RecA切断及び産生)によって制限部位を保護する工程は、部分的な制限消化に比べて、より再現性があり、より良好な収量をもたらし、より取り扱いやすい。制限酵素認識部位を保護するその他の手段は、リプレッサータンパク質、真核生物転写制御因子、大腸菌宿主組込み因子又は三重らせん体構造を形成することが可能なオリゴヌクレオチドを使用することを含むが、RecAを使用した保護の特異性は、完全に合成一本鎖DNAによるものである。ATP[γ−S]などの加水分解抵抗性ATP類似体の存在下で、RecAタンパク質は、一本鎖DNA(ssDNA)に非特異的に結合し(およそ、3つのヌクレオチドごとに1つのRecAモノマー)、シナプス前フィラメントと呼ばれる構造を形成する。次に、このRecA被覆オリゴヌクレオチドを相同の2本鎖DNAでアニールして、安定した三重鎖DNA−たんぱく質複合体を形成する。シナプス前フィラメントは、i)反応に加えられるssDNAの配列及び長さは、シナプス前フィラメントの部位と範囲を判定する、及びii)シナプス前フィラメントは、DNAメチラーゼ及び制限酵素による修飾からハイブリッド形成部位のDNAを保護するという点で、有用な分子的研究手段となる。これらの特徴は、RecAタンパク質−媒介DNA複合体が、ゲノムマッピング及びDNA断片のサブクローニングなどの、所定部位でのDNA切断を必要とする分子生物学的処理に新しいレベルの特異性を加えることを可能にする。PCR法と比較して、DNA結合タンパク質の使用は、より迅速であり、in vitroの増幅の複数のサイクルにより生じる突然変異を導入しない。
【0137】
一般的なプロトコールは、メチル化から制限部位を保護すること、制限酵素切断(RecA切断)に特異的にすること、及び消化から制限部位を保護すること(RecA保護)を含む。RecA切断プロトコールは、Koobら(Science、241 1084(1988年))、Koobら(Gene、74、165(1988年))及びKoobら(Nucle.Acids Res.、20、5831(1992年))のRecAアキレスの切断手順に基づく。さらに、RecA切断は、所望の制限部位が断片内で数回繰り返されるとき、サブクローニングのための制限断片を作製することに有用である。しかし、所望の断片内で制限部位の繰り返しがわずか1又は2ヵ所の場合、RecA保護が好ましい。電気泳動法の後、RecA生成物の蛍光分析に基づいて、これら2つのプロトコールは、1つの部位を保護した場合、常に70%〜80%の保護をもたらした。また、この技術は、アガロース栓に包埋されたDNAに対して使用してもよい。
【表3】
【0138】
A.RecA切断又は保護反応
RecA濃度
RecA保護の特異性及び有効性を最大にするために、オリゴヌクレオチド:RecA比を操作する必要があることがある。10μL反応に6.25μgのRecAの濃度は、よく作用する。
【0139】
オリゴヌクレオチド濃度
RecAに対するオリゴヌクレオチドの結合のモルストイキオメトリー(RecAタンパク質のモルに対するヌクレオチドのモルに関する)は3:1である。換言すれば、あらゆる一本鎖DNAの3つのヌクレオチドごとに、1つのRecAタンパク質が結合する。この比は、オリゴヌクレオチドの容積とは関係がなく、RecA 6.25μgあたりオリゴヌクレオチド160ngに相当する。40ng単位の増加による40〜280ngの一連の滴定は、RecAに対して使用するオリゴヌクレオチドの最適濃度を判定するために有用である。次に、非特異的保護が問題である場合、ATP[γ−S]添加後の反応にオリゴ(dT)160ngを添加してもよい。
【0140】
オリゴヌクレオチドのデザイン
溶液中でのRecA切断及びRecA保護のために、30〜36塩基長のオリゴヌクレオチドが推奨される。保護部位は、このプロトコールの開発を通して使用した30塩基のオリゴヌクレオチドの中央部に位置していた(また、以下も参照。Promega Notes Magazine #50より「ゲノムマッピング及びサブクローニングに関するRecA切断及び保護(RecA Cleavage and Protection for Genomic Mapping and Subcloning)」)。
【0141】
緩衝液
メチル化後、塩濃度を調整して、酵素の活性を改善する必要があろう。酢酸塩は、塩化物よりRecAトリプレックスに対して不安定化しないと思われ、したがって、塩化カリウム又は塩化ナトリウムよりむしろ酢酸カリウムを使用するとよい。
【0142】
RecA切断の生成物のサブクローニング
RecA切断反応の生成物がメチル化されるので、宿主の制限/修飾系との不和合性によって、形質転換頻度が低い可能性がある。形質転換の有効性が低い場合、宿主の遺伝子型を既知のメチル化誘発制限系と比較して、このことが原因であるか判定する。
【0143】
IV.例示的なベクター系
一実施形態において、ドナーベクター内及び/又は対象のDNA配列に隣接している、少なくとも1つの制限酵素部位は、縮重認識配列を有する制限酵素、例えば、SfiIが分断されたパリンドローム配列(
図6)を認識する縮重認識配列を有する制限酵素のためのものである。分断されたパリンドローム配列を認識し、方向性クローニングに使用する一本鎖DNAオーバーハングを生成する制限酵素を使用するために、その制限酵素のための少なくとも2つのユニークな部位及び/又は第1の制限酵素によって生成されるオーバーハングと相補的である、非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングを生成する異なる制限酵素のためのユニークな部位を使用する。他の方法を使用して、例えば、メチル化の使用によって、所望のベクター並びに/又は選択可能及び対抗選択可能な遺伝子の頻度を高めることができる。
【0144】
図7は、分断されたパリンドロームを認識する制限酵素のための制限酵素部位を有するドナーベクター及びアクセプターベクターの使用の概略図を示す(酵素I;ユニーク配列はA及びB、これらの相補配列はそれぞれA’及びB’、パリンドローム配列はボックスによって示す)。本ドナーベクターは、薬剤耐性遺伝子1、及び分断されたパリンドロームを認識する制限酵素のための1つ又は複数の制限酵素部位が隣接した、対象のDNA配列(淡灰色のボックス)を有する。本アクセプターベクターは、異なる薬剤耐性遺伝子(薬剤耐性遺伝子2)を有し、縮重認識配列を有する制限酵素による消化後、非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングA’及びB’を有し、これらはそれぞれ、酵素Iによるドナーベクターの消化後に存在する非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングと相補的である。したがって、酵素Iによるドナーベクターの消化後、並びに線状化アクセプターベクター及びリガーゼの存在下で、対象の線状化DNA配列をアクセプターベクターに一定方向で連結させて、レシピエントベクターを産生させる。
図7Aでは、酵素Iの制限酵素認識部位の半分の部位は、レシピエントベクターにおける対象のDNA配列の各末端に存在する。連結が制限部位を再生すると、その後、競合的逆反応が起こる(
図7B)。
図7Cでは、アクセプターベクターよりむしろレシピエントベクターを有する細胞が容易に特定できるように、アクセプターベクターの対抗選択可能な遺伝子(致死遺伝子)を使用する。
【0145】
図8は、縮重認識配列を有する制限酵素の制限酵素部位を含むように対象のDNA配列を修飾する1つの方法を示す。増幅反応において、5’末端に制限酵素のためのユニークな縮重配列及び3’末端に対象のDNA配列鎖のうちの1つに相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを使用する。また、それらのユニーク配列は、薬剤耐性遺伝子を含むベクターでも存在する。増幅断片及びベクターを、制限酵素、及び本発明のドナーベクターを産生するように加えられたリガーゼによって消化する。この部位が、例えば、Dcm部位で、DNAのメチル化状態に対して感受性の高い制限酵素によって、又はSfiIに対してはメチラーゼを使用して認識されるならば、メチル化は逆反応を最小化することができる。次に、ドナーベクターを、縮重認識配列を有して、対象のDNA配列を遊離させる制限酵素によって消化し、例えば、非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングを生成する縮重認識配列を有する異なる酵素によって生成した相補的一本鎖DNAオーバーハングを有するアクセプターベクターと混合する。
【0146】
図9A−
図9Bは、本発明のドナーベクターを作製するための別のアプローチを示す。対象のDNA配列を、縮重認識配列を有する制限酵素の制限酵素部位を含むように修飾する。増幅反応において、5’末端に制限酵素のためのユニークな縮重配列及び3’末端に対象のDNA配列鎖のうちの1つに相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを使用する。対象のDNA配列は、その制限酵素のための内部部位を含むことができる。消化からそれらの内部部位を保護するために、これらをメチル化するが、増幅断片末端の隣接部位は、依然としてメチル化されていないので、消化に対して感受性が高い。このことを達成するために、非メチル化のまま残された部位に相補的なオリゴヌクレオチドとRecAなどのDNA結合タンパク質を増幅断片に加える。次に、内部部位を適切なメチラーゼでメチル化する。カラムを使用して、増幅断片からオリゴヌクレオチド−DNA結合タンパク質複合体を取り除いてもよい。対象のDNA配列の末端に加えられた部位は、消化されると、非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングを生成する。相補的オーバーハングは、ベクター内で、縮重認識部位を有する選択した制限酵素による消化によって生成することができ、この酵素は増幅断片を消化するために使用した酵素と異なっていてもよい。次に、増幅断片及びベクターを1つ又は複数の制限酵素で消化し、得られた線状断片を、薬剤耐性遺伝子、及び一本鎖DNAオーバーハングを連結することにより生成された部位が隣接した対象のDNA配列を含むベクターを形成するように連結し、生成された部位は縮重認識配列を有する1つ又は複数の酵素、例えば、増幅断片を消化するために使用される酵素によって認識される。
【0147】
図10A−
図10Bは、本発明のレシピエントベクターを作製するためのアプローチを示す。この実施形態において、ドナーベクターは薬剤耐性遺伝子、及び縮重認識配列を有して1つ又は複数の制限酵素部位を内部に含む酵素のための制限酵素部位が隣接した対象のDNA配列を含む。消化からそれらの内部部位を保護するために、これらをメチル化する。隣接する部位は、依然としてメチル化されずに残り、したがって、消化に対して感受性が高いことを確実にするために、非メチル化のまま残された部位に相補的なオリゴヌクレオチドとDNA結合タンパク質をドナーベクターに加える。次に、オリゴヌクレオチド/DNA結合タンパク質に結合されていない制限酵素の部位を、適切なメチラーゼでメチル化する。カラムを使用して、このドナーベクターからオリゴヌクレオチド−DNA結合タンパク質複合体を取り除いてもよい。次に、ドナーベクターを、縮重認識配列を有する制限酵素のための少なくとも2つの認識部位を有するアクセプターベクターに加えて、この制限酵素は、非メチル化部位を切断する制限酵素を有するドナーベクターの消化によって生成したオーバーハングと相補的な、非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングを生成する。アクセプターベクターは、ドナーベクターの薬剤耐性遺伝子とは異なる薬剤耐性遺伝子を含むことが好ましい。一実施形態において、アクセプターベクターを消化するために使用する制限酵素は、ドナーベクターを消化するために使用する制限酵素とは異なってもよい。ドナーベクター及びアクセプターベクターの消化により得られた線状DNA断片のその後の連結は、レシピエントベクターを産生する。
【0148】
一実施形態において、ドナーベクター及びアクセプターベクターを線状にするために使用する制限酵素は同一であって、例えば、このドナーベクターは、対象のDNA配列に隣接しているユニークなSfiI部位を有し、SfiIで消化されると、部位は、SfiIを有するアクセプターベクターの消化後生成した一本鎖DNAオーバーハングに相補的である、非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングを生成する。他の実施形態では、ドナーベクターは、対象のDNA配列に隣接しているユニークなBglI部位を有し、BglIで消化されると、この部位は、BglIを有するアクセプターベクターの消化後生成した一本鎖DNAオーバーハングに相補的である、非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングを生成する。他の実施形態では、ドナーベクター及びアクセプターベクターを線状にするために使用される縮重認識配列を有する制限酵素は異なり、例えば、このドナーベクターは、対象のDNA配列に隣接しているユニークなSfiI部位を有し、SfiIで消化されると、部位は、BglIを有するアクセプターベクターの消化後生成した一本鎖DNAオーバーハングに相補的である、非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングを生成する。ドナーベクター及びアクセプターベクターを作製することにおいて、SfiIと共に有用な制限酵素を
図11に示す。SfiI及び/又はBglI用のメチラーゼは周知の方法により得ることができる(参照、米国特許第5,179,015号、同第5,200,333号及び同第5,320,957号)。例えば、組換えBglI及びその対応するメチラーゼの作製法は、米国特許第5,366,882号で開示されている。組換えSfiI及び対応するメチラーゼの作製法は、米国特許第5,637,476号で提供されている。SfiI認識部位を含むベクターに対して有用な他のメチラーゼは、HaeIII及びDcmメチラーゼのメチラーゼを含む。
【0149】
他の実施形態において、ドナーベクター内及び/又は対象のDNA配列に隣接している、少なくとも1つの制限酵素部位は、IIS型酵素、例えば、SapIのための部位である。
図12は、IIS型制限酵素のための認識部位を有するベクターを使用するドナーベクター及びアクセプターベクターからの本発明のレシピエントベクターの作製法を示す。方向性クローニングでIIS型制限酵素のための部位を使用するために、その制限酵素のための少なくとも2つのユニークな部位及び/又は第1の制限酵素によって生成されるオーバーハングと相補的である、非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングを生成する異なる制限酵素のためのユニークな部位を選択する。選択可能な遺伝子及び対抗選択可能な遺伝子の使用に加えて、メチル化を使用して、所望のベクターの頻度を高めてもよい。
【0150】
一実施形態において、ドナーベクター及びアクセプターベクターを線状にするために使用する制限酵素は同一であって、例えば、このドナーベクターは、対象のDNA配列に隣接しているユニークなSapI部位を有し、SapIで消化されると、部位は、SapIを有するアクセプターベクターの消化後生成した一本鎖DNAオーバーハングに相補的である、非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングを生成する。他の実施形態では、ドナーベクターは、対象のDNA配列に隣接しているユニークなEarI部位を有し、EarIで消化されると、この部位は、EarIを有するアクセプターベクターの消化後生成した一本鎖DNAオーバーハングに相補的である、非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングを生成する。他の実施形態では、ドナーベクター及びアクセプターベクターを線状にするために使用される制限酵素は異なり、例えば、このドナーベクターは、対象のDNA配列に隣接しているユニークなSapI部位を有し、SapIで消化されると、部位は、EarIを有するアクセプターベクターの消化後生成した一本鎖DNAオーバーハングに相補的である、非自己相補的一本鎖DNAオーバーハングを生成する。SapI及び対応するメチラーゼの作製法は、米国特許第5,663,067号で開示されている。
【0151】
交換部位で12の塩基(3つの潜在的コドン)を産生する、方向性クローニングのためのSfiIベクターの使用とは対照的に、SapIベクターの使用により、交換部位で3つの塩基(1つの潜在的コドン)を産生する。したがって、SapIベクターは、レシピエントベクターで有用であり、これはレシピエントベクターで対象のDNA配列によってコードされているタンパク質が、わずか2つの追加の残基を、1つはN末端及び1つはC末端、例えば、N末端のメチオニンのためのコドン及び複数のタンパク質のC末端で又はC末端近くで頻繁に発見されるC末端の残基を含むことができることによる。したがって、SapIベクターから発現されるタンパク質は、それらの対応する未変性タンパク質に組成が非常に近い。さらに、交換部位を形成するオーバーラップ配列を、特定の生物体において特定の頻度で使用されるコドンに対応するように選択してもよい。
【0152】
図14〜
図15で示す他の実施形態では、方向性クローニングのために2つの酵素のアプローチを使用する。ドナーベクターでは、対象のDNA配列は、少なくとも2つの制限酵素部位が隣接する。この部位の1つは、少なくとも一生物種でcDNA又はオープンリーディングフレームの低頻度切断酵素であって、一本鎖DNAオーバーハングを生成する第1の制限酵素のものであり、他の部位も、少なくとも一生物種でcDNA又はオープンリーディングフレームの低頻度切断酵素であって、第1の制限酵素によって生成した末端に相補的でない末端を生成する第2の制限酵素のものである。一実施形態では、第2の制限酵素は、平滑末端を生成する。例えば、ドナーベクターは、薬剤耐性遺伝子1を有し、ヒトcDNA又はオープンリーディングフレームの低頻度切断酵素であり、一本鎖DNAオーバーハング、例えばSgfIを生成する酵素(酵素I)のための制限酵素に隣接し、その同一種で低頻度切断酵素であり、平滑末端、例えばPmeIを生成する、制限酵素(酵素II)のための部位が隣接する対象のDNA配列を有する。場合によって、発現ベクターであるドナーベクターを、異なる薬剤耐性遺伝子を有し、少なくとも2つの制限酵素部位で、場合によって、対抗選択可能な遺伝子を有するアクセプターベクターと混合する。本アクセプターベクターの部位のうちの1つは、酵素I、例えば、PvuI又はPacIによって生成された一本鎖DNAオーバーハングと相補的な一本鎖DNAオーバーハングを生成する制限酵素(酵素III)のものであって、1つの制限酵素部位は、酵素IIによって生成された末端と連結することができる末端を生成する酵素(酵素IV)のためのものであり、例えば、酵素IVは平滑末端を生成し、例えば、酵素IVはPmeI、EcoRV、BalI又はDraIである。本酵素による消化後、線状にされたドナーベクター及びアクセプターベクターの連結は、異なる薬剤耐性遺伝子、並びに2対の相補的一本鎖DNAオーバーハングの連結又は相補的一本鎖DNAオーバーハングと平滑末端の連結を通して、アクセプターベクター配列に連結した対象のDNA配列を含む、レシピエントベクターを産生する。
【0153】
一実施形態において、対象のDNA配列は、少なくとも1つの種においてcDNA又はオープンリーディングフレームの低頻度切断酵素であって、一本鎖DNAオーバーハングを生成する制限酵素(酵素I)のための制限酵素部位、及びcDNA又はオープンリーディングフレームの低頻度切断酵素であって、第1の制限酵素によって生成された末端又は平滑末端に相補的でない末端を生成する制限酵素(酵素II)のための制限酵素部位を含むように修飾する(
図15)。対象のDNA配列を、一本鎖DNAオーバーハングを生成する低頻度切断酵素のための部位に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチド、及び低頻度切断酵素であって、第1の制限酵素によって生成した末端、例えば、平滑末端に相補的でない末端を生成する酵素によって認識される部位に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドと混合し、この混合物を増幅反応にかけて、DNA断片を得る。一実施形態では、第2の制限酵素は、平滑末端切断酵素である。対象のDNA配列の末端に加えた部位は、消化されると、各末端に一本鎖DNAオーバーハングを生成するか、1つの末端及び反対の末端の平滑末端に一本鎖DNAオーバーハングを生成する。酵素Iによって生成されたオーバーハングに相補的な一本鎖DNAオーバーハング、又は酵素I及び平滑末端に対して生成されたオーバーハングに相補的な一本鎖DNAオーバーハングを、制限酵素III及びIVを有するアクセプターベクター内で生成させて、それぞれ線状化アクセプターベクターを産生させる。薬剤耐性遺伝子を含む線状化アクセプターベクターを、消化されたDNA断片に連結させて、レシピエントベクターを得る。本レシピエントベクターは、アクセプターベクターの薬剤耐性遺伝子、並びに各末端の相補的一本鎖DNAオーバーハングの連結、又は1つの末端の相補的一本鎖DNAオーバーハングと反対の末端の平滑末端の連結によって生成した部位が隣接した対象のDNA配列を含む。SgfI/PmeIアプローチは、タンパク質のN末端、例えば、RBS又はKozak配列の3’側に配置されたN末端にさらなる残基を持たないタンパク質をコードするレシピエントベクター、或いは1つ又は複数のアミノ酸残基のN末端融合又はC末端融合を有する融合タンパク質をコードするレシピエントベクターを得ることができる(
図16〜
図17及び表Iは、平滑末端を生成する酵素、及びPmeIによって生成した平滑末端と、これらの酵素のそれぞれによって生成した平滑末端の連結によって生じた交換部位を示す)。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【0154】
また、SgfI/PmeIアプローチは、2つの対象のDNA断片を同一のベクターに導入するためにも使用される(
図18〜
図19)。例えば、ドナーベクターを、薬剤耐性遺伝子1、並びに少なくとも一生物種でcDNA又はオープンリーディングフレームの低頻度切断酵素であって、一本鎖DNAを生成する制限酵素(酵素I)、例えば、SgfIのための制限部位と、cDNA又はオープンリーディングフレームの低頻度切断酵素であって、平滑末端を生成する制限酵素(酵素II)、例えば、PmeIのための部位が隣接する対象のDNA配列を含むように入手又は作製する。アクセプターベクターは、薬剤耐性遺伝子2、及び酵素Iと線状になるドナーベクター内のオーバーハングと相補的である一本鎖DNAオーバーハングを生成し、酵素I、例えば、PvuIと異なる制限酵素(酵素III)のための制限部位と、平滑末端を生成し、酵素II、例えば、HpaIと異なる酵素(酵素IV)のための制限部位を含むように入手又は作製する。また、アクセプターベクターは、制限部位をさらに2つ含み、それぞれがアクセプターベクター内の対象のDNA配列の5’又は3’側であり、このうちの1つが酵素Iによって生成されたオーバーハングと相補的であって、酵素I、例えば、PacIと異なる制限酵素(酵素V)のための制限部位であり、もう1つは、平滑末端を生成し、この酵素が酵素II又は酵素IV、例えば、SwaIと異なる制限酵素のための制限部位である。本ドナーベクターは、酵素I及び酵素IIと線状になっており、酵素III及び酵素IVと線状になったアクセプターベクターと連結して、薬剤耐性遺伝子2、対象のDNA配列、並びに両方が対象のDNA配列の5’又は3’側である制限酵素V及び酵素VIのための部位を有するレシピエントベクターを産生する。薬剤耐性遺伝子、並びに酵素Iのための制限部位及び酵素IIのためのもう1つの制限部位が隣接する異なる対象のDNAを有する第2のドナーベクターを、酵素I及び酵素IIで消化し、酵素V及び酵素VIと線状になるレシピエントベクターと混合し、対象のDNA断片の両方を有する第2のレシピエントベクターを得る。そのようなレシピエントベクターは、例えば、ハイブリッド試験又は共存試験の2つで、タンパク質−タンパク質相互作用を調べるために有用であり、特に、1種のタンパク質が、出現していないか、そのタンパク質に対する結合タンパク質の発現がない場合に、低濃度のみで発現する系で有用である。
【0155】
V.ライブラリー
本発明のベクターは、特定の生物体のゲノムの少なくとも10%、及び50%まで又は50%を超えるオープンリーディングフレームを表すライブラリーなどの、オープンリーディングフレームのライブラリー、並びに突然変異オープンリーディングフレームのライブラリーを作成するために使用してもよい。例えば、個々のオープンリーディングフレームに対する増幅プライマーをデザインする。フォワードプライマーに関して、一実施形態では、SgfI部位は、オープンリーディングフレームの開始コドン(ATG)から(上流の)5’側の1塩基を配列し、このプライマーは、増幅中にプライマーをアニールするために適切なT
m(例えば、>45℃)を、オープンリーディングフレームの補体を有する鋳型に提供するための長さであって、このためにリーディングフレームからの十分な配列を有する。リバースプライマーは、オープンリーディングフレームの終止コドンより前の最終コドンのアンチセンスに、直接に追加したPmeI部位を含む。リバースプライマーは、増幅中にプライマーをアニールするための適切なT
mを鋳型に提供するための長さであって、このためにオープンリーディングフレームのC末端の部分から十分なアンチセンス配列を有し、対応するフォワードプライマーとT
mが一致することが好ましい(例えば、>45℃)。フォワードプライマー及びリバースプライマーは、SgfI及びPmeI部位に対して5’側に追加された3〜5塩基をさらに有し、これら酵素による増幅オープンリーディングフレームの迅速な消化を確実にすることが好ましい。次に、オープンリーディングフレームを、オープンリーディングフレームを有するcDNAテンプレート、RNAプレパラート、ゲノムDNA又はプラスミドクローンから増幅する。オープンリーディングフレームは、特に、増幅領域が800bpを超えている場合、高フィデリティーポリメラーゼ、例えば、Pfu DNAポリメラーゼによって増幅することが好ましい。
【0156】
増幅オープンリーディングフレームは、SgfI及びPmeIによるA−テーリング又は消化と、適切に線状化されたベクターへの連結の2つの方法でクローン化してもよい。一実施形態では、増幅DNAを、各3’末端でさらなるアデニン残基とつないだ後に、標準のTをつないだPCRクローニングベクター(例えば、pGEM(登録商標)−T Easy Vector、Promega)によってクローン化する。代わりに、トポイソメラーゼI部位を、フォワードプライマー及びリバースプライマー、並びにTOPO(登録商標)−クローニングベクター(例えば、pCR(登録商標)−Blunt、Invitrogen、又はAをつないだ場合はpCR(登録商標)4−TOPO、Invitrogen)を使用してクローン化したPCR断片の5’末端に加える。TaqDNAポリメラーゼを使用して、増幅オープンリーディングフレームを生成するならば、A−テーリングは不必要である。例えば、5単位のTaqDNAポリメラーゼを含む1X Taq反応緩衝液内の0.2mMのdATPで、PCR断片を70℃で15分間処理し、わずかな部分を(例えば、1〜2μL)、例えば、pGEM(登録商標)−T Easy Vectorによる連結反応又はSgfI及びPmeIによる消化のために、並びにSgfI及びPmeI、例えばACCEPT−6(
図21C参照)によって消化したベクターへの連結のために取り除く。場合によって、増幅断片は、例えば、プライマーを取り除くためにSgfI及びPmeIでの消化の前に精製する。制限消化の後で、この断片を、場合によっては精製して、消化断片から遊離したわずかなオリゴヌクレオチドを取り除く。
【0157】
次に、連結混合物を、適切な大腸菌宿主、例えば、JM109に形質転換して、選択培地、例えば、アンピシリン100μg/mLを含むLB−寒天で平面培養する。37℃で一晩培養後、得られたコロニーを採集し、アンピシリン100μg/mLを補充したLB培地で一晩増殖し、プラスミドDNAを精製し、例えば、SgfI及びPmeIでプラスミドを消化して、消化したプラスミドをゲル電気泳動にかけることによって、適切なサイズの挿入物であるかスクリーニングする。
【0158】
オープンリーディングフレームをクローン化する工程は、生物体の1種又は群の複数のオープンリーディングフレームを同時に実施することができる。例えば、フォワードプライマー及びリバースプライマーを、96ウェル又は384ウェルプレートなどのアレイフォーマットで、特定のオープンリーディングフレームに対するフォワードプライマー及びリバースプライマーが同じウェル内にあるように、供給することができる。鋳型cDNA及び増幅試薬を、プレート全体に同時に供給し、増幅反応をすべての96ウェル又は384ウェルで同時に実施することが可能である。同様に、増殖DNAを精製する工程、場合によっては、制限酵素による増幅DNAの消化又は増幅DNAのA−テーリング、ベクターへの連結、及び大腸菌の形質転換を、96ウェル又は384ウェルプレートで果たすことができる。形質転換混合物を選択培地で個々に平板培養することが可能で、37℃で一晩培養後、得られたコロニーを採集し、アンピシリン100μg/mLを補充したLB培地で一晩増殖する。プラスミドDNAを精製し、例えば、SgfI及びPmeIでプラスミドを消化して、ゲル電気泳動にかけることによって、適切なサイズの挿入物であるかスクリーニングする。次に、正しいサイズの挿入物を含むプラスミドを保有するコロニーを、96ウェル又は384ウェルプレートに戻し、したがって、オープンリーディングフレームの配列した収集物又はライブラリーを作製することができる。一実施形態では、アレイは、5%以上、例えば、10%〜30%、又は70%以上の生物体の1種又は群の複数のオープンリーディングフレームを表す。代わりに、アレイは、特定のオープンリーディングフレームのサブセット、例えば、特定の生物体由来のパラロガス遺伝子の多重遺伝子族、複数の生物体由来の一群のオルソロガス遺伝子、類似した経路(例えば、シグナル伝達経路)に含まれる一連の遺伝子、或いは、例えば、酸化還元酵素、転移酵素、加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼ又はリガーゼ、例えば、キナーゼ、例えば、受容体若しくは非受容体チロシンキナーゼ又はMAPキナーゼを含む受容体若しくは非受容体セリン/スレオニンキナーゼ、ホスファターゼ、例えば、チロシンホスファターゼ、プロテアーゼ、グアニル酸シクラーゼ、Gタンパク質結合受容体、Gタンパク質制御因子、チトクロームP450酵素、ホスホリパーゼ、医療用タンパク質、例えば、治療用タンパク質、工業用タンパク質、例えば、生体触媒作用タンパク質などを含むがこれに限定されるものではない、機能的に関連した遺伝子産物をコードした1群の遺伝子を含むことができる。
【0159】
他の実施形態では、オープンリーディングフレームの非配列ライブラリーを、特定の特性、例えば、in vivoの酵母菌の2つのハイブリッドに対するスクリーンにおける対象のタンパク質への結合、或いはベクター骨格に存在するオープンリーディングフレームの遺伝子産物の発現(共発現系)を変更することの、選択源又はスクリーニング源として使用する。一実施形態では、各ウェルで増殖したコロニー由来のDNAを精製することが可能で、各ウェルから少量を1つの共通のプールに混合させて、対象のタンパク質を発現させる酵母菌に形質転換させることができる。代わりに、オープンリーディングフレームのライブラリーを、対象のタンパク質をコードするベクターに挿入、及び対象のタンパク質と相互に作用又は対象のタンパク質の発現を増加する遺伝子産物をコードするオープンリーディングフレームを有することが特定されたクローンをコードするベクターに挿入する。一実施形態では、相互作用する遺伝子産物をコードする2つの遺伝子は、多シストロン性RNA、例えば、IRESを有する多シストロン性RNAに存在する。
【0160】
また、プールライブラリーを、方向性進展のために使用してもよい。したがって、特定のオープンリーディングフレームを、例えば、突然変異誘発PCRによって突然変異誘発する。突然変異誘発されたプール内の各突然変異誘発オープンリーディングフレームは、オープンリーディングフレームの5’末端及び3’末端にそれぞれSgfI及びPmeI部位を有する。突然変異誘発されたプールは、場合によって、SgfI及びPmeIによって消化し、場合によって、制限消化によって遊離したわずかなオリゴヌクレオチドから精製し、適切なベクター、例えば、ACCEPT−6に連結する。次に、連結混合物を、適切な大腸菌宿主、例えば、JM109に形質転換し、選択培地の、アンピシリン100μg/mLを含むLB−寒天で平面培養する。37℃で一晩培養後、得られたコロニーを採集し、選択LB培地を使用して96ウェル又は384ウェルプレートで一晩増殖し、選択活性、例えば、対応する非突然変異誘発オープンリーディングフレームにコードされる遺伝子産物の活性と異なる活性をスクリーニングする。一部の実施形態では、複数のクローンが各ウェルに存在し、同胞選択法を使用して所望の特性を有するクローンを特定する。例えば、1つのウェルに所望の特性が認められた場合、選択培地で平面培養することができ、37℃で一晩培養後、得られたコロニーを採集し、96ウェル又は384ウェルプレートで一晩再増殖し、特性を再度スクリーニングする。
【0161】
本発明は、次の限定を意図しない実施例によりさらに説明されよう。
【実施例】
【0162】
(例1)
アンピシリン感受性ドナーベクターを、緑色発光ルシフェラーゼ遺伝子を有し、この遺伝子が消化後に相補的一本鎖DNAオーバーハングを生成しないSfiI部位が隣接するように作製する(
図20A)。また、アンピシリン耐性アクセプターベクターを、赤色発行ルシフェラーゼ遺伝子を有し、この遺伝子が消化後に相補的一本鎖DNAオーバーハングを生成しないが、それぞれが緑色発光ルシフェラーゼ遺伝子に隣接した一本鎖DNAオーバーハングのうちの1つに相補的であるSfiI部位が隣接するように作製する。これらの2つのベクターを、SfiIを含むT4DNAリガーゼ緩衝液により50℃で1時間消化した。反応物を室温まで冷却し、T4DNAリガーゼを添加した。連結反応を、22℃で30〜60分間実施した。一部の連結反応物をゲル電気泳動にかけ、別の一部分はJM109を形質転換するために使用した。形質転換細胞を、ニトロセルロース上に置き、一晩インキュベートした。
【0163】
フィルターを、1mMのルシフェリンカリウム塩を含む100mMのクエン酸1mL(pH5.5)に40℃で浮かせた。次に、像をCCDデジタルカメラ(ミノルタDimage7、4秒、f4.5)で得た。この結果は、SfiIがリガーゼ緩衝液において切断し、切断された末端がT4DNAリガーゼの存在下で再連結することを示している(
図20B)。所望のクローン数を改善するために、対抗選択可能マーカーを含むアクセプターベクターを使用してもよい。
【0164】
(例2)
ベクター
pDONOR−4CATベクターは、SgfI及びPmeI部位間の天然プロモーターのクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)レポーター遺伝子源として利用した。pDONOR−4は、細菌選択のためのカナマイシン耐性遺伝子、方向性フレキシブルクローニングのための制限酵素部位SgfI及びPmeIを含む。
【0165】
pDONOR−6LacZベクターは、LacZレポーター遺伝子源として利用した。pDONOR−6は、細菌選択のためのカナマイシン耐性遺伝子、方向性フレキシブルクローニングのための制限酵素部位SgfI及びPmeIを含む。
【0166】
pACCEPT−Fベクター(
図21A)は、レポーター遺伝子の骨格配列源として利用した。pACCEPT−Fは、細菌選択のためのアンピシリン耐性遺伝子、方向性フレキシブルクローニングのための制限酵素部位SgfI及びPmeIを含む。
【0167】
結果
pDONOR−6LacZ由来のLacZレポーター遺伝子を、2段階の工程でpACCEPT−Fに導入した。最初に、pDONOR−6LacZを、BSAを含むPromega緩衝液Cの制限酵素SgfI及びPmeIによって37℃で1時間消化し、ベクターからLacZ遺伝子を遊離させた。消化後、反応管を65℃へ20分間加熱することでこの制限酵素を、不活化した。第2の線状pACCEPT−F、T4DNAリガーゼ、ATP、DTT及び追加の緩衝液Cを反応管に加え、管を22℃で1時間インキュベートすることで連結を開始した。連結の後で、反応物の一定分量を大腸菌細胞(JM109)に形質転換し、形質転換混合物をアンピシリン、X−gal及びラムノースを含むL培地(LB)プレート上に蒔いて培養した。コロニーを、それによって青色を発するX−galの利用能について視覚的スクリーニングをした。結果は、約90%のコロニーが、LacZ遺伝子のpDONOR−6LacZからpACCEPT−Fベクターへの導入パーセント(パーセンテージは、総青色コロニー数/総コロニー数×100によって算出した)を示す青色を発することを実証した。
【0168】
また、pDONOR−6LacZ由来のLacZレポーター遺伝子を、2段階の工程でpDEST−Fに導入した。最初に、ベクターpDONOR−6LacZ及びpACCEPT−Fを、1つの管内で、BSAを含むPromega緩衝液Cの制限酵素SgfI及びPmeIによって37℃で1時間消化し、ベクターからLacZ遺伝子を遊離した。消化後、この制限酵素を、反応管を65℃へ20分間加熱することで不活化した。第2に、T4DNAリガーゼ、ATP、DTT及び追加の緩衝液Cを反応管に加え、管を22℃で1時間インキュベートすることで連結を開始した。連結の後で、反応物の一定分量を大腸菌細胞(JM109)に形質転換し、形質転換混合物をアンピシリン、X−gal及びラムノースを含むLBプレート上に蒔いて培養した。結果は、約81%のコロニーが青色を発することを実証した。
【0169】
pDONOR−4CAT由来のCATレポーター遺伝子を、2段階の工程でpACCEPT−Fに導入した。最初に、pDONOR−4CATを、BSAを含むPromega緩衝液CのSgfI及びPmeIによって37℃で1時間消化し、ベクターからCAT遺伝子を遊離した。消化後、この制限酵素を65℃へ20分間不活化した。第2に、線状pACCEPT−F、T4DNAリガーゼ、ATP、DTT及び追加の緩衝液Cを反応管に加え、連結を25℃で1時間実施した。連結の後で、反応物の一定分量を大腸菌JM109細菌細胞に形質転換し、形質転換混合物を、アンピシリンを含むLBプレート上に蒔いて培養した。得られたコロニーのうち、100コロニーをクロラムフェニコール含むLBプレート上に蒔いて再培養した。クロラムフェニコール上で増殖したコロニーは、CAT遺伝子を含んだ。pDONOR−4CATからpACCEPT−FベクターへのCAT遺伝子の導入効率を約94%であると判定した(パーセンテージは、総CAT耐性コロニー数/総試験コロニー数×100によって算出した)。
【0170】
pDONOR−4CAT由来のCATレポーター遺伝子を、1段階の工程でpACCEPT−Fに導入した。pDONOR−4CAT、線状pACCEPT−F、制限酵素SgfI及びPmeI、BSAを含むPromega緩衝液C、T4DNAリガーゼ、ATP、並びにDTTを反応管に加えた。制限消化を、37℃で1時間反応管をインキュベートすることで開始した。消化後、反応温度を1時間で25℃に下げて連結反応が生じることを可能にした。連結の後で、反応物の一定分量を大腸菌JM109細菌細胞に形質転換し、形質転換混合物を、アンピシリンを含むLBプレート上に蒔いて培養した。得られたコロニーのうち、100コロニーをクロラムフェニコール含むLBプレート上に蒔いて再培養した。クロラムフェニコール上で増殖したコロニーは、CAT遺伝子を含んだ。pENTRY−4のCATからアクセプターベクターへのCAT遺伝子の導入効率を約37%であると判定した。
【0171】
(例3)
方向性クローニングを含むクローニングに有用な誘導系は、誘導プロモーターによって調節される遺伝子産物をコードする組換え宿主細胞を含み、この遺伝子産物は、細胞に導入されたベクターにおける対象のDNAの転写を特異的に増加する。一実施形態では、第1のベクターは、プロモーター、例えば、T7プロモーターに作用可能に連結した対象の遺伝子のためのオープンリーディングフレームを含み、本ベクターは、プロモーターの5’側の転写ターミネーター配列、例えば、rrnBターミネーター(異常発現を減少する)、薬剤耐性遺伝子、例えば、kan
R、宿主細胞における高いコピー数でのベクターの維持を可能にする配列、場合によって、ベクターの多量体化を減少する配列、例えば、cer配列を有し、さらにオープンリーディングフレームに隣接した制限酵素を有する。一実施形態では、オープンリーディングフレームに隣接した制限酵素部位は、相補DNA末端を生成しない2つの異なる低頻度切断酵素のためのものである(酵素I及び酵素II)(
図21)。また、
図21のベクターは、PmeI部位のT7転写ターミネーター3’を含む。オープンリーディングフレームのための対象の骨格を有する第2のベクターは、好ましくは、異なる薬剤耐性遺伝子、例えば、amp
Rを含み、さらに、場合によって、同一の転写ターミネーター配列、プロモーター、宿主細胞における高いコピー数でのベクターの維持を可能にする配列を含み、さらに、場合によって、対象のオープンリーディングフレームを含むベクターのような、ベクターの多量体化を減少させる配列を含み、第2のベクターにおける転写ターミネーター配列及びプロモーターは、それぞれ、酵素I及び酵素IIにより生成された末端と互換性を持つ末端を生成する2つの制限酵素(酵素III及び酵素IV)のための制限酵素部位に対して5’側にある。例えば、酵素IはSgfI、酵素IIはPmeI、酵素IIIはPvuI及び酵素IVはDraIである。他の実施形態では、酵素I及びIIIにより認識される制限部位は同一であって、例えば、SgfIのための部位であり、酵素II及びIVにより認識される制限部位は同一であって、例えば、PmeIのための部位である。得られたベクターは、誘導して遺伝子産物を発現することができる宿主細胞に導入し、遺伝子産物は、例えば、T7RNAポリメラーゼなどの遺伝子産物で、オープンリーディングフレームの5’側であるプロモーターの転写を増加する。
【0172】
例えば、クローン、及び対象の遺伝子の発現に有用な宿主細胞を含むラムノース−誘導系を作製した。例えば、JM109における1種又は複数のrhaBAD触媒遺伝子を、挿入突然変異を通して、除去、交換又は中断する。一実施形態において、JM109のrhaB遺伝子を除去し、T7RNAポリメラーゼオープンリーディングフレームに連結したrhaBADプロモーターを含むベクター(例えば、以下を参照のこと。Eganら、J.Mol.Biol.、234:87(1993年)及びWilmsら、Biotech Bioeng.、73:95(2001年))をこれらの細胞に安定して導入し、組換え宿主細胞JM109RXを産生した。T7プロモーターに連結したルシフェラーゼ遺伝子を含むベクターを、JM109RX、BL21(DE3)(Novagen)及びBL21−AI(Invitrogen)細胞に導入した。形質転換細胞を、25℃又は37℃のいずれかで増殖し、次に、ラムノース(JM109RX)、IPTG(BL21(DE3))又はアラビノース(BL21−AI)と接触し、ルシフェラーゼ活性を様々な時点で測定した。
【0173】
データは、相当するアラビノース誘導系におけるより、形質転換JM109RX細胞ではるかに低いレベルの非誘導性ルシフェラーゼの発現が見られたことを示した。ラムノース−誘導系が毒性遺伝子をクローン化することに限定されるものではないが、このように、ラムノース誘導系は、ドナーベクター又は増幅断片で存在する毒性遺伝子をクローン化することに特に有用であると考えられる。
【0174】
さらに、形質転換JM109RX細胞でのルシフェラーゼ活性の誘導は、形質転換BL21(DE3)細胞又はBL21−AI細胞でのルシフェラーゼ活性と比べて遅いが、RLUが100倍大きいとき、例えば、t=4時間の時間で、高い最終誘発レベル、例えば、高いタンパク質レベルをもたらした(
図22A及びC)。さらに、25℃でのラムノース誘導系の使用は、37℃での使用より高い、例えば、ピークで少なくとも10〜70倍以上ルシフェラーゼ活性を産生した(
図22A及びC)。そのような系の観察された発現のプロフィールは、発現タンパク質の溶解性を増加することを、例えば、組合せ時間を増加することによって、可能にすると考えられる。さらに、ラムノース誘導系はグルコースを抑制できる。したがって、ラムノース及びグルコースを組み合わせることにより、rhaBADプロモーターに連結した対象の遺伝子の発現プロフィールを細かく調整することができる。
【0175】
(例4)
毒性遺伝子の発現系を作製した。安定して形質転換された宿主細胞(JM109)を、lamBに統合された構成的プロモーター、例えば、4cプロモーターから発現した、バルナーゼ、バルスターの免疫因子をコードした発現ベクターを含むように作製した。分泌配列を欠いた切断バルナーゼ遺伝子(参照、例えば、登録番号X12871又はM14442(バシラス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)由来のバルナーゼ遺伝子)或いはAE007600(アロストリヂウム・アセトブチリカム(Alostridium acetobutylicum)由来のバルナーゼ遺伝子))に連結したλP
Lプロモーターを含むベクターを、これらの安定して形質転換された細胞に導入した。
【0176】
すべての出版物、特許及び特許出願は、参照することにより本願明細書に援用する。前述の明細書において、本発明は、その特定の好ましい実施形態に関連して記載しており、多くの詳細は説明の目的のために示しているが、本発明はさらなる実施形態を受け入れることが可能で、ここに記載した詳細のいくつかを、本発明の基本原理から逸脱せずに大幅に変更することができることは当業者には明らかとなろう。