(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6341949
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】LED照明装置
(51)【国際特許分類】
F21V 29/503 20150101AFI20180604BHJP
F21L 4/00 20060101ALI20180604BHJP
F21V 29/76 20150101ALI20180604BHJP
F21V 29/75 20150101ALI20180604BHJP
F21V 29/67 20150101ALI20180604BHJP
F21V 29/83 20150101ALI20180604BHJP
F21V 29/507 20150101ALI20180604BHJP
F21V 19/00 20060101ALI20180604BHJP
H01L 33/64 20100101ALI20180604BHJP
H01L 23/467 20060101ALI20180604BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20180604BHJP
【FI】
F21V29/503 100
F21L4/00 500
F21V29/76
F21V29/75
F21V29/67 100
F21V29/83
F21V29/507
F21V19/00 450
H01L33/64
H01L23/46 C
F21Y115:10 300
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-75096(P2016-75096)
(22)【出願日】2016年4月4日
(65)【公開番号】特開2017-188256(P2017-188256A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2017年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】505425878
【氏名又は名称】中村 正一
(73)【特許権者】
【識別番号】592248835
【氏名又は名称】日本エー・シー・ピー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 善章
(74)【代理人】
【識別番号】100098062
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 明彦
(74)【代理人】
【識別番号】100147599
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 匡孝
(72)【発明者】
【氏名】中村 正一
【審査官】
安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−195274(JP,A)
【文献】
特開2015−088419(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/150366(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 29/503
F21L 4/00
F21V 19/00
F21V 29/507
F21V 29/67
F21V 29/75
F21V 29/76
F21V 29/83
H01L 23/467
H01L 33/64
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の両端部が開口する筒状の筺体と、
前記筺体内に前記軸方向に順に配置された、LEDパッケージが実装されているLED基板、基台、ヒートシンク、及び冷却ファンと、
前記筺体の前記冷却ファン側の前記端部の開口に設けられて外部に開口する空気取入口と、
前記筺体の前記冷却ファンとは反対側の前記端部の開口に設けられて外部に開口する空気排出口とを備え、
前記冷却ファンを回転させることにより、前記筺体内には、前記軸方向に前記空気取入口から空気を取り込んで前記空気排出口から排出する空気通路が形成され、
前記LED基板と前記基台と前記ヒートシンクとは、前記軸方向に熱伝達可能に接続され、
前記ヒートシンクは、前記基台と熱伝達可能に接続された平板と、前記平板から前記空気通路内に前記軸方向と直交する向きに突出する複数の放熱フィンとを有し、前記複数の放熱フィンは、該複数の放熱フィンの間を空気が前記軸方向に流れるように設けられていることを特徴とするLED照明装置。
【請求項2】
前記LED基板は、前記基台の前面に形成された凹部に実装されていることを特徴とする請求項1に記載のLED照明装置。
【請求項3】
前記LED基板は、その前記LEDパッケージを実装した前面側から空気が前記基台に直接接触して熱交換できるように穿設された透過孔を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のLED照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシンク及び冷却ファンをを備えたLED照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高効率でかつ長寿命であるLED素子を用いた照明装置が種々実用化されている。しかし、LED素子を用いた照明装置は、本体ケース内がLED素子から発生する熱により高温となると、LEDの発光効率が悪くなり照明装置の光出力が低下し、またLED素子の寿命も短くなるといった問題がある。
【0003】
そのため、LED照明装置では、LED素子を冷却するのに、LED素子を実装した基板の裏側に複数のフィンを設けて冷却を行う方法が一般的に採用されている(例えば、特許文献1を参照)。また、ファン装置を用いて冷却を行うLED照明装置も知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−42755号公報
【特許文献2】特開2011−165351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、LED素子を用いた多様な照明装置の中でも、人が着用している眼鏡やヘッドバンド等の着用物や衣服に装着して使用する小型化されたLED照明装置が知られている。このような照明装置は、例えば、人の頭部に装着したとき、顔を向ける方向とライトの照射方向とが一致するため人の視線方向に沿って照明可能なことから、作業する手元をスポット的に照明する用途に最適な照明装置となっている。
【0006】
しかし、小型化されたLED照明装置では、全体の表面積が小さいため放熱量が少ない。そこで、特許文献1のLED照明装置のように、LED素子を実装した基板の裏側に複数のフィンを設けて、これらのフィンを照明装置の筐体に形成した溝部と嵌合させて組み合わせることで基板と筐体との接触面積を大きくさせようとしても、基板や筐体のサイズは限られているために高い放熱効果は得られない。
【0007】
特許文献2のLED照明装置のように、ファンを用いて外部から空気を導入してLED素子へ空気を流す空気流路を照光部内に形成すると、照光部内の気密性が損なわれるため、ケース内に侵入する埃や水蒸気で照度が低下する。
【0008】
上記点より本発明は、照光部の密閉性を保持したままで冷却ファンによりLED素子を効率良く冷却することのできるLED照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るLED照明装置は、筐体内に、LEDパッケージが実装されているLED基板と、前記LED基板を収容する凹部を備えた基台と、ヒートシンクと、冷却ファンとを配置し、前記ヒートシンクは、前記基台の前記凹部の形成面とは反対側の面と熱的に接続される矩形状の平板と、前記平板の前記基台と熱的に接続される面とは反対側の放熱面上に配置されて、両端が前記平板の対向する一組の辺からそれぞれ外方へ突出するよう設けられたリブ状の複数の放熱フィンと、で構成されて、前記基台は、前記放熱面上に前記放熱フィンが配置されたとき、前記放熱フィンの前記平板から突出している部分が露出する形状に構成されて、前記冷却ファンは、前記筐体の外からの空気を前記放熱面に対して略垂直方向に取り込み、前記放熱フィンの両端を通過して前記筐体の外へ抜け出る空気通路を形成することを特徴とする。
【0010】
この場合に、前記冷却ファンの回転径を前記放熱フィンの直線方向での寸法と略等しくすることで、放熱ファンが取り込む空気は軸方向にヒートシンクに当たるため効率的な熱交換が行われる。
【0011】
更に、前記放熱フィンの両端がそれぞれ突出している前記平板の対向する一組の辺以外の辺の端部には、前記放熱フィンと略同じ寸法で外方に突出する複数の第2放熱フィンを設けて、前記基台は前記第2放熱フィンが露出する形状に構成とすることで、放熱効率が向上する。
【0012】
また、前記LED基板は、前記照光部内の空気が前記基台と直接接触できるよう透過孔を設けることで、基台への熱伝導性が高まる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるLED照明装置に依れば、ヒートシンクは平板でLED基板と面接触して熱を吸収すると共に、吸収された熱は放熱フィンの端部に拡散されて、冷却ファンから取り込まれる空気と熱交換されることで、効率良く排出される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るLED照明装置の側面図を示す。
【
図2】本発明の実施形態に係るLED照明装置において、(a)はLED基板の表面の構成を平面図で示し、(b)は裏面の構成を斜視図で示す。
【
図3】LED基板とヒートシンクとが組み込まれた状態における基台の前面を平面図で示す。
【
図5】LED基板とヒートシンクとが組み込まれた状態における基台の側面図を示す。
【
図6】照明部が装着された据付部材を筐体に取り付けた状態の説明図を示す。
【
図7】本発明の実施形態に係るLED照明装置において、LED基板と基台とヒートシンクと冷却ファンとリアカバーの組立図を示す。
【
図8】基台とヒートシンクと冷却ファンとリアカバーとをリアカバーの外側から見たときの平面図を示す。
【
図9】LED基板からの熱がヒートシンクに吸収されて、冷却ファンが取り込む空気で排熱される説明図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明に係わるLED照明装置1の外観を側面図で示し、本体部1Aと照光部1Bとから構成される。照光部1Bは、対象物に光をスポット的に照射するための、複数の凸レンズ群を円錐台形状の筒の中に配列して構成されている。
【0017】
本体部1Aは、四角柱の筒状の筐体18の内部に、LED基板3と、基台4と、ヒートシンク5と、冷却ファン6と、照光部1Bを装着するための据付部材7とを配置して構成されている。そして、筐体18の冷却ファン6側の開口面には空気取入口13aが形成されているリアカバー13が取り付けられている。
【0018】
LED基板3は、熱伝導性の高い樹脂又は金属(合金を含む)から構成され、
図2(a)は、LED基板3の照光部1B側の面(以下、この方向の面を「前面」という)を平面図で示し、
図2(b)は、その裏側の面(以下、この方向の面を「後面」という)を斜視図で示している。LED基板3の前面には、LEDチップ8A及びドライバを含むLEDパッケージ8を搭載したモジュールが接着剤によって実装されている。この接着剤には、熱伝導性に優れたシリコーン系接着剤が使用される。
【0019】
そして、LED基板3には、取付用のビス孔10と、複数の小径の透過孔11と、リード線導入口25とが穿設されている。3通りのリード線導入口25には、LEDパッケージ8に組込まれるLEDチップとドライバのそれぞれへの給電線12a,12bと、共通のアース線12cとがそれぞれ通される。
【0020】
基台4は、LED基板3を保持すると共に、ヒートシンク5が装着される。この場合、基台4は、必ずしも熱伝導性の高い樹脂で形成されるべきものでもない。
図3は、LED基板3とヒートシンク5とが組み込まれた状態における基台4の前面を平面図で示し、基台4は、中央部4Aと、組み付け用のビスが貫通する孔26が穿設されている装着部4Bとから構成されている。装着部4Bは、照光部1Bを装着する据付部材7と対向するよう、中央部4Aの角から対角線方向に延び出た位置に設けられて、後面から軸方向に突出する形状となっている。
【0021】
また、中央部4Aの一辺には、外部から挿入されるハーネス19の受入口20が設けられている。ハーネス19内の電線は、LEDパッケージ7への給電線、ファン装置20への給電線及びアース線である。図示されていないがハーネス19から引き出されたリード線は、冷却ファン6及びLEDパッケージ8に接続される。
【0022】
基台4の前面はLED基板3との接触面であり、この面にはLED基板3が収まる凹部29(
図7参照)が形成されている。そして、LED基板3は、放熱グリスを介在させてこの凹部29の底面に密着させて、ビス孔10を通してビス14により基台4に固着されている。
【0023】
ヒートシンク5は、伝導率の高いアルミニウム又はその合金製で構成され、
図4で示すように、平板15と、平板15の対向する一組の辺に跨り、その両端がそれぞれ外方へ突出するよう設けられたリブ状の複数の放熱フィン16と、平板15のこの対向する一組の辺以外の辺の端部から外方に突出して形成される複数の放熱フィン17とから構成される。リブ状の放熱フィン16は、ビス孔10からビス14が基台4及びヒートシンク5を貫通する箇所では切り欠かれている。
【0024】
また、放熱フィン17は、放熱フィン16が平板15の辺から垂直に突出する寸法と略同じ寸法で外方に突出するよう形成されている。そして、板状に形成される放熱フィン16,17は、その面の部分が平板15の平面とは直交する方向に設けられている。
【0025】
図5は、基台4にヒートシンク5を組み合せた状態を側面図で示しており、組み合わせたとき、ヒートシンク5の平板15から突出している放熱フィン16の両端部及び放熱フィン17は基台4からも露出している。
【0026】
据付部材7の中央部は、
図6に示すように、照光部1Bが嵌合により取り付けられる取付部7Aとなっており、取付部7Aの周辺部には、ヒートシンク5の平板15から突出している放熱フィン16の両端及び放熱フィン17に対向する部分が切り欠かれて、空気排出口7Bが形成されている。そして、取付部7Aの筐体18の角部と接する3通りの隅部7Cには、軸方向に沿ったビス孔30が穿設されている。このビス孔30は、基台4の装着部4Bの貫通孔26に連通している。
【0027】
冷却ファン6は、
図7に示すように、ブラシレスDCファンモータ23によって駆動する羽根24を備えて、羽根24の回転により外からリアカバー13の空気取入口13aを通して、筐体18の軸方向に空気を取り込み、ヒートシンク5に向けて吹き出す軸流型ファンである。冷却ファンの回転径は、放熱フィン16の直線方向での寸法と略等しくすることで、ヒートシンク5を全て覆っている。
【0028】
そして、リアカバー13は、
図8に示すように冷却ファン6を支持して筐体18内に固定する。この場合、照光部1Bが装着された据付部材7、LED基板3とヒートシンク5とが組み込まれた基台4、冷却ファン6を軸方向に重ねて筐体18の内部に配置し、冷却ファン6の吸込み側にリアカバー13を被せて、ビス28によって締め付けてLED照明装置1が完成する。筐体18には、LED照明装置1の組み立て時に、基台4を収納するとき受入口20の逃げ部となるスリット31が形成されている。
【0029】
上記構成によるLED照明装置1の放熱作用について説明する。
図9に示すように、照明時にLEDパッケージ8に発生する熱はLED基板3に実線で示す矢印方向に伝達される。LED基板3は基台4の前面に形成した凹部29に密接して収容されており、LED基板3の熱は放熱グリスを介して基台4に排熱される。このとき、LED基板3を基台4に固着するビス14も熱伝導に寄与する。
【0030】
基台4は、LED基板3を凹部29に収容していることで、LED基板3の熱を効果的に吸収し、LED基板3から照光部1B内への放熱量を少なくできる。また、照光部1B内の空気は、LED基板3に形成した透過孔11を通して、基台4と熱交換を直接行っており、これによっても照光部1B内の温度上昇が抑えられている。
【0031】
基台4に伝達された熱は、基台4の中央部4Aからヒートシンク5の平板15に伝達されて、放熱フィン16,17に拡散され、さらに放熱フィン16,17ではその外方に向けた端部に伝導される。そして、冷却ファン6は、モータ23の駆動により、空気取入口13aから軸方向に空気を取り込み、空気排出口
7Bから空気を排出する破線の矢印で示す空気通路を形成する。よって、放熱フィン16,17ではその外方に向けて放射状に拡散された熱は、冷却ファン6によって取り込まれた空気で冷却されることになる。このとき、放熱フィン16の両端部と放熱フィン17とは、平板15の三辺からそれぞれ外方に向けて突出している基台4の辺からも露出しているために、冷却ファン6によって取り込まれる空気は、各放熱フィンどうしの面の間を通り流れが阻止されることなく排出される。
【0032】
冷却ファン6がこのような空気通路を形成することで、LED基板3から基台4へと伝導された熱は、ヒートシンク5を通して取り込まれた空気との熱交換が効果的に行われて外部に放出される。そして、空気排出口
7Bから吹き出された空気は、照光部1Bの表面を通過することで、照光部1Bとも熱交換が行われる。よって、放熱性能を高めたLED照明装置1が提供される。
【0033】
上記の実施形態では、基台4の一つの辺にはハーネス19の受入口20を設けたことで、平板15の三辺でしか放熱フィン16,17を設けていないが、受入口20の配置によっては、基台4の四つの辺に対応して放熱フィンを突出させて設けることも可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 LED照明装置
3 LED基板
4 基台
5 ヒートシンク
6 冷却ファン
8 LEDパッケージ
11 透過孔
15 平板
16 第1の放熱フィン
17 第2の放熱フィン
18 筐体
29 凹部