(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の車輪又は前記第2の車輪どちらか一方を接地させるための操作を受付ける受付手段を、前記本体部の走行操作が行なわれる操作ハンドル、前記本体部による処理を操作するための操作部、及び、前記X線管を支持する支持機構付近のうち少なくとも1つに備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の移動型X線診断装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照して、移動型X線診断装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下では、本願に係る移動型X線診断装置として、X線管を支持する支持機構に支柱とアームとが用いられる移動型X線診断装置を例に挙げて説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
まず、
図1を用いて、第1の実施形態に係る移動型X線診断装置の全体構成の一例を説明する。
図1は、第1の実施形態に係る移動型X線診断装置1の全体構成の一例を示す図である。
図1に示すように、移動型X線診断装置1は、支柱2と、アーム3と、X線管4と、X線可動絞り5と、前輪6と、後輪7と、操作ハンドル8と、装置本体9と、追加車輪10と、記憶部11と、制御部12とを備える。
【0009】
支柱2は、
図1の(A)に示すように、移動型X線診断装置1のフロント側(前輪6側)に配置され、アーム3の一端が連結されることで、アーム3を支持する。そして、支柱2は、長手方向を軸に旋回することで、アーム3を任意の方向に向けることができる。アーム3は、一端が支柱2と連結され、他端にX線管4とX線可動絞り5とが配置される。ここで、アーム3は、支柱2に対して上下に自在にスライドするように連結される。例えば、支柱2にレールが設置され、アーム3は一端がレールと連結されてレール上を移動することにより、上下にスライドする。また、アーム3は、支柱2の長軸に直交する方向に伸縮する。例えば、アーム3は中空の相似形の四角柱が重なりあった構造を有し、外側の四角柱のアーム内部を大きさが小さい内側の四角柱のアームがスライドすることにより伸縮する。
【0010】
X線管4は、装置本体9に含まれる高電圧発生部(不図示)と接続され、高電圧発生部から供給される高電圧を用いて、X線を発生する。X線可動絞り5は、例えば二対の可動制限羽根を有し、各対における可動制限羽根が開閉することでX線の照射野を調整する。すなわち、X線可動絞り5は、X線管4によって円錐状に発せられたX線が所定の照射野に照射されるように可動制限羽根が開閉される。ここで、X線可動絞り5は、例えば、絞りハンドルと、操作部と、絞り調整つまみとを備え(不図示)、操作者によってこれらが操作されることで、X線の照射野の調整が行なわれる。
【0011】
例えば、絞りハンドルは、操作者によって把持され、X線可動絞り5の下面に設けられたX線照射部分が患者の撮影部位に位置するように移動される。ここで、移動型X線診断装置1においては、X線管4及びX線可動絞り5が、アーム3の長手方向を軸として旋回する。さらに、X線可動絞り5が、X線管4との接合部を軸として旋回する。すなわち、移動型X線診断装置1においては、各部位が上述した方向にそれぞれ動くことによって、操作者によるX線照射部分の撮影部位への位置合わせを行なうことが可能である。そして、操作者は、X線照射部位を撮影部位に合わせた後、絞り調整つまみを操作することでX線の照射野を調整したり、操作部を操作することでX線画像の撮影に係る各種設定を行なったりする。なお、これら各部位の動きは通常固定されており、操作者がロックを解除することによって任意に動くようになる。例えば、操作者は、絞りハンドルを把持する際にロック解除ボタンを同時に押下することで、各部位にかかっているロックを解除し、X線照射部分の撮影部位への位置合わせを行なう。
【0012】
前輪6は、旋回自在の車輪であり、例えば、一対のキャスターなどである。すなわち、前輪6は、装置本体9との接続部分を軸として任意の方向に旋回することで、装置本体9を任意の方向に走行させる。後輪7は、X線管4によるX線の発生を制御する装置本体9を第1の方向に走行させる。具体的には、後輪7は、図示しないモータなどが連結され、装置本体9を駆動する駆動輪であり、操作者による操作に応じて駆動する。一例を挙げると、後輪7は、操作ハンドル8付近に配置された駆動ボタンが押下されることによりモータが駆動し、モータによる動力によって駆動する。移動型X線診断装置1は、後輪7を駆動輪とする電動推進機構を備えることにより、移動にかかる操作者の負担を軽減する。
【0013】
操作ハンドル8は、操作者が移動型X線診断装置1を移動させる際に操作されるハンドルである。例えば、操作者は、操作ハンドル8を握った状態で操作レバーを握ることでブレーキが解除され、移動型X線診断装置1を前進させたり、後進させたりすることができる。或いは、操作ハンドル8が圧力センサを備え、操作者によって操作される方向(例えば、ハンドルを押している場合に前進、ハンドルを引いている場合に後進など)を検知して、モータを所望の方向に駆動させることも可能である。なお、移動型X線診断装置1は、上記した操作レバーが放されたり、或いは、圧力センサによる検知が無くなったりすると、ブレーキがかかるように制御される。
【0014】
装置本体9は、
図1の(A)に示すように、移動型X線診断装置1の各部を制御する制御部12や、各種データを記憶する記憶部11、さらに、外部から供給される電力を蓄電するバッテリ、種々の操作を受け付ける操作部、及び、種々の情報を表示する表示部などを有する。そして、装置本体9においては、制御部12が、移動型X線診断装置1の移動に関する各種処理及びX線画像の撮影に関する各種処理の制御を実行する。例えば、制御部12は、装置本体9の上面に配置された操作部、或いは、X線可動絞り5に備えられた操作部から転送された操作者の指示に従って高電圧発生部を制御し、X線管4に供給する電圧を調整することで、患者に対して照射されるX線量やON/OFFを制御する。また、例えば、制御部12は、操作者の指示に従ってX線可動絞り5を制御し、X線可動絞り5が有する可動制限羽根の開度を調整することで、患者に対して照射されるX線の照射野を制御する。
【0015】
また、制御部12は、操作者の指示に従って、画像データ生成処理や、画像処理、あるいは解析処理などを制御する。また、制御部12は、操作者の指示を受け付けるためのGUIや記憶部11が記憶する画像などを、表示部のディスプレイに表示するように制御する。また、制御部12は、後輪7と追加車輪10の接地を制御するが、この点については後に詳述する。なお、
図1に示す記憶部11は、例えば、ハードディスク、光ディスクなどの記憶装置、または、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)などの半導体メモリ素子である。また、
図1に示す制御部12は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などの電子回路やASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路である。
【0016】
追加車輪10は、後輪7による装置本体9の走行方向に直交する方向に装置本体9を走行させる。具体的には、追加車輪10は、後輪7による装置本体9のフロント側又はリア側への走行と直交する左右の方向へ装置本体9を走行させる。なお、追加車輪10の詳細については後に詳述する。
【0017】
移動型X線診断装置1は、上述した構成を有し、操作者によって病室まで移動され、病室内のベッド上にいて簡単に身動きできない患者(例えば、点滴中、寝たきり、両足負傷による歩行困難など)に対してX線画像の撮影を実行する。例えば、移動型X線診断装置1は、待機時には病院の各フロアの廊下などに置かれ、バッテリの蓄電容量に応じて充電される。そして、使用時には、移動型X線診断装置1は、専用の鍵などによりロックが解除され、操作者が操作ハンドル8を操作するとともに、操作レバー(或いは、圧力センサなど)により後輪7を駆動させることで病室などに移動される。
【0018】
ここで、上述したような待機時や、移動時(走行時)においては、移動型X線診断装置1は、
図1の(A)に示すように、アーム3が、リア方向(装置本体9の方向)に向けられて収縮し、X線管4が突き出ないように収納される。ここで、操作者の前方の視界を確保するために、アーム3ができる限り下に下げられた状態でX線管4が収納される。
【0019】
そして、病室に移動すると、操作者は、
図1の(B)に示すように、長手方向を軸に支柱2を旋回させてアーム3を収納位置から所望の方向(例えば、装置本体9の横方向や、フロント方向など)に向けることで、X線管4及びX線可動絞り5を撮影に適した方向に向ける。そして、操作者は、アーム3を伸ばしてX線管4及びX線可動絞り5を引き出すことで、患者の撮影部位にX線が照射される位置にX線管4を配置する。ここで、操作者は、X線可動絞り5に備えられた絞り調整つまみを用いて、撮影部位が照射野に入るように調節する。そして、FPD(Flat Panel Detector)や、カセッテなどの画像記録媒体が患者の撮像部位とベッドとの間にセットされ、X線画像が撮影される。
【0020】
このように、移動型X線診断装置1は、使用時に患者のいる病室に移動され、撮影部位に対してX線管の位置及び照射野が調整されてX線画像が撮影され、待機時は所定の場所に置かれる。ここで、従来の移動型X線診断装置においては、使用時の種々の状況で、装置の移動に係る操作性が低下する場合があった。
図2は、従来技術に係る移動型X線診断装置における課題の一例を説明するための図である。ここで、
図2においては、移動型X線診断装置が患者のいる部屋に移動された後の状態について示す。
【0021】
例えば、操作者は、移動型X線診断装置によってX線画像を撮影する際に、
図2の(A)に示すように、患者のベッドサイドに移動型X線診断装置を移動させる。ここで、操作者は、リア側にある操作ハンドルを操作することで移動型X線診断装置をベッドサイドに移動させるが、その際にX線画像を撮影したい位置を考慮しながら、まず目測で移動型X線診断装置の位置を決める。そして、操作者は、フロント側に移動して絞りハンドルを把持して操作することでX線可動絞りにあるX線照射部分を撮影位置にあわせる。
【0022】
ここで、X線照射部分が撮影位置にあう場合は、操作者は、その後の絞りの調整などの操作を行なう。しかしながら、目測での位置決めは必ずしも合っているとは限らず、実際に撮影したい位置(撮影位置)にX線照射部分を配置できない場合がある。例えば、
図2の(A)に示すように、アームを伸ばしても撮影位置に届かない場合などがある。ここで仮に、
図2の(A)の矢印20に示すように、横方向に装置本体を動かすことができれば、X線照射部分を撮影したい位置に容易に合わせることができる。しかしながら、従来の移動型X線診断装置の場合、前輪16は任意の方向に回転して横方向に装置本体を走行させることができるが、後輪17の走行方向はフロント側又はリア側の方向(前後方向)のみに限られている。
【0023】
従って、
図2の(A)のような状況になった場合、操作者は、
図2の(B)に示すように、まず、装置本体のフロント側をベッド側に押すことで、装置本体を矢印21の方向に回転させる。そして、操作者は、支柱を軸に矢印22の方向にアームを旋回させることで、X線照射部分を撮影位置にあわせる。このように、従来の移動型X線診断装置は、横方向に移動(平行移動)することができず、装置の移動に係る操作性が低下する場合があった。なお、このような状況は、
図2に示した例だけに限らず、例えば、移動型X線診断装置を待機場所に置く場合などでも発生しうる。一例を挙げると、横方向に少し移動させることで待機場所に置ける場合であっても、従来の移動型X線診断装置は横方向に移動できないため、装置を大きく移動させることとなる。
【0024】
そこで、本願にかかる移動型X線診断装置1は、装置本体9を横方向に走行可能な追加車輪10を設け、前後方向への走行を行なう後輪7と追加車輪10のいずれか一方が接地するように制御することで、装置の移動に係る操作性を向上させることを可能にする。以下、第1の実施形態に係る追加車輪10の詳細について説明する。
【0025】
図3は、第1の実施形態に係る追加車輪10の一例を説明するための図である。なお、
図3においては、移動型X線診断装置1を上面から見た場合の各車輪の位置を示す。例えば、追加車輪10は、
図3に示すように、後輪7と直交する方向に回転するように設けられる。ここで、追加車輪10は、下端と地面とが離間した状態で保持され、操作者が所望した場合に、接地するように設けられる。例えば、移動型X線診断装置1は、通常モードと、平行移動モードとを有し、通常モードでは、追加車輪10が地面から離れた状態で保持され、平行移動モードになった場合に、追加車輪10が接地して、後輪7が地面から離れた状態となる。このように、前後方向に走行させる後輪7が地面から離れ、横方向に走行させる追加車輪10が接地することにより、操作者は、移動型X線診断装置1を横方向に容易に移動させることができる。
【0026】
ここで、追加車輪10は、後輪7のようなモータと連結されて駆動する駆動輪ではなく、横方向に自由に回転する車輪である。すなわち、操作者は、装置本体9を横から押すことで容易に装置本体9を移動させることができるように、追加車輪10が設けられる。なお、
図3に示す追加車輪10は、あくまでも一例であり、実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、追加車輪10が取り付けられる位置や、数は、任意に変更することができる。
【0027】
以下、
図4を用いて後輪7と追加車輪10の接地の制御の一例について説明する。
図4は、第1の実施形態に係る制御部12による制御の一例を説明するための図である。
図4においては、
図4の(A)が通常モードにおける移動型X線診断装置1の状態を示し、
図4の(B)が平行移動モードにおける移動型X線診断装置1の状態を示す。例えば、通常モードの状態では、
図4の(A)に示すように、後輪7が接地し、追加車輪10が地面から離間した状態となる。ここで、操作者が平行移動モードに切り替える入力操作を実行すると、制御部12は、後輪7に設けられた車輪制御機構13を制御して、
図4の(B)に示すように、後輪7を矢印23の方向に移動させる。すなわち、制御部12は、後輪7の接地部分を追加車輪10の下端よりも高い位置に上昇させることにより、
図4の(B)に示すように、追加車輪10を接地させる。
【0028】
ここで、通常モードでの追加車輪10の下端の位置を地面からなるべく近くなるように追加車輪10を設置することで、平行移動モードでの装置本体9の傾きを極力抑制することができる。さらに、平行移動モードでの後輪7の移動量を短くすることで、後輪7を転倒防止用のストッパーとして用いることも可能となる。例えば、後輪7の移動量を10mm程度とすることで、装置本体9が横方向に転倒することを抑止することができる。
【0029】
上述したように、第1の実施形態に係る移動型X線診断装置1は、操作者が平行移動モードに切り替える入力操作を実行すると、制御部12が、後輪7に設けられた車輪制御機構13を制御して、後輪7を地面から離間する(使用された状態から退避する)ように制御する。以下、車輪制御機構13の一例について説明する。
図5は、第1の実施形態に係る車輪制御機構13の構成の一例を示す図である。例えば、車輪制御機構13は、
図5に示すように、ラックギア13aと、ピニオンギア13bとを有するラックピニオン機構で構成される。そして、ラックギア13aが後輪7と連結され、ピニオンギア13bが制御部12によって制御されるモータと連結される。
【0030】
例えば、操作者が平行移動モードに切り替える入力操作を実行すると、制御部12は、後輪7が上方に移動する方向にラックギア13aが動くように、ピニオンギア13bに連結されたモータを駆動させる。これにより、後輪7が地面から離間して、追加車輪10が地面と接地することとなる。なお、平行移動モードから通常モードに切り替える入力操作を受付けた場合には、制御部12は、後輪7が下方に移動する方向にラックギア13aが動くように、ピニオンギア13bに連結されたモータを駆動させることで、後輪7を接地させ、追加車輪10を地面から離間させる。
【0031】
このように、移動型X線診断装置1は、操作者からのモードの切り替え操作を受付けることにより、後輪7又は追加車輪10のどちらかが接地するように制御する。ここで、移動型X線診断装置1は、切り替え操作を受付ける入力部を任意の場所に備えることができる。
図6は、第1の実施形態に係る移動型X線診断装置1における入力部の配置を示す図である。
図6においては、移動型X線診断装置1を上面から見た場合の図を示す。
【0032】
例えば、移動型X線診断装置1は、後輪7又は追加車輪10のどちらか一方を接地させるための操作を受付ける入力部を、
図6の矢印24に示すように、装置本体9の走行操作が行なわれる操作ハンドル8や、矢印26に示すように装置本体9による処理を操作するための操作部9a、矢印25に示すX線管4を支持するアーム3や支柱2などの支持機構付近などに備える。例えば、入力部が操作ハンドル8に備えられた場合には、移動型X線診断装置1の走行操作を行なった後、即座に切り替え操作を行なうことができる。また、入力部が操作部9aに備えられた場合には、種々の操作を行なっているときと同様に切り替え操作を行なうことができる。また、入力部が支持機構付近に備えられた場合には、X線照射部分を撮影位置にあわせている際に、装置本体9のリア側に戻ることなく切り替え操作を行なうことができる。
【0033】
このように、移動型X線診断装置1は、操作者によるモードの切り替え操作を受付けることで、後輪7又は追加車輪10のどちらかが接地するように制御するが、平行移動モードになっている場合には、モード切り替え操作を受けることなく、通常モードに切り替えるように制御させることも可能である。例えば、制御部12は、追加車輪10が接地された状態で、X線管4の位置移動に係る操作、X線管4によるX線の発生に係る操作、又は、装置の電源を切る操作を受付けた場合に、後輪7が接地するように制御する。
【0034】
すなわち、制御部12は、装置の使用状況に応じて、装置の安定性が高い通常モードに戻すように制御する。例えば、平行移動モードで操作者が絞りハンドルを把持してアーム3などにかかったロックを解除した場合に、制御部12は、車輪制御機構13を制御して平行移動モードから通常モードに切り替える。これにより、X線管4の位置を変えようとした場合に、装置がより安定した通常モードで操作を行なわせることができ、安全性の低下を抑止することができる。
【0035】
また、平行移動モードで操作者がX線画像の撮影に関するスイッチを押した場合や、装置の電源がOFFにされた場合などに、制御部12は、車輪制御機構13を制御して平行移動モードから通常モードに切り替える。すなわち、X線が照射される場合や、装置が待機状態となる場合などに、制御部12は、平行移動モードから通常モードに自動で切り替えて、装置の安定性を向上させる。なお、上述した例は、あくまでも一例であり、実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、平行移動モードから通常モードへの自動の切り替えは、上述した例に限られず、操作者が任意のタイミングを設定することができる。
【0036】
次に、第1の実施形態に係る移動型X線診断装置1による処理の手順を説明する。
図7は、第1の実施形態に係る移動型X線診断装置1による処理の手順を説明するためのフローチャートである。
図7に示すように、第1の実施形態に係る移動型X線診断装置1においては、入力部が平行移動モードの入力を受付けると(ステップS101肯定)、制御部12が後輪7をロックして、電動推進機構を停止する(ステップS102)。
【0037】
そして、制御部12は、車輪制御機構13を制御して、後輪7を退避させる(ステップS103)。ここで、アーム3のロックが解除されると(ステップS104肯定)、制御部12は、車輪制御機構13を制御して、後輪7を接地させ、追加車輪10を地面から離間させることで、後輪7の退避を解除する(ステップS105)。また、アーム3のロックが未解除の状態で(ステップS104否定)、X線撮影のスイッチの入力を受付けると(ステップS106肯定)、制御部12は、車輪制御機構13を制御して、後輪7を接地させ、追加車輪10を地面から離間させることで、後輪7の退避を解除する(ステップS105)。
【0038】
ここで、ステップ105で後輪7の退避を解除すると、制御部12は、平行移動モードの入力を受付けたか否かの判定を行なう。また、アーム3のロックが未解除の状態(ステップS104否定)、かつ、X線撮影のスイッチの入力を受付けていない状態で(ステップS106否定)、装置の電源OFFの入力を受付けると(ステップS107肯定)、制御部12は、車輪制御機構13を制御して、後輪7を接地させ、追加車輪10を地面から離間させることで、後輪7の退避を解除して(ステップS108)、装置全体の制御を終了する。
【0039】
なお、移動型X線診断装置1においては、平行移動モードの入力を受付けるまで後輪7と追加車輪10の制御が待機状態となる(ステップS101否定)。また、
図7においては、アーム3のロックが解除されたか否かの判定(ステップS104)の後に、X線撮影スイッチの入力を受付けたか否かを判定し(ステップS106)、その後に、装置の電源OFFの入力を受付けたか否かを判定する(ステップS107)手順を説明したが、実際には、各判定が同時に行なわれる。
【0040】
上述したように、第1の実施形態によれば、後輪7は、X線管4によるX線の発生を制御する装置本体9を第1の方向に走行させる。追加車輪10は、第1の方向に直交する第2の方向に装置本体9を走行させる。制御部12は、後輪7又は追加車輪10のどちらか一方を接地させるように制御する。従って、第1の実施形態に係る移動型X線診断装置1は、装置本体9を前後方向と横方向に移動可能とすることができ、装置の移動に係る操作性を向上させることを可能にする。
【0041】
また、第1の実施形態によれば、後輪7は、装置本体9を駆動する駆動輪である。追加車輪10は、下端と地面とが離間した状態で保持される。制御部12は、後輪7の接地部分を追加車輪10の下端よりも高い位置に上昇させることにより、追加車輪10を接地させる。従って、第1の実施形態に係る移動型X線診断装置1は、後輪7と追加車輪10の接地の切り替え制御を容易に実現することを可能にする。
【0042】
また、第1の実施形態によれば、制御部12は、追加車輪10が接地された状態で、X線管4の位置移動に係る操作、X線管4によるX線の発生に係る操作、又は、装置の電源を切る操作を受付けた場合に、後輪7が接地するように制御する。従って、第1の実施形態に係る移動型X線診断装置1は、装置の安定性の低下を抑止することができ、安全に装置を使用することを可能にする。
【0043】
また、第1の実施形態によれば、後輪7又は追加車輪10のどちらか一方を接地させるための操作を受付ける入力部を、装置本体9の走行操作が行なわれる操作ハンドル8、装置本体9による処理を操作するための操作部9a、及び、X線管4を支持するアーム3及び支柱2などの支持機構付近のうち少なくとも1つに備える。従って、第1の実施形態に係る移動型X線診断装置1は、種々の位置でのモードの切り替え操作を可能にする。
【0044】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、車輪制御機構13によって後輪7を移動させることで、後輪7と追加車輪10の接地の切り替えを制御する場合について説明した。第2の実施形態では、車輪制御機構13によって追加車輪10を移動させることで、後輪7と追加車輪10の接地の切り替えを制御する場合について説明する。第2の実施形態においては、制御部12による追加車輪10の制御が、第1の実施形態と異なる。以下、この点を中心に説明する。
【0045】
第2の実施形態に係る制御部12は、下端と地面とが離間した状態で保持された追加車輪10の下端が接地し、かつ、駆動輪である後輪7の接地部分が地面から離間するように追加車輪10を下降させる。
図8は、第2の実施形態に係る制御部12による制御の一例を説明するための図である。
図8においては、
図8の(A)が通常モードにおける移動型X線診断装置1の状態を示し、
図8の(B)が平行移動モードにおける移動型X線診断装置1の状態を示す。例えば、通常モードの状態では、
図8の(A)に示すように、後輪7が接地し、追加車輪10が地面から離間した状態となる。ここで、操作者が平行移動モードに切り替える入力操作を実行すると、第2の実施形態に係る制御部12は、追加車輪10に設けられた車輪制御機構13を制御して、
図8の(B)に示すように、追加車輪10を矢印27の方向に移動させる。すなわち、制御部12は、追加車輪10を下降させて接地させ、装置本体9を持ち上げることにより、
図8の(B)に示すように、後輪7を地面から離間させる。
【0046】
なお、平行移動モードから通常モードに切り替えられた場合には、制御部12は、追加車輪10を上昇させて地面から離間させることで、後輪7を接地させるように制御する。また、第2の実施形態に係る車輪制御機構13は、例えば、
図5に示すラックピニオン機構であり、ラックギア13aが追加車輪10に連結されることで、追加車輪10を下降させたり、上昇させたりする。
【0047】
第2の実施形態に係る移動型X線診断装置1は、
図7に示す処理と同様に処理を実行する。すなわち、第2の実施形態に係る移動型X線診断装置1は、操作者からの切り替え操作に加えて、装置の状態に応じて、平行移動モードから通常モードに自動で切り替える。
【0048】
上述したように、第2の実施形態によれば、後輪7は、装置本体9を駆動する駆動輪である。追加車輪10は、下端と地面とが離間した状態で保持される。制御部12は、追加車輪10の下端が接地し、かつ、後輪7の接地部分が地面から離間するように追加車輪10を下降させる。従って、第2の実施形態に係る移動型X線診断装置1は、後輪7と追加車輪10の接地の切り替え制御を、第1の実施形態とは異なる方法で容易に実現することを可能にする。
【0049】
(第3の実施形態)
第1及び第2の実施形態では、後輪7又は追加車輪10のどちらかを制御することで、後輪7と追加車輪10の接地の切り替えを制御する場合について説明した。第3の実施形態では、後輪7及び追加車輪10の両方を制御することで、後輪7と追加車輪10の接地の切り替えを制御する場合について説明する。第3の実施形態においては、第1の実施形態に係る制御部12による後輪7の制御と、第2の実施形態に係る制御部12による追加車輪10の制御とが同時に実行されることとなる。以下、この点を中心に説明する。
【0050】
第3の実施形態に係る制御部12は、駆動輪である後輪7の下端よりも下端と地面とが離間した状態で保持された追加車輪10の下端が地面側になるように、後輪7を上昇させるとともに、追加車輪10を下降させる。
図9は、第3の実施形態に係る制御部12による制御の一例を説明するための図である。
図9においては、
図9の(A)が通常モードにおける移動型X線診断装置1の状態を示し、
図9の(B)が平行移動モードにおける移動型X線診断装置1の状態を示す。例えば、通常モードの状態では、
図9の(A)に示すように、後輪7が接地し、追加車輪10が地面から離間した状態となる。
【0051】
ここで、操作者が平行移動モードに切り替える入力操作を実行すると、第3の実施形態に係る制御部12は、後輪7に設けられた車輪制御機構13と、追加車輪10に設けられた車輪制御機構13とをそれぞれ制御して、
図9の(B)に示すように、後輪7を矢印23の方向に移動させ、追加車輪10を矢印27の方向に移動させる。すなわち、制御部12は、後輪7を上昇させて地面から離間させ、追加車輪10と地面との離間距離の分だけ追加車輪10を下降させることで、追加車輪10を接地させるように制御する。
【0052】
なお、平行移動モードから通常モードに切り替えられた場合には、制御部12は、追加車輪10を上昇させて地面から離間させ、後輪7を上昇させた分だけ下降させることで、後輪7を接地させるように制御する。また、第3の実施形態に係る車輪制御機構13それぞれは、例えば、
図5に示すラックピニオン機構である。
【0053】
第3の実施形態に係る移動型X線診断装置1は、
図7に示す処理と同様の処理を実行する。すなわち、第3の実施形態に係る移動型X線診断装置1は、操作者からの切り替え操作に加えて、装置の状態に応じて、平行移動モードから通常モードに自動で切り替える。
【0054】
上述したように、第3の実施形態によれば、後輪7は、装置本体9を駆動する駆動輪である。追加車輪10は、下端と地面とが離間した状態で保持される。制御部12は、後輪7の下端よりも追加車輪10の下端が地面側になるように、後輪7を上昇させるとともに、追加車輪10を下降させる。従って、第3の実施形態に係る移動型X線診断装置1は、モードの切り替えによる装置本体9の傾きを抑止することを可能にする。
【0055】
(第4の実施形態)
さて、これまで第1〜3の実施形態について説明したが、上述した第1〜3の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0056】
上述した第1〜第3の実施形態においては、追加車輪10が自由に回転する車輪である場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、追加車輪10が駆動輪である場合であってもよい。
【0057】
また、上述した第1〜第3の実施形態では、支柱2を有する移動型X線診断装置1を一例に挙げて説明したが、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、
図1などに示す縦支柱/横支柱の移動型X線診断装置1とは異なる移動型X線診断装置(例えば、折り畳み支柱を有する移動型X線診断装置や、縦支柱及び折り畳み支柱を有する移動型X線診断装置など)に本願の追加車輪10及び制御部12を適用する場合であってもよい。
【0058】
また、上述した第1及び第2の実施形態において、説明した構成はあくまでも一例であり、本願にかかる移動型X線診断装置1は、種々の構成を有することができる。例えば、
図1に示す装置本体9や、X線管4、X線可動絞り5などの形状は、任意の形状であってよい。また、装置本体9に備えられるものとして説明した構成は、任意に配置を変えることができる。例えば、装置本体9に備えられるものとした高電圧発生部は、X線管4を含むボックス内に配置する場合であってもよい。
【0059】
以上説明したとおり、第1及び第2の実施形態によれば、本実施形態の移動型X線診断装置は、装置の移動に係る操作性を向上させることを可能にする。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。