特許第6342131号(P6342131)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝電機サービス株式会社の特許一覧

特許6342131受給エネルギー削減情報算出装置、受給エネルギー削減情報算出方法およびプログラム
<>
  • 特許6342131-受給エネルギー削減情報算出装置、受給エネルギー削減情報算出方法およびプログラム 図000017
  • 特許6342131-受給エネルギー削減情報算出装置、受給エネルギー削減情報算出方法およびプログラム 図000018
  • 特許6342131-受給エネルギー削減情報算出装置、受給エネルギー削減情報算出方法およびプログラム 図000019
  • 特許6342131-受給エネルギー削減情報算出装置、受給エネルギー削減情報算出方法およびプログラム 図000020
  • 特許6342131-受給エネルギー削減情報算出装置、受給エネルギー削減情報算出方法およびプログラム 図000021
  • 特許6342131-受給エネルギー削減情報算出装置、受給エネルギー削減情報算出方法およびプログラム 図000022
  • 特許6342131-受給エネルギー削減情報算出装置、受給エネルギー削減情報算出方法およびプログラム 図000023
  • 特許6342131-受給エネルギー削減情報算出装置、受給エネルギー削減情報算出方法およびプログラム 図000024
  • 特許6342131-受給エネルギー削減情報算出装置、受給エネルギー削減情報算出方法およびプログラム 図000025
  • 特許6342131-受給エネルギー削減情報算出装置、受給エネルギー削減情報算出方法およびプログラム 図000026
  • 特許6342131-受給エネルギー削減情報算出装置、受給エネルギー削減情報算出方法およびプログラム 図000027
  • 特許6342131-受給エネルギー削減情報算出装置、受給エネルギー削減情報算出方法およびプログラム 図000028
  • 特許6342131-受給エネルギー削減情報算出装置、受給エネルギー削減情報算出方法およびプログラム 図000029
  • 特許6342131-受給エネルギー削減情報算出装置、受給エネルギー削減情報算出方法およびプログラム 図000030
  • 特許6342131-受給エネルギー削減情報算出装置、受給エネルギー削減情報算出方法およびプログラム 図000031
  • 特許6342131-受給エネルギー削減情報算出装置、受給エネルギー削減情報算出方法およびプログラム 図000032
  • 特許6342131-受給エネルギー削減情報算出装置、受給エネルギー削減情報算出方法およびプログラム 図000033
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6342131
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】受給エネルギー削減情報算出装置、受給エネルギー削減情報算出方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20180604BHJP
   G06Q 50/16 20120101ALI20180604BHJP
【FI】
   G06Q50/06
   G06Q50/16
【請求項の数】10
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2013-190286(P2013-190286)
(22)【出願日】2013年9月13日
(65)【公開番号】特開2015-56104(P2015-56104A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 正明
(72)【発明者】
【氏名】村山 大
(72)【発明者】
【氏名】飯野 穣
(72)【発明者】
【氏名】久田 永子
【審査官】 青柳 光代
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−284649(JP,A)
【文献】 特開2006−092044(JP,A)
【文献】 特開2005−051866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 99/00
G16H 10/00 − 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー供給機器又はエネルギー消費機器である制御対象機器の少なくともいずれか一つについて、将来の所定期間におけるエネルギーの供給又は消費に係る予測量を求めるエネルギー予測部と、
デマンドレスポンスにおけるインセンティブの単価を複数設定するインセンティブ単価設定部と、
前記インセンティブ単価設定部が複数設定したインセンティブの単価の各々について、前記インセンティブの単価を反映させたエネルギー料金、及び、前記エネルギー予測部が求めた前記予測量に基づいて、前記デマンドレスポンスにおける前記制御対象機器の運転スケジュールを求め、得られた運転スケジュールに応じた前記受給エネルギーの削減量を算出する削減情報算出部と、
を有し、
前記インセンティブ単価設定部は、前記インセンティブの単価の設定変更によって前記削減情報算出部が算出する受給エネルギーの削減量が変化する前記インセンティブの単価の区間を検出し、検出した区間では、それ以外の区間よりも細かい幅で前記インセンティブの単価を設定する、
受給エネルギー削減情報算出装置。
【請求項2】
前記インセンティブ単価設定部は、前記インセンティブの単価の変更幅と、前記インセンティブの単価の上限値とを取得し、得られた変更幅および上限値に基づいて、前記インセンティブの単価を複数設定する、
請求項1に記載の受給エネルギー削減情報算出装置。
【請求項3】
前記削減情報算出部が算出した前記受給エネルギーの削減量を、インセンティブの単価と受給エネルギーの削減量との関係を示すグラフによって表示する出力部を備える、
請求項1または請求項2に記載の受給エネルギー削減情報算出装置。
【請求項4】
前記出力部は、前記インセンティブの単価の過去の約定金額を前記グラフに表示する、
請求項3に記載の受給エネルギー削減情報算出装置。
【請求項5】
前記インセンティブの単価の過去の約定金額を取得し、当該約定金額に基づいて、インセンティブの単価の想定金額を設定するインセンティブ単価設定部を有し、
前記削減情報算出部は、前記インセンティブ単価設定部が設定するインセンティブの単価の想定値について、前記受給エネルギーの削減量を算出する、
請求項1に記載の受給エネルギー削減情報算出装置。
【請求項6】
前記インセンティブ単価設定部は、過去の複数回のデマンドレスポンスにおける、前記インセンティブの単価の約定金額の平均値に基づいて、前記想定金額を設定する、
請求項5に記載の受給エネルギー削減情報算出装置。
【請求項7】
前記インセンティブ単価設定部は、過去の複数回のデマンドレスポンスにおける、前記インセンティブの単価の約定金額の最小値に基づいて、前記想定金額を設定する、
請求項5に記載の受給エネルギー削減情報算出装置。
【請求項8】
前記インセンティブ単価設定部は、過去の複数回のデマンドレスポンスにおける、前記インセンティブの単価の約定金額の最大値に基づいて、前記想定金額を設定する、
請求項5に記載の受給エネルギー削減情報算出装置。
【請求項9】
受給エネルギー削減情報算出装置の受給エネルギー削減情報算出方法であって、
エネルギー供給機器又はエネルギー消費機器である制御対象機器の少なくともいずれか一つについて、将来の所定期間におけるエネルギーの供給又は消費に係る予測量を求めるエネルギー予測ステップと、
デマンドレスポンスにおけるインセンティブの単価を複数設定するステップと、
前記複数設定したインセンティブの単価の各々について、前記インセンティブの単価を反映させたエネルギー料金、及び、前記エネルギー予測部が求めた前記予測量に基づいて、前記デマンドレスポンスにおける前記制御対象機器の運転スケジュールを求め、得られた運転スケジュールに応じた前記受給エネルギーの削減量を算出する削減情報算出ステップと、
を有し、
前記インセンティブの単価を複数設定するステップでは、前記インセンティブの単価の設定変更によって前記削減情報算出ステップで算出する受給エネルギーの削減量が変化する前記インセンティブの単価の区間を検出し、検出した区間では、それ以外の区間よりも細かい幅で前記インセンティブの単価を設定する、
受給エネルギー削減情報算出方法。
【請求項10】
受給エネルギー削減情報算出装置の有するコンピュータに、
エネルギー供給機器又はエネルギー消費機器である制御対象機器の少なくともいずれか一つについて、将来の所定期間におけるエネルギーの供給又は消費に係る予測量を求めるエネルギー予測ステップと、
デマンドレスポンスにおけるインセンティブの単価を複数設定するステップと、
前記複数設定したインセンティブの単価の各々について、前記インセンティブの単価を反映させたエネルギー料金、及び、前記エネルギー予測部が求めた前記予測量に基づいて、前記デマンドレスポンスにおける前記制御対象機器の運転スケジュールを求め、得られた運転スケジュールに応じた前記受給エネルギーの削減量を求める削減情報算出ステップと、
を実行させ、
前記インセンティブの単価を複数設定するステップでは、前記インセンティブの単価の設定変更によって前記削減情報算出ステップで算出する受給エネルギーの削減量が変化する前記インセンティブの単価の区間を検出させ、検出した区間では、それ以外の区間よりも細かい幅で前記インセンティブの単価を設定させる
ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、受給エネルギー削減情報算出装置、受給エネルギー削減情報算出方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力や交通などの様々な都市インフラを統合管理して、街や地域全体で最適なエネルギーの利用を目指すスマートコミュニティに向けた取組みが活発化している。このスマートコミュニティに向けた取り組みの1つにデマンドレスポンス(Demand Response;DR)がある。
このデマンドレスポンスは、エネルギー需給のひっ迫時などにおいて、ビルや家庭等におけるエネルギー受給量の削減を促すことで、地域全体で最適なエネルギー利用を実現する仕組みである。特に電気エネルギーについてデマンドレスポンスの適用が検討されており、デマンドレスポンスに関連した電力消費機器の制御技術が幾つか提案されている(例えば、特許文献1参照)。
電気エネルギーについてのデマンドレスポンスに関する受電量削減の方法として、購入電力単価を引き上げる方法や、受電量の削減分に応じてインセンティブを付与する方法がある。ここでいうインセンティブとは、受電量などエネルギー受給量の削減を促すために、エネルギー受給量の削減に対して支払われる対価(いわば報奨金)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−191707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
デマンドレスポンスの方式には様々なものが検討されているが、その中の一つに、インセンティブの金額をエネルギー供給者とエネルギー需要者とのやり取りにて決定する方式(応札型)がある。
しかし、これまでのデマンドレスポンスは、エネルギー供給側から提示されるインセンティブ単価は固定で、かつ対応するエネルギー削減量も固定、もしくは不定(特に定まっていない)であった。そのため、上記の応札型のデマンドレスポンス方式が導入された場合に、エネルギー需要者は、インセンティブの単価との関係で、適切な受給エネルギーの削減量を把握する手段が無く、長期に渡る経験などから、およその受給エネルギーの削減量等を決めざるを得なかった。そのため、エネルギー需要者が損する可能性もあり、従来よりこのような課題を解決する装置等が求められていた。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、応札型デマンドレスポンスのインセンティブの単価の決定との関係で、エネルギー需要者に対し、適切な受給エネルギーの削減量を決めさせることができる受給エネルギー削減情報算出装置、受給エネルギー削減情報算出方法およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の受電電力削減情報算出装置は、受給エネルギー削減情報算出装置の一例に該当する。当該受電電力削減情報算出装置は、エネルギー予測部と、削減情報算出部と、出力部とを有する。エネルギー予測部は、受給エネルギーの削減要求があった場合に、エネルギー供給機器とエネルギー消費機器との少なくともいずれか一つについて、将来の所定期間におけるエネルギーの供給又は消費に係る予測量を求める。削減情報算出部は、受給エネルギーの削減要求に対するインセンティブの想定金額を反映させたエネルギー料金に基づいて、予測量に対応する受給エネルギーの削減量を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態の監視制御システムの装置構成の例を示す説明図である。
図2】第1の実施形態の制御対象機器の構成、および、供給エネルギーの流れの例を示す説明図である。
図3】第1の実施形態の受電電力削減情報算出装置の機能構成を示す概略構成図である。
図4】第1の実施形態の対象建物の受電電力の例を示すグラフである。
図5】第1の実施形態の受電電力削減情報算出装置がデマンドレスポンスにおける入札条件を算出する処理手順を示すフローチャートである。
図6】第1の実施形態のインセンティブ単価設定部が等間隔でインセンティブ単価を変更する場合の、インセンティブ単価の推移の例を示すグラフである。
図7】第1の実施形態のインセンティブ単価設定部がインセンティブ単価の切り替えを行う場合の、インセンティブ単価の推移の例を示すグラフである。
図8】第1の実施形態のインセンティブ単価設定部がインセンティブ単価の切り替えを行う場合の処理手順を示すフローチャートである。
図9】第1の実施形態のインセンティブ単価設定部がインセンティブ単価の変更幅を段階的に変化させる場合の、インセンティブ単価の推移の第1の例を示すグラフである。
図10】第1の実施形態のインセンティブ単価設定部がインセンティブ単価の変更幅を段階的に変化させる場合の、インセンティブ単価の推移の第2の例を示すグラフである。
図11】第1の実施形態のインセンティブ単価設定部が、インセンティブ単価の変更幅を段階的に変化させる場合の処理手順を示すフローチャートである。
図12】第1の実施形態のインセンティブ単価設定部が、インセンティブ単価の変更幅を段階的に変化させる場合の処理手順を示すフローチャートである。
図13】第1の実施形態の出力部が表示する表示画面の例を示す説明図である。
図14】第2の実施形態の受電電力削減情報算出装置の機能構成を示す概略構成図である。
図15】第2の実施形態の受電電力削減情報算出装置がデマンドレスポンスにおける入札条件を算出する処理手順を示すフローチャートである。
図16】第2の実施形態の出力部が表示する表示画面の例を示す説明図である。
図17】第3の実施形態の受電電力削減情報算出装置の機能構成を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1の実施形態>
以下、実施形態において、デマンドレスポンスの対象が電力(電気エネルギー)である場合を例に説明する。但し、他のエネルギーがデマンドレスポンスの対象である場合を実施形態から排除するものではない。
【0009】
図1は、本実施形態の監視制御システムの装置構成の例を示す説明図である。同図において、監視制御システム1は、管理対象となる建物(以下、「対象建物」と称する)に設置された各種の制御対象機器2と、制御装置3と、受電電力削減情報算出装置100とを有している。受電電力削減情報算出装置100は、受給エネルギー削減情報算出装置の一例に該当する。
監視制御システム1は、制御対象機器を監視し制御するシステムである。
制御対象機器2は、デマンドレスポンスにおいて受電電力を削減するための制御対象となる機器である。制御対象機器2には、エネルギー供給機器と、エネルギー消費機器とがある。
【0010】
エネルギー消費機器とは、供給されたエネルギーである受電電力を消費する電力消費機器である。具体的には、空気調和機器(空調)や、照明機器や、熱源機器がある。
一方、エネルギー供給機器には、エネルギー生成機器と、エネルギー貯蔵機器とがある。
エネルギー生成機器は、あるエネルギーを他のエネルギーに変換することにより、当該他のエネルギーを生成し、生成したエネルギーを他の機器に供給するものである。エネルギー生成機器の例として、太陽光を電気に変換する太陽光発電装置(Photo Voltaic;PV)や、太陽熱を温熱に変換する太陽熱温水器や、ガスを焚いて電気および排熱を生成するコージェネレーションシステム(Co-Generation System;CGS)がある。
エネルギー貯蔵機器は、貯蔵しているエネルギーを他の機器に供給するものであり、例えば、蓄電池や、蓄熱槽がある。
制御対象機器2は、エネルギー消費機器、エネルギー生成機器、エネルギー貯蔵機器としての複数の機能をを兼ねた機器であってもよい。
【0011】
制御装置3は、通信線を介して制御対象機器2と接続され、各制御対象機器2の動作、例えば、起動、停止、出力等を制御する装置である。以下の説明にて、起動、停止を発停と称する。
なお、制御装置3は、制御対象機器2毎に設けられていてもよいし、1つの制御装置3が複数の制御対象機器2をまとめて制御する構成でもよい。
【0012】
受電電力削減情報算出装置100は、制御対象機器2の運転スケジュールの最適化を行う。そして、受電電力削減情報算出装置100は、最適化の結果に基づいて、入札式のデマンドレスポンスにおいて電力需要者に損が生じにくい入札条件を提示する。ここでいう電力需要者は、対象建物の使用者または管理者など、制御対象機器2への受電電力を管理し、受電電力の削減に対するインセンティブを受け取る者である。
【0013】
受電電力削減情報算出装置100は、運転スケジュールとして、例えば将来の所定の期間における時間帯別の各制御対象機器2の動作のスケジュールを用いる。例えば、運転スケジュールは、制御対象機器を何時から何時まで起動させるといった発停の情報を含んでいてもよい。制御対象機器2が複数台ある場合、運転スケジュールは、制御対象機器2のうち何台を何時から何時まで起動させるといった情報を含んでいてもよい。また、運転スケジュールには、制御対象機器2の出力をどの程度とするかといった制御設定値など、定量的な値を含んでいてもよい。
【0014】
制御設定値は、各制御対象機器2の動作状態を制御するためのパラメータである。制御設定値の例として、エネルギー消費機器である空調機の温度設定値やPMV設定値、照明の照度設定値などが挙げられる。なお、PMVは、Predicted Mean Voteの略で、空調の温熱指標ISO7730において規定されており、人の寒冷の感じ方を数値化したものである。0が快適な数値を示し、−の数値が寒い数値、+の数値は暖かい数値を示す。PMVの算出に用いるパラメータは、温度、湿度、平均輻射温度、着衣量、活動量、風速等である。
【0015】
受電電力削減情報算出装置100は、例えば、パソコン(Personal Computer;PC)などのコンピュータを用いて構成される。
なお、図1に示される、受電電力削減情報算出装置100が管理対象の建物内に設置される形態は一例であり、例えば、受電電力削減情報算出装置100がクラウド上に設けられ、遠隔で各制御対象機器を制御するようにしてもよい。
また、受電電力削減情報算出装置100が扱うデマンドレスポンスは、入札式のデマンドレスポンスに限らない。例えば、電力供給者と電力需要者とが1対1でやり取りしてインセンティブの金額を決定するなど、インセンティブの金額の決定のために電力供給者と電力需要者とがやり取りする方式のデマンドレスポンスであればよい。
【0016】
図2は、制御対象機器2の構成、および、供給エネルギーの流れの例を示す説明図である。同図において、制御対象機器2として、蓄電池21と、太陽光発電装置22と、コージェネレーションシステム23と、電気式冷凍機24と、吸収式冷温水機25と、蓄熱槽26と、空調機27とが示されている。
【0017】
なお、図1の制御対象機器として、図2に示す機器のいずれかが含まれていなくてもよい。また、本実施形態は、図2に示されていない機器を排除するものではなく、例えば、ヒートポンプや、水冷冷凍機や、太陽熱温水器など、他の機器が制御対象機器2として設置されていてもよい。
【0018】
蓄電池21は、充電により電力を蓄え、蓄えた電力を放電して他の機器に供給する設備である。
太陽光発電装置22は、太陽光パネルを備え、太陽光を受光して電力に変換する発電設備である。太陽光発電装置22の電力供給量は、天候等の気象条件により変化する。
【0019】
コージェネレーションシステム23は、発電により電力および排熱を供給するシステムである。具体的には、コージェネレーションシステム23は、内燃機関または外燃機関により発電を行う。また、コージェネレーションシステム23は、発電を行う際の燃料の燃焼により排熱する。コージェネレーションシステム23からの排熱は、熱エネルギーとして利用される。
コージェネレーションシステム23は、ガスをエネルギー源として発電および排熱を行う。ただし、コージェネレーションシステム23が用いるエネルギーは、ガスに限らない。例えば、コージェネレーションシステム23が、燃料電池を用いて発電および排熱を行うようにしてもよい。
【0020】
電気式冷凍機24は、気体の冷媒の圧縮、凝縮および蒸発のプロセスにより冷却を行う、圧縮式の冷凍機である。電気式冷凍機24は、電力をエネルギーとして電動の圧縮機にて冷媒を圧縮する。
吸収式冷温水機25は、熱源を用いて動作する冷熱設備である。吸収式冷温水機25は、吸収液に冷媒を吸収させて発生する低圧状態で冷媒を気化させて低温を得る。そして、吸収式冷温水機25は、冷媒を吸収した吸収液を加熱して冷媒を気化させる。また、吸収式冷温水機25は、加熱プロセスにて温熱を供給することもできる。
蓄熱槽26は、貯留した熱媒により蓄熱を行う槽である。
電気式冷凍機24や、吸収式冷温水機25や、蓄熱槽26は、空調機27のための温水や冷水を供給することができる。
【0021】
図2では、制御対象機器2の構成の外部から供給される電力やガスや太陽光をエネルギー源として、対象建物内の部屋に設置されている空調機27等に電気や冷熱や温熱を供給する、エネルギー授受の関係が示されている。
外部(例えば商用電力系統)から得られる電力は、蓄電池21が貯蔵するか、または、エネルギー消費機器が供給を受ける。また、太陽光発電装置22やコージェネレーションシステム23が発電する電力も、蓄電池21が貯蔵するか、または、エネルギー消費機器が供給を受ける。
例えば、電気式冷凍機24が、エネルギー消費機器として電力の供給を受ける。電気式冷凍機24は、供給を受けた電力を消費して冷熱を生成する。
【0022】
ガス供給系統からのガスは、コージェネレーションシステム23、または、吸収式冷温水機25が供給を受ける。
吸収式冷温水機25は、ガス供給系統からのガスを燃焼させて冷熱または温熱を生成する。なお、吸収式冷温水機25は、コージェネレーションシステム23が発生した排熱(温熱)によっても、冷熱を生成し得る。さらに、吸収式冷温水機25は、ガス投入によっても、冷熱の生成量を増加できる。なお、吸収式冷温水機25は、ガス投入のみでも温熱を生成し得る。
【0023】
電気式冷凍機24や、吸収式冷温水機25が生成した冷熱は、蓄熱槽26が貯蔵するか、部屋に設置された空調機27に供給される。空調機27は、供給された冷熱により、部屋の冷房を行う。また、空調機27は、コージェネレーションシステム23または吸収式冷温水機25のいずれかが生成する温水の供給を受けて、部屋の暖房を行うこともできる。
【0024】
図3は、受電電力削減情報算出装置100の機能構成を示す概略構成図である。この受電電力削減情報算出装置100は、電力削減量の入札支援装置としての機能を有している。
受電電力削減情報算出装置100は、送受信部110と、記憶部120と、処理部130と、出力部140とを有する。記憶部120は、処理データ記憶部121と、最適化データ記憶部122とを有する。処理部130は、情報取得部131と、開始指示部132と、エネルギー予測部133と、インセンティブ単価設定部134と、削減情報算出部135とを有する。
【0025】
送受信部110は、通信ネットワーク9(図1)に接続可能であり、通信ネットワーク9を介して、建物管理者の端末装置や、デマンドレスポンス発行側の上位システムや、気象情報等を提供するサーバ等と、情報の送受信を行う。
また、送受信部110は、通信線を介して制御装置3(図1)と通信を行うことができ、削減情報算出部135が最適化演算にて算出する制御対象機器2の運転スケジュールを制御装置3へ送信することができる。一方、制御装置3は、これにより当該運転スケジュールに従って制御対象機器2を制御することができることとなる。
【0026】
なお、この送受信部110を介することなく、受電電力削減情報算出装置100のユーザ(例えば、対象建物の使用者または管理者)が、処理部130の行う処理に必要な情報をキーボード等から入力することができる。
また、制御装置3への運転スケジュールの送信や、デマンドレスポンス発行側の上位システムへの入札情報など、受電電力削減情報算出装置100からの情報の送信は、必須ではない。例えば、受電電力削減情報算出装置100のユーザが、受電電力削減情報算出装置100の表示する情報を参照して、インターネット上の入札画面から入札条件を入力するようにしてもよい。
【0027】
記憶部120は、具体的には、受電電力削減情報算出装置100内に設けられた、図示していない記憶デバイスを含んで構成され、各種情報を記憶する。
処理データ記憶部121は、処理部130の行う処理に必要な情報を記憶する。特に、処理データ記憶部121は、削減情報算出部135が行う受電電力量削除条件の算出に必要な設定パラメータや、プロセスデータや、デマンドレスポンス対象時刻の情報や、ベースラインの情報を記憶する。
【0028】
処理データ記憶部121が記憶する設定パラメータは、例えば、インセンティブ単価の変更幅、インセンティブ単価の上限値、重み係数、評価指標、機器特性などの情報を含む。
ここでいうインセンティブ単価は、インセンティブの金額を算出するための単位である。インセンティブ単価と、受給エネルギーの削除量とを乗算して、インセンティブの金額が算出される。例えば、電力のデマンドレスポンスにおけるインセンティブ単価は、[円/キロワット時(kwh)]または[円/キロワット(kw)]といった単位で表される。
【0029】
インセンティブ単価の変更幅やインセンティブ単価の上限値は、インセンティブ単価設定部134がインセンティブ単価を設定するのに用いられる。インセンティブ単価設定部134が設定するインセンティブ単価に基づいて、削減情報算出部135が、制御対象機器2の運転スケジュールの最適化を行う。
重み係数は、エネルギー予測部133が制御対象機器2の消費エネルギーや供給エネルギーを予測するために行う類似度演算に用いられる。
【0030】
評価指標は、削減情報算出部135が制御対象機器2の運転スケジュールを最適化する最適化演算において最小化すべき指標である。例えば、制御対象機器2は、評価指標としてエネルギー料金(電気料金およびガス料金)を用いる。
機器特性は、各制御対象機器2の定格や、下限出力や、COP(Coefficient of performance)など、それぞれの機器の特性に応じて定まる各種のパラメータを含む。なお、COPとは、ヒートポンプ等の熱源機器の成績係数である。COPとして、冷却又は加熱能力を消費電力で割った値を用いることができる。
【0031】
プロセスデータは、時間の経過に応じて変化する外部からの情報を含む。例えば、気象データや運用データは、プロセスデータの例に該当する。ここでいう気象データは、過去の気象データであってもよいし、天気予報データであってもよいし、両者を含んでいてもよい。
運用データは、例えば、過去の各制御対象機器2の制御設定値や、運転スケジュールの実行時における各制御対象機器2の状態量や故障状態などを含む。運転スケジュールの実行時における各制御対象機器2の状態量は、各制御対象機器2の消費エネルギー、生産エネルギーを含む。例えば、状態量は、エネルギー供給機器としてのコージェネレーションシステム23や電気式冷凍機24や吸収式冷温水機25の、出力や負荷率などの情報を含む。さらに例えば、運転スケジュールの実行時における各制御対象機器2の状態量は、エネルギー貯蔵機器である蓄電池21の放電量や蓄熱量や、蓄熱装置の放熱量や蓄熱量などの情報を含む。
【0032】
処理データ記憶部121が記憶するデマンドレスポンス対象時刻は、デマンドレスポンスにより受電電力量の削減を図る対象の時刻である。具体的には、デマンドレスポンス対象時刻は、電力単価が引き上げられる時刻、または、受電電力量の削減に成功した場合に、インセンティブの支払の対象となる時刻である。
ベースラインは、インセンティブを与えるか否かの基準となる使用電力量のしきい値である。ベースラインは、電力需要者の過去の一定期間の使用電力量に基づいて設定することができる。例えば、過去の何日間又は何週間かの建物等における使用電力の実績値に基づいて、ベースラインが算定される。
本実施形態では、ベースラインの一例として、一日単位で設定され、一日の中では一定のベースラインを用いる。但し、本実施形態で用いるベースラインはこれに限らず、受電電力削減量の算出基準となるものであればよい。
【0033】
最適化データ記憶部122は、処理部130が行う処理で得られたたデータを記憶する。例えば、最適化データ記憶部122は、削減情報算出部135が最適化した制御対象機器2の運転スケジュールや、最適化に用いた種々のデータを記憶する。
【0034】
処理部130は、受電電力削減情報算出装置100の各部を制御して各種機能を実行する。処理部130は、具体的には、例えば受電電力削減情報算出装置100内にある、図示していないCPU(Central Processing Unit、中央処理装置)が、記憶部120からプログラムを読み出して実行することで実現される。
情報取得部131は、各種情報の取得および管理を行う。例えば、情報取得部131は、送受信部110を介して通信ネットワーク9(図1)に接続し、プロセスデータや、デマンドレスポンス対象時刻やベースラインなどの各種情報を取得する。また、情報取得部131は、受電電力削減情報算出装置100のユーザが入力デバイスを用いて入力するパラメータ値などの情報を取得する。情報取得部131は、取得した情報を処理データ記憶部121に記憶させる。また、情報取得部131は、処理部130における記憶部120とのインタフェースとして機能し、記憶部120から各種情報を読み出す。
【0035】
開始指示部132は、予め設定されたタイミングで、処理部130による入札条件取得処理の開始を促す。ここでいう入札条件取得処理は、制御対象機器2の運転スケジュールを最適化して、デマンドレスポンスへの入札条件を示す情報を取得する処理である。
例えば、受電電力削減情報算出装置100が、制御対象機器2の翌日の運転スケジュールを最適化する運用の場合、開始指示部132は、毎日、所定時刻に、処理開始を促すトリガ情報をエネルギー予測部133へ出力する。所定時刻を何時にするかは、自由に設定可能である。また、受電電力削減情報算出装置100が、数日おきに制御対象機器2の運転スケジュールを最適化する運用としてもよい。
一方、受電電力削減情報算出装置100が当日の運転スケジュールを最適化する運用の場合、開始指示部132は、一定時間間隔で、処理開始を促すトリガ情報をエネルギー予測部133へ出力する。
【0036】
エネルギー予測部133は、将来の所定期間における制御対象機器2のエネルギー入出力量の予測値を求める。具体的には、エネルギー予測部133は、デマンドレスポンスの対象期間における、制御対象機器2の各々のエネルギー供給量やエネルギー消費量を求める。
インセンティブ単価設定部134は、デマンドレスポンスにおけるインセンティブの単価を複数設定する。特に、インセンティブ単価設定部134は、インセンティブの単価の変更幅と、インセンティブの単価の上限値とを取得し、得られた変更幅および上限値に基づいて、後述する予め定められた手順に従って、インセンティブの単価を複数設定する。
【0037】
削減情報算出部135は、受給電力の削減に対するインセンティブの想定金額を反映させたエネルギー料金に基づいて、制御対象機器2の各々のエネルギー供給量やエネルギー消費量の予測値に対応する、受給電力の削減量を求める。具体的には、削減情報算出部135は、インセンティブ単価設定部134が設定するインセンティブ単価を電気料金に反映させ、当該電気料金単価やガス料金単価に基づいて、エネルギー料金を最小化するための最適化演算を行う。当該最適化演算に基づいて、削減情報算出部135は、制御対象機器2の運転スケジュールを取得し、受電電力の削減量を算出する。
特に、削減情報算出部135は、インセンティブ単価設定部134が複数設定するインセンティブの単価の各々について、受電電力の削減量を算出する。
【0038】
出力部140は、削減情報算出部135が取得した受電電力の削減量を出力する。
具体的には、出力部140は表示画面を有し、削減情報算出部135が算出した受電電力の削減量を、インセンティブの単価と受電電力の削減量との関係を示すグラフによって表示する。さらに、出力部140は、インセンティブの単価の過去の約定金額をグラフに表示する。
但し、出力部140が、削減情報算出部135の取得した受電電力の削減量を出力する方法は、グラフ表示等の画面表示に限らない。例えば、出力部140が、削減情報算出部135の取得した受電電力の削減量を音声または電子メール送信にて出力するようにしてもよい。
出力部140として、表示装置やプリンタ等、現在又は将来において利用可能な各種出力装置を用いることができる。処理データ記憶部121や最適化データ記憶部122が記憶したデータを、出力部が表示等することにより、受電電力削減情報算出装置100のユーザが当該データを参照できる。
【0039】
なお、受電電力削減情報算出装置100は、各部の処理に必要な情報の入力や、処理の選択や指示を入力するための入力部を有する。入力部としては、キーボード、マウス、タッチパネル、スイッチ等、現在又は将来において利用可能な各種入力装置を用いることができる。入力部は、情報取得部131の機能を果たすこともできる。
【0040】
次に、図4を参照して、入札式のデマンドレスポンスにおける電力需要者の受電電力量、ベースライン、デマンドレスポンス対象時刻、および、電力削減量の関係について説明する。
図4は、対象建物の受電電力の例を示すグラフである。同図の横軸は、一日分の時刻を示す。縦軸は、対象建物の受電電力を示す。また、同図の例では、13時から16時までの時間T11がデマンドレスポンスによる電力抑制の対象時間となっている。
【0041】
線L11は、対象建物の受電電力の推移の例を示す。線L12は、対象建物のベースラインを示す。ベースラインは、対象建物における過去の受電電力量の実績値に基づいて決定される。
領域A11は、デマンドレスポンスによる電力抑制の対象時間における電力削減量を示す。デマンドレスポンスによる電力抑制の対象時間(図4の例では、13時〜16時)において、設定されたベースラインに対して受電電力量が下回った分が、インセンティブ支払い対象の電力削減量とみなされる。
【0042】
時間T12は、デマンドレスポンスによる電力抑制の対象時間に含まれていない。このため、時間T12については、ベースラインに対して受電電力量が下回っているものの、インセンティブ支払い対象とはならない。
一方、時間T13は、デマンドレスポンスによる電力抑制の対象時間に含まれている。このため、時間T13における受電電力削減量は、インセンティブ支払い対象となる。入札式のデマンドレスポンスでは、電力抑制の対象時間における受電電力削減量の目標値を予め入札し、実際に受電電力削減量が目標値を上回った場合のみ、電力需要者にインセンティブが支払われる。
【0043】
次に、図5を参照して、受電電力削減情報算出装置100の動作について説明する。
図5は、受電電力削減情報算出装置100がデマンドレスポンスにおける入札条件を算出する処理手順を示すフローチャートである。
以下では、受電電力削減情報算出装置100が、対象建物における制御対象機器2の翌日の運転スケジュールを、前日の夜に最適化する場合を例に説明する。なお、受電電力削減情報算出装置100が最適化する運転スケジュールは、将来の所定の期間であればよく、翌日であるか、翌日より後のいずれかの一日であるかは限定されない。
【0044】
まず、開始指示部132は、予め設定された時刻に、最適化処理の実行を指示する。例えば、前日の21時になると、開始指示部132が、処理開始を促すトリガ情報をエネルギー予測部133へ出力する。
開始指示部132からの指示に基づいて、処理部130が、入札条件取得処理の実行を開始する。図5のフローチャートは、開始指示部132の指示に基づいて処理部130において入札条件取得処理の実行を開始した後の処理フローを示す。
【0045】
エネルギー予測部133は、処理データ記憶部121に記憶されている過去の所定期間の気象データ及び運用データに基づいて、制御対象機器2の消費エネルギー又は供給エネルギーを予測する(ステップS1)。
例えば、処理データ記憶部121にて、気象データ及び運用データとして、過去の曜日、天候および温湿度を予め記憶させておく。そして、エネルギー予測部133は、過去の曜日、天候および温湿度に基づいて、気象データ及び運用データの示す状況と、予測対象時における状況との類似度を演算する。類似度の演算式の一例を式(1)に示す。
【0046】
【数1】
【0047】
エネルギー予測部133は、式(1)における「曜日による重み」に、予め設定されている曜日毎の重み係数を代入する。予測対象時における曜日と、気象データ及び運用データの示す曜日とが一致する場合、「曜日による重み」の値は大きくなる。一方、予測対象時における曜日と、気象データ及び運用データの示す曜日とが一致しない場合、「曜日による重み」の値は小さくなる。予測対象時における曜日と気象データ及び運用データの示す曜日とが共に平日の場合や、共に休日の場合も、「曜日による重み」の値を比較的小さい値にしてもよい。
【0048】
また、エネルギー予測部133は、式(1)における「天候による重み」に、予め設定されている天候毎の重み係数を代入する。例えば、翌日の予報に基づく天候が「晴れ」の場合、過去のデータは「晴れ」であれば重み係数の値は小さくなる。一方、翌日の予報に基づく天候が「晴れ」の場合、過去のデータが「雨」であれば重み係数の値は大きくなる。
【0049】
また、エネルギー予測部133は、「翌日最高気温」、「翌日最低気温」、「翌日相対湿度」に、それぞれ、予想される最高気温、最低気温、相対湿度を代入する。そして、エネルギー予測部133は、過去の気象データとして、過去の日の日番号と対応付けて記録されている、それぞれの日の最高気温TMi、最低気温TL、相対湿度RHを用いる。ここでいう日番号とは、処理データ記憶部121に記憶された運用データ及びこれに対応する気象データを、日毎に並べて割り振った通し番号である。
a、b、cは、各因子の重み係数である。a、b、cの値は、予め定められている。
【0050】
曜日による重み、天候による重み、a、b、cなどの値は、例えばユーザにより予め設定されるものであり、例えば、ユーザにより、受電電力削減情報算出装置100の有するキーボードからこれらの値が入力されると、情報取得部131は処理データ記憶部121に記憶させる。
このように、エネルギー予測部133は、式(1)に基づいて過去の日のデータの類似度を演算により求める。
【0051】
次に、エネルギー予測部133は、上記のように求めた類似度が最小となる日番号を抽出する。そして、エネルギー予測部133は、抽出された日番号に該当する日付における、制御対象機器2の消費エネルギー又は供給エネルギーを翌日のエネルギー予測値として設定する。
ステップS1の後、インセンティブ単価設定部134が、インセンティブ単価の初期設定を行う(ステップS2)。インセンティブ単価設定部134は、インセンティブ単価を、予め定められている最小値(例えば0)に初期設定する。
【0052】
次に、削減情報算出部135が、エネルギー予測部133の予測値に基づいて機器の運転スケジュールを最適化する(ステップS2)。例えば、削減情報算出部135は、式(2)のように定義される目的関数の値を、以下に説明する式(3)〜式(9)および表1に示される制約条件のもとで最小化する。
【0053】
【数2】
【0054】
但し、tは時刻を示す。また、時刻tにおける変数の値を、変数に上付きのtを付して示す。また、ts、teは、それぞれ、デマンドレスポンスの開始時刻および終了時刻を示す。例えば、デマンドレスポンスの対象となる時刻が13時0分から16時0分までの場合、tの時間区分を30分にするとts=27、te=32となる。
X1は、受電電力量を示し、X1は、時刻tにおける受電電力量を示す。
【0055】
は、電力係数を示し、Eは、時刻tにおける電力係数を示す。ここでいう電力係数は、単位量当たりの電気料金である。Eは、後述する式(9)のように定義される。
GASは、ガス使用量を示し、GASは、時刻tにおけるガス使用量を示す。
GASはガス係数を示す。ここでいうガス係数は、単位量当たりのガス料金である。
式(3)は、電力の受給関係を示す。
【0056】
【数3】
【0057】
但し、ECGSは、コージェネレーションシステムの定格発電量を示す。
X6は、コージェネレーションシステムの負荷率を示し、X6は、時刻tにおけるコージェネレーションシステムの負荷率を示す。
PVは、PV(Photo Voltaic、太陽光発電)の予測発電量を示す。EPVは、時刻tにおけるPV(Photo Voltaic、太陽光発電)の予測発電量を示す。
X8は、蓄電池のSOC(State Of Charge)を示す。X8は、時刻tにおける蓄電池のSOC(State Of Charge)を示す。従って、X8−X8t+1は、時刻tから時刻t+1までの時間における蓄電池の充放電量を示す。
【0058】
は、電気式冷凍機の定格冷却量を示す。
COPは、電気式冷凍機のCOP(Coefficient Of Power、成績係数)を示す。COPは、時刻tにおける電気式冷凍機のCOP(Coefficient Of Power、成績係数)を示す。
X5は、電気式冷凍機の負荷率を示す。
DEMANDは、電力消費機器の予測電力消費量を示す。EDEMANDは、時刻tにおける電力消費機器の予測電力消費量を示す。
式(4)は、ガスの受給関係を示す。
【0059】
【数4】
【0060】
但し、GASCGSは、コージェネレーションシステムの定格ガス使用量を示す。
GASABR−CGは、冷水生成時における吸収式冷温水機の定格ガス使用量を示す。
X3は、ガスを使用して冷水を生成する場合の吸収式冷温水機の負荷率を示す。X3は、時刻tにおける、ガスを使用して冷水を生成する場合の吸収式冷温水機の負荷率を示す。
GASABR−HGは、温水生成時における吸収式冷温水機の定格ガス使用量を示す。
X4は、ガスを使用して温水を生成する場合の吸収式冷温水機の負荷率を示す。X4は、時刻tにおける、ガスを使用して温水を生成する場合の吸収式冷温水機の負荷率を示す。
式(5)は、冷熱の受給関係を示す。
【0061】
【数5】
【0062】
但し、HABR−CHは、コージェネレーションシステムからの排熱を使用して冷水を生成する場合の、吸収式冷温水機の定格冷却量を示す。
X2は、コージェネレーションシステムからの排熱を使用して冷水を生成する場合の、吸収式冷温水機の負荷率を示す。X2は、時刻tにおいて、コージェネレーションシステムからの排熱を使用して冷水を生成する場合の、吸収式冷温水機の負荷率を示す。
ABR−CGは、ガスを使用して冷水を生成する場合の、吸収式冷温水機の定格冷却量を示す。
X7は、蓄熱槽の蓄熱残量を示す。X7は、時刻tにおける蓄熱槽の蓄熱残量を示す。従って、X7−X7t+1は、時刻tから時刻t+1までの時間における蓄熱槽の蓄放熱量を示す。
HCDEMANDは、冷熱消費機器の予測冷熱消費量を示す。HCDEMANDは、時刻tにおける冷熱消費機器の予測冷熱消費量を示す。
式(6)は、温熱の受給関係を示す。
【0063】
【数6】
【0064】
但し、HCGSは、コージェネレーションシステムの定格排熱量を示す。
ABR−HGは、ガスを使用して温水を生成する場合の、吸収式冷温水機の定格加熱量を示す。
ABR−INは、吸収式冷温水機がコージェネレーションシステムからの排熱を使用して温水を生成する場合の、コージェネレーションシステムからの定格排熱投入量を示す。
HHDEMANDは、温熱消費機器の予測温熱消費量を示す。HHDEMANDは、時刻tにおける温熱消費機器の予測温熱消費量を示す。
式(6)に不等号が用いられているのは、通常、コージェネレーションシステムは必要電力に基づいて発電を行い、余剰となった排熱は廃棄されるからである。
式(7)は、蓄熱槽の蓄熱量の単位時間当たりの変化の上限を示す。
【0065】
【数7】
【0066】
但し、FLHsは、蓄熱槽の最大蓄放熱量を示す。
式(8)は、蓄電池の蓄電量の単位時間当たりの変化の上限を示す。
【0067】
【数8】
【0068】
但し、FLBatは、蓄電池の最大充放熱量を示す。
式(9)は、本実施形態における電力係数の定義を示す。
【0069】
【数9】
【0070】
但し、ECHGは、時刻tにおける電力料金の従量単価である。INCは、インセンティブ単価である。インセンティブは電力料金とは逆に、電力供給者から電力需要者に支払われるので、インセンティブ単価はマイナスの値となる。式(9)により、電気料金にインセンティブ単価が加味される。
式(3)〜式(6)は、図2のエネルギーフローを表現したものである。また、式(7)および式(8)は、制御対象機器2の容量の制約式である。
【0071】
X1〜X8が、最適化におけるパラメータである。すなわち、削減情報算出部135は、式(2)に示される目的関数の値を最小にする、時刻t毎のX1〜X8の値を求める。時刻t毎のX1〜X8の値により、各機器の運転計画が示される。X1〜X8の内容を表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
X2〜X6の下限値は、機器の仕様により定まっている。
表1に示す上下限値は、式(2)〜式(9)と共に、最適化における制約条件となる。
なお、式(2)〜式(9)および表1に示す定式化は一例であり、削減情報算出部135が最適化に用いる式は、これらに限らない。
目的関数である式(2)を最小化する運転スケジュールが求まると、削減情報算出部135は、式(10)に基づいて、ベースラインからの受電電力量の削減量を算出する。
【0074】
【数10】
【0075】
但し、BLは、ベースラインを示す。
情報取得部131は、削減情報算出部135が求めた運転スケジュールを、受電電力量の削減量およびインセンティブ単価と対応付けて最適化データ記憶部122に記憶させる。
【0076】
ステップS3の後、インセンティブ単価設定部134は、インセンティブ単価を変更する(ステップS4)。そして、インセンティブ単価設定部134は、変更後のインセンティブ単価が、予め設定されているインセンティブ単価上限値以下か否かを判定する(ステップS5)。
インセンティブ単価上限値以下であると判定した場合(ステップS5:YES)、ステップS3へ戻る。この場合、削減情報算出部135は、変更後のインセンティブ単価について運転計画の最適化を行う。
【0077】
ステップS3におけるインセンティブ単価の変更方法として、等間隔でインセンティブ単価を変更する方法や、受電電力削減量を基準としてインセンティブ単価を変更する方法など、様々な方法を用いることができる。
まず、等間隔でインセンティブ単価を変更する方法について説明する。
図6は、インセンティブ単価設定部134が等間隔でインセンティブ単価を変更する場合の、インセンティブ単価の推移の例を示すグラフである。同図の横軸は、最適化演算の回数を示す。縦軸は、インセンティブ単価を示す。例えば、横軸の「2」の位置にある点P11は、削減情報算出部135が2回目の最適化演算を行う際のインセンティブ単価を示す。
【0078】
図6の例では、インセンティブ単価設定部134は、予め設定されている変更幅ΔINCずつインセンティブ単価を増加させていく。インセンティブ単価設定部134は、インセンティブ単価が上限値を上回るまでインセンティブ単価の変更を繰り返す。
インセンティブ単価設定部134は、インセンティブ単価の現在の設定値に、所定の変更幅ΔINCを加算するという簡単な計算にてインセンティブ単価の変更を行うことができる。
【0079】
次に、受電削減量が変化した場合にインセンティブ単価の変更幅を切り替える方法について説明する。
図7は、インセンティブ単価設定部134がインセンティブ単価の切り替えを行う場合の、インセンティブ単価の推移の例を示すグラフである。同図の横軸は、インセンティブ単価の変更幅ΔINCでの最適化演算の回数を示す。縦軸は、インセンティブ単価を示す。
【0080】
図7の例において、インセンティブ単価設定部134は、図6の場合と同様、予め設定されている変更幅ΔINCずつインセンティブ単価を増加させていく。インセンティブ単価設定部134は、インセンティブ単価が上限値を上回るまで、変更幅ΔINCでのインセンティブ単価の変更を繰り返す。
一方、図7の例において、電力削減量が変化した区間について、変更幅ΔINCよりも小さく予め設定されている変更幅Δincに切り替えてインセンティブ単価の設定をし直す。
【0081】
具体的には、2回目の最適化計算で得られた電力削減量は1回目の最適化計算で得られた電力削減量と同じであり、インセンティブ単価設定部134は、点P211のようにインセンティブ単価を変更幅ΔINCだけ増加させている。3回目の最適化計算で得られた電力削減量も2回目の最適化計算で得られた電力削減量と同じであり、インセンティブ単価設定部134は、点P212のようにインセンティブ単価を変更幅ΔINCだけ増加させている。
【0082】
一方、4回目の最適化計算で得られた電力削減量は、3回目の最適化計算で得られた電力削減量と異なっている。そこで、インセンティブ単価設定部134は、インセンティブ単価を変更幅ΔINCずつ増加させる処理を中断する。そして、インセンティブ単価設定部134は、点P221、P222、・・・のように、3回目の最適化計算で用いたインセンティブ単価から4回目の最適化計算で用いたインセンティブ単価までの範囲で、インセンティブ単価を変更幅Δincずつ増加させていく。
【0083】
インセンティブ単価が4回目の最適化計算で用いたインセンティブ単価に達すると、インセンティブ単価設定部134は、インセンティブ単価を変更幅ΔINCずつ増加させる処理を再開する。
以後、電力削減量が変化する毎に、インセンティブ単価設定部134は、インセンティブ単価を変更幅ΔINCずつ増加させる処理を中断し、該当区間について変更幅Δincでインセンティブ単価の設定をし直す。
【0084】
次に、図8を参照して、インセンティブ単価設定部134がインセンティブ単価の切り替えを行う場合の動作について説明する。
図8は、インセンティブ単価設定部134がインセンティブ単価の切り替えを行う場合の処理手順を示すフローチャートである。インセンティブ単価設定部134は、図5のステップS4において図8の処理を行う。
図8の処理において、インセンティブ単価設定部134は、まず、削減情報算出部135が行った直近の最適化演算が初回の最適化演算か否かを判定する(ステップS101)。
【0085】
初回の最適化演算であると判定した場合(ステップS101:YES)、インセンティブ単価設定部134は、インセンティブ単価を変更幅ΔINCだけ増加させる(ステップS111)。
その後、図8の処理を終了する。
一方、ステップS101において、初回の最適化演算でないと判定した場合(ステップS101:NO)、インセンティブ単価設定部134は、前回の図5のステップS4の処理でのインセンティブ単価の変更幅がΔINC以上か否かを判定する(ステップS102)。
【0086】
ΔINC以上であったと判定した場合(ステップS102:YES)、インセンティブ単価設定部134は、削減情報算出部135が行った直近の最適化演算における受電電力削減量が、その前回の最適化演算における受電電力削減量から変化しているか否かを判定する(ステップS103)。
受電電力削減量が変化していると判定した場合、(ステップS103:YES)、インセンティブ単価設定部134は、前回の図5のステップS4の処理で設定したインセンティブ単価を切替基準値として設定する(ステップS121)。
【0087】
そして、インセンティブ単価設定部134は、インセンティブ単価を(ΔINC−Δinc)だけ減少させる(ステップS122)。すなわち、インセンティブ単価設定部134は、2回前の図5のステップS4の処理で設定したインセンティブ単価に戻し、当該インセンティブ単価での最適化演算は既に行われているので、インセンティブ単価をΔinc増加させる。
ステップS122の後、図8の処理を終了する。
一方、ステップS103において、受電電力削減量が変化していないと判定した場合、(ステップS103:NO)、ステップS111へ進む。
【0088】
一方、ステップS102において、前回の図5のステップS4の処理でのインセンティブ単価の変更幅がΔINC未満であったと判定した場合(ステップS102:NO)、インセンティブ単価設定部134は、インセンティブ単価をΔincだけ増加させる(ステップS131)。
そして、インセンティブ単価設定部134は、インセンティブ単価が切替基準値以上か否かを判定する(ステップS132)。ここでの切替基準値は、ステップS121で記憶した値である。
【0089】
切替基準値以上であると判定した場合(ステップS132:YES)、インセンティブ単価設定部134は、インセンティブ単価を切替基準値+ΔINCに設定する(ステップS133)。すなわち、インセンティブ単価設定部134は、変更幅切替前のインセンティブ単価に戻し、当該インセンティブ単価での最適化演算は既に行われているので、インセンティブ単価をΔINC増加させる。
ステップS133の後、図8の処理を終了する。
一方、ステップS132において、インセンティブ単価が切替基準値未満であると判定した場合(ステップS132:NO)、図8の処理を終了する。
【0090】
以上の処理により、インセンティブ単価設定部134は、インセンティブ単価の変更幅を切り替えて、大きい変更幅にて受電削減量が変化した範囲について、変更幅を小さくとる。これによりインセンティブ単価設定部134は、インセンティブ単価を2段階で切り替えるという比較的簡単な処理にて、最適化処理におけるインセンティブ単価を効率よく変化させることができる。
これにより、電力削減量に変化が見られない領域において、受電電力削減情報算出装置100は、削減情報算出部135の計算量を低減させることができる。一方、電力削減量に変化が見られる領域において、受電電力削減情報算出装置100は、インセンティブ単価と受電電力削減量との関係をより詳細に得ることができる。この点において、受電電力削減情報算出装置100は、ある電力削減量が期待できる場合の、電力需要者に損が生じにくい最小のインセンティブ単価を効率よく抽出できる。
【0091】
次に、受電削減量が変化した場合にインセンティブ単価の変更幅を段階的に変化させる方法について説明する。
図9は、インセンティブ単価設定部134がインセンティブ単価の変更幅を段階的に変化させる場合の、インセンティブ単価の推移の第1の例を示すグラフである。同図の横軸は、電力削減量を示す。縦軸は、インセンティブ単価を示す。また、各点に添えられている数字は、最適化演算の回数を示す。
例えば、数字「1」が添えられている点P31は、削減情報算出部135が1回目の最適化演算を行う際のインセンティブ単価、および、得られる電力削減量を示している。
【0092】
図9の例では、インセンティブ単価設定部134は、予め設定されている変更幅aずつインセンティブ単価を増加させていく。なお、変更幅aは、予め設定されている変更幅ΔINCより大きい値に設定されている。
インセンティブ単価設定部134は、削減情報算出部135の最適化にて得られる受電電力削減量が変化するまで、あるいは、図5のステップS5においてインセンティブ単価が上限値より大きくなるまで、これを繰り返す。
【0093】
受電電力削減量が変化した場合、インセンティブ単価設定部134は、インセンティブ単価をa/2、a/4、a/8、・・・、a/2(iは正整数)、・・・、ずつ減少させていく。インセンティブ単価設定部134は、受電電力削減量が、変化前の受電電力削減量と同じになるか、あるいは、インセンティブ単価と受電電力削減量変化前のインセンティブ単価との差が、変更幅ΔINCより小さくなるまで、これを繰り返す。
【0094】
インセンティブ単価と受電電力削減量変化前のインセンティブ単価との差が、変更幅ΔINCより小さくなった場合、インセンティブ単価設定部134は、減少させる前のインセンティブ単価から、上記と同様に変更幅aだけ増加させていく。
このように、インセンティブ単価設定部134は、インセンティブ単価の増減を繰り返し、削減情報算出部135は、インセンティブ単価設定部134が設定する各インセンティブ単価について、最適化演算を行う。
【0095】
図9の例では、点P31が示すように、1回目の最適化演算にて得られた受電電力削減量はαとなっている。1回目の最適化演算の後、インセンティブ単価設定部134は、インセンティブ単価に変更幅aを加算する。そして、削減情報算出部135は、2回目の最適化演算を行う。点P32が示すように、2回目の最適化演算にて得られた受電電力削減量は、1回目と同じくαとなっている。
【0096】
受電電力削減量がαのまま変化していないので、インセンティブ単価設定部134は、インセンティブ単価に変更幅aを加算する。そして、削減情報算出部135は、3回目の最適化演算を行う。点P33が示すように、3回目の最適化演算にて得られた受電電力削減量は、βとなっている。
受電電力削減量がαからβへ変化したので、インセンティブ単価設定部134は、インセンティブ単価から変更幅a/2を減算する。そして、削減情報算出部135は、4回目の最適化演算を行う。点P34が示すように、4回目の最適化演算にて得られた受電電力削減量は、3回目と同じくβとなっている。
【0097】
得られた受電電力削減量がα(変化前の値)と異なるので、インセンティブ単価設定部134は、インセンティブ単価から変更幅a/4を減算する。そして、削減情報算出部135は、5回目の最適化演算を行う。点P35が示すように、5回目の最適化演算にて得られた受電電力削減量は、3回目と同じくβとなっている。
【0098】
また、5回目の最適化演算の際のインセンティブ単価と、2回目の最適化演算(受電電力削減量変化前の最適化演算)の際のインセンティブ単価との差a/4は、変更幅ΔINCよりも小さい。
そこで、インセンティブ単価設定部134は、点P33が示す3回目の最適化演算の際のインセンティブ単価(減少させる前のインセンティブ単価)から、変更幅a増加させる。そして、削減情報算出部135は、点P36が示す6回目の最適化演算を行う。
【0099】
一方、インセンティブ単価を減少させて、受電電力削減量が、変化前の受電電力削減量と同じになった場合、インセンティブ単価設定部134は、直前のインセンティブ単価の減少幅の半分だけインセンティブ単価を増加させる。以後、インセンティブ単価設定部134は、増加幅を半減させながらインセンティブ単価を増加させていく。インセンティブ単価設定部134は、受電電力削減量が、変化後の受電電力削減量と同じになるか、あるいは、インセンティブ単価と受電電力削減量変化後のインセンティブ単価との差が、変更幅ΔINCより小さくなるまで、これを繰り返す。
【0100】
受電電力削減量が、変化後の受電電力削減量と同じになるか、あるいは、インセンティブ単価と受電電力削減量変化後のインセンティブ単価との差が、変更幅ΔINCより小さくなった場合、インセンティブ単価設定部134は、減少させる前のインセンティブ単価から、上記と同様に変更幅aだけ増加させていく。
このように、インセンティブ単価設定部134は、インセンティブ単価の増減を繰り返し、削減情報算出部135は、インセンティブ単価設定部134が設定する各インセンティブ単価について、最適化演算を行う。
【0101】
図10は、インセンティブ単価設定部134がインセンティブ単価の変更幅を段階的に変化させる場合の、インセンティブ単価の推移の第2の例を示すグラフである。図9の場合と同様、図10の横軸は、電力削減量を示す。縦軸は、インセンティブ単価を示す。また、各点に添えられている数字は、最適化演算の回数を示す。
図10の例において点P41〜P43が示す1回目の最適化演算〜3回目の最適化演算は、図9の例において点P31〜P33が示す1回目の最適化演算〜3回目の最適化演算の場合と同様である。
【0102】
一方、図10の例において点P44が示す4回目の最適化演算では、図9の例において点P34が示す4回目の最適化演算の場合と異なり、得られた受電電力削減量が、2回目(受電電力削減量の変化前)と同じくαとなっている。
得られた受電電力削減量がα(変化前の値)と同じなので、インセンティブ単価設定部134は、インセンティブ単価に変更幅a/4(前回(3回目)の最適化演算後の減少幅の半分)を加算する。
【0103】
そして、削減情報算出部135は、5回目の最適化演算を行う。点P45が示すように、5回目の最適化演算にて得られた受電電力削減量は、3回目と同じくβとなっている。
そこで、インセンティブ単価設定部134は、点P43が示す3回目の最適化演算の際のインセンティブ単価(減少させる前のインセンティブ単価)から、変更幅a増加させる。そして、削減情報算出部135は、点P46が示す6回目の最適化演算を行う。
【0104】
次に、図11および図12を参照して、インセンティブ単価設定部134がインセンティブ単価の変更幅を段階的に変化させる場合の動作について説明する。
図11および図12は、インセンティブ単価設定部134がインセンティブ単価の変更幅を段階的に変化させる場合の処理手順を示すフローチャートである。インセンティブ単価設定部134は、図5のステップS4において図11および図12の処理を行う。
図11の処理において、インセンティブ単価設定部134は、まず、削減情報算出部135が行った直近の最適化演算が初回の最適化演算か否かを判定する(ステップS201)。
【0105】
初回の最適化演算であると判定した場合(ステップS201:YES)、インセンティブ単価設定部134は、インセンティブ単価を変更幅aだけ増加させる(ステップS211)。
その後、図11および図12の処理を終了する。
一方、ステップS201において、初回の最適化演算でないと判定した場合(ステップS201:NO)、インセンティブ単価設定部134は、前回の図5のステップS4の処理でインセンティブ単価を増加させたか否かを判定する(ステップS202)。
インセンティブ単価を増加させたと判定した場合(ステップS202:YES)、インセンティブ単価設定部134は、前回の図5のステップS4の処理でのインセンティブ単価の増加幅がaであったか否かを判定する(ステップS203)。
【0106】
増加幅がaであったと判定した場合(ステップS203:YES)、インセンティブ単価設定部134は、削減情報算出部135が行った直近の最適化演算における受電電力削減量が、その前回の最適化演算における受電電力削減量から変化しているか否かを判定する(ステップS204)。
受電電力削減量が変化していると判定した場合、(ステップS204:YES)、インセンティブ単価設定部134は、インセンティブ単価を変更幅a/2だけ減少させる(ステップS221)。その後、図11および図12の処理を終了する。
一方、ステップS204において、受電電力削減量が変化していないと判定した場合、(ステップS204:NO)、ステップS211へ進む。
【0107】
一方、ステップS203において、増加幅がaではなかったと判定した場合(ステップS203:NO)、インセンティブ単価設定部134は、削減情報算出部135が行った直近の最適化演算における受電電力削減量が、変化後の受電電力削減量と同じか否かを判定する(ステップS231)。ここでいう変化後の受電電力削減量は、ステップS204において受電電力削減量が変化していると判定(複数ある場合は、直近の判定)したときの受電電力削減量である。
【0108】
受電電力削減量が変化後の受電電力削減量と同じであると判定した場合(ステップS231:YES)、インセンティブ単価設定部134は、インセンティブ単価の変化を、減少させる前のインセンティブ単価から変更幅aだけ増加させる(ステップS251)。ここでいう減少させる前のインセンティブ単価とは、図5のステップS4でインセンティブ単価を増加させた処理のうち直近の処理において算出したインセンティブ単価である。
ステップS251の後、図11および図12の処理を終了する。
【0109】
一方、ステップS231において、受電電力削減量が変化後の受電電力削減量と異なると判定した場合(ステップS231:NO)、インセンティブ単価設定部134は、受電電力削減量変化後のインセンティブ単価と現在のインセンティブ単価との差がΔINCより小さいか否かを判定する(ステップS232)。ここでいう受電電力削減量変化後のインセンティブ単価は、ステップS204において受電電力削減量が変化していると判定(複数ある場合は、直近の判定)したときのインセンティブ単価である。
【0110】
差がΔINCより小さいと判定した場合(ステップS232:YES)、ステップS251へ進む。
一方、差がΔINC以上であると判定した場合(ステップS232:NO)、インセンティブ単価設定部134は、インセンティブ単価を、前回の図5のステップS4での増加幅の半分だけ増加させる(ステップS241)。その後、図11および図12の処理を終了する。
【0111】
一方、ステップS202において、前回の図5のステップS4の処理でインセンティブ単価を増加させていないと判定した場合(ステップS202:NO)、インセンティブ単価設定部134は、受電電力削減量が、受電電力削減量変化開始前と同じか否かを判定する(ステップS301(図12))。ここでいう受電電力削減量変化開始前は、削減情報算出部135が行った最適化演算における受電電力削減量が、その前回の最適化演算における受電電力削減量と同じであったタイミングをいう。該当するタイミングが複数ある場合は、直近のタイミングを指す。また、該当するタイミングがない場合は、削減情報算出部135が初回の最適化演算を行ったタイミングを指す。
【0112】
受電電力削減量が受電電力削減量変化開始前と同じであると判定した場合(ステップS301:YES)、インセンティブ単価設定部134は、インセンティブ単価を、前回の図5のステップS4でのインセンティブ単価の減少幅の半分だけ増加させる(ステップS311)。その後、図11および図12の処理を終了する。
【0113】
一方、ステップS301において、受電電力削減量が受電電力削減量変化開始前と異なると判定した場合(ステップS301:NO)、インセンティブ単価設定部134は、受電電力削減量変化開始前のインセンティブ単価と現在のインセンティブ単価との差がΔINCより小さいか否かを判定する(ステップS321)。
差がΔINCより小さいと判定した場合(ステップS321:YES)、インセンティブ単価設定部134は、インセンティブ単価の変化を、減少させる前のインセンティブ単価から変更幅aだけ増加させる(ステップS331)。
【0114】
その後、図11および図12の処理を終了する。
一方、ステップS321において、差がΔINC以上であると判定した場合(ステップS321:NO)、インセンティブ単価設定部134は、インセンティブ単価を、前回の図5のステップS4でのインセンティブ単価の減少幅の半分だけ減少させる(ステップS341)。
その後、図11および図12の処理を終了する。
【0115】
以上の処理により、インセンティブ単価設定部134は、電力削減量に変化が見られない領域ではインセンティブ単価の変更幅を大きくとる。一方、電力削減量が変化する領域では、インセンティブ単価設定部134は、インセンティブ単価の変更幅を小さくする。
これにより、電力削減量に変化が見られない領域において、受電電力削減情報算出装置100は、削減情報算出部135の計算量を低減させることができる。一方、電力削減量に変化が見られる領域において、受電電力削減情報算出装置100は、インセンティブ単価と受電電力削減量との関係をより詳細に得ることができる。この点において、受電電力削減情報算出装置100は、ある電力削減量が期待できる場合の、電力需要者に損が生じにくい最小のインセンティブ単価を効率よく抽出できる。
【0116】
図5のステップS5において、変更後のインセンティブ単価が、予め設定されているインセンティブ単価上限値より大きいと判定した場合(ステップS5:NO)、出力部140は削減情報算出部の最適化演算にて得られた受電電力削除量を、インセンティブ単価と共に、入札条件の決定者に通知する(ステップS6)。
【0117】
図13は、出力部140が表示する表示画面の例を示す説明図である。同図の例において出力部140が表示するグラフの横軸は、デマンドレスポンス対象時刻における合計の受電電力削減量を示す。縦軸は、インセンティブ単価を示す。グラフは、削減情報算出部135が繰り返し行った最適化演算にて得られた受電電力削減量とインセンティブ単価との関係を示している。
線L51は、削減情報算出部135の最適化演算で得られた運転スケジュールにおけるインセンティブ単価および電力削減量を示す。なお、図13のABRは、吸収式冷温水機を示す。
【0118】
また、図13の表示画面では、前回の市場での約定金額、および、電力の削減を図るために活用される機器、ならびに、式(2)に例示されるインセンティブ単価を考慮したエネルギー料金と、デマンドレスポンスによる受電電力削減を行わない場合(インセンティブ単価=0円/kWh)のエネルギー料金と等しくなる点P51が示されている。
例えば、バッテリの運転コストは他の機器の運用コストよりも安い。このため、バッテリのみを用いて受電電力を削減する運用では、インセンティブ単価が安くても電力需要者が損をせずに済むことが見込まれる。
【0119】
これに対し、バッテリに加えて蓄熱槽も用いることで、バッテリのみを用いる場合よりも受電電力削減量を大きくすることができる。一方、蓄熱槽の運転コストはバッテリの運転コストよりも高い。このため、バッテリと蓄熱槽とを用いて受電電力を削減する運用では、電力需要者が損をしないためには、バッテリのみを用いる場合よりも高いインセンティブ単価が必要となる。
【0120】
さらにコージェネレーションシステムを用いる運用では、受電電力削減量をさらに大きくすることができる。一方、コージェネレーションシステムの運転のためにガスを焚くことで運転コストが高くなる。このため、バッテリと蓄熱槽とコージェネレーションシステムとを用いて受電電力を削減する運用では、電力需要者が損をしないためには、バッテリと蓄熱槽とを用いる場合よりも高いインセンティブ単価が必要となる。
なお、電力の削減を図るために活用される機器は、運転スケジュールとしての変数X1〜X8により示される。
【0121】
このように、使用する機器に応じて、削減可能な受電電力量、および、電力需要者が損をしないためのインセンティブ単価が異なる。出力部140が、図13の表示画面のように受電電力削減量とインセンティブ単価との関係を示すことで、電力需要者は、運転点P51よりインセンティブ単価が高く、かつ線L51上の受電電力削減量とインセンティブ単価を入札することで、損の生じにくい入札条件を容易に把握できる。これにより、電力需要者は、適切な入札を実施し、利益を確保した機器の運転を行うことが可能となる。
【0122】
また、出力部140は、削減情報算出部135が算出した受電電力の削減量を、インセンティブの単価と受電電力の削減量との関係を示すグラフによって表示する。
これにより、受電電力削減情報算出装置100のユーザは、当該グラフを算出して、適切な入札条件を容易に把握し得る。
【0123】
また、出力部140は、インセンティブ単価の過去の約定金額をグラフに表示する。
これにより、これにより、受電電力削減情報算出装置100のユーザは、過去の約定金額を把握して、約定金額を反映させた金額(例えば、約定金額をやや上回るインセンティブ単価)で入札することができる。受電電力削減情報算出装置100のユーザが、約定金額を反映させた金額で入札することで、応札される可能性が高まることが期待される。
【0124】
<第2の実施形態>
図14は、受電電力削減情報算出装置200の機能構成を示す概略構成図である。同図において、受電電力削減情報算出装置100は、送受信部110と、記憶部220と、処理部230と、出力部240とを有する。記憶部220は、処理データ記憶部221と、最適化データ記憶部122とを有する。処理部230は、情報取得部131と、開始指示部132と、エネルギー予測部133と、インセンティブ単価設定部234と、削減情報算出部135とを有する。
図14において、図3の各部に対応して同様の機能を有する部分には同一の符号(110、122、131〜133、135)を付して説明を省略する。また、本実施形態における監視制御システムの構成や制御対象機器は、第1の実施形態で説明したのと同様である。
【0125】
本実施形態では、インセンティブ単価設定部234が行うインセンティブ単価の設定方法が、第1の実施形態と異なる。これに伴い、インセンティブ単価設定部234は、インセンティブ単価の設定を繰り返さない。また、処理データ記憶部221は、インセンティブ単価の変更幅およびインセンティブ単価の上限値に代えて、インセンティブ単価の補正額を示すパラメータを記憶する。また、出力部240の出力が、第1の実施形態と異なる。
【0126】
図15は、受電電力削減情報算出装置200がデマンドレスポンスにおける入札条件を算出する処理手順を示すフローチャートである。
同図のステップS401は、図5のステップS1と同様である。
ステップS402において、インセンティブ単価設定部234は、式(11)に基づいて電力単価を設定する。
【0127】
【数11】
【0128】
但し、INCCP[円/キロワット時]は、インセンティブ単価の前回の市場での約定金額を示す。inc[[円/キロワット時]は、インセンティブ単価の補正額を示す。また、式(9)について説明したように、ECHGは、時刻tにおける電力料金の従量単価を示す。
【0129】
ここでいうインセンティブ単価の約定金額は、デマンドレスポンスにおいて実際に契約されるインセンティブ単価の金額である。入札式のデマンドレスポンスの契約において入札額とは別に約定金額を定めることが提案されている。約定金額は、例えば、契約対象となる入札で最も高い入札金額に設定される。
また、ここでいう補正額は、インセンティブ単価の前回の約定金額から今回の入札で想定するインセンティブ単価を算出するための差額である。例えば、電力需要者が、前回の約定金額よりもインセンティブ単価を少し下げるように補正額を設定することで、応札され易くなることが期待される。
【0130】
補正額は、電力需要者が入札毎に入力するようにしてもよいし、予め設定されていてもよい。例えば、毎回の入札において前回の約定金額よりも5円安く入札する運用の場合、電力需要者は、補正額をマイナス5円に予め設定しておく。
インセンティブ単価の前回の約定金額と補正額との和が、今回の入札におけるインセンティブ単価として想定される。インセンティブ単価設定部234は、式(12)に基づいて、今回の入札におけるインセンティブ単価の想定額を電力単価に加味する。
【0131】
ステップS403において、削減情報算出部135は、ステップS402で設定された電力単価に基づいて、機器の運転スケジュールを最適化する。ステップS403における処理の内容は、図5のステップS3の場合と同様である。
ステップS404において、出力部240は、ステップS403における最適化演算の結果得られた入札条件を通知する。例えば、出力部240は、今回の入札におけるインセンティブ単価の想定額と、当該想定額に基づいて削減情報算出部135が算出した受電電力削減量とを画面表示する。
【0132】
図16は、出力部240が表示する表示画面の例を示す説明図である。同図の例において、出力部240は、インセンティブ単価の前回の約定金額を補正額で補正した、今回のインセンティブ単価の想定額と、当該想定額に基づいて削減情報算出部135が算出した受電電力削減量とを表示している。
さらに、図16の表示画面には、表示された受電電力削減量を達成するための運転スケジュールの画面表示を要求するタッチ領域A61と、表示されている条件での入札を要求するタッチ領域A62とが表示されている。
【0133】
以上のように、インセンティブ単価設定部234は、インセンティブ単価の前回の約定金額とインセンティブ単価の補正額とに基づいて、インセンティブ単価を設定する。これにより、インセンティブ単価設定部234は、インセンティブ単価を繰り返し設定する必要がなく、削減情報算出部135は、最適化演算を繰り返し行う必要がない。この点において、処理部230の負荷を低減させることができる。
【0134】
また、出力部240は、インセンティブ単価設定部234が算出する、インセンティブ単価の前回の約定金額を補正額で補正したインセンティブ単価を提示する。これにより、出力部240は、市場で買い手が付き易い入札条件を提示することができる。
また、出力部240は、削減情報算出部135が最適化演算を行って得られた受電電力削減量を提示する。これにより、出力部240は、入札式のデマンドレスポンスに対応して、電力需要者の利益確保が見込まれる入札条件を提示することができる。
【0135】
<第3の実施形態>
図17は、受電電力削減情報算出装置300の機能構成を示す概略構成図である。同図において、受電電力削減情報算出装置300は、送受信部110と、記憶部320と、処理部330と、出力部240とを有する。記憶部320は、処理データ記憶部321と、最適化データ記憶部122とを有する。処理部330は、情報取得部131と、開始指示部132と、エネルギー予測部133と、インセンティブ単価設定部334と、削減情報算出部135とを有する。
図17において、図14の各部に対応して同様の機能を有する部分には同一の符号(110、122、131〜133、135、240)を付して説明を省略する。また、本実施形態における監視制御システムの構成や制御対象機器は、第1の実施形態で説明したのと同様である。
【0136】
本実施形態では、インセンティブ単価設定部334が行うインセンティブ単価の設定方法が、第2の実施形態と異なる。これに伴い、処理データ記憶部221は、インセンティブ単価の補正額に代えて、過去のデマンドレスポンスの参照回数、および、インセンティブ単価設定方法を示すパラメータを記憶する。
本実施形態では、図15のステップS402におけるインセンティブ単価の算出方法が、第2の実施形態の場合と異なる。図15の他のステップにおける処理は、第2の実施形態の場合と同様である。
インセンティブ単価設定部334は、式(12)に基づいて電気料金単価を設定する。
【0137】
【数12】
【0138】
但し、INCn[円/キロワット時]は、過去n回目のインセンティブ単価の約定金額を示す。i[回]は、過去のデマンドレスポンスの参照回数を示す。
式(12)では、過去の約定金額の平均値から、今回のインセンティブ単価を想定している。インセンティブ単価設定部334は、式(12)に基づいて、過去の約定金額の平均値に基づくインセンティブ単価の想定値を、電気料金単価に加味する。
あるいは、インセンティブ単価設定部334が、式(13)に基づいて電気料金単価を設定するようにしてもよい。
【0139】
【数13】
【0140】
但し、max(INCn)は、INCnの最大値を示す。
式(13)では、参照対象となっている過去の約定金額の最大値より、今回のインセンティブ単価を想定している。インセンティブ単価設定部334は、式(13)に基づいて、参照対象となっている過去の約定金額の最大値に基づくインセンティブ単価の想定値を、電気料金単価に加味する。
あるいは、インセンティブ単価設定部334が、式(14)に基づいて電気料金単価を設定するようにしてもよい。
【0141】
【数14】
【0142】
但し、min(INCn)は、INCnの最小値を示す。
式(14)では、参照対象となっている過去の約定金額の最小値より、今回のインセンティブ単価を想定している。インセンティブ単価設定部334は、式(14)に基づいて、参照対象となっている過去の約定金額の最小値に基づくインセンティブ単価の想定値を、電気料金単価に加味する。
インセンティブ単価設定部334は、式(12)〜式(14)のうち、処理データ記憶部321が記憶するインセンティブ単価設定方法のパラメータの示す式を用いて、電気料金単価を設定する。当該パラメータは、受電電力削減情報算出装置300のユーザが設定する。
【0143】
以上のように、インセンティブ単価設定部334は、過去のインセンティブ単価の約定金額に基づき、インセンティブ単価を設定する。これにより、インセンティブ単価設定部334は、インセンティブ単価を繰り返し設定する必要がなく、削減情報算出部135は、最適化演算を繰り返し行う必要がない。この点において、処理部330の負荷を低減させることができる。
【0144】
また、インセンティブ単価設定部334が、過去のインセンティブ単価の約定金額に基づいてインセンティブ単価を設定する。そして、削減情報算出部135は、インセンティブ単価設定部334が設定したインセンティブ単価に基づいて受電電力削減量を算出する。さらに、出力部240は、インセンティブ単価設定部334が設定したインセンティブ単価と、削減情報算出部135が算出した受電電力削除量とを表示する。
これにより、出力部240は、過去の実績に基づく点で応札される見込みの高い入札条件を提示することができる。
【0145】
また、インセンティブ単価設定部334は、インセンティブ単価の設定方法を、ユーザの設定したパラメータに従って切り替える。そして、削減情報算出部135は、インセンティブ単価設定部334が設定したインセンティブ単価に基づいて受電電力削減量を算出する。さらに、出力部240は、インセンティブ単価設定部334が設定したインセンティブ単価と、削減情報算出部135が算出した受電電力削除量とを表示する。
これにより、出力部240は、ユーザ(例えば電力需要者)の入札戦略に沿った入札条件を提示することができる。また、出力部240は、削減情報算出部135が最適化演算を行って得られた受電電力削減量を提示する点で、入札式のデマンドレスポンスに対応して、電力需要者の利益確保が見込まれる入札条件を提示することができる。
【0146】
また、インセンティブ単価設定部334が、参照対象となっている過去の約定金額の最大値に基づいてインセンティブ単価を設定する場合、出力部240が提示するインセンティブ単価が比較的高くなる。この点において、出力部240は、インセンティブの金額が大きくなると見込まれる入札条件を提示することができる。
一方、インセンティブ単価設定部334が、参照対象となっている過去の約定金額の最小値に基づいてインセンティブ単価を設定する場合、出力部240が提示するインセンティブ単価が比較的安くなる。この点において、出力部240は、応札される可能性の高い入札条件を提示することができる。
【0147】
一方、インセンティブ単価設定部334が、参照対象となっている過去の約定金額の平均値に基づいてインセンティブ単価を設定する場合、出力部240が提示するインセンティブ単価は、最大値に基づく場合よりも安く、また、最小値に基づく場合よりも高くなる。この点において、出力部240は、最大値に基づく場合よりも応札される可能性が高く、かつ、最小値に基づく場合よりもインセンティブの金額が大きくなると見込まれる入札条件を提示することができる。
【0148】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の受電電力削減情報算出装置は、受電電力の削減に対するインセンティブの想定金額を反映させたエネルギー料金(電力料金やガス料金)に基づいて、制御対象機器のエネルギー供給量やエネルギー消費量の予測値に対応する、受電電力の削減量を求める削減情報算出部を具備する。
これにより、受電電力削減情報算出装置は、インセンティブの予想金額に適した入札条件を提示することができ、もって、デマンドレスポンスのインセンティブの金額の決定のためにエネルギー供給者とエネルギー需要者とがやり取りする際に、エネルギー需要者に損が生じにくいように支援できる。
【0149】
なお、処理部130や230や330の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、コンパクトディスク等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0150】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図しない。これらの実施形態は、その他の様々な態様で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0151】
100、200、300…受電電力削減情報算出装置
110…送受信部
120、220、320…記憶部
121、221、321…処理データ記憶部
122…最適化データ記憶部
130、230、330…処理部
131…情報取得部
132…開始指示部
133…エネルギー予測部
134、234、334…インセンティブ単価設定部
135…削減情報算出部
140、240…出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17