特許第6342034号(P6342034)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6342034スイング解析装置、スイング解析方法、およびスイング解析システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6342034
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】スイング解析装置、スイング解析方法、およびスイング解析システム
(51)【国際特許分類】
   A63B 69/36 20060101AFI20180604BHJP
   A63B 60/46 20150101ALI20180604BHJP
   A63B 60/42 20150101ALI20180604BHJP
【FI】
   A63B69/36 541P
   A63B60/46
   A63B60/42
【請求項の数】15
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2017-80592(P2017-80592)
(22)【出願日】2017年4月14日
【審査請求日】2018年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】金山 哲也
(72)【発明者】
【氏名】前中 健佑
【審査官】 谷垣 圭二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−196241(JP,A)
【文献】 特開2010−187749(JP,A)
【文献】 特表2014−519396(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0179454(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 69/36
A63B 60/42
A63B 60/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフクラブの使用者のスイングを解析するためのスイング解析装置であって、
前記ゴルフクラブのシャフトに取り付けられたセンサにより検出された加速度情報、角速度情報および前記シャフトの歪み情報の入力を受け付ける情報入力部と、
前記加速度情報および前記角速度情報に基づいて、スイング期間の前記ゴルフクラブの姿勢情報を算出する姿勢算出部と、
前記シャフトの歪み情報に基づいて、インパクト時における前記ゴルフクラブの姿勢情報を補正する補正部と、
前記補正部により補正された前記ゴルフクラブの姿勢情報をディスプレイに表示させる表示制御部とを備える、スイング解析装置。
【請求項2】
前記姿勢情報は、地面に対する前記ゴルフクラブのシャフトの角度を示すライ角を含み、
前記歪み情報は、前記シャフトのトウダウン方向の歪み量を含み、
前記補正部は、前記インパクト時における前記トウダウン方向の歪み量に基づいて、前記姿勢算出部により算出された前記インパクト時のライ角を補正する、請求項1に記載のスイング解析装置。
【請求項3】
前記補正部は、前記インパクト時における前記トウダウン方向の歪み量と、前記算出された前記インパクト時のライ角とを説明変数とし、前記インパクト時のライ角の実測値を目的変数として回帰分析を行なうことにより得られる第1回帰式を用いて、前記算出された前記インパクト時のライ角を補正する、請求項2に記載のスイング解析装置。
【請求項4】
前記姿勢情報は、地面に対して垂直な仮想面に対する前記シャフトの角度を示すシャフトリーン角をさらに含み、
前記歪み情報は、前記シャフトの打球方向の歪み量をさらに含み、
前記補正部は、前記インパクト時における前記打球方向の歪み量に基づいて、前記姿勢算出部により算出された前記インパクト時のシャフトリーン角を補正する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のスイング解析装置。
【請求項5】
前記補正部は、前記インパクト時における前記打球方向の歪み量と、前記算出された前記インパクト時のシャフトリーン角とを説明変数とし、前記インパクト時のシャフトリーン角の実測値を目的変数として回帰分析を行なうことにより得られる第2回帰式を用いて、前記算出された前記インパクト時のシャフトリーン角を補正する、請求項4に記載のスイング解析装置。
【請求項6】
前記角速度情報に基づく合成角速度が基準閾値に到達する第1時刻を算出し、前記第1時刻よりも第1の時間だけ過去の第2時刻から、前記第1時刻よりも第2の時間だけ過去の第3時刻までの期間を、前記使用者が静止している静止期間として算出する静止期間算出部をさらに備え、
前記姿勢算出部は、前記静止期間における前記加速度情報に基づいて、前記スイング期間の開始直前の前記使用者のアドレス時の姿勢情報を算出する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のスイング解析装置。
【請求項7】
前記ゴルフクラブのシャフトが地面と平行な面に設置された治具で固定された状態において、前記ゴルフクラブのライ角が所定角度に設定されている場合に前記姿勢算出部により算出されたライ角と、前記所定角度との差分を、前記ライ角のキャリブレーション値として格納し、前記ライ角が前記所定角度に設定されている場合に前記姿勢算出部により算出されたシャフトリーン角を、前記シャフトリーン角のキャリブレーション値として格納する情報格納部をさらに備える、請求項1〜6のいずれか1項に記載のスイング解析装置。
【請求項8】
予め用意された複数のゴルフクラブの中から使用者に適したゴルフクラブを提示する提示画面をディスプレイに表示させる表示制御部をさらに備え、
前記表示制御部は、前記予め用意された複数のゴルフクラブの各々について、当該ゴルフクラブにおける打球の左右方向への飛翔特性の指標となる第1指標値と、当該ゴルフクラブにおける打球の上下方向への飛翔特性の指標となる第2指標値とに基づく第1情報を前記提示画面に表示させ、
前記姿勢情報は、インパクト時における地面に対するスイング軌道の方向の角度を示すアタック角と、ターゲットライン方向に直交する仮想面に対する前記ゴルフクラブのフェース面の角度を示すフェース角から、スイング軌道の方向に対する前記ターゲットライン方向の成す角度を示す入射角を減算した相対フェース角とをさらに含み、
前記相対フェース角を含む第1パラメータに基づいて前記使用者に推奨する第1指標値を算出し、前記アタック角を含む第2パラメータに基づいて前記使用者に推奨する第2指標値を算出する推奨値算出部をさらに備え、
前記表示制御部は、前記推奨値算出部により算出された、前記使用者に推奨する第1指標値および前記使用者に推奨する第2指標値に基づく第2情報を前記提示画面にさらに表示させる、請求項1〜7のいずれか1項に記載のスイング解析装置。
【請求項9】
前記表示制御部は、前記姿勢算出部により算出された、前記アタック角および前記相対フェース角を示す第3情報を前記提示画面にさらに表示させる、請求項8に記載のスイング解析装置。
【請求項10】
前記加速度情報および前記角速度情報に基づいて、スイング期間の前記ゴルフクラブのヘッドスピードを算出するヘッドスピード算出部をさらに備え、
前記第1パラメータおよび前記第2パラメータは、前記インパクト時のヘッドスピードをさらに含む、請求項8または9に記載のスイング解析装置。
【請求項11】
前記使用者が前記ゴルフクラブを複数回スイングした場合に、前記ヘッドスピード算出部は、複数回における前記インパクト時のヘッドスピードの標準偏差をさらに算出し、
前記第1パラメータおよび前記第2パラメータは、前記標準偏差をさらに含む、請求項10に記載のスイング解析装置。
【請求項12】
前記表示制御部は、前記ゴルフクラブの予測飛距離と、前記ゴルフクラブの番手とは異なる番手のゴルフクラブの予測飛距離とを含む画面を前記ディスプレイに表示させる、請求項8〜11のいずれか1項に記載のスイング解析装置。
【請求項13】
前記表示制御部は、前記ゴルフクラブのタイプとは異なるタイプの他のゴルフクラブの予測飛距離を前記画面にさらに表示させ、
前記タイプは、アイアンタイプ、ウェッジタイプおよびユーティリティタイプのうち少なくとも2つを含む、請求項12に記載のスイング解析装置。
【請求項14】
ゴルフクラブの使用者のスイングを解析するためのスイング解析方法であって、
前記ゴルフクラブのシャフトに取り付けられたセンサにより検出された加速度情報、角速度情報および前記シャフトの歪み情報の入力を受け付けるステップと、
前記加速度情報および前記角速度情報に基づいて、スイング期間の前記ゴルフクラブの姿勢情報を算出するステップと、
前記シャフトの歪み情報に基づいて、インパクト時における前記ゴルフクラブの姿勢情報を補正するステップと、
前記補正された前記ゴルフクラブの姿勢情報を表示するステップとを含む、スイング解析方法。
【請求項15】
ゴルフクラブの使用者のスイングを解析するためのスイング解析システムであって、
前記ゴルフクラブのシャフトに取り付けられたセンサ装置と、
前記センサ装置により検出された情報に基づいて前記使用者のスイングを解析するためのスイング解析装置とを備え、
前記スイング解析装置は、
前記センサ装置により検出された加速度情報、角速度情報および前記シャフトの歪み情報の入力を受け付ける情報入力部と、
前記加速度情報および前記角速度情報に基づいて、スイング期間の前記ゴルフクラブの姿勢情報を算出する姿勢算出部と、
前記シャフトの歪み情報に基づいて、インパクト時における前記ゴルフクラブの姿勢情報を補正する補正部と、
前記補正部により補正された前記ゴルフクラブの姿勢情報をディスプレイに表示させる表示制御部とを含む、スイング解析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ゴルフクラブのスイングを解析するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフでは、スイング運動のリズムやフォームを改善することにより、競技力を向上できると考えられる。近年、ゴルフクラブに取り付けたセンサの出力データを用いて、被験者のスイングを解析し、解析結果を提示する技術が知られている。
【0003】
例えば、特開2014−240025号公報(特許文献1)は、スイング解析装置を開示している。スイング解析システムは、運動器具のスイングに対応したモーションセンサの出力データに基づいてスイング特徴情報を演算し、スイング特徴情報を選別する。スイング解析システムは、選別されたスイング特徴情報に基づき、基準として使用する基準スイング特徴情報を演算して記憶部に保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−240025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、加速度センサおよび角速度センサからのデータを用いてスイング軌跡、ヘッドスピード等のスイング特徴情報を算出する構成を開示している。ゴルフでは、インパクト時における、ゴルフクラブのヘッドの傾き、あるいは打撃面の角度等の差異がプレイの結果を大きく左右する。特許文献1に係る技術では、インパクト時における詳細なスイング分析については行われていないため、スイングの解析精度を向上させるという観点から改善の余地があると考えられる。
【0006】
本開示のある局面における目的は、ゴルフクラブのスイングを精度よく解析することが可能なスイング解析装置、スイング解析方法およびスイング解析システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある実施の形態に従うと、ゴルフクラブの使用者のスイングを解析するためのスイング解析装置が提供される。スイング解析装置は、ゴルフクラブのシャフトに取り付けられたセンサにより検出された加速度情報、角速度情報およびシャフトの歪み情報の入力を受け付ける情報入力部と、加速度情報および角速度情報に基づいて、スイング期間のゴルフクラブの姿勢情報を算出する姿勢算出部と、シャフトの歪み情報に基づいて、インパクト時におけるゴルフクラブの姿勢情報を補正する補正部と、補正部により補正されたゴルフクラブの姿勢情報をディスプレイに表示させる表示制御部とを備える。
【0008】
好ましくは、姿勢情報は、地面に対するゴルフクラブのシャフトの角度を示すライ角を含む。歪み情報は、シャフトのトウダウン方向の歪み量を含む。補正部は、インパクト時におけるトウダウン方向の歪み量に基づいて、姿勢算出部により算出されたインパクト時のライ角を補正する。
【0009】
好ましくは、補正部は、インパクト時におけるトウダウン方向の歪み量と、算出されたインパクト時のライ角とを説明変数とし、インパクト時のライ角の実測値を目的変数として回帰分析を行なうことにより得られる第1回帰式を用いて、算出されたインパクト時のライ角を補正する。
【0010】
好ましくは、姿勢情報は、地面に対して垂直な仮想面に対するシャフトの角度を示すシャフトリーン角をさらに含む。歪み情報は、シャフトの打球方向の歪み量をさらに含む。補正部は、インパクト時における打球方向の歪み量に基づいて、姿勢算出部により算出されたインパクト時のシャフトリーン角を補正する。
【0011】
好ましくは、補正部は、インパクト時における打球方向の歪み量と、算出されたインパクト時のシャフトリーン角とを説明変数とし、インパクト時のシャフトリーン角の実測値を目的変数として回帰分析を行なうことにより得られる第2回帰式を用いて、算出されたインパクト時のシャフトリーン角を補正する。
【0012】
好ましくは、スイング解析装置は、角速度情報に基づく合成角速度が基準閾値に到達する第1時刻を算出し、第1時刻よりも第1の時間だけ過去の第2時刻から、第1時刻よりも第2の時間だけ過去の第3時刻までの期間を、使用者が静止している静止期間として算出する静止期間算出部をさらに備える。姿勢算出部は、静止期間における加速度情報に基づいて、スイング期間の開始直前の使用者のアドレス時の姿勢情報を算出する。
【0013】
好ましくは、スイング解析装置は、ゴルフクラブのシャフトが地面と平行な面に設置された治具で固定された状態において、ゴルフクラブのライ角が所定角度に設定されている場合に姿勢算出部により算出されたライ角と、所定角度との差分を、ライ角のキャリブレーション値として格納し、ライ角が所定角度に設定されている場合に姿勢算出部により算出されたシャフトリーン角を、シャフトリーン角のキャリブレーション値として格納する情報格納部をさらに備える。
【0014】
好ましくは、スイング解析装置は、予め用意された複数のゴルフクラブの中から使用者に適したゴルフクラブを提示する提示画面をディスプレイに表示させる表示制御部をさらに備える。表示制御部は、予め用意された複数のゴルフクラブの各々について、当該ゴルフクラブにおける打球の左右方向への飛翔特性の指標となる第1指標値と、当該ゴルフクラブにおける打球の上下方向への飛翔特性の指標となる第2指標値とに基づく第1情報を提示画面に表示させる。姿勢情報は、インパクト時における地面に対するスイング軌道の方向の角度を示すアタック角と、ターゲットライン方向に直交する仮想面に対するゴルフクラブのフェース面の角度を示すフェース角から、スイング軌道の方向に対するターゲットライン方向の成す角度を示す入射角を減算した相対フェース角とをさらに含む。スイング解析装置は、相対フェース角を含む第1パラメータに基づいて使用者に推奨する第1指標値を算出し、アタック角を含む第2パラメータに基づいて使用者に推奨する第2指標値を算出する推奨値算出部をさらに備える。表示制御部は、推奨値算出部により算出された、使用者に推奨する第1指標値および使用者に推奨する第2指標値に基づく第2情報を提示画面にさらに表示させる。
【0015】
好ましくは、表示制御部は、姿勢算出部により算出された、アタック角および相対フェース角を示す第3情報を提示画面にさらに表示させる。
【0016】
好ましくは、スイング解析装置は、加速度情報および角速度情報に基づいて、スイング期間のゴルフクラブのヘッドスピードを算出するヘッドスピード算出部をさらに備える。第1パラメータおよび第2パラメータは、インパクト時のヘッドスピードをさらに含む。
【0017】
好ましくは、使用者がゴルフクラブを複数回スイングした場合に、ヘッドスピード算出部は、複数回におけるインパクト時のヘッドスピードの標準偏差をさらに算出する。第1パラメータおよび第2パラメータは、標準偏差をさらに含む。
【0018】
好ましくは、表示制御部は、ゴルフクラブの予測飛距離と、ゴルフクラブの番手とは異なる番手のゴルフクラブの予測飛距離とを含む画面をディスプレイに表示させる。
【0019】
好ましくは、表示制御部は、ゴルフクラブのタイプとは異なるタイプの他のゴルフクラブの予測飛距離を上記画面にさらに表示させる。当該タイプは、アイアンタイプ、ウェッジタイプおよびユーティリティタイプのうち少なくとも2つを含む。
【0020】
さらに他の実施の形態に従うと、ゴルフクラブの使用者のスイングを解析するためのスイング解析方法が提供される。スイング解析方法は、ゴルフクラブのシャフトに取り付けられたセンサにより検出された加速度情報、角速度情報およびシャフトの歪み情報の入力を受け付けるステップと、加速度情報および角速度情報に基づいて、スイング期間のゴルフクラブの姿勢情報を算出するステップと、シャフトの歪み情報に基づいて、インパクト時におけるゴルフクラブの姿勢情報を補正するステップと、補正されたゴルフクラブの姿勢情報を表示するステップとを含む。
【0021】
さらに他の実施の形態に従うと、ゴルフクラブの使用者のスイングを解析するためのスイング解析システムが提供される。スイング解析システムは、ゴルフクラブのシャフトに取り付けられたセンサ装置と、センサ装置により検出された情報に基づいて使用者のスイングを解析するためのスイング解析装置とを備える。スイング解析装置は、センサ装置により検出された加速度情報、角速度情報およびシャフトの歪み情報の入力を受け付ける情報入力部と、加速度情報および角速度情報に基づいて、スイング期間のゴルフクラブの姿勢情報を算出する姿勢算出部と、シャフトの歪み情報に基づいて、インパクト時におけるゴルフクラブの姿勢情報を補正する補正部と、補正部により補正されたゴルフクラブの姿勢情報をディスプレイに表示させる表示制御部とを含む。
【発明の効果】
【0022】
本開示によると、ゴルフクラブのスイングを精度よく解析することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】スイング解析システムの全体構成を説明するための図である。
図2】スイング解析装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】センサ装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】ローカル座標系およびグローバル座標系を説明するための図である。
図5】歪ゲージの配置状態を模式的に示す平面図である。
図6】ゴルファが打球する直前の様子を打球方向から見た模式図である。
図7】ゴルファが打球する直前の様子を側方から見た模式図である。
図8】スイング解析システムの動作概要を説明するためのフローチャートである。
図9】ライ角、アタック角、シャフトリーン角、フェース角およびスイングパス(入射角)を説明するための図である。
図10】キャリブレーション設定画面の一例を示す図である。
図11】キャリブレーションの確認画面の一例を示す図である。
図12】静止検出方式を説明するための図である。
図13】回帰分析により求めた重回帰式の妥当性を説明するための図である。
図14】トップ画面の一例を示す図である。
図15】各種情報の入力画面の一例を示す図である。
図16】測定画面の一例を示す図である。
図17】アイアンシャフト推奨画面の一例を示す図である。
図18】アイアンヘッド推奨画面の一例を示す図である。
図19】アイアンヘッド推奨画面の一例を示す図である。
図20】アイアンヘッド推奨画面の一例を示す図である。
図21】アイアンヘッド選択画面の一例を示す図である。
図22】選択したアイアンの確認画面の一例を示す図である。
図23】ウェッジヘッド選択画面の一例を示す図である。
図24】ウェッジヘッド選択画面の他の例を示す図である。
図25】ユーティリティヘッド選択画面の一例を示す図である。
図26】スイング解析装置の機能ブロック図である。
図27】センサ装置の外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0025】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。
【0026】
<システムの構成>
(全体構成)
図1は、スイング解析システムの全体構成を説明するための図である。図1を参照して、スイング解析システム1000は、ゴルフクラブの使用者のスイングを解析して解析結果を使用者に提示する。スイング解析システム1000は、解析結果に基づいて、使用者に適したゴルフクラブを示す情報を提示する。具体的には、スイング解析システム1000は、スイング解析装置10と、センサ装置20とを含む。
【0027】
ゴルフクラブ50は、シャフト52と、シャフト52の一端に設けられたヘッドと、シャフト52の他端に設けられたグリップとを含む。ゴルフクラブ50は、使用者自身が用意したもの、他の者が用意したもの等、いずれのゴルフクラブであってもよい。
【0028】
スイング解析装置10は、スマートフォンで構成される。ただし、スイング解析装置10は、種類を問わず任意の装置として実現できる。たとえば、スイング解析装置10は、ノートPC(personal Computer)、タブレット端末、PDA(Personal Digital Assistance)、デスクトップPCなどの機器であってもよい。
【0029】
スイング解析装置10は、Bluetooth(登録商標)、無線LAN(Local Area Network)、赤外線通信などの無線通信を利用してセンサ装置20と通信する。なお、スイング解析装置10は、USB(Universal Serial Bus)などの有線通信を利用してセンサ装置20と通信可能に構成されていてもよい。
【0030】
センサ装置20は、グリップの上端部から、例えば、約12インチ〜15インチに位置する部分にセンサ装置20の重心が位置するようにシャフト52に装着される。ゴルフクラブ50は、グリップの端部から、例えば、14インチのところで重量バランスがとれており、この部分に重り等を装着してもゴルフクラブ50全体の重量バランスに大きな影響がない。このため、上記の位置にセンサ装置20を装着することで、センサ装置20が装着される前後において、ゴルフクラブ50の特性が大きく変化することが抑制される。
【0031】
センサ装置20は、加速度センサと、角速度センサと、歪センサとを含む。センサ装置20は、各センサにより検出されたセンサデータ、およびセンサデータに基づく演算結果等をスイング解析装置10に送信する。スイング解析装置10は、センサ装置20から各種情報を受信して、被験者のスイング解析等の各種処理を実行する。
【0032】
(ハードウェア構成)
図2は、スイング解析装置のハードウェア構成を示すブロック図である。図2を参照して、スイング解析装置10は、主たる構成要素として、プロセッサ102と、メモリ104と、タッチパネル106と、ボタン108と、ディスプレイ110と、無線通信部112と、通信アンテナ113と、メモリインターフェイス(I/F)114と、スピーカ116と、マイク118と、通信インターフェイス(I/F)120とを含む。また、記録媒体115は、外部の記憶媒体である。
【0033】
プロセッサ102は、典型的には、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Multi Processing Unit)といった演算処理部である。プロセッサ102は、メモリ104に記憶されたプログラムを読み出して実行することで、スイング解析装置10の各部の動作を制御する。より詳細にはプロセッサ102は、当該プログラムを実行することによって、後述するスイング解析装置10の処理(ステップ)の各々を実現する。
【0034】
メモリ104は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read-Only Memory)、フラッシュメモリなどによって実現される。メモリ104は、プロセッサ102によって実行されるプログラム、またはプロセッサ102によって用いられるデータなどを記憶する。
【0035】
タッチパネル106は、表示部としての機能を有するディスプレイ110上に設けられており、抵抗膜方式、静電容量方式などのいずれのタイプであってもよい。ボタン108は、スイング解析装置10の表面に配置されており、ユーザからの指示を受け付けて、プロセッサ102に当該指示を入力する。
【0036】
無線通信部112は、通信アンテナ113を介して移動体通信網に接続し無線通信のための信号を送受信する。これにより、スイング解析装置10は、例えば、LTE(Long Term Evolution)などの移動体通信網を介して所定の外部装置との通信が可能となる。
【0037】
メモリインターフェイス(I/F)114は、外部の記録媒体115からデータを読み出す。すなわち、プロセッサ102は、メモリインターフェイス114を介して外部の記録媒体115に格納されているデータを読み出して、当該データをメモリ104に格納する。プロセッサ102は、メモリ104からデータを読み出して、メモリインターフェイス114を介して当該データを外部の記録媒体115に格納する。
【0038】
記録媒体115としては、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disk)、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリ、メモリカード、FD(Flexible Disk)、ハードディスクなどの不揮発的にプログラムを格納する媒体が挙げられる。
【0039】
スピーカ116は、プロセッサ102からの命令に基づいて音声を出力する。マイク118は、スイング解析装置10に対する発話を受け付ける。
【0040】
通信インターフェイス(I/F)120は、例えば、スイング解析装置10とセンサ装置20との間でデータを送受信するための通信インターフェイスであり、アダプタやコネクタなどによって実現される。通信方式としては、例えば、Bluetooth(登録商標)、無線LANなどによる無線通信あるいはUSBを利用した有線通信である。
【0041】
図3は、センサ装置20のハードウェア構成を示すブロック図である。図3を参照して、センサ装置20は、主たる構成要素として、各種処理を実行するためのプロセッサ202と、プロセッサ202によって実行されるプログラム、データなどを格納するためのメモリ204と、加速度センサ206と、角速度センサ208と、歪センサ210と、スイング解析装置10と通信するための通信インターフェイス(I/F)212と、センサ装置20の各種構成要素に電力を供給する蓄電池214と、LED(light emitting diode)216とを含む。
【0042】
加速度センサ206は、互いに直交する3軸方向の加速度(以下「加速度情報」とも称する。)を検出する。角速度センサ208は、互いに直交する3軸まわりの角速度(以下「角速度情報」とも称する。)を検出する。
【0043】
図4は、ローカル座標系およびグローバル座標系を説明するための図である。図4を参照して、センサ座標系(ローカル座標系)におけるx軸はシャフト52の長手方向に設定され、y軸およびz軸はそれぞれ任意に設定される。絶対座標系(グローバル座標系)におけるZ軸は鉛直方向に設定され、Y軸は使用者のスイング方向に設定され、X軸はY軸およびZ軸の垂直方向に設定される。
【0044】
歪センサ210は、シャフト52の打球方向およびトウダウン方向の各歪み量(以下、「歪み情報」とも称する。)を検出する。具体的には、歪センサ210は、シャフト52に装着された2つの歪ゲージ(打球方向用歪みゲージ)および歪ゲージ(トウダウン用歪みゲージ)を含む。
【0045】
図5は、歪ゲージの配置状態を模式的に示す平面図である。具体的には、図5には、シャフト202の軸方向から平面視した平面図が示されており、歪ゲージ220と、歪ゲージ221との配置状態を模式的に示している。図5を参照して、歪ゲージ220は、シャフト52の周面のうち、打球方向(Ex方向)に対して垂直となる部分に配置され、歪ゲージ221は、この打球方向と直交する方向(Ey方向)に対して垂直となる部分に貼付されている。
【0046】
歪ゲージ220および歪ゲージ221は、例えば、グリップ側端部から約12インチ〜15インチの位置、特に、グリップ側端部から約14インチの位置に設けられる。また、歪ゲージ220と、歪ゲージ221とは、シャフト52の周方向に90度離れるように設けられている。
【0047】
図6は、ゴルファが打球する直前の様子を打球方向から見た模式図である。図7は、ゴルファが打球する直前の様子を側方から見た模式図である。図6を参照して、ゴルフクラブ50のスイング中、ゴルフクラブ50が振り下ろされた際に、シャフト52の中心軸線Pからシャフト52の先端およびヘッドが遠心力によって、地面方向に垂れ下がる。この垂れ下がる方向(Ey方向)を「トウダウン方向」とする。歪ゲージ221は、シャフト52のうち歪ゲージ221が装着された位置のEy方向の(トウダウン方向)の歪みを測定する。図5および図7を参照して、歪ゲージ220は、シャフト52のうち、歪ゲージ220が装着された位置のEx方向(打球方向)の歪みを測定する。
【0048】
<システムの動作概要>
図8は、スイング解析システム1000の動作概要を説明するためのフローチャートである。ここでは、図1に示すように、使用者が地面に置かれたボールをゴルフクラブ50で打撃する場面を想定する。使用者がスイングするゴルフクラブ50は、例えば、7番アイアンである。なお、ゴルフクラブ50は、6番アイアン等の他の番手であってもよいし、ウッドであってもよい。スイング解析装置10およびセンサ装置20は、互いに通信可能な状態であるとする。
【0049】
図8を参照して、ゴルフクラブ50のシャフト52に取り付けられたセンサ装置20は、加速度情報、角速度情報および歪み情報を時系列に検出する(ステップS100)。具体的には、センサ装置20は、サンプリング周期(例えば、1ms)ごとにセンサ座標系(ローカル座標系)における加速度情報および角速度情報と、歪み情報とを検出する。センサ装置20は、検出した加速度情報、角速度情報および歪み情報をスイング解析装置10に送信する(ステップS110)。
【0050】
スイング解析装置10は、センサ装置20から取得した加速度情報および角速度情報に基づいて、スイング期間におけるゴルフクラブ50のヘッドスピードおよび姿勢情報を算出する(ステップS120)。具体的には、スイング解析装置10は、インパクト時(すなわち、打球時)におけるゴルフクラブ50のヘッドの姿勢角を算出する。姿勢角は、インパクト時におけるライ角、アタック角、シャフトリーン角、およびフェース角(より詳細には、後述する相対フェース角)を含む。なお、本願明細書において、「インパクト時」とは、インパクトと同時またはインパクト時刻から所定の時間(例えば、1/1000秒程度)だけ前の時点を意味する。
【0051】
図9は、ライ角、アタック角、シャフトリーン角、フェース角およびスイングパス(入射角)を説明するための図である。図9では、地面(例えば、水平面)上の一方の軸をBx軸、Bx軸に垂直な地面上の他方の軸をBy軸、Bx軸およびBy軸に垂直な方向をBz軸とする座標系を定義する。地面に対し垂直方向から見たときの方向(−Bz方向)を平面視と称する。また、Bx軸をターゲットライン方向と定義する。ターゲットライン方向は、例えば、平面視における打球の目標方向である。具体的には、図9(a)は、インパクト時のライ角を示す図である。図9(b)は、インパクト時のアタック角およびシャフトリーン角を示す図である。図9(c)は、インパクト時のフェース角およびスイングパスを示す図である。
【0052】
図9(a)を参照して、インパクト時のライ角は、地面(図中のBxBy平面)に対する、ゴルフクラブ50のシャフト52(具体的には、シャフトセンターライン)の角度θ1として定義される。
【0053】
図9(b)を参照して、インパクト時のアタック角は、地面に対して垂直な仮想垂直面(図中のBxBz平面)に投影された、ゴルフクラブ50のヘッドのスイング軌跡に接するインパクト時の接線方向(スイングライン方向)と、当該仮想垂直面に投影されたターゲットライン方向とが成す角度θ2として定義される。換言すると、インパクト時のアタック角θ2は、インパクト時における地面に対するスイング軌道の方向の角度である。本実施の形態では、スイングラインの傾きが負の値の場合(図9(b)に示す場合)にはアタック角θ2が負の値、スイングラインの傾きが正の値の場合にはアタック角θ2が正の値とする。具体的には、ヘッドがボールに対して斜め下方向に入射するダウンブローの場合にはアタック角θ2<0°であり、ヘッドがボールに対して水平に入射するレベルブローの場合にはアタック角θ2=0°であり、ヘッドがボールに対して斜め上方向に入射するアッパーブローの場合にはアタック角θ2>0°である。
【0054】
図9(b)を参照して、インパクト時のシャフトリーン角は、ターゲットライン方向に垂直な仮想面J1に対するシャフト52の角度θ3として定義される。換言すると、インパクト時のシャフトリーン角θ3は、インパクト時における地面に対して垂直な仮想面J1に対するシャフト52の角度である。本実施の形態では、シャフトセンターラインの傾きが正の値の場合(図9(b)に示す場合)にはシャフトリーン角θ3が負の値、シャフトセンターラインの傾きが負の値の場合にはシャフトリーン角θ3が正の値とする。
【0055】
図9(c)を参照して、インパクト時のフェース角は、ターゲットライン方向に直交する仮想面J2に対するゴルフクラブ50のフェース面の角度θ4として定義される。本実施の形態では、フェース面の傾きが正の値の場合(図9(c)に示す場合)にはフェース角θ4が正の値、フェース面の傾きが負の値の場合にはフェース角θ4が負の値とする。
【0056】
インパクト時のスイングパス(入射角)は、スイングライン方向に対するターゲットライン方向との成す角度θ5として定義される。本実施の形態では、スイングライン方向の傾きが正の値の場合(図9(c)に示す場合)にはスイングパスθ5が負の値、スイングライン方向の傾きが負の値の場合にはスイングパスθ5が正の値とする。
【0057】
フェース角θ4は、ヘッドの打撃点への入射方向(スイングライン方向)と関係なく向きが固定されているターゲットライン方向を基準とするフェース面の傾きを表わしている。一方、スイングライン方向を基準としたフェース面の傾きを表わす相対的なフェース角(以下、「相対フェース角」とも称する。)は、フェース角θ4からスイングパスθ5を減算した角度である。なお、相対フェース角は、フェーストゥパス角とも呼ばれる。
【0058】
再び、図8を参照して、スイング解析装置10は、歪み情報に基づいて、ゴルフクラブ50の姿勢情報(姿勢角)を補正する(ステップS130)。具体的には、スイング解析装置10は、予め定められた式および歪み情報を用いて、ステップS120で算出した姿勢角のうちのライ角およびアタック角を補正する。詳細は後述するが、ステップS130の処理は、インパクト時におけるシャフト52の歪みを考慮することにより、インパクト時におけるライ角およびアタック角を精度よく算出するための処理である。
【0059】
スイング解析装置10は、補正したライ角およびアタック角を含む姿勢角およびその他の解析情報(例えば、スイングテンポ等)を含むスイング解析情報をディスプレイ110に表示する(ステップS140)。スイング解析装置10は、タッチパネル106を介してユーザからの指示を受け付けて、ゴルファに適したゴルフクラブをフィッティングするための画面を順次表示する(ステップS150)。
【0060】
<各処理の詳細>
以下、スイング解析システム1000で実行される各処理の詳細について説明する。
【0061】
(キャリブレーション)
上述したように、センサ装置20は、ゴルフクラブ50のシャフト52に取り付けられる。センサ装置20を取り付けたゴルフクラブ50は、ゴルフ店等に提供され、ゴルフ店に来店した顧客のスイング解析等に用いられる。
【0062】
図4で説明したように、センサ装置20は、センサ座標のx軸がシャフト52の長手方向に設定されるようにシャフト52に取り付けられる。しかし、センサ装置20の取り付け方等によっては、センサ座標のx軸方向と、シャフト52の長手方向との間に差分が生じている可能性もある。この場合、スイング解析装置10により算出される各種の姿勢角は、当該差分に相当する角度だけ誤差が生じる。
【0063】
そこで、本実施の形態に係るスイング解析システム1000では、個体差によるスイング解析性能のばらつきを抑制するためのキャリブレーションを実行可能に構成されている。センサ装置20を取り付けたゴルフクラブ50を固定した状態で、上記差分に相当するキャリブレーション値が算出される。ここでは、キャリブレーション設定の実行者は、ゴルフクラブの購入を顧客(ここでは、ゴルフクラブ50を使用するゴルファ)へ促す者(以下、単に「フィッター」と称す。)であると仮定する。なお、キャリブレーション設定は、センサ装置20付きのゴルフクラブ50がゴルフ店等へ提供される前に実行されてもよい。
【0064】
図10は、キャリブレーション設定画面の一例を示す図である。図11は、キャリブレーションの確認画面の一例を示す図である。スイング解析装置10は、その他のメニュー画面(図示しない)に含まれるキャリブレーション設定ボタンの選択を受け付けると、図9に示すようなキャリブレーション設定画面1100を表示する。
【0065】
図10を参照して、キャリブレーション設定画面1100に表示された指示に従って、フィッターは、センサ装置20を取り付けたゴルフクラブ50を地面と平行な面に設置された治具であるクラブ計測器に固定する。例えば、ゴルフクラブ50として6番アイアンを選択した場合には、ゴルフクラブ50のライ角を61度に合わせた状態でクラブ計測器に固定する。ゴルフクラブ50として7番アイアンを選択した場合には、ゴルフクラブ50のライ角を61.5度に合わせた状態でクラブ計測器に固定する。クラブ計測器としては、ゴルフクラブヘッドの寸法測定に用いられる公知の測定器(例えば、ゴルフクラブゲージ、ゴルフクラブアングル測定器)等が用いられる。
【0066】
フィッターは、領域1108に表示されている「x」、「y」および「z」が0であることを確認する。「x」、「y」および「z」は、それぞれ、センサ座標系のx軸方向の加速度、y軸方向の加速度およびz軸方向の加速度を示している。これらが0でない場合にはクリアボタン1104を選択し、3軸方向の加速度を0にする。
【0067】
領域1110に表示されている「H_LIE」は、ライ角に関するキャリブレーション値であり、「H_SL」はシャフトリーン角に関するキャリブレーション値である。これらのキャリブレーション値H_SL,H_LIEは、センサ装置20のメモリ204に保存されるように構成されている。スイング解析装置10は、センサ装置20との通信確立時に、キャリブレーション値を読み込む(受信する)ことにより、読み込んだキャリブレーション値を領域1110に表示する。例えば、キャリブレーション値H_SLの初期値は0であり、キャリブレーション値H_LIEの初期値は−1.0である。
【0068】
次に、フィッターは、ゴルフクラブ50を静止させた状態で、キャリブレーションボタン1102を選択する。スイング解析装置10は、キャリブレーションボタン1102の選択を受け付けると、センサ装置20から取得した3軸方向の加速度を領域1108に表示する。スイング解析装置10は、キャリブレーションボタン1102の選択を再度受け付けると、領域1108の表示値をセンサ装置20から再取得した3軸方向の加速度に更新する。
【0069】
スイング解析装置10は、平均化ボタン1106の選択を受け付けると、複数回の加速度データを平均化し、当該平均値に基づいて、ライ角およびシャフトリーン角を算出する。ライ角およびシャフトリーン角の算出方式については後述する。スイング解析装置10は、算出したライ角C_LIEおよびシャフトリーン角C_SLを用いてキャリブレーション値を算出する。
【0070】
例えば、ゴルフクラブ50が7番アイアンである場合には、ゴルフクラブ50のライ角を61.5度に合わせた状態でクラブ計測器に固定されている。そのため、H_LIE=61.5−C_LIEが成立する。また、H_SL=0−C_SLである。
【0071】
スイング解析装置10は、キャリブレーション値を算出すると、キャリブレーション設定画面1100の中央付近に、図11に示す確認画面1150をポップアップ表示する。確認画面1150には、キャリブレーション値H_SL,H_LIEが表示されるとともに、フィッターに当該キャリブレーション値の上書きの確認を促す情報が表示される。
【0072】
スイング解析装置10は、YESボタン1152の選択を受け付けると、キャリブレーション値H_SL,H_LIEを内部メモリに記憶するようにセンサ装置20に指示する。センサ装置20は、当該キャリブレーション値をメモリ204に上書き保存する。
【0073】
スイング解析装置10は、NOボタン1154の選択を受け付けると、算出した複数回の加速度データの平均値をキャンセルする。この場合、キャリブレーション値H_SL,H_LIEは、センサ装置20に保存されない。
【0074】
スイング解析装置10は、リセットボタン1156の選択を受け付けると、キャリブレーション値H_SL,H_LIEを初期値に設定するようにセンサ装置20に指示する。センサ装置20は、キャリブレーション値の初期値をメモリ204に上書き保存する。
【0075】
なお、スイング解析装置10は、キャリブレーション値H_SL,H_LIEの少なくとも一方が所定範囲(例えば、−5度以上〜+5度以下の範囲)に収まっていない場合には、キャリブレーション値が異常であることを示す警告画面を表示してもよい。この場合、キャリブレーション値H_SL,H_LIEは、センサ装置20に上書き保存されない。
【0076】
スイング解析装置10は、センサ装置20との通信確立時に、上記のように設定されたキャリブレーション値を読み込み、当該キャリブレーション値に基づいて姿勢角情報を補正する。そのため、個体差によるスイング解析性能のばらつきを抑制することができる。
【0077】
(静止検出)
ここでは、スイング直前の静止状態の検出方式について説明する。使用者がゴルフクラブをスイングする際には、概ね以下のような手順で行なわれる。具体的には、使用者は、ゴルフクラブを握り、アドレスの姿勢をとった後、スイング動作を行なって、ゴルフボールを打球する。
【0078】
スイング解析装置10は、センサ装置20から取得したセンサデータ(例えば、加速度情報および角速度情報)に基づいて、時系列にスイング解析情報を算出する。例えば、スイングの準備中(例えば、ワッグル動作中)をスイング開始時点に設定すると、積分誤差等が蓄積されて適切なスイング解析情報が得られない可能性があるため、スイング直前の静止状態(すなわち、スイング開始時点)を精度よく検出する必要がある。
【0079】
図12は、静止検出方式を説明するための図である。図12における横軸は時刻T(s)を示しており、縦軸は、互いに直交する3軸まわり(センサ座標系)の角速度(deg/s)および合成角速度を示している。
【0080】
図12に示すグラフには、使用者がゴルフクラブ50をスイングしてボールを打撃したときの角速度情報が示されている。スイング解析装置10は、インパクト時刻から所定時間(例えば、0.5秒)だけ前の時刻から時間を遡って、合成角速度Wが基準閾値Th(例えば、20deg/s)未満になる時刻t1を算出する。
【0081】
x軸まわりの角速度ωx、y軸まわりの角速度ωy、z軸まわりの角速度ωzとすると、合成角速度Wは以下の式(1)で表される。
【0082】
【数1】
【0083】
次に、インパクト時刻について説明する。インパクト時にはセンサ装置20の加速度センサ206の信号がボールを打った衝撃によって過渡応答するため、加速度が急激に変化する。そこで、スイング解析装置10は、合成加速度ACの単位時間当たりの変化量が閾値(例えば、500)以上になった時刻をインパクト時刻として算出する。
【0084】
x軸方向の加速度ax、y軸方向の加速度ay、z軸方向の加速度azとすると、合成加速度ACは以下の式(2)で表される。
【0085】
【数2】
【0086】
スイング解析装置10は、算出した時刻t1よりも時間Ta(例えば、0.2秒)だけ過去の時刻t2から、時刻t1よりも時間Tb(例えば、−0.1秒)だけ過去の時刻t3までの期間Tcを、使用者が静止している期間(静止期間)として算出する。
【0087】
(姿勢角の算出)
スイング解析装置10は、加速度情報および角速度情報に基づいて、センサ装置20の姿勢情報を算出する。ここで、センサ装置20の姿勢情報である方向余弦行列Rqは以下の式(3)のように表わされる。
【0088】
【数3】
【0089】
図4に示すように、センサ座標系(ローカル座標系)におけるx軸はシャフト52の長手方向に設定されている。そのため、センサ装置20の姿勢情報(すなわち、方向余弦行列Rq)を用いてゴルフクラブ50の姿勢角を算出できる。具体的には、方向余弦行列Rqの各成分を用いて、ゴルフクラブ50のライ角A_LIE、シャフトリーン角A_SL、およびフェース角A_FAは、それぞれ以下の式(4)、式(5)および式(6)のように表わされる。
【0090】
【数4】
【0091】
スイング解析装置10(のプロセッサ102)は、静止期間Tcにおける時系列の加速度情報(3軸方向の加速度)を平均化し、当該平均化された加速度情報に基づいて、センサ装置20の初期姿勢である方向余弦行列Rq0を算出する。プロセッサ102は、方向余弦行列Rq0および上述した式(4)〜(6)を用いて、ライ角A_LIE、シャフトリーン角A_SL、およびフェース角A_FAの初期値(すなわち、初期姿勢角)を算出する。プロセッサ102は、図12中の時刻t3をスイング開始時刻に設定する。
【0092】
プロセッサ102は、スイング開始時刻からインパクト時までのスイング期間における方向余弦行列Rqを時系列に算出する。概ね以下のような流れで方向余弦行列Rqが時系列に算出される。
【0093】
センサ座標系の加速度情報が、方向余弦行列Rqを用いてグローバル座標系の加速度情報(加速度ベクトル)に変換される。続いて、センサ装置20からゴルフクラブ50のヘッド中心へのベクトルr(センサ座標系)が、方向余弦行列Rqを用いてグローバル座標系に変換される。
【0094】
次に、3軸周りの角速度に基づいて、センサ座標系の回転単位ベクトルuおよび単位当たりの回転角αが算出される。方向余弦行列Rqを用いてセンサ座標系の回転単位ベクトルuがグローバル座標系に変換され、グローバル座標系に変換された回転単位ベクトルugおよび回転角αを用いて、グローバル座標系の角速度ベクトルωgが算出される。
【0095】
次に、回転単位ベクトルugにロドリゲスの回転公式を用いて、変換行列Rが求められる。そして、変換行列Rを用いて方向余弦行列Rqを回転させた方向余弦行列Rq1が算出される。方向余弦行列Rq1を用いて、上述した処理が繰り返される。これにより、方向余弦行列Rqが時系列に算出される。
【0096】
一方、プロセッサ102は、グローバル座標系の加速度情報(加速度ベクトル)を時間積分して、グローバル座標系のセンサ装置20の速度情報(速度ベクトルV)を算出する。プロセッサ102は、グローバル座標系の速度ベクトルV、角速度ベクトルωg、およびセンサ装置20からヘッド中心へのベクトルrとに基づいて、ヘッド速度ベクトルVhを算出する。ヘッド速度ベクトルVhのX成分、Y成分およびZ成分をVhx、Vhy、Vhzとすると、ヘッドスピードVhsは、以下の式(7)で表される。
【0097】
【数5】
【0098】
速度ベクトルVの各成分を用いて、ゴルフクラブ50のアタック角A_AT、スイングパスSWPは、それぞれ以下の式(8)、式(9)のように表わされる。
【0099】
【数6】
【0100】
そして、インパクト時の方向余弦行列Rqiと、式(4)および(5)とに基づいて、インパクト時のライ角Lc、シャフトリーン角SLc、フェース角FAcが算出される。インパクト時の速度ベクトルVと、式(8)および(9)とに基づいて、インパクト時のアタック角ATc、スイングパスSWcが算出される。インパクト時の相対フェース角Frcは、フェース角FAcからスイングパスSWcを減算した値に相当する。
【0101】
(姿勢角の補正)
上述のように算出された姿勢角を歪み情報を用いて補正する方式について説明する。図6および図7に示すように、ゴルフクラブが振り下ろされたインパクト時においては、シャフト52のトウダウン方向Eyおよび打球方向Exに歪みが生じる。
【0102】
上述した方式により算出された姿勢角は、ゴルフクラブ50のヘッドがシャフト52の中心軸線Pに沿った位置にあると仮定して求められている。そのため、当該算出された姿勢角は、インパクト時における実際の姿勢角とは多少の誤差が存在すると考えられる。そこで、本実施の形態に係るスイング解析装置10は、歪み情報を用いて当該算出された姿勢角を補正する。
【0103】
本願発明者が鋭意検討した結果、姿勢角のうちのライ角(図9中のθ1に対応する角度)およびシャフトリーン角(図9中のθ3に対応する角度)がシャフト52の歪みの影響を大きく受けることが判明した。具体的には、18名のゴルファに合計42球試打してもらい、ライ角およびシャフトリーン角の実測値と歪み量との関係性が評価された。
【0104】
本願発明者は、この評価から鋭意検討したところ、シャフト52のトウダウン方向Eyの歪み量が、ライ角の実測値に対して特に相関が高いことを見出した。また、本願発明者は、シャフト52の打球方向Exの歪み量、フェース角、およびスイングパスが、シャフトリーン角の実測値に対して特に相関が高いことを見出した。
【0105】
そこで、本願発明者は、上記知見に基づき、上述した方式により算出されたインパクト時のライ角Lcと、インパクト時のトウダウン方向Eyの歪み量Dyとを説明変数とし、インパクト時のライ角の実測値を目的変数として重回帰分析を行なった。この結果算出された回帰式は式(10)のように表される。a0,a1,a2は重回帰係数である。ライ角Laは、目的変数の計算値である。
【0106】
【数7】
【0107】
式(10)を用いることにより、インパクト時のライ角Lcと、インパクト時のトウダウン方向Eyの歪み量Dyとに基づいて、目的変数(すなわち、実測されたライ角)の計算値であるライ角Laを求めることができる。したがって、ライ角Lcを実測値により近づけるような補正を行なうことができる。以下、ライ角Lcを式(10)を用いて補正した値であるライ角Laを、ライ角の補正値と称する場合がある。式(10)に示す重回帰式の妥当性は、図13に示されるとおりである。
【0108】
図13は、回帰分析により求めた重回帰式の妥当性を説明するための図である。具体的には、横軸には式(10)を用いて算出されたライ角の補正値Laが示されており、縦軸には本来のライ角の実測値が示されている。図13を参照すると、式(10)に示す重回帰式の決定係数Rは0.6628であることから、高い決定係数が得られており、本願発明者が鋭意検討の結果得られた上述の知見の妥当性が示されている。
【0109】
同様に、本願発明者は、上記知見に基づき、上述した方式により算出されたインパクト時のシャフトリーン角SLc、フェース角FAc、スイングパスSWcと、インパクト時の打球方向Exの歪み量Dxとを説明変数とし、インパクト時のシャフトリーン角の実測値を目的変数として重回帰分析を行なった。この結果算出された回帰式を次式(11)に示す。b0,b1,b2,b3は重回帰係数である。シャフトリーン角SLaは、目的変数の計算値である。
【0110】
【数8】
【0111】
式(11)を用いることにより、インパクト時のシャフトリーン角SLc、フェース角FAc、スイングパスSWcと、インパクト時の打球方向Exの歪み量Dxとに基づいて、目的変数(すなわち、実測されたシャフトリーン角)の計算値であるシャフトリーン角SLaを求めることができる。したがって、シャフトリーン角SLcを実測値により近づけるような補正を行なうことができる。以下、シャフトリーン角SLcを式(11)を用いて補正した値であるシャフトリーン角SLaを、シャフトリーン角の補正値と称する場合がある。式(11)に示す重回帰式の決定係数Rは0.8102であることから、高い決定係数が得られており、本願発明者が鋭意検討の結果得られた上述の知見の妥当性が示されている。
【0112】
さらに、キャリブレーション値を考慮した最終的なインパクト時のライ角Lf、シャフトリーン角SLf、アタック角ATfおよび相対フェース角Frfは、それぞれ式(12)、式(13)、式(14)および式(15)のように表わされる。
【0113】
【数9】
【0114】
このように、最終的なライ角Lfは、加速度情報および角速度情報に基づいて算出されたライ角Lcを、歪み量Dyおよびキャリブレーション値H_LIEに基づいて補正した値である。また、最終的なシャフトリーン角SLfは、加速度情報および角速度情報に基づいて算出されたシャフトリーン角SLcを、歪み量Dxおよびキャリブレーション値H_SLに基づいて補正した値である。
【0115】
(フィッティング)
ここでは、使用者に適するゴルフクラブがフィッティングされるまでの流れについて説明する。以下の説明では、スイング解析装置10のユーザは、フィッターであると仮定する。また、ゴルフクラブ50は、7番アイアンであるとする。
【0116】
フィッターは、ディスプレイ110に表示されたアイコンを選択して、スイング解析用のアプリケーションの起動指示を行なう。スイング解析装置10は、起動指示を受け付けるとログイン画面を表示して、所定のユーザIDおよびパスワードの入力を受け付ける。スイング解析装置10は、ログイン認証が成功した場合、トップ画面1200を表示する。
【0117】
図14は、トップ画面の一例を示す図である。図14を参照して、トップ画面1200は、ウッドの計測値入力を受け付けるボタン1202と、アイアンの計測値入力を受け付けるボタン1204と、過去の測定履歴を表示するためのボタン1206とを含む。本実施の形態では、ボタン1204が選択される場合について説明する。
【0118】
スイング解析装置10は、ボタン1204の選択を受け付けると、センサ装置20との通信を確立する。典型的には、スイング解析装置10およびセンサ装置20は、ペアリング接続される。スイング解析装置10は、ペアリング接続が完了すると、使用者に関する各種情報の入力画面を表示する。このとき、スイング解析装置10は、上述したキャリブレーション値を読み込む。
【0119】
図15は、各種情報の入力画面1250の一例を示す図である。図15を参照して、スイング解析装置10は、タッチパネル106を介して、使用者の名前、年齢、性別、メールアドレス、身長、利き手、平均スコア、平均ラウンド数、およびフィッターの名前等の情報を受け付ける。
【0120】
図16は、測定画面の一例を示す図である。図16を参照して、測定画面1300は、測定結果が表示される結果領域1302と、測定を開始するための開始ボタン1304と、測定をキャンセルするためのボタン1306と、ウッドシャフトの推奨画面に遷移するための遷移ボタン1308と、アイアンシャフトの推奨画面に遷移するための遷移ボタン1310とを含む。
【0121】
スイング解析装置10は、開始ボタン1304を受け付けると、「静止して下さい」、「ショットして下さい」等のメッセージを使用者に報知する。使用者は、当該メッセージに従って、センサ装置20が装着されたゴルフクラブ50を用いて、アドレスの姿勢をとった後、スイング動作を行なってゴルフボールをショットする。
【0122】
スイング解析装置10は、センサ装置20から受信した各種情報に基づいて、スイング解析処理を実行し、当該解析結果を測定結果として表示する。具体的には、結果領域1302には、インパクト時の「ヘッドスピード」と、スイング中の最大しなり量を示す「スイングテンポ」と、インパクト時の「前反り角度」と、インパクト時の「トウダウン量」と、インパクト時の「しなり係数」と、インパクト時の「ライ角」と、インパクト時の「シャフトリーン角」と、インパクト時の「アタック角」と、インパクト時の「相対フェース角」とが表示される。ヘッドスピード、ライ角、シャフトリーン角、アタック角および相対フェース角については、上述の方式を用いて算出される。なお、顧客への説明を容易化するため、相対フェース角については、単に「フェース角」と表示されている。これは、以下に説明する画面についても同様である。
【0123】
スイングテンポ、前反り角度、トウダウン量、およびしなり係数の各測定値は、歪センサ210を用いてセンサ装置20により算出される。スイングテンポ、前反り角度、トウダウン量の算出方法については、例えば、特開2010−187749号公報に開示されている。また、しなり係数の算出方法については、特開2010−187749号公報において、ベンディングポイント想定値の算出方法として開示されている。
【0124】
図16には、使用者により1回目のスイング動作の解析が実行され、各測定結果が表示されている場面を示している。使用者によりスイングが行われるごとに、測定結果が追加される。また、各測定結果の平均値も表示される。使用者のスイングが終了すると、フィッターは、遷移ボタン1310を選択する。
【0125】
図17は、アイアンシャフト推奨画面の一例を示す図である。図17を参照して、アイアンシャフト推奨画面1350は、アイアンシャフトを選択するための要素となる各測定値を表示する領域1352と、フィッターのおすすめのシャフトを表示する領域1354と、使用者に適したスチールシャフトを表示する領域1356と、使用者に適したグラファイトシャフトを表示する領域1358と、トップ画面へ遷移する遷移ボタン1360と、前の画面へ戻るボタン1362と、アイアンヘッドの推奨画面に遷移する遷移ボタン1364とを含む。
【0126】
領域1352には、使用者自身の各測定値が表示(図中の黒点部分)されるとともに、一般的なゴルファの平均値が表示(図中のハッチング部分)されている。使用者は、平均に対する自身の位置をすぐに把握することができる。
【0127】
領域1356には、ヘッドスピード、スイングテンポ、トウダウン量、前反り角度、およびしなり係数に基づいて、スイング解析装置10が選択したスチールシャフトが表示されている。領域1356には、最も適したスチールシャフトが「シャフトST1」であることが表示されている。同様に、領域1358には、最も適したグラファイトシャフトが「シャフトG1」であることが表示されている。アイアンシャフトの選択が終了すると、フィッターは、遷移ボタン1364を選択する。
【0128】
図18図19および図20は、アイアンヘッド推奨画面の一例を示す図である。具体的には、図18は、インパクト時の姿勢角を表示する画面領域1400を示す図である。図19は、ヘッド選択マップを示す画面領域1430を示す図である。図20は、使用者に適したヘッドを表示する画面領域1450を示す図である。アイアンヘッド推奨画面は、画面領域1400,1430,1450を含み、これらの画面領域は、アイアンヘッド推奨画面を上下に画面スクロールすることにより表示される。
【0129】
図18を参照して、画面領域1400は、インパクト時のライ角を表示する領域1402と、インパクト時のシャフトリーン角およびアタック角を表示する領域1404と、インパクト時のフェース角(およびスイングパス)を表示する領域1406とを含む。ゴルファは、画面領域1400を確認することにより、インパクト時のライ角、シャフトリーン角、アタック角、フェース角およびスイングパスの状態をイメージすることができる。
【0130】
各領域1402〜1406には、使用者自身の各測定値が表示(図中の黒点部分)されるとともに、一般的な平均値が表示(図中のハッチング部分)されている。そのため、使用者は、平均に対する自身の位置をすぐに把握することができる。
【0131】
図19を参照して、画面領域1430は、使用者に推奨されるアイアンヘッドのスペック情報を表示する領域1432と、使用者に対して推奨されるアイアンモデルを表示する領域1434と、ヘッドタイプとアタック角との関係性を表示する領域1436と、ネックタイプと相対フェース角との関係性を表示する領域1438とを含む。
【0132】
具体的には、領域1432には、使用者に推奨されるヘッドサイズ、ネックタイプ、ヘッドタイプ、ライ角の情報が表示される。図19の例では、「小さめ」よりも「大きめ」のヘッドサイズが推奨され、「ストレート」よりも「グース」のネックタイプが推奨され、「マッスル」よりも「ディープキャビティ」のヘッドタイプが推奨され、「アップ」よりも「フラット」のライ角が推奨されている。
【0133】
領域1434には、アタック角、相対フェース角、シャフトリーン角、ヘッドスピード、およびヘッドスピードのばらつき(標準偏差)に基づいて、使用者に推奨するアイアンモデルを選択するためのマップ30が示されている。
【0134】
マップ30の横軸には、インパクト時における打球の左右方向への飛翔特性の指標の代表例として、インパクト時の相対フェース角が示されている。インパクト時の相対フェース角が正方向に大きい場合(すなわち、フェースの向きがスイング軌道に対してオープンである場合)には、スライススピンで右曲がりの弾道になる。一方、インパクト時のフェース角が負方向に大きい場合(すなわち、フェースの向きがスイング軌道に対してクローズである場合)には、フックスピンで左曲がりの弾道になる。
【0135】
一般的に、「グース」タイプはフックスピンのかかり易いネックタイプである。そのため、領域1438において、フェースの向きがスイング軌道に対してオープン(すなわち、スライススピンのかかり易いスイング)であることを示す画像の近傍に、推奨ネックタイプである「グース」の文字が表示される。
【0136】
「ストレート」タイプはスライススピンのかかり易いネックタイプである。そのため、領域1438では、フェースの向きがスイング軌道に対してクローズ(すなわち、フックスピンのかかり易いスイング)であることを示す画像の近傍に、推奨ネックタイプである「ストレート」との文字が表示される。
【0137】
マップ30の縦軸には、インパクト時における打球の上下方向への飛翔特性の指標の代表例として、インパクト時のアタック角が示されている。インパクト時のアタック角が正方向に大きい場合(すなわち、レベルブローのスイング軌道である場合)には、高弾道(高く上がり易い弾道)になる。一方、インパクト時のアタック角が負方向に大きい場合(すなわち、ダウンブローのスイング軌道である場合)には、低弾道(高く上がり難い弾道)になる。
【0138】
一般的に、「ディープキャビティ」タイプは飛距離重視のヘッドタイプである。そのため、領域1436において、レベルブローのスイング軌道(すなわち、高く上がりすぎて飛距離が伸びにくい高弾道のスイング軌道)であることを示す画像の近傍に、推奨ヘッドタイプである「ディープキャビティ」との文字が表示される。
【0139】
「マッスル」タイプはコントロール重視のヘッドタイプである。そのため、領域1436において、ダウンブローのスイング軌道(すなわち、低弾道のスイング軌道)であること示す画像の近傍に、推奨ヘッドタイプである「マッスル」との文字が表示される。
【0140】
マップ30中の各点A1〜A8は、互いにスペックが異なる複数のアイアンクラブのモデル名を示している。マップ30中の点A1〜A8は、それぞれアイアンクラブA1〜A8に対応する。各点A1〜A8は、各アイアンクラブのスペック情報に基づいてマッピングされる。具体的には、各アイアンクラブについて、打球の左右方向への飛翔特性の左右指標値と、打球の上下方向への飛翔特性の上下指標値とが算出される。左右指標値に基づいてマップ30中の左右位置が決定され、上下指標値に基づいてマップ30中の上下位置が決定される。
【0141】
例えば、左右指標値Irfは、重心深度Ge、フェースプログレッションFP、重心距離Giおよび左右慣性モーメントMrfを用いて以下の式(16)のように表わされる。c0,c1,c2,c3,c4は係数である。
【0142】
【数10】
【0143】
上下指標値Iudは、重心深度Ge、ロフト角Lо、スイートスポット高さSSおよび上下慣性モーメントMudを用いて以下の式(17)のように表わされる。d0,d1,d2,d3,d4は係数である。
【0144】
【数11】
【0145】
典型的な例として、アイアンクラブA1とアイアンクラブA7とを比較する。アイアンクラブA1は、マップ30中の左下付近に位置している。そのため、アイアンクラブA1は、フックスピンで左に曲がり易く、低弾道になり易いスイング特性を有するゴルファに適したクラブであることを示している。換言すると、アイアンクラブA1は、スライススピンで右に曲がり易く、高弾道になり易いクラブである。
【0146】
一方、アイアンクラブA7は、マップ30中の右上付近に位置している。そのため、アイアンクラブA7は、スライススピンで右に曲がり易く、高弾道になり易いスイング特性を有する使用者に適したクラブであることを示している。換言すると、アイアンクラブA7は、フックスピンで左に曲がり易く、低弾道になり易いクラブである。
【0147】
マップ30中の点Hは、インパクト時の相対フェース角およびアタック角の測定値(具体的には、相対フェース角Frfおよびアタック角ATf)を示している。円領域1441(マップ30中のハッチング部分)は、相対フェース角、アタック角、シャフトリーン角、ヘッドスピード、およびヘッドスピードのばらつき(標準偏差)の全てを考慮して描画される。したがって、円領域1441が、使用者に適したゴルフクラブを示唆する情報となる。
【0148】
例えば、図19の例では、円領域1441に含まれるアイアンクラブA4,A6,A7が使用者に適したモデルであることを示唆している。より詳細には、マップ30において、アイアンクラブのモデルを示す各点(例えば、点A1〜A8)のうち、円領域1441の中心点Qに最も近い点(この場合、点A4)に対応するクラブが、使用者に最も適したクラブとなる。
【0149】
マップ30から、使用者に推奨されるロフト角も確認できる。例えば、円領域1441の中心点は、ロフト角28度の点線およびロフト角29度の点線の間に存在しているため、28度あるいは29度のロフト角が推奨される。
【0150】
領域1432には、使用者に推奨されるヘッドサイズ、ネックタイプ、ヘッドタイプおよびライ角の情報が表示される。円領域1441は、マップ30中の比較的右上に位置している。そのため、ネックタイプは、「ストレート」よりも「グース」が推奨されており、ヘッドタイプは、「マッスル」よりも「ディープキャビティ」が推奨されている。
【0151】
ヘッドサイズは、推奨ロフト角によって決定される。推奨ロフト角が27度に近づくほど「大きめ」のヘッドサイズが推奨され、推奨ロフト角が36度に近づくほど「小さめ」のヘッドサイズが推奨される。図19の例では、推奨ロフト角は、28度あるいは29度であるため、比較的「大きめ」のヘッドサイズが推奨されている。
【0152】
ライ角については、基準角度(例えば、61.5度)よりもインパクト時のライ角の測定値が小さい場合には、「フラット」のライ角が推奨される。一方、基準角度よりもインパクト時のライ角の測定値が大きい場合には、「アップ」のライ角が推奨される。
【0153】
ここで、円領域1441の描画方式について説明する。上述したように、円領域1441は、相対フェース角、アタック角、シャフトリーン角、ヘッドスピード、およびヘッドスピードのばらつき(標準偏差)に基づいて描画される。具体的には、円領域1441は、中心点Qから所定半径の円の内部領域である。半径は、フィッター等により任意に設定される。中心点Qの左右方向の座標である左右推奨値Krl(すなわち、使用者に推奨される左右指標値)は、打球の左右方向の飛翔特性に影響を与えるインパクト時の相対フェース角Frf、インパクト時のヘッドスピードVhs、およびヘッドスピードVhsの標準偏差Vsdを用いて、以下の式(18)のように表われる。
【0154】
【数12】
【0155】
ここで、e0〜e3は係数である。相対フェース角Frcが正方向に大きいほど中心点Qがマップ30中の右方向にシフトし、ヘッドスピードVhsが大きいほど中心点Qがマップ30中の左方向にシフトし、標準偏差Vsdが大きいほど中心点Qがマップ30中の右方向にシフトするように、係数e0〜e3が設定されている。
【0156】
中心点Qの上下方向の座標である上下推奨値Kud(すなわち、使用者に推奨される上下指標値)は、打球の上下方向の飛翔特性に影響を与えるインパクト時のアタック角ATf、シャフトリーン角SLf、インパクト時のヘッドスピードVhs、および標準偏差Vsdを用いて、以下の式(19)のように表われる。
【0157】
【数13】
【0158】
ここで、f0〜f4は係数である。アタック角ATfおよびシャフトリーン角SLfが正方向に大きいほど中心点Qがマップ30中の上方向にシフトし、ヘッドスピードVhsが大きいほど中心点Qがマップ30中の下方向にシフトし、標準偏差Vsdが大きいほど中心点Qがマップ30中の上方向にシフトするように、係数f0〜f4が設定されている。
【0159】
まとめると、中心点Qは、相対フェース角Frfが正方向に大きいほどマップ30中の右方向にシフトする。中心点Qは、アタック角ATfおよびシャフトリーン角SLfが正方向に大きいほどマップ30中の上方向にシフトする。中心点Qは、ヘッドスピードVhsが大きいほどマップ30中の左下方向にシフトする。中心点Qは、標準偏差Vsdが大きいほどマップ30中の右上方向にシフトする。
【0160】
ヘッドスピードVhsが大きいほどマップ中の左下方向に中心点Qをシフトする理由は以下のような知見に基づいている。具体的には、ヘッドスピードが速いゴルファは、熟練者であり、アタック角が負方向に大きく(ダウンブローの傾向が強く)、かつフェース角が負方向に大きい(フェースの向きがスイング軌道に対してクローズである傾向が強い)という知見である。
【0161】
また、ヘッドスピードの標準偏差Vsdが大きいほどマップ中の右上方向に中心点Qをシフトする理由は、以下のような知見に基づいている。具体的には、ヘッドスピードの標準偏差が大きいゴルファは、初中級者であり、アタック角が正方向に大きく(レベルブローの傾向が強く)、かつフェース角が正方向に大きい(フェースの向きがスイング軌道に対してオープンである傾向が強い)という知見である。
【0162】
図20を参照して、画面領域1450は、フィッターのおすすめのゴルフクラブを表示する領域1452と、使用者に適したプロモデルのアイアンクラブを表示する領域1454と、使用者に適した一般モデルのアイアンクラブを表示する領域1456と、トップ画面へ遷移する遷移ボタン1458と、前の画面へ戻るボタン1460と、ユーティリティの選択画面に遷移する遷移ボタン1462と、ウェッジの選択画面に遷移する遷移ボタン1464と、アイアンヘッドの選択画面に遷移するための遷移ボタン1466とを含む。
【0163】
領域1454には、最も適したプロモデルのアイアンが「アイアンクラブA2」であることが表示されている。同様に、領域1456には、最も適した一般モデルのアイアンが「アイアンクラブA4」であることが表示されている。次に、遷移ボタン1466が選択されると、図21に示されるアイアンヘッド選択画面に遷移する。
【0164】
図21は、アイアンヘッド選択画面の一例を示す図である。具体的には、図18図20に示したアイアンヘッド推奨画面を確認して、アイアンヘッドのモデル(例えば、アイアンA7等)が選択されると、図21の画面が表示される。図21を参照して、ヘッド選択画面1500は、領域1502と、領域1504と、前の画面へ戻るボタン1506と、シャフト選択画面へ遷移する遷移ボタン1508とを含む。
【0165】
領域1502は、図19中の領域1432と同一である。領域1504には、各番手のアイアンと、ピッチングウェッジの各パラメータ(例えば、シャフトの長さ、ロフト角、ライ角)が表示されるとともに、対応する予測飛距離が表示されている。使用者は、購入したい番手を選択したり、各パラメータを変更したりすることができる。図21の例では、4番アイアンは購入対象から除外されている。また、番手毎の予測飛距離は、シミュレーションによって算出されている。
【0166】
飛距離は、打球初期条件によって決定される。主な打球初期条件は、ボール初速、打ち出し角、バックスピンである。ボール初速、打ち出し角、およびバックスピンが三次元弾道シミュレーション関数(弾道方程式)に入力されることにより、予測飛距離が算出される。三次元弾道方程式は、実測およびシミュレーションの組み合わせによって作成される。
【0167】
ボール初速は、各種情報が、予め定められたボール初速予測関数に入力されることにより算出される。各種情報は、ゴルフクラブの質量、重心深度、左右方向慣性モーメント、上下方向慣性モーメント、反発係数、すべり係数、インパクト時のヘッドスピード、インパクト時のロフト角、およびインパクト時のアタック角を含む。なお、インパクト時のロフト角は、ゴルフクラブのロフト角(オリジナルロフト角)と、インパクト時のシャフトリーン角とに基づいて算出される。ボール初速予測関数は、実測およびシミュレーションの組み合わせによって作成される。
【0168】
打ち出し角は、上記各種情報が、予め定められた打ち出し角予測関数に入力されることにより算出される。打ち出し角予測関数は、実測およびシミュレーションの組み合わせによって作成される。
【0169】
バックスピンは、上記各種情報が、予め定められたバックスピン予測関数に入力されることにより算出される。バックスピン予測関数は、実測およびシミュレーションの組み合わせによって作成される。
【0170】
次に、遷移ボタン1508が選択されると、シャフト選択画面(図示しない)に遷移する。シャフト選択画面においては、図17に示すアイアンシャフト推奨画面1350において推奨されたアイアンシャフトが選択される。アイアンシャフトが選択されると、フィッターに指示に従ってグリップ選択画面(図示しない)が表示される。グリップが選択画面において、グリップが選択されると、フィッターに指示に従って、図22に示すアイアンの確認画面が表示される。
【0171】
図22は、選択したアイアンの確認画面の一例を示す図である。図22を参照して、確認画面1550は、測定された各パラメータを表示する領域1552と、選択されたアイアンのモデル、番手、シャフト、およびグリップを表示する領域1554と、前の画面へ戻るボタン1556と、ユーティリティの選択画面に遷移する遷移ボタン1558と、アイアンの選択画面に戻るための遷移ボタン1560と、ウェッジの選択画面に遷移する遷移ボタン1562と、完了ボタン1564とを含む。選択したアイアンの確認が終了すると、フィッターは、遷移ボタン1562を選択する。
【0172】
図23は、ウェッジヘッド選択画面の一例を示す図である。図23を参照して、ウェッジヘッド選択画面1600は、使用者に推奨されるウェッジのスペック情報を表示する領域1602と、図21の領域1504と同様の領域1604と、推奨されるウェッジに関する情報を表示する領域1606とを含む。
【0173】
領域1602には、使用者に推奨されるライ、バウンスが表示される。図23の例では、「アップ」よりも「フラット」のライ角が推奨され、「ローバウンス」よりも「ハイバウンス」のバウンスが推奨されている。バウンスは、推奨ロフト角によって決定される。推奨ロフト角が27度に近づくほど「ローバウンス」が推奨され、推奨ロフト角が36度に近づくほど「ハイバウンス」が推奨される。
【0174】
領域1606には、おすすめのウェッジ3本の各スペック(例えば、シャフトの長さ、ロフト角、ライ角)が表示されるとともに、対応する予測飛距離が表示されている。なお、領域1604には、各番手のアイアンの予測飛距離が表示されている。そのため、使用者は、各番手のアイアンの予測飛距離およびウェッジの予測飛距離を同時に確認することができる。すなわち、選択済みの各番手のアイアンの予測飛距離を参考にしながら、ウェッジヘッドを選択できる。また、使用者は、オブジェクト1608を選択することにより、おすすめのウェッジ本数を2本に変更することもできる。
【0175】
図24は、ウェッジヘッド選択画面の他の例を示す図である。図24を参照して、オブジェクト1608において、ウェッジ本数「2本」を選択することにより、領域1606には、2本の推奨ウェッジヘッドが表示される。
【0176】
次に、使用者がウェッジヘッドを選択すると、フィッターの指示に従って、ウェッジシャフトおよびウェッジグリップの選択画面(図示しない)に遷移する。ウェッジシャフトおよびウェッジグリップが選択されると、ウェッジの確認画面が表示される。ウェッジの選択が完了すると、フィッターの指示に従ってユーティティ選択画面に遷移する。
【0177】
図25は、ユーティリティヘッド選択画面の一例を示す図である。図25を参照して、ユーティリティヘッド選択画面1650は、使用者に推奨されるユーティリティヘッドのスペック情報を表示する領域1652と、図21の領域1504と同様の領域1654と、推奨されるユーティリティヘッドに関する情報を表示する領域1656と、前の画面へ戻るボタン1658と、ユーティリティシャフト選択画面に遷移するボタン1660とを含む。
【0178】
領域1656には、各番手のユーティリティのスペック(例えば、シャフトの長さ、ロフト角、ライ角)が表示されるとともに、対応する予測飛距離が表示されている。なお、領域1654には、各番手のアイアンの予測飛距離が表示されている。そのため、使用者は、各番手のアイアンの予測飛距離およびユーティリティの予測飛距離を同時に確認することができる。
【0179】
使用者がユーティリティヘッドを選択すると、フィッターの指示に従って、ユーティリティシャフトおよびユーティリティグリップの選択画面(図示しない)に遷移する。ユーティリティシャフトおよびユーティリティグリップが選択されると、ユーティリティの確認画面が表示される。ユーティリティの選択が完了すると、フィッターの指示に従って、確定画面が表示される。上記のように、アイアン、ウェッジ、ユーティリティのフィッティングが行われる。
【0180】
<機能構成>
図26は、スイング解析装置10の機能ブロック図である。図26を参照して、スイング解析装置10は、主たる機能構成として、情報入力部150と、静止期間算出部152と、スイング情報算出部154と、補正部156と、推奨値算出部158と、表示制御部160とを含む。これらは、基本的には、スイング解析装置10のプロセッサ102がメモリ104に格納されたプログラムを実行し、スイング解析装置10の構成要素へ指令を与えることなどによって実現される。すなわち、プロセッサ102はスイング解析装置10の動作全体を制御する制御部として機能する。なお、これらの機能構成の一部または全部は、ハードウェアで実現されていてもよい。
【0181】
情報入力部150は、ゴルフクラブ50に取り付けられたセンサ装置20により検出された加速度情報、角速度情報および歪み情報の入力を受け付ける。また、情報入力部150は、センサ装置20により算出された「スイングテンポ」、「前反り角度」、「トウダウン量」、および「しなり係数」の入力を受け付ける。典型的には、情報入力部150は、通信インターフェイス120を介して、センサ装置20から送信されるこれらの情報を受信する。ただし、情報入力部150は、タッチパネル106(やボタン108)を介して、これらの情報の入力を受け付けてもよい。
【0182】
静止期間算出部152は、上述の(静止検出方式)に従って、静止期間を算出する。静止期間算出部152は、角速度情報に基づく合成角速度Wが基準閾値Thに到達する時刻t1を算出する。より詳細には、静止期間算出部152は、合成加速度ACを算出し、合成加速度ACの単位時間当たりの変化量が閾値以上に到達した時刻をインパクト時刻として算出する。静止期間算出部152は、インパクト時刻から所定時間だけ前の時刻から時間を遡って、合成角速度Wが基準閾値Th未満になる時刻t1を算出する。
【0183】
静止期間算出部152は、時刻t1よりも時間Ta(例えば、0.5秒)だけ過去の時刻t2から、時刻t1よりも時間Tbだけ過去の時刻t3までの期間Tcを、ゴルファが静止している静止期間として算出する。
【0184】
スイング情報算出部154は、上述の(姿勢算出方式)に従って、ゴルフクラブ50の姿勢情報を算出する。具体的には、スイング情報算出部154は、静止期間Tcにおける加速度情報に基づいて、スイング期間の開始直前の使用者のアドレス時の姿勢角を算出する。
【0185】
スイング情報算出部154は、スイング期間の開始時から終了時(インパクト時)までの姿勢角を算出する。特に、スイング情報算出部154は、インパクト時のゴルフクラブの姿勢角として、ライ角Lcと、シャフトリーン角SLcと、アタック角ATcと、フェース角FAc、スイングパスSWcとを算出する。
【0186】
他の局面では、スイング情報算出部154は、加速度情報および角速度情報に基づいてインパクト時のヘッドスピードVhsをさらに算出する。使用者がゴルフクラブを複数回スイングした場合には、スイング情報算出部154は、インパクト時のヘッドスピードVhsの標準偏差Vsdをさらに算出する。
【0187】
補正部156は、ゴルフクラブ50のシャフトの歪み情報に基づいて、スイング情報算出部154により算出された、インパクト時におけるゴルフクラブ50の姿勢情報を補正する。具体的には、補正部156は、インパクト時におけるトウダウン方向Eyの歪み量Dyに基づいて、スイング情報算出部154により算出されたインパクト時のライ角Lcを補正する。すなわち、補正部156は、式(10)を用いて、インパクト時のライ角Laを算出する。式(10)は、歪み量Dyと、インパクト時のライ角Lcとを説明変数とし、インパクト時のライ角の実測値を目的変数として回帰分析を行なうことにより得られる回帰式である。
【0188】
補正部156は、インパクト時における打球方向Exの歪み量Dxに基づいて、スイング情報算出部154により算出されたインパクト時のシャフトリーン角SLcを補正する。すなわち、補正部156は、式(11)を用いて、インパクト時のシャフトリーン角SLaを算出する。式(11)は、歪み量Dxと、インパクト時のシャフトリーン角SLc、フェース角FAc、スイングパスSWcとを説明変数とし、インパクト時のシャフトリーン角の実測値を目的変数として回帰分析を行なうことにより得られる回帰式である。
【0189】
他の局面では、補正部156は、メモリ104に格納されたキャリブレーション値に基づいて、当該算出されたインパクト時のライ角Laおよびシャフトリーン角SLaをさらに補正する。具体的には、補正部156は、キャリブレーション値H_LIEを用いて、インパクト時のライ角Laをライ角Lfに補正する。補正部156は、キャリブレーション値H_SLを用いて、インパクト時のシャフトリーン角SLaをシャフトリーン角SLfに補正する。
【0190】
なお、キャリブレーション値H_LIEは、ゴルフクラブ50のシャフト52が地面と平行な面に設置された治具で固定された状態において、ゴルフクラブ50のライ角が所定角度に設定されている場合にスイング情報算出部154により算出されたライ角と、当該所定角度との差分である。キャリブレーション値H_SLは、ゴルフクラブ50のライ角が所定角度に設定されている場合にスイング情報算出部154により算出されたシャフトリーン角である。
【0191】
推奨値算出部158は、インパクト時の相対フェース角Frf、インパクト時のヘッドスピードVhs、およびヘッドスピードVhsの標準偏差Vsdを用いて、使用者に推奨する左右指標値(左右推奨値Krlに対応)を算出する。推奨値算出部158は、インパクト時のアタック角ATf、インパクト時のシャフトリーン角SLf、インパクト時のヘッドスピードVhs、および標準偏差Vsdを用いて、使用者に推奨する上下指標値(上下推奨値Kudに対応)を算出する。
【0192】
表示制御部160は、予め用意された複数のゴルフクラブの中から使用者に適したゴルフクラブを提示する提示画面(例えば、図19に示すマップ30を含む画面)をディスプレイ110に表示させる。
【0193】
具体的には、表示制御部160は、予め用意された複数のゴルフクラブの各々について、当該ゴルフクラブの左右指標値および上下指標値に基づく情報(例えば、各点A1〜A8)を提示画面に表示させる。また、表示制御部160は、予め用意された複数のゴルフクラブの各々について、当該ゴルフクラブの左右指標値および上下指標値に基づく情報(例えば、各点A1〜A8)を提示画面に表示させる。表示制御部160は、推奨値算出部158により算出された左右推奨値Krlおよび上下推奨値Kudに基づく情報(例えば、円領域1441)を提示画面にさらに表示させる。
【0194】
表示制御部160は、アタック角ATfおよび相対フェース角Frfに基づく情報(例えば、点H)を提示画面にさらに表示させる。表示制御部160は、ゴルフクラブ50の予測飛距離と、ゴルフクラブ50のタイプ(例えば、アイアンタイプ)とは異なるタイプ(例えば、ユーティリティタイプ)のゴルフクラブの予測飛距離とを含む画面(例えば、図25中のユーティリティヘッド選択画面1650)をディスプレイ110に表示させる。また、当該画面には、ゴルフクラブ50の番手(例えば、7番)とは異なる番手(例えば、5番等)の予測飛距離も含まれる。なお、表示制御部160は、上述した各種画面をディスプレイ110にさらに表示させる。
【0195】
<センサ装置20の外観>
図27は、センサ装置20の外観を示す図である。具体的には、図27は、図1中のセンサ装置20の拡大図である。
【0196】
<その他の実施の形態>
(1)上述した実施の形態では、左右推奨値を算出するためのパラメータが、インパクト時の相対フェース角、インパクト時のヘッドスピード、およびヘッドスピードの標準偏差である構成について説明したが、当該構成に限られない。当該パラメータは、相対フェース角のみであってもよい。また、当該パラメータは、相対フェース角と、ヘッドスピードおよび標準偏差のいずれか一方とを含む構成であってもよい。
【0197】
(2)上述した実施の形態では、上下推奨値を算出するためのパラメータが、インパクト時のアタック角、シャフトリーン角、インパクト時のヘッドスピード、および標準偏差である構成について説明したが、当該構成に限られない。当該パラメータは、アタック角およびシャフトリーン角のみであってもよい。また、当該パラメータは、アタック角およびシャフトリーン角と、ヘッドスピードおよび標準偏差のいずれか一方とを含む構成であってもよい。
【0198】
(3)上述した実施の形態では、補正部156により補正されたライ角およびシャフトリーン角等に基づいて、左右推奨値および上下推奨値が算出される構成について説明したが、当該構成に限られない。例えば、処理負荷の軽減等、より簡易的にスイング解析を行なってフィッティングを行ないたい場合には、補正部156による補正処理を実行しない構成であってもよい。
【0199】
(4)上述した実施の形態では、回帰式(11)を用いて、シャフトリーン角の補正値SLaを算出する構成について説明したが、当該構成に限られない。具体的には、インパクト時のシャフトリーン角SLc、インパクト時の打球方向Exの歪み量Dxとを説明変数とし、インパクト時のシャフトリーン角の実測値を目的変数として重回帰分析を行なった結果得られた以下の回帰式(20)を用いて、シャフトリーン角の補正値SLaを算出する構成であってもよい。g0,g1,g2は重回帰係数である。
【0200】
【数14】
【0201】
式(20)に示す重回帰式の決定係数Rは0.3964であることから、高い決定係数が得られており、精度よくシャフトリーン角を算出することができる。
【0202】
(5)コンピュータを機能させて、上述したような制御を実行させるプログラムを提供することもできる。このようなプログラムは、コンピュータに付属するフレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)、ROM、RAMおよびメモリカードなどの一時的でないコンピュータ読取り可能な記録媒体にて記録させて、プログラム製品として提供することもできる。あるいは、コンピュータに内蔵するハードディスクなどの記録媒体にて記録させて、プログラムを提供することもできる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【0203】
プログラムは、コンピュータのオペレーティングシステム(OS)の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定のタイミングで呼出して処理を実行させるものであってもよい。その場合、プログラム自体には上記モジュールが含まれずOSと協働して処理が実行される。このようなモジュールを含まないプログラムも、本実施の形態にかかるプログラムに含まれ得る。
【0204】
また、本実施の形態にかかるプログラムは他のプログラムの一部に組込まれて提供されるものであってもよい。その場合にも、プログラム自体には上記他のプログラムに含まれるモジュールが含まれず、他のプログラムと協働して処理が実行される。このような他のプログラムに組込まれたプログラムも、本実施の形態にかかるプログラムに含まれ得る。
【0205】
上述の実施の形態として例示した構成は、本発明の構成の一例であり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、一部を省略する等、変更して構成することも可能である。
【0206】
<実施の形態の効果>
本実施の形態によると、インパクト時におけるシャフトの歪みを考慮することにより、インパクト時の姿勢角を精度よく算出できるため、スイング解析精度を向上することができる。また、スイング解析精度の向上により、使用者に適切なゴルフクラブを推奨することができる。
【0207】
本実施の形態によると、使用者に適したゴルフクラブを選択するためのマップがディスプレイに表示されるため、使用者は、どのゴルフクラブが自分に適しているのかを即時に把握できる。
【0208】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0209】
10 スイング解析装置、20 センサ装置、30 マップ、50 ゴルフクラブ、52 シャフト、102,202 プロセッサ、104,204 メモリ、106 タッチパネル、108 ボタン、110 ディスプレイ、112 無線通信部、113 通信アンテナ、114 メモリインターフェイス、115 記録媒体、116 スピーカ、118 マイク、120 通信インターフェイス、150 情報入力部、152 静止期間算出部、154 スイング情報算出部、156 補正部、158 推奨値算出部、160 表示制御部、206 加速度センサ、208 角速度センサ、210 歪センサ、214 蓄電池、220,221 歪ゲージ、1000 スイング解析システム。
【要約】
【課題】ゴルフクラブのスイングを精度よく解析することが可能なスイング解析装置を提供する。
【解決手段】ゴルフクラブの使用者のスイングを解析するためのスイング解析装置は、ゴルフクラブのシャフトに取り付けられたセンサにより検出された加速度情報、角速度情報およびシャフトの歪み情報の入力を受け付ける情報入力部と、加速度情報および角速度情報に基づいて、スイング期間のゴルフクラブの姿勢情報を算出する姿勢算出部と、シャフトの歪み情報に基づいて、インパクト時におけるゴルフクラブの姿勢情報を補正する補正部と、補正部により補正されたゴルフクラブの姿勢情報をディスプレイに表示させる表示制御部とを備える。
【選択図】図27
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