(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2算出部は、前記注目領域および前記候補領域の各々が前記対象物の領域に含まれる確率が高いほど、前記画素値の差分に乗算される重みが小さくなるように重み付けを行う、
請求項2に記載の画像処理装置。
前記第2算出部は、前記注目領域と、前記注目領域に隣接する領域を示す隣接領域との視差の差分に対して、前記尤度に基づく重み付けを行って視差の連続の程度を算出し、
前記選択部は、前記類似の程度と前記連続の程度とに基づいて、前記対応領域となる前記候補領域を選択する、
請求項1に記載の画像処理装置。
前記第2算出部は、前記注目領域および前記候補領域の各々が前記対象物の領域に含まれる確率が高いほど、前記視差の差分に乗算される重みが大きくなるように重み付けを行う、
請求項6に記載の画像処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る画像処理装置、方法、及びプログラム、並びに、立体画像表示装置の実施形態を詳細に説明する。以下の実施形態では、冠動脈など血管のX線撮影を行うX線診断装置に本発明を適用した場合について説明するが、これに限られるものではない。
【0013】
図1は、本実施形態に係るX線診断装置100の構成の一例を示す図である。
図1の示すように、本実施形態に係るX線診断装置100は、高電圧発生器11と、X線管12と、X線絞り装置13と、天板14と、Cアーム15と、X線検出器16とを備える。また、X線診断装置100は、Cアーム回転・移動機構17と、天板移動機構18と、Cアーム・天板機構制御部19と、絞り制御部20と、システム制御部21と、入力部22と、表示部23とを備える。また、X線診断装置100は、画像データ生成部24と、記憶部25と、マスク画像生成部26と、差分画像生成部27と、画像処理部28とを備える。また、X線診断装置100は、インジェクター30をさらに備える。
【0014】
インジェクター30は、被検体Pに挿入されたカテーテル(血管に挿入される器具の一例)から造影剤を注入するための装置である。ここで、インジェクター30からの造影剤注入は、後述するシステム制御部21を介して受信した注入指示に従って実行される。具体的には、インジェクター30は、後述するシステム制御部21から受信する造影剤の注入開始指示や、注入停止指示、さらに、注入速度などを含む造影剤注入条件に応じた造影剤注入を実行する。なお、インジェクター30は、操作者が直接インジェクター30に対して入力した注入指示に従って注入開始や、注入停止を実行することも可能である。
【0015】
高電圧発生器11は、システム制御部21による制御の下、高電圧を発生し、発生した高電圧をX線管12に供給する。X線管12は、高電圧発生器11から供給される高電圧を用いて、X線を発生する。
【0016】
X線絞り装置13は、絞り制御部20による制御の下、X線管12が発生したX線を、被検体Pの関心領域に対して選択的に照射されるように絞り込む。例えば、X線絞り装置13は、スライド可能な4枚の絞り羽根を有する。X線絞り装置13は、絞り制御部20による制御の下、これらの絞り羽根をスライドさせることで、X線管12が発生したX線を絞り込んで被検体Pに照射させる。なお、X線管12と、X線絞り装置13とをまとめてX線管装置とも呼ぶ。天板14は、被検体Pを載せるベッドであり、図示しない寝台の上に配置される。なお、被検体Pは、X線診断装置100に含まれない。
【0017】
X線検出器16は、被検体Pを透過したX線を検出する。例えば、X線検出器16は、マトリックス状に配列された検出素子を有する。各検出素子は、被検体Pを透過したX線を電気信号に変換して蓄積し、蓄積した電気信号に基づいて生成した投影データを画像データ生成部24に送信する。例えばX線検出器16は、蓄積した電気信号に対して、電流・電圧変換やA(Analog)/D(Digital)変換、パラレル・シリアル変換を行い、投影データを生成する。
【0018】
ここでは、X線管12、X線絞り装置13、および、X線検出器16は、被検体Pに対するX線透視によって投影データを生成する「X線透視撮影部」に対応していると考えることもできる。
【0019】
Cアーム15は、X線管12、X線絞り装置13及びX線検出器16を保持する。X線管12及びX線絞り装置13とX線検出器16とは、Cアーム15により被検体Pを挟んで対向するように配置される。
【0020】
Cアーム回転・移動機構17は、Cアーム15を回転及び移動させるための機構であり、天板移動機構18は、天板14を移動させるための機構である。Cアーム・天板機構制御部19は、システム制御部21による制御の下、Cアーム回転・移動機構17及び天板移動機構18を制御することで、Cアーム15の回転や移動、天板14の移動を調整する。絞り制御部20は、システム制御部21による制御の下、X線絞り装置13が有する絞り羽根の開度を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線の照射範囲を制御する。
【0021】
ここで、Cアーム・天板機構制御部19は、システム制御部21による制御の下、Cアーム回転・移動機構17を駆動して撮像系(X線管12、X線絞り装置13、X線検出器16)が装着されたCアーム15を所定の角度範囲内で往復スライド移動させることにより、両眼立体視に好適な2つの撮影位置(第1撮影位置、第2撮影位置)を設定することができる。
【0022】
図2(a)は、上端部近傍にX線検出器16が取り付けられる一方、下端部近傍にX線管12およびX線絞り装置13(以下、「X線発生器」と称する場合がある)が取り付けられたCアーム15の往復スライド移動の方向(矢印)を示したものであり、
図2(b)は、このとき設定される両眼立体視に好適な第1撮影位置Ra(以下の説明では「第1視点」と称する場合がある)および第2撮影位置Rb(以下の説明では「第2視点」と称する場合がある)を示している。以下の説明では、第1撮影位置Raの撮影方向を「第1撮影方向」と称し、第2撮影位置Rbの撮影方向を「第2撮影方向」と称する場合がある。
【0023】
すなわち、Cアーム・天板機構制御部19が、システム制御部21による制御の下、Cアーム回転・移動機構17を駆動して、Δθの角度範囲内におけるCアーム15の往復スライド運動を高速で行うことにより、X線発生器およびX線検出器16(撮像系)は被検体Pの周囲でCアーム15と共に高速往復移動し、例えば、所定の撮影間隔Δdだけ離れた高速往復の折り返し点において第1撮影位置Ra(第1視点)および第2撮影位置Rb(第2視点)が設定される。なお、第1視点および第2視点の設定はこれに限られるものではない。
【0024】
図1に戻って説明を続ける。画像データ生成部24は、X線検出器16から供給される投影データに基づいて画像データを生成する。本実施形態における画像データ生成部24は、第1視点(第1撮影位置Ra)におけるX線透視時(第1撮影方向のX線透視時)にX線検出器16から供給される投影データに基づいて、第1視点に対応する画像データ(以下、「第1の画像データ」と称する場合がある)を生成し、生成した第1の画像データを、後述の記憶部25が有する画像データ保存部51に格納する。また、画像データ生成部24は、第2視点(第2撮影位置Rb)におけるX線透視時(第2撮影方向のX線透視時)にX線検出器16から供給される投影データに基づいて、第2視点に対応する画像データ(以下、「第2の画像データ」と称する場合がある)を生成し、生成した第2の画像データを、後述の記憶部25が有する画像データ保存部52に格納する。
【0025】
記憶部25は、各種のデータを記憶する。本発明に関するものとしては、記憶部25は、3次元ボリュームデータ保存部40、画像データ保存部51および52を有する。
【0026】
3次元ボリュームデータ保存部40は、例えば心臓の冠動脈にガイドワイヤやカテーテルなどの器具を挿入して、冠動脈の狭くなった部分、または、つまっている部分を広げるPCI治療の前(術前)に、予め生成された3次元血管画像(血管のボリュームデータ)を記憶する。例えばX線診断装置100は、DA(Digital Angiography)撮影やDSA(Digital Subtraction Angiography)撮影などによって、3次元血管画像を再構成するための複数の2次元投影データを収集し、収集した2次元投影データを再構成して3次元血管画像を生成することもできる。そして、生成した3次元血管画像を3次元ボリュームデータ保存部40に格納することもできる。なお、これに限らず、例えば外部装置(例えばX線CT装置)から取得した3次元血管画像を3次元ボリュームデータ保存部40に格納する形態であってもよい。
【0027】
なお、DA(Digital Angiography)撮影とは、X線検出器が検出したX線の情報に基づいて、造影剤により血管および臓器が強調された血管造影画像をデジタル処理により生成する撮影方法を指す。また、DSA(Digital Subtraction Angiography)撮影とは、X線検出器が造影剤注入前に検出したX線の情報および造影剤注入後に検出したX線の情報に基づいて、造影剤注入前後それぞれの画像を作成し、造影剤注入後の血管造影画像からの注入前の画像を差し引くことで、造影剤がいきわたった対象物(この例では血管)のみの画像をデジタル処理により生成する撮影方法を指す。
【0028】
画像データ保存部51は、画像データ生成部24によって生成された第1の画像データを記憶する。この画像データ保存部51には、第1の画像データが一定の時間間隔で収集されて、時系列に保存されることとする。
【0029】
画像データ保存部52は、画像データ生成部24によって生成された第2の画像データを記憶する。この画像データ保存部52には、第2の画像データが一定の時間間隔で収集されて、時系列に保存されることとする。
【0030】
マスク画像生成部26は、画像データ保存部51に格納された第1の画像データを元に、PCI治療前における第1の画像データ(カテーテルなどの器具が被検体Pに挿入される前の状態における第1の画像データ)を、第1視点に対応するマスク画像として生成する。また、マスク画像生成部26は、画像データ保存部52に格納された第2の画像データを元に、PCI治療前における第2の画像データを、第2視点に対応するマスク画像として生成する。
【0031】
差分画像生成部27は、PCI治療時に、マスク画像生成部26により生成された第1視点に対応するマスク画像と、画像データ保存部51に格納された最新の第1の画像データとをサブストラクションすることにより、
図3のようにカテーテルなどの器具(対象物)のみが映り込んだ第1視点に対応する画像(以下の説明では、「基準画像」と称する場合がある)を生成する。この基準画像は、第1撮影方向で対象物を撮影した画像であると捉えることができ、請求項の「第1画像」に対応している。本実施形態における基準画像は、対象物が血管に挿入されていない状態の被検体Pに対する第1撮影方向のX線透視により生成された投影データに基づく画像と、対象物が血管に挿入された状態の被検体Pに対する第1撮影方向のX線透視により生成された投影データに基づく画像との差分画像であると考えることができる。
【0032】
また、差分画像生成部27は、マスク画像生成部26により生成された第2視点に対応するマスク画像と、画像データ保存部52に格納された最新の第2の画像データとをサブストラクションすることにより、
図4のようにカテーテルなどの器具のみが映り込んだ第2視点に対応する画像(以下の説明では、「参照画像」と称する場合がある)を生成する。この参照画像は、第2撮影方向で対象物を撮影した画像であると捉えることができ、請求項の「第2画像」に対応している。本実施形態における参照画像は、対象物が血管に挿入されていない状態の被検体Pに対する第2撮影方向のX線透視により生成された投影データに基づく画像と、対象物が血管に挿入された状態の被検体Pに対する第2撮影方向のX線透視により生成された投影データに基づく画像との差分画像であると考えることができる。以上のようにして差分画像生成部27によって生成された基準画像および参照画像は、後述の画像処理部28に供給される。
【0033】
画像処理部28は、差分画像生成部27から供給された画像に基づく画像処理を行う。例えば、画像処理部28は、基準画像の注目領域(少なくとも1つの画素を含む領域)に対応する参照画像の領域(対応領域)を探索し、その探索結果を利用して、新たな視点(以下の説明では、「中間視点」と称する場合がある)に対応する差分画像(この例ではカテーテルなどの器具のみが映り込んだ画像、以下の説明では「中間画像」と称する場合がある)を生成することもできる。画像処理部28の詳細な内容については後述する。
【0034】
入力部22は、X線診断装置100を操作する医師や技師などの操作者から各種指示を受け付ける。例えば、入力部22は、マウス、キーボード、ボタン、トラックボール、ジョイスティックなどを有する。入力部22は、操作者から受け付けた指示を、システム制御部21に転送する。例えば、入力部22は、X線画像における任意の領域を指定するための指定指示を受け付ける。
【0035】
表示部23は、操作者の指示を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、画像処理部28により生成された画像などを表示する。例えば、表示部23は、モニタを有する。なお、表示部23は、複数のモニタを有してもよい。
【0036】
システム制御部21は、操作者の操作に基づいてX線診断装置100全体を制御する装置である。
【0037】
次に、本実施形態に係る画像処理部28について説明する。本実施形態に係る画像処理部28は、上述の基準画像および参照画像において、基準画像の注目領域に対応する参照画像の領域(対応領域)を探索する装置である。注目領域とは、少なくとも1つの画素を含む領域である。
【0038】
まず、エネルギー最小化による一般的な対応点探索について説明する。対応点探索の方針としては、注目領域と画像特徴が類似しており、かつ注目領域の視差と注目領域に隣接する領域(隣接領域)の視差が近くなるような領域を対応点位置として求める。すなわち、画像特徴が類似している領域を候補領域とし、候補領域のうち、注目領域の視差と隣接領域の視差とが滑らかになるような候補領域を、対応点位置(対応領域)として選択する。一般的な対応点探索手法としては注目領域と候補領域との類似の程度と、注目領域の視差と隣接領域の視差との連続の程度との加算によるエネルギーを定義し、画像全体でこのエネルギーが最小となるように各注目領域の対応点位置を探索する。類似の程度とは画像特徴の差で定義され、画像特徴としては画素値などが用いられる。以下の説明では、この類似の程度を「非類似度」と称して説明するが、例えば「類似度」と称しても構わない。また、注目領域の位置とその対応点位置との差は視差と呼ばれ、視差の連続の程度は、注目領域の視差とその隣接領域の視差との差で定義される。以下の説明では、この連続の程度を「非連続性」と称して説明するが、例えば「連続性」と称しても構わない。したがって、エネルギーEは、以下の式1のように定義される。
【数1】
【0039】
上記式1において、pは基準画像における注目領域、p’は、参照画像のうち注目領域に対応する領域(対応領域)の候補を示す候補領域、Pは、基準画像中の注目領域の全体集合、N(p)は注目領域に隣接する領域の全体集合、T
B(p)は注目領域の画素値、T
R(p’)は候補領域の画素値、D(p)は注目領域の視差、D(q)は注目領域に隣接する領域の視差をそれぞれ示している。上記式1の右辺における第1項は、各注目領域に対応する非類似度の総和(第1コスト)、第2項は、各注目領域に対応する非連続性の総和(第2コスト)を表す。
【0040】
上記式1によって表されるエネルギー関数では、各注目領域の非類似度と非連続性がすべて等しく評価されている。よって、画像に含まれる対象物の領域(以下の説明では、「対象物領域」と称する場合がある)が小さい場合には、対象物領域よりも大きな面積を示す背景領域に生じた誤差の影響を受けやすく、対象物領域の対応点位置が正確に求まらない場合がある。そこで、本実施形態に係る画像処理部28では、第1コストと第2コストの計算において、後述の尤度に基づく重み付けを行うことで、対象物領域に含まれる可能性が高い注目領域に対応する非類似度と非連続性の影響度(エネルギー関数に対する影響度)を高めて、対象物領域が小さい場合でも対応点探索を高精度に行うことを実現している。以下、具体的な内容を説明する。
【0041】
図5は、本実施形態に係る画像処理部28の構成の一例を示すブロック図である。
図5に示すように、画像処理部28は、第1取得部101と、第1算出部102と、第2算出部103と、選択部104と、第3算出部105と、設定部106と、第1生成部107と、第2取得部108と、第2生成部109と、合成部110と、表示制御部111とを備える。
【0042】
第1取得部101は、差分画像生成部27により生成された基準画像と参照画像とを取得する。また、第1取得部101は、後述のエピポーラ線を特定するための情報(例えば上述の第1視点(第1撮影位置Ra)や第2視点(第2撮影位置Rb)を示す情報)を、例えばシステム制御部21から取得することもできる。
【0043】
第1算出部102は、画像の特徴を表す特徴情報に基づいて、基準画像および参照画像の各々に含まれる複数の画素ごとに、当該画素が対象物領域に含まれるかどうかの尤度(当該画素が対象物領域に含まれる可能性の度合い)を算出する。そして、第1算出部102は、すべての画素の尤度を特定した尤度マップを作成する。より具体的には以下のとおりである。
【0044】
図6は、第1算出部102の詳細な構成の一例を示す図である。
図6に示すように、第1算出部102は、尤度算出部201と記憶部202とを有する。尤度算出部201は、基準画像および参照画像の各々に含まれる複数の画素ごとに、当該画素の画素値(請求項の「特徴情報」の一例)に基づいて、当該画素の尤度を算出する。
【0045】
記憶部202は、画素値に対する尤度を予め記憶している。この例では、尤度は、0から1の範囲の連続的な値であり、対象物領域に含まれる確率が高い画素値に対して大きな値の尤度が設定される。
【0046】
図7は、画素値と尤度との関係の一例を説明するための図である。
図7(a)は、画素値の頻度を示す図である。実線401は、対象物領域に含まれる画素の画素値の頻度を示し、破線402は、背景領域に含まれる画素の画素値の頻度を示す。
図7(b)は、画素値と尤度との関係を示す尤度関数403の一例を示す図であり、対象物領域の画素値の頻度が最大となる画素値(peak)以上で尤度が1になるように設定されている。また、対象物領域の画素値分布の標準偏差をσとすると、peak−3σ以下となる画素値では尤度が0になるように設定され、peak−3σとpeakの間の画素値に対する尤度は、以下の式2に示すpeak−3σとpeakとを結ぶ1次関数により求めることができる。
【数2】
【0047】
この例では、記憶部202には、上記尤度関数403が予め記憶されており、第1算出部102は、上記尤度関数403に基づいて、基準画像および参照画像の各々に含まれる複数の画素ごとに、当該画素の画素値に対応する尤度を求める。このようにして、第1算出部102は、基準画像および参照画像の各々に含まれる各画素の尤度を算出し、基準画像を構成する複数の画素の各々の尤度を特定可能な基準画像の尤度マップと、参照画像を構成する複数の画素の各々の尤度を特定可能な参照画像の尤度マップとを作成する。
【0048】
なお、以上においては、尤度算出部201は、画素値に基づいて尤度を算出すると述べたが、これに限らず、例えば階調値や輝度値などの画像の特徴を表す特徴情報に基づいて尤度を算出してもよい。また、本実施形態のように、カテーテルやガイドワイヤなどの血管に挿入される器具が対象物である場合は、画像中の血管が含まれる領域が対象物領域である可能性が高いと考えることができるので、例えば画像中の各画素が属するオブジェクトを特定する情報(例えば血管情報など)に基づいて尤度を算出することもできる。この場合、血管情報などの情報が請求項の「特徴情報」に対応すると捉えることができる。また、例えば「人物」が対象物である場合は、画像に含まれる顔特徴情報(例えば顔に含まれる眼や鼻などの各特徴点を示す情報、顔の輪郭を示す情報、肌色を示す情報など)などに基づいて尤度を算出することもできる。この場合、例えば顔特徴情報が請求項の「特徴情報」に対応すると捉えることができる。さらに、例えば画像のうち、ユーザが対象物領域として指定した領域を示すユーザ情報に基づいて尤度を算出することもできる。この場合、上記ユーザ情報が請求項の「特徴情報」に対応すると捉えることができる。
【0049】
図5に戻って説明を続ける。第2算出部103に対しては、第1取得部101より基準画像と参照画像が入力され、第1算出部102より上述の尤度マップが入力される。また、この例では、第2算出部103に対しては、第1取得部101より後述のエピポーラ線を特定するための情報(例えば第1視点や第2視点を示す情報)も入力される。第2算出部103は、基準画像と参照画像の尤度に基づいて、基準画像における注目領域と、参照画像のうち、注目領域に対応する領域を示す対応領域の候補である候補領域との非類似度を算出する。より具体的には、第2算出部103は、注目領域と候補領域との画素値の差分に対して、基準画像と参照画像の尤度に基づく重み付けを行って注目領域と候補領域との非類似度を算出する。以下、詳細な内容について説明する。
【0050】
図8は、第2算出部103の詳細な構成の一例を示す図である。
図8に示すように、第2算出部103は、第1指定部301と、第2指定部302と、第1コスト算出部303と、第2コスト算出部304と、記憶部305と、第3コスト算出部306とを備える。
【0051】
第1指定部301は、第1取得部101より入力された基準画像において、少なくとも1つの画素からなる注目領域を指定(設定)する。より具体的には、第1指定部301は、基準画像に含まれる複数の注目領域を指定する。この例では、基準画像を構成する複数の画素の各々が注目領域に相当し、第1指定部301は、基準画像を構成する複数の画素の各々を、注目領域として順番に(例えば左上の画素からラスタースキャンの順番に)指定する。
【0052】
第2指定部302は、参照画像のうち、基準画像における注目領域の位置に基づいて決まるエピポーラ線上に存在する複数の領域を、当該注目領域に対応する複数の前記候補領域として指定する。より具体的には、上記エピポーラ線は、第1視点と第2視点との位置関係、および、基準画像における注目領域の位置に基づいて決定される。以上のようにして、第2指定部302は、第1指定部301により指定された注目領域ごとに、当該注目領域に対応する複数の候補領域を指定する。以下、一の注目領域に対応する複数の候補領域の求め方について具体的に説明する。
【0053】
図9は、注目領域と候補領域の関係を示した図である。第1指定部301により画素pが注目領域として指定されると、画素pに対応する候補領域p’は破線501に示すようなエピポーラ線上に求まる。このエピポーラ線501は、第1視点と第2視点との位置関係、および、画素pの位置に基づいて算出される。
図9の例では、第2指定部302は、エピポーラ線501上のすべての画素を、画素pに対応する候補領域として指定することもできる。
【0054】
図8に戻って説明を続ける。第1コスト算出部303に対しては、第1算出部102より基準画像と参照画像の尤度マップが入力され、第2指定部302より注目領域と候補領域が入力される。第1コスト算出部303は、注目領域と候補領域との画素値の差分に対して、尤度に基づく重み付けを行って非類似度(類似度であると捉えてもよい)を算出し、各注目領域に対応する非類似度の総和を示す第1コストを算出する。第1コストは、例えば以下の式3により算出することができる。ここでは、注目領域と候補領域との組み合わせに応じた数の第1コストが算出されることになる。
【数3】
【0055】
上記式3において、pは注目領域、p’は候補領域、T
B(p)は注目領域の画素値、T
R(p’)は候補領域の画素値、α
pp’は非類似度に関する重みをそれぞれ示す。ここで、例えば対象物領域に含まれる確率が高い(尤度が高い)注目領域に関しては、当該注目領域と候補領域との画素値の差分に乗算する重みα
pp’の値を大きくすることで、当該注目領域に対応する非類似度を後述のエネルギー(第3コスト)へ大きく反映させることもできる。つまり、第1コスト算出部303(第2算出部103)は、注目領域が対象物領域に含まれる確率が高いほど、上記画素値の差分に乗算される重みが大きくなるように重み付けを行う(重みα
pp’を設定する)こともできる。この場合、重みα
pp’は、例えば以下の式4により算出することもできる。
【数4】
【0056】
上記式4において、L
B(p)は注目領域の尤度を示す。上記式4で表される重みα
pp’は、注目領域が対象物領域に含まれる確率が高い(尤度が高い)場合に大きな値を示す。つまり、注目領域が対象領域に含まれる確率が高い場合は、候補領域の尤度に関わらず、重みα
pp’は大きくなる。一方、注目領域が背景領域に含まれる確率が高い場合(注目領域が対象領域に含まれる確率が低い場合)は、候補領域の尤度に関わらず、重みα
pp’は小さくなる。
【0057】
しかしながら、例えば画像に発生したノイズによって、対象物領域に含まれる確率が高い注目領域と、対応領域とすべき候補領域(対象物領域に含まれる確率が高く、かつ、当該注目領域の画素値に近い画素値を有する候補領域)との画素値が大きく異なる場合もあり得る。このような場合、当該注目領域と、対応領域とすべき候補領域との非類似度が大きくなるために、当該候補領域では後述のエネルギー(第3コスト)を最小にしない場合が発生する。これにより、対応領域とすべき候補領域の代わりに、背景領域に含まれる確率が高く、かつ、当該注目領域の画素値に近い画素値を有する候補領域が、対応領域として選ばれてしまうおそれがある。
【0058】
そこで、本実施形態では、注目領域および候補領域の各々が対象物領域に含まれる確率が高い場合には、重みα
pp’の値を小さく設定することで、上記問題を解決している。つまり、第1コスト算出部303(第2算出部103)は、注目領域および候補領域の各々が対象物領域に含まれる確率が高いほど、上記画素値の差分に乗算される重みが小さくなるように重み付けを行う(重みα
pp’を設定する)こともできる。本実施形態における重みα
pp’は、例えば以下の式5により算出することもできる。なお、これに限らず、例えば上記式4で表される重みα
pp’を採用して第1コストを算出することもできる。
【数5】
【0059】
上記式5において、L
R(p’)は候補領域の尤度を示す。
図10は、上記式5により表される重みα
pp’を説明するための図である。
図10において、p
1,p
2はそれぞれ注目領域を示し、p
1’,p
2’はそれぞれ候補領域を示す。破線601は、p
1の位置に基づいて決まるエピポーラ線を表し、破線602は、p
2の位置に基づいて決まるエピポーラ線を表している。
図10の例では、注目領域p
1は対象物領域に含まれるので、候補領域が対象領域に含まれる場合に重みα
pp’は小さくなる。一方、注目領域p
2は背景領域に含まれるので、候補領域が対象物領域に含まれる場合であっても、背景領域に含まれる場合であっても、重みα
pp’は小さくなる。
【0060】
以上のように、対象物領域に含まれる確率が高い注目領域の非類似度を、優先的に後述のエネルギー(第3コスト)に加味させることによって、対象物領域の対応点探索を高精度に行うことができる。前述したように、尤度は、0から1の連続的な値であるため、上述の重みα
pp’も0から1の連続的な値となる。ここでは、非類似度とは、注目領域の画素値と、当該注目領域に対応する複数の候補領域のうちの何れか1つの候補領域の画素値との差分に対して、上述の重みα
pp’を乗算した結果であると定義される。そして、注目領域に対応する複数の候補領域のうち、当該注目領域との画素値差が同じであっても重みα
pp’が大きくなる候補領域ほど、非類似度は大きくなる。
【0061】
図8に戻って説明を続ける。第2コスト算出部304に対しては、第1指定部301より注目領域、第1算出部102より基準画像の尤度マップ、記憶部305より隣接領域(基準画像のうち注目領域に隣接する領域)の視差が入力される。ここで、記憶部305は、隣接領域の視差を予め保持しており、注目領域の位置に応じて隣接領域の視差を出力する。
【0062】
第2コスト算出部304は、注目領域と隣接領域との視差の差分に対して、尤度に基づく重み付けを行って視差の非連続性(連続性であると捉えてもよい)を算出し、各注目領域に対応する視差の非連続性の総和を示す第2コストを算出する。第2コストは、例えば以下の式6により算出することができる。ここでは、注目領域と候補領域との組み合わせに応じた数の第2コストが算出されることになる。
【数6】
【0063】
上記式6において、pは注目領域、qは隣接領域、Pは基準画像中の注目領域の全体集合、N(p)は隣接領域の全体集合、D(p)は注目領域の視差、D(q)は隣接領域の視差、β
pqは非連続性に関する重みをそれぞれ示す。本実施形態では、注目領域および隣接領域の各々が共に対象物領域に含まれる確率が高い場合に、当該注目領域の視差と隣接領域の視差との差分に対して乗算する重みβ
pqの値を大きくする。これにより、対象物領域の視差の非連続性を後述のエネルギー(第3コスト)へ大きく反映させることができる。つまり、第2コスト算出部304(第2算出部103)は、注目領域および隣接領域の各々が対象物領域に含まれる確率が高いほど、上記視差の差分に乗算される重みが大きくなるように重み付けを行う(重みβ
pqを設定する)こともできる。本実施形態におけるβ
pqは、例えば以下の式7により算出することもできる。
【数7】
【0064】
上記式7において、L
B(p)は注目領域の尤度、L
B(q)は隣接領域の尤度をそれぞれ示す。上記式7からも理解されるように、非連続性に関する重みβ
pqは、注目領域および隣接領域の各々が共に対象物領域に含まれる確率が高い場合に大きな値を示す。
図11は、非連続性に関する重みβ
pqを説明するための図である。
図11において、pは注目領域、qは隣接領域をそれぞれ示す。
図11の例では、注目領域pは対象物領域に含まれ、かつ、注目領域pの上下に隣接する画素は、対象物領域に含まれる隣接領域なので、重みβ
pqは大きくなる一方、その他の隣接領域では重みβ
pqは小さくなる。
【0065】
以上のように、対象物領域の視差の非連続性を、優先的に後述のエネルギー(第3コスト)に加味させることによって、対象物領域の対応点探索を高精度に行うことができる。前述したように、尤度は、0から1の連続的な値であるため、上述のβ
pqも0から1の連続的な値となる。ここでは、視差の非連続性とは、注目領域の視差と、当該注目領域に隣接する複数の領域(隣接領域)の各々の視差との差分ごとに、対応する重みβ
pqとの乗算結果を求め、その乗算結果を合計したものであると定義することができる。そして、注目領域が対象物領域に含まれ、かつ、対象物領域に含まれる隣接領域の視差との差が大きいほど上述の第2コストは大きくなる。
【0066】
図8に戻って説明を続ける。第3コスト算出部306に対しては、第1コスト算出部303より第1コスト、第2コスト算出部304より第2コストが入力される。第3コスト算出部306は、第1コストと第2コストに基づいて第3コストを算出する。本実施形態における第3コストは、第1コストと第2コストとの重み付き加算により求められ、例えば以下の式8により算出することもできる。
【数8】
【0067】
上記式8において、ωは第1コストの重みを示しており、ωを大きく設定すると第3コストにおける第1コストの割合が大きくなる。例えば、背景領域の画素値と対象物領域の画素値との差が大きい場合には、ωを小さく設定することで、第1コストと第2コストとの割合を均等に評価することができる。
【0068】
以上のように、第2算出部103は、各々の注目領域に対応する非類似度の総和を示す第1コストと、各々の注目領域に対応する視差の非連続性の総和を示す第2コストとに基づく第3コスト(エネルギー)を算出する。ここでは、注目領域と候補領域との組み合わせに応じた数の第3コストが算出されることになる。
【0069】
図5に戻って説明を続ける。選択部104は、上述の第3コスト(エネルギー)が最小になるように、複数の注目領域ごとに一の候補領域を選択する。このとき、注目領域ごとに選択された候補領域が当該注目領域の対応領域として決定される。本実施形態における選択部104は、第2算出部103により最小の第3コストが算出されたときの各注目領域に対応する候補領域を、当該注目領域の対応領域として選択する。
【0070】
第3算出部105は、注目領域の位置と対応領域の位置との差に基づいて、注目領域の3次元位置(空間位置)を算出する。一般的なテレビジョンによって、視点の異なる画像から3次元情報を復元することができる。
【0071】
設定部106は、所望の視点位置(第1視点および第2視点とは異なる視点、以下の説明では「中間視点」と称する場合がある)の撮影情報を取得する。ここでの撮影情報とは、上述のX線透視撮影部の撮影角度(アーム角)などを含み、例えば設定部106は、システム制御部21から、中間視点に対応する撮影情報を取得することもできる。そして、設定部106は、上述のX線透視撮影部の撮影角度を少なくとも含むパラメータを設定する。所望の視点位置の数(中間視点の数)は任意に変更可能であり、例えば1つでもよいし、複数でもよい。例えば複数の中間視点を設定する場合においては、設定部106は、中間視点ごとに、当該中間視点に対応する撮影情報を取得してパラメータを設定することになる。以下の説明では、中間視点の撮影方向を、「中間撮影方向」と称する場合がある。
【0072】
第1生成部107は、第3算出部105で求めた注目領域の空間位置と、設定部106で設定したパラメータとに基づいて、全ての注目領域に関して、中間視点から観察した画像(中間視点に対応する画像)における画像座標を算出し、中間視点に対応する画像(以下の説明では、「中間画像」と称する場合がある)を生成する。本実施形態における第1生成部107は、ガイドワイヤやカテーテルなどの器具(対象物の一例)のみが映り込んだ中間画像を生成することになる。この中間画像は、中間撮影方向で対象物を撮影した画像であると捉えることができ、請求項の「中間画像」に対応している。
【0073】
第2取得部108は、上述の3次元ボリュームデータ保存部40に格納された3次元血管画像を取得する。
【0074】
第2生成部109に対しては、第2取得部108より3次元血管画像が入力され、第1取得部101より第1視点および第2視点を示す情報が入力され、設定部106より中間視点を示す情報が入力される。第2生成部109は、上述の第1視点(第1撮影方向)、第2視点(第2撮影方向)、および、中間視点(中間撮影方向)の各々から、3次元血管画像をレンダリング(ボリュームレンダリング)して、第1視点(第1撮影方向)に対応する第1レンダリング血管画像、第2視点(第2撮影方向)に対応する第2レンダリング血管画像、および、中間視点(中間撮影方向)に対応する第3レンダリング血管画像を生成する。なお、ボリュームデータ(この例では3次元血管画像)をレンダリングする際には、公知の様々なボリュームレンダリング技術を利用することができる。
図12は、第1視点に対応する第1レンダリング血管画像の一例を示す模式図である。
【0075】
合成部110は、上述の基準画像と、第2生成部109により生成された第1レンダリング血管画像とを合成して第1合成画像を生成する。
図13は、第1合成画像の一例を示す模式図である。同様に、合成部110は、上述の参照画像と、第2生成部109により生成された第2レンダリング血管画像とを合成して第2合成画像を生成する。さらに、合成部110は、上述の中間画像と、第2生成部109により生成された第3レンダリング血管画像とを合成して第3合成画像を生成する。
【0076】
表示制御部111は、第1合成画像と第2合成画像と第3合成画像とを含む立体画像を表示部23に表示する制御を行う。ここでは、「立体画像」とは、互いに視差を有する複数の視差画像を含む画像であり、視差とは、異なる方向から見ることによる見え方の差をいう。
【0077】
なお、本実施形態の画像処理部28は、CPU(Central Processing Unit)、ROM、RAM、および、通信I/F装置などを含んだハードウェア構成となっている。上述した画像処理部28の各部の機能(第1取得部101、第1算出部102、第2算出部103、選択部104、第3算出部105、設定部106、第1生成部107、第2取得部108、第2生成部109、合成部110、および、表示制御部111)は、CPUがROMに格納されたプログラムをRAM上で展開して実行することにより実現される。また、これに限らず、上述の各部の機能のうちの少なくとも一部を専用のハードウェア回路(例えば半導体集積回路等)で実現することもできる。
【0078】
図14は、本実施形態の画像処理部28の動作例を示すフローチャートである。
図14に示すように、まず第1取得部101は、差分画像生成部27から基準画像および参照画像を取得する(ステップS101)。次に、第1算出部102は、基準画像および参照画像の各々に含まれる複数の画素ごとに、当該画素の画素値に基づいて尤度を算出し(ステップS102)、上述の尤度マップを作成する。次に、第2算出部103は、ステップS101で取得した基準画像および参照画像と、ステップS102で作成した尤度マップとに基づいて、上述の第3コスト(エネルギー)を算出する(ステップS103)。次に、選択部104は、第3コストが最小になるように、複数の注目領域の各々に対応する候補領域を選択し、各注目領域の対応領域を決定する(ステップS104)。
【0079】
次に、第3算出部105は、注目領域の位置と対応領域の位置との差に基づいて、注目領域の3次元位置(空間位置)を算出する(ステップS105)。次に、設定部106は、所望の視点位置(中間視点)のパラメータ(少なくとも撮影角度を含む)を設定する(ステップS106)。次に、第1生成部107は、ステップS105で求めた注目領域の空間位置と、ステップS106で設定したパラメータとに基づいて、中間画像を生成する(ステップS107)。次に、第2生成部109は、各視点(上述の第1視点、第2視点、および、中間視点)から、3次元血管画像をレンダリングして、各視点に対応するレンダリング血管画像(この例では、第1レンダリング血管画像、第2レンダリング血管画像、および、第3レンダリング血管画像)を生成する(ステップS108)。次に、合成部110は、合成処理を行う(ステップS109)。前述したように、本実施形態における合成部110は、上述の基準画像と、第1レンダリング血管画像とを合成して第1合成画像を生成する。また、合成部110は、上述の参照画像と、第2レンダリング血管画像とを合成して第2合成画像を生成する。さらに、合成部110は、上述の中間画像と、第3レンダリング血管画像とを合成して第3合成画像を生成する。
【0080】
次に、表示制御部111は、ステップS109の合成処理で得られた合成画像(視差画像)を含む立体画像を表示部23に表示する制御を行う(ステップS110)。
【0081】
以上に説明したように、本実施形態では、対象物領域に含まれる確率が高い注目領域の非類似度を優先的に上述の第3コストに反映させるとともに、対象物領域の視差の非連続性を優先的に上述の第3コストに反映させることによって、対象物領域の対応点探索を高精度に行うことができる。そして、対象物領域の対応点が精度良く求まることにより、他の視点(第1視点および第2視点とは異なる所望の視点)に対応する対象物の視差画像を精度良く作ることができる。したがって、例えばPCI治療時にカテーテルなどの器具を対象物として立体視したい場合において、本実施形態の構成は格別に有効である。
【0082】
なお、本実施形態の構成は、例えば心臓の冠動脈にガイドワイヤやカテーテルなどの器具を挿入して、冠動脈の狭くなった部分、または、つまっている部分を広げるPCI治療時にカテーテルなどの器具を対象物として立体視する場合の他、例えば脳などの動かない臓器の血管にガイドワイヤやカテーテルなどの器具を挿入して、血管の狭くなった部分、または、つまっている部分を広げるPCI治療時にカテーテルなどの器具を対象物として立体視する場合においても適用可能である。また、本実施形態の構成は、例えば収集角度の違う複数の血管造影像から3次元血管像を再構成し、これに基づき血管計測結果(例えば血管長、血管径、血管狭窄率、分岐角度)を提供するCV−3D(TM)に対しても適用可能である。
【0083】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら新規な実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0084】
(変形例)
以下、変形例を記載する。以下の変形例同士は任意に組み合わせることが可能である。
【0085】
(1)変形例1
例えば上述の第3コストの算出において、視差の非連続性が考慮されない形態であってもよい。例えば
図15に示すように、第2算出部801は、第1指定部301と、第2指定部302と、第1コスト算出部303と、第3コスト算出部802とを備え、上述の第2コスト算出部304および記憶部305を含まない形態であってもよい。第3コスト算出部802に対しては、第1コスト算出部303より第1コストが入力され、第3コスト算出部802は、第1コストに基づいて第3コストを算出する。例えば第3コスト算出部802は、入力された第1コストを、第3コストとして算出することもできる。
【0086】
(2)変形例2
上述の実施形態では、本発明が適用される立体画像表示装置として、3Dロードマップ画像を表示する機能を有するX線診断装置を例に挙げて説明したが、本発明が適用される立体画像表示装置はこれに限られるものではない。
【0087】
例えば画像中に含まれた特定の色(例えば青色等)の部分を、他の画像に置換するクロマキー技術を利用する立体画像表示装置に対して本発明を適用することもできる。例えば人物などの対象物を撮影する際に、青色の布などを用いた青い背景(ブルーバック)を用いて、複数の視点から撮影を行って得られた複数の画像のうちの何れかを上記基準画像とし、基準画像以外の他の画像を参照画像とすることもできる(さらに別の視点に対応する画像を用意することもできる)。この場合でも、上述の実施形態と同様に、対象物領域に含まれる確率が高い注目領域の非類似度を優先的に上述の第3コストに反映させるとともに、対象物領域の視差の非連続性を優先的に上述の第3コストに反映させることによって、対象物領域の対応点探索を高精度に行うことができる。そして、対象物領域の対応点が精度良く求まることにより、他の視点に対応する対象物(例えばブルーバックの手前に存在する人物等)の視差画像を精度良く作ることができる。これにより、この立体画像表示装置を観察する観察者は、背景以外の領域に存在する人物等の対象物の立体視を好適に行うことが可能になる。
【0088】
(プログラム)
上述の画像処理部28で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するようにしてもよい。また、上述の画像処理部28で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。さらに、上述の画像処理部28で実行されるプログラムを、ROM等の不揮発性の記録媒体に予め組み込んで提供するようにしてもよい。