特許第6341952号(P6341952)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6341952
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】石膏ボード及び石膏ボードの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/14 20060101AFI20180604BHJP
   C04B 11/30 20060101ALI20180604BHJP
   C04B 24/38 20060101ALI20180604BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   C04B28/14
   C04B11/30
   C04B24/38 Z
   B28B1/30 101
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-81024(P2016-81024)
(22)【出願日】2016年4月14日
(65)【公開番号】特開2017-190262(P2017-190262A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2017年5月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000199245
【氏名又は名称】チヨダウーテ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】城所 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】飯田 一路
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/052048(WO,A1)
【文献】 特開2006−151802(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0104629(US,A1)
【文献】 米国特許第05164004(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00−32/02
C04B 40/00−40/06
B28B 1/00− 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼石膏、及び水を含有するスラリーを硬化させたものからなるボード状の芯材と、この芯材の両面に貼り付けられる一対のボード用原紙とを備える石膏ボードであって、
前記スラリーは、ポルトランドセメントを含有し、前記ポルトランドセメントの含有量が、前記焼石膏100質量部当たり、0.1〜1.0質量部であり、かつ
前記スラリーは、デンプンを含有し、前記デンプンの含有量が、前記焼石膏100質量部当たり、0.3〜2.4質量部である石膏ボード。
【請求項2】
前記ポルトランドセメントの含有量が、前記焼石膏100質量部当たり、0.25質量部以上であり、
前記ボード用原紙の表面に形成され、クロス用糊が50〜400g/mの割合で塗布されてなる糊層を備える請求項1に記載の石膏ボード。
【請求項3】
前記芯材は、有機系の防カビ剤を含有しない請求項1又は請求項2に記載の石膏ボード。
【請求項4】
JIS R 9101に準拠した前記芯材のpHが、5.8〜8.6である請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の石膏ボード。
【請求項5】
焼石膏、及び水を含有するスラリーを硬化させたものからなるボード状の芯材と、この芯材の両面に貼り付けられる一対のボード用原紙とを備える石膏ボードの製造方法であって、
前記スラリーに、ポルトランドセメントを、前記焼石膏100質量部当たり、0.1〜1.0質量部の割合で、添加し、かつ、デンプンを、前記焼石膏100質量部当たり、0.3〜2.4質量部の割合で添加する添加工程を有することを特徴とする石膏ボードの製造方法。
【請求項6】
前記添加工程において、前記ポルトランドセメントを、前記焼石膏100質量部当たり、0.25質量部以上の割合で添加する請求項5に記載の石膏ボードの製造方法。
【請求項7】
前記添加工程において、前記スラリーに、有機系の防カビ剤を添加しない請求項5又は請求項6に記載の石膏ボードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石膏部材、石膏ボード及び石膏部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石膏を主成分とする石膏ボード等の石膏部材は、耐火性、断熱性、遮音性等に優れており、建材等として広く用いられている。例えば、特許文献1には、建築物の外壁の下地に利用される石膏ボードが開示されている。また、特許文献2には、エレベーターシャフト内で利用される石膏ボードが開示されている。
【0003】
この種の石膏ボードは、通常の石膏ボードと比べて、湿気の多い環境下で使用されるため、カビの発生を防止又は抑制すること(いわゆる、防カビ性)が求められている。そのため、従来、この種の石膏ボードを構成する芯材や、芯材に積層される原紙には防カビ剤が付与されている(特許文献1,2参照)。例えば、特許文献2には、イミダゾール系、チアゾリン系、クロロフェノール系等の有機系の防カビ剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−165087号公報
【特許文献2】国際公開第2008/155979号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
石膏部材に利用される防カビ剤は、防カビ性に優れるものの、一般的に高価であり、石膏部材の製造コストを高くする一因となっていた。
【0006】
本発明の目的は、一般的な防カビ剤を使用せずに、石膏部材及び石膏ボードに防カビ性を付与する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る石膏部材は、焼石膏、及び水を含有するスラリーを硬化させたものからなる石膏部材であって、前記スラリーは、ポルトランドセメントを含有し、前記ポルトランドセメントの含有量が、前記焼石膏100質量部当たり、0.1〜10.0質量部であることを特徴とする。
【0008】
前記石膏部材において、前記ポルトランドセメントの含有量が、前記焼石膏100質量部当たり、0.1〜1.0質量部であることが好ましい。
【0009】
前記石膏部材において、前記スラリーは、デンプンを含有し、前記デンプンの含有量が、前記焼石膏100質量部当たり、0.3〜2.4質量部であり、前記ポルトランドセメントの含有量が、前記焼石膏100質量部当たり、0.25質量部以上であることが好ましい。
【0010】
また、本発明の石膏ボードは、前記何れかに記載の石膏部材からなり、ボード状をなした芯材と、この芯材の両面に貼り付けられる一対のボード用原紙とを備える。
【0011】
前記石膏ボードにおいて、前記ボード用原紙の表面に形成され、クロス用糊が50〜400g/mの割合で塗布されてなる糊層を備えてもよい。
【0012】
また、本発明に係る石膏部材の製造方法は、焼石膏、及び水を含有するスラリーを硬化させて石膏部材を製造する石膏部材の製造方法であって、前記スラリーに、ポルトランドセメントを、前記焼石膏100質量部当たり、0.1〜10.0質量部の割合で、添加する工程を有することを特徴とする。
【0013】
前記石膏部材の製造方法において、前記添加工程では、前記スラリーに、前記ポルトランドセメントを、前記焼石膏100質量部当たり、0.1〜1.0質量部の割合で添加することが好ましい。
【0014】
前記石膏部材の製造方法において、前記添加工程では、前記スラリーに、デンプンを、前記焼石膏100質量部当たり、0.3〜2.4質量部の割合で添加し、かつ前記ポルトランドセメントを、前記焼石膏100質量部当たり、0.25質量部以上の割合で添加することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、一般的な防カビ剤を使用せずに、石膏部材及び石膏ボードに防カビ性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】石膏部材の一例である石膏ボードの構成を模式的に表した説明図
図2】4週間後の実施例1の試験体(N=1)の状態を撮影した写真を示す図
図3】2週間後の比較例1の試験体(N=2)の状態を撮影した写真を示す図
図4】4週間後の実施例10の試験体(N=1)の状態を撮影した写真を示す図
図5】4週間後の比較例3の試験体(N=1)の状態を撮影した写真を示す図
図6】4週間後の実施例13の試験体(N=1)の状態を撮影した写真を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔石膏部材〕
本発明の石膏部材は、焼石膏(CaSO・1/2H0)、水、及びポルトランドセメントを少なくとも含有するスラリーを硬化させたもの(硬化体)からなり、二水石膏(CaSO・2H0)を主成分とする。
【0018】
石膏部材は、内装建材(例えば、天井材、床材、壁材、外壁等の下地材)等の様々な用途で用いられ、特に、厨房等の多湿環境になり易い箇所で好適に用いられる。石膏部材の外観形状は、特に制限はなく、目的に応じて適宜、設定されればよい。石膏部材は、例えば、図1に示されるような、石膏ボード1のボード状の芯材2に利用される。なお、芯材2の両面には、ボード用原紙3,4が積層されている。
【0019】
石膏部材を製造するために利用される焼石膏(半水石膏)の原材料としては、天然石膏や、各種の化学石膏(例えば、リン酸石膏、排煙脱硫石膏、チタン石膏、フッ酸石膏、製塩石膏、精錬石膏等)を使用することができる。
【0020】
本発明では、石膏部材中に、少量のポルトランドセメントが添加されることで、石膏部材に防カビ性能が付与される。
【0021】
ポルトランドセメントとしては、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はなく、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント等の各種のポルトランドセメントが挙げられる。なお、コスト、入手容易性等の観点より、ポルトランドセメントとしては、普通ポルトランドセメントが好ましい。
【0022】
ポルトランドセメントの含有量(含有割合)は、石膏部材を製造するためのスラリー中に含まれる焼石膏100質量部当たり、0.1〜10.0質量部である。ポルトランドセメントの含有量がこのような範囲であると、石膏部材の防カビ性が確保される。
【0023】
なお、ポルトランドセメントの含有量(含有割合)としては、石膏部材を製造するためのスラリー中に含まれる焼石膏100質量部当たり、0.1〜1.0質量部であることが好ましい。ポルトランドセメントの含有量がこのような範囲であると、石膏部材の防カビ性が確保されると共に、石膏部材が略中性(例えば、pH5.8〜pH8.6)となり、石膏部材に貼り付けられる原紙等が石膏部材中に含まれる成分によって腐食すること等が抑制される。
【0024】
また、ポルトランドセメントの含有量(含有割合)としては、石膏部材を製造するためのスラリー中に含まれる焼石膏100質量部当たり、0.25質量部以上(0.25〜)が好ましい。ポルトランドセメントの含有量がこのような範囲であると、後述するように、石膏部材中にデンプンが含まれる場合であっても、デンプンの含有量が、前記スラリー中に含まれる焼石膏100質量部当たり、0.3〜2.4質量部であれば、石膏部材の防カビ性が確保される。
【0025】
(添加剤)
なお、本発明の目的を損なわない限り、石膏部材を製造するためのスラリーに、焼石膏、水、ポルトランドセメント以外のその他の成分(添加剤)が添加されてもよい。具体的な添加剤としては、例えば、デンプンが挙げられる。デンプンとしては、例えば、コーンスターチ、馬鈴薯デンプン、小麦デンプン、米デンプン、タピオカデンプン、サゴデンプン、化工デンプン等が挙げられる。
【0026】
デンプンの含有量は、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はないが、例えば、石膏部材を製造するためのスラリー中に含まれる焼石膏100質量部当たり、0.3〜2.4質量部が好ましい。デンプンの含有量がこのような範囲であると、ポルトランドセメントの含有量が、スラリー中に含まれる焼石膏100質量部当たり、0.25質量部以上であれば、防カビ性を確保することができる。デンプンは、カビ等の菌類の栄養源となり得るものの、石膏部材中に少量のポルトランドセメントが添加されているだけで、石膏部材の防カビ性が確保される。
【0027】
他の添加剤としては、例えば、界面活性剤、有機質繊維(アクリル繊維、ビニロン繊維等)、無機質繊維(ガラス繊維、カーボン繊維等)、PVA(ポリビニルアルコール)、メチルセルロース、無機軽量骨材(パーライト、シラスバルーン、バーミキュライト、ガラスバルーン等)、耐水剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤(顔料、染料)、酒石酸塩(酒石酸カリウム、酒石酸水素カリウム、及び酒石酸ナトリウムカリウム四水和物等)、ホルマリンキャッチャー剤等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0028】
石膏部材の製造方法としては、成型工程、乾燥工程、仕上工程等を含む公知の方法を適用することができる。
【0029】
また、本発明の場合、石膏ボードの表面(片面、又は両面)に、クロスを貼り付ける際、クロス用糊の塗布量が、通常の使用量(例えば、400g/m以下)であれば、石膏ボードの防カビ性能が確保される。この種の糊は、通常、デンプンを含有しており、カビ等の菌類の栄養分となり得るものの、通常の使用量であれば、後述する試験の結果より、防カビ性能が確保される。
【実施例】
【0030】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0031】
〔試験体の作製〕
(実施例1)
半水石膏(焼石膏)700g、デンプン2.1g(焼石膏100g当たり、0.3g)及びポルトランドセメント7g(焼石膏100g当たり、0.1g)を混合した粉体を水800gと混ぜ合わせて、石膏スラリーを調製した。調製したスラリーを、表原紙(坪量:210g/m)と裏原紙(坪量:210g/m)で挟み込んだ状態で50分間養生し、200℃に設定したオーブン内に60分間静置した。その後、40℃の乾燥機で恒量になるまで乾燥し、嵩密度が0.77±0.02g/cmのものを実施例1の試験体とした。
【0032】
(実施例2〜4及び参考例5〜7及び比較例1)
スラリーを調製する際に、デンプン及びポルトランドセメントの添加量(添加割合)を、表1に示されるものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜4及び参考例5〜7及び比較例1の試験体を作製した。
【0033】
〔防カビ効果試験1(ポルトランドセメントの含有量と防カビ効果との関係)〕
実施例1〜7及び比較例1の各試験体について、JIS Z 2911の「かび抵抗性試験方法」に準拠しつつ、以下に示される条件、手順で防カビ効果試験1を行った。なお、実施例1〜5及び比較例1について、それぞれ2つの試験体(N=1,N=2)を用意して、それぞれ2回試験を行った。
【0034】
(試験菌)
試験菌としては、5種類の混合菌を使用した。具体的な菌種は、Aspergillus niger, Penicillium pinophilum, Cladosporium cladosporioides, Aurebasidium pullulans, Trichoderma virensである。
【0035】
(試験体の調製)
各試験体について、それぞれ容量200mlのビーカーを1つずつ用意し、各ビーカーに精製水200mlを入れ、水温を約20℃に保ち、その水の中に試験体を浸して18時間静置した。その後、水中から試験体を取り出し、80〜85℃に保たれた乾燥機の中に入れて2時間放置した。このようにして各試験体の前調製を行った。
【0036】
(試験開始)
上記乾燥機から試験体を取り出し、その試験体を、シャーレ内の平板培地における培養面の中央に置いた。続いて、混合胞子懸濁液1mlを培養面と試験体の上面とに均等に吹き付け、その後、シャーレに蓋をし、温度26±2℃に保った場所にシャーレを置いて培養を開始した。
(防カビ効果の評価)
【0037】
培養期間は4週間であり、1週間毎(つまり、7日後、14日後、21日後及び28日後)に、以下に示される評価基準に基づいて、各試験体の防カビ効果を目視で確認した。結果は表1に示した。
【0038】
(評価基準)
「○」:試験体の接種部分に菌糸の発育が認められない。
「△」:試験体の接種部分に認められる菌糸の発育部分の面積が、全面積の1/3未満である。
「×」:試験体の接種部分に認められる菌糸の発育部分の面積が、全面積の1/3以上である。
【0039】
【表1】
【0040】
表1に示されるように、ポルトランドセメントの添加量が焼石膏100質量部当たり0.1〜10.0質量部である実施例1〜4及び参考例5〜7の各試験体では、菌糸の発育が認められず、防カビ効果を備えていることが確かめられた。
【0041】
各実施例の代表として、4週間後の実施例1の試験体(N=1)の状態を撮影した写真を図2に示した。実施例1の試験体は、実施例1〜7の中でポルトランドセメントの含有量が最も少ないものの、図2に示されるように、その表面において菌糸が発育していないことが確かめられた。
【0042】
これに対し、ポルトランドセメントを含有していない比較例1の試験体では、試験開始から2週間後には、N=2の場合に菌糸の育成が認められ、3週間後には、N=1及びN=2の何れの場合でも、試験体の表面の広範囲で、菌糸の育成が認められた。
【0043】
図3は、2週間後の比較例1の試験体(N=2)の状態を撮影した写真を示す図である。図3に示されるように、試験体の表面に、菌糸が集合している部分が認められた。
【0044】
〔試験体の作製〕
(実施例8〜10及び比較例2,3)
スラリーを調製する際に、デンプン及びポルトランドセメントの添加量(添加割合)を、表2に示されるものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例8〜10及び比較例2,3の試験体を作製した。なお、実施例8〜10及び比較例2,3について、それぞれ2つの試験体(N=1,N=2)を用意して、それぞれ2回試験を行った。
【0045】
〔防カビ効果試験2(デンプンの含有量と防カビ効果との関係)〕
実施例8〜10及び比較例2,3の各試験体について、上述した防カビ効果試験1と同様の方法で、試験及び評価を行った。結果は、表2に示した。
【0046】
【表2】
【0047】
表2に示されるように、デンプンの添加量が焼石膏100質量部当たり0.6〜2.4質量部である実施例8〜10の各試験体では、N=1及びN=2の何れの場合でも、菌糸の発育が認められず、防カビ効果を備えていることが確かめられた。
【0048】
各実施例の代表として、4週間後の実施例10の試験体(N=1)の状態を撮影した写真を図4に示した。実施例10の試験体は、実施例8〜10の中でデンプンの含有量が最も多いものの、図4に示されるように、その表面において菌糸が発育していないことが確かめられた。
【0049】
これに対し、デンプンの添加量が焼石膏100質量部当たり4.8〜9.6質量部である比較例2,3の各試験体では、2週間後には、N=1及びN=2の何れの場合でも、試験体の表面の広範囲で、菌糸の育成が認められた。
【0050】
図5は、4週間後の比較例3の試験体(N=1)の状態を撮影した写真を示す図である。図5に示されるように、試験体の表面に、菌糸が集合している部分が認められた。
【0051】
〔試験体の作製〕
(実施例11〜15)
スラリーを調製する際に、デンプン及びポルトランドセメントの添加量(添加割合)を、表3に示されるものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例11〜15の試験体を作製した。なお、実施例11〜15について、それぞれ2つの試験体(N=1,N=2)を用意して、それぞれ2回試験を行った。
【0052】
〔クロス用糊の塗布及びクロスの貼り付け〕
実施例11〜15の各試験体の両面に、それぞれ表3に示される塗布量で、クロス用糊を塗布した。その後、クロス用糊の塗布物に積層する形で、試験体の表面と同じ大きさのクロスを、各試験体の両面にそれぞれ貼り付けた。なお、クロスが貼り付けられた各試験体を、クロス付き試験体と称する。
【0053】
〔防カビ効果試験3(クロス用糊の塗布量と防カビ効果との関係)〕
実施例11〜15の各クロス付き試験体について、上述した防カビ効果試験1と同様の方法で、試験及び評価を行った。結果は、表3に示した。
【0054】
【表3】
【0055】
表3に示されるように、クロス用糊の塗布量が50.0〜400.0g/mである実施例11〜15のクロス付き試験体では、N=1及びN=2の何れの場合でも、菌糸の発育が認められず、防カビ効果を備えていることが確かめられた。
【0056】
各実施例の代表として、4週間後の実施例13の試験体(N=1)の状態を撮影した写真を図6に示した。図6に示されるように、4週間後における実施例13の試験体の表面には、菌糸が発育していないことが確かめられた。
【0057】
〔pHの測定〕
上記実施例1〜4及び参考例5〜7の各試験体のpHを測定した。pHの測定は、「JIS R 9101:1995 セッコウの化学分析方法」に準拠して行った。具体的には、試験体の芯材をすり鉢で粉砕して、芯材の粉末を作製し、その粉末5gを試料として水100mlに投入し、マグネチックスターラーを用いて4分間かき混ぜた。その後、pH計の電極を試料懸濁液に浸して、更にかき混ぜ、試料投入時から5分経過したときのpHの値を読み取った。測定の結果、実施例1がpH6.7、実施例2がpH6.8、実施例3がpH6.7、実施例4がpH6.8、参考例5がpH10.9、参考例6がpH11.0、参考例7がpH11.1であった。このように実施例1〜4の試験体のpHは、略中性であり、参考例5〜7の各試験体はアルカリ性であることが確かめられた。このことより、実施例1〜4の各試験体に貼り付けられた原紙は、参考例5〜7の各試験体に貼り付けられた原紙と比べて、化学的に安定であり、腐食し難いと言える。
【符号の説明】
【0058】
1…石膏ボード、2…芯材、3,4…ボード用原紙
図1
図2
図3
図4
図5
図6