(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6342016
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】血中グルコースを低下させるための、脂質付加されたペプチド
(51)【国際特許分類】
C07K 7/08 20060101AFI20180604BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20180604BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20180604BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
C07K7/08ZNA
C07K14/47
A61K38/10
A61K38/17
【請求項の数】2
【全頁数】65
(21)【出願番号】特願2016-564443(P2016-564443)
(86)(22)【出願日】2015年1月15日
(65)【公表番号】特表2017-505810(P2017-505810A)
(43)【公表日】2017年2月23日
(86)【国際出願番号】IB2015000474
(87)【国際公開番号】WO2015107428
(87)【国際公開日】20150723
【審査請求日】2016年7月14日
(31)【優先権主張番号】61/927,944
(32)【優先日】2014年1月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516213002
【氏名又は名称】フィズィオロギッキ ウスタフ アカデミエ ヴェド ツェーエル,ヴェー.ヴェー.イー
(73)【特許権者】
【識別番号】516213013
【氏名又は名称】ウスタフ オルガニッケ ヘミエ アー ビオヘミエ アカデミエ ヴェド ツェーエル,ヴェー.ヴェー.イー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】マレティンスカ,レンカ
(72)【発明者】
【氏名】ジェレズナー,ブランカ
(72)【発明者】
【氏名】クネス,ヤロスラフ
(72)【発明者】
【氏名】ナジェロバ,ヴェロニカ
【審査官】
馬場 亮人
(56)【参考文献】
【文献】
特表2003−508350(JP,A)
【文献】
特表2002−522463(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/066258(WO,A1)
【文献】
MALETINSKA L,LIPIDIZED ANALOGS OF PROLACTIN-RELEASING PEPTIDE REDUCE FOOD INTAKE IN RODENTS,BIOPOLYMERS,米国,JOHN WILEY & SONS, INC,2013年 5月,VOL:100, NR:3, SP.ISS,PAGE(S):255,AFTER PERIPHERAL ADMINISTRATION (23RD AMERICAN PEPTIDE SYMPOSIUM)
【文献】
Peptides,2011年,vol.32, no.9,p.1887-1892
【文献】
Journal of Peptide Science,2005年,vol.11, no.3,p.161-165
【文献】
Physiology & Behavior,2013年,vol.120,p.40-45
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 7/08
A61K 38/10
A61K 38/17
C07K 14/47
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血中の上昇したグルコース量によって特徴づけられた疾患の治療における使用のための、
以下からなる群より選択された、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体:
SRTHRHSMEIK(palm)TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH2(配列番号12);
TPDINPK(palm)WYASRGIRPVGRF−NH2(配列番号13);
【化1】
X1−SRAHQHSMETRTPDINPAWYTGRGIRPVGRF−NH2(配列番号16);
X1−SRTHRHSMEIRTPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH2(配列番号17);
(N−myr)−TPDINPAWYTGRGIRPVGRF−NH2(配列番号20);および
(N−myr)−TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH2(配列番号21);
式中、X1は、ミリスチン酸またはパルミチン酸であり、X2は、γ−グルタミン酸であり、palmは、パルミチン酸であり、かつ、myrは、ミリスチン酸である。
【請求項2】
以下からなる群より選択された、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体:
SRTHRHSMEIK(palm)TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH2(配列番号12);
TPDINPK(palm)WYASRGIRPVGRF−NH2(配列番号13);
【化2】
式中、
palmは、パルミチン酸であり、X2は、γ−グルタミン酸である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔相互参照〕
本出願は、米国仮出願No.61/927,944(2014年1月15日出願)に基づく優先権を享受するものであり、その全文が参照によって本出願に引用される。
【0002】
〔配列表〕
本出願は、ASCIIのフォーマットでEFS−Webを通して提出された、配列表を含んでおり、そのすべてが、参照によって本出願に引用される。前記ASCIIのコピーを、2015年1月13日に作成し、45071_703_60l_SeqListing.txtと名前を付け、そのサイズは、57,181バイトである。
【0003】
〔分野〕
本明細書に記載された実施形態は、全体として、医学の分野、代謝の制御、プロラクチン放出ペプチドに関し、特に、上昇した血中グルコース量および関連した病状を治療するための、脂質付加されたプロラクチン放出ペプチド(PrRP)の使用に関する。
【0004】
〔参照による引用〕
本明細書中において言及される、すべての刊行物、特許、および特許出願は、各々個別の刊行物、特許、または特許出願が、本明細書中、参照によって引用されるために、明確かつ独立に示されており、その全文が示されている場合と同程度に、参照によって引用される。
【0005】
〔背景〕
合衆国の10から15パーセントの成人は、耐糖能障害または空腹時グルコース異常のいずれかを有している(Rao S. S. et al., American FamilyPhysician 69 (8), 1961参照)。耐糖能障害は、インスリン抵抗性および心血管疾患の上昇したリスクに関連した、高血糖症の糖尿病になる前の状態であり、二型糖尿病の前兆であり得る(Barr E. L. et al., Circulation 116 (2): 151-7, 2007参照)。
【0006】
二型糖尿病は、近年、世界で1億7000万人の命を冒しており、2030年までにその数は、2倍になると予想されている、複雑な多遺伝子病である[Wild S.et al., Diabetes Care 27:1047-1053, 2004参照]。これは、インスリン抵抗性、グルコース刺激インスリン放出障害(例えば、膵臓のβ−細胞の機能障害)、および慢性高血糖症として現れ得る、グルカゴンの不適切な分泌によって特徴づけられる。
【0007】
〔概要〕
本明細書では、特定の実施形態において、以下の化学式を有している、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体が開示される:
J−rRPsGRt−NH
2(化学式1;配列番号1)、式中、
rは、イソロイシン、アラニン、またはフェニルグリシンであり;
sは、バリンまたはフェニルグリシンであり;
tは、フェニルアラニン、トリプトファン、ピログルタミン酸、またはCH
2−ArもしくはCH
2−S−CH
2−Arを含んでいる側鎖を有しているアミノ酸であり、式中、Arは、任意に、ハロゲン基、メチル基またはニトロ基で置換された、フェニルまたはナフチルであり;かつ
Jは、1か所において、Xによって脂質付加された、13アミノ酸または24アミノ酸の鎖を表し、式中、X=X
1またはX
2X
1であり;
式中、X
1は、C8−C18の脂肪酸であり、当該脂肪酸は、遊離アミノ基、SH基またはOH基のうち少なくとも1つを有しているアミノ酸と、直接またはX
2を介して、結合しており;
かつ、式中、X
2は、ポリオキシエチレン部分、アリールアルキル部分、並びに、1つまたは複数の炭素原子が、N、S、およびOからなる群より選択されたヘテロ原子によって置換され得る、飽和または不飽和の、直鎖または分鎖のC3−C8の炭化水素鎖からなる群のうちから選択された、親水性リンカーであり、前記炭化水素鎖は、少なくとも1つのアミノ基またはカルボン酸基を有しており、そのうち1つは、置換されて以下のような形を取り得る
CONH
2;
NH−ポリオキシエチレン;
COOM
1;式中、M
1はアルカリ金属であり;
CN;
COOR
1、COR
1またはCONHR
1;式中、R
1は、低級アルキル、アリールアルキル、ポリオキシエチレン、メチルポリオキシエチレン、またはアミノエチルポリオキシエチレンであり;
(CHOH)nR
2;式中、R
2は、HまたはCOOHであり、かつnは、2から10の整数であり;または
(CH)nN
+(R´
3);式中、各々R´は独立に、HまたはC1−C4アルキルであり、血中の上昇したグルコース量によって特徴づけられた、疾患の治療における使用のためである。
【0008】
本明細書では、特定の実施形態において、以下の化学式を有している、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体が開示される:
J−rRPsGRt−NH
2(I)、式中、
rは、イソロイシン、アラニン、またはフェニルグリシンであり;
sは、バリンまたはフェニルグリシンであり;
tは、フェニルアラニン、トリプトファン、ピログルタミン酸、またはCH
2−ArもしくはCH
2−S−CH
2−Arを含んでいる側鎖を有しているアミノ酸であり、式中、Arは、任意に、ハロゲン基、メチル基またはニトロ基で置換された、フェニルまたはナフチルであり;かつ
Jは、1か所において、Xによって脂質付加された、13アミノ酸または24アミノ酸の鎖を表し、式中、X=X
1またはX
2X
1であり;
式中、X
1は、C12−C16の脂肪酸であり、当該脂肪酸は、遊離アミノ基、SH基またはOH基のうち少なくとも1つを有しているアミノ酸と、直接またはX
2を介して、結合しており;
かつ、式中、X
2は、ポリオキシエチレン部分、アリールアルキル部分、並びに、1つまたは複数の炭素原子が、N、S、およびOからなる群より選択されたヘテロ原子によって置換され得る、飽和または不飽和の、直鎖または分鎖のC3−C8の炭化水素鎖からなる群のうちから選択された、親水性リンカーであり、前記炭化水素鎖は、少なくとも1つのアミノ基またはカルボン酸基を有しており、そのうち1つは、置換されて以下のような形を取り得る
CONH
2;
NH−ポリオキシエチレン;
COOM
1;式中、M
1はアルカリ金属であり;
CN;
COOR
1、COR
1またはCONHR
1;式中、R
1は、低級アルキル、アリールアルキル、ポリオキシエチレン、メチルポリオキシエチレン、またはアミノエチルポリオキシエチレンであり;
(CHOH)nR
2;式中、R
2は、HまたはCOOHであり、かつnは、2から10の整数であり;または
(CH)nN
+(R´
3);式中、各々R´は独立に、HまたはC1−C4アルキルであり、血中の上昇したグルコース量によって特徴づけられた疾患の治療における使用のためである。
【0009】
いくつかの実施形態において、血中の上昇したグルコース量によって特徴づけられた疾患の治療における使用のためである、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体は、以下の化学式を有している:
(X)kRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRprRPsGRt−NH
2(化学式2;配列番号2)、式中、
kは、セリン、スレオニン、またはジアミノプロピオン酸であり;
mは、スレオニン、アラニン、またはメチルアラニンであり;
nは、グルタミンまたはアルギニンであり;
qは、メチオニンまたはノルロイシンであり;
uは、スレオニンまたはイソロイシンであり;
oは、グリシンまたはセリンであり;
pは、グリシン、アラニン、プロリン、またはN−メチルグリシンであり;
rは、イソロイシン、アラニン、またはフェニルグリシンであり;
sは、バリンまたはフェニルグリシンであり;かつ
tは、フェニルアラニン、トリプトファン、ピログルタミン酸、またはCH
2−ArもしくはCH
2−S−CH
2−Arを含んでいる側鎖を有しているアミノ酸であり、式中、Arは、任意に、ハロゲン基、メチル基またはニトロ基で置換された、フェニルまたはナフチルを表し;式中、X=X
1またはX
2X
1であり、式中、X
1は、C8−C18の脂肪酸である。
【0010】
いくつかの実施形態において、血中の上昇したグルコース量によって特徴づけられた疾患の治療における使用のためである、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体は、以下の化学式を有している:
(X)kRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRprRPsGRt−NH
2(化学式2;配列番号2)、式中、
kは、セリン、スレオニン、またはジアミノプロピオン酸であり;
mは、スレオニン、アラニン、またはメチルアラニンであり;
nは、グルタミンまたはアルギニンであり;
qは、メチオニンまたはノルロイシンであり;
uは、スレオニンまたはイソロイシンであり;
oは、グリシンまたはセリンであり;
pは、グリシン、アラニン、プロリン、またはN−メチルグリシンであり;
rは、イソロイシン、アラニン、またはフェニルグリシンであり;
sは、バリンまたはフェニルグリシンであり;かつ
tは、フェニルアラニン、トリプトファン、ピログルタミン酸、またはCH
2−ArもしくはCH
2−S−CH
2−Arを含んでいる側鎖を有しているアミノ酸であり、式中、Arは、任意に、ハロゲン基、メチル基またはニトロ基で置換された、フェニルまたはナフチルを表し;式中、X=X
1またはX
2X
1であり、式中、X
1は、C12−C16の脂肪酸である。
【0011】
いくつかの実施形態において、血中の上昇したグルコース量によって特徴づけられた疾患の治療における使用のためである、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体は、化学式(X)kRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRprRPsGRt−NH
2(化学式2;配列番号2)を有し、式中、X=X
1またはX
2X
1であり、式中、X
1は、C8−C18の脂肪酸またはC12−C16の脂肪酸であり、式中、kRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRp(配列番号35)は、1アミノ酸〜11アミノ酸を除去することによって短縮されている。
【0012】
いくつかの実施形態において、血中の上昇したグルコース量によって特徴づけられた疾患の処置における使用のためである、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体は、化学式(X)kRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRprRPsGRt−NH
2(化学式2;配列番号2)を有し、式中、X=X
1またはX
2X
1であり、式中、X
1は、C8−C18の脂肪酸またはC12−C16の脂肪酸であり、式中、kRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRp(配列番号35)は、N末端またはC末端から、1アミノ酸〜11アミノ酸を除去することによって短縮されている。
【0013】
いくつかの実施形態において、血中の上昇したグルコース量によって特徴づけられた疾患の治療における使用のためである、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体は、化学式(X)kRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRprRPsGRt−NH
2(化学式2;配列番号2)を有し、式中、X=X
1またはX
2X
1であり、式中、X
1は、C8−C18の脂肪酸またはC12−C16の脂肪酸であり、式中、kRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRp(配列番号35)は、N末端から、1アミノ酸〜11アミノ酸を除去することによって短縮されている。
【0014】
いくつかの実施形態において、血中の上昇したグルコース量によって特徴づけられた疾患の治療における使用のためである、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体は、化学式(X)kRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRprRPsGRt−NH
2(化学式2;配列番号2)を有し、式中、X=X
1またはX
2X
1であり、式中、X
1は、C8−C18の脂肪酸またはC12−C16の脂肪酸であり、式中、kRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRp(配列番号35)は、C末端から、1アミノ酸〜11アミノ酸を除去することによって短縮されている。
【0015】
いくつかの実施形態において、血中の上昇したグルコース量によって特徴づけられた疾患の治療における使用のためである、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体は、以下の化学式を有している:
(X)kRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRprRPsGRt−NH
2(化学式2;配列番号2);または
(X)TPDINPAWYmoRprRPsGRt−NH
2(化学式3;配列番号3);
式中、
kは、セリン、スレオニン、またはジアミノプロピオン酸であり;
mは、スレオニン、アラニン、またはメチルアラニンであり;
nは、グルタミンまたはアルギニンであり;
qは、メチオニンまたはノルロイシンであり;
uは、スレオニンまたはイソロイシンであり;
oは、グリシンまたはセリンであり;
pは、グリシン、アラニン、プロリン、またはN−メチルグリシンであり;
rは、イソロイシン、アラニン、またはフェニルグリシンであり;
sは、バリンまたはフェニルグリシンであり;かつ
tは、フェニルアラニン、トリプトファン、ピログルタミン酸、またはCH
2−ArもしくはCH
2−S−CH
2−Arを含んでいる側鎖を有しているアミノ酸であり、式中、Arは、任意に、ハロゲン基、メチル基またはニトロ基で置換された、フェニルまたはナフチルである。
【0016】
いくつかの実施形態において、血中の上昇したグルコース量によって特徴づけられた疾患の治療における使用のためである、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体は、K
i10
−6mol.l
−1を超えないラットの下垂体細胞において発現したGPR10レセプターに対する結合親和力を有している。
【0017】
いくつかの実施形態において、血中の上昇したグルコース量によって特徴づけられた疾患の治療における使用のためである、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体は、以下の化学式を有している:
(X)SRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRprRPsGRt−NH
2(化学式4;配列番号4)、式中、
mは、スレオニン、アラニン、またはメチルアラニンであり;
nは、グルタミンまたはアルギニンであり;
qは、メチオニンまたはノルロイシンであり;
uは、スレオニンまたはイソロイシンであり;
oは、グリシンまたはセリンであり;
pは、グリシン、アラニン、プロリン、またはN−メチルグリシンであり;
rは、イソロイシン、アラニン、またはフェニルグリシンであり;
sは、バリンまたはフェニルグリシンであり;かつ
tは、フェニルアラニン、トリプトファン、ピログルタミン酸、またはCH
2−ArもしくはCH
2−S−CH
2−Arを含んでいる側鎖を有しているアミノ酸であり、式中、Arは、任意に、ハロゲン基、メチル基またはニトロ基で置換された、フェニルまたはナフチルを表し;式中、X=X
1またはX
1X
2であり、式中、X
1は、アミド結合によって直接、またはX
2を介して、化学式4のアミノ酸と結合した、C8−C18の脂肪酸である。
【0018】
いくつかの実施形態において、血中の上昇したグルコース量によって特徴づけられた疾患の治療における使用のためである、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体は、以下の化学式を有している:
J−rRPsGRt−NH
2(化学式1;配列番号1)、式中、tは、ヒスチジン、ベンジルヒスチジン、ナフチルアラニン、トリプトファン、ピログルタミン酸、ベンジルシステイン、ベンジル−O−グルタメート、ノルロイシン、ジクロロフェニルアラニン、テトラクロロフェニルアラニン、ペンタフルオロフェニルアラニン、メチル−O−フェニルアラニン、メチル−NH−フェニルアラニン、およびニトロフェニルアラニンからなる群より選択される。
【0019】
いくつかの実施形態において、血中の上昇したグルコース量によって特徴づけられた疾患の治療における使用のためである、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体は、以下の化学式を有している:
(X)TPDINPAWYmoRGrRPsGRF−NH
2(化学式5;配列番号5);
(X)TPDINPAWYmoRGrRPsGR 1−Nal−NH
2(化学式6;配列番号6);または
(X)RmHnHSNleETRTPDINPAWYmoRGrRPsGR 1−Nal−NH
2(化学式7;配列番号7);
式中、
1−nalは、ナフチルアラニンであり;
mは、スレオニン、アラニン、またはメチルアラニンであり;
nは、グルタミンまたはアルギニンであり;
qは、メチオニンまたはノルロイシンであり;
uは、スレオニンまたはイソロイシンであり;
oは、グリシンまたはセリンであり;
pは、グリシン、アラニン、プロリン、またはN−メチルグリシンであり;
rは、イソロイシン、アラニン、またはフェニルグリシンであり;
sは、バリンまたはフェニルグリシンであり;かつ
tは、フェニルアラニン、トリプトファン、ピログルタミン酸、またはCH
2−ArもしくはCH
2−S−CH
2−Arを含んでいる側鎖を有しているアミノ酸であり、式中、Arは、任意に、ハロゲン基、メチル基またはニトロ基で置換された、フェニルまたはナフチルを表す。
【0020】
いくつかの実施形態において、血中の上昇したグルコース量によって特徴づけられた疾患の治療における使用のためである、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体は、以下の化学式を有している:
(X)TPDINPAWYmoRGrRPsGRF−NH
2(化学式5;配列番号5);
(X)TPDINPAWYmoRGrRPsGR 1−Nal−NH
2(化学式6;配列番号6);または
(X)RmHnHSNleETRTPDINPAWYmoRGrRPsGR 1−Nal−NH
2(化学式7;配列番号7);式中、rは、イソロイシンであり、sは、バリンである。
【0021】
いくつかの実施形態において、血中の上昇したグルコース量によって特徴づけられた疾患の治療における使用のためである、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体は、以下の化学式を有している:
(X)SRTHRHSMEIRTPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式8;配列番号8);または
(X)SRAHQHSMETRTPDINPAWYTGRGIRPVGRF−NH
2(化学式9;配列番号9)。
【0022】
いくつかの実施形態において、血中の上昇したグルコース量によって特徴づけられた疾患の治療における使用のためである、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体は、以下の化学式を有している:
(X)TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式10;配列番号10);または
(X)SRTHRHSMEIRTPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式8;配列番号8);
式中、X=X
1またはX
2X
1であり、式中、X
1は、アミド結合によって直接、またはX
2を介して、化学式10または化学式8のアミノ酸と結合した、C12〜C16の脂肪酸であり、式中、X
2は、β−アラニン、γ−アミノ酪酸、ポリオキシエチレン、またはγ−グルタミン酸である。
【0023】
いくつかの実施形態において、血中の上昇したグルコース量によって特徴づけられた疾患の治療における使用のためである、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体は、以下の化学式を有している:
(X)TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式10;配列番号10);または
(X)SRTHRHSMEIRTPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式8;配列番号8);
式中、X=X
1またはX
2X
1であり、式中、X
1は、ミリスチン酸またはパルミチン酸であり、式中、X
2は、γ−グルタミン酸またはポリオキシエチレンである。
【0024】
いくつかの実施形態において、血中の上昇したグルコース量によって特徴づけられた疾患の治療における使用のためである、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体は、以下の化学式を有している:
(X)TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式10;配列番号10);または
(X)SRTHRHSMEIRTPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式8;配列番号8);
式中、X=X
1またはX
2X
1であり、式中、X
1は、ミリスチン酸またはパルミチン酸であり、式中、X
2は、γ−グルタミン酸またはポリオキシエチレンであり、式中、X
1は、アミド結合によって直接、またはX
2を介して、化学式10または化学式8のアミノ酸と結合している。
【0025】
いくつかの実施形態において、血中の上昇したグルコース量によって特徴づけられた疾患の治療における使用のためである、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体は、以下の化学式を有している:
(X)TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式10;配列番号10);または
(X)SRTHRHSMEIRTPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式8;配列番号8);
式中、X=X
1またはX
2X
1であり、式中、X
1は、ミリスチン酸またはパルミチン酸であり、式中、X
2は、γ−グルタミン酸またはポリオキシエチレンであり、式中、X
1は、アミド結合によって直接、またはX
2を介して、化学式8の1番、11番もしくは18番のアミノ酸、または化学式10の1番、5番もしくは7番のアミノ酸と結合している。
【0026】
いくつかの実施形態において、血中の上昇したグルコース量によって特徴づけられた疾患の治療における使用のためである、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体は、以下の化学式を有している:
(X)TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式10;配列番号10);または
(X)SRTHRHSMEIRTPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式8;配列番号8);
式中、X=X
1またはX
2X
1であり、X
1は、ミリスチン酸またはパルミチン酸であり、X
2は、γ−グルタミン酸またはポリオキシエチレンであり、X
1は、化学式8の1番もしくは11番のアミノ酸、または化学式10の1番もしくは7番のアミノ酸と結合している。
【0027】
いくつかの実施形態において、上昇したグルコース量によって特徴づけられた疾患の治療における使用のためである、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体は、以下からなる群より選択される:
SRTHRHSMEIK(palm)TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(配列番号12);
TPDINPK(palm)WYASRGIRPVGRF−NH
2(配列番号13);
【0029】
式中、palmは、パルミチン酸であり、X
2は、γ−グルタミン酸またはポリオキシエチレンである。
【0030】
いくつかの実施形態において、上昇したグルコース量によって特徴づけられた疾患の治療における使用のためである、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体は、以下からなる群より選択される:
X
1−SRAHQHSMETRTPDINPAWYTGRGIRPVGRF−NH
2(配列番号16);
X
1−SRTHRHSMEIRTPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(配列番号17);
(N−palm)−SRTHRHSMEIRTPDINPAWYASRGIRPVGRF−NHMe(配列番号18);
(N−palm)−SRTHRHSMEIRTPDINPAWYASRGIRPVGRF−NOMe(配列番号19);
(N−myr)−TPDINPAWYTGRGIRPVGRF−NH
2(配列番号20);
(N−myr)−TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(配列番号21);
(N−oct)−TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(配列番号22);
(N−dec)−TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(配列番号23);
(N−dodec)−TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(配列番号24);
X
1’−SRAHQHS Nle ETRTPDINPAWYTGRGIRPVGRF−NH
2(配列番号25);
X
1−SRAHQHS Nle ETRTPDINPAWYTGRGIRPVGR 1−Nal−NH
2(配列番号26)
X
1−SRAHQHS Nle ETRTPDINPAWYTGRGIRPVGR PheCl
2−NH
2(配列番号27);
X
1−SRAHQHS Nle ETRTPDINPAWYTGRGIRPVGR PheNO
2−NH
2(配列番号28);
X
1−SRAHQHS Nle ETRTPDINPAWYTGRGIRPVGR PheF
5−NH
2(配列番号29);
X
1−SRAHQHS Nle ETRTPDINPAWYTGRGIRPVGRY−NH
2(配列番号30);
X
1−SRAHRHS Nle EIRTPDINPAWYASRGIRPVGRY−NH
2(配列番号31);
(N−myr)−Nle−ETRTPDINPAWYTGRGIRPVGRF−NH
2(配列番号32);
(N−myr)−QHSMETRTPDINPAWYTGRGIRPVGRF−NH
2(配列番号33);および
(N−myr)−QHSMETRTPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(配列番号34);
式中、X=X
1またはX
1’であり、式中、X
1’は、パルミチン酸、ミリスチン酸またはステアリン酸であり;かつ
式中、X
1は、パルミチン酸またはミリスチン酸である。
【0031】
いくつかの実施形態において、疾患は、インスリン抵抗性、グルコース刺激インスリン放出障害(例えば、膵臓のβ−細胞の機能障害)、および/またはグルカゴンの不適切な分泌によって特徴づけられる。いくつかの実施形態において、疾患は、高血糖症または糖尿病である。いくつかの実施形態において、高血糖症は、慢性高血糖症である。いくつかの実施形態において、糖尿病は二型糖尿病である。いくつかの実施形態において、二型糖尿病は、二次疾患に関連している。二次疾患は、例えば、肥満、心血管疾患、高血圧または脂質異常血症でありうる。
【0032】
本明細書では、特定の実施形態において、以下の化学式を有している、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体が開示される:
J−rRPsGRt−NH
2(化学式1;配列番号1)、式中、
rは、イソロイシン、アラニン、またはフェニルグリシンであり;
sは、バリンまたはフェニルグリシンであり;かつ
tは、フェニルアラニン、トリプトファン、ピログルタミン酸、またはCH
2−ArもしくはCH
2−S−CH
2−Arを含んでいる側鎖を有しているアミノ酸であり、式中、Arは、任意に、ハロゲン基、メチル基またはニトロ基で置換された、フェニルまたはナフチルを表し;
Jは、1か所において、Xによって脂質付加された、13アミノ酸または24アミノ酸の鎖を表し、式中、X=X
1またはX
2X
1であり;式中、X
1は、少なくとも1つの、遊離アミノ基、SH基またはOH基を有しているアミノ酸と、直接またはX
2を介して結合している、C8−C18の脂肪酸であり;また、式中、X
2は、ポリオキシエチレン部分、アリールアルキル部分、並びに、1つまたは複数の炭素原子が、N、S、およびOからなる群より選択されたヘテロ原子によって任意に置換された、飽和もしくは不飽和の、直鎖もしくは分鎖のC3−C8の炭化水素鎖からなる群より選択された、親水性リンカーであり;前記炭化水素鎖は、少なくとも1つのアミノ基またはカルボン酸基を有しており、そのうち1つは、置換されて以下のような形を取り得る
CONH
2;
NH−ポリオキシエチレン;
COOM
1;式中、M
1はアルカリ金属であり;
CN;
COOR
1、COR
1またはCONHR
1;式中、R
1は、低級アルキル、アリールアルキル、ポリオキシエチレン、メチルポリオキシエチレン、またはアミノエチルポリオキシエチレンであり;
(CHOH)nR
2;式中、R
2は、HまたはCOOHであり、nは、2〜10の整数であり;または
(CH)nN
+(R
3);式中、各々R´は独立に、HまたはC1−C4アルキルであり、ただし、Xが化学式1のN末端アミノ酸に結合する場合は、Xは、X
2X
1である。
【0033】
本明細書では、特定の実施形態において、以下の化学式を有しているプロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体が開示される:
J−rRPsGRt−NH
2(化学式1;配列番号1)、式中、
rは、イソロイシン、アラニン、またはフェニルグリシンであり;
sは、バリンまたはフェニルグリシンであり;かつ
tは、フェニルアラニン、トリプトファン、ピログルタミン酸、またはCH
2−ArもしくはCH
2−S−CH
2−Arを含んでいる側鎖を有しているアミノ酸であり、式中、Arは、任意に、ハロゲン基、メチル基またはニトロ基で置換された、フェニルまたはナフチルを表し;
Jは、1か所において、Xによって脂質付加された、13アミノ酸または24アミノ酸の鎖を表し、式中、X=X
1またはX
2X
1であり;式中、X
1は、少なくとも1つの、遊離アミノ基、SH基またはOH基を有しているアミノ酸と、直接またはX
2を介して結合している、C12−C16の脂肪酸であり;また、式中、X
2は、ポリオキシエチレン部分、アリールアルキル部分、並びに、1つまたは複数の炭素原子が、N、S、およびOからなる群より選択されたヘテロ原子によって任意に置換された、飽和もしくは不飽和の、直鎖もしくは分鎖のC3−C8の炭化水素鎖からなる群より選択された、親水性リンカーであり;前記炭化水素鎖は、少なくとも1つのアミノ基またはカルボン酸基を有しており、そのうち1つは、置換されて以下のような形を取り得る
CONH
2;
NH−ポリオキシエチレン;
COOM
1;式中、M
1はアルカリ金属であり;
CN;
COOR
1、COR
1またはCONHR
1;式中、R
1は、低級アルキル、アリールアルキル、ポリオキシエチレン、メチルポリオキシエチレン、またはアミノエチルポリオキシエチレンであり;
(CHOH)nR
2;式中、R
2は、HまたはCOOHであり、nは、2〜10の整数であり;または
(CH)nN
+(R
3);式中、各々R´は独立に、HまたはC1−C4アルキルであり、ただし、Xが化学式1のN末端アミノ酸に結合する場合は、Xは、X
2X
1である。
【0034】
いくつかの実施形態において、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体は、以下の化学式を有している:
(X)kRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRprRPsGRt−NH
2(化学式2;配列番号2)、式中、
kは、セリン、スレオニン、またはジアミノプロピオン酸であり;
mは、スレオニン、アラニン、またはメチルアラニンであり;
nは、グルタミンまたはアルギニンであり;
qは、メチオニンまたはノルロイシンであり;
uは、スレオニンまたはイソロイシンであり;
oは、グリシンまたはセリンであり;
pは、グリシン、アラニン、プロリン、またはN−メチルグリシンであり;
rは、イソロイシン、アラニン、またはフェニルグリシンであり;
sは、バリンまたはフェニルグリシンであり;
tは、フェニルアラニン、トリプトファン、ピログルタミン酸、またはCH
2−ArもしくはCH
2−S−CH
2−Arを含んでいる側鎖を有しているアミノ酸であり、式中、Arは、任意に、ハロゲン基、メチル基またはニトロ基で置換された、フェニルまたはナフチルを表す。
【0035】
いくつかの実施形態において、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体は、化学式(X)kRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRprRPsGRt−NH
2(化学式2;配列番号2)を有しており、式中、kRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRp(配列番号35)は、1アミノ酸〜11アミノ酸を除去することによって短縮されている。
【0036】
いくつかの実施形態において、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体は、化学式(X)kRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRprRPsGRt−NH
2(化学式2;配列番号2)を有しており、式中、X=X
1またはX
2X
1であり、式中、X
1は、C8−C18の脂肪酸またはC12−C16の脂肪酸であり、式中、kRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRp(配列番号35)は、そのN末端またはC末端から、1アミノ酸〜11アミノ酸を除去することによって短縮されている。
【0037】
いくつかの実施形態において、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体は、化学式(X)kRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRprRPsGRt−NH
2(化学式2;配列番号2)を有しており、式中、X=X
1またはX
2X
1であり、式中、X
1は、C8−C18の脂肪酸またはC12−C16の脂肪酸であり、式中、kRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRp(配列番号35)は、そのN末端から、1アミノ酸〜11アミノ酸を除去することによって短縮されている。
【0038】
いくつかの実施形態において、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体は、化学式(X)kRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRprRPsGRt−NH
2(化学式2;配列番号2)を有しており、式中、X=X
1またはX
2X
1であり、式中、X
1は、C8−C18の脂肪酸またはC12−C16の脂肪酸であり、式中、kRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRp(配列番号35)は、そのC末端から、1アミノ酸〜11アミノ酸を除去することによって短縮されている。
【0039】
いくつかの実施形態において、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体は、以下の化学式を有している:
(X)kRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRprRPsGRt−NH
2(化学式2;配列番号2)、または
(X)TPDINPAWYmoRprRPsGRt−NH
2(化学式3;配列番号3);式中
kは、セリン、スレオニン、またはジアミノプロピオン酸であり;
mは、スレオニン、アラニン、またはメチルアラニンであり;
nは、グルタミンまたはアルギニンであり;
qは、メチオニンまたはノルロイシンであり;
uは、スレオニンまたはイソロイシンであり;
oは、グリシンまたはセリンであり;
pは、グリシン、アラニン、プロリン、またはN−メチルグリシンであり;
rは、イソロイシン、アラニン、またはフェニルグリシンであり;
sは、バリンまたはフェニルグリシンであり;
tは、フェニルアラニン、トリプトファン、ピログルタミン酸、またはCH
2−ArもしくはCH
2−S−CH
2−Arを含んでいる側鎖を有しているアミノ酸であり、式中、Arは、任意に、ハロゲン基、メチル基またはニトロ基で置換された、フェニルまたはナフチルを表す。
【0040】
いくつかの実施形態において、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加されたPrRPの類似体は、K
i10
−6mol.l
−1を超えない、ラットの下垂体細胞において発現したGPR10レセプターに対する結合親和力を有している。
【0041】
いくつかの実施形態において、脂質付加されたPrRPの類似体は、以下の化学式を有している:
(X)SRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRprRPsGRt−NH
2(化学式4;配列番号4)、
式中、
mは、スレオニン、アラニン、またはメチルアラニンから選択され;
nは、グルタミンまたはアルギニンであり;
qは、メチオニンまたはノルロイシンであり;
uは、スレオニンまたはイソロイシンであり;
oは、グリシンまたはセリンであり;
pは、グリシン、アラニン、プロリン、またはN−メチルグリシンであり;
rは、イソロイシン、アラニン、またはフェニルグリシンであり;
sは、バリンまたはフェニルグリシンであり;
tは、フェニルアラニン、トリプトファン、ピログルタミン酸、またはCH
2−ArもしくはCH
2−S−CH
2−Arを含んでいる側鎖を有しているアミノ酸であり、式中、Arは、任意に、ハロゲン基、メチル基またはニトロ基で置換された、フェニルまたはナフチルを表し、および式中、X
1は、C10−C18の脂肪酸である。
【0042】
いくつかの実施形態において、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)のペプチドの脂質付加された類似体は、化学式J−rRPsGRt−NH
2(化学式1;配列番号1)を有しており、式中、tは、ヒスチジン、ベンジルヒスチジン、ナフチルアラニン、トリプトファン、ピログルタミン酸、ベンジルシステイン、ベンジル−O−グルタミン、ノルロイシン、ジクロロフェニルアラニン、テトラクロロフェニルアラニン、ペンタフルオロフェニルアラニン、メチル−O−フェニルアラニン、メチル−NH−フェニルアラニン、およびニトロフェニルアラニンからなる群より選択される。
【0043】
いくつかの実施形態において、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体は、以下の化学式を有している:
(X)TPDINPAWYmoRGrRPsGRF−NH
2(化学式5;配列番号5);
(X)TPDINPAWYmoRGrRPsGR 1−Nal−NH
2(化学式6;配列番号6);または
(X)RmHnHSNleETRTPDINPAWYmoRGrRPsGR 1−Nal−NH
2(化学式7;配列番号7);
式中、
1−nalは、ナフチルアラニンであり;
mは、スレオニン、アラニン、またはメチルアラニンであり;
nは、グルタミンまたはアルギニンであり;
oは、グリシンまたはセリンであり;
rは、イソロイシン、アラニン、またはフェニルグリシンであり;
sは、バリンまたはフェニルグリシンである。
【0044】
いくつかの実施形態において、脂質付加されたPrRPのペプチドは、以下の化学式を有している:
(X)SRTHRHSMEIRTPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式8;配列番号8);または
(X)SRAHQHSMETRTPDINPAWYTGRGIRPVGRF−NH
2(化学式9;配列番号9)。
【0045】
いくつかの実施形態において、脂質付加されたPrRPのペプチドは、以下の化学式を有している:
(X)TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式10;配列番号10)、または
(X)SRTHRHSMEIRTPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式8;配列番号8)であり;
式中、X=X
1またはX
2X
1であり、式中、X
1は、ミリスチン酸またはパルミチン酸であり、当該X
1は、アミド結合によって直接、またはX
2を介して、化学式8の1番〜22番のアミノ酸、または化学式8の1番〜12番のアミノ酸のいずれか1つと結合しており、式中、X
2は、ポリオキシエチレン、β−アラニン、γ−アミノ酪酸、またはγ−グルタミン酸であり、ただし、Xは、化学式10または化学式8のN末端アミノ酸と結合する場合、Xは、X
2X
1であり、式中、X
1に結合する前記アミノ酸は、リジンによって置換される。
【0046】
いくつかの実施形態において、脂質付加されたPrRPのペプチドは、以下の化学式を有している:
(X)TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式10;配列番号10)、または
(X)SRTHRHSMEIRTPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式8;配列番号8)であり;
式中、X=X
1またはX
2X
1であり、式中、X
1は、ミリスチン酸またはパルミチン酸であり、当該X
1は、アミド結合によって直接、またはX
2を介して、化学式8の1番、11番もしくは18番のアミノ酸、または化学式10の1番、5番もしくは7番のアミノ酸のいずれか1つと結合しており、式中、X
2は、γ−グルタミン酸またはポリオキシエチレンであり、ただし、Xは、化学式10または化学式8のN末端アミノ酸と結合する場合、Xは、X
2X
1である。
【0047】
いくつかの実施形態において、脂質付加されたPrRPのペプチドは、以下の化学式を有している:
(X)TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式10;配列番号10)、または
(X)SRTHRHSMEIRTPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式8;配列番号8)であり;
式中、X=X
1またはX
2X
1であり、式中、X
1は、ミリスチン酸またはパルミチン酸であり、当該X
1は、アミド結合によって直接、またはX
2を介して、化学式8の1番もしくは11番のアミノ酸、または化学式10の1番もしくは7番のアミノ酸のいずれか1つと結合しており、式中、X
2は、γ−グルタミン酸またはポリオキシエチレンであり、ただし、Xは、化学式10または化学式8のN末端アミノ酸と結合する場合、Xは、X
2X
1である。
【0048】
いくつかの実施形態において、脂質付加されたPrRPのペプチドは、以下からなる群より選択される:
SRTHRHSMEIK(palm)TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(配列番号12);
TPDINPK(palm)WYASRGIRPVGRF−NH
2(配列番号13);
【0050】
式中、palmは、パルミチン酸であり、X
2は、γ−グルタミン酸またはポリオキシエチレンである。
【0051】
追加の実施形態は、薬剤(または、薬学的組成物、例えば、活性成分として、一般式:J−rRPsGRt−NH
2(化学式1;配列番号1)を有している、プロラクチン放出ペプチドの脂質付加された類似体を含んでいる、薬学的組成物)、およびその薬学的に許容可能なキャリアに関する。更なる実施形態は、その薬剤または薬学的組成物を投与することによって、上昇した血中の糖分によって特徴づけられた病状を、治療するため、または予防するための方法に関する。
【0052】
〔図面の簡単な説明〕
以下は、図面の簡単な説明であり、当該説明は、本明細書中に開示された、例示の実施形態を説明するという目的のために提示され、本明細書中に記載された、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体の選択された実験的な土台を提示し、同様のことを制限するという目的のためではない。
【0053】
図1Aおよび
図1Bは、やせたマウスにおける、palm−PrRP31(類似体43)および対照の生理食塩水の急性投与後の、腹腔内のグルコース負荷試験(IPGTT)の結果を示す。IPGTTを、一晩絶食させたオスのC57BL/6マウスにおいて実施した。血中グルコース量を、開始時およびpalm−PrRP31(類似体43)(5mg/kg SC)または生理食塩水の皮下(SC−皮膚の下)投与後、30分,60分,90分および120分において、測定した(n=7)。
図1Aは、時間とともにグルコース量を示し、
図1Bは、30分間の曲線下面積(AUC)を示す。
【0054】
図2Aおよび
図2Bは、肥満かつ糖尿病のグルタミン酸ナトリウム(MSG)マウスに対して、palm−PrRP31(類似体43)を10日投与した後の、腹腔内の(IPGTT)結果を示す。マウスは、10日間の摂食実験を受けた。MSGマウスに、5mg/kgの用量の、生理食塩水またはpalm−PrRP31(類似体43)のいずれかを、10日間1日に2度、SC注射し、これらのNMRIの対照は、生理食塩水を10日間1日に2度、SC注射した(n=10)。処理の10日後、マウスを一晩絶食させ、IPGTTを実施した。初めの血中グルコースの測定後、2g/kgのグルコース溶液を腹腔内に投与した(IP)。その後、血中グルコースを、15分,30分,60分,120分および180分において、測定した。
図2Aは、結果のグルコース量を時間とともに示し、
図2Bは、180分間の曲線下面積(AUC)を示す。
【0055】
図3は、糖尿病のdb/dbマウスに対して、palm−PrRP31(類似体43)または、対照として、生理食塩水を、14日間反復投与した後のグルコース量の比較を示す。オスのdb/dbマウスに、5mg/kgの用量の、生理食塩水またはpalm−PrRP31(類似体43)のいずれかを、14日間1日に2度、SC注射した。その後、マウスを一晩絶食させ、IPGTTを実施した。初めの血中グルコースの測定後、2g/kgのグルコース溶液をIP投与し、グルコースを、7時間の間、1時間ごとに追跡した。実験の終了時(420分)におけるグルコース量を示す。
【0056】
図4は、ラットにおけるpalm−PrRP31(類似体43)の急性投与後のグルコース量のプロットを示す。IPGTTを、一晩絶食させたオスのウィスターラットにおいて実施した。血中グルコース量を、開始時、およびpalm−PrRP31(類似体43)(5mg/kg SC)または生理食塩水のSC投与後に、時間とともに測定した。
【0057】
図5Aおよび
図5Bは、糖尿病のZDFラットに対して、類似体43および類似体52を21日間投与した後の、経口グルコース負荷試験(OGTT)の結果を示す。ラットは、21日間の摂食実験を受けた。ZDFラットは、1mg/kgおよび5mg/kgの用量の、リン酸緩衝生理食塩水pH6(対照)、または化合物43もしくは化合物52を、21日間1日に2度、IP注射した(n=8)。処理の21日後、ラットを一晩絶食させ、OGTTを実施した。初めの血中グルコースの測定後、2g/kgのグルコース溶液を経口補給によって投与した。その後、血中グルコースを、15分,30分,60分,90分,120分および180分において、測定した。
図5Aは、グルコース量における変化(デルタグルコース)の結果を時間とともに示し、
図5Bは、180分間の曲線下面積(AUC)を示す。
【0058】
〔詳細な説明〕
化合物(例えば、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体、およびその薬学的組成物)および、上昇したグルコース量によって特徴づけられた1つまたは複数の疾患のような、代謝の状態を有しているか、または代謝の状態になりやすいと診断された被験体を治療するための、このような組成物の使用を、本明細書中で開示する。本明細書中に開示された研究は、脂質付加された形態の、PrRP20の類似体およびPrRP31の類似体が、グルコースを低下する効果および食欲不振の特性を示したことを明らかにしている。さらに、本明細書中に開示された研究は、末梢的に(例えば、皮下に)投与された際、これらの脂質付加された類似体が有効であることを明らかにする。
【0059】
本明細書中に記載されるように、PrRPの脂質付加された類似体の食欲不振の特性は、ラットの下垂体の細胞系統RC−4B/Cおよびチャイニーズハムスターの卵巣(CHO)の細胞系統を用いて、明らかにされた。この特性は、さらに、本明細書中に記載された、げっ歯類の研究において、明らかにされ、脂質付加された類似体は、用量依存的な様式において、絶食したマウスにおいて、摂食を低下させることが示された。さらに、いくつかの部分群(例えば、やせたマウス、肥満かつ糖尿病のグルタミン酸ナトリウムマウス、糖尿病のdb/dbマウス、およびやせたラット)における、本明細書中に記載された研究は、脂質付加されたPrRPの類似体の投与によって、低下したグルコース量を示した。これらの結果は、脂質付加されたPrRPの類似体は、新規の治療的候補物としての使用のために適用できることを示す。さらに、視床下部または脳幹を介した、これらの末梢投与は、血液脳関門を越える輸送のための好都合な代替策を提示する。本明細書中で開示されたように、特定の実施形態において、脂質付加されたPrRPの類似体は、特に、上昇した血中グルコース量およびそれに関連した他の病状を治療するために適用できる。
【0060】
(特定の用語法)
別の方法で定義されない場合は、本明細書中で使用される、すべての技術的用語および科学的用語は、クレームに記載された対象が属している分野の当業者によって、一般的に理解されるのと同じ意味を有している。本明細書中の用語に対して多数の定義がある場合は、その項目内の定義を優先する。参照が、URLまたは他のこのような識別子もしくはアドレスによって、特定される場合、このような識別子は、変わり得るし、インターネット上の特定の情報は、移り変わり得るが、同等の情報は、インターネットを検索することによって見つけられ得る、と理解される。それに対する参照は、このような情報の有効性および公的な普及の証拠となる。
【0061】
前述の概略の説明、および以下に続く詳細な説明は、例または解説に過ぎず、如何なるクレームに記載された対象も制限されない、と理解され得る。本出願中、単数形の使用は、他に特定して言及されない場合は、複数形を含んでいる。注意すべきは、明細書および添付の請求項中で用いられるように、単数形の形式「a」、「an」および「the」は、文脈上、他に明確に指示されない場合は、複数の対象を含んでいる。本出願中、「または」の使用は、他に言及されない場合は、「および/または」を意味する。さらに、用語「含んでいる(including)」の使用は、「含む(include)」、「含む(includes)」、「含まれた(included)」などの、他の形式と同様に、制限されない。
【0062】
本明細書中で使用される、項目の見出しは、体系的な目的のためのみであって、記載された対象を制限するために、解釈されるのではない。特許、特許出願、記事、書籍、マニュアル、および学術論文を含み、これに制限されない、本出願中に引用される、すべての書類または書類の一部は、如何なる目的のためにも、その全文が、特別に参照によって引用される。
【0063】
用語「ペプチド」は、本明細書中で使用される場合、ペプチド(アミド)結合によって結合した、少なくとも5つの構成アミノ酸からなる、化合物に関する。このアミノ酸は、遺伝暗号によってコードされた、天然に生じているアミノ酸、遺伝暗号によってコードされない、天然に生じている天然のアミノ酸、および/または合成のアミノ酸であり得る。
【0064】
ペプチドに関する用語「類似体」は、改質したペプチドに関し、改質したペプチド中、1つまたは複数のアミノ酸残基が、他のアミノ酸残基によって置換されているか、および/または改質したペプチド中、1つまたは複数のアミノ酸残基が、このペプチドから削除されているか、および/または改質したペプチド中、1つまたは複数のアミノ酸残基が、このペプチドに付加されている。この類似体は、脂質付加され得る。
【0065】
用語「疾患の治療」は、本明細書中で使用される場合、病気、症状または疾患を生じている患者の、管理およびケアに関する。治療の目的は、病気、症状または疾患を治すことである。治療は、公知の適用可能な方法によって、病気を解消するため、または制御するための有効な化合物の投与を含んでいる。また、病状または疾患の治療は、病気、症状または疾患に関連した、兆候または合併症を緩和することを含み得る。
【0066】
用語「脂肪酸」は、本明細書中で使用される場合、長い脂肪族の尾部(鎖)を有している、カルボン酸に関する。例えば、13〜21の炭素長、または、13を超える炭素長もしくは15を超える炭素長の尾部を有しているカルボン酸である。
【0067】
用語「低級アルキル」は、本明細書中で使用される場合、C1−C6の直鎖のアルキル鎖またはC3−C6の分鎖のアルキル鎖を意味する。
【0068】
用語「アリールアルキル」は、本明細書中で使用される場合、6〜12の炭素原子を含み、少なくとも1つの芳香環を含む、炭化水素基を意味し、当該炭化水素基は、非置換であり得るし、または−OH,−SH,ハロゲン,C
1−C
6のアルキル,−NH
2,−CN,−NO
2、および、式中R´´は、HまたはC
1−C
6のアルキルである、−COOR´´からなる群より選択された、1〜5の置換基によって置換され得る。
【0069】
用語「ポリオキシエチレン」は、一般式HO−(CH
2−CH
2−O)
n−Hを有している、エチレンオキシドの、オリゴマーまたはポリマーを意味する。
【0070】
用語「塩」は、本明細書中で使用される場合、塩基性塩、酸性塩または中性塩であり得る。有用な塩は、各々、活性分子の、陰性基または陽性基と反応する、陽イオンまたは陰イオンを添加されて、形成され得る。これらの基は、ペプチド鎖、および/または脂質付加された類似体の側鎖に、位置し得る。
【0071】
本明細書中で使用される、脂質付加された類似体の「エステル」は、アルコールまたはフェノールとの、遊離カルボン酸基の反応によって、形成され得るし、当該反応は、アルコキシ基またはアリールオキシ基によって、少なくとも1つの炭化水素基の置換を引き起こす。
【0072】
本明細書中で使用される、脂質付加された類似体の「アミド」は、アミンもしくは置換されたアミンと、活性型の遊離カルボン酸基との反応、または活性型のカルボン酸と、遊離アミノ基もしくは置換されたアミノ基との反応によって、形成され得る。
【0073】
本明細書中で使用される用語「結合親和力」は、多くのリガンドと、これらの各々の結合部位との相互作用を特徴づける。典型的には、高い親和力のリガンドの結合は、リガンドとそのレセプターとの間の、より大きな分子間力によって起こり、逆に、低い親和力のリガンドの結合は、リガンドとそのレセプターとの間の、より小さな分子間力を必要とする。一般則として、高い親和力の結合は、低い親和力の結合を有している場合よりも、リガンドの、そのレセプターの結合部位における、より長い滞留時間を必要とする。レセプターに対する、リガンドの高い親和力の結合は、結合のエネルギーの一部が、レセプターにおける立体配座の変化を引き起こすために用いられ得る場合に、しばしば、生理的に重要であり、関連したイオンチャネルまたは酵素の振る舞いを変化させる結果となる。
【0074】
本明細書中で使用される用語「アゴニスト」は、レセプターに結合し、生理的な反応を引き起こし得るリガンドに関する。任意のタイプのレセプターに結合しているアゴニストは、どれだけの生理的な反応が引き起こされ得るかという観点、および生理的な反応を生み出すために必要とされる、アゴニストの濃度という観点において、特徴づけられ得る。高い親和力のリガンドの結合は、比較的低い濃度のリガンドが、リガンドの結合部位を最大限に占有し、生理的な反応を引き起こすために十分であることを意味する。K
i値がより低いと、分子と受容抗原との化学反応がより起こりやすい。低い親和力の結合(高いK
i値)は、比較的高い濃度のリガンドが、結合部位が最大限に占有され、リガンドに対する最大の生理的な反応が達成される前に必要とされることを意味する。K
iは、任意の想定されるアゴニストに対して、例えば、競合結合測定によって、定量され得る。例えば、類似体の結合親和力、または他には、天然のアゴニストの改質された種類の結合親和力は、天然のアゴニストとの競合結合によって、測定され得る。
【0075】
本開示中に使用される省略形は、分散分析(ANOVA);ウシ血清アルブミン(BSA);ウシ膵臓トリプシンインヒビター(BPTI);上皮成長因子(EGF);4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES);リン酸緩衝生理食塩水(PBS);ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);トリス緩衝生理食塩水(TBS);ジアミノプロピオン酸(Dpr);1−ナフチルアラニン(1−Nal);ノルロイシン(Nle);ミリストイル(myr);パルミトイル(palm);オクタノイル(oct);ドデカノイル(dodec);およびトリデカノイル(tridec),γ−アミノ酪酸(GABA),ガンマ−グルタミン酸(γE),ポリオキシエチレン(POE)、特に1,13−ジアミノ−4,7,10−トリオキサトリデカン−スクシンアミノ酸を含んでいる。
【0076】
(プロラクチン放出ペプチド(PrRP))
プロラクチン放出ペプチド(PrRP)とは、エネルギー代謝の制御に作用する神経ペプチドである(Hinuma, S., et al. "A prolactin-releasing peptide in the brain," Nature 393:272-276, 1998)。PrRPには2種類の特に重要な型がある。一つは31のアミノ酸から構成され(PrRP31)、第二のものは20のアミノ酸から構成される(PrRP20)(Hinuma et al., 1998)。
【0077】
体内において、PrRPの幾つかの生物学的機能が特徴づけられてきた。一つの機能は、プロラクチン放出を刺激することであると見做されていた(Hinuma et al., 1998)。その後、他の研究において、この効果はオスのラットにおいては存在しないことが判明した。それ故、前記研究によると、これがPrRPの主要な機能ではないことが示唆された(Jarry, H., et al., "Prolactin-releasing peptides do not stimulate prolactin release in vivo," Neuroendocrinology, 71:262-267, 2000)。代謝平衡を維持するために重要である、視床下部の視床下部室傍核および視床下部背内側核(PVNおよびDMN)におけるPrRPの発見によって、PrRPは摂食に作用する因子として考えられた(Lawrence, C., at al., "Alternative role for prolactin- releasing peptide in the regulation of food intake," Nat. Neurosci, 3:645-646, 2000)。
【0078】
PrRP遺伝子が欠失されたノックアウトマウスについてのさらなる研究によると、極度の空腹または食欲の増進に関連する状況での精神発揚における、PrRPの役割が示唆された。個々の食事の頻度は作用されなかった一方で、各食事における摂食の量が増加した。体温および酸素消費量が対照動物と比較された際、これらのマウスにおいてエネルギー消費の低下は観測されなかった(Takayanagi et al.; Mochiduki, A., et al., "Stress response of prolactin releasing peptide knockout mice as to glucocorticoid secretion," J Neuroendocrinol, 22:576-584, 2010)。
【0079】
同様に、PrRPのレセプターであるGPR10のための遺伝子を欠失しているマウスは、食欲が大きく肥満に至る。この効果は、メスのマウスにおいてより顕著であった(Gu, W., et al., "The prolactin releasing peptide receptor (GPR10) regulates body weight homeostasis in mice," J Mol Neurosci, 22:93-103, 2004; Bjursell et al., 2007)。これに加えて、GPR10ノックアウト(KO)マウスにおける増加した摂食は、コレシストキニン(CCK)の投与後に減少しなかった。この発見は、GPR10−PrRPシステムはCCK(摂食時の満腹感を誘発する末梢性ペプチド)のシグナル伝達において重要な役割を有している可能性がある、との仮説を支持する(Bechtold D, et al., "Prolactin-releasing peptide mediates cholecystokinin induced satiety in mice," Endocrinology, 147:4723-4729, 2006)。
【0080】
構造上、PrRPの30番におけるアミノ酸残基(アルギニン)の変異により、レセプターに対する結合活性および生物活性は失われる。さらに、前記GPR10レセプターに対するPrRPの結合のために、31番は、フェニルアラニンまたはアミノ酸の側鎖のCH2基のうち少なくとも1つに対して芳香族部分が結合した他のアミノ酸であることが要求される(Boyle, R., et al., "Structure activity studies on prolactin releasing peptide (PrRP). Analogues of PrRP (19 31) peptide," J Pept Sci, 11:161-165, 2005)。
【0081】
PrRP類似体による結合実験のために、20番のチロシンを
125Iで放射線標識したPrRPが利用された(Satoh, F., et al., "Characterization and distribution of prolactin releasing peptide (PrRP) binding sites in the rat-evidence for a novel binding site subtype in cardiac and skeletal muscle," Br. J. Pharmacol., 129:1787-1793, 2000)。チロシンの一ヨウ化は、PrRPの前記レセプターに対する結合に影響を与えないことが確認された(Maixnerova, J., et al. 2011)。生物活性をPrRP31と比較するために、天然のPrRP20にアミノ酸の修飾が導入された(Langmead, C., et al., "Characterization of the binding of[
125I] human prolactin releasing peptide (PrRP) to GPR10, a novel G protein coupled receptor," Br. J. Pharmacol., 131:683-688, 2000; Maixnerova et al., 2011 ;Maletinska, L., et al., "Biological properties of prolactin releasing peptide analogues with a modified aromatic ring of a C terminal phenylalanine amide," Peptides, 32:1887-1892, 2011)。C末端のフェニルアラニンが、コードされないアミノ酸(フェニルアラニン誘導体PheCl2、PheF5およびPheNO2))、嵩張ったナフチルアラニン(1−Nalおよび2−Nal)を伴うコードされないアミノ酸、またはチロシンによって置換された。全ての類似体は、生物活性に必要となる保存されたC末端のアミドを有した(Hinuma et al.1998; Roland, B., et al., "Anatomical distribution of prolactin releasing peptide and its receptor suggests additional functions in the central nervous system and periphery," Endocrinology, 140:5736-5745, 1999)。さらに、前記全ての類似体は、ペプチド鎖のN末端がアセチル化されて、特にインビボでの実験のための安定性を増加させた。生物活性は、前記C末端のヘプタペプチドより前の位置におけるアミノ酸の置換に依存しなかった。
【0082】
前記PrRP類似体[Tyr31]PrRP20、[1−Nal31]PrRP20、[PheF531]PrRP20、[PheCl231]PrRP20および[PheNO231]PrRP20は、前記GPR10レセプターを発現しており、1細胞あたり数万個オーダーの結合サイトを産出している下垂体細胞系統RC−4B/Cに対して結合する(Maixnerova et al., 2011)。これらの類似体は、PrRP31およびPrRP20のものに匹敵する程度のK
dの値を示す(Maletinska et al., 2011)。これに加えて、前記RC−4B/C細胞を上述した類似体と共にインキュベートすると、分裂促進因子活性化ホスホリラーゼ/細胞外調節キナーゼ(MAPK/ERK1/2)およびcAMP応答配列結合タンパク質(CREB)という酵素のリン酸化が促進される。EC50の値において、前記類似体はまた、PrRP20に匹敵する程度に培地中への前記プロラクチン放出を刺激する(Hinuma et al., 1998)。これらPrRPの類似体を、脳室内(ICV−脳の脳室系の内部に)への用量を10nmolとする投与によって、絶食させたマウスにおける摂食が統計的に有意に減少した(Maletinska et al., 2011)。
【0083】
(PrRP20およびPrRP31の脂質付加された類似体)
組成物(例えば、プロラクチン放出ペプチドの脂質付加された類似体およびその薬学的組成物)および、血中の上昇したグルコース量によって特徴づけられる1つ以上の疾患である、または当該疾患が疑われると診断された被験体を、前記組成物を用いて治療する方法が、本明細書中に開示される。
【0084】
インビトロおよびインビボでのこれらの化合物の薬理的効果、並びに、二型糖尿病および関連する状態(肥満および摂食障害など)などの状態を治療することに対するその適用が、本明細書中に説明されている。プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の種々の脂質付加された類似体の末梢投与が血中のグルコース量を低下させることの実証、並びにこのことが耐糖能障害(IGT)およびグルコース不耐性状態を治療するために有用であり得ることもまた、本明細書中で説明される。
【0085】
特定の実施形態において、好適なヘプタペプチド配列IRPVGRF−NH
2(配列番号36)をC末端に含んでいる、PrRP20またはPrRP31の脂質付加された類似体(それぞれ長さは20または31アミノ酸)が、本明細書中に開示される。いくつかの実施形態においては、前記ペプチド鎖における任意の前記アミノ酸の、好ましくは前記配列IRPVGRF−NH
2(配列番号36)およびN末端のアミノ酸以外のアミノ酸の遊離官能基に、C8〜C18の脂肪酸がアミド結合により直接結合している、またはヒドロカルビルスペーサーもしくはポリオキシエチレンスペーサーを介して結合している、のいずれかである。いくつかの実施形態では、前記C末端のヘプタペプチド配列において、イソロイシンがフェニルグリシンまたはアラニンによって置換されている場合があり、バリンがフェニルグリシンによって置換されている場合がある。いくつかの実施形態において、前記末端のフェニルアラニンは、トリプトファン、ピログルタミン酸またはCH
2−ArもしくはCH
2−S−CH
2−Arを含んでいる側鎖を伴うアミノ酸(Arは、任意にハロゲン基、メチル基もしくはニトロ基によって置換されている、フェニルまたはナフチルを表す)によって置換されている。
【0086】
いくつかの実施形態において、脂質付加されたPrRPは、GPR10レセプターに対して本来のものに近い結合親和力を示した。いくつかの実施形態において、哺乳動物に対して投与された際に、脂質付加されたPrRPは血中グルコースを低下させた。
【0087】
代表的な合成されたPrRPおよび脂質付加されたPrRP類似体の一覧が、表1において説明されている。
【0092】
いくつかの実施形態において、前記PrRPの脂質付加された類似体は、配列番号41〜99のうちの1つである。
【0093】
特定の実施形態においては、PrRPの脂質付加された類似体(前記PrRPの脂質付加された類似体は、配列番号41〜99のうちの1つである)を投与することによって、増加した血中のグルコース量によって特徴づけられる1つ以上の疾患である、または当該疾患が疑われると診断された被験体を治療するための方法が、本明細書中に開示される。
【0094】
特定の実施形態において、前記脂質(典型的にはC8〜C18の脂肪酸)とアミノ酸(典型的にはPrRP20、PrRP31または類似体)との間の、親水性のリンカー(X
2)が、本明細書に開示される。いくつかの実施形態において、前記リンカーは、ポリオキシエチレン部分、アリールアルキル部分、または単結合の(任意に2価の)直鎖状もしくは分鎖状C3〜C8炭化水素鎖から選択される。ポリオキシエチレンは、2つ以上のエトキシサブユニットを含み得、末端を任意にアミノ基またはアセチル基にされ得る。例えば、エトキシはアミド結合を介して結合されていてよい。
【0095】
いくつかの実施形態において、前記リンカーX
2が炭化水素鎖を含む場合、前記炭化水素鎖の炭素原子は、N、SおよびOからなる群より選択されるヘテロ原子によって置換されていてもよい。これらはまた、−P(=O)(R
X)−または−O−P(=O)(−OR
X)−基(R
XはC1〜C3アルキルから選択される)によっても置換され、ホスフィンオキシドまたはホスホネート部分を形成し得る。当該鎖は、少なくとも1つ(より好ましくは少なくとも2つ)の、好ましくは2つのアミノ基またはカルボン酸基を有しており、そのうち少なくとも1つは置換されて、CONH
2;NH−ポリオキシエチレン;COOM
1(M
1はアルカリ金属、好ましくはNaまたはK);CN;COOR
1、COR
1もしくはCONHR
1(R
1は、低級アルキル、アリールアルキル、ポリオキシエチレン、メチルポリオキシエチレン、アミノエチルポリオキシエチレンからなる群より選択される)、(CHOH)
nR
2(R
2はHまたはCOOHであり、nは2〜10の整数である)、または(CH)
nN
+(R´)
3(それぞれのR´は、独立にHまたはC1〜C4アルキルであり得る)基を形成し得る。
【0096】
いくつかの実施形態において、前記リンカーX
2は、アミノ酸の遊離NH
2基、COOH基、OH基またはSH基を使用して前記ペプチド鎖のアミノ酸に結合している、または、前記ペプチド鎖(IRPVGRF−NH
2(配列番号36)の配列を除く)のC末端にある任意のアミノ酸を置換しているリジンに結合している。
【0097】
いくつかの実施形態において、X
1(通常は脂肪酸)が前記ペプチド鎖のアミノ酸に結合していると説明されている場合、他に(例えばJの定義においてなど)限定されない限り、X
1は当該鎖における任意の前記アミノ酸に結合していてよい。より具体的には、(X)がアミノ酸配列の一端に示されている場合、(X)は前記配列において直接隣接しているアミノ酸に結合していなければならない、と想定されるべきではない。
【0098】
いくつかの実施形態において、本明細書中に説明されているPrRP20またはPrRP31の前記脂質付加された類似体(例えば化学式1、2、3および4の、前記脂質付加された類似体)は、ヒスチジン、ベンジルヒスチジン、ナフチルアラニン、トリプトファン、ピログルタミン酸、ベンジルシステイン、ベンジル−O−グルタメート、ノルロイシン、ジクロロフェニルアラニン、テトラクロロフェニルアラニン、ペンタフルオロフェニルアラニン、メチル−O−フェニルアラニン、メチル−NH−フェニルアラニンおよびニトロフェニルアラニンから選択されるC末端のアミノ酸を有している。
【0099】
いくつかの実施形態においては、前記PrRPの上述した当該C末端のヘプタペプチドの前の位置における前記アミノ酸が、前記脂質付加された類似体の説明された生物活性にとって不可欠ではない場合があるペプチドである。これらのアミノ酸の一部または全部を、異なるアミノ酸に置換することは可能であり、予期されている。生じたプロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体が、K
iにして10
−6mol・L
−1以下もしくは未満の(または、好ましくは10
−7もしくは10
−8mol・L
−1以下もしくは未満の)オーダーの前記PrRPレセプターに対する好適な結合親和力を有し、PrRPに対するアゴニスト活性(好ましくは、RC−4B/C細胞におけるMAPK/EPK1/2シグナリングによって定義される)を示し、哺乳類(ラット、マウスおよびヒトなど)において血中グルコースを低下させ、かつ/または、PrRPに等しいかそれ以上の食欲抑制活性(好ましくは、絶食させたマウスにおいて中枢投与または末梢投与した後の摂食によって試験される)を示しさえすれば、これらの置換は特に予期されている。
【0100】
特定の実施形態において、PrRP20またはPrRP31の種々の類似体は、8〜18炭素の、好ましくは10〜18炭素原子の、より好ましくは12〜16炭素原子の脂肪酸を含む群より選択される脂肪酸を含んでいる。
【0101】
いくつかの実施形態において、前記脂肪酸は8、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18の炭素原子を有している。
【0102】
いくつかの実施形態において、PrRP20および/またはPrRP31の脂質付加された類似体は、化学式2(配列番号2)の2〜24番において、または化学式3(配列番号3)の2〜13番において、(単数または複数の)アミノ酸置換を有している。いくつかの実施形態において、類似体は、充分な結合活性および/またはグルコース抑制活性を維持している。好ましくは、前記類似体は、前記生じたPrRPの脂質付加された類似体のGPR10に対する前記K
iの値を、10
−6mol・L
−1を超えて上昇させない(増加したK
iの値は、より弱い結合親和力に対応する)置換を含んでいる。前記K
iは、1ウェルあたり30万〜45万細胞の最適密度まで、底面がポリエチレンイミンで被覆された24ウェルプレート上で増殖させたラット下垂体細胞系統RC−4B/Cにおいて、測定される。以下の物質を、引き続いて加えた:HEPES(pH7.4) 20mmol・L
−1、NaCl 118mmol・L
−1、KCl 4.7mmol・L
−1、MgCl
2 5mmol・L
−1、グルコース5.5mmol・L
−1、ウシ血清アルブミン 1mg/mL、ウシ膵臓トリプシンインヒビター 0.1mg/mLを含んでいる結合バッファー;最終濃度が10
−11〜10
−4mmol・L
−1の間である標識されていないPrRPの類似体、および最終濃度が10
−10mmol・L
−1である
125I−PrRP31。前記プレートを、室温で60分インキュベートし、その後、前記細胞をNaOHの0.1mol/L溶液中で可溶化し、前記細胞と結合している放射活性をγ−カウンターで計数した。
【0103】
いくつかの実施形態は、本明細書中に説明されている前記脂質付加された類似体(例えば、脂肪酸が直接1番ではないアミノ酸に結合させられている、またはリンカーによって結合させられている、前記PrRP20またはPrRP31の脂質付加された類似体)の、末梢投与(例えば、皮下投与)の後に、血中の上昇したグルコース量を低下させ、関連する病状(糖尿病および摂食障害など)を改善する薬剤としての使用に関する。
【0104】
いくつかの実施形態において、本明細書中に説明されている任意の前記脂質付加された類似体(脂肪酸が直接1番ではないアミノ酸に結合させられている、またはリンカーによって結合させられている、PrRP20またはPrRP31の脂質付加された類似体を含む)は、血中の上昇したグルコース量の治療および/またはインスリン抵抗性の治療のための薬剤として利用される。
【0105】
いくつかの実施形態においては、本明細書中に説明されている任意の組成物の、薬学的に許容可能な塩、アミドまたはエステルが利用される。
【0106】
いくつかの実施形態において、前記薬学的組成物は、本明細書中に説明されている前記脂質付加された類似体(脂肪酸が直接1番ではないアミノ酸に結合させられている、またはリンカーによって結合させられている、PrRP20またはPrRP31の脂質付加された類似体を含む)の少なくとも1つ以上を、活性成分として含んでいる。
【0107】
いくつかの実施形態において、前記薬学的組成物は、血糖の状態を治療する方法として患者に対して投与される。いくつかの実施形態において、前記薬学的組成物は、血中の上昇したグルコース量によって特徴づけられる疾患であると診断された、または当該疾患を有していると疑われる被験体の、予防用または治療用である。
【0108】
特定の実施形態において、一般式
J−rRPsGRt−NH
2(化学式1;配列番号1)を有しているPrRP20またはPrRP31の脂質付加された類似体が、本明細書中に開示される:式中、
rは、イソロイシン、アラニンまたはフェニルグリシンであり;
sは、バリンまたはフェニルグリシンであり;かつ
tは、フェニルアラニン、トリプトファン、ピログルタミン酸、またはCH
2−ArもしくはCH
2−S−CH
2−Arを含んでいる側鎖を有している他のアミノ酸(式中、Arは、任意にハロゲン基、メチル基またはニトロ基によって置換されたフェニルまたはナフチルを表す)であり、
Jは、X=X
1またはX
2X
1によって任意の1箇所に脂質付加された13アミノ酸または24アミノ酸の鎖を表す。X
1はC8〜C18の脂肪酸である。当該脂肪酸は、遊離アミノ基またはSH基もしくはOH基の少なくとも1つを有しているアミノ酸に直接、またはX
2を介して結合している。当該X
2は、ポリオキシエチレン部分、アリールアルキル部分または、飽和もしくは不飽和の、直鎖もしくは分鎖のC3〜C8の炭化水素鎖(このうち、1つ以上の炭素原子は、N、S、Oからなる群より選択されるヘテロ原子によって置換され得る)からなる群より選択される親水性リンカーである。前記炭化水素鎖は、少なくとも一つ(好ましくは2つ)のアミノ基またはカルボン酸基を有しており、このうち1つは置換されて、CONH
2;NH−ポリオキシエチレン;COOM
1(式中、M
1はアルカリ金属、好ましくはNaまたはK);CN;COOR
1、COR
1もしくはCONHR
1(式中、R
1は、低級アルキル、アリールアルキル、ポリオキシエチレン、メチルポリオキシエチレン、アミノエチルポリオキシエチレンを含む群より選択される)、(CHOH)
nR
2(式中、R
2は、HまたはCOOHであり、nは、2〜10の整数である)または(CH)
nN+R
3等の基を形成し得る。いくつかの実施形態において、R
3は、HまたはC1〜C4のアルキルであり得る。好ましくは、ただしXが前記ペプチド鎖の1番のアミノ酸に結合している場合、XはX
2X
1である。
【0109】
いくつかの実施形態において、前記PrRP31の脂質付加された類似体は、一般式
(X)kRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRprRPsGRt−NH
2(化学式2;配列番号2)
を有する:式中、
kは、セリン、スレオニンまたはジアミノプロピオン酸であり;
mは、スレオニン、アラニンまたはメチルアラニンであり;
nは、グルタミンまたはアルギニンであり;
qは、メチオニンまたはノルロイシンであり;
uは、スレオニンまたはイソロイシンであり;
oは、グリシンまたはセリンであり;
pは、グリシン、アラニン、プロリンまたはN−メチルグリシンであり;
rは、イソロイシン、アラニンまたはフェニルグリシンであり;
sは、バリンまたはフェニルグリシンであり;
tは、フェニルアラニン、トリプトファン、ピログルタミン酸、またはCH
2−ArもしくはCH
2−S−CH
2−Ar(式中、Arは、任意にハロゲン基、メチル基またはニトロ基によって置換されたフェニルまたはナフチルを表す)を含んでいる側鎖を有しているアミノ酸である。Xは先に説明されている通りである(ただし、Xが前記ペプチド鎖の1番のアミノ酸に結合している場合、XはX
2X
1である)。上式中、アミノ酸の鎖kRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRp(配列番号35)は、1〜11アミノ酸を除去することによって、任意に短縮される。
【0110】
いくつかの実施形態において、前記PrRP31の脂質付加された類似体は、一般式
(X)kRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRprRPsGRt−NH
2(化学式2;配列番号2)
を有する:式中、
k、m、n、q、u、o、p、r、s、tおよびXは先に説明されている通りであり(ただし、Xが前記ペプチド鎖の1番のアミノ酸に結合している場合、XはX
1X
2である);
上式中、前記アミノ酸の鎖kRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRp(配列番号35)は、N末端から1〜11アミノ酸を除去することによって、任意に短縮される。
【0111】
他の実施形態において、前記PrRP20またはPrRP31の脂質付加された類似体は、化学式
(X)kRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRprRPsGRt−NH
2(化学式2;配列番号2)、または
(X)TPDINPAWYmoRprRPsGRt−NH
2(化学式3;配列番号3)
のペプチドから選択され、式中、
k、m、n、q、u、o、p、r、s、tおよびXは、先に説明されている通りである(ただし、Xが前記ペプチド鎖の1番のアミノ酸に結合している場合、XはX
2X
1である)。
【0112】
いくつかの実施形態において、前記PrRP31の脂質付加された類似体は、化学式
(X)SRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRprRPsGRt−NH
2(化学式4;配列番号4)
を有する:式中、
m、n、q、u、o、p、r、s、tは、先に説明されている通りであり;
X=X
1またはX
2X
1であり;左式中、
X
1は、任意の1箇所において、上述されているペプチド鎖の本来のアミノ酸または置換されたアミノ酸に、直接アミド結合によって、または代わりにX
2(先に説明されている通りである)を介してのいずれかによって、結合しているC8〜C18の脂肪酸であり、好ましくはC10〜C10の脂肪酸である(ただし、Xが前記ペプチド鎖の1番のアミノ酸に結合している場合、XはX
2X
1である)。
【0113】
いくつかの実施形態において、前記PrRP20またはPrRP31の脂質付加された類似体は、
(X)TPDINPAWYmoRGrRPsGRF−NH
2(化学式5;配列番号5);
(X)TPDINPAWYmoRGrRPsGR 1−Nal−NH
2(化学式6;配列番号6);および
(X)RmHnHS Nle ETRTPDINPAWYmoRGrRPsGR 1−Nal−NH
2(化学式7;配列番号7)
からなる群より選択される:
式中、1−nalは、ナフチルアラニンである。m、n、o、r、sおよびXは、先に説明されている通りである(ただし、Xが前記ペプチド鎖の1番のアミノ酸に結合している場合、XはX
2X
1である)。
【0114】
いくつかの実施形態において、前記PrRP31の脂質付加された類似体は、
(X)SRTHRHSMEIRTPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式8;配列番号8);または
(X)SRAHQHSMETRTPDINPAWYTGRGIRPVGRF−NH
2(化学式9;配列番号9)
である:
式中、Xは先に説明されている通りである(ただし、Xが前記ペプチド鎖の1番のアミノ酸に結合している場合、XはX
2X
1である)。
【0115】
いくつかの実施形態において、前記PrRP20の脂質付加された類似体は、化学式
(X)TPDINPAWYmoRGIRPVGRF−NH
2(化学式11;配列番号11)
に従う:
式中、mは、スレオニンまたはアラニンである。oは、グリシンまたはセリンである。Xは、先に説明した通りである(ただし、Xが前記ペプチド鎖の1番のアミノ酸に結合している場合、XはX
2X
1である)。
【0116】
本明細書中に説明されている、さらなる実施形態は、化学式
(X)TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式10;配列番号10);または
(X)SRTHRHSMEIRTPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式8;配列番号8)
に係るPrRP20またはPrRP31の脂質付加された類似体に関する:
式中、X=X
1またはX
1X
2である。X
1は、任意の1箇所において、上述されているペプチド鎖の本来のアミノ酸または置換されたアミノ酸に、直接アミド結合によってまたはX
2(ポリオキシエチレン、β−アラニン、γ−アミノ酪酸およびγ−グルタミン酸からなる群より選択される)を介して結合しているC12〜C16の脂肪酸である(ただし、Xが前記ペプチド鎖の1番のアミノ酸に結合している場合、XはX
2X
1である)。
【0117】
いくつかの実施形態において、前記PrRP20またはPrRP31の脂質付加された類似体は、化学式
(X)TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式10;配列番号10);または
(X)SRTHRHSMEIRTPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式8;配列番号8)
に従う:
式中、X=X
1またはX
2X
1である。X
1は、任意の1箇所において、上述されているペプチド鎖の本来のアミノ酸または置換されたアミノ酸に、直接アミド結合によってまたはX
2(ポリオキシエチレン、β−アラニン、γ−アミノ酪酸およびγ−グルタミン酸からなる群より選択される)を介して結合しているミリスチン酸またはパルミチン酸である(ただし、Xが前記ペプチド鎖の1番のアミノ酸に結合している場合、XはX
2X
1である)。
【0118】
いくつかの実施形態において、前記PrRP20またはPrRP31の脂質付加された類似体は、化学式
(X)TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式10;配列番号10);または
(X)SRTHRHSMEIRTPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式8;配列番号8)
に従う:
式中、X=X
1またはX
2X
1である。X
1は、任意の1箇所において、上述されているペプチド鎖の本来のアミノ酸または置換されたアミノ酸に、直接アミド結合によってまたはX
2(γ−グルタミン酸またはポリオキシエチレンである)を介して結合しているミリスチン酸またはパルミチン酸である(ただし、Xが前記ペプチド鎖の1番のアミノ酸に結合している場合、XはX
2X
1である)。
【0119】
いくつかの実施形態において、前記PrRP20またはPrRP31の脂質付加された類似体は、化学式
(X)TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式10;配列番号10);または
(X)SRTHRHSMEIRTPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式8;配列番号8)
に従う:
式中、X=X
1またはX
2X
1である。X
1は、化学式8のアミノ酸1〜22のうち任意のアミノ酸を置換しているリジンに、または化学式10のアミノ酸1〜12のうち任意のアミノ酸を置換しているリジンに、直接アミド結合によってまたはX
2(ポリオキシエチレン、β−アラニン、γ−アミノ酪酸およびγ−グルタミン酸からなる群より選択される)を介してのいずれかによって結合している、ミリスチン酸またはパルミチン酸である(ただし、Xが前記ペプチド鎖の1番のアミノ酸に結合している場合、XはX
2X
1である)。
【0120】
いくつかの実施形態において、前記PrRP20またはPrRP31の脂質付加された類似体は、化学式
(X)TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式10;配列番号10);または
(X)SRTHRHSMEIRTPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式8;配列番号8)
に従う:
式中、X=X
1またはX
2X
1である。X
1は、本来のもしくは置換された化学式8のアミノ酸1〜22に、または本来のもしくは置換された化学式10のアミノ酸1〜12に、直接アミド結合によってまたはX
2(γ−グルタミン酸またはポリオキシエチレンである)を介して結合しているミリスチン酸またはパルミチン酸である(ただし、Xが前記ペプチド鎖の1番のアミノ酸に結合している場合、XはX
2X
1である)。
【0121】
いくつかの実施形態において、前記PrRP20またはPrRP31の脂質付加された類似体は、化学式
(X)TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式10;配列番号10);または
(X)SRTHRHSMEIRTPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式8;配列番号8)
に従う:
式中、X=X
1またはX
2X
1である。X
1は、本来のもしくは置換された化学式8の1番、11番もしくは18番のアミノ酸に、または本来のもしくは置換された化学式10の1番、5番もしくは7番のアミノ酸に、直接アミド結合によってまたはX
2(γ−グルタミン酸またはポリオキシエチレンである)を介して結合しているミリスチン酸またはパルミチン酸である(好ましくは、Xが前記ペプチド鎖の1番のアミノ酸に結合している場合、XはX
2X
1である)。
【0122】
いくつかの実施形態において、前記PrRP20またはPrRP31の脂質付加された類似体は、化学式
(X)TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式10;配列番号10);または
(X)SRTHRHSMEIRTPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式8;配列番号8)
に従う:
式中、X=X
1またはX
2X
1である。X
1は、本来のもしくは置換された化学式8の1番もしくは11番のアミノ酸に、または本来のもしくは置換された化学式10の1番もしくは7番のアミノ酸に、直接アミド結合によってまたはX
2(γ−グルタミン酸またはポリオキシエチレンである)を介して結合しているミリスチン酸またはパルミチン酸である(好ましくは、Xが前記ペプチド鎖の1番のアミノ酸に結合している場合、XはX
2X
1である)。
【0123】
代替となる実施形態において、前記PrRP20またはPrRP31の脂質付加された類似体は、化学式
(X)TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式10;配列番号10);または
(X)SRTHRHSMEIRTPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式8;配列番号8)
に従う:
式中、X=X
1またはX
2X
1である。X
1は、化学式8のアミノ酸1もしくは11を置換しているリジンに、または化学式10のアミノ酸1もしくは7を置換しているリジンに、直接アミド結合によってまたはX
2(γ−グルタミン酸またはポリオキシエチレンである)を介して結合しているミリスチン酸またはパルミチン酸である。
【0124】
いくつかの実施形態において、前記PrRP20またはPrRP31の脂質付加された類似体は、化学式
SRTHRHSMEIK(palm)TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(配列番号12)
TPDINPK(palm)WYASRGIRPVGRF−NH
2(配列番号13)
【0126】
に従う:
式中、palmはパルミチン酸であり、X
2はγ−グルタミン酸である。
【0127】
代替となる実施形態において、前記PrRP20またはPrRP31の脂質付加された類似体は、化学式
【0129】
に従う:
式中、palmはパルミチン酸であり、X
2はポリオキシエチレンである。
【0130】
(治療の方法)
本明細書中に説明されている前記脂質付加された類似体の特徴は、理論または特定の生化学的メカニズムによって拘束されることなく、血中の上昇したグルコース量によって特徴づけられる疾患を治療するために特に有用である。本明細書中に説明されているペプチドの脂質付加(脂質付加されたPrRP類似体)は、末梢投与後の治療用ペプチドの血液脳関門を越えた送達を促進する。本明細書中に説明されているように、PrRPの脂質付加により、末梢投与後の中枢効果の誘導が可能となる。
【0131】
哺乳類は、血中の上昇したグルコース量を患っている、または血中の上昇したグルコース量を患う可能性が高いと、標準的な医療技術を使用することにより識別され得る。例えば、ヒトの家族歴および/または食習慣の分析は、当該ヒトが血中の上昇したグルコース量を患う可能性が高いか否かを、それゆえインスリン抵抗性および二型糖尿病を患うことの上昇したリスクをもまた、判断するために使用され得る。血中グルコースおよび関連している血中因子の直接測定は、参考になる。血中の上昇したグルコース量を患っている、または血中の上昇したグルコース量を患っていると疑われていると識別された哺乳類は、本明細書中に開示されている、1種類以上の前記脂質付加された類似体を投与することによって治療され得る。
【0132】
特定の実施形態において、血中の上昇したグルコース量によって引き起こされる、または血中の上昇したグルコース量によって特徴づけられる疾患を、治療または予防するための具体的かつ一般的な組成物を使用する方法が、本明細書中に開示されている。いくつかの実施形態において、前記方法は、哺乳類における疾患を治療または予防するために使用される。いくつかの実施形態において、前記哺乳類はヒトである。
【0133】
いくつかの実施形態において、前記方法は、典型的には薬学的組成物の一部として、1種類以上の前記脂質付加された類似体を必要とする被験体に対して投与することを含んでいる。このような組成物は、典型的には、治療効果のある量の1種類以上の脂質付加された類似体を、適切な賦形剤と共に含んでいる。
【0134】
いくつかの実施形態は、血中の上昇したグルコース量によって特徴づけられる1つ以上の疾患である、または当該疾患が疑われると診断された被験体を治療する方法に関する。前記方法は、前記被験体に対して、一般式
J−rRPsGRt−NH
2(化学式1;配列番号1)
を有するプロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体を投与する工程を含んでいる:式中、
rは、イソロイシン、アラニンまたはフェニルグリシンであり;
sは、バリンまたはフェニルグリシンであり;かつ
tは、フェニルアラニン、トリプトファン、ピログルタミン酸、またはCH
2−ArもしくはCH
2−S−CH
2−Ar(式中、Arは、任意にハロゲン基、メチル基またはニトロ基で置換された、フェニルまたはナフチルを表す)を含んでいる側鎖を有しているアミノ酸であり;かつ
Jは、X=X
1またはX
2X
1のいずれかによって任意の1箇所を脂質付加された、13アミノ酸または24アミノ酸の鎖を表す。X
1は、遊離アミノ基またはSH基もしくはOH基のうち少なくとも1つを有しているアミノ酸に対し、直接、またはその代わりにX
2を介して結合しているC8〜C18の脂肪酸である。X
2は、ポリオキシエチレン部分、アリールアルキル部分または、飽和もしくは不飽和の、直鎖もしくは分鎖のC3〜C8の炭化水素鎖(このうち、いくつかの炭素原子は、N、S、Oからなる群より選択されるヘテロ原子によって置換され得る)からなる群より選択される、親水性リンカーである。前記炭化水素鎖は、少なくとも一つ(好ましくは2つ)のアミノ基またはカルボン酸基を有しており、このうち1つは置換されて、CONH
2;NH−ポリオキシエチレン;COOM
1(式中、M
1はアルカリ金属、好ましくはNaまたはK);CN;COOR
1、COR
1もしくはCONHR
1(式中、R
1は、低級アルキル、アリールアルキル、ポリオキシエチレン、メチルポリオキシエチレン、アミノエチルポリオキシエチレンを含む群より選択される)、(CHOH)
nR
2(式中、R
2は、HまたはCOOHであり、nは、2〜10の整数である)または(CH)
nN+R
3(式中、R
3は、同一または異なるHまたはC1〜C4のアルキルであり得る)等の基を形成している。いくつかの実施形態において、前記疾患は、インスリン抵抗性、グルコース刺激インスリン放出障害(例えば、膵臓β細胞の機能不全)およびグルカゴンの不適切な分泌によって特徴づけられる。いくつかの実施形態において、前記疾患は、高血糖または糖尿病である。いくつかの実施形態において、前記高血糖は、慢性高血糖である。いくつかの実施形態において、前記糖尿病は二型糖尿病である。いくつかの実施形態において、前記二型糖尿病は、二次疾患(肥満、心血管疾患、高血圧または脂質異常血症など)に関連している。
【0135】
さらなる実施形態は、血中の上昇したグルコース量によって特徴づけられる疾患であると診断された、または当該疾患が疑われる被験体を、予防または治療する方法に関する。当該方法は、治療する被験体に対して、一般式
(X)kRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRprRPsGRt−NH
2(化学式2;配列番号2)
を有する、少なくとも1種類のプロラクチン放出ペプチドの脂質付加された類似体を投与する工程を含んでいる:式中、
kは、セリン、スレオニンまたはジアミノプロピオン酸であり;
mは、スレオニン、アラニンまたはメチルアラニンであり;
nは、グルタミンまたはアルギニンであり;
qは、メチオニンまたはノルロイシンであり;
uは、スレオニンまたはイソロイシンであり;
oは、グリシンまたはセリンであり;
pは、グリシン、アラニン、プロリンまたはN−メチルグリシンであり;
rは、イソロイシン、アラニンまたはフェニルグリシンであり;
sは、バリンまたはフェニルグリシンであり;
tは、フェニルアラニン、トリプトファン、ピログルタミン酸、またはCH
2−ArもしくはCH
2−S−CH
2−Ar(式中、Arは、任意にハロゲン基、メチル基またはニトロ基によって置換されたフェニルまたはナフチルを表す)を含んでいる側鎖を有しているアミノ酸である。Xは先に説明されている通りである。アミノ酸の鎖kRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRp(配列番号35)は、上記鎖の当該箇所から1〜11アミノ酸を除去することによって、任意に短縮される。いくつかの実施形態において、アミノ酸は前記鎖の他の箇所からは除去されず、最大限の結合親和力を維持する。
【0136】
またさらなる実施形態は、血中の上昇したグルコース量によって特徴づけられる疾患であると診断された、または当該疾患が疑われる被験体を、予防または治療する方法を含んでいる。当該方法は、治療する被験体に対して、一般式
(X)kRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRprRPsGRt−NH
2(化学式2;配列番号2)
を有する、前記プロラクチン放出ペプチドの脂質付加された類似体を投与する工程を含んでいる:式中、
k、m、n、q、u、o、p、r、s、tおよびXは、先にされている通りであり;
前記アミノ酸の鎖kRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRp(配列番号35)は、N末端から1〜10アミノ酸を除去することによって、任意に短縮される。
【0137】
本明細書中に開示されている、さらなる実施形態は、血中の上昇したグルコース量によって特徴づけられる疾患であると診断された、または当該疾患が疑われる被験体を、予防または治療する方法を含んでいる。当該方法は、治療する被験体に対して、化学式
(X)kRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRprRPsGRt−NH
2(化学式2;配列番号2)、および
(X)TPDINPAWYmoRprRPsGRt−NH
2(化学式3;配列番号3)
のペプチドからなる群より選択される、前記プロラクチン放出ペプチドの脂質付加された類似体を投与する工程を含んでいる:式中、
k、m、n、q、u、o、p、r、s、tおよびXは、先に説明されている通りである。
【0138】
いくつかの実施形態において、前記方法は、化学式2の1〜24番において、および/または化学式3の1〜13番においてアミノ酸の置換を有している、プロラクチン放出ペプチドの脂質付加された類似体を投与することを含んでいる。当該置換は、前記生じた、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体の、GPR10レセプターに対する前記結合親和力の値を、Ki10
−6mol・L
−1を超えて上昇させない。前記結合親和力は、1ウェルあたり30万〜45万細胞の最適密度まで、底面がポリエチレンイミンで被覆された24ウェルプレート上で増殖させた、ラット下垂体細胞系統RC−4B/CまたはGPR10レセプターをトランスフェクションしたCHO細胞において、評価された。以下の物質を、引き続いて加えた:HEPES(pH7.4) 20mmol・L
−1、NaCl 118mmol・L
−1、KCl 4.7mmol・L
−1、MgCl
2 5mmol・L
−1、グルコース5.5mmol・L
−1、ウシ血清アルブミン 1mg/mL、ウシ膵臓トリプシンインヒビター 0.1mg/mLを含んでいる結合バッファー;最終濃度が10
−11〜10
−4mmol・L
−1の間である標識されていないPrRPの類似体、および最終濃度が10
−10mmol・L
−1である
125I−PrRP31。前記プレートを、室温で60分インキュベートし、その後、前記細胞をNaOHの0.1mol/L溶液中で可溶化し、前記細胞と結合している放射活性をγ−カウンターで計数した。
【0139】
さらなる実施形態は、治療する被験体に対して、化学式
(X)SRmHnHSqEuRTPDINPAWYmoRprRPsGRt−NH
2(化学式4;配列番号4)
の前記プロラクチン放出ペプチドの脂質付加された類似体を投与することを含んでいる方法に関する:式中、
m、n、q、u、o、p、r、s、tは、先に説明されている通りである。
【0140】
X=X
1またはX
2X
1である。X
1は、任意の1箇所において、上述されているペプチド鎖の本来のアミノ酸または置換されたアミノ酸に、直接アミド結合によってまたはX
2(先に説明された通りである)を介して結合しているC8〜C18の脂肪酸であり、好ましくはC10〜C16の脂肪酸である。いくつかの実施形態において、本明細書中に説明されている前記プロラクチン放出ペプチドの脂質付加された類似体は、ヒスチジン、ベンジルヒスチジン、ナフチルアラニン、トリプトファン、ピログルタミン酸、ベンジルシステイン、ベンジル−O−グルタメート、ノルロイシン、ジクロロフェニルアラニン、テトラクロロフェニルアラニン、ペンタフルオロフェニルアラニン、メチル−O−フェニルアラニン、メチル−NH−フェニルアラニンまたはニトロフェニルアラニンから選択される末端アミノ酸を有している。いくつかの実施形態において、前記方法は、8〜18炭素の、好ましくは10〜18炭素原子の、より好ましくは12〜16炭素原子の脂肪酸からなる群より選択される脂肪酸を有している、本明細書中に説明されている前記プロラクチン放出ペプチドの脂質付加された類似体を、治療する被験体に投与する工程によって特徴づけられる。
【0141】
いくつかの実施形態において、前記脂肪酸は8、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18の炭素原子を有している。
【0142】
さらなる実施形態は、
(X)TPDINPAWYmoRGrRPsGRF−NH
2(化学式5;配列番号5);
(X)TPDINPAWYmoRGrRPsGR 1−Nal−NH
2(化学式6;配列番号6);および
(X)RmHnHSNleETRTPDINPAWYmoRGrRPsGR 1−Nal−NH
2(化学式7;配列番号7)
からなる群より選択されるプロラクチン放出ペプチドの脂質付加された類似体を使用する:
式中、m、n、o、r、sおよびXは、先に説明されている通りであり、1−Nalはナフチルアラニンである。
【0143】
いくつかの実施形態において、本明細書に説明されている前記方法は、
(X)SRTHRHSMEIRTPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式8;配列番号8);および
(X)SRAHQHSMETRTPDINPAWYTGRGIRPVGRF−NH
2(化学式9;配列番号9)
から選択されるプロラクチン放出ペプチドの脂質付加された類似体を利用する:
式中、Xは先に説明されている通りである。
【0144】
いくつかの実施形態において、本明細書中に説明されている前記方法は、化学式
(X)TPDINPAWYmoRGIRPVGRF−NH
2(化学式11;配列番号11)
に係るプロラクチン放出ペプチドの脂質付加された類似体を使用する:
式中、mは、スレオニンまたはアラニンである。oは、グリシンまたはセリンである。Xは、先に説明されている通りである。
【0145】
他の実施形態において、本明細書中に説明されている前記方法は、化学式
(X)TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式10;配列番号10);または
(X)SRTHRHSMEIRTPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式8;配列番号8)
に係るプロラクチン放出ペプチドの脂質付加された類似体を使用する:
式中、X=X
1またはX
1X
2である。X
1は、任意の1箇所において、上述されているペプチド鎖の本来のアミノ酸または置換されたアミノ酸に、直接アミド結合によってまたはX
2(β−アラニン、γ−アミノ酪酸およびγ−グルタミン酸からなる群より選択される)を介して結合しているC12〜C16の脂肪酸である。
【0146】
いくつかの実施形態において、本明細書中に説明されている前記方法は、化学式
(X)TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式10;配列番号10);または
(X)SRTHRHSMEIRTPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式8;配列番号8)
に係るプロラクチン放出ペプチドの脂質付加された類似体を利用する:
式中、X=X
1またはX
1X
2である。X
1は、化学式10または化学式8の本来のアミノ酸または置換されたアミノ酸に、直接アミド結合によってまたはX
2(ポリオキシエチレン、β−アラニン、γ−アミノ酪酸およびγ−グルタミン酸からなる群より選択される)を介して結合しているミリスチン酸またはパルミチン酸である。
【0147】
いくつかの実施形態において、本明細書中に説明されている前記方法は、化学式に係るプロラクチン放出ペプチドの脂質付加された類似体を利用する。
【0148】
他の実施形態において、使用される、プロラクチン放出ペプチドの脂質付加された類似体は、化学式
(X)TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式10;配列番号10);または
(X)SRTHRHSMEIRTPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式8;配列番号8)
に従う:
式中、X=X
1またはX
1X
2である。X
1は、化学式10または化学式8の本来のアミノ酸または置換されたアミノ酸に、直接アミド結合によってまたはX
2(γ−グルタミン酸である)を介して結合しているミリスチン酸またはパルミチン酸である。
【0149】
いくつかの実施形態において、本明細書中に説明されている方法において利用されるプロラクチン放出ペプチドの脂質付加された類似体は、化学式
(X)TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式10;配列番号10);または
(X)SRTHRHSMEIRTPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式8;配列番号8)
に従う:
式中、X=X
1またはX
2X
1である。X
1は、化学式8の1番、11番もしくは18番の本来のアミノ酸または置換されたアミノ酸に、または化学式10の1番、5番もしくは7番の本来のアミノ酸または置換されたアミノ酸に、直接アミド結合によって、またはX
2(γ−グルタミン酸である)を介してのいずれかによって、結合しているミリスチン酸またはパルミチン酸である。
【0150】
いくつかの実施形態において、本明細書中に説明されている前記方法は、化学式
(X)TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式10;配列番号10);または
(X)SRTHRHSMEIRTPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(化学式8;配列番号8)
に係るプロラクチン放出ペプチドの脂質付加された類似体を使用する:
式中、X=X
1またはX
2X
1である。X
1は、化学式8の1番もしくは11番の本来の置換されたアミノ酸(original replaced amino acid)に、または化学式10の1番もしくは7番の本来の置換されたアミノ酸に、直接アミド結合によってまたはX
2(γ−グルタミン酸である)を介して、結合しているミリスチン酸またはパルミチン酸である。
【0151】
本明細書中に説明されている、いくつかの実施形態は、血中の上昇したグルコース量によって特徴づけられる疾患であると診断された、または当該疾患を有していることが疑われる被験体を、予防または治療する方法に関する。当該方法は、治療する被験体に、化学式
SRTHRHSMEIK(palm)TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(配列番号12)
TPDINPK(palm)WYASRGIRPVGRF−NH
2(配列番号13)
【0153】
に係る前記プロラクチン放出ペプチドの脂質付加された類似体を投与する工程を含んでいる:
式中、palmは、パルミチン酸であり、X
2は、γ−グルタミン酸またはポリオキシエチレンである。
【0154】
いくつかの実施形態において、X
2は、Kに対して連結されている。
【0155】
疾患を予防または治療する方法に関するさらなる実施形態は、血中の上昇したグルコース量によって特徴づけられている。当該実施形態は、被験体に、
X
1−SRAHQHSMETRTPDINPAWYTGRGIRPVGRF−NH
2(配列番号16);
X
1−SRTHRHSMEIRTPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(配列番号17);
(N−palm)−SRTHRHSMEIRTPDINPAWYASRGIRPVGRF−NHMe(配列番号18);
(N−palm)−SRTHRHSMEIRTPDINPAWYASRGIRPVGRF−NOMe(配列番号19);
(N−myr)−TPDINPAWYTGRGIRPVGRF−NH
2(配列番号20);
(N−myr)−TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(配列番号21);
(N−oct)−TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(配列番号22);
(N−dec)−TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(配列番号23);
(N−dodec)−TPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(配列番号24);
X
1´−SRAHQHS Nle ETRTPDINPAWYTGRGIRPVGRF−NH
2(配列番号25);
X
1−SRAHQHS Nle ETRTPDINPAWYTGRGIRPVGR 1−Nal−NH
2(配列番号26);
X
1−SRAHQHS Nle ETRTPDINPAWYTGRGIRPVGR PheCl2−NH
2(配列番号27);
X
1−SRAHQHS Nle ETRTPDINPAWYTGRGIRPVGR PheNO2−NH
2(配列番号28);
X
1−SRAHQHS Nle ETRTPDINPAWYTGRGIRPVGR PheF5−NH
2(配列番号29);
X
1−SRAHQHS Nle ETRTPDINPAWYTGRGIRPVGRY−NH
2(配列番号30);
X
1−SRAHRHS Nle EIRTPDINPAWYASRGIRPVGRY−NH
2(配列番号31);
(N−myr)−Nle−ETRTPDINPAWYTGRGIRPVGRF−NH
2(配列番号32);
(N−myr)−QHSMETRTPDINPAWYTGRGIRPVGRF−NH
2(配列番号33);および
(N−myr)−QHSMETRTPDINPAWYASRGIRPVGRF−NH
2(配列番号34)
からなる群より選択される、少なくとも1種類のプロラクチン放出ペプチドの脂質付加された類似体を投与する工程を含んでいる:
式中、X
1´は、パルミチン酸、ミリスチン酸またはステアリン酸であり;かつ
X
1は、パルミチン酸またはミリスチン酸である。
【0156】
(薬学的組成物、投与経路および用量)
特定の実施形態において、本明細書中に説明されている通りの脂質付加された類似体の少なくとも1種類を含んでいる薬学的組成物、およびこれらの薬学的組成物を使用する治療の方法が、本明細書中に説明されている。
【0157】
薬学的組成物は、典型的には、薬学的に使用される製剤への治療用組成物の加工を容易にする、1種類以上の生理学上許容可能なキャリア(賦形剤および助剤を含む)を使用して調合される。適切な調合は、選択された投与経路、保存条件および他の当該技術分野の要素に依存する。薬学的組成物の概要は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Ed (Eahston, Pa.: Mack Publishing Company, 1995);Hoover, John E., Remington´s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pennsylvania 1975;Liberman, H.A. and Lachman, L., Eds., Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker, New York, N.Y., 1980;および、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Seventh Ed. (Lippincott Williams & Wilkins, 1999)において見られる。薬学的に許容可能な賦形剤および剤型は、当該技術分野に知られている通りに調製され得る。
【0158】
本明細書中に説明されている脂質付加された類似体の1種類以上、および薬学的に許容される(単数または複数の)希釈剤、(単数または複数の)賦形剤、または(単数または複数の)キャリアのうち1つ以上を含んでいる薬学的組成物が、本明細書中に説明されている。さらに、併用療法に際して、前記脂質付加された類似体は、これが他の活性成分と混合されている薬学的組成物として任意に投与される。いくつかの実施形態において、前記薬学的組成物は、選択された脂質付加された類似体の薬学的に許容可能な塩、アミドまたはエステルを使用することを包含している。いくつかの実施形態において、前記薬学的組成物は、他の医学的物質もしくは薬学的物質、キャリア、アジュバント(保存剤、安定剤、湿潤剤または乳化剤など)、溶液促進剤(solution promoters)、浸透圧を調節するための塩、および/または緩衝液を含んでいる。さらに、前記薬学的組成物はまた、他の治療上有益な物質を含み得る。
【0159】
本明細書で使用される場合、薬学的組成物とは、脂質付加された類似体と1種類以上の化学的成分(キャリア、安定剤、希釈剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤および/または賦形剤など)との混合物をいう。前記薬学的組成物は、生物に対する前記脂質付加された類似体の投与を容易にする。本明細書中に提供されている治療または使用の前記方法を実践するにあたっては、脂質付加された類似体は、薬学的組成物の状態で、治療されるべき状態、疾病または疾患を有している哺乳類に対して投与される。好ましくは、前記哺乳類はヒトである。用量および投与計画は、前記状態の重症度および段階、個体の年齢および相対的な健康、使用された前記治療用組成物の効能および他の要素に依存して異なる。前記脂質付加された類似体は、単独で、または混合物の成分として1種類以上の治療用物質と組み合わせて、任意に使用される。
【0160】
いくつかの実施形態において、本明細書中に説明されている前記薬学的組成物は、例えば、水性分散液、自己乳化分散液、固溶体製剤、リポソーム分散液、エアロゾル製剤、固形剤、散剤、速放性製剤、徐放性製剤、速崩壊(fast melt)製剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、遅延放出製剤、持続放出製剤、パルス放出型製剤、マルチパーティキュレート(multiparticulate)製剤並びに混合された速報性製剤および徐放性製剤として調合され得る。本明細書中に説明されている薬学的製剤は、非経口的投与経路(例えば、静脈内投与経路、皮下投与経路、筋肉内投与経路、髄腔内投与経路)、脳血管内投与経路、鼻腔内投与経路、口腔内投与経路、局所投与経路、直腸内投与経路、経口投与経路または経皮投与経路を含んでいるが限定されない1つ以上の投与経路によって、個体に任意に投与される。いくつかの実施形態において、脂質付加された類似体は、皮下注射または静脈内経路によって投与される。
【0161】
いくつかの実施形態において、個体には、治療上効果のある量の1種類以上の脂質付加された類似体、および適切な賦形剤が投与される。いくつかの実施形態において、前記脂質付加された類似体は、血中の上昇したグルコース量を低下させることに関する医学的治療のために投与される。いくつかの実施例において、前記脂質付加された類似体は、全ての型の糖尿病および関連する疾病(摂食障害および/または糖尿病合併症など)の予防および/または治療のために投与される。
【0162】
いくつかの実施形態において、前記脂質付加された類似体は、糖尿病性疾病の進行(例えば、耐糖能障害の進行)を遅延させるまたは予防するために投与される。
【0163】
いくつかの実施形態において、脂質付加された類似体は、1つ以上のさらなる薬学的活性物質(抗糖尿病薬、抗肥満薬、抗高血圧薬、食欲調節薬、並びに、血中の上昇したグルコース量、糖尿病または肥満の結果生じる合併症、またはそれらに関連付けられている合併症の治療および/または予防のための他の公知の薬剤など)と組み合わされる。
【0164】
いくつかの実施形態において、脂質付加された類似体は、血中のグルコース量および/または脂質ホメオスタシスに影響する、外科手術または他の手術(胃絞扼術または胃バイパス術など)と組み合わされる。
【0165】
〔実施例〕
以下の具体的で限定されない実施例は、単なる説明として、かつ本発明の範囲の開示を制限しないと解釈されるべきである。さらなる詳述を俟つことなく、当業者は、本明細書中の記載に基づいて本開示を最大限に利用し得ると考えられる。実験からの具体例の結果は、
図1〜5および以下の表2〜4に提示されている。
【0166】
本明細書中では以下の略語が使用されている:分散分析(ANOVA);ウシ血清アルブミン(BSA);ウシ膵臓トリプシンインヒビター(BPTI);上皮成長因子(EGF);4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES);リン酸緩衝生理食塩水(PBS);ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);トリス緩衝生理食塩水(TBS);ジアミノプロピオン酸(Dpr);1−ナフチルアラニン(1−Nal);ノルロイシン(Nle);ミリストイル(myr);パルミトイル(palm);オクタノイル(oct);ドデカノイル(dodec);およびトリデカノイル(tridec);γ−アミノ酪酸(GABA)、ガンマ−グルタミン酸(γE),ポリオキシエチレン(POE)(特に1,13−ジアミノ−4,7,10−トリオキサトリデカン−スクシンアミド酸)。
【0167】
[実施例1:脂質付加されたPrRPペプチドおよび脂質付加されたPrRP類似体の合成]
本開示において説明されているペプチド(例えば、表1において説明されているペプチド)は、ABI 433A合成機(Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)においてFmoc法を利用し、Maixnerovaらに係る固相合成法(Maixnerova, J., et al., "Structure activity relationship of CART (cocaine- and amphetamine-regulated transcript) peptide fragments," Peptides, 28: 1945-1953, 2007)を使用して合成した。前記ペプチドの適切な脂肪酸との脂質付加は、Maletinska, L., et al., "Characterization of new stable ghrelin analogs with prolonged orexigenic potency," J Pharmacol Exp Ther, 340:781-786, 2012に説明されているように、樹脂からペプチドを切断する前に行った。
【0168】
競合結合実験において使用された、標識されたPrRP31ペプチドは、Iodo−Gen(Pierce, Rockford, IL, USA)を使用して、公開されている手法(Maixnerova et al., 2011)によって、Na125Iでヨウ化させた。一ヨウ化されたペプチドは、分注して−20℃で保存し、1箇月以内に結合アッセイに使用した。
【0169】
[実施例2:競合結合実験]
競合結合実験は、MotulskyおよびNeubigに従って行った(Motulsky, A., et al., "Analyzing radioligand binding data," Curr Protoc Neurosci, Chapter 7, Unit 7.5, 2002)。結合実験は、以下のラット下垂体細胞およびチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で実施した。
【0170】
前記ラット下垂体細胞系統RC−4B/C(ATCC, Manassas, USA)は、底面がポリエチレンイミンで被覆されている24ウェルプレート上で増殖させた。前記細胞は、1ウェルあたり30〜45万細胞の最適密度まで増殖させた。以下の物質が、前記実験のために使用された:結合バッファー(HEPES(pH7.4) 20mmol・L
−1、NaCl 118mmol・L
−1、KCl 4.7mmol・L
−1、MgCl
2 5mmol・L
−1、グルコース 5.5mmol・L
−1、BSA 1mg/mL、BPTI 0.1mg/mL)、最終濃度が10
−11〜10
−4mmol・L
−1の間である標識されていないPrRPの類似体(すなわち試験される類似体)、および最終濃度が10
−10mmol・L
−1であるラット
125I−PrRP31(放射性ヨウ素125で標識されている)(Maixnerova et al., 2011)。
【0171】
ヒトPrRPのレセプターであるGPR10をトランスフェクションさせたCHO細胞(Perkin Elmer, USA)は、ポリエチレンイミンで被覆されている24ウェルプレート上で増殖させた。前記細胞は、1ウェルあたり4〜8万細胞の最適密度まで増殖させた。以下の物質が、前記実験のために使用された:結合バッファー(Tris(pH7.4) 25mmol・L
−1、NaCl 118mmol・L
−1、MgCl
2 10mmol・L
−1、CaCl
2 1mmol・L
−1、グルコース 5.5mmol・L
−1、BSA 0.5mg/mL)、最終濃度が10
−11〜10
−4mmol・L
−1の間である標識されていないPrRPの類似体(すなわち試験される類似体)、および最終濃度が5×10
−11mmol・L
−1である放射線標識されたヒト
125I−PrRP31。
【0172】
プレートは室温で60分間インキュベートした。インキュベーションの後、前記細胞をNaOHの0.1mol/L溶液中で可溶化し、前記細胞と結合している放射活性をγ−カウンターを使用して計数した。前記実験は二重に行われ、少なくとも3回繰り返された。
【0173】
前記プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体を含む、ほぼ全ての試験されたラットPrRP類似体およびヒトPrRP類似体(構造に関しては、表1参照)は、高い結合親和力でRC−4B/C細胞におけるラットレセプターに結合し(表2)、CHO細胞におけるヒトGPR10レセプターにも高い結合親和力で結合した(表2)。一般的に、脂肪酸鎖の長さが増加するにつれて、K
iの値は減少した。これは、前記脂質付加されたPrRP類似体との前記親和力が、より強かったことを示している。脂質付加された類似体の結合親和力は、本来のプロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加されていない類似体と比較して、最大で1桁勝っていた(表2参照)。
【0174】
結果は、ラットRC−4B/C細胞レセプターおよびヒトGPR10レセプターの両方において、前記試験されたペプチドの脂質付加によりレセプターとの結合が増加すること、および前記ペプチドの脂質付加によりK
iの値は低くなること、または上昇した結合親和力という結果を招いたことを示している。前記上昇した結合親和力は、前記脂質付加された類似体上にある、前記脂肪酸の鎖の長さの増加と相関している。脂肪酸の付加により、レセプターとの結合が保存されるのみならず(前記レセプターとの結合は、C末端のRFアミドに依存しているが、N末端への脂質付加の結果による)、実際には前記結合親和力が最大で1桁近く上昇する。
【0175】
ヒトの脂質付加されたPrRP類似体(表1の類似体番号2、39、40、41、43参照)は、ラット
125I−PrRPおよびヒト
125I−PrRPの両方の、前記RC−4B/C細胞における前記ラットPrRPレセプターとの前記結合、およびヒトGPR10レセプターとの前記結合を、nmol/L
−1の範囲のよく似た程度に置き換えた(表2参照)。脂質付加された短縮されているPrRP31類似体(21〜30アミノ酸)は、両方のPrRPの本来の形状に類似した結合親和力を示した。対照的に、スクランブルペプチド(類似体番号19、20、25、26)は、非常に低い結合親和力(高いK
i)を示し、かつ、マウスにおける摂食に関して何ら効果がないことを示した(表2)。
【0176】
前記競合結合実験を評価するために、Graph Pad Prism Software(San Diego, CA, USA)を使用した。ワンサイト(onesite)結合モデルを使用して、非線形回帰を実行した。K
dの値に4.21nmol・L
−1、放射性リガンドの濃度に0.1nmol・L
−1を用い(Maixnerova et al., 2011)、Cheng−Prussof式を使用して、前記K
iの値を計算した(Cheng, Y., et al., "Relationship between the inhibition constant (Ki) and the concentration of inhibitor which causes 50 percent inhibition (IC50) of an enzymatic reaction," Biochem Pharmacol , 22:33099- 3108, 1973)。
【0177】
[実施例3:細胞シグナリング]
前記種々の脂質付加されたPrRP20類似体が、前記MAPK/ERK1/2シグナル経路を開始するか否かを決定するために、実験がまた行われた。MAPK/ERK1/2シグナリングを開始することが知られているPrRP31が、比較のために使用された。
【0178】
RC−4B/C細胞を、6ウェルプレート中で、1ウェルあたり700〜900細胞の最適密度まで増殖させた。サンプル回収の17時間前に、前記増殖培地を、上皮成長因子(EGF)を欠いている無血清培地によって置き換えた。試験される前記脂質付加されたPrRP20の類似体を、それぞれのウェルに最終濃度が10
−6mol・L
−1となるように加えた。37℃、5分間のインキュベーションの後、前記プレートを氷の上に載置し、それぞれのウェルをpH7.4のPBS(NaCl 137mmol・L
−1、KCl 2.7mmol・L
−1、N
a2HP
O4.2H
2O 8mmol・L
l−1およびK
H2P
O4 1.76mmol・L
−1)で3回すすぎ、4℃まで冷却した。次に、前記細胞をサンプルバッファー(Tris−HCl(pH6.8) 62.5mmol・L
l−1、グリセロール 10%、SDS 2%、ブロモフェノールブルー 0.01%、メルカプトエタノール 5%、NaF 50mmol・L
l−1およびNa
3VO
4 1mmol・L
l−1)中で可溶化し、マイクロチューブ中に集め、−20℃で冷凍した。少なくとも3回の独立した実験において、サンプルを回収した。
【0179】
前記脂質付加されたPrRP20の類似体が、前記MAPK/ERK1/2シグナリング経路を開始するか否かを決定するために、ウェスタンブロット分析を使用した。機器MiniProtean3(BioRad, Herkules, CA, USA)上の、5%/12%のSDS存在下ポリアクリルアミドゲル(SDS−PAGE)上で電気泳動を行った。ゲル上に投入されたサンプルを、まず超音波によって分解し、次に100℃で2分間加熱し、500×g、室温で5分間遠心分離した。MAPK/ERK1/2シグナリングを開始することが示されているPrRP31(Maixnerova et al., 2011)を、ポジティブコントロールとして使用した。100Vの一定電圧で10分間、または150Vで60分間、電気泳動を行った。
【0180】
前記サンプルにおけるリン酸化されたタンパク質の存在を示すため、前記タンパク質を、前記SDS−PAGEゲルからImmobilon(商標)−P PVDF(ポリフッ化ビニリデン)メンブレン(Sigma-Aldrich, USA)へ転写した。前記転写は、pH8.3のブロッティングバッファー(Tris 25mmol・L
−1、グリシン 192mmol・L
−1およびメタノール 20%)中において、4℃、30Vの一定電圧で20時間行った。
【0181】
前記PVDFメンブレンへのタンパク質の前記転写の後、前記メンブレンをTBSウォッシングバッファー(Tris 20mmol・L
−1、NaCl 140mmol・L
−1およびTween−20 0.1%)中において5分間洗浄し、次にブロッキングバッファー(脱脂粉乳5%を加えたTBSならびに、Na
3VO
4 5mmol・L
−1およびNaF 50mmol・L
−1)中において室温で1時間インキュベートした。さらに、前記メンブレンを、前記TBSウォッシングバッファーを使用して5分間、3回洗浄した。次に、前記メンブレンを、ブロッキングバッファー中で1:1000に希釈された抗ホスホ−p−44/42MAPK(Thr202/Tyr204)一次抗体(Cell Signaling Technology, Beverly, USA)と共にインキュベートした。前記TBSウォッシングバッファーで5分間、3回の洗浄の後、前記メンブレンを、ブロッキングバッファー中で1:12,000に希釈された、ペルオキシダーゼで標識されたウサギ二次抗体(Sigma, St. Louis, USA)と共に1時間インキュベートした。
【0182】
次に、前記メンブレンをTBSウォッシングバッファー中において5分間、3回洗浄し、引き続いてFemto溶液(Pierce SuperSignal, Thermo Fisher Scientific, Rockford, IL, USA)を塗布した。誘起された化学発光を、CCDカメラ(LAS 3000, Fuji Photo Film GmBH, Dusseldorf, Germany)によって検出した。
【0183】
リン酸化のレベルを評価するため、プログラムQuantitiy One(BioRad, Hercules, CA, USA)を用いたデンシメトリー分析が使用された。前記デンシメトリー分析の統計的有意性を決定するため、一元配置のNOVAおよび引き続くダネットのpost hoc検定を使用した。P値<0.05の場合、データを統計的有意であるとした。
【0184】
GPR10レセプターに対する結合親和力が高い(相対的に低いK
iの値によって示される)全てのペプチドを、アゴニストであるとした。阻害定数K
iの値は、K
dの値に4.21nmol.L
l−1±S.E.M.(当該S.E.M.は、飽和結合実験において求められた)、放射性リガンドの濃度に0.1nmol・L
−1を用いるCheng−Prussof式を使用して、IC
50から計算した。
【0185】
[実施例4:インビボ試験]
ラットおよびマウスの食欲、血中グルコース量およびその他の代謝パラメータへの、PrRP20、PrRP31、並びにそれらの脂質付加された類似体のインビボにおける効果を示すために、摂食試験およびグルコース負荷試験(GTT)を行った。その結果を、
図1〜5、表2の「マウスにおける摂食」の欄および表3〜4に要約する。
【0186】
NMRIマウス、C57BL/6マウスおよびウィスターラット(AnLab, Prague, Czech Republic)を、23℃の温度、並びに12hの明期および暗期の1日のサイクル(6:00から明期)にて飼育した。それらには、水を適宜与えるとともに、タンパク質、脂肪および炭水化物をそれぞれ25%、9%および66%含む標準的な食事を与えた。この餌のエネルギー含量は、3.4kcal/g(St-1, Mlyn Kocanda, Czech Republic)であった。db/dbマウスおよびその対照(C57BL/6バックグラウンド)をTaconic(Denmark)から入手し、上記と同様の条件下で飼育し、Altromin(Taconic, Denmark)を与えた。ZDF−Lepr
fa/Crl、オスの糖尿病fa/faラットをCharles River(France)から入手し、上記と同様の条件下で飼育し、Purina 5008 diet(IPS Product Supplies Limited, UK)を与えた。全ての実験は、動物実験のための倫理指針およびチェコ共和国Nr.246/1992の法律に従った。
【0187】
a)摂食実験
C57BL/6マウスまたはウィスターラットを用いた実験において、個々のケージ内で一晩絶食させた動物を用いて摂食を測定した。食物は、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体の注射の17時間前に回収した。水への自由なアクセスは維持した。生理食塩水、PrRP、または脂質付加された類似体のいずれかの投与を、1〜10mg/kgの用量(0.2mlの体積/マウスおよび0.1ml/ラットの体重100gに相当する)にてSC注射によって行った。プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体の投与の15分後、予め重さを量った食物をマウスに与えた。当該食物は、その後、5〜10時間、30分毎に重さを量った。各用量の投与は、少なくとも2回行われ、マウスの各グループは、少なくとも6匹のマウスからなった。その結果を、表2に示すように、生理食塩水を注射した対照群と比較した摂食の%にて評価した。脂質付加されていないPrRPを与えられた対照に比べて、スクランブルされていない(non-scrambled)プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体を投与された大部分のマウスでは、摂食が減少し、多くのケースで劇的に減少した。賦形剤を与えた対照に比べて、ペプチド43、48、52、53、54、55または57を与えたラットにおいて、摂食が有意に減少した。
【0188】
b)やせたマウスにおける類似体43の投与の、血中グルコースに対する効果
一晩絶食させた12週齢のオスのC57BL/6マウス(AnLab, Praha, Czech Republic)に対して、腹腔内グルコース負荷試験(IPGTT)を行った。初めの血中グルコース量(尾の静脈から採取)を測定し、その後、類似体43(5mg/kg SC)または生理食塩水をマウスに投与した(n=7)。15分後、2g/kgのグルコース溶液をIPにて投与した。その後、グルコース注射から15分、30分、60分、120分の時点で、グルコメーター(Glucocard, Arkray, Kyoto, Japan)を用いて血中グルコースを測定した。
【0189】
図1Aおよび1Bは、やせたマウスにおける、palm−PrRP31(類似体43)および対照の生理食塩水の急性投与後のIPGTT試験の結果を示す。IPGTTを、一晩絶食させたオスのC57BL/6マウスにおいて実施した。血中グルコース量を、開始時およびpalm−PrRP31(5mg/kg SC)または生理食塩水の皮下(SC−皮膚の下)投与後、30分、60分、90分および120分において、測定した(n=7)。
図1Aは、時間とともに血中グルコース量を示し、一方、
図1Bは、30分間の曲線下面積(AUC)を示す。グラフ中のエラーバーに関して、
*P<0.05であり、
**P<0.01である。生理食塩水の代わりに類似体43を与えられたマウスにおいては、IPGTTによるグルコース量が、特に実験の初期において低かった。曲線下総面積はまた、類似体43マウスにおいて明らかに低かった。
【0190】
c)肥満かつ糖尿病のグルタミン酸ナトリウム(MSG)マウスに対する類似体43の10日間反復投与の、血中グルコースに対する効果
肥満マウスを、MSGを用いて作製した。L−グルタミン酸ナトリウム水和物(Sigma, St. Louis, USA)を、肥満を誘導するために生後2〜8日から毎日、4mg/g体重の用量にて、新生仔雄マウスへ皮下(SC)投与した。実験に用いた、MSG処理したマウスは24週齢であった。年齢が関連したマウスを対照として用いた。肥満マウスと対照マウスとを別々のケージに入れて、食物および水に自由にアクセスできるようにした。次の週に、マウスは10日間の摂食実験を受けた。MSGマウスに、5mg/kgの用量の、生理食塩水または類似体43を、10日間1日に2度、SC注射し、これらのNMRIの対照には、生理食塩水を10日間1日に2度、注射した(n=10)。St−1食の消費およびマウスの体重を同時に追った。10日間の処理の後、マウスを一晩絶食させて、IPGTTを行った。初めの血中グルコースの測定後、2g/kgのグルコース溶液をIP投与した。その後、血中グルコースを、上述のように、注射後、15分、30分、60分、120分および180分において、測定した。
【0191】
図2Aおよび2Bは、肥満MSGマウスおよび対照NMRIマウスへ、palm−PrRP31(類似体43)を10日間投与した後のIPGTTの結果を表す。
図2Aは、結果のグルコース量を時間とともに示し、
図2Bは、180分間の曲線下面積(AUC)を比較している。IPGTT血中グルコース量は、特に初めの血中グルコースのピークが達成された後の試行の後半において、生理食塩水を投与したマウスよりも、類似体43を与えたマウスのほうが低かった。曲線下面積はまた、類似体43を受けたマウスにおいて実質的に低かった。
【0192】
d)糖尿病db/dbマウスに対する類似体43の14日間反復投与の、血中グルコースに対する効果
オスのdb/dbマウスおよびそのそれぞれの対照を、到着後、順応させ、ケージあたり2〜3匹のマウスを飼育し、11〜12週齢にて実験に用いた。マウスは、食物および水に自由にアクセスし、14日間の実験を受けた。db/dbマウスには、5mg/kgの用量の類似体43または対照の生理食塩水のいずれかを、14日間1日に2度、SC注射した(n=10)。マウスの体重を同時に追った。14日間の処置の後、マウスを一晩絶食させて、IPGTTを行った。初めの血中グルコースの測定後、2g/kgのグルコース溶液をIP投与し、グルコース量を7時間、毎時測定した。
【0193】
図3は、糖尿病db/dbマウスへ、palm−PrRP31(類似体43)または生理食塩水を14日間反復投与した後のIPGTTグルコース量を比較している。グルコース量は、実験の終了時(420分)に示されており、類似体43が投与された糖尿病マウスにおいて有意に低い。
【0194】
e)やせたラットに対する類似体43の急性投与の、血中グルコースに対する効果
一晩絶食させた14週齢のオスのウィスターラット(AnLab, Praha, Czech Republic)に対してIPGTTを行った。初めの血中グルコース量(尾の静脈から採取)を測定し、その後、類似体43(5mg/kg IP)または生理食塩水のいずれかをマウス(n=7)に投与した。15分後、2g/kgのグルコース溶液をIPにて投与した。その後、グルコース注射から15分、30分、60分および120分において、血中グルコースを測定した。
【0195】
図4は、ラットにおけるpalm−PrRP31の急性投与後のグルコース量を表す。IPGTTは、一晩絶食させたオスのウィスターラットに対して行われた。palm−PrRP31(類似体43)または生理食塩水のSC投与の初め、および投与後、時間とともに、血糖値を測定した。示されているように、生理食塩水ラットは、平均して血糖の大きなスパイクを経験しており、類似体43を与えたラットは、経験していない。
【0196】
f)糖尿病ZDFラットに対する類似体43および52の21日間反復投与の、摂食、血中グルコースおよび代謝パラメータに対する効果
pH6のリン酸緩衝生理食塩水中に溶解した賦形剤または類似体43および52(1mg/kgおよび5mg/kg IP)を用いて、21日間、毎日2回、ZDFラットを処置し、22日目に犠牲にした。摂食を、22日目まで測定した。レプチン、インスリン、コレステロールおよびHbAlcの量を21日目に測定した。グルコース負荷試験(OGTT)もまた、21日目に行った。
【0197】
表3は、0日目、7日目、14日目および21日目における、累積の摂食を示す。自由に餌を取ることができるZDF糖尿病ラットにおける摂食は、毎日2回、5mg/kgの用量の類似体43および52を用いた長期のIP処置後に、賦形剤を用いて処置した対照に比べて有意に低下した。
【0198】
表4は、21日目、実験の終了時での代謝パラメータを表す。血中コレステロール量は、毎日2回、1mg/kgおよび5mg/kgの用量の類似体43を用いた反復処置後に、対照に比べて有意に低下した。
【0199】
図5は、palm−PrRP31(類似体43)を21日間投与した後のOGTTの結果を示す。
図5Aは、グルコース量の結果を時間とともに示し、
図5Bは、180分間の曲線下面積(AUC)を比較している。上記結果は、毎日2回、5mg/kgの用量にて類似体43を反復投与すると、OGTT血糖値の有意な低下が引き起こされたことを示している。ラットは、21日間の摂食実験を受けた。pH6のリン酸緩衝生理食塩水(対照)、または化合物43もしくは52を、21日間、毎日2回、1mg/kgおよび5mg/kgの用量にてZDFラットにIP注射した(n=8)。21日間の処置後、ラットに一晩絶食させ、OGTTを行った。初めの血中グルコースを測定した後、2g/kgのグルコース溶液を経口補給によって投与した。その後、血中グルコースを、10分、30分、60分、90分、120分および180分において測定した。
図5Aは、グルコース量の変化(デルタグルコース)の結果を時間とともに示し、
図5Bは、180分間の曲線下面積(AUC)を示している。統計学的な有意性はアスタリスク(
*)によって示され、
*P<0.05である。
【0200】
[統計学的解析]
データは、方法および表に示した動物の数に対して平均値±SEM(標準誤差)として示す。生データは、Graph−Padソフトウェア(San Diego, CA, USA)を用いて、一元配置のANOVAの後、ダネットのpost hoc検定によって解析した。P<0.05であれば統計学的に有意であると考えた。曲線下面積(AUC)をまた、Graph−Padソフトウェアを用いて計算した。
【0217】
本明細書に記載のプロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体の原理の適用を示すために、本明細書に記載の特定の実施形態が詳細に示され、記載されているが、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体は、そのような原理から離れなければ、他に具現化され得ることが理解されるであろう。本明細書に記載のプロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体から離れなければ、数々の変化、変更および置換が、当業者によって理解されるであろう。本発明を実施する場合、本明細書に記載のプロラクチン放出ペプチド(PrRP)の脂質付加された類似体の特定の実施形態に対して様々な代わりのものが採用され得ることが理解されるべきである。請求項は発明の範囲を定義し、これにより、この請求項の範囲内の方法および構造、並びにそれらの同等物はカバーされていることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0218】
【
図1A】
図1Aは、やせたマウスにおける、palm−PrRP31(類似体43)および対照の生理食塩水の急性投与後の、腹腔内のグルコース負荷試験(IPGTT)の結果を示す。IPGTTを、一晩絶食させたオスのC57BL/6マウスにおいて実施した。血中グルコース量を、開始時およびpalm−PrRP31(類似体43)(5mg/kg SC)または生理食塩水の皮下(SC−皮膚の下)投与後、30分,60分,90分および120分において、測定した(n=7)。
図1Aは、時間とともにグルコース量を示す。
【
図1B】
図1Bは、やせたマウスにおける、palm−PrRP31(類似体43)および対照の生理食塩水の急性投与後の、腹腔内のグルコース負荷試験(IPGTT)の結果を示す。IPGTTを、一晩絶食させたオスのC57BL/6マウスにおいて実施した。血中グルコース量を、開始時およびpalm−PrRP31(類似体43)(5mg/kg SC)または生理食塩水の皮下(SC−皮膚の下)投与後、30分,60分,90分および120分において、測定した(n=7)。
図1Bは、30分間の曲線下面積(AUC)を示す。
【
図2A】
図2Aは、肥満かつ糖尿病のグルタミン酸ナトリウム(MSG)マウスに対する、palm−PrRP31(類似体43)の投与の10日後の、腹腔内の(IPGTT)結果を示す。マウスは、10日間の摂食実験を受けた。MSGマウスに、5mg/kgの用量の、生理食塩水またはpalm−PrRP31(類似体43)のいずれかを、10日間1日に2度、SC注射し、これらのNMRIの対照は、生理食塩水を10日間1日に2度、SC注射した(n=10)。処理の10日後、マウスを一晩絶食させ、IPGTTを実施した。初めの血中グルコースの測定後、2g/kgのグルコース溶液を腹腔内に投与した(IP)。その後、血中グルコースを、15分,30分,60分,120分および180分において、測定した。
図2Aは、結果のグルコース量を時間とともに示す。
【
図2B】
図2Bは、肥満かつ糖尿病のグルタミン酸ナトリウム(MSG)マウスに対する、palm−PrRP31(類似体43)の投与の10日後の、腹腔内の(IPGTT)結果を示す。マウスは、10日間の摂食実験を受けた。MSGマウスに、5mg/kgの用量の、生理食塩水またはpalm−PrRP31(類似体43)のいずれかを、10日間1日に2度、SC注射し、これらのNMRIの対照は、生理食塩水を10日間1日に2度、SC注射した(n=10)。処理の10日後、マウスを一晩絶食させ、IPGTTを実施した。初めの血中グルコースの測定後、2g/kgのグルコース溶液を腹腔内に投与した(IP)。その後、血中グルコースを、15分,30分,60分,120分および180分において、測定した。
図2Bは、180分間の曲線下面積(AUC)を示す。
【
図3】
図3は、糖尿病のdb/dbマウスに対する、palm−PrRP31(類似体43)または、対照として、生理食塩水の、反復投与の14日後のグルコース量の比較を示す。オスのdb/dbマウスに、5mg/kgの用量の、生理食塩水またはpalm−PrRP31(類似体43)のいずれかを、14日間1日に2度、SC注射した。その後、マウスを一晩絶食させ、IPGTTを実施した。初めの血中グルコースの測定後、2g/kgのグルコース溶解液をIP投与し、グルコースを、7時間の間、1時間ごとに追跡した。実験の終了時(420分)におけるグルコース量を示す。
【
図4】
図4は、ラットにおけるpalm−PrRP31(類似体43)の急性投与後のグルコース量のプロットを示す。IPGTTを、一晩絶食させたオスのウィスターラットにおいて実施した。血中グルコース量を、開始時、およびpalm−PrRP31(類似体43)(5mg/kg SC)または生理食塩水のSC投与後に、時間とともに測定した。
【
図5A】
図5Aは、糖尿病のZDFラットに対する、類似体43および類似体52の投与の21日後の、経口グルコース負荷試験(OGTT)の結果を示す。ラットは、21日間の摂食実験を受けた。ZDFラットは、1mg/kgおよび5mg/kgの用量の、リン酸緩衝生理食塩水pH6(対照)、または化合物43もしくは化合物52を、21日間1日に2度、IP注射した(n=8)。処理の21日後、ラットを一晩絶食させ、OGTTを実施した。初めの血中グルコースの測定後、2g/kgのグルコース溶液を経口補給によって投与した。その後、血中グルコースを、15分,30分,60分,90分,120分および180分において、測定した。
図5Aは、グルコース量における結果の変化(デルタグルコース)を時間とともに示す。
【
図5B】
図5Bは、糖尿病のZDFラットに対する、類似体43および類似体52の投与の21日後の、経口グルコース負荷試験(OGTT)の結果を示す。ラットは、21日間の摂食実験を受けた。ZDFラットは、1mg/kgおよび5mg/kgの用量の、リン酸緩衝生理食塩水pH6(対照)、または化合物43もしくは化合物52を、21日間1日に2度、IP注射した(n=8)。処理の21日後、ラットを一晩絶食させ、OGTTを実施した。初めの血中グルコースの測定後、2g/kgのグルコース溶液を経口補給によって投与した。その後、血中グルコースを、15分,30分,60分,90分,120分および180分において、測定した。
図5Bは、180分間の曲線下面積(AUC)を示す。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]