(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6342051
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】複合基板の研磨方法
(51)【国際特許分類】
B24B 37/30 20120101AFI20180604BHJP
H01L 41/337 20130101ALI20180604BHJP
B24B 37/24 20120101ALI20180604BHJP
【FI】
B24B37/30
H01L41/337
B24B37/24 D
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-166455(P2017-166455)
(22)【出願日】2017年8月31日
(62)【分割の表示】特願2014-19224(P2014-19224)の分割
【原出願日】2014年2月4日
(65)【公開番号】特開2017-222029(P2017-222029A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2017年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浜島 章
(72)【発明者】
【氏名】堀 裕二
【審査官】
亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−82931(JP,A)
【文献】
特開2010−153961(JP,A)
【文献】
特開平9−94757(JP,A)
【文献】
特開2012−147424(JP,A)
【文献】
特開2012−200853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/00 − 37/34
H01L 21/301
H01L 41/337
H03H 3/08
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と支持基板とを接合した複合基板の前記支持基板側を基板キャリアに直接取り付け、研磨パッドが貼り付けられた研磨定盤に前記圧電基板が接触するように前記基板キャリアを前記研磨定盤に向かって押圧し、前記研磨パッドに研磨用スラリーを供給しながら前記基板キャリア及び前記研磨定盤を回転させることにより前記圧電基板を研磨する、複合基板の研磨方法であって、
前記研磨パッドとしてスウェードパッドを使用し、前記複合基板として前記圧電基板の厚みが中心部から外周部に向かって徐々に厚くなっているものを使用する、
複合基板の研磨方法。
【請求項2】
前記圧電基板の厚みが中心部から外周部に向かって徐々に厚くなっている複合基板は、当初平板状だった複合基板の前記支持基板側を前記基板キャリアに取り付け、ウレタンパッドが貼り付けられた研磨定盤に前記圧電基板が接触するように前記基板キャリアを前記研磨定盤に向かって押圧し、前記複合基板の中心部を外周部よりも強く押圧した状態又は前記複合基板の外周部の一部が前記研磨定盤からはみ出るように前記基板キャリアと前記研磨定盤との相対位置を調整した状態で、前記ウレタンパッドに研磨スラリーを供給しながら前記基板キャリア及び前記研磨定盤を回転させることにより得る、
請求項1に記載の複合基板の研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合基板の研磨方法及び複合基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、支持基板と圧電基板とを接合した弾性波デバイス用の複合基板が知られている。弾性波デバイスとしては、こうした複合基板のうち圧電基板の表面に弾性表面波を励振可能な櫛形電極を設けたものなどが挙げられる。支持基板として圧電基板よりも小さな熱膨張係数を持つものを使用すると、温度が変化したときの圧電基板の大きさの変化が抑制されるため、弾性波デバイスの周波数特性の変化が抑制される。
【0003】
こうした複合基板の圧電基板側の表面を平坦化するために、化学機械研磨(CMP)が広く行われている。CMPは、研磨剤自体が有する表面化学作用又は研磨液に含まれる化学成分の作用によって、研磨剤と基板との相対運動による機械的研磨効果を増大させ、高速に平滑な研磨面を得る技術である。CMPを行うための研磨装置は、研磨パッドが貼り付けられた円盤状で径の大きな研磨定盤と、円盤状で径の小さな基板キャリアと、研磨パッドへ研磨スラリーを供給するパイプとを備えている。複合基板を研磨するには、まず、複合基板の支持基板側を基板キャリアに貼り付ける。そして、研磨パッドが貼り付けられた研磨定盤に圧電基板が接触するように基板キャリアを研磨定盤に向かって押圧し、研磨パッドに研磨用スラリーを供給しながら基板キャリア及び研磨定盤を回転させる。
【0004】
圧電基板を平坦化するには、研磨パッドとしてウレタンパッド、研磨スラリーとしてコロイダルシリカを含むスラリーを使用してCMPを行い、その後、圧電基板のダメージを除去するために、研磨パッドとしてスウェードパッドを使用してCMPを行う。スウェードパッドは、ウレタンパッドに比べて柔らかい素材である。そのため、スウェードパッドを使用してCMPを行うと、スウェードパッドが圧電基板に押されて凹み、圧電基板の外周縁が過剰に研磨されて外周だれが生じ、平坦化が損なわれることがある。特許文献1では、こうした外周だれを防止するために、基板を囲む位置にリテーナリングを配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−302464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、リテーナリングを利用した外周だれ防止技術では、研磨中に基板だけでなくリテーナリングも同時に削れてしまうため、研磨ごとに得られる効果が異なるという課題があった。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、外周だれ防止効果が研磨ごとに異なることなく安定して得られるようにすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の複合基板の研磨方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0009】
本発明の第1の複合基板の研磨方法は、
圧電基板と支持基板とを接合した複合基板の前記支持基板側を基板キャリアに取り付け
、研磨パッドが貼り付けられた研磨定盤に前記圧電基板が接触するように前記基板キャリアを前記研磨定盤に向かって押圧し、前記研磨パッドに研磨用スラリーを供給しながら前記基板キャリア及び前記研磨定盤を回転させることにより前記圧電基板を研磨する、複合基板の研磨方法であって、
前記研磨パッドとしてスウェードパッドを使用し、前記複合基板の前記支持基板側を前記基板キャリアに弾性シートを介して取り付け、前記スウェードパッド及び前記弾性シートは、前記基板キャリアを前記研磨定盤に向かって押圧したときに前記複合基板によって変形するものである。
【0010】
この複合基板の研磨方法では、研磨パッドとしてスウェードパッドを使用し、複合基板の支持基板側を基板キャリアに弾性シートを介して取り付ける。そして、スウェードパッドが貼り付けられた研磨定盤に圧電基板が接触するように基板キャリアを研磨定盤に向かって押圧し、研磨パッドに研磨用スラリーを供給しながら基板キャリア及び研磨定盤を回転させる。これにより、複合基板の圧電基板は研磨されて薄くなる。研磨中、スウェードパッドは複合基板に押されて凹むが、弾性シートがクッションになるため、弾性シートを介さずに複合基板を基板キャリアに取り付けた場合に比べてスウェードパッドの凹み量が緩和される。圧電基板の外周だれ(外周の過研磨)は、スウェードパッドの凹み量が大きいほど大きくなる傾向がある。ここでは、その凹み量が緩和されるため、外周だれを防止することができる。また、弾性シートが縮むことによって外周だれを防止するため、リテーナリングのように研磨中に削れてしまうようなことがない。そのため、外周だれ防止効果が研磨ごとに異なることなく安定して得られる。
【0011】
本発明の第1の複合基板の研磨方法において、前記弾性シートは、スウェードパッドに近い弾性率を持つシートとしてもよい。こうすれば、研磨パッドと弾性シートとの変形具合が同じ程度であるため、本発明の効果を得やすい。または、前記弾性シートは、スウェードパッドと同じ素材としてもよい。こうすれば、研磨パッドと弾性シートとが同一であるため、更に本発明の効果を得やすい。
【0012】
本発明の第1の複合基板は、上述した第1の複合基板の研磨方法によって得られた複合基板である。この複合基板は、外周だれが抑制された薄い圧電基板を有するものである。
【0013】
本発明の第2の複合基板の研磨方法は、
圧電基板と支持基板とを接合した複合基板の前記支持基板側を基板キャリアに直接取り付け、研磨パッドが貼り付けられた研磨定盤に前記圧電基板が接触するように前記基板キャリアを前記研磨定盤に向かって押圧し、前記研磨パッドに研磨用スラリーを供給しながら前記基板キャリア及び前記研磨定盤を回転させることにより前記圧電基板を研磨する、複合基板の研磨方法であって、
前記研磨パッドとしてスウェードパッドを使用し、前記複合基板として前記圧電基板の厚みが中心部から外周部に向かって徐々に厚くなっているものを使用するものである。
【0014】
この複合基板の研磨方法では、研磨パッドとしてスウェードパッドを使用し、複合基板として圧電基板の厚みが中心部から外周部に向かって徐々に厚くなっているものを使用する。そして、スウェードパッドが貼り付けられた研磨定盤に圧電基板が接触するように基板キャリアを研磨定盤に向かって押圧し、研磨パッドに研磨用スラリーを供給しながら基板キャリア及び研磨定盤を回転させる。これにより、複合基板の圧電基板は研磨されて薄くなる。研磨中、スウェードパッドは複合基板に押されて凹むため、圧電基板の外周部は過剰に研磨される。しかし、ここでは、研磨前の圧電基板の外周部は中心部よりも厚みが厚いため、研磨中に外周部が研磨され過ぎることで、研磨後に外周部と中心部との厚みの差がなくなり、平坦になる。このように、圧電基板の外周部と中心部との厚みを変えることによって外周だれを防止するため、リテーナリングのように研磨中に削れてしまうようなことがない。そのため、外周だれ防止効果が研磨ごとに異なることなく安定して得られる。
【0015】
本発明の第2の複合基板の研磨方法において、前記圧電基板の厚みが中心部から外周部に向かって徐々に厚くなっている複合基板は、当初平板状だった複合基板の前記支持基板側を前記基板キャリアに取り付け、ウレタンパッドが貼り付けられた研磨定盤に前記圧電基板が接触するように前記基板キャリアを前記研磨定盤に向かって押圧し、前記複合基板の中心部を外周部よりも強く押圧した状態で前記ウレタンパッドに研磨スラリーを供給しながら前記基板キャリア及び前記研磨定盤を回転させることにより得るようにしてもよい。こうすれば、圧電基板の厚みが中心部から外周部に向かって徐々に厚くなっている複合基板を比較的簡単に作製することができる。あるいは、前記複合基板の中心部を外周部よりも強く押圧する代わりに、当初平板状だった複合基板の外周部の一部が前記研磨定盤からはみ出るように前記基板キャリアと前記研磨定盤との相対位置を調整してもよい。この場合も、圧電基板の厚みが中心部から外周部に向かって徐々に厚くなっている複合基板を比較的簡単に作製することができる。
【0016】
本発明の第2の複合基板は、上述した第2の複合基板の研磨方法によって得られた複合基板である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】研磨前の複合基板10の圧電基板12を研磨して複合基板50を得る方法の説明図。
【
図5】研磨前の複合基板10の圧電基板12を研磨して複合基板50を得る方法の説明図。
【
図6】複合基板30を得るための別の方法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
図1は研磨前の複合基板10の斜視図、
図2は研磨後の複合基板50の斜視図である。研磨前の複合基板10は、圧電基板12と支持基板14とを備えている。また、研磨後の複合基板50は、研磨前の複合基板10の圧電基板12を研磨して薄くしたものである。
【0019】
圧電基板12は、弾性波を伝搬可能な基板である。この圧電基板12の材質としては、タンタル酸リチウム(LT)、ニオブ酸リチウム(LN)、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体単結晶、水晶、ホウ酸リチウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、ランガサイト(LGS)、ランガテイト(LGT)などが挙げられる。このうち、LT又はLNが好ましい。LTやLNは、弾性表面波の伝搬速度が速く、電気機械結合係数が大きいため、高周波数且つ広帯域周波数用の弾性波デバイスとして適しているからである。圧電基板12の大きさは、例えば、直径が50〜150mm、厚さが0.1〜50μmである。圧電基板12に用いられる代表的な材質の熱膨張係数を表1に示す。
【0021】
支持基板14は、圧電基板12を支持する基板であり、圧電基板12の裏面に直接接合により接合されているか有機接着層を介して接合されている。この支持基板14の材質としては、シリコン、サファイア、窒化アルミニウム、アルミナ、ホウ珪酸ガラス、石英ガラス、LT、LN、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体単結晶、ホウ酸リチウム、LGS、水晶などが挙げられる。支持基板14は、圧電基板12よりも熱膨張係数が小さいものが好ましい。支持基板14を圧電基板12よりも熱膨張係数が小さいものとすることで、温度が変化したときの圧電基板12の大きさの変化を抑制し、複合基板10を弾性波デバイスとして用いた場合における周波数特性の温度変化を抑制することができる。例えば、圧電基板12の材質がLTやLNの場合には、支持基板14の材質はシリコンやサファイア、窒化アルミニウム、アルミナなどが好ましい。
【0022】
次に、研磨前の複合基板10の製造手順について説明する。まず、厚みが100〜1000μmの圧電基板12と厚みが100〜1000μmの支持基板14を用意し、両者を直接接合により接合するか有機接着層を介して接合して複合基板10を作製する。直接接合で接合する場合には、まず、圧電基板12と支持基板14のそれぞれの接合面を活性化した後、両接合面を向かい合わせにした状態で両基板12,14を押圧する。接合面の活性化は、例えば、接合面への不活性ガス(アルゴンなど)のイオンビームの照射のほか、プラズマや中性原子ビームの照射などで行う。一方、有機接着層を介して接合する場合には、有機接着層として、例えばエポキシ樹脂やアクリル樹脂などを用いる。
【0023】
次に、研磨前の複合基板10の圧電基板12を研磨して複合基板50を得る方法について、
図3を用いて以下に説明する。
図3は、複合基板10の研磨手順を示す説明図である。まず、厚みが100〜1000μmの圧電基板12と厚みが100〜1000μmの支持基板14を用意し、両者を直接接合により接合するか有機接着層を介して接合して複合基板10を作製する(
図3(a)参照)。直接接合で接合する場合には、まず、圧電基板12と支持基板14のそれぞれの接合面を活性化した後、両接合面を向かい合わせにした状態で両基板12,14を押圧する。接合面の活性化は、例えば、接合面への不活性ガス(アルゴンなど)のイオンビームの照射のほか、プラズマや中性原子ビームの照射などで行う。一方、有機接着層を介して接合する場合には、有機接着層として、例えばエポキシ樹脂やアクリル樹脂などを用いる。
【0024】
続いて、複合基板10の圧電基板12をグラインダで研削して厚みを数10μmとし、更に、圧電基板12をCMPで研磨して厚みを薄くする(
図3(b)参照)。CMPは、
図4に示す研磨装置120を用いて行う。研磨装置120は、円盤状で径の大きな研磨定盤122と、円盤状で径の小さな基板キャリア126と、研磨剤を含むスラリーを研磨定盤122上へ供給するパイプ129とを備えている。研磨定盤122は、裏面中央にシャフト122aを備えており、図示しない駆動モータでシャフト122aが回転駆動されることにより軸回転する。この研磨定盤122は、表面にウレタンパッド124が貼り付けられている。基板キャリア126は、上面中央にシャフト126aを備えており、図示しない駆動モータでシャフト126aが回転駆動されることにより軸回転する。基板キャリア126は、研磨定盤122の中心からずれた位置に配置されている。パイプ129は、基板キャリア126の近傍に配置され、研磨剤を含むスラリーをウレタンパッド124に供給する役割を果たす。この研磨装置120の使用方法について説明する。まず、基板キャリア126の下面に複合基板10の支持基板14側をワックスを用いて固定する。次に、複合基板10の圧電基板12をウレタンパッド124に接触させた状態で、パイプ129からウレタンパッド124にダイヤスラリーを供給しながら研磨定盤122及び基板キャリア126を軸回転させる。これにより、圧電基板12を更に薄くする。
【0025】
続いて、圧電基板12の最終仕上げを行う(
図3(c)及び(d)参照)。すなわち、基板キャリア126から複合基板10を取り外し、基板キャリア126にスウェードシート130を貼り付ける。そして、スウェードシート130に純水を十分散布した後、複合基板10の支持基板14側をスウェードシート130に押しつける。これにより、複合基板10はスウェードシート130を介して基板キャリア126に保持される。また、ウレタンパッド124をスウェードパッド132に交換する。そして、パイプ129からスウェードパッド132にコロイダルシリカを含むスラリーを供給しながら研磨定盤122及び基板キャリア126を軸回転させる。これにより、圧電基板12のダメージを除去することができる。
【0026】
最終仕上げでは、スウェードパッド132は複合基板10に押されて凹むが、スウェードシート130がクッションになるため、スウェードシート130を介さずに複合基板10を基板キャリア126に取り付けた場合に比べてスウェードパッド132の凹み量が緩和される。圧電基板12の外周だれ(外周の過研磨)は、スウェードパッド132の凹み量が大きいほど大きくなる傾向がある。ここでは、その凹み量が緩和されるため、外周だれを防止することができる。なお、スウェードシート130の役割は、複合基板10の外周部に局所的にかかる応力を吸収することである。
【0027】
以上詳述した本実施形態によれば、最終仕上げにおいて、スウェードシート130が凹むことによってスウェードパッド132の凹み量を緩和して圧電基板12の外周だれを防止するため、リテーナリングのように研磨中に削れてしまうようなことがない。そのため、外周だれ防止効果が研磨ごとに異なることなく安定して得られる。
【0028】
また、スウェードパッド132とスウェードシート130とは素材が同じであるため、上述した効果を得やすい。
【0029】
なお、上述した実施形態において、最終仕上げ行う前に、基板キャリア126に複合基板10を取り付けたままの状態でウレタンパッド124をスウェードパッド132に交換し、コロイダルシリカを含むスラリーをスウェードパッド132に供給しながら更なる研磨を行い、その後、最終仕上げを行うようにしてもよい。最終仕上げでは、上述したように、基板キャリア126から複合基板10を取り外し、基板キャリア126にスウェードシート130を介して複合基板10を取り付け、コロイダルシリカを含むスラリーをスウェードパッド132に供給しながら圧電基板12を研磨する。このようにしても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0030】
[第2実施形態]
第2実施形態は、
図1に示す研磨前の複合基板10を第1実施形態とは異なる手法で研磨する。その研磨手順を
図5を用いて以下に説明する。
【0031】
まず、厚みが100〜1000μmの圧電基板12と厚みが100〜1000μmの支持基板14を用意し、両者を直接接合により接合するか有機接着層を介して接合して複合基板10を作製する(
図5(a)参照)。この点は、第1実施形態と同様のため、詳しい
説明は省略する。
【0032】
続いて、複合基板10の圧電基板12をグラインダで研削して厚みを数10μmとし、更に、圧電基板12をCMPで研磨して、圧電基板12の厚みが中心部12bから外周部12aに向かって徐々に厚くなった複合基板30を得る(
図5(b)及び(c)参照)。CMPは、第1実施形態と同様、
図4に示す研磨装置120を用いて行う。まず、基板キャリア126の下面に複合基板10の支持基板14側をワックスを用いて固定する。次に、複合基板10の圧電基板12をウレタンパッド124に接触させた状態で、パイプ129からウレタンパッド124にダイヤスラリーを供給しながら研磨定盤122及び基板キャリア126を軸回転させる。この際、基板キャリア126の中心部の押圧力が外周部よりも大きくなるように、基板キャリア126の中心部にリング状の錘128を載せておく。こうすることにより、圧電基板12の厚みは中心部12bから外周部12aに向かって徐々に厚くなる。なお、この場合、複合基板10の外周部にかかる局所的な応力よりも、複合基板10の中心部にかかる錘128による応力の方が十分大きいため、外周だれは無視できる。
【0033】
続いて、圧電基板12の最終仕上げを行う(
図5(d)及び(e)参照)。すなわち、基板キャリア126に複合基板30を付けたまま、錘128を外し、ウレタンパッド124をスウェードパッド132に交換する。そして、パイプ129からスウェードパッド132にコロイダルシリカを含むスラリーを供給しながら研磨定盤122及び基板キャリア126を軸回転させる。これにより、圧電基板12のダメージを除去することができる。
【0034】
最終仕上げでは、スウェードパッド132が複合基板30に押されて凹むため、圧電基板12の外周部は過剰に研磨される。しかし、研磨前の圧電基板12の外周部12aは中心部12bよりも厚みが厚いため、研磨中に外周部12aが研磨され過ぎることで、研磨後に外周部12aと中心部12bとの厚みの差がなくなり、平坦になる。
【0035】
以上詳述した本実施形態によれば、最終仕上げの研磨前に、圧電基板12の外周部12aと中心部12bとの厚みを変えることによって外周だれを防止するため、リテーナリングのように研磨中に削れてしまうようなことがない。そのため、外周だれ防止効果が研磨ごとに異なることなく安定して得られる。
【0036】
また、圧電基板12の厚みが中心部12bから外周部12aに向かって徐々に厚くなっている複合基板30を比較的簡単に作製することができる。なお、錘128を基板キャリア126の中心部に載せてCMPを行う代わりに、
図6に示すように、ウレタンパッド124を貼り付けた研磨定盤122から複合基板10の外周部の一部がはみ出すように基板キャリア126と研磨定盤122との相対位置を調整した状態でCMPを行ってもよい。この場合も、複合基板30を比較的簡単に作製することができる。
【実施例】
【0037】
[実施例1]
直径4インチ、厚み250μmのLT基板と、直径4インチ、厚み230μmのSi基板を用意した。まず、Si基板の表面にエポキシ樹脂をスピンコータ(回転数1000rpm)で膜厚1μmとなるように塗布した。そして、エポキシ樹脂を介してSi基板にLT基板を接合し、150℃のオーブンで樹脂を硬化させることで、複合基板を得た。LT基板のうちSi基板との接合面とは反対側の面をグラインダで研削し、LT基板の厚みを25μmとした。続いて、
図4に示す研磨装置120を用意し、複合基板のSi基板側を基板キャリア126にワックスで貼り付け、研磨定盤122にウレタンパッド124を載せ、ダイヤスラリー(粒径1μm)を用いてLT基板をラップ研磨した。ラップ研磨後、基板キャリア126から複合基板を取り外し、基板キャリア126にスウェードシート130を貼り付けた。そして、スウェードシート130に純水を十分散布した後、複合基板のSi基板側をスウェードシート130に押しつけた。これにより、複合基板はスウェードシート130を介して基板キャリア126に保持された。また、ウレタンパッド124をスウェードパッド132に交換した。そして、パイプ129からスウェードパッド132にコロイダルシリカを含むスラリーを供給しながら研磨定盤122及び基板キャリア126を軸回転させ、LT基板の最終仕上げ(ダメージ除去)を行った。最終仕上げは、LT基板の中心部での研磨量が5μmになるまで行った。このとき、LT基板の外周部での研磨量は4.7μmだった。つまり、最終仕上げ後のLT基板の内外周での差は0.3μmであり、非常に小さな値だった。
【0038】
[実施例2]
実施例1と同様にして、エポキシ樹脂を介してSi基板にLT基板を接合した複合基板を得た。LT基板のうちSi基板との接合面とは反対側の面をグラインダで研削し、LT基板の厚みを25μmとした。続いて、
図4に示す研磨装置120を用意し、複合基板を基板キャリア126にワックスで貼り付け、研磨定盤122にウレタンパッド124を載せ、ダイヤスラリー(粒径1μm)を用いてラップ研磨した。この際、基板キャリア126の中心部の押圧力が外周部よりも大きくなるように、基板キャリア126の中心部に重さ50gの錘128を載せた。その結果、LT基板の厚みは中心部から外周部に向かって徐々に厚くなった。LT基板の中心部と外周部とでは3.6μmの厚みの差があった。続いて、基板キャリア126に複合基板を付けたまま、錘128を外し、ウレタンパッド124をスウェードパッド132に交換した。そして、パイプ129からスウェードパッド132にコロイダルシリカを含むスラリーを供給しながら研磨定盤122及び基板キャリア126を軸回転させ、LT基板の最終仕上げ(ダメージ除去)を行った。最終仕上げは、LT基板の外周部の研磨量が4μmになるまで行った。このとき、LT基板の中心部の研磨量は0.1μmであり、ほとんど研磨されていなかった。最終仕上げ後のLT基板の内外周での差は0.3μmであり、非常に小さな値だった。
【0039】
[比較例1]
基板キャリア126にスウェードシート130を取り付ける工程を除いた以外は実施例1と同様の手順で複合基板を研磨した。LT基板の厚みを測定したところ、中心部では目標値の5μmであったが、外周部は3.8μmであり、中心部と1μm以上の差が出た。以上の実施例、比較例の結果から、本発明の効果が確認できた。
【符号の説明】
【0040】
10 複合基板、12 圧電基板、12a 外周部、12b 中心部、14 支持基板、30 複合基板、50 複合基板、120 研磨装置、122 研磨定盤、122a シャフト、124 ウレタンパッド、126 基板キャリア、126a シャフト、128 錘、129 パイプ、130 スウェードシート、132 スウェードパッド。