【実施例】
【0030】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0031】
〔試験体の作製〕
(実施例1)
半水石膏(焼石膏)700g、デンプン2.1g(焼石膏100g当たり、0.3g)及びポルトランドセメント7g(焼石膏100g当たり、0.1g)を混合した粉体を水800gと混ぜ合わせて、石膏スラリーを調製した。調製したスラリーを、表原紙(坪量:210g/m
2)と裏原紙(坪量:210g/m
2)で挟み込んだ状態で50分間養生し、200℃に設定したオーブン内に60分間静置した。その後、40℃の乾燥機で恒量になるまで乾燥し、嵩密度が0.77±0.02g/cm
3のものを実施例1の試験体とした。
【0032】
(実施例2〜
4及び参考例5〜7及び比較例1)
スラリーを調製する際に、デンプン及びポルトランドセメントの添加量(添加割合)を、表1に示されるものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜
4及び参考例5〜7及び比較例1の試験体を作製した。
【0033】
〔防カビ効果試験1(ポルトランドセメントの含有量と防カビ効果との関係)〕
実施例1〜7及び比較例1の各試験体について、JIS Z 2911の「かび抵抗性試験方法」に準拠しつつ、以下に示される条件、手順で防カビ効果試験1を行った。なお、実施例1〜5及び比較例1について、それぞれ2つの試験体(N=1,N=2)を用意して、それぞれ2回試験を行った。
【0034】
(試験菌)
試験菌としては、5種類の混合菌を使用した。具体的な菌種は、Aspergillus niger, Penicillium pinophilum, Cladosporium cladosporioides, Aurebasidium pullulans, Trichoderma virensである。
【0035】
(試験体の調製)
各試験体について、それぞれ容量200mlのビーカーを1つずつ用意し、各ビーカーに精製水200mlを入れ、水温を約20℃に保ち、その水の中に試験体を浸して18時間静置した。その後、水中から試験体を取り出し、80〜85℃に保たれた乾燥機の中に入れて2時間放置した。このようにして各試験体の前調製を行った。
【0036】
(試験開始)
上記乾燥機から試験体を取り出し、その試験体を、シャーレ内の平板培地における培養面の中央に置いた。続いて、混合胞子懸濁液1mlを培養面と試験体の上面とに均等に吹き付け、その後、シャーレに蓋をし、温度26±2℃に保った場所にシャーレを置いて培養を開始した。
(防カビ効果の評価)
【0037】
培養期間は4週間であり、1週間毎(つまり、7日後、14日後、21日後及び28日後)に、以下に示される評価基準に基づいて、各試験体の防カビ効果を目視で確認した。結果は表1に示した。
【0038】
(評価基準)
「○」:試験体の接種部分に菌糸の発育が認められない。
「△」:試験体の接種部分に認められる菌糸の発育部分の面積が、全面積の1/3未満である。
「×」:試験体の接種部分に認められる菌糸の発育部分の面積が、全面積の1/3以上である。
【0039】
【表1】
【0040】
表1に示されるように、ポルトランドセメントの添加量が焼石膏100質量部当たり0.1〜10.0質量部である実施例1〜
4及び参考例5〜7の各試験体では、菌糸の発育が認められず、防カビ効果を備えていることが確かめられた。
【0041】
各実施例の代表として、4週間後の実施例1の試験体(N=1)の状態を撮影した写真を
図2に示した。実施例1の試験体は、実施例1〜7の中でポルトランドセメントの含有量が最も少ないものの、
図2に示されるように、その表面において菌糸が発育していないことが確かめられた。
【0042】
これに対し、ポルトランドセメントを含有していない比較例1の試験体では、試験開始から2週間後には、N=2の場合に菌糸の育成が認められ、3週間後には、N=1及びN=2の何れの場合でも、試験体の表面の広範囲で、菌糸の育成が認められた。
【0043】
図3は、2週間後の比較例1の試験体(N=2)の状態を撮影した写真を示す図である。
図3に示されるように、試験体の表面に、菌糸が集合している部分が認められた。
【0044】
〔試験体の作製〕
(実施例8〜10及び比較例2,3)
スラリーを調製する際に、デンプン及びポルトランドセメントの添加量(添加割合)を、表2に示されるものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例8〜10及び比較例2,3の試験体を作製した。なお、実施例8〜10及び比較例2,3について、それぞれ2つの試験体(N=1,N=2)を用意して、それぞれ2回試験を行った。
【0045】
〔防カビ効果試験2(デンプンの含有量と防カビ効果との関係)〕
実施例8〜10及び比較例2,3の各試験体について、上述した防カビ効果試験1と同様の方法で、試験及び評価を行った。結果は、表2に示した。
【0046】
【表2】
【0047】
表2に示されるように、デンプンの添加量が焼石膏100質量部当たり0.6〜2.4質量部である実施例8〜10の各試験体では、N=1及びN=2の何れの場合でも、菌糸の発育が認められず、防カビ効果を備えていることが確かめられた。
【0048】
各実施例の代表として、4週間後の実施例10の試験体(N=1)の状態を撮影した写真を
図4に示した。実施例10の試験体は、実施例8〜10の中でデンプンの含有量が最も多いものの、
図4に示されるように、その表面において菌糸が発育していないことが確かめられた。
【0049】
これに対し、デンプンの添加量が焼石膏100質量部当たり4.8〜9.6質量部である比較例2,3の各試験体では、2週間後には、N=1及びN=2の何れの場合でも、試験体の表面の広範囲で、菌糸の育成が認められた。
【0050】
図5は、4週間後の比較例3の試験体(N=1)の状態を撮影した写真を示す図である。
図5に示されるように、試験体の表面に、菌糸が集合している部分が認められた。
【0051】
〔試験体の作製〕
(実施例11〜15)
スラリーを調製する際に、デンプン及びポルトランドセメントの添加量(添加割合)を、表3に示されるものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例11〜15の試験体を作製した。なお、実施例11〜15について、それぞれ2つの試験体(N=1,N=2)を用意して、それぞれ2回試験を行った。
【0052】
〔クロス用糊の塗布及びクロスの貼り付け〕
実施例11〜15の各試験体の両面に、それぞれ表3に示される塗布量で、クロス用糊を塗布した。その後、クロス用糊の塗布物に積層する形で、試験体の表面と同じ大きさのクロスを、各試験体の両面にそれぞれ貼り付けた。なお、クロスが貼り付けられた各試験体を、クロス付き試験体と称する。
【0053】
〔防カビ効果試験3(クロス用糊の塗布量と防カビ効果との関係)〕
実施例11〜15の各クロス付き試験体について、上述した防カビ効果試験1と同様の方法で、試験及び評価を行った。結果は、表3に示した。
【0054】
【表3】
【0055】
表3に示されるように、クロス用糊の塗布量が50.0〜400.0g/m
2である実施例11〜15のクロス付き試験体では、N=1及びN=2の何れの場合でも、菌糸の発育が認められず、防カビ効果を備えていることが確かめられた。
【0056】
各実施例の代表として、4週間後の実施例13の試験体(N=1)の状態を撮影した写真を
図6に示した。
図6に示されるように、4週間後における実施例13の試験体の表面には、菌糸が発育していないことが確かめられた。
【0057】
〔pHの測定〕
上記実施例1〜
4及び参考例5〜7の各試験体のpHを測定した。pHの測定は、「JIS R 9101:1995 セッコウの化学分析方法」に準拠して行った。具体的には、試験体の芯材をすり鉢で粉砕して、芯材の粉末を作製し、その粉末5gを試料として水100mlに投入し、マグネチックスターラーを用いて4分間かき混ぜた。その後、pH計の電極を試料懸濁液に浸して、更にかき混ぜ、試料投入時から5分経過したときのpHの値を読み取った。測定の結果、実施例1がpH6.7、実施例2がpH6.8、実施例3がpH6.7、実施例4がpH6.8、
参考例5がpH10.9、
参考例6がpH11.0、
参考例7がpH11.1であった。このように
、実施例1〜4の試験体のpHは、略中性であり、
参考例5〜7の各試験体はアルカリ性であることが確かめられた。このことより、実施例1〜4の各試験体に貼り付けられた原紙は、
参考例5〜7の各試験体に貼り付けられた原紙と比べて、化学的に安定であり、腐食し難いと言える。