特許第6342103号(P6342103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6342103
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】シェルターの扉構造
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20180604BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20180604BHJP
   E04H 9/14 20060101ALI20180604BHJP
   E05D 15/06 20060101ALI20180604BHJP
   E06B 3/36 20060101ALI20180604BHJP
   E06B 3/46 20060101ALI20180604BHJP
   E06B 3/70 20060101ALI20180604BHJP
   E06B 3/90 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   E06B5/00 Z
   E04H9/02 301
   E04H9/14 Z
   E05D15/06 124A
   E06B3/36
   E06B3/46
   E06B3/70 Z
   E06B3/90
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-511171(P2018-511171)
(86)(22)【出願日】2017年9月4日
(86)【国際出願番号】JP2017031787
【審査請求日】2018年3月20日
(31)【優先権主張番号】特願2016-173255(P2016-173255)
(32)【優先日】2016年9月6日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517357826
【氏名又は名称】株式会社シェルタージャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】矢野 昭彦
【審査官】 鳥井 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭52−155304(JP,U)
【文献】 特開2016−040440(JP,A)
【文献】 特開2013−199259(JP,A)
【文献】 特開昭60−199167(JP,A)
【文献】 特開昭61−179973(JP,A)
【文献】 実開平05−045177(JP,U)
【文献】 特開2011−026934(JP,A)
【文献】 特開2013−253379(JP,A)
【文献】 米国特許第6343443(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00
E04H 9/00−9/16
E06B 3/46
E06B 3/68−3/88
E06B 3/90
E05C 17/64
E05C 19/00−19/18
E05D 13/00
E05D 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が形成された曲面を有する本体と、
前記開口部に設けられた第1扉枠と、
前記曲面に沿って設けられた引き戸となる内扉と、
前記内扉を収容する戸袋部と、
前記内扉を閉じた状態で内側から固定できる突っ張り棒と、
前記内扉の外側に回動可能、又は開閉可能に設けられる外扉と、
を備えたことを特徴とするシェルターの扉構造。
【請求項2】
前記内扉及び/又は外扉は、表板と裏板を有し、それらの間に、縦方向に配置したC型鋼材又は中空管を連設する内部構造を有することを特徴とする請求項1に記載のシェルターの扉構造。
【請求項3】
前記第1扉枠の面方向と所定角度をなす方向に第2扉枠を備え、
前記第2扉枠は前記外扉が開いた状態で、前記外扉を拘持することを特徴とする請求項1又は2に記載のシェルターの扉構造。
【請求項4】
前記内扉は、第1レール上を走行可能な吊り戸構造の引き戸であり、
前記第1レールは、前記内扉の下方に形成された第1凹部に敷設されることを特徴とする請求項1から3いずれか1項に記載のシェルターの扉構造。
【請求項5】
前記外扉は、第2レール上を走行可能な前記曲面に沿って設けられた吊り戸構造の引き戸であり、
前記第2レールは、前記外扉の下方に形成された第2凹部に敷設されることを特徴とする請求項1、2、4のいずれか1項に記載のシェルターの扉構造。
【請求項6】
前記内扉の表板に対向する前記第1扉枠の裏面に、外周部に沿って環状に設けられた封止材を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のシェルターの扉構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平時において、居住空間として利用可能なシェルターの扉構造に関する。
【背景技術】
【0002】
平成23年3月11日に発生した東日本大震災以降、各地で地震が多発しており、日本列島は地震の活動期に入っているという見方の専門家が多い。近い将来、巨大地震が南海トラフで発生するとの観測もある。このため、災害時に自ら救命するための対策を準備しておくことが不可欠である。
【0003】
地震による被害として、建物の倒壊など地震そのものに起因するものもあるが、東日本大震災の例にみられるように地震により発生した、地震火災、津波、津波火災に起因するものも想定される。
【0004】
津波の発生が予測されるときは、自治体があらかじめ定めた高台の施設へ避難することが推奨されている。しかし、地震発生から津波が到達するまでの時間は非常に早く、例えば、東海、東南海、南海の三連動地震が発生したときの予測では、地震発生後わずか5分で30mの津波が襲来する地域も存在する。このような短時間に、高台の施設に避難することは、極めて困難である。そのため、海岸近くに居住する人々は避難が間に合わず、津波に呑み込まれる危険にさらされることとなる。それにもかかわらず、海岸近くに避難シェルターはほとんど存在しないのが実情である。
【0005】
こうした地震などの災害時に自ら救命するための対策としては、平時において居住空間等として使用し、地震時において避難シェルターとして利用できるシェルターが提案されている。
【0006】
特許文献1では、居住空間内にシェルターが配置されている避難シェルター付住宅が開示されている。日常生活においてシェルターを有効活用できるとともに、災害時において住人は一歩も外に出ることなく災害と同時に素早く非難することができるシェルターである。
【0007】
特許文献2では、平時においては、公民館や図書館などの公共施設として利用可能とし、津波が襲来した場合には、容易に浮上し避難場所を確保できる浮体式大人数緊急避難シェルターが開示されている。
【0008】
特許文献3では、通常の生活に使用する個人住宅として利用できるとともに、津波が襲ってきたときに人間等が避難可能なシェルターの津波対策用の扉が開示されている。具体的には、開口部周辺の壁面を扉押圧機構によってシールする引き戸式の扉である。
【0009】
【特許文献1】特開2016−75077号公報
【特許文献2】特開2015−20603号公報
【特許文献3】特開2013−15796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1では、扉構造について具体的な構成は開示されていない。特許文献2では、外部と通行する入り口は、水密扉と気密扉の2重構造とし、水密扉は常時開放状態とする使用態様が開示されている。水密扉は重量があり、開閉に多大な労力を要するためである。このような使用態様で地震が来た場合、重量のある水密扉の丁番が破損し、水密扉として機能しない可能性がある。特許文献3で開示されている扉構造は機構が複雑でありコストダウンすることができない。
【0011】
本発明の課題は、平時での使用が容易で、地震時において高い安全性を有する安価なシェルターの扉構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、シェルターの扉構造であって、開口部が形成された曲面を有する本体と、開口部に設けられた第1扉枠と、曲面に沿って設けられた引き戸となる内扉と、内扉を収容する戸袋部と、内扉を閉じた状態で内側から固定できる突っ張り棒と、内扉の外側に回動可能又は開閉可能に設けられる外扉を備えたことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、シェルターの扉構造は、内扉と、内扉の外側に回動可能又は開閉可能に設けられる外扉の2重構造となっているので、それぞれの扉は1重構造の扉に比べて容易に開閉することができる。また、曲面に沿って設けられた引き戸となる内扉と、内扉を収容する戸袋部を備えているので、平時において、内扉を戸袋部に収容した状態にすることによって、外扉のみの開閉で、簡単に外部空間と本体内の出入りをすることができる。
【0014】
また、この構成によれば、内扉を閉じた状態で内側から押圧することによって固定できる突っ張り棒を備えているので、津波等の災害時において、内扉を開口部に強固にロックすることができる。
【0015】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のシェルターの扉構造において、内扉及び/又は外扉は、表板と裏板を有し、それらの間に、縦方向に配置したC型鋼材又は中空管を連設する内部構造を有することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、内扉及び/又は外扉は、表板と裏板を有し、それらの間に、縦方向に配置したC型鋼材又は中空管を周状に連設する内部構造を有するので、強度が高い扉を低コストで提供することができる。また、内部に空気層を構成することから断熱効果が期待できる。
【0017】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載のシェルターの扉構造において、第1扉枠の面方向と所定角度をなす方向に第2扉枠を備え、第2扉枠は外扉が開いた状態で、外扉を拘持することを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、第1扉枠の面方向と所定角度をなす方向に第2扉枠を備え、第2扉枠は前記外扉が開いた状態で、外扉の移動を制限することができるので、平時において、内扉のみの開閉で、簡単に外部空間と本体内の出入りをすることができる。さらに、内扉を戸袋部に収容した状態にすることによって、内扉及び外扉を開閉することなく、簡単に外部空間と本体内の出入りをすることができる。
【0019】
また、外扉が拘持された状態で、不意に地震が発生したとしても、第2扉枠の全体で外扉の地震力を受け止めることができるので、外扉の構造上の弱点となる扉枠との接続部(例えば丁番)の破損を防止することができる。
【0020】
請求項4に係る発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載のシェルターの扉構造において、内扉は、第1レール上を走行可能な吊り戸構造の引き戸であり、第1レールは、内扉の下方に形成された第1凹部に敷設されていることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、内扉は、第1レール上を走行可能な吊り戸構造の引き戸であり、第1レールは、内扉の下方に形成された第1凹部に収容されているので、地震時において、第1凹部により内扉の変形が制限され第1レールからの内扉の逸脱を防止することができる。
【0022】
請求項5に係る発明は、請求項1、2、4のいずれか1項に記載のシェルターの扉構造において、外扉は、第2レール上を走行可能な曲面に沿って設けられた吊り戸構造の引き戸であり、第2レールは、外扉の下方に形成された第2凹部に敷設されていることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、外扉は、第2レール上を走行可能な曲面に沿って設けられた吊り戸構造の引き戸であり、第2レールは、外扉の下方に形成された第2凹部に収容されているので、地震時において、第2凹部により外扉の変形が制限され第2レールからの外扉の逸脱を防止することができる。
【0024】
請求項6に係る発明は、請求項1から5に記載のシェルターの扉構造において、内扉の表板に対向する第1扉枠の裏面に、外周部に沿って環状に設けられた封止材を備えることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、内扉の一方の面に対向する第1扉枠面に、外周部に沿って環状に設けられた封止材を備えるので、突っ張り棒によって内扉が開口部に押圧されると、この封止材によって本体の内部は密閉され、外部から水や有毒ガス等が流入することはない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本実施形態1のシェルターの扉構造を取り付けた避難シェルターの断面平面図である。
図2】同、外扉が第2扉枠に拘持された状態の正面図である。
図3】同、外扉が第2扉枠に拘持された状態の側面図である。
図4図1の矢視A−A断面図である。
図5】同、矢視B−Bの部分断面図である。
図6】本実施形態1のシェルターの扉構造の内扉の表側からの斜視図である。
図7】同、内扉に突っ張り棒を装着した部分平面図である。
図8】同、外扉にロック金具が取り付けられた状態の部分断面図である。
図9】本実施形態2のシェルターの扉構造を取り付けた避難シェルターの断面平面図である。
図10】同、外扉の内側からの斜視図である。
【0027】
本実施形態1のシェルターの扉構造1(以下、扉構造1という。)について、図1から図7を参照し説明する。扉構造1は、開口部103が形成された曲面2aを有する本体2と、曲面2aに沿って設けられた引き戸となる内扉3と、内扉3を収容する戸袋部4と、内扉3を閉じた状態で内側から押圧できる突っ張り棒6と、内扉の外側に開閉可能に設けられる外扉7と、第1扉枠5の面方向と所定角度(ここでは90°)をなす方向に第2扉枠8を備えている。
【0028】
本体2は、居住空間内に設けられた円筒状の構造物であり、図1に示す通り、内部に螺旋階段104と、踊り場106と、中央部に配置された階段柱となる円柱形状の中心軸105が設けられている。螺旋階段104と、踊り場106の一方の端部は中心軸105に、他方の端部は本体2の壁面に固定されている。本体2の上端部に設けられた天井ドーム(図示略)には、開口部(図示略)及びハッチ(図示略)が取り付けられている。本体2は、堅牢な鉄筋コンクリート製であり、表面加工によって、高い防水性及び耐火性が付与されている。
【0029】
居住空間と本体2の内部を往来するための開口部103が、本体2に設けられている。開口部103の下端は、床107及び踊り場106と同一の高さに位置している。
【0030】
内扉3は、開口部103を開閉するためのものであり、曲面2aに沿った形状を有する吊り戸構造の引き戸である。ここでの曲面2aは本体2の壁面の形状であり円形である。内扉3は曲面板である表板30(例えば板厚3mm)と裏板31(例えば板厚9mm)が所定の間で配置されて、それらの隙間に複数個のC型鋼材32(例えば厚さが3mm)を連続して複数配置してある。C型鋼材32に代えて中空管でもよい。ここでの中空管は鋼製の管であり、具体的には、単管パイプ、構造用鋼管、角パイプをいう。また、C型鋼材32の間にくさびを設けて、強度をより高くすることができる。
【0031】
表板30の外面にはグラスウールボード33が設置されている。グラスウールボードの外側に固定するための金属製たとえばステンレス製のワイヤ34が十文字に設けられている。これにより、内扉の断熱効果を高め、火災時での本体2内の温度上昇を抑制することができる。(図6参照)
【0032】
図4に示す通り、レール支持装置93が、内扉3の上方の壁面に固定されている。レール支持装置93の内部に一対の懸垂レール90、90(以後、懸垂レール90という)が、また、内扉3の下方には第1レール9が、曲面2aに沿って設けられており、懸垂レール90上を一対のローラ90a、90a(以後、ローラ90aという)が、第1レール9上を鉄球9aが走行する。
【0033】
レール支持装置93は断面視矩形の筒状の構造であり、底部の中央部にスリットが形成されており、複数個のハンガー95がこのスリットを貫通する状態でレール支持装置93の内部に挿入されている。
【0034】
T字形のハンガー95は内扉3を吊り下げるためのものであり、先端部にローラ90aが回転可能に取り付けられている。複数個のローラ90aが、懸垂レール90上を走行すると同時に、複数個の鉄球9aが第1レール9上を走行することによって、内扉3は、曲面2aに沿って円滑に移動する。内扉3は、複数の回転体を介して懸垂レール90、第1レール9に支持されているので、内扉3に生じる地震力を分散して受けることにより、レールからの逸脱を回避することができる。
【0035】
図4、5に示す通り、断面視コ字形の溝金具108aは、本体2の壁面に沿って内扉3の下方に設けられている。溝108(第1凹部)は、溝金具108aが形成する凹部を意味し、地震力による内扉3の面外方向の移動を制限するためのものである。第1レール9は、踊り場106から所定の深さ(例えば20cm)に位置する溝108の底部に敷設されている。内扉3は、ハンガー95に吊り下げられた状態であることから、面外方向にたわみやすい構造となっている。地震力によって内扉3の扉面が面外方向に変形すると、溝108の壁面に内扉3が接触する。これにより、内扉3の面外方向の変形を制限することができる。
【0036】
第1レール9は、内扉3の下部に設けられている複数個の鉄球9aを回転させることによって、円滑に内扉3を走行させるものであり、溝108の底面に敷設されている。上述した通り、地震時において、溝108で内扉3の変形を制限することによって、鉄球9aの第1レール9からの逸脱を回避することができる。
【0037】
なお、溝108が形成する窪みは着脱可能な板で塞いでおくことが好ましい。これにより、平時においては、この窪みに足を取られることなく安全に本体2の内部と居住空間を往来し、地震時においては、板を取り外すことによって内扉3を閉扉することができる。
【0038】
戸袋部4は内扉3を拘持した状態で収容するためのものであり、図1、及び図4に示す通り、本体2の内部に曲面2aに沿って設けられている。平時において、内扉3を戸袋部4に拘持した状態で収容しておくことにより、内扉3を開閉することなく容易に本体2の内部と外部を往来することができる。また、地震時においては、地震力によって、内扉3が面外方向に変形すると、内扉3の扉面は、ほぼ全体にわたって戸袋部4に接触する。これにより、内扉3に生じる応力を戸袋部4が分担する。その結果、内扉3の破損を防止するとともに、第1レール9からの逸脱を回避できる。すなわち、戸袋部4は地震時において、内扉3の変形を制限することで、安全性を向上することができる。
【0039】
第1扉枠5は、内扉3と外扉7を閉鎖するとき、これらを閉止するためのものであり、開口部103を形成する外縁形状が矩形の骨組み構造である。これにより、地震力に対して変形しづらい強固な開口部103とすることができる。第1扉枠5の下端部は、床107の下方に位置している。すなわち、床107の上方に位置するコ字形の骨組み部分のみが視認できる状態となっている。また、パッキン35(封止材)が、本体2の内部側の第1扉枠面に、外周部に沿って環状に2重に設けられている。
【0040】
上層の踊り場(図示略)の下面に、内扉3を第1扉枠5に密着することができる突っ張り棒6が吊り下げられている。突っ張り棒6を吊り下げるための線材(図示略)と線材を巻き取る回転具(図示略)とを連動させることによって突っ張り棒6を上昇及び下降することができる。突っ張り棒6は、棒体61と、ジャッキ62と、受け金具13a、bを有している。受け金具13aは棒体61の一端に取り付けられており、受け金具13bはジャッキ62を介して棒体61の他端に取り付けられている。受け金具13aは、円柱形状の中心軸105に密着する形状であり、受け金具13bは、内扉3に密着する形状である。
【0041】
突っ張り棒6の使用について説明する。平時においては、突っ張り棒6は上層の踊り場下面に吊り下げられている。地震発生後、外扉7及び内扉3を閉め、本体2の内部に避難する。突っ張り棒6を下降し、受け金具13aを中心軸105に密着し、ジャッキ62を回転し、受け金具13bを内扉3に押圧する。これにより、内扉3はパッキン35を介して第1扉枠5に密着するので、本体2の内部は、高い気密性を備え、津波や津波火災に起因する海水や有毒ガスが流れ込むことはない。引き戸構造の扉は、開閉式の扉に比べ開閉の容易さ、地震荷重に対する耐荷重性能に優れるが、その反面閉塞性能が劣る。しかし、本実施形態1の通り内扉3を吊り戸構造の引き戸とし、内部から突っ張り棒6で押圧することで、閉塞性能を向上させることができる。
【0042】
なお、本実施形態では、突っ張り棒6は1本のみ備えているが、複数個備えてもよい。また、受け金具13bは曲面2aの円周方向に長くしておくことが好ましい。これにより、内扉3を第1扉枠5により均一に押圧できるからである。
【0043】
図1に示す通り、外扉7は、第1扉枠5に丁番7aを介して矢印V1方向に回動可能に固定されている。図3に示す通り、外扉7は、開いた状態で、ロック金具70を矢印V2方向に回転することにより第2扉枠8に拘持される。これにより、地震時において、外扉7に作用する地震力を、丁番7aのみで受けるのではなく、丁番7a、ロック金具70、及び第2扉枠8のそれぞれに分散して受けることができる。その結果、構造上の弱点となる丁番7aの破損を免れることができる。
【0044】
ロック金具70は、外扉7を第1扉枠5又は第2扉枠8に拘持するためのものであり、図8に示す通り、両端部が突出した状態で外扉7に回動可能に固定される軸部70aと、軸部70aの両端から垂直に延びる回転部70b、cと、回転部70bから下方に延びる回転部70dより成っている。外扉7を開いた状態で、回転部70b、dを矢印V2方向に回転すると、回転部70cは第2扉枠8に形成されたロック凹部8aに嵌挿される。これにより、外扉7は第2扉枠8に拘持される。同様に、地震時において、外扉7を閉じた状態で、本体2の内部側から回転部70b、又は70dを回転することにより、外扉7は、第1扉枠5に拘持される。なお、本実施形態では、1個のロック金具70で外扉7を第1、又は2扉枠に拘持しているが、複数のロック金具70で拘持してもよい。そうすることによって、外扉7に作用する地震力をさらに分散して受けることができる。また、ロック金具70を用いて外扉7を第1扉枠5、又は第2扉枠8に拘持しているが、これに限らずカムロック構造の金具を用いてもよい。
【0045】
外扉7は平板の矩形形状であり、その構成は内扉3とほぼ同じであるので説明は省略する。なお、外扉7は、第1扉枠5の内寸法よりも所定以上、大きくすることが好ましい。これにより、耐火性能が向上する。
【0046】
第2扉枠8は、矩形の骨組み構造であり、第1扉枠5と直交して、本体2の外部に配置されている。第2扉枠8の下端部は床107の下方に位置している。すなわち、床107の上方に位置するコ字形の骨組み部分のみが視認できる状態となっている。床107から所定高さ(例えば200cm)上、床107から所定深さ(例えば10cm)の位置に、所定角度、例えば、直角に配置することが好ましい。
【0047】
内扉3、及び外扉7は、平時において開いた状態で使用することができる。地震力によって破損する可能性が低いためである。これにより、扉の開閉をすることなく居住空間と階段のある本体2の内部を自由に往来することができる。
【0048】
本実施形態2のシェルターの扉構造201(以下、扉構造201という。)について図9図10を参照し説明する。この実施形態2は実施形態1と基本的には共通するので、部品番号を200番台として図示と説明は援用し、相違点を中心として説明する。
【0049】
第2実施形態の第1実施形態に対する相違点としては、本体202に設けられる外扉207を図9図10に示す通り、曲面形状の引き戸としたものである。この外扉207は内扉3と同様の構造である。具体的には、曲面板である表板230(例えば板厚3mm)と裏板231(例えば板厚9mm)が所定の間で配置されて、それらの隙間に複数個のC型鋼材232(例えば厚さが3mm)を連続して複数配置してある。C型鋼材232の間にくさび238を設け、より強度を強くしている。
【0050】
内扉203と外扉207に対応して第1実施形態の戸袋部4と同様の構造の戸袋部204と、この戸袋部204の外側に周設された戸袋部271を二重に設けている。第1実施形態の第1レール9と同様の構造の第1レール209と、この第1レール209の外側に周設された第2レール259とを二重に設けている。
【0051】
第1レール209、第2レール259は、第1実施形態の溝108と同様の溝(第2凹部、図示略)の底面に敷設されている。
【0052】
内扉203、及び外扉207は、平時において開いた状態で使用することができる。地震力によって破損する可能性が低いためである。これにより、扉の開閉をすることなく居住空間と階段のある本体202の内部を自由に往来することができる。なお、第1実施形態と同様に溝の窪みは着脱可能な板で塞いでおくことが好ましい。
【0053】
突っ張り棒206は、津波波圧に対応し、適宜、伸長させて、内扉203の内壁と、中心軸205又は中心軸205を通貫して本体202の内壁との間に設置される。内扉203、外扉207に緊急避難口291を設け、蓋を脱着可能とする。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、居住空間内に設置するシェルターの扉構造として、安価で使い勝手がよく、しかも安全性が高く、産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0055】
1、201 :扉構造
2、202 :本体
2a :曲面
3、203 :内扉
4、204,271 :戸袋部
5 :第1扉枠
6、206 :突っ張り棒
7,207 :外扉
7a :丁番
8 :第2扉枠
8a :ロック凹部
9、209 :第1レール
9a :鉄球
30、230 :表板
31、231 :裏板
32,232 :C型鋼材
70 :ロック金具
90 :懸垂レール
90a :ローラ
93 :レール支持装置
95 :ハンガー
103 :開口部
104 :螺旋階段
105、205 :中心軸
106、206 :踊り場
107 :床
108 :溝(第1凹部)
108a :溝金具
259 :第2レール
【要約】

災害時のシェルターの扉の安全性を高めることにある。
扉構造1は、開口部103が形成された曲面2aを有する本体2と、開口部103に設けられた第1扉枠5と、曲面2aに沿って設けられた引き戸となる内扉3と、内扉3を収容する戸袋部4と、内扉3を閉じた状態で内側から固定できる突っ張り棒6と、内扉3の外側に開閉可能に設けられる外扉7と、第1扉枠5の面方向と所定角度(ここでは90°)をなす方向に第2扉枠8と、を備え、第2扉枠8は、外扉7が開いた状態で、外扉7を拘持する構造である。
図1
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