(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
フェイズドアレイレーダのようなレーダ装置が知られている。レーダ装置は動作中に発熱するため冷却が必要である。レーダ装置の冷却方法としては、送受信モジュールにヒートシンクを取り付け、筒体で流路を形成して、送受信モジュールを冷却する方法がある。例えば、特開2004−180166号公報にフェーズドアレイアンテナ装置が開示されている。このフェーズドアレイアンテナ装置は、ヒートシンクを有する送受信モジュール本体と上記送受信モジュール本体を収容する筒体とを含む送受信モジュールを複数個備えている。このフェーズドアレイアンテナ装置において、上記複数個の送受信モジュールは、隣接し合う送受信モジュールの上記筒体同士が気密に、且つ冷却風が上記ヒートシンクと接触して通り抜け可能なように縦続接続されて送受信モジュール接続体を形成している。
【0003】
このフェイズドアレイレーダ装置では、送受信モジュールがアンテナ前後方向(アンテナの前方と後方とを結ぶ方向)に長く広い冷却面を確保することが可能である。しかし、レーダ装置をアンテナ前後方向に小型化するために、アンテナをパネル型にした場合、冷却面はアンテナ面の反対側のみとなる。そのため、送受信モジュールを冷却する能力の向上には限界があると考えられる。
【0004】
また、送受信モジュールを冷却する方法として、携帯機器において、アンテナをヒートシンクとして利用することが提案されている。例えば、特許第4269160号公報に携帯端末機器のアンテナ構造が開示されている。この携帯端末機器のアンテナ構造は、無線通信用のアンテナがプリント基板上の発熱部品を冷やすためのヒートシンクを兼ねている。この携帯端末機器のアンテナ構造において、前記アンテナは、前記発熱部品と電気不良導体である熱伝導体を介して接触し、且つ、機器筐体のプリント基板収納部と小室を形成したアンテナ収納部に跨って配置されている。
【0005】
このアンテナ構造は、携帯電話用であるため、自然空冷で、単一のヒートシンクであり、冷却媒体の流路を特に考慮していない。また、送受信モジュールを交換することを考慮していない。フェイズドアレイレーダのようなレーダ装置では、送受信モジュールを頻繁に交換するため、このアンテナ構造をレーダ装置に適用する場合は、整備性が問題となる。
【0006】
関連する技術として、特許第4189278号公報に配管系を一体化した構造部材が開示されている。この配管系を一体化した構造部材は、矩形枠状に形成され、前記矩形枠の1辺に相当する第1部材と前記第1部材と相対する第2部材とを有する外枠ユニットと、前記外枠ユニットの前記第1部材と前記第2部材との間に装着されるもので、冷却媒体を流すための第1の管路が中空構造により形成された複数の冷却ユニットとを備えている。前記第1部材と前記第2部材のそれぞれは、冷却媒体を流すための第2の管路が中空構造に形成されると共に、前記第2の管路と連通された外部の管路を結合するための接続部と、前記複数の冷却ユニットのそれぞれに設けられた前記第1の管路と連接される複数の管口部が設けられている。前記第1部材と前記第2部材のそれぞれに設けられた前記管口部と前記冷却ユニットの前記第1の管路の端部とを凹部状に形成する。前記第1部材と前記第2部材のそれぞれと前記冷却ユニットの両端部とを、密着させた状態で前記凹部状に形成された部分を一致させるようにして連結する。前記管口部と前記第1の管路とを連通させると共に前記冷却媒体の漏洩を防ぐための連接部材を、前記第1部材と前記第2部材のそれぞれと前記冷却ユニットとを密着させることで形成された前記凹部状に形成された部分に装着して、前記連接部材の外周に還装された複数のOリングを前記管口部と前記第1の管路の内周面に圧接させる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係るレーダ装置について、パネル構造のフェイズドアレイレーダ装置を例にして説明する。以下では、レーダ装置のアンテナとして、パッチアンテナを例に説明する。ただし、本発明はその例に限定されるものではなく、他のアンテナ(例示:ダイポールアンテナ、逆Fアンテナ)にも適用可能である。
【0014】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係るレーダ装置の構成について説明する。
図1は、本実施の形態に係るレーダ装置の構成の一部を模式的に示す側面図である。このレーダ装置1は、パネル構造のフェイズドアレイレーダ装置である。ここでは、電源配線については記載を省略している。レーダ装置1は、冷却部3と、複数の送受信モジュール11と、筐体12と、複数のアンテナ15と、複数の誘電体14と、レドーム16と、冷却媒体供給部20とを具備している。
【0015】
冷却部3は、例えば板状の形状を有し、その+z側の面において複数の送受信モジュール11に接している。冷却部3は、複数の送受信モジュール11の熱を放散し、複数の送受信モジュール11を−z側から冷却する。冷却部3は、内部を貫通する複数の配管を有し、それら複数の配管に冷却媒体が流通する構造に例示される(図示されず)。
【0016】
送受信モジュール11は、例えば厚板状又は直方体状の形成を有し、冷却部3上において行列状に配置されている。送受信モジュール11は、電源部(図示されず)から電力を供給され、電源回路(図示されず)から制御信号を供給され、送信信号をアンテナ15へ出力し、アンテナ15から受信信号を受信する。複数の送受信モジュール11は、複数のアンテナ15に対応して設けられ、それら複数のアンテナ15に接続されている。言い換えると、一つの送受信モジュール11には、その送受信モジュール11専用の一つのアンテナ15が設けられ、その送受信モジュール11とそのアンテナ15とが接続されている。
【0017】
筐体(フレーム)12は、例えば板状の形状を有し、筐体12の−z側(内側)の面において複数の送受信モジュール11に接している。筐体12は、複数の送受信モジュール11を保持し、それらの位置を決定している。本実施の形態では、筐体12は、送受信モジュール11ごとに分割可能に形成されている。分割箇所には気密維持のためにパッキン17が挿入されている。それにより、後述されるように、送受信ユニット2ごとにレーダ装置1から着脱可能となる。
【0018】
アンテナ15は、例えば板形状を有し、筐体12の+z側(外側)に、筐体12から離れて、行列状に配置されている。アンテナ15は、冷却の観点からは表面積が大きいものが好ましい。アンテナ15は、筐体12から延びる支持部材13により、筐体12から離れて保持されている。なお、アンテナ15は、筐体12に接触して保持されていてもよい。アンテナ15に接続された導線18は、その支持部材13内を通り、筐体12を貫通して、そのアンテナ15に対応する送受信モジュール11に接続されている。なお、支持部材13を導電性の材質にすることで、導線18を兼ねてもよい。アンテナ15は、導線18からの送信信号を送信電波として発射し、及び受信電波を受信信号として導線18へ出力する。このアンテナ15は、導線18を介して受け取った送受信モジュール11の熱を、ヒートシンクのように放熱することができる。支持部材13は、アンテナ15と同様にヒートシンクのように機能すべく、熱伝導性の高い材料であることが好ましい。
【0019】
誘電体14は、例えば板形状を有し、筐体12の+z側(外側)の筐体12上に、行列状に配置されている。誘電体14は、アンテナ15の特性を調整している。複数の誘電体14は、複数のアンテナ15に対応して設けられている。言い換えると、一つのアンテナ15には、そのアンテナ15専用の一つの誘電体14が設けられている。誘電体14は、例えば熱伝導性の高い材料で形成されていることが好ましい。誘電体14からも送受信モジュール11の熱を放出することできるからである。なお、誘電体14は、アンテナ15に接触していてもよい。
【0020】
レドーム16は、例えば板状の形状を有し、レドーム16の−z側(内側)の面において複数のアンテナ15に接している。言い換えると、レドーム16は、複数のアンテナ15の+z側(外側)に接して、複数のアンテナ15を覆うように設けられている。レドーム16は、複数のアンテナ15に関する送信電波及び受信電波を透過可能にしながら、複数のアンテナ15を外部から保護している。なお、レドーム16は、アンテナ15から離れていてもよい。
【0021】
本実施の形態では、レドーム16は、送受信モジュール11ごとに分割可能に形成されている。分割箇所には気密維持のためにパッキン17が挿入されている。それにより、後述されるように、送受信ユニット2ごとにレーダ装置1から着脱可能となる。なお、レドーム16の保持は複数のアンテナ15が行ってもよい。また、レドーム16は、複数のアンテナ15の外側の近傍に、複数のアンテナ15から離れて設けられていてもよい。
【0022】
冷却媒体供給部20は、レドーム16と筐体12との間(または複数のアンテナ15と筐体12との間)に形成される流路4に冷却媒体Rを供給する。例えば、レドーム16とアンテナ15と誘電体14と筐体12とが互いに接触している場合、レドーム16と筐体12との間であって、誘電体14及びアンテナ15と隣の誘電体14及びアンテナ15との間を通るように、格子状に冷媒流路Rが形成される。さらに、レドーム16とアンテナ15とが離れている場合には、レドーム16とアンテナ15との間にも冷媒流路Rが形成される。また、アンテナ15と誘電体14とが離れている場合には、アンテナ15と誘電体14との間にも冷媒流路Rが形成される。
【0023】
その冷却媒体Rの流れにより、アンテナ15が−z側(内側)から冷却される。それにより、送受信モジュール11で発生する熱をアンテナ15から放散することができる。すなわち、アンテナ15をヒートシンクとして機能させることができる。また、その冷却媒体Rの流れにより、筐体12や誘電体14が+z側(外側)から冷却される。それにより、送受信モジュール11で発生する熱を筐体12や誘電体14から更に放散することができる。
【0024】
冷却媒体供給部20は、配管23と、熱交換器21と、循環装置22とを備える構成に例示される。配管23は、レーダ装置1での冷却媒体Rの出口Oと入口Iとを接続する。熱交換器21は、その配管23の途中に設けられ、加熱された冷却媒体Rを冷却する。循環装置22は、その配管23の途中に設けられ、冷却媒体Rを循環させる。冷却媒体Rは、空気又は非導電性液体(例示:エチレングリコール)が例示される。冷却媒体Rが空気の場合、冷却媒体供給部20は、入口Iに設けられた外気送入ファン(図示されず)や、出口Oに設けられた外気送出ファン(図示されず)であってもよい。
【0025】
このように、本実施の形態のレーダ装置1では、送受信モジュール11が前面側(+z側)の冷却層と、後面側(−z側)の冷却層とで挟みこまれるようにして冷却される。ただし、前面側(+z側)の冷却層は、レドーム16と筐体12とで形成される流路4(冷却媒体R;アンテナ15による放熱を含む)である。後面側(−z側)の冷却層は、冷却部3である。このように、送受信モジュール11を前面側及び後面側から冷却することで、効率的に送受信モジュールを冷却することができる。
【0026】
図2は、本実施の形態に係るレーダ装置の構成の一部を模式的に示す斜視図である。ここでは、電源配線や、支持部材13については記載を省略している。上述のように、複数の送受信モジュール11、複数のアンテナ15及び複数の誘電体14は、それぞれ行列状に配置されている。言い換えると、送受信モジュール11、アンテナ15及び誘電体14の組は、行列状に配置されている。
【0027】
レドーム16は、行列の行ごとに設けられ、複数のアンテナ15及び複数の誘電体14のうちのその行に配置されたアンテナ15及び誘電体14を覆っている。そして、冷却媒体供給部20は、その行ごとに、レドーム16と筐体12との間に冷却媒体Rを供給する。それにより、冷却媒体Rは、その行に沿って、レドーム16と筐体12とで形成される流路を流れる。または、レドーム16は、行列の列ごとに設けられ、複数のアンテナ15及び複数の誘電体14のうちのその列に配置されたアンテナ15及び誘電体14を覆っている。そして、冷却媒体供給部20は、その列ごとに、レドーム16と筐体12との間に冷却媒体Rを供給する。それにより、冷却媒体Rは、その列に沿って、レドーム16と筐体12とで形成される流路を流れる。
【0028】
この図の例では、x方向を行の方向とし、y方向を列の方向とし、レドーム16は行ごとに設けられている。そして、レドーム16は、複数のアンテナ15及び複数の誘電体14のうちの行に沿って配置されたアンテナ15及び誘電体14を覆っている。そして、冷却媒体供給部20は、行ごとに、レドーム16と筐体12との間に冷却媒体Rを供給する。それにより、冷却媒体Rは、その行に沿って、x方向に、レドーム16と筐体12とで形成される流路を流れる。
【0029】
図3は、本実施の形態に係るレーダ装置の構成の一部を模式的に示す側面図である。ここでは、電源配線については記載を省略している。このレーダ装置1では、筐体12及びレドーム16が、送受信モジュール11ごとに分割可能に形成されている。そのため、送受信モジュール11と、その送受信モジュール11上及びその周辺領域の筐体12pと、その送受信モジュール11に対応したアンテナ15及び誘電体14と、そのアンテナ15上及びその周辺領域のレドーム16pとが一体となり、送受信ユニット2を構成している。言い換えると、アンテナ15と、送受信モジュール11と、誘電体14と、筐体12pと、レドーム16pとが、一つの送受信ユニット2として着脱可能に設けられている。この場合、そのアンテナ15は、複数のアンテナ15の任意の一つであるアンテナ(第1アンテナ)15である。その送受信モジュール11は、複数の送受信モジュール11のうちの第1アンテナ15に対応する送受信モジュール(第1送受信モジュール)11である。その誘電体14は、複数の誘電体14のうちの第1アンテナ15に対応する誘電体(第1誘電体)14である。その筐体12pは、筐体12のうちの第1送受信モジュール11に対応する位置の筐体(第1筐体部分)12pである。そのレドーム16pは、レドーム16のうちの第1アンテナ15に対応する位置のレドーム(第1レドーム部分)16pである。そして、このレーダ装置1は、複数の送受信ユニット2が行列状に配置されている。
【0030】
この送受信ユニット2は、個別に取り外しが可能となっている。したがって、アンテナ15の前面側(+z側)から送受信ユニット2を取り外すことにより、レドーム16、アンテナ15、(誘電体14)及び送受信モジュール11を一体的に交換することが可能となる。それにより、レーダ装置1のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0031】
冷却媒体Rが流れる方向については、隣接する送受信ユニット2同士はパッキン17で接続され、冷却媒体Rが漏えいしない構成となっている。この図の例では、行の方向(x方向)の冷却媒体Rの流れる方向について、隣接する送受信ユニット2−1と送受信ユニット2−2とがパッキン17で接続され、冷却媒体Rが漏えいしないようになっている。すなわち、送受信ユニット2間の気密をパッキン17で確保している。
【0032】
次に、本実施の形態に係るレーダ装置の動作について説明する。
レーダ装置1の使用するとき、冷却媒体供給部20をオンにする。それにより、筐体12とレドーム16との間の流路に沿って冷却媒体Rが流通する。また、それと同時に、冷却部3もオンにする。それにより、冷却部3の流路に冷却媒体が流通する。
一方、レーダ装置1の使用において、送受信モジュール11では、その動作により熱が発生し、温度が上昇する。その熱はアンテナ15にも伝達される。
冷却媒体Rは、筐体12とレドーム16との間の流路に沿って流れることで、アンテナ15(や誘電体14や筐体12)の熱を奪う。それにより、アンテナ15を冷却して、送受信モジュール11を+z側から冷却する。また、それと同時に、冷却媒体は、冷却部3の流路を流れることで、送受信モジュール11の熱を奪う。それにより、送受信モジュール11を−z側から冷却する。
以上のようにして、本実施の形態に係るレーダ装置は動作する。
【0033】
次に、本実施の形態に係るレーダ装置の送受信ユニット2の取り替え動作について説明する。
レーダ装置1において、ある送受信ユニット2(又は、送受信モジュール11やアンテナ15)が不調の場合、まず、レーダ装置1をオフする。続いて、アンテナ15の前面側(+z側)から不調の送受信ユニット2の前後のパッキン17の部分に所定の治具を挿入し、その送受信ユニット2を+z方向へ抜き出す。その後、予め準備しておいた他の送受信ユニット2を、アンテナ15の前面側(+z側)から挿入し、パッキン17を調整する。
以上のようにして、本実施の形態に係る送受信ユニット2の取り替えが行われる。
【0034】
このように、本実施の形態では、レーダ装置1(例示:パネル構造のフェイズドアレイレーダ装置)において、アンテナ15を誘電体14や筐体12から離して設けている。それにより、アンテナ15をヒートシンクとして用いることができ、送受信モジュール11の熱をアンテナ15から放熱することが可能となる。
【0035】
また、本実施の形態では、筐体12とレドーム16とで流路を形成し、その流路に冷却媒体Rを循環させることで、アンテナ15を強制的に冷却することができる。それにより、送受信モジュール11の前面(+z側;アンテナ15側)及び送受信モジュール11の後面(−z側;冷却部3側)の両面を冷却に使用することが可能となる。それにより、送受信モジュール11の冷却面積を確保でき、レーダ装置1の冷却の能力を向上させることができる。
【0036】
更に、本実施の形態では、アンテナ15及びレドーム16を冷却することが可能となる。それにより、送信電力の増加によるレドーム16の発熱に対処することができる(温度上昇を抑えることができる)。また、それにより、アンテナ15の雑音を低下することできるので、アンテナ15の最小受信感度の向上が可能となる。すなわち、レーダ装置1において、アンテナの受信能力を向上させることが可能となる。
【0037】
更に、本実施の形態では、送受信モジュール11とアンテナ15とレドーム16とを一体化した送受信ユニット2を用いている。このような、一体構造を有する送受信ユニット2により、アンテナ15前面側(+z側)からレドーム16、アンテナ15、送受信モジュール11を一体的に取り出して、一体的に交換することが可能となる。すなわち、レーダ装置1において、整備性を向上させることが可能となる。
【0038】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係るレーダ装置の構成について説明する。
本実施の形態は、送受信モジュールとアンテナとレドームとを一体化せず、送受信モジュールとアンテナ及びレドームとを別体としている点で、第1の実施の形態と相違している。以下では、相違点に関して主に説明する。
【0039】
図4は、本実施の形態に係るレーダ装置の構成の一部を模式的に示す側面図である。このレーダ装置1aは、パネル構造のフェイズドアレイレーダ装置である。ここでは、電源配線については記載を省略している。レーダ装置1aは、冷却部3と、複数の送受信モジュール11と、筐体12aと、複数のアンテナ15と、複数の誘電体14と、レドーム16aと、冷却媒体供給部20とを具備している。
【0040】
本実施の形態では、筐体12aは、送受信モジュール11ごとに分割されてはいない。同様に、レドーム16aは、送受信モジュール11ごとに分割されてはいない。そのため、送受信モジュール11と誘電体14とアンテナ15とレドーム16aとで構成される送受信ユニット2aは、第1の実施の形態とは異なり、送受信ユニット単位で交換することはできない。
【0041】
冷却媒体Rの流路4は、第1の実施の形態と同様に、レドーム16aと筐体12aとで形成される。ただし、その流路は、送受信モジュール11とは筐体12aにより隔てられ、別構造である。言い換えると、流路4は、レドーム16aと筐体12aとで形成された閉じた空間であり、冷却媒体Rは、その閉じた空間内を入口Iから出口Oへ流れる。その結果、送受信モジュール11の交換時などに、送受信モジュール11側へ冷却媒体Rが漏れ出てくる問題はない。この場合、送受信モジュール11の交換は、例えば筐体12aから外側(+z側)の構成を取り外して行う。
【0042】
この場合、レドーム16aは、送受信モジュール11やアンテナ15の行列の行ごと(又は列ごと)に設けられる必要はない。例えば、数行ごと又は行列全面を覆うように設けられても良い。それにより、レドーム16aの構造が簡素化され製造が容易となる。
【0043】
本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また、送受信モジュール11と流路4の前面冷却層とは熱伝導接触であり、送受信モジュール11の交換時などに送受信モジュール11側へ冷却媒体Rが漏れることがない。
【0044】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係るレーダ装置の構成について説明する。
本実施の形態は、誘電体を積極的にヒートシンクとして用いている点で、第2の実施の形態と相違している。以下では、相違点に関して主に説明する。
【0045】
図5は、本実施の形態に係るレーダ装置の構成の一部を模式的に示す側面図である。このレーダ装置1bは、パネル構造のフェイズドアレイレーダ装置である。ここでは、電源配線については記載を省略している。レーダ装置1bは、冷却部3と、複数の送受信モジュール11と、筐体12bと、複数のアンテナ15と、複数の誘電体14bと、レドーム16bと、冷却媒体供給部20とを具備している。
【0046】
本実施の形態では、筐体12b上の誘電体14bがヒートシンク形状、例えば伝熱面積を広げるために設けられる突起状のフィンを多数備える形状を有している。誘電体14bは、その機能の面から、低誘電率・高熱伝導率の材料を用いることが好ましい。これにより、アンテナ15及び誘電体14をアンテナ兼ヒートシンクとして用いることができる。このとき、アンテナ15の形状は電波を放射するために最適化する必要があるが、誘電体14bとして熱伝導性の高い材料を用いることで、アンテナ15の性能を劣化させることなく、ヒートシンクとしての性能を向上することができる。そして、より効率的に、送受信モジュール11の熱を、送受信モジュール11の前面側から放熱することができる。
【0047】
また、誘電体14bはヒートシンク形状を有しているので、強制冷却ではなく自然の通風による空冷が可能である。その場合、レドーム16bをアンテナ15からある程度離して設置するか、レドーム16bを設けないことが好ましい。自然の通風を促進するためである。それにより、冷却媒体供給部20は不要とすることができる。そして、誘電体14bのヒートシンク効果と、筐体12bや誘電体14bから離れて設けられたアンテナ15のヒートシンク効果とから、送受信モジュール11を+z側から冷却することができる。
【0048】
なお、このような突起状のフィンを多数備える形状は、第1の実施の形態の誘電体14にも適用可能である。
【0049】
また、誘電体14bが第1の実施の形態の誘電体14と同じ形状であっても、レドーム16bが無い場合や、レドーム16bがアンテナ15から十分に離れている場合には、自然の通風による空冷だけで、ある程度、送受信モジュール11の熱を放散させることができる。誘電体14bのヒートシンク効果は小さくなるが、筐体12bや誘電体14bから離れて設けられたアンテナ15のヒートシンク効果が有効に作用するためである。
【0050】
本実施の形態においても、第2の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
加えて、アンテナ15の性能を劣化させることなく、送受信モジュール11の熱をより効率的に放熱することができる。更に、誘電体14の設計によっては、冷却媒体供給部が不要となり、構成を簡素化することができる。
【0051】
各実施の形態は、アンテナ15として、平板形状のパッチアンテナを例に説明さている。しかし、本発明はその例に限定されるものではなく、他のアンテナにも適用可能である。例えば、アンテナ15として、ダイポールアンテナや逆Fアンテナのような棒形状アンテナを用いることができる。
【0052】
以上説明されたように、上記各実施の形態のレーダ装置において、冷却能力を向上さることが可能となる。また、冷却能力を向上させ、整備性を向上させることが可能となる。また、冷却能力を向上させ、アンテナの受信能力を向上させることが可能となる。
【0053】
本発明は上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変形又は変更され得ることは明らかである。