(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記誘電体層は、第1屈折率を有する複数の第1誘電体膜と、前記第1屈折率より低い第2屈折率を有する複数の第2誘電体膜とが交互に積層されて構成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。ただし、図面は模式的または概念的なものであり、各図面の寸法および比率等は必ずしも現実のものと同一とは限らないことに留意すべきである。また、図面の相互間で同じ部分を表す場合においても、互いの寸法の関係や比率が異なって表される場合もある。特に、以下に示す幾つかの実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための装置および方法を例示したものであって、構成部品の形状、構造、配置等によって、本発明の技術思想が特定されるものではない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0011】
[第1実施形態]
[1.有機EL表示装置の基本構成]
本実施形態では、発光素子として有機EL素子を用いた表示装置(有機EL表示装置)を例に挙げて説明する。また、本実施形態では、発光素子が形成される基板側から光を取り出すボトムエミッション構造の有機EL表示装置を例に挙げて説明する。
【0012】
図1は、本発明の第1実施形態に係る有機EL表示装置10の断面図である。基板11は、透明基板から構成され、例えばガラス基板又はプラスチック基板などが用いられる。基板11上には、有機EL素子からなる発光素子12が設けられる。本実施形態の有機EL素子は、透過型の有機EL素子である。
【0013】
発光素子12は、下部電極13、有機層14、及び上部電極15がこの順に積層されて構成される。有機層14は、正孔輸送層16、発光層17、及び電子輸送層18がこの順に積層されて構成される。下部電極13は、陽極として機能するものであり、透明電極から構成され、例えば導電性を有する金属酸化物が用いられる。透明かつ導電性を有する金属酸化物としては、ITO(インジウム錫酸化物)又はIZO(インジウム亜鉛酸化物)などが挙げられる。上部電極15は、陰極として機能するものであり、透明電極から構成され、例えば導電性を有する金属酸化物(ITO又はIZOなど)が用いられる。
【0014】
正孔輸送層16、発光層17、及び電子輸送層18はそれぞれ、有機材料から構成され、また、これらの具体的な有機材料は、公知の材料から選択できる。正孔輸送層16は、下部電極13との界面から注入された正孔を発光層17に輸送する機能を有する。電子輸送層18は、上部電極15との界面から注入された電子を発光層17に輸送する機能を有する。発光層17は、正孔輸送層16から輸送される正孔と、電子輸送層18から輸送される電子とを再結合させることで発光する機能を有する。
【0015】
なお、有機層14は、前述した3層構造に限定されず、5層構造などを用いてもよい。すなわち、正孔輸送層16は、下部電極13側から正孔注入層と正孔輸送層とに機能的に分けて2層で構成してもよい。同様に、電子輸送層18は、上部電極15側から電子注入層と電子輸送層とに機能的に分けて2層で構成してもよい。
【0016】
発光素子12の上方には、封止層19を介して基板20が設けられる。封止層19は、例えば、基板11と基板20とを接着する接着部材(図示せず)によって密封された空気層から構成される。封止層19は、外部から有機層14への水分の侵入を防止する機能を有する。なお、封止層19は、例えば紫外線(UV)硬化樹脂又は熱硬化樹脂などからなる絶縁性樹脂を用いてもよい。封止層19として絶縁性樹脂を用いた場合、封止層19は、基板11と基板20とを接着する機能と、有機EL表示装置10の機械的な強度を増す機能とをさらに有する。
【0017】
基板20は、透明基板から構成され、例えばガラス基板又はプラスチック基板などが用いられる。基板20の発光素子12側には、透明誘電体層21が設けられる。透明誘電体層21は、特定の波長領域を有する光をほぼ完全に反射し、それ以外の波長領域を有する光を透過する機能を有する。すなわち、透明誘電体層21は、光透過性を有する。
【0018】
本実施形態では、一例として、有機EL表示装置10は、赤色のキャラクターを表示するものとする。よって、発光素子12は、赤色光を放射する。
図2は、発光素子12が放射する光の波長と放射輝度との関係を示すグラフである。縦軸は放射輝度(任意単位)を示し、横軸は波長(nm)を示している。発光素子12は、波長600nm近辺から長波長側の光を放射し、かつ波長630nm近辺に放射輝度のピークを有する光を放射する。
【0019】
(透明誘電体層21の構成)
図3は、透明誘電体層21の反射率を説明するグラフである。
図3の縦軸は透明誘電体層21の反射率を示し、横軸は透明誘電体層21への入射光の波長(nm)を示している。
図3には、反射率が異なる3つのケース(第1乃至第3実施例)のグラフを載せている。
【0020】
第1実施例に係る透明誘電体層21は、610nm以上の波長の光をほぼ完全に反射し、その他の波長領域の光を透過する。
図4は、第1実施例の反射特性を有する透明誘電体層21の断面図である。
図5は、透明誘電体層21を構成する多層膜の材料の一例を説明する図である。
【0021】
透明誘電体層21は、相対的に高屈折率の第1誘電体膜と低屈折率の第2誘電体膜とが交互に積層されて構成される。また、透明誘電体層21を構成する第1及び第2誘電体膜はそれぞれ、透明誘電体膜から構成される。
【0022】
図4及び
図5の構成例では、透明誘電体層21は、32層の誘電体膜が積層された誘電体多層膜(積層膜)から構成される。具体的には、透明誘電体層21は、第1誘電体膜として例えばチタン酸化膜(TiO
2)と、第2誘電体膜として例えばシリコン酸化膜(SiO
2)とが交互に32層だけ積層されて構成される。シリコン酸化膜の屈折率(1.45程度)は、チタン酸化膜の屈折率(2.30程度)より小さい。さらに、複数の第1誘電体膜と複数の第2誘電体膜とは、所望の反射特性を有するように各層の膜厚が設定される。第1誘電体膜としてチタン酸化膜、第2誘電体膜としてシリコン酸化膜を用いた場合、各層の膜厚の一例は、
図5に示す通りである。透明誘電体層21を構成する各層の膜厚は、10nm以上140nm以下の範囲に設定される。
【0023】
このように構成された透明誘電体層21は、発光素子12が放射した光のうち610nm以上の波長の光をほぼ完全に反射し、その他の波長領域の光を透過することができる。
図1に示すように、観察者22は、発光層17が放射した光のうち、発光層17から直接届く光と、透明誘電体層21によって反射された光とを視認できる。また、基板20側から入射する外光のうち610nm未満の波長の光は、透明誘電体層21を透過し、観察者22に視認される。なお、外光とは、透過型の有機EL表示装置10を介して観察者22が視認する背景(被写体)からの光に対応する。例えば、有機EL表示装置10をカメラのファインダーとして用いた場合、外光は、カメラのレンズを介してファインダーに入射される背景からの光に対応する。観察者22は、外光としての背景に、有機EL表示装置10が表示するキャラクターを重ねて視認する。
【0024】
また、第1実施例(反射率99%程度)に比べて反射率が低い透明誘電体層21を用いてもよい。
図3において、第2実施例に係る透明誘電体層は、チタン酸化膜(TiO
2)と、シリコン酸化膜(SiO
2)とを交互に9層だけ積層して構成される。第3実施例に係る透明誘電体層は、チタン酸化膜(TiO
2)と、シリコン酸化膜(SiO
2)とを交互に7層だけ積層して構成される。第2実施例の透明誘電体層は、波長630nmの光に関する反射率68%程度である。第3実施例の透明誘電体層は、波長630nmの光に関する反射率54%程度である。発光素子12の放射輝度のピークに対応する波長の光における透明誘電体層21の反射率は、10%以上100%以下の範囲に設定される。
【0025】
このように、本実施形態では、透明誘電体層21を用いることにより、発光素子12から観察者22と反対方向に放射された光を観察者22側に反射することができる。これにより、発光素子12の消費電力を小さくした場合でも、有機EL表示装置10の発光輝度を向上させることができる。
【0026】
[2.有機EL表示装置の具体的な構成例]
次に、有機EL表示装置10の具体的な構成例について説明する。本実施形態では、文字や図形など予め形状が決められた複数のキャラクターを表示するパターン表示型の有機EL表示装置を例に挙げて説明する。
図6は、有機EL表示装置10の平面図である。
図7は、
図6に示したA−A’線に沿った有機EL表示装置10の断面図である。
【0027】
基板11と基板20とは、接着材23によって接着される。基板11に形成された発光素子は、接着材23及び基板20によって封止される。接着材23は、画像(キャラクター)が表示される表示領域(アクティブ領域)AAを囲むように形成される。
【0028】
基板11のうちアクティブ領域AA以外の周辺領域PAには、LSI(large-scale integrated)回路24が設けられる。LSI回路24は、発光素子を駆動するドライバ、及び該ドライバを制御する制御回路などを含む。LSI回路24には、複数の端子を介して、フレキシブルプリント基板(FPC:flexible printed circuit)25が電気的に接続される。フレキシブルプリント基板25は、LSI回路24に各種信号を送るための信号線、及びLSI回路24に電源を供給するための電源線を含む。フレキシブルプリント基板25は、例えば、ポリイミドフィルムの基材に配線などが形成された柔軟性を有する回路基板である。フレキシブルプリント基板25は、複数の端子を介して外部機器(外部回路)に電気的に接続される。
【0029】
有機EL表示装置10は、フレキシブルプリント基板25を介して、外部機器から電力や画像信号を含む制御信号の供給を受けることにより、アクティブ領域AAにキャラクターを表示する。
【0030】
図6には、有機EL表示装置10が表示可能なキャラクターの一例を示している。有機EL表示装置10は、例えばカメラのファインダーに適用可能である。有機EL表示装置10が表示可能なキャラクター(発光領域)CR1は、カメラのファインダーなどに表示させるフォーカスポイント(四角形)を表しており、キャラクター(発光領域)CR2は、フォーカスポイントの領域を示す枠を表している。キャラクターCR1、CR2は、発光素子12によって発光される領域(発光領域)に対応する。
【0031】
図7において、基板11上には、配線電極30が設けられる。配線電極30は、LSI回路24に電気的に接続される。配線電極30上には、絶縁膜31が設けられる。絶縁膜31上には、発光素子12が設けられる。発光素子12は、下部電極(陽極)13、有機層14、及び上部電極(陰極)15がこの順に積層されて構成される。有機層14は、正孔輸送層16、発光層17、及び電子輸送層18がこの順に積層されて構成される。下部電極13は、コンタクトプラグ32を介して配線電極30に電気的に接続される。
【0032】
隣接する発光領域の間には、隔壁33が設けられる。隔壁33は、下部電極13と上部電極15との間の絶縁性を確保する機能を有する。このように、複数の発光素子12が隔壁33により区画されることで、隔壁33が形成されていない領域に発光素子12が形成される。具体的には、発光素子12が形成される発光領域には、下部電極13が形成され、また、隔壁33には、下部電極13を露出する開口部が形成される。そして、隔壁33の開口部かつ下部電極13上に、有機層14、及び上部電極15が積層される。一方、発光領域以外の非発光領域では、有機層14の下に下部電極13が形成されないので、発光は起こらない。
【0033】
上部電極15の上方には、封止層19を介して基板20が設けられる。基板20の発光素子12側には、前述したように、発光素子12が放射した特定の波長領域を有する光を反射する透明誘電体層21が設けられる。
【0034】
絶縁膜31及び隔壁33としては、透明な絶縁材料が用いられ、例えば、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、又はエポキシ系樹脂のような有機材料や、SiO
2のような無機材料が用いられる。配線電極30及びコンタクトプラグ32としては、透明な導電材料が用いられ、例えば、ITO又はIZOなどが用いられる。
【0035】
[3.効果]
以上詳述したように第1実施形態では、有機EL表示装置10は、基板11に設けられた透過型の発光素子12と、基板11に発光素子12を挟んで対向する基板20に設けられた透明誘電体層21とを備える。発光素子12は、有機EL素子から構成され、例えば単色光である第1波長領域を有する光を放射する。透明誘電体層21は、上記第1波長領域の少なくとも一部を含む第2波長領域を有する光を観察者22側に反射し、かつ、外光のうち上記第2波長領域以外の光を透過する。
【0036】
従って第1実施形態によれば、透明誘電体層21により、発光素子12から観察者22と反対方向に放射された光を観察者22側に反射させることができる。これにより、発光素子12の消費電力を小さくした場合でも、有機EL表示装置10の発光輝度を向上させることができる。
【0037】
また、透明誘電体層21は、外光を透過することができる。これにより、透過型の有機EL表示装置を実現できる。また、有機EL表示装置10の透過率が低下するのを抑えつつ、有機EL表示装置10の発光輝度を向上させることができる。
【0038】
[第2実施形態]
第2実施形態は、基板20に対して透明誘電体層21を第1実施形態と反対側に配置するようにしている。
【0039】
図8は、本発明の第2実施形態に係る有機EL表示装置10の断面図である。基板11上に設けられた発光素子12の構成は、第1実施形態と同じである。基板20の発光素子12と反対側には、透明誘電体層21が設けられる。透明誘電体層21の構成及び特性は、第1実施形態と同じである。
【0040】
図9は、第2実施形態に係る有機EL表示装置10の具体的な構成を示す断面図である。有機EL表示装置10の平面図は、
図6と同じである。
【0041】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、有機EL表示装置10の透過率が低下するのを抑えつつ、有機EL表示装置10の発光輝度を向上させることができる。
【0042】
[第3実施形態]
第3実施形態では、透明誘電体層21を、発光素子12が形成される基板11に配置するようにしている。すなわち、第3実施形態は、発光素子12を封止するための基板20側から光を取り出すトップエミッション構造を有する有機EL表示装置の構成例である。
【0043】
図10は、本発明の第3実施形態に係る有機EL表示装置10の断面図である。基板11上に設けられた発光素子12の構成は、第1実施形態と同じである。基板20は、接着材23によって基板11に接着され、封止層19を介して発光素子12を封止する。
【0044】
透明誘電体層21は、基板11の発光素子12と反対側に設けられる。透明誘電体層21の構成及び特性は、第1実施形態と同じである。観察者22は、基板20側から有機EL表示装置10を観察する。外光は、基板11側から有機EL表示装置10に入射する。
【0045】
第3実施形態においても、第1実施形態と同様に、有機EL表示装置10の透過率が低下するのを抑えつつ、有機EL表示装置10の発光輝度を向上させることができる。
【0046】
なお、上記各実施形態では、波長630nm近辺に放射輝度のピークを有する赤色光を放射する発光素子12を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、赤色光以外の色の光を放射する発光素子にも適用することが可能であることは勿論である。この場合は、発光素子が放射する単色光の波長領域の少なくとも一部を反射するように透明誘電体層21を構成する。
【0047】
また、上記各実施形態では、発光素子として有機EL素子を用いた表示装置を例に挙げて説明しているが、これに限定されるものではなく、有機EL素子以外の発光素子(例えば、LEDなど)を用いた表示装置にも適用可能である。
【0048】
また、上記各実施形態では、有機EL表示装置10をカメラのファインダーに適用した構成例を示している。しかし、これに限定されず、被写体、背景、及び画像などに、これらと異なる画像を重ねて表示する用途の様々な電子機器に、本実施形態の表示装置を適用することが可能である。
【0049】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で、構成要素を変形して具体化することが可能である。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、1つの実施形態に開示される複数の構成要素の適宜な組み合わせ、若しくは異なる実施形態に開示される構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を構成することができる。例えば、実施形態に開示される全構成要素から幾つかの構成要素が削除されても、発明が解決しようとする課題が解決でき、発明の効果が得られる場合には、これらの構成要素が削除された実施形態が発明として抽出されうる。