特許第6342145号(P6342145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6342145
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】貯湯式給湯システム
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/18 20060101AFI20180604BHJP
   F24D 17/00 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   F24H1/18 B
   F24D17/00 H
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-252265(P2013-252265)
(22)【出願日】2013年12月5日
(65)【公開番号】特開2015-108486(P2015-108486A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2016年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】寺岡 正広
(72)【発明者】
【氏名】岡田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】岡田 敦
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−046836(JP,A)
【文献】 特開2012−037198(JP,A)
【文献】 特開2005−127640(JP,A)
【文献】 特開2011−169584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/18
F24H 4/02
F24D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源機で生成された高温水を貯湯タンクに貯え、その高温水を順次負荷側に給湯可能とした貯湯式給湯システムにおいて、
前記熱源機からの高温水の出湯配管と、前記熱源機への低温水の給水配管との間に、複数の前記貯湯タンクを接続配管によって直列に接続して配設し、
その複数の貯湯タンク中の前記熱源機からの出湯配管に最も近い最上流の貯湯タンクを高温水の給湯用貯湯タンク、最下流の貯湯タンクを前記熱源機への給水用貯湯タンクとするとともに、
前記最上流の給湯用貯湯タンクに高温水の給湯系が接続され、その下流側の1以上の前記貯湯タンクの上部に接続される前記接続配管に、ミキシングバルブを介して異なる温度の温水が給湯可能な1以上の給湯系が接続されていることを特徴する貯湯式給湯システム。
【請求項2】
前記ミキシングバルブには、前記給水用貯湯タンクの底部に接続されている給水管から分岐された給水配管が接続されていることを特徴とする請求項1に記載の貯湯式給湯システム。
【請求項3】
最上流の前記給湯用貯湯タンクから高温水が給湯可能とされるとともに、その下流側の1以上の前記貯湯タンクから異なる温度の温水が給湯可能とされ、少なくとも異なる2温度以上の温水が同時または個別に給湯可能な構成とされていることを特徴とする請求項1または2に記載の貯湯式給湯システム。
【請求項4】
複数の前記貯湯タンクは、それぞれ同一構造の貯湯専用タンクとされていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の貯湯式給湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源機で生成された高温水を貯湯タンクに貯え、その高温水を負荷側に給湯する貯湯式給湯システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
貯湯式給湯システムにおいて、熱源機としてヒートポンプを用い、その水/冷媒熱交換器からの高温水の出湯配管と該水/冷媒熱交換器への低温水の給水配管との間に、複数の貯湯タンクを直列に接続(タンクを増設して複数個直列に接続する場合を含む)し、高温水の出湯配管に近い最上流の貯湯タンクから順次貯湯して行く構成とするとともに、最下流の貯湯タンクを給水用の貯湯タンクとし、その給水用貯湯タンクに、給水源からの給水管と上記水/冷媒熱交換器への低温水の給水配管とを接続した構成の貯湯式給湯システムが従来から知られている(特許文献1,2参照)。
【0003】
一方、上記の如く、複数の貯湯タンクを直列に接続したシステムであっても、負荷側への給湯は、最上流の貯湯タンクの上部から出湯し、ミキシングバルブを介して所定温度の温水として給湯するものが多く、異なる2温度の温水を給湯可能にする場合、特許文献1に示されるように、最上流の貯湯タンクの上部から取り出した高温水を分岐し、一方は高温水のまま、他方はミキシングバルブで低温水と混合して温度を下げ、中温水または低温水として給湯する方式とするか、もしくは異なる2温度の温水を取り出し可能とした専用構造の貯湯タンクを使用するかのいずれかの方式を採っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−127640号公報
【特許文献2】特開2011−169584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、異なる2温度の温水を取り出す専用構造のタンクを用いた場合、シンプルな貯湯専用のタンクを用いたものに比べ、コスト高となるとともに、タンクを増設することが難しくなる等の課題があった。一方、特許文献1のように、最上流の貯湯タンクの上部から取り出した高温水を分岐し、個別に温度調整して2温度以上の温水を取り出す方式とした場合、シンプルな貯湯専用のタンクを用いて簡易に2温度以上の温水を取り出すことができるものの、この場合、常に最上流の貯湯タンクから高温水が出湯されることになるため、用途が確定されている所要量の高温水を確実に確保しながら、順次他の用途に給湯することが困難となる等の課題があった。
【0006】
つまり、上記のシステムでは、最上流の貯湯タンクの上部から負荷側に高温水を出湯すると、出湯された高温水量と同等量の低温水が給水源から最下流の貯湯タンクの底部に給水され、その低温水と高温水との温度境界層が順次上流側の貯湯タンクへと移動してこととなり、その間に高温水と低温水とが混合して高温水の温度が徐々に低下していくことは避けられない。このため、例えば給食センターや食品加工工場等で使う貯湯式給湯システムのように、所要量の高温水を加熱殺菌用として確保しておかなければならないような用途に適用したとき、加熱殺菌用の高温水の取り出しができなくなる虞等の虞があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、シンプルな貯湯専用のタンクを複数個用いて、用途の違いに応じた異なる2温度以上の温水を同時または個別に取り出しできるとともに、用途が特定された所要量の高温水を確実に確保しつつ給湯することができる構成が簡素で安価な貯湯式給湯システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明の貯湯式給湯システムは、以下の手段を採用している。
すなわち、本発明にかかる貯湯式給湯システムは、熱源機で生成された高温水を貯湯タンクに貯え、その高温水を順次負荷側に給湯可能とした貯湯式給湯システムにおいて、前記熱源機からの高温水の出湯配管と、前記熱源機への低温水の給水配管との間に、複数の前記貯湯タンクを接続配管によって直列に接続して配設し、その複数の貯湯タンク中の前記熱源機からの出湯配管に最も近い最上流の貯湯タンクを高温水の給湯用貯湯タンク、最下流の貯湯タンクを前記熱源機への給水用貯湯タンクとするとともに、前記最上流の給湯用貯湯タンクに高温水の給湯系が接続され、その下流側の1以上の前記貯湯タンクの上部に接続される前記接続配管に、ミキシングバルブを介して異なる温度の温水が給湯可能な1以上の給湯系が接続されていることを特徴する。
【0009】
本発明によれば、貯湯タンクを備えた貯湯式給湯システムにあって、熱源機からの高温水の出湯配管と、熱源機への低温水の給水配管との間に、複数の貯湯タンクを直列に接続して配設し、その複数の貯湯タンク中の熱源機からの出湯配管に最も近い最上流の貯湯タンクを高温水の給湯用貯湯タンク、最下流の貯湯タンクを熱源機への給水用貯湯タンクとするとともに、最上流の給湯用貯湯タンクに高温水の給湯系が接続され、その下流側の1以上の貯湯タンクの上部に、ミキシングバルブを介して異なる温度の温水が給湯可能な1以上の給湯系が接続されているため、直列に接続された複数の貯湯タンク中の最上流の給湯用貯湯タンクから高温水を給湯し、その下流側の1以上の貯湯タンクからミキシングバルブを介して異なる温度の温水を給湯することにより、専用の2温度取り出し用貯湯タンクを用いることなく、1基の貯湯式給湯システムから少なくとも異なる2温度以上の温水を同時または個別に取り出し、負荷側に給湯することができる。しかも、下流側の1以上の貯湯タンクからミキシングバルブを介して中温水や低温水を取り出すことにより、最上流の給湯用貯湯タンクに所要量の高温水を貯湯したまま、下流側の貯湯タンクに貯湯されている高温水を順次給湯して消費することができる。従って、特別な構成のタンクを用いることなく、貯湯専用のシンプルな構成のタンクを複数個用いて、用途の違いに応じた異なる2温度以上の温水を同時または個別に取り出し、給湯できる安価な貯湯式給湯システムを提供することができるとともに、用途が特定された所要量の高温水を確実に確保できる貯湯式給湯システムを提供することができる。
【0010】
さらに、本発明の貯湯式給湯システムは、上記の貯湯式給湯システムにおいて、前記ミキシングバルブには、前記給水用貯湯タンクの底部に接続されている給水管から分岐された給水配管が接続されていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、ミキシングバルブに、給水用貯湯タンクの底部に接続されている給水管から分岐された給水配管が接続されているため、下流側の貯湯タンクから負荷側に給湯する際、給水管から分岐された給水配管を経てミキシングバルブに低温水を供給し、設定温度の中温水又は低温水に調整して給湯することができる。従って、最上流の給湯用貯湯タンクに所要量の高温水を確保しつつ、最上流の給湯用貯湯タンクからの給湯とは独立して異なる温度の温水を同時または個別に取り出し、負荷側に給湯することができる。
【0012】
さらに、本発明の貯湯式給湯システムは、上述のいずれかの貯湯式給湯システムにおいて、最上流の前記給湯用貯湯タンクから高温水が給湯可能とされるとともに、その下流側の1以上の前記貯湯タンクから異なる温度の温水が給湯可能とされ、少なくとも異なる2温度以上の温水が同時または個別に給湯可能な構成とされていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、最上流の給湯用貯湯タンクから高温水が給湯可能とされるとともに、その下流側の1以上の貯湯タンクから異なる温度の温水が給湯可能とされ、少なくとも異なる2温度以上の温水が同時または個別に給湯可能な構成とされているため、貯湯専用のシンプルな構成の貯湯タンクを複数個直列に接続するだけで、最上流の給湯用貯湯タンクからの高温水の給湯と、下流側の1以上の貯湯タンクからの温度の異なる温水の給湯とにより、少なくとも異なる2温度以上の温水を同時または個別に給湯することができる。従って、専用構造となる高価な2温度取り出し用貯湯タンクを用いることなく、用途の違いに応じた異なる2温度以上の温水を同時または個別に取り出しできる貯湯式給湯システムを低コストで提供することができる。
【0014】
さらに、本発明の貯湯式給湯システムは、上述のいずれかの貯湯式給湯システムにおいて、複数の前記貯湯タンクは、それぞれ同一構造の貯湯専用タンクとされていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、複数の貯湯タンクが、それぞれ同一構造の貯湯専用タンクとされているため、直列に接続される複数の貯湯タンクを、それぞれ既存のシンプルな構成の貯湯専用の同一構造のタンクによって構成することができる。従って、安価な同一構造の貯湯専用タンクを複数個用い、用途の違いに応じた異なる2温度以上の温水を同時または個別に取り出しできる貯湯式給湯システムを低コストで提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、直列に接続された複数の貯湯タンク中の最上流の給湯用貯湯タンクから高温水を給湯し、その下流側の1以上の貯湯タンクからミキシングバルブを介して異なる温度の温水を給湯することによって、専用の2温度取り出し用貯湯タンクを用いることなく、1基の貯湯式給湯システムから少なくとも異なる2温度以上の温水を同時または個別に取り出し、負荷側に給湯することができ、しかも、下流側の1以上の貯湯タンクからミキシングバルブを介して中温水や低温水を取り出すことにより、最上流の給湯用貯湯タンクに所要量の高温水を貯湯したまま、下流側の貯湯タンクに貯湯されている高温水を順次給湯して消費することができるため、特別な構成のタンクを用いることなく、貯湯専用のシンプルな構成のタンクを複数個用いて、用途の違いに応じた異なる2温度以上の温水を同時または個別に取り出し、給湯できる安価な貯湯式給湯システムを提供することができるとともに、用途が特定された所要量の高温水を確実に確保できる貯湯式給湯システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る貯湯式給湯システムの構成図である。
図2】上記貯湯式給湯システムの貯湯運転時の動作説明図である。
図3】上記貯湯式給湯システムの高温水給湯時の動作説明図である。
図4】上記貯湯式給湯システムの中温水又は低温水給湯時の動作説明図である。
図5】上記貯湯式給湯システムの高温水と中温水又は低温水の2温度温水の給湯時の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の一実施形態について、図1ないし図5を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る貯湯式給湯システムの構成図が示されている。
貯湯式給湯システム1は、低温水を加熱して高温水を生成するヒートポンプ、電気温水器、ボイラ等からなる熱源機2を備えている。この熱源機2は、貯湯ユニット3側から給水ポンプを介して供給された低温水を熱交換器、ヒータ2A等を介して加熱し、高温水として貯湯ユニット3側に循環させる構成とされたものであり、公知の熱源機2を使用することができる。
【0019】
貯湯ユニット3は、熱源機2からの高温水の出湯配管4と、熱源機2への低温水の給水配管5との間に、接続配管6A,6Bを介して直列に接続して配設された複数個の貯湯タンク7A,7B,7Cを備えている。ここでは、3個の貯湯タンク7A,7B,7Cを直列に接続したものが例示されているが、この貯湯タンクは、少なくとも2個以上のタンクが直列に接続されているものであればよい。
【0020】
なお、以下の説明において、上記複数の貯湯タンク7A,7B,7Cの中、熱源機2からの高温水の出湯配管4に最も近い位置に接続される貯湯タンク7Aを最上流の給湯用貯湯タンク7A、その下流側に接続される少なくとも1以上の貯湯タンク7Bを下流側の貯湯タンク7B、給水配管5が接続される貯湯タンク7Cを最下流の給水用貯湯タンク7Cと称することとする。
【0021】
最下流の給水用貯湯タンク7Cには、その底部に給水管8が接続され、給水源である水道等からの市水(水道水)が給水管8を経て給水可能とされている。給水管8を経て給水用貯湯タンク7Cに給水された低温水は、給水用貯湯タンク7Cの底部から給水配管5および図示省略の給水ポンプを介して熱源機2に供給可能とされている。なお、給水源は必ずしも水道等からの市水に限定されるものではなく、井戸水、その他であってもよい。
【0022】
一方、最上流の給湯用貯湯タンク7Aの上部には、負荷側に高温水を給湯(給湯A)するための給湯配管(給湯系)9Aが接続され、給湯用貯湯タンク7Aに貯湯されていた高温水が所要の高温水負荷用途に供給可能な構成とされている。なお、この給湯配管9Aに対して、必要に応じてミキシングバルブ10Aを設置し、高温水を所定の温度に調整して給湯できるようにしてもよいことはもちろんである。この場合、ミキシングバルブ10Aに対して給水管8から分岐された給水配管11Aを接続し、高温水に低温水を混合して所定温度の高温水に調整して給湯できるようにすればよい。
【0023】
さらに、本実施形態では、下流側の貯湯タンク7Bおよび最下流の給水用貯湯タンク7Cに対しても、その上部である接続配管6A,6Bに、負荷側に中温水もしくは低温水を給湯(給湯B,給湯C)するための給湯配管(給湯系)9B,9Cが接続された構成とされている。そして、この給湯配管9B,9Cにも、各々ミキシングバルブ10B,10Cが設けられ、給水管8から分岐された給水配管11B,11Cが接続された構成とされることにより、貯湯タンク7B,7Cに貯湯されている高温水を、中温水又は低温水に温度調整して所要の負荷用途に給湯可能とされている。
【0024】
上記の貯湯式給湯システム1において、貯湯運転は、以下により行われる。
まず、給水管8からの給水により、貯湯タンク7A,7B,7Cに低温水が満たされた状態とされる。この状態から、図2に実線矢印で示すように、給水用貯湯タンク7Cの底部より給水配管5、図示省略の給水ポンプを介して熱源機2に低温水を順次供給し、熱交換器、ヒータ2A等で加熱して高温水を生成することにより貯湯運転が開始される。この高温水は、熱源機2からの出湯配管4を介して最上流の給湯用貯湯タンク7Aの上部に供給され、図2に示すように、最上流の給湯用貯湯タンク7Aから、順次下流側の貯湯タンク7B,7Cへと温度境界層を形成しながら貯湯されていく。
【0025】
複数の貯湯タンク7A,7B,7Cに、設定温度の所定量の高温水が貯湯されたことが検知されると、沸く上げ完了とされ、貯湯運転は終了される。この貯湯運転は、安価な夜間電力を利用して深夜に行われるのが通常である。図1には、沸く上げが完了した状態が示されており、複数の貯湯タンク7A,7B,7Cに、それぞれ設定温度の高温水が所定量貯湯された状態となる。
【0026】
一方、貯湯タンク7A,7B,7Cに貯湯された高温水を消費する給湯運転は、消費期間中において、以下のように行われる。図3には、最上流の給湯用貯湯タンク7Aから給湯配管9Aを介して高温水が給湯される場合の動作図が示されている。
この場合、最上流の給湯用貯湯タンク7Aの上部から順次高温水が給湯配管9Aを介して出湯され、その給湯配管9A中に設けられているミキシングバルブ10Aで必要に応じて給水配管11Aからの低温水と混合されて必要温度に調整された後、負荷側に対して給湯(給湯A)されることになる。
【0027】
最上流の給湯用貯湯タンク7Aから順次高温水が出湯されると、その出湯量に見合った量の低温水が給水管8を介して最下流の給水用貯湯タンク7Cに給水され、給水用貯湯タンク7C内の高温水を上流側の貯湯タンク7B,7Aへと押出す。これによって、貯湯タンク7B,7C内の高温水が、図3に実線矢印で示すように、順次最上流の給湯用貯湯タンク7Aへと移動される。このため、最上流の給湯用貯湯タンク7Aは、常に、所要量の高温水が確保された状態に維持されることになる。
【0028】
また、図4には、最下流の給水用貯湯タンク7Cから給湯配管9Cを介して中温水又は低温水が給湯される場合の動作図が示されている。
この場合、最下流の給水用貯湯タンク7Cの上部から順次高温水が出湯され、給湯配管9C中において、ミキシングバルブ10Cで給水配管11Cからの低温水と混合されて中温水又は低温水に温度調整された後、負荷側に給湯(給湯C)されることになる。この際も貯湯タンク7Cからの出湯量に見合った量の低温水が給水管8を介して貯湯タンク7Cに給水されるが、貯湯タンク7Cに貯湯されていた高温水が全て消費されると、給水管8から給水された低温水がそのまま給湯配管9Cを経て出水されることになる。
【0029】
従って、最下流の給水用貯湯タンク7Cから給湯配管9Cを介して中温水又は低温水として給湯できる高温水量は、最下流の給湯用貯湯タンク7Cに貯湯されていた高温水に限られることとなり、上流側の貯湯タンク7B又は7Aに貯湯されている高温水を給湯配管9Cから給湯することはできない。
【0030】
なお、貯湯タンク7Bから個別で給湯(給湯B)できることも、貯湯タンク7A,7Cからの個別給湯(給湯A又は給湯C)に準じて明らかであり、詳述するまでもない。ただし、貯湯タンク7Bから個別に給湯する場合、貯湯タンク7Bに貯湯されていた高温水を全て使っても、その下流側の貯湯タンク7Cに貯湯されている高温水をも追加して給湯できるため、貯湯タンク7B内の高温水の給湯のみに限定されることはないものの、最上流の給湯用貯湯タンク7Aに貯湯されている高温水を給湯配管9Bから給湯することはできない。従って、最上流の給湯用貯湯タンク7Aに確実に所定量の高温水を確保しておくことができる。
【0031】
このように、本実施形態では、3個の貯湯タンク7A,7B,7Cから、それぞれ個別に温度の異なる温水又は同温度の温水を複数の用途に対応して給湯することができる。
さらに、本実施形態では、2以上の貯湯タンク7A,7B,7Cから、異なる2温度以上の温水を同時に又は個別に給湯することができる。例えば貯湯タンク7Aと貯湯タンク7B、貯湯タンク7Aと貯湯タンク7C、貯湯タンク7Bと貯湯タンク7C、および貯湯タンク7Aと貯湯タンク7Bと貯湯タンク7Cから、それぞれ同時に又は個別に異なる2温度以上の温水を複数の用途に対応して給湯することができる。
【0032】
図5に、その一例として、貯湯タンク7Aと貯湯タンク7Cから、異なる2温度の温水を同時に給湯する場合の動作図が示されている。以下に、図5に基づいて、その給湯動作を詳しく説明する。
この場合、最上流の給湯用貯湯タンク7Aからは、その上部から給湯配管9Aを介して順次高温水を負荷側に給湯することができる。この際、必要に応じて給湯配管9A中に設けられているミキシングバルブ10Aにより温度調整して給湯(給湯A)することができる。最上流の給湯用貯湯タンク7Aからの給湯によって、最下流の給水用貯湯タンク7Cに給水管8を介して低温水が給水され、貯湯タンク7B,7Cの高温水が、図5に実線矢印で示すように、順次最上流の給湯用貯湯タンク7A側に押出されることになることは上述した通りである。
【0033】
これと同時に、最下流の給水用貯湯タンク7Cの上部からも給湯配管9Cを介して中温水又は低温水を負荷側に給湯(給湯C)することができる。最下流の給水用貯湯タンク7Cから給湯配管9Cに出湯された高温水は、給湯配管9C中に設けられているミキシングバルブ10Cで給水配管11Cからの低温水と混合されて中温水又は低温水に温度調整された後、負荷側に給湯されることになる。この際も貯湯タンク7Cからの出湯量に見合った量の低温水が給水管8を介して貯湯タンク7Cに給水されることになり、貯湯タンク7Cに貯湯されていた高温水が全て消費されると、貯湯タンク7Cから給湯配管9Cを介して給湯することはできなくなる。
【0034】
同様にして、貯湯タンク7Aと貯湯タンク7B、貯湯タンク7Bと貯湯タンク7Cおよび貯湯タンク7Aと貯湯タンク7Bと貯湯タンク7Cから、それぞれ同時に又は個別に異なる2温度以上の温水を複数の用途に対応して給湯することができ、しかも、下流側の貯湯タンク7B,7Cから給湯することによって、それらの貯湯タンク7B,7Cに貯湯されていた高温水を全て使い切ったとしても、最上流の給湯用貯湯タンク7Aに対して所要量の高温水を確保しておき、それを特定の用途に給湯することが可能となる。
【0035】
斯くして、本実施形態によると、直列に接続された複数の貯湯タンク7A,7B,7C中の最上流の給湯用貯湯タンク7Aから高温水を給湯し、その下流側の1以上の貯湯タンク7B,7Cからミキシングバルブ10B,10Cを介して異なる温度の温水を給湯することにより、専用の2温度取り出し用貯湯タンクを用いることなく、1基の貯湯式給湯システム1から少なくとも異なる2温度以上の温水を同時または個別に取り出し、負荷側に給湯することができる。
【0036】
しかも、下流側の1以上の貯湯タンク7B,7Cからミキシングバルブ10B,10Cを介して中温水や低温水を取り出すことにより、最上流の給湯用貯湯タンク7Aに所要量の高温水を貯湯したまま、下流側の貯湯タンク7B,7Cに貯湯されている高温水を順次給湯して消費することができる。
このため、特別な構成のタンクを用いることなく、貯湯専用のシンプルな構成のタンク7A,7B,7Cを複数個用いて、用途の違いに応じた異なる2温度以上の温水を同時または個別に取り出し、給湯できる安価な貯湯式給湯システム1を提供することができるとともに、用途が特定された所要量の高温水を確実に確保できる貯湯式給湯システム1を提供することができる。
【0037】
また、本実施形態では、ミキシングバルブ10B,10Cに、給水用貯湯タンク7Cの底部に接続されている給水管8から分岐された給水配管11B,11Cが接続された構成とされ、下流側の貯湯タンク7B,7Cから負荷側に給湯する際、給水管8から分岐された給水配管11B,11Cを経てミキシングバルブ10B,10Cに低温水を供給し、設定温度の中温水又は低温水に調整して給湯することができるため、最上流の給湯用貯湯タンク7Aに所要量の高温水を確保しつつ、最上流の給湯用貯湯タンク7Aからの給湯とは独立して、下流側の貯湯タンク7B,7Cから異なる温度の温水を同時または個別に取り出し、負荷側に給湯することができる。
【0038】
さらに、最上流の給湯用貯湯タンク7Aから高温水が給湯可能とされるとともに、その下流側の1以上の貯湯タンク7B,7Cから異なる温度の温水が給湯可能とされ、少なくとも異なる2温度以上の温水が同時または個別に給湯可能な構成とされているため、貯湯専用のシンプルな貯湯タンク7A,7B,7Cを複数個直列に接続するだけで、最上流の給湯用貯湯タンク7Aからの高温水の給湯と、下流側の1以上の貯湯タンク7B,7Cからの温度の異なる温水の給湯とにより、少なくとも異なる2温度以上の温水を同時または個別に給湯することができる。
【0039】
これによって、専用構造とされることにより高価な2温度取り出し用の貯湯タンクを用いることなく、安価な既存の貯湯専用のシンプルな構成の貯湯タンク7A,7B,7Cを用いて、用途の違いに応じた異なる2温度以上の温水を同時または個別に取り出しできる貯湯式給湯システム1を低コストで提供することができる。
【0040】
また、複数の貯湯タンク7A,7B,7Cが、それぞれ同一構造の貯湯専用タンクとされている。このため、直列に接続される複数の貯湯タンク7A,7B,7Cを、それぞれ既存のシンプルな構成の貯湯専用の同一構造のタンク7A,7B,7Cにより構成することができ、これによっても、安価な同一構造の貯湯専用タンクを複数個用い、用途の違いに応じた異なる2温度以上の温水を同時または個別に取り出しできる貯湯式給湯システム1をより低コストで提供することが可能となる。
【0041】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記実施形態では、最上流の貯湯タンク7Aに接続されている給湯配管9A中にミキシングバルブ10Aを設け、温度調整可能とした例について説明したが、用途に特定され、貯湯タンク7A,7B,7Cに貯湯される設定温度の高温水をそのまま使うようなものの場合、敢えてミキシングバルブ10Aを設ける必要はなく、省略してもよい。このようなシステムも本発明に包含されることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0042】
1 貯湯式給湯システム
2 熱源機
3 貯湯ユニット
4 高温水の出湯配管
5 低温水の給水配管
6A,6B 接続配管
7A,7B,7C 貯湯タンク
8 給水管
9A,9B,9C 給湯配管(給湯系)
10A,10B,10C ミキシングバルブ
11A,11B,11C 給水配管
図1
図2
図3
図4
図5