特許第6342015号(P6342015)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6342015波動歯車装置の可撓性外歯歯車と軸部材の締結構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6342015
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】波動歯車装置の可撓性外歯歯車と軸部材の締結構造
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20180604BHJP
   F16D 1/033 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   F16H1/32 B
   F16D1/033 200
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-562193(P2016-562193)
(86)(22)【出願日】2014年12月5日
(86)【国際出願番号】JP2014082334
(87)【国際公開番号】WO2016088277
(87)【国際公開日】20160609
【審査請求日】2017年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】390040051
【氏名又は名称】株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】保科 達郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 優
(72)【発明者】
【氏名】長井 啓
【審査官】 藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/181373(WO,A1)
【文献】 特開平07−256314(JP,A)
【文献】 実公平02−042322(JP,Y2)
【文献】 特開昭49−093264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
F16D 1/00−9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性外歯歯車における剛性のボスの端面に形成した円環状あるいは円形のボス側締結面と、
前記ボスに同軸に締結固定される軸部材の端面に形成した軸側締結面と、
前記ボス側締結面と前記軸側締結面を同軸に当接させた状態で、前記ボスおよび前記軸部材を、これらの中心軸線の方向に締結固定する締結具と、
を有しており、
前記ボス側締結面および前記軸側締結面のうちの一方の締結面は、当該締結面の直径線を稜線として所定の角度で交わり、前記稜線および前記中心軸線を含む平面に対して対称な第1および第2傾斜面によって規定される凸側締結面であり、
前記ボス側締結面および前記軸側締結面のうちの他方の締結面は、当該締結面の直径線を谷線として所定の角度で交わり、前記谷線および前記中心軸線を含む平面に対して対称な第3および第4傾斜面によって規定される凹側締結面であり、
前記中心軸線に直交する平面を軸直交平面とすると、前記第1〜第4傾斜面のそれぞれの前記軸直交平面に対する傾斜角度は、2degから16degでの範囲内の値であり、
前記凸側締結面を規定する前記第1、第2傾斜面の前記傾斜角度は、前記凹側締結面を規定する前記第3、第4傾斜面の前記傾斜角度に比べて、0.5degから1.5degまでの範囲内の角度だけ小さいことを特徴とする波動歯車装置の可撓性外歯歯車と軸部材の締結構造。
【請求項2】
前記ボス側締結面の前記中心軸線の方向の軸方向寸法は、前記ボスの前記中心軸線の方向の厚さ寸法よりも小さい請求項1に記載の波動歯車装置の可撓性外歯歯車と軸部材の締結構造。
【請求項3】
剛性内歯歯車と、
可撓性外歯歯車と、
前記可撓性外歯歯車を半径方向に撓めて前記剛性内歯歯車にかみ合わせ、両歯車のかみ合い位置を円周方向に移動させる波動発生器と、
を有しており、
前記可撓性外歯歯車は、軸部材に同軸に締結固定されるボスを備え、
前記ボスには請求項1または2に記載の締結構造に用いる前記ボス側締結面が形成されていることを特徴とする波動歯車装置。
【請求項4】
剛性内歯歯車と、
可撓性外歯歯車と、
前記可撓性外歯歯車を半径方向に撓めて前記剛性内歯歯車にかみ合わせ、両歯車のかみ合い位置を円周方向に移動させる波動発生器と、
前記可撓性外歯歯車に形成したボスに締結具によって同軸に締結固定された軸部材と、
を有しており、
前記ボスと前記軸部材は、請求項1または2に記載の締結構造によって締結固定されていることを特徴とする波動歯車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波動歯車装置において、その可撓性外歯歯車を軸部材に同軸に締結固定するための締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
波動歯車装置として、カップ形状あるいはシルクハット形状の可撓性外歯歯車を備えたものが知られている。波動歯車装置においては、例えば、可撓性外歯歯車が減速回転出力要素とされ、減速回転が可撓性外歯歯車から出力軸に伝達される。また、特許文献1に開示の波動歯車装置では、入力軸から可撓性外歯歯車に伝達された回転が減速されて剛性内歯歯車の側から出力される。
【0003】
可撓性外歯歯車と出力軸、入力軸等の軸部材との間の締結は、可撓性外歯歯車に形成した剛性のボスを、ボルト締結によって、出力軸に同軸に締結固定することによって行われる。例えば、特許文献1においては、可撓性外歯歯車のボスが、押さえ板と入力軸の間に挟まれ、この状態で、ボルトによって入力軸に同軸に締結固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−248502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、可撓性外歯歯車と、これに締結固定される軸部材との間に、大きなトルク伝達が必要とされる場合には、ボルトとピンを併用した締結構造が用いられる。ピンを併用した締結構造の場合には、ピン穴を高い加工精度で形成する必要がある等、加工コストが非常に高くなる。
【0006】
本発明の課題は、可撓性外歯歯車のボスと軸部材の間の取り合い寸法(ボスの軸方向長さ)を増加させることなく、ボルト締結のみでボルト・ピン併用締結の場合と同等以上の伝達トルクを確保できる締結構造を提供することにある。
【0007】
また、本発明の課題は、かかる新たな締結構造を用いて可撓性外歯歯車のボスと軸部材が締結固定された波動歯車装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明による、波動歯車装置の可撓性外歯歯車と軸部材の締結構造は、
可撓性外歯歯車における剛性のボスの端面に形成した円環状あるいは円形のボス側締結面と、
前記ボスに同軸に締結固定される軸部材の端面に形成した軸側締結面と、
前記ボス側締結面と前記軸側締結面を同軸に当接させた状態で、前記ボスおよび前記軸部材を、これらの中心軸線の方向に締結固定する締結具と、
を有しており、
前記ボス側締結面および前記軸側締結面のうちの一方の締結面は、当該締結面の直径線を稜線として所定の角度で交わり、前記稜線および前記中心軸線を含む平面に対して対称な第1および第2傾斜面によって規定される凸側締結面であり、
前記ボス側締結面および前記軸側締結面のうちの他方の締結面は、当該締結面の直径線を谷線として所定の角度で交わり、前記谷線および前記中心軸線を含む平面に対して対称な第3および第4傾斜面によって規定される凹側締結面であり、
前記中心軸線に直交する平面を軸直交平面とすると、前記第1〜第4傾斜面のそれぞれの前記軸直交平面に対する傾斜角度は、2degから16degの範囲内の値であることを特徴としている。
【0009】
本発明の締結構造では、ボス側締結面および軸側締結面の一方の締結面を、対称な2つの第1、第2傾斜面によって規定される凸側締結面とし、他方の締結面を、対称な2つの第3、第4傾斜面によって規定される凹側締結面としてある。また、締結面を規定する第1〜第4傾斜面を2deg〜16degと小さな傾斜角度としてある。本発明者等の実験によれば、本発明の締結構造は、従来のような軸に直交する平坦面同士をボルトおよびピンを併用して締結固定する場合と同等以上の大きなトルク伝達が可能であることが確認された。
【0010】
また、本発明の締結構造の各締結面の加工はピン穴加工に比べて容易である。よって、従来における軸直交面同士をボルトとピンを併用して締結する場合に比べて、簡単な加工により、同等以上のトルク伝達が可能な締結構造を実現できる。また、伝達トルクを高めるためにボスの軸方向寸法を増加させる必要もない。
【0011】
さらに、本発明の締結構造では、可撓性外歯歯車と軸部材との間で所定のトルクを伝達するために必要とされる軸力が小さくて済む。これらの部材の間の締結用のボルトの本数を少なくでき、あるいは、使用するボルトのサイズを小さくすることができる。よって、双方の部材の締結部分の省スペース化を図ることができる。また、このため、ボスの中心を貫通して延びる中空部が形成されている場合には、ボスの外径を増加させることなく、中空部の径を大きくすることができる。
【0012】
本発明においては、上記のように、各締結面を規定する第1〜第4傾斜面の前記軸直交平面に対する傾斜角度は、それぞれ、2degから16degまでの範囲内の値に設定されている。
【0013】
本発明者等の実験によれば、傾斜角度が2度未満の場合には、伝達トルクを十分に大きくできないことが確認された。すなわち、従来の場合(双方の締結面が軸直交平面に平行な平坦面であり、これらの締結面を、ボルトとピンを併用して締結した場合)に得られる伝達トルクと同等以上の伝達トルクを確保することが困難であることが確認された。
【0014】
逆に、16degを超える傾斜角度を採用する場合には、このような大きな傾斜角度の傾斜面を備えた締結面を形成するために、可撓性外歯歯車のボスの軸方向寸法(厚さ寸法)が大幅に大きくなってしまい、実用的ではない。傾斜角度を16deg以下にすることで、締結用の2つの傾斜面を形成するために必要な中心軸線の方向の軸方向寸法を、可撓性外歯歯車のボスにおける通常の厚さ寸法よりも十分に小さくできる。
【0015】
本発明の締結構造において、前記凸側締結面を規定する前記第1、第2傾斜面の前記傾斜角度は、前記凹側締結面を規定する前記第3、第4傾斜面の前記傾斜角度に比べて、0.5degから1.5degまでの範囲内の値だけ小さい。
【0016】
このように、凸側締結面の傾斜角度を凹側締結面の傾斜角度よりも僅かに小さくすることにより、双方の締結面の接触率を向上させることができる。すなわち、双方の締結面をボルト等の締結具によって軸線方向に締め付けた場合に、凸側締結面の第1、第2傾斜面における傾斜方向の外周縁部分が最初に、凹側締結面の第3、第4傾斜面における傾斜方向の外周縁部分に当接する。ボルト等の締結具の軸力の増加に伴って、双方の締結面の傾斜面が塑性変形して、それらの傾斜方向の外周縁側から中心側に向かって当接領域が広がる。したがって、双方の締結面が確実に軸線方向から締結固定され、伝達トルクの大きな締結構造を確実に形成できる。
【0017】
次に、本発明の波動歯車装置は、剛性内歯歯車と、可撓性外歯歯車と、前記可撓性外歯歯車を半径方向に撓めて前記剛性内歯歯車にかみ合わせ、両歯車のかみ合い位置を円周方向に移動させる波動発生器とを有しており、前記可撓性外歯歯車は、軸部材に同軸に締結固定されるボスを備え、前記ボスには上記の締結構造に用いる前記ボス側締結面が形成されていることを特徴としている。
【0018】
また、本発明の波動歯車装置は、剛性内歯歯車と、可撓性外歯歯車と、前記可撓性外歯歯車を半径方向に撓めて前記剛性内歯歯車にかみ合わせ、両歯車のかみ合い位置を円周方向に移動させる波動発生器と、前記可撓性外歯歯車に形成したボスに締結具によって同軸に締結固定された軸部材とを有しており、前記ボスと前記軸部材が、上記の締結構造によって締結固定されていることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明を適用した波動歯車装置を示す概略断面図である。
図2A図1の可撓性外歯歯車のボスと出力軸の締結構造を示す部分断面図である。
図2B図2Aの可撓性外歯歯車と出力軸を離した状態を示す説明図である。
図2C図2Aの可撓性外歯歯車のボス側締結面の形状を示す説明図である。
図3図2Bの丸枠IIIで囲む部分を示す部分拡大断面図である。
図4】各種の締結構造の伝達トルクを比較した実験結果を示す図表である。
図5A】締結構造の別の例を示す説明図である。
図5B図5Aのボス側締結面の形状を示す説明図である。
図6】締結構造の別の例を示す説明図である。
図7】(a1)〜(a3)は、本発明を適用した締結構造における凹側締結面の部分を示す側面図、平面図および斜視図であり、(b1)〜(b3)は凸側締結面の部分を示す側面図、平面図および斜視図であり、(c)は(b2)のC−C線で切断した部分の部分断面図である。
図8図7に示す凸側締結面の部分と凹側締結面の部分を重ね合わせた状態を、凹側締結面の部分の半分を切り取って示す斜視図である。
図9】凸面側装着溝にピンを装着した締結前の状態、および、凸面側装着溝および凹面側装着溝の間にピンが装着された締結後の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した締結構造を備えた波動歯車装置の実施の形態を説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る波動歯車装置を示す概略構成図である。波動歯車装置1は、円環状の剛性内歯歯車2と、この内側に同軸に配置したカップ形状の可撓性外歯歯車3と、この内側に配置した楕円状輪郭の波動発生器4とを備えている。カップ形状の可撓性外歯歯車3は、半径方向に撓み可能な円筒状胴部5と、この円筒状胴部5の一方の端から半径方向に内側に延びる円環状のダイヤフラム6と、ダイヤフラム6の内周縁に一体形成した円環状の剛性のボス7とを備えている。円筒状胴部5の他方の開口端の側の外周面部分には外歯8が形成され、当該外歯8は剛性内歯歯車2の内歯9とかみ合い可能である。
【0022】
可撓性外歯歯車3の外歯8の部分は、その内側に嵌め込まれている波動発生器4によって楕円状に撓められ、楕円形状の長軸方向の両端に位置する外歯8が内歯9にかみ合っている。波動発生器4は、モーター等の不図示の駆動源によって回転駆動される。波動発生器4が回転すると、両歯車2、3のかみ合い位置が円周方向に移動する。両歯車の歯数差は2n(nは正の整数)に設定されている。
【0023】
波動発生器4が1回転すると、歯数差に対応する角度だけ、両歯車2、3の間に相対回転が生じる。例えば、剛性内歯歯車2を回転しないように固定しておくと、可撓性外歯歯車3が減速回転出力要素となって、ここから減速回転が出力される。可撓性外歯歯車3のボス7には同軸に出力軸11が、押さえ部材14とボルト15によって、締結固定されており、減速回転が出力軸11から不図示の被駆動部材に伝達される。
【0024】
図2Aは可撓性外歯歯車3のボス7と出力軸11の締結構造を示す部分断面図であり、図2Bは可撓性外歯歯車3と出力軸11を離した状態で示す説明図であり、図2Cはボス7に形成したボス側締結面を示す説明図である。また、図3図2Bの丸枠IIIの部分を取り出して示す部分拡大図である。
【0025】
これらの図を参照して説明すると、本例のボス7と出力軸11の締結構造は、ボス7の外側の円環状の端面に形成したボス側締結面12と、出力軸11の軸端面に形成した軸側締結面13と、円盤状の押さえ部材14と、複数本の締結用のボルト15から構成される。
【0026】
ボス7は、押さえ部材14と出力軸11との間に挟まれ、押さえ部材14の側から装着した複数本のボルト15によって、出力軸11の側に締結固定されている。これにより、ボス側締結面12が軸側締結面13に同軸に当接した状態で相互に締結されている。
【0027】
ボス側締結面12は、図2B図2Cに示すように、当該ボス側締結面12の直径線16を稜線として所定の角度で交わる第1傾斜面12aおよび第2傾斜面12bによって規定される凸側締結面である。第1、第2傾斜面12a、12bは、直径線16(稜線)および中心軸線1aを含む平面に対して対称な傾斜面である。
【0028】
これに対して、軸側締結面13は、図2Bに示すように、ボス側締結面12と略相補的な形状をした凹側締結面であり、軸側締結面13の直径線17を谷線として所定の角度で交わる第3傾斜面13aおよび第4傾斜面13bによって規定される凹側締結面である。第3、第4傾斜面13a、13bは、直径線17(谷線)および中心軸線1aを含む平面に対して対称な半円形の傾斜面である。
【0029】
ここで、ボス7は、図3に示すように、中心軸線1aの方向の外側の端面がボス側締結面12とされ、反対側の内側の端面7aはダイヤフラム6の端面6aから連続して延びている平坦面である。この端面7aは、中心軸線1aに直交する方向に延びている面である。以下に述べるように、各傾斜面12a、12b、13a、13bの傾斜角度が小さな値に設定されており、ボス側締結面12における中心軸線1aの方向の軸方向寸法L(12)は、ボス7の中心軸線1aの方向の最大厚さ寸法L(7)に比べて十分に小さい。
【0030】
ボス側締結面12の第1傾斜面12aの傾斜角度は、中心軸線1aに直交する軸直交平面18に対して、2degから16degまでの範囲内の値に設定される。したがって、第1傾斜面12aと対称な第2傾斜面12bは逆方向に同一の傾斜角度で傾斜している。
【0031】
軸側締結面13の第3傾斜面13aは、第1傾斜面12aと同一方向に傾斜しており、その傾斜角度θ(13a)も、軸直交平面18に対して、2degから16degまでの範囲内の値に設定される。第3傾斜面13aと対称な第4傾斜面13bは逆方向に同一の傾斜角度で傾斜している。
【0032】
本例においては、図3に示すように、凸側締結面であるボス側締結面12の第1、第2傾斜面12a、12bの傾斜角度は、他方の凹側締結面である軸側締結面13の第3、第4傾斜面13a、13bの傾斜角度に対して、1deg±0.5degの範囲内の角度Δθだけ小さい。
【0033】
次に、出力軸11には、図2Bに示すように、軸側締結面13に開口するボルト穴19が円周方向に一定のピッチで形成されている。図2A図2Bに示すように、ボス7および押さえ部材14には、それぞれ、ボルト挿通穴20、21が円周方向にボルト穴19と同一のピッチで形成されている。これらの三部材11、7、14を同軸に重ね、押さえ部材14の側からボルト15を締結することで、ボス7と出力軸11とが締結固定される。
【0034】
この構成の締結構造においては、ボス側締結面12の第1、第2傾斜面12a、12bおよび軸側締結面13の第3、第4傾斜面13a、13bの傾斜角度を大きくすると、それに伴って、伝達トルクも大きくなる。本発明者等の実験によれば、傾斜角度を2deg以上にすれば、従来の締結構造と同等以上の大きさのトルクを伝達可能なことが確認された。すなわち、ボス側締結面12、軸側締結面13を、中心軸線1aに直交する平坦面とし、ボルトおよびピンを併用して、ボス7と出力軸11とを締結固定した場合に得られる伝達トルクと同等以上のトルクを伝達可能である。
【0035】
一方、傾斜角度を大きくすると、それに伴って、ボス側締結面12の軸方向寸法L(12)が大きくなり、ボス7の厚さも増やす必要がある。この結果、ボス7と出力軸11の締結部分の取り合い寸法が大きくなってしまう。一般的に用いられているカップ形状(あるいはシルクハット形状)の可撓性外歯歯車3のボス7の厚さ寸法を考慮すると、傾斜角度θ(12a)、θ(13a)は、16deg以下にすることが実用的である。
【0036】
図4は、本例の締結構造の伝達トルクを他の構成の締結構造と比較した実験結果の一例を示す図表である。波動歯車装置AおよびBのそれぞれについて、異なる締結構造を備えている場合の伝達トルクを測定した。図において、「ボルト締結」とは、ボス側締結面12および軸側締結面13を共に中心軸線1aに直交する平坦面とし、ボルトのみを用いて、双方の面を締結固定した場合である。「ボルト+ピン締結」とは、ボス側締結面12および軸側締結面13を共に中心軸線1aに直交する平坦面とし、ボルトとピンを併用して双方の面を締結固定した場合である。「2凸凹面」とは、本例の締結構造の場合であり、傾斜角度θ(12a)を5.9degとし、傾斜角度θ(13a)を6.0degとしてある。
【0037】
それぞれの場合について他の条件を同一として実験を行ったところ、図に示すように、本例の締結構造によって、ボルトとピンを併用した場合と同様な伝達トルクが得られることが確認された。
【0038】
(実施の形態2)
図5Aは本発明を適用した締結構造の別の例を示す説明図であり、図5Bはそのボス側締結面を示す説明図である。これらの図に示す例では、可撓性外歯歯車3Aの円環状のボス7Aに形成したボス側締結面12Aを凹側締結面とし、軸部材11Aの軸側締結面13Aを凸側締結面としてある。これ以外は、実施の形態1の構造と同一である。
【0039】
(実施の形態3)
図6は本発明を適用した締結構造の更に別の例を示す説明図である。この図に示す例では、可撓性外歯歯車3Bのボス7Bのボス側締結面12Bが対称な2つの傾斜面からなる凸側締結面であり、軸部材11Bの軸側締結面13Bが対称な2つの傾斜面からなる凹側締結面である。ボス側締結面12Bと軸側締結面13Bとは、押さえ部材14Bおよびボルト15Bによって締結固定されている。ボルト15Bは、押さえ部材14B、ボス7Bおよび軸部材11Bに対して、同軸に締結固定されている。
【0040】
なお、各実施の形態においては、第1〜第4傾斜面が平坦な傾斜面である。例えば、ボス側締結面を凸側締結面とし、凸曲面からなる第1、第2傾斜曲面によって規定し、軸側締結面を凹側締結面とし、凹曲面からなる第3、第4傾斜曲面によって規定することも可能である。この場合には、各締結面における傾斜方向における外周縁端と、各締結面が交差する直径線とを含む傾斜平面と、軸直交平面とのなす傾斜角度を、2deg〜16degの範囲内の値となるようにすればよい。
【0041】
(実施の形態4)
上記の実施の形態1〜3の締結構造において、対称な2つの第1、第2傾斜面によって規定される凸側締結面と、対称な2つの第3、第4傾斜面によって規定される凹側締結面とを同軸となるように合わせた場合に、それらの締結面の芯出しを簡単に行い得ることが望ましい。
【0042】
凸側締結面の第1、第2傾斜面と凹側締結面の第3、第4傾斜面を相互に合わせると、これらの傾斜面の傾斜方向においては、双方の締結面の芯出しが行われる。しかしながら、傾斜方向に直交する方向、すなわち、凸側締結面の稜線の方向(凹側締結面の谷線の方向)においては、自動的に、双方の締結面を位置決めすることができない。
【0043】
以下に述べる実施の形態4の締結構造においては、双方の締結面には、それらの稜線および谷線に直交する方向に延びるピン装着溝が形成されている。双方の締結面のピン装着溝の間にピンを装着した状態で、双方の締結面を中心軸線の方向から重ね合わせる。これにより、ピンによって、双方の締結面は、これらの締結面を規定している傾斜面の稜線(谷線)に直交する方向における芯出しが行われる。
【0044】
従来においては、締結対象の2部材の回転軸を合わせるために、双方の締結面に、中心軸線の方向から相互にはめ合い可能な凹凸状のはめ合い部を設けている。実施の形態4の締結構造によれば、締結面の外周側の部分に、このような凹凸状のはめ合い部を設けることなく、双方の締結面の芯出しを行うことができる。換言すると、双方の締結面のみで芯出しが可能になる。
【0045】
図7は実施の形態4に係る締結構造を示す図であり、図7(a1)〜(a3)は、締結構造の凹側締結面の部分を示す側面図、平面図および斜視図であり、図7(b1)〜(b3)は凸側締結面の部分を示す側面図、平面図および斜視図であり、図7(c)は図7(b2)のC−C線で切断した部分の部分断面図である。図8は、図7に示す凸側締結面の部分と凹側締結面の部分を重ね合わせた状態を、凹側締結面の部分の半分を切り取って示す斜視図である。
【0046】
これらの図に示す締結構造は、図1図4に示す実施の形態1に係る締結構造の変形例であり、当該締結構造における凸側締結面および凹側締結面を示している。図1図4に示す締結構造における各部分に対応する部分には同一の符号を付し、それらの説明は省略する。
【0047】
実施の形態4の締結構造は、可撓性外歯歯車3における剛性のボス7の端面に形成した円環状のボス側締結面である凸側締結面12と、ボス7に同軸に締結固定される出力軸11(軸部材)端面に形成した軸側締結面である凹側締結面13と、凸側締結面12および凹側締結面13を同軸に当接させた状態で、これらを中心軸線1aの方向に締結固定する複数本のボルト(図示せず)と、凸側締結面12および凹側締結面13の間に装着される芯出し用の2本の細長い円柱形状の第1ピン31および第2ピン32とを有している。なお、実際の締結においては、図1図4に示す締結構造の場合と同様に、押さえ部材14も用いられるが、図7図8においては省略してある。
【0048】
凸側締結面12は、当該締結面12の一本の直径線に沿った線を稜線16として所定の角度で交わり、当該稜線16および中心軸線1aを含む平面に対して対称な第1、第2傾斜面12a、12bによって規定される。凹側締結面13は、当該締結面13の一本の直径線に沿った線を谷線17として所定の角度で交わり、谷線17および中心軸線1aを含む平面に対して対称な第3および第4傾斜面13a、13bによって規定される。
【0049】
ここで、凸側締結面12には、稜線16に直交する直径線に沿った方向に延びる第1凸面側ピン装着溝41および第2凸面側ピン装着溝42が形成されている。同様に、凹側締結面13においても、谷線17に直交する直径線に沿った方向に延びる第1凹面側ピン装着溝51および第2凹面側ピン装着溝52が形成されている。図8に示すように、凸側締結面12および凹側締結面13は、稜線16および谷線17を合わせ、第1、第2凸面側ピン装着溝41、42および第1、第2凹面側ピン装着溝51、52の間に、それぞれ第1、第2ピン31、32を装着した状態で、相互にボルトによって締結固定される。
【0050】
さらに詳しく説明すると、第1、第2凸面側ピン装着溝41、42は、中心軸線1aを中心として対称に形成した直線状に延びる一定幅、一定深さの溝である。同様に、第1、第2凹面側ピン装着溝51、52も、中心軸線1aを中心として対称に形成した一定幅で直線状に延びる一定幅、一定深さの溝である。第1、第2凸面側ピン装着溝41、42と、第1、第2凹面側ピン装着溝51、52は、中心軸線を通る直径方向における対応する位置に形成されている。本例では、第1、第2凸面側ピン装着溝41、42、第1、第2凹面側ピン装着溝51、52は、共に、同一形状、大きさの溝であるので、以下に、第1凸面側ピン装着溝41、第1凹面側ピン装着溝51、第1ピン31について説明する。
【0051】
図9(a)は第1凸面側ピン装着溝41に第1ピン31を装着した締結前の状態を示す説明図であり、図9(b)は第1凸面側ピン装着溝41と第1凹面側ピン装着溝51の間の第1ピン31が装着された締結後の状態を示す説明図である。
【0052】
図7(c)、図9(a)から分かるように、第1凸面側ピン装着溝41は、第1ピン31の外径よりも広幅の矩形の溝開口部41aと、第1ピン31の外径よりも狭い矩形の溝底部41bを備えた溝断面形状をしている。例えば、第1ピン31を第1凸面側ピン装着溝41に装着すると、図7(c)、図9(a)に示すように、第1ピン31の円形外周面は、溝底部41bの両側の開口縁41c、41dによって、線接触した状態で支持される。
【0053】
図8図9(b)に示すように、ボス側の第1凸面側ピン装着溝41と出力軸側の第1凹面側ピン装着溝51の間に装着される第1ピン31は、中心軸線1aの方向の両側から、第1凸面側ピン装着溝41の左右の開口縁41c、41dと、第1凹面側ピン装着溝51の溝底部の左右の開口縁51c、51d(図示せず)との間に、ガタツキなく、挟持された状態になる。
【0054】
すなわち、図9(a)に示すように、装着溝41から第1ピン31が半分以上突出する。第1ピン31を挟み、ボス7および出力軸11を締結すると、図9(b)に示すように、各装着溝41、51の開口縁41c、41d、51c、51dが斜線で示すように塑性変形することで、第1ピン31の位置が固定され、第1ピンによる位置決めが行われる。また、開口縁の塑性変形した部分は、装着溝41に十分な逃げ部(広幅の溝開口部41a、51a)が確保されているので、相手側の締結面に干渉することがない。
【0055】
この締結状態においては、双方の締結面12、13の間において、それらの稜線16と谷線17によって、これらの線16、17に直交する方向の位置決めが行われる。また、稜線16(谷線17)に直交する直径線の方向に装着される第1、第2ピン31、32によって、稜線16(谷線17)の方向の位置決めが行われる。これら直交する二方向の位置決めが行われるので、双方の締結面12、13の中心軸線1aが一致した芯出し状態が形成される。
【0056】
このように、実施の形態4による、波動歯車装置の可撓性外歯歯車と軸部材の締結構造は:可撓性外歯歯車における剛性のボスの端面に形成した円環状あるいは円形のボス側締結面と;前記ボスに同軸に締結固定される軸部材の端面に形成した軸側締結面と;前記ボス側締結面と前記軸側締結面を同軸に当接させた状態で、前記ボスおよび前記軸部材を、これらの中心軸線の方向に締結固定する締結具と;前記ボス側締結面および前記軸側締結面の間に装着される芯出し用のピンと;を有している。
【0057】
また、前記ボス側締結面および前記軸側締結面のうちの一方の締結面は、当該締結面の直径線を稜線として所定の角度で交わり、前記稜線および前記中心軸線を含む平面に対して対称な第1、第2傾斜面によって規定される凸側締結面である。前記ボス側締結面および前記軸側締結面のうちの他方の締結面は、当該締結面の直径線を谷線として所定の角度で交わり、前記谷線および前記中心軸線を含む平面に対して対称な第3および第4傾斜面によって規定される凹側締結面である。
【0058】
前記凸側締結面は、前記稜線に直交する方向に延びる凸面側ピン装着溝を備え、前記凹側締結面は、前記谷線に直交する方向に延びる凹面側ピン装着溝を備えている。前記凸側締結面および前記凹側締結面は、前記稜線および前記谷線を合わせ、前記凸面側ピン装着溝および前記凹面側ピン装着溝の間に前記ピンを装着した状態で、相互に締結される。
【0059】
なお、実施の形態4の締結構造においては、ピンとして、第1ピンおよび第2ピンを用いている。凸面側ピン装着溝として、中心軸線を中心として対称に形成した第1凸面側ピン装着溝および第2凸面側ピン装着溝を用いている。凹面側ピン装着溝として、中心軸線を中心として対称に形成した第1凹面側ピン装着溝および第2凹面側ピン装着溝を用いている。第1ピンは、第1凸面側ピン装着溝および第1凹面側ピン装着溝の間に装着され、第2ピンは、第2凸面側ピン装着溝および第2凹面側ピン装着溝の間に装着される。
【0060】
また、ピンとしては、一般的に使用される円柱形状のものを用いている。凸面側ピン装着溝および凹面側ピン装着溝のそれぞれは、ピンの外径よりも広幅の溝開口部およびピンの外径よりも狭い溝底部を備えた溝断面形状をしている。凸面側ピン装着溝と凹面側ピン装着溝の間に装着されるピンは、溝底部の左右一対の開口縁に線接触した状態で、中心軸線の方向の両側から、一方の左右一対の前記開口縁と他方の左右一対の前記開口縁の間に挟持される。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9