(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
流入口及び流出口が設けられたタンクと、一端側が前記流出口に連結され、他端側が前記タンク内において開口せしめられた流出管と、前記他端側開口を覆うように前記流入口の下側に固定配置された笠状あるいは逆立薄鉢状の気液分離体と、を備えるアキュームレータであって、
突沸現象に伴う前記気液分離体への衝撃を緩和すべく、前記気液分離体の裏面に、多孔体もしくは弾性体からなる衝撃緩和部材が設けられていることを特徴とするアキュームレータ。
前記衝撃緩和部材には、前記タンク内における前記気液分離体より下側の空間と前記他端側開口とを連通する連通空間が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のアキュームレータ。
【背景技術】
【0002】
一般に、カーエアコン等を構成するヒートポンプシステム200は、
図11(A)、(B)に例示される如くに、圧縮機210、室外熱交換器220、室内熱交換器230、膨張弁260、四方切換弁240等に加えて、アキュームレータ250を備えている。
【0003】
かかるシステム200においては、冷房運転と暖房運転の切り換え(流路切換)を四方切換弁240で行うようにされ、冷房運転時には、
図11(A)に示される如くのサイクルで冷媒が循環され、このときは室外熱交換器220が凝縮器として働くとともに、室内熱交換器230が蒸発器として働く。一方、暖房運転時には、
図11(B)に示される如くのサイクルで冷媒が循環され、このときは室外熱交換器220が蒸発器として働くとともに、室内熱交換器230が凝縮器として働く。どちらの運転時にも、アキュームレータ250には、蒸発器(室内熱交換器230又は室外熱交換器220)から低温低圧の気液混成状態の冷媒が四方切換弁240を介して導入される。
【0004】
アキュームレータ250としては、例えば特許文献1等に所載のように、流入口及び流出口が設けられた蓋部材によりその上面開口が気密的に閉塞された有底円筒状のタンク、このタンクの内径より小径の笠状ないし逆立薄鉢状の気液分離体、上端部が流出口に連結されて垂下されたインナーパイプとアウターパイプからなる二重管構造の流出管、この流出管(のアウターパイプ)の底部付近に設けられた、液相冷媒及びそれに混入されたオイル(冷凍機油)に含まれる異物を捕捉・除去するためのストレーナ等を有するものが知られている。
【0005】
このアキュームレータ250に導入された冷媒は、前記気液分離体に衝突して放射状に拡散されて液相冷媒と気相冷媒とに分離され、液相冷媒(オイルを含む)はタンク内周面を伝うように流下してタンク下部に溜まるとともに、気相冷媒は流出管におけるインナーパイプとアウターパイプとの間に形成される空間(気相冷媒下送流路)を下降し、インナーパイプ内空間を上昇して圧縮機210の吸入側に吸入されて循環せしめられる。
【0006】
また、液相冷媒と共にタンク下部に溜まるオイルは、液相冷媒との比重や性状の相違等によりタンク底部側に移動していき、流出管を介して圧縮機吸入側に吸入される気相冷媒に吸引されて、ストレーナ(の網目フィルタ)→流出管(アウターパイプ)の底部に形成されたオイル戻し孔→流出管のインナーパイプ内空間を通って気相冷媒と共に圧縮機吸入側に戻されて循環せしめられる(特許文献2、3等も併せて参照)。
【0007】
ところで、システム(圧縮機)の運転停止時には、オイルを含む液相冷媒がアキュームレータのタンクの下部に溜まるが、オイルとして冷媒と相溶性が無くかつ冷媒より比重が小さいものが使用されている場合には、液相冷媒とオイルとの比重及び粘性の相違により、二層に分離、すなわち、上側にオイル層、下側に液相冷媒層が形成される。
【0008】
このような二層分離状態において、システム(圧縮機)を起動すると、タンク内の圧力が急速に低下するため、液相冷媒が突発的に激しく沸騰(以下、突沸と称する)して大きな衝撃音が発生するという問題が生じていた。
【0009】
かかる突沸現象及びそれに伴う衝撃音の発生原因としては、圧縮機の起動時にタンク内(圧縮機吸入側)の圧力が低下しても、ある時点までは、オイル層が冷媒層の蓋となっているため(オイル層には突沸現象は生じない)、前記突沸現象の発生は抑えられるが、オイル層より上側(の気相冷媒)とそれより下側(の液相冷媒)との圧力差が所定圧以上となったとき、液相冷媒が一気に爆発的に沸騰するために発生すると推察される(圧縮機での突沸現象についての説明が記載されている特許文献2も参照されたい)。
【0010】
また、圧縮機の停止時においてオイルと液相冷媒が上記のように二層分離状態とならない場合、つまり、圧縮機の停止時においてもオイルと液相冷媒が混合状態のままである場合、あるいは、オイルとして冷媒と相溶性が無くかつ冷媒より比重が大きいものが使用されて、上側に液相冷媒層、下側にオイル層が形成される場合でも、冷媒やオイルの種類・性状等の条件次第では、液相冷媒が一気に爆発的に沸騰する前記突沸現象及びそれに伴う衝撃音が発生することがある。
【0011】
このような突沸現象及びそれに伴う衝撃音の発生を抑えるための一つの方策として、前記特許文献2には、レシプロエンジンを駆動源とする圧縮機の回転軸(クランクシャフト)に撹拌羽根を設け、圧縮機の起動時に前記撹拌羽根を回転させてオイル層部分を撹拌し、液相冷媒をオイル上部に放出することが提案されている。
【0012】
また、特許文献3には、アキュームレータ(のタンク)内においてオイルと液相冷媒が二層分離状態となった際にそれらを確実に混合することを主目的として、圧縮機から吐出された気相冷媒の一部を開閉弁付きのバイパス流路を介してタンクの底部から液相冷媒中に吹き込んで撹拌することが提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記した如くに、圧縮機の起動時に、タンク内においてオイルと液相冷媒からなる液状部分を撹拌することにより、突沸現象及びそれに伴う衝撃音の発生をある水準まで抑えられることが本発明者等によっても確認されているが、上記従来の提案技術では、前記突沸現象に伴う衝撃音を十分に消すことができないのが現状である。また、上記従来の提案技術では、撹拌するための手段(撹拌羽根及びそれを回転させるための駆動源や、開閉弁付きのバイパス流路等)が別途に必要となり、アキュームレータ(及びそれを備えたヒートポンプシステム)の複雑化、コストアップ、大型化等を招くという問題がある。
【0015】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、複雑化、コストアップ、大型化等を招くことなく、圧縮機の起動時における突沸現象に伴う衝撃音を効果的に抑えることのできるアキュームレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の目的を達成すべく、本発明に係るアキュームレータは、基本的には、流入口及び流出口が設けられたタンクと、一端側が前記流出口に連結され、他端側が前記タンク内において開口せしめられた流出管と、前記他端側開口を覆うように前記流入口の下側に固定配置された笠状あるいは逆立薄鉢状の気液分離体と、を備え、突沸現象に伴う前記気液分離体への衝撃を緩和すべく、前記気液分離体の裏面に、多孔体もしくは弾性体からなる衝撃緩和部材が設けられていることを特徴としている。
【0017】
前記多孔体は、好ましくは、発泡材、又は、塊状の繊維材から作製される。
【0018】
好ましい態様では、前記衝撃緩和部材は、前記気液分離体の裏面に沿って設けられる。
【0019】
他の好ましい態様では、前記流出管は、前記流出口に連結されて前記タンク内に垂設されたインナーパイプと、該インナーパイプの外周に配在されたアウターパイプとからなる二重管構造とされ、前記衝撃緩和部材には、前記流出管を通すための挿通穴が設けられる。
【0020】
別の好ましい態様では、前記衝撃緩和部材には、前記タンク内における前記気液分離体より下側の空間と前記他端側開口とを連通する連通空間が形成される。
【0021】
別の好ましい態様では、前記衝撃緩衝部材が、さらに前記タンクの内周面に設けられる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るアキュームレータでは、気液分離体の裏面に、多孔体もしくは弾性体からなる衝撃緩和部材が設けられ、突沸現象が発生したときに、タンク内で沸騰した液相冷媒の一部が前記気液分離体の裏面に設けられた多孔体の内部(つまり、多孔体に形成された小孔)に入り込む、あるいは、タンク内で沸騰した液相冷媒の一部によって前記気液分離体の裏面に設けられた弾性体が圧縮変形される。そのため、突沸現象に伴う気液分離体への衝撃が緩和され、当該気液分離体の振動が抑制されるので、圧縮機の起動時における突沸現象に伴う衝撃音を効果的に抑えることができる。
【0023】
この場合、基本的には、安価にかつ簡便に作製した多孔体もしくは弾性体を気液分離体の裏面に配置すればよいので、従来のように、撹拌手段として、撹拌羽根及びそれを回転させるための駆動源や開閉弁付きのバイパス流路等を用いる場合に比べて、アキュームレータの構成を簡素化することができ、コスト削減、小型化等を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0026】
[第1実施形態]
図1は、本発明に係るアキュームレータの第1実施形態を示す縦断面図、
図2は、
図1のU−U矢視線に従う断面図、
図3は、
図1のV−V矢視線に従う断面図である。なお、
図1では、流出管30の板状リブ36(後で詳述)が省略されている。
【0027】
図示第1実施形態のアキュームレータ1は、前述した
図11(A)、(B)に示される如くの、例えば電気自動車用カーエアコンを構成するヒートポンプシステム200におけるアキュームレータ250として用いられるもので、ステンレスあるいはアルミ合金等の金属製の有底円筒状のタンク10を有し、このタンク10の上面開口は、同じ金属製の蓋部材12により気密的に閉塞されている。なお、本実施形態のアキュームレータ1は、例えば、図示のように縦置き、つまり、蓋部材12を上(天)側、タンク10の底部13を下(地)側にして設置される。
【0028】
蓋部材12には、流入口15と段付きの流出口16とが並設されており、蓋部材12の下側に、タンク10の内径より若干小径の笠状ないし逆立薄鉢状の気液分離体18が配在され、前記流出口16の下部に流出管30の上端部が連結されている。
【0029】
前記流出管30は、その上端部が流出口16の下部にかしめや圧入等により連結されるとともに気液分離体18の天井部18aに設けられた通し穴19を介してタンク10内に垂下された例えば金属製のインナーパイプ31と、該インナーパイプ31の外周に配在された例えば合成樹脂製の有底のアウターパイプ32とからなる二重管構造とされている。
【0030】
ここで、インナーパイプ31及びアウターパイプ32の少なくとも一方には、それぞれの間に所定の間隙を確保するためのリブが形成されるのがよい。図示例では、
図2を参照すればよくわかるように、インナーパイプ31の外部(気液分離体18より下側の部分)に、長手方向(上下方向)に沿い、かつ、等角度間隔で3枚の板状リブ36が半径方向外方に向けて突設されており、この3枚の板状リブ36の外周側にアウターパイプ32が圧入気味に外挿固定されている。
【0031】
また、インナーパイプ31、アウターパイプ32、及び前記板状リブ36は、合成樹脂材料やアルミ材等を用いた押出し成型により一体的に形成してもよい。すなわち、上記の二重管構造を、アルミ押出し材等を用いた一体成型品とすることもできる。
【0032】
アウターパイプ32の下端部は、後述するストレーナ40のケース42における内周段差付き上部42aに圧入等により内嵌固定されている。インナーパイプ31の下端は、アウターパイプ32の底部32bより多少上側に位置せしめられ、アウターパイプ32の上端は蓋部材12より多少下側に位置せしめられている。アウターパイプ32の底部32bの中央には、オイル戻し孔35が形成されている。オイル戻し孔35の孔径は例えば1mm前後に設定されている。
【0033】
前記気液分離体18は、ステンレスあるいはアルミ合金等の金属製とされ、前記流出管30のインナーパイプ31とアウターパイプ32(の上端部)とで形成される開口(流出管30の他端側開口)を覆うように、流入口15の下側に固定配置されている。前記気液分離体18は、流出管30(のインナーパイプ31)の上端部が挿通される通し穴19が設けられるとともに流入口15に対向配置される円板状の天井部18aと、天井部18aの外周から下向きに延びる円筒状の周壁部18bとを有している。
【0034】
蓋部材12に気液分離体18及びインナーパイプ31を組み付けるにあたっては、インナーパイプ31の上端部(板状リブ36が形成された部分より上側の部分)を、気液分離体18に設けられた通し穴19に通すとともに流出口16に下側から圧入又は拡管固定する。これにより、前記気液分離体18がインナーパイプ31の板状リブ36と蓋部材12の下端面とに挟持されるようにして保持固定される。
【0035】
なお、インナーパイプ31の上端近くに、バルジ成形等により圧縮曲成された鍔状部を設け、前記気液分離体18を前記鍔状部と蓋部材12の下端面とに挟持されるようにして保持固定してもよい。
【0036】
前記ストレーナ40は、タンク10の底部13に載せ置かれて固定されており、
図3を参照すればよくわかるように、合成樹脂製の有底円筒状のケース42と該ケース42にインサート成形等により一体化された円筒状の網目フィルタ45とからなっている。網目フィルタ45は、例えば、金網や合成樹脂製のメッシュ材等から作製される。
【0037】
ストレーナ40のケース42は、前記アウターパイプ32の下端部が内嵌固定された内周段差付き上部42aと、底板部42cと、この底板部42cの外周に等角度間隔で立設され、前記上部42aを連結する4本の柱状部42bと、を有している。底板部42cの外周には、環状の連結帯部が設けられ、その連結帯部と上部42aの下側とに、網目フィルタ45の上下の端部が固着されている。なお、網目フィルタ45は、ケース42の成形時にインサート成形により一体化されても良い。すなわち、4本の柱状部42bの間に側面視矩形の4つの窓44が画成され、この各窓44部分に網目フィルタ45が張られていることになる。なお、4本の柱状部42bには型抜き用の勾配が付けられているが、4本の柱状部42bの半径方向の幅は略等しくされている。また、ケース42に網目フィルタ45を設ける手法は、上記のみに限定されない。
【0038】
また、前記タンク10内には、冷媒中の水分を吸収除去すべく、該タンク10の約半分の高さの乾燥剤M入りバッグ50が、該タンク10の内周に沿うように底部13上に載せ置かれて配在されている。このバッグ50は、通気性・通水性並びに所要の形状保持性を有するフェルト等の布状体で作製され、その中に粒状の乾燥剤Mが略満杯に充填されている。
【0039】
このような構成を有するアキュームレータ1においては、従来のものと同様に、蒸発器からの低温低圧の気液混在状態の冷媒が流入口15を介してタンク10内に導入され、導入された冷媒は、気液分離体18(の天井部18a)に衝突して放射状に拡散されて液相冷媒と気相冷媒とに分離され、液相冷媒(オイルを含む)はタンク10の内周面を伝うように流下してタンク10の下部空間に溜まるとともに、気相冷媒は流出管30におけるインナーパイプ31とアウターパイプ32との間に形成される空間(気相冷媒下送流路)→インナーパイプ31の内空間を介して圧縮機210の吸入側に吸入されて循環せしめられる。
【0040】
また、液相冷媒とともにタンク10の下部空間に溜まるオイルは、液相冷媒との比重や性状の相違等によりタンク10の底部13側に移動していき、流出管30を介して圧縮機吸入側に吸入される気相冷媒に吸引されて、ストレーナ40の網目フィルタ45→オイル戻し孔35→インナーパイプ31の内空間を通って気相冷媒とともに圧縮機吸入側に戻されて循環せしめられる。網目フィルタ45を通る際にはスラッジ等の異物が捕捉され、異物は、循環する冷媒(オイルを含む)から取り除かれる。
【0041】
上記構成に加えて、本実施形態のアキュームレータ1では、前記気液分離体18の裏面(タンク10内に溜まる液相冷媒側の面)に、突沸現象に伴う気液分離体18への衝撃を緩和すべく、多孔体からなる衝撃緩和部材20が設けられている。
【0042】
前記衝撃緩和部材20(多孔体)は、流出管30を通すための挿通穴21が設けられるとともに、前記気液分離体18(の周壁部18b)と略同径の外径を有しており、その上面が気液分離体18の天井部18a(の下面)に当接し、かつ、その外周面が気液分離体18の周壁部18b(の内周面)に当接せしめられた状態で、貼り付け、かしめ等により前記気液分離体18の裏面に固着されている。ここで、前記挿通穴21には、前記流出管30が所定の隙間を持って内挿されており、当該挿通穴21は、タンク10内における気液分離体18より下側の空間と流出管30のインナーパイプ31とアウターパイプ32(の上端部)とで形成される開口(流出管30の他端側開口)とを連通する連通空間とされている。
【0043】
前記衝撃緩和部材20(多孔体)は、例えば、ゴム等の樹脂製もしくはアルミニウム等の金属製の発泡材や、フェルト等の樹脂製、スチールウール等の金属製、あるいはグラスウール等の塊状の繊維材などから作製される。
【0044】
上記のように、本実施形態のアキュームレータ1では、気液分離体18の裏面に、多孔体からなる衝撃緩和部材20が設けられ、突沸現象が発生したときに、タンク10内で沸騰した液相冷媒の一部が前記気液分離体18の裏面に設けられた多孔体(衝撃緩和部材20)の内部(つまり、多孔体に形成された小孔)に入り込む(
図4参照)。そのため、突沸現象に伴う気液分離体18への衝撃が緩和され、当該気液分離体18の振動が抑制されるので、圧縮機の起動時における突沸現象に伴う衝撃音を効果的に抑えることができる。
【0045】
この場合、基本的には、安価にかつ簡便に作製した多孔体を気液分離体18の裏面に配置すればよいので、従来のように、撹拌手段として、撹拌羽根及びそれを回転させるための駆動源や開閉弁付きのバイパス流路等を用いる場合に比べて、アキュームレータの構成を簡素化することができ、コスト削減、小型化等を図ることができる。
【0046】
[第2実施形態]
図5は、本発明に係るアキュームレータの第2実施形態を示す縦断面図である。
図5でも、
図1と同様、流出管30の板状リブ36が省略されている。
【0047】
図示第2実施形態のアキュームレータ2は、第1実施形態のアキュームレータ1に対し、衝撃緩和部材20の構成のみが異なり、他の構成は同じである。なお、本第2実施形態のアキュームレータ2を示す
図5には、第1実施形態のアキュームレータ1の各部に対応する部分に共通の符号が付されている。すなわち、第1実施形態のアキュームレータ1では、突沸現象に伴う気液分離体18への衝撃を緩和すべく、気液分離体18の裏面に設けられた衝撃緩和部材20が多孔体で構成されているが、本第2実施形態のアキュームレータ2では、前記衝撃緩和部材60が弾性体で構成されている。
【0048】
すなわち、本第2実施形態のアキュームレータ2における気液分離体18の裏面には、当該気液分離体18の裏面(具体的には、天井部18aの下面及び周壁部18bの内周面)に沿うようにして、流出管30(のインナーパイプ31)を通すための挿通穴61が設けられた断面逆凹状を有する弾性体からなる衝撃緩和部材60が配在されている。この衝撃緩和部材60(弾性体)は、例えば、ゴム等の樹脂材から作製され、焼付け等により前記気液分離体18の裏面に固着されている。ここでは、前記衝撃緩和部材60(弾性体)における凹部62が、タンク10内における気液分離体18より下側の空間と流出管30のインナーパイプ31とアウターパイプ32(の上端部)とで形成される開口(流出管30の他端側開口)とを連通する連通空間とされている。
【0049】
このような構成とされた第2実施形態のアキュームレータ2においては、気液分離体18の裏面に、弾性体からなる衝撃緩和部材60が設けられ、突沸現象が発生したときに、タンク10内で沸騰した液相冷媒の一部によって前記気液分離体18の裏面に設けられた弾性体が圧縮変形される(
図6参照)。そのため、突沸現象に伴う気液分離体18への衝撃が緩和され、当該気液分離体18の振動が抑制されるので、上記第1実施形態のアキュームレータ1と略同様の作用効果が得られる。
【0050】
[第1及び第2実施形態の変形形態]
上記第1及び第2実施形態では、突沸現象に伴う衝撃音(の大きさ)を抑える対策を説明したが、上記第1及び第2実施形態における対策に対して、本発明者による特願2015−231052の明細書記載の各種対策(突沸現象及びそれに伴う衝撃音の発生を抑える対策)を適用することにより、突沸現象に伴う衝撃音(の大きさ)をより効果的に抑えられることが確認されている。
【0051】
図7及び
図10は、その一例(
図7は第1実施形態の変形形態、
図10は第2実施形態の変形形態)を示したものである。
【0052】
図7に示されるアキュームレータ1A並びに
図10に示されるアキュームレータ2Aでは、有底円筒状のタンク10の底部13(の内面)に、沸騰(気泡発生)の起点となる円環状の突起13aがプレス加工や切削加工等により同心円上に複数(図示例では、7個)形成されている(特に、
図8参照)。
【0053】
また、流出管30を構成するアウターパイプ32には、沸騰の起点となる複数の突起がローレット加工によりその外周に形成されたローレット加工部37が設けられている。前記ローレット加工部37は、本例では、アウターパイプ32の下端部から上端部まで(上下方向に亘って)設けられている。
【0054】
アウターパイプ32のローレット加工部37の突起やタンク10の底部13の内面の突起13aは、沸騰を促進すべく、その先端は鋭利に成形されている。
【0055】
また、アウターパイプ32(のローレット加工部37)の外周におけるストレーナ40より上側の部分の全域を覆うように、フェルト、あるいはメッシュ状の可撓性あるいは弾性を有する板状体等の布状体90が巻装もしくは外挿されている。なお、布状体90に代えて、発泡材を用いてもよく、発泡材としては、市販されている合成樹脂、ゴム、セラミック等を素材としたものを用いることができる。
【0056】
さらに、上述の第1実施形態のアキュームレータ1並びに第2実施形態のアキュームレータ2に対し、乾燥剤M入りバッグ50が取り除かれ、フェルト等の布状体90に、アウターパイプ32(のローレット加工部37)の外周に外挿固定されるパイプ外挿部92が設けられるとともに、冷媒中の水分を吸収除去するための乾燥剤Mを収納する、上下が塞がれた円筒状の乾燥剤収納部95が設けられている。
【0057】
前記乾燥剤収納部95は、アウターパイプ32の流入口15側の外側に、上下方向(アウターパイプ32の軸線方向)に沿って設けられている(特に、
図9参照)。また、ここでは、前記乾燥剤収納部95は、パイプ外挿部92の上端部から下端部まで(言い換えれば、アウターパイプ32のストレーナ40より上側の部分から上端部まで)設けられており、その上部が圧縮機210の停止時においてタンク10内に溜まる液状部分(液相冷媒とオイル)の最高液面高さ位置より上方に突設されている。
【0058】
なお、前記乾燥剤収納部95の分だけ、
図7に示される衝撃緩和部材20の挿通穴21の穴径は大きくされている。
【0059】
前記布状体90のパイプ外挿部92には、複数(図示例では、上下方向で略等間隔に3箇所かつ図面の手前側と奥側の、合計6箇所)の(水平方向に向けて延びる)スリット(切れ目)90sが形成されている。
【0060】
図7に示されるアキュームレータ1A並びに
図10に示されるアキュームレータ2Aでは、上記第1実施形態のアキュームレータ1並びに第2実施形態のアキュームレータ2と略同様の作用効果が得られることに加えて、アキュームレータ1A、2Aにおけるタンク10内に溜まる液状部分(液相冷媒とオイル)に浸漬する部分に、沸騰(気泡発生)の起点となる突起(アウターパイプ32のローレット加工部37の突起やタンク10の底部13の上面の突起13a)が設けられ、圧縮機210の起動時に、前記突沸現象及びそれに伴う衝撃音が発生する以前に、その突起が、液相冷媒が沸騰して気化する際の起点(きっかけ)となり、タンク10内の圧力低下に伴って前記液相冷媒が徐々に沸騰(突沸より小さい小沸)する状態となる。すなわち、前記突起により、衝撃音を伴う突沸現象が発生する所定圧に達する以前に突沸よりも小さい沸騰の発生が促進され、前記液相冷媒の沸騰が緩やかに進行するので、圧縮機210の起動時における突沸現象及びそれに伴う衝撃音の発生を効果的に抑えることができる。
【0061】
この場合、基本的には、プレス加工や切削加工、ローレット加工等により安価にかつ簡便に前記突起を形成した流出管30(のアウターパイプ32)やタンク10のみを用意すればよいので、従来のように、撹拌手段として、撹拌羽根及びそれを回転させるための駆動源や開閉弁付きのバイパス流路等を用いる場合に比べて、アキュームレータの構成を簡素化することができ、コスト削減、小型化等を図ることができる。
【0062】
また、流出管30を構成するアウターパイプ32の外周に巻装もしくは外挿された布状体90(又は発泡材)によってアウターパイプ32に設けた突起(アウターパイプ32のローレット加工部37の突起)に接する冷媒が疎な状態となって圧力低下するため、圧縮機210の起動時において、アウターパイプ32に形成した突起が、液相冷媒が沸騰して気化する際の起点(きっかけ)となり、徐々に気泡が出る状態、つまり、液相冷媒が徐々に気化する状態となる。そのため、液相冷媒の沸騰が緩やかに進行し、その結果、液相冷媒が一気に爆発的に沸騰する突沸現象及びそれに伴う衝撃音の発生を更に効果的に抑えることができる。
【0063】
この場合、アウターパイプ32の外周に、布状体90(又は発泡材)を巻装もしくは外挿するという、簡単な構成を付加するだけでよいので、前述した従来の方策のように、複雑化、高コスト化、大型化等を招くことはなく、費用対効果に極めて優れるものとなる。
【0064】
また、布状体90(のパイプ外挿部92)に形成したスリット(切れ目)90sが冷媒沸騰のきっかけとなり、また発生した気泡がアウターパイプ32及び布状体90を介してそれらの外側に出やすくなり、更に効果的である。
【0065】
さらに、フェルト等の布状体90は、通気性・通水性を有するので、本例のように、フェルト等の布状体90に、パイプ外挿部92に加えて、冷媒中の水分を吸収除去するための乾燥剤Mを収納する乾燥剤収納部95を設けておけば、当該乾燥剤収納部95がバッグの役目を果たすので、別途に乾燥剤Mを収納するバッグやその固定手段(結束バンド等)を用意する必要はなくなり、費用対効果が一層高められる。
【0066】
また、乾燥剤収納部95の上部を前記最高液面高さ位置よりも上方に位置させておけば、圧縮機210の起動時における突沸現象及びそれに伴う衝撃音の発生がより確実に抑えられる。
【0067】
なお、上述の
図7〜
図9及び
図10に示される変形形態の詳細構造及び作用効果については、特願2015−231052を併せて参照されたい。
【0068】
なお、図示は省略するが、前記した衝撃緩和部材は、前記気液分離体18の裏面とともに、タンク10(タンク10における円筒状の部分やタンク10の上面開口を閉塞する蓋部材12)の内周面(全面又はその一部)に設けてもよい。その場合、上記第1及び第2実施形態で説明したのと同様の方法により、タンク10の内周に固着できることは詳述するまでも無い。
【0069】
また、上記第1及び第2実施形態では、インナーパイプとアウターパイプとからなる二重管構造とされた流出管を採用しているが、本発明は、一端側が流出口に連結され、他端側開口が気液分離体の下面近くに位置せしめられた例えばU字状等の流出管を備えたアキュームレータにも適用し得ることは言うまでも無い。