【文献】
Zbgniew Lubosny, Janusz W Bialek,Supervisory Control of a Wind Farm,IEEE TRANSACTIONS ON POWER SYSTEMS,米国,IEEE,2007年 8月 1日,Vol.22 No.3,pp.985-994
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
[1.第1実施形態]
[1−1.構成]
第1実施形態に係るウィンドファームの出力制御装置について、
図1を参照しつつ、詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係るウィンドファームの出力制御装置を示すブロック図である。
【0017】
本実施形態のウィンドファームは、n台の風力発電装置100(1〜n)、風力発電装置100の出力制御装置1、及び各風力発電装置100の出力を受電する系統3を備える。
【0018】
風力発電装置100は、風のエネルギーにより発電を行う発電装置である。出力制御装置1は、風力発電装置100の発電量の制御を行う制御装置である。風力発電装置100と出力制御装置1とは制御配線2とで接続されており、風力発電装置100は、出力制御装置1の制御量の指示に基づき発電量を制御する。
【0019】
各風力発電装置100は、電力配線4を介して系統3と接続される。風力発電装置100で発電した電力は、電力配線4を介して系統3に対して出力される。電力配線4と系統3とが接続する連系点には、供給電力データ検出部5が設けられる。供給電力データ検出部5では、電力配線4から系統3に供給される各種電気量の供給電力データを検出する。
【0020】
1.風力発電装置100の構成
風力発電装置100は、以下の構成を備えている。
(1)ピッチ角が可変であるブレード部101
(2)ブレード部101が受けた風により回転する回転軸を有するタービン部102
(3)タービン部102の回転軸の回転を交流電力に変換する発電部103
(4)発電部103で変換した交流電力を直流電力に変換するコンバータ部104
(5)コンバータ部104で変換した直流電力を交流電力に変換するインバータ部105
(6)ブレード部101のピッチ角を制御するピッチ角制御部106
(7)コンバータ部104及びインバータ部105での電力の変換を制御する直交変換制御部107
(8)風力発電装置100における有効電力出力Pw1…n、無効電力出力Qw1…n、ピッチ角βw1…n,角速度偏差Δω1…nを検出する発電装置データの検出部108
(9)風力発電装置100と電力配線4との連系点に設けられた昇圧変圧器109
【0021】
ブレード部101は、風のエネルギーを受けるブレード、ブレードの中心部に設けられたハブからなる。ブレードは、風の運動エネルギーを機械エネルギーに変換するために、所謂テーパー型の形状をしている。ブレードの根本部分は、ハブに取り付けられる。ハブには、ブレードの取り付け角度であるピッチ角βw1…nを、変調可能な構造を有する。
【0022】
ハブはタービン部102の回転軸と接続され、ブレードで変換した機械エネルギーにより、回転軸と回転させる。タービン部102は、回転軸の回転エネルギーを発電部103に対して伝達する。
【0023】
発電部103では、伝達された回転エネルギーにより交流電流を発電する。発電された交流電流は、コンバータ部104に出力される。コンバータ部104では、入力した交流電力を直流電力に変換する。この直流電力は、インバータ部105に出力される。インバータ部105では、入力した直流電流を商用系統と同じ周波数の交流電流に変換する。
【0024】
各風力発電装置100(1〜n)には、その風力発電装置100における有効電力出力Pw1…n、無効電力出力Qw1…n、ピッチ角βw1…n,角速度偏差Δω1…nを検出する発電装置データ検出部108が設けられる。この発電装置データ検出部108は、ブレード部101のピッチ角及び発電装置を制御するピッチ角制御部106、コンバータ部104及びインバータ部105での電力変換の制御を行う交直変換器制御部107と接続され、ピッチ角制御部106よりピッチ角βw1…n、角速度偏差Δω1…nを、交直変換器制御部107より有効電力出力Pw1…n、無効電力出力Qw1…nを検出するように構成される。
【0025】
インバータ部105の出力側には、昇圧変圧器109が設けられる。昇圧変圧器109は、風力発電装置100と電力配線4との連系点に設けられ、風力発電装置100(1〜n)の電圧を電力配線4側の電圧になるよう昇圧する。ウィンドファーム内の電力配線4は集約される。同様の変圧器は、集約した電力配線4と系統3との連系点にも設けられる。各連系点には、開閉器が設けられ、開閉器の開閉動作により風力発電装置100(1〜n)を電力配線4から、または、電力配線4を系統3から電気的に離接可能とする。
【0026】
各種電気量を検出する供給電力データ検出部5は、電力配線4と系統3との連系点に設けられる。供給電力データ検出部5では、連系点の有効電力Pwf、無効電力Qwf、電圧Vwf、周波数fを検出する。供給電力データ検出部5は、出力制御装置1と接続され、検出した有効電力Pwf、無効電力Qwf、電圧Vwf、周波数fをウィンドファームの出力制御装置1へ送信する。
【0027】
2.出力制御装置1の構成
出力制御装置1は、以下の構成を備える。
(1)ウィンドファーム全体の最大電力(以下、ポテンシャルとする)を算出するポテンシャル推定部11
(2)ポテンシャル推定部11で推定したウィンドファームの最大電力量であるポテンシャルPwf_poに基づいて、ウィンドファームにおける有効電力の制御量Pwf_r、及びウィンドファームにおける無効電力の制御量Qwf_rの制御量を演算する制御量演算部12
(3)前記制御量演算部12で演算した有効電力の制御量Pwf_r、及び無効電力の制御量Qwf_rを、各風力発電装置100の発電量の余力に基づいて分配する制御量分配部13
(4)前記制御量演算部12に対して、ユーザが有効電力目標値Pwf_ref、及び無効電力目標値Qwf_refを入力するための入力部14からのインターフェース
(5)前記制御量演算部12における有効電力目標値Pwf_ref、及び無効電力目標値Qwf_refの設定を行う系統運用システム15からのインターフェース
【0028】
(ポテンシャル推定部11について)
図2示す様に、ポテンシャル推定部11は、風力発電装置100(1〜n)の有効電力出力Pw1…nとピッチ角βw1…nから、ウィンドファームが出力可能な最大電力(以降、ポテンシャルと称す)Pwf_poを推定する。
【0029】
ポテンシャル推定部11は、各風力発電装置100の検出部108に接続され、各風力発電装置100(1〜n)の有効電力出力Pw1…nとピッチ角βw1…nとが入力される。ポテンシャルPw1*〜Pwn*は、風速と出力の特性関数として推定することができる。風力発電装置100の出力は、
図3に示す様に、定格風速未満では風速の3乗で上昇する。風速が定格風速以上となるとピッチ各βw1…nを制御し、余分な風速を逃がして出力一定運転を行う。さらに、風速がカットアウト風速以上では、強風対策として安全停止する。
【0030】
ポテンシャル推定部11では、推定した各風力発電装置100(1〜n)のポテンシャルPw1*〜Pwn*の和を算出することでウィンドファーム全体のポテンシャルPwf_poを推定する。
【0031】
(制御量演算部12について)
制御量演算部12では、各風力発電装置100(1〜n)の出力可能なポテンシャルPw1*〜Pwn*の合計であるウィンドファーム全体のポテンシャルPwf_poを超えないようなウィンドファーム出力の制御量を演算する。ウィンドファーム出力の制御量は、有効電力の制御量Pwf_r、及び無効電力の制御量Qwf_rとして演算される。
【0032】
制御量演算部12は、検出部108(1〜n)、供給電力データ検出部5、及びポテンシャル推定部11に接続されている。制御量演算部12には、検出部108から各風力発電装置100(1〜n)における有効電力出力Pw1…n、無効電力出力Qw1…n、ピッチ角βw1…n,角速度偏差Δω1…n、供給電力データ検出部5から連系点の有効電力Pwf、無効電力Qwf、電圧Vwf、周波数f、及び、ポテンシャル推定部11からポテンシャルPwf_poが入力される。
【0033】
制御量演算部12は、有効電力の制御量Pwf_rの演算を行う有効電力制御量演算部121と、無効電力の制御量Qwf_rの演算を行う無効電力の制御演算部122とを備える。有効電力制御量演算部121と、無効電力制御量演算部122は、制御タイミングの調整を行う制御タイミング調整部123,124、制御量の演算を行う制御量演算部125,126とをそれぞれ備える。
【0034】
有効電力制御量演算部121では、ウィンドファームの有効電力目標値Pwf_refと、ウィンドファームの有効電力Pwfと、ウィンドファームのポテンシャルPwf_poとに基づいて、ウィンドファームにおける有効電力の制御量Pwf_rの演算を行う。有効電力目標値Pwf_refは、予め設定された値に限らず、種々の条件に基づいて算出しても良い。また、制御量演算部12に接続する入力部14や系統運用システム15からの目標値であってもよい。ウィンドファームの有効電力Pwfは、供給電力データ検出部5で検出された値である。
【0035】
有効電力制御量演算部121は、制御タイミング調整部123と、制御量演算部125とを備える。
【0036】
制御タイミング調整部123は、有効電力の制御量Pwf_rの制御タイミングの調整を行う。制御タイミング調整部123は、ウィンドファームの有効電力目標値Pwf_refと、ウィンドファームの有効電力Pwfとの差分である偏差ΔPwf1に対してゲインの補償、遅れ位相補償、一次遅れ処理、アンチハント処理を行い、遅延成分の補償を行った偏差ΔPwf2を求める。
【0037】
制御タイミング調整部123は、偏差ΔPwf1の遅延成分の補償を行い制御タイミングを調整するために
図4に示す様な以下の構成を備える。
(1)ゲインの補償を行うゲイン調整部127a
(2)遅れ位相の補償を行う第1の遅れ位相補償部127b1
(3)遅れ位相の補償を行う第2の遅れ位相補償部127b2
(4)一次遅れ処理を行う第1の一次遅れ処理部127c1
(5)一次遅れ処理を行う第2の一次遅れ処理部127c2
(6)アンチハント部127d
制御タイミング調整部123は、ゲイン調整部127a、第1の遅れ位相補償部127b1、第2の遅れ位相補償部127b2、第1の一次遅れ処理部127c1、第2の一次遅れ処理部127c2を直列に用いている。
【0038】
ゲイン調整部127aは、入力する各制御部で演算した制御量のゲインを増減させ、安定度を上げ定常特性を向上させる。偏差ΔPwf1の遅延成分の補償を行う場合には補償ゲインK1pにより、補償を行う。
【0039】
第1の遅れ位相補償部127b1は、ゲイン調整部127aでゲインの補償を行った制御量の位相の補償を行う。偏差ΔPwf1に対する位相の遅れ補償は、以下の式(1)で表される伝達関数Gp1(s)により補償を行う。T1p及びT2pは、第1の遅れ位相の時定数である。
[式1]
【0040】
第2の遅れ位相補償部127b2は、第1の遅れ位相補償部127b1で遅れ位相の補償を行った偏差ΔPwf1に対して、さらに位相の補償を行う。偏差ΔPwf1に対する位相の遅れ補償は、以下の式(2)で表される伝達関数Gp2(s)により補償を行う。T3p及びT4pは、第2の遅れ位相の時定数である。
[式2]
【0041】
第1の一次遅れ処理部127c1は、第2の遅れ位相補償部で遅れ位相の補償を行った偏差ΔPwf1に対して、偏差ΔPwf1における一次遅れの処理を行う。偏差ΔPwf1に対する一次遅れ処理は、以下の式(3)で表される伝達関数Gp3(s)により補償を行う。T5pは、第1の一次遅れ部の時定数である。
[式3]
【0042】
第2の一次遅れ処理部127c2は、第1の一次遅れ処理部127c1で一次遅れ処理を行った偏差ΔPwf1に対して、再び偏差ΔPwf1における一次遅れの処理を行う。偏差ΔPwf1に対する一次遅れ処理は、以下の式(4)で表される伝達関数Gp4(s)により補償を行う。T6pは、第2の一次遅れ部の時定数である。
[式4]
【0043】
系統間には、複数の風力発電装置100が接続されており、風力発電装置100の出力が他の風力発電装置100の出力装置の出力に影響を与える。この影響を受けたデータに基づき制御量の演算を行うと、演算結果である制御量及び制御タイミングに系統間の相互作用による振動の影響が現れる。アンチハント部では、第2の一次遅れ処理を行った偏差ΔPwf1に対して、偏差ΔPwf1に含まれる振動の影響による要素の抑制を行う。偏差ΔPwf1に含まれる振動の影響による要素の抑制は、以下の式(5)で表される伝達関数Gp5(s)により行われる。K2pはアンチハントのゲインであり、T7pはアンチハントの時定数である。
[式5]
【0044】
制御量演算部125は、遅延成分の補償を行ったΔPwf2を基に、ウィンドファーム出力の有効電力目標値Pwf_refに追従するような有効電力制御量Pwf_rを演算する。有効電力目標値Pwf_refに追従する有効電力制御量Pwf_rは、比例ゲインKPp1と積分ゲインKlp1とするPI制御により求めることができる。これにより、ウィンドファーム出力の有効電力Pwfが、目標値Pwf_refに近づいたら、制御量Pwf_rを小さくすることができ、制御量Pwf_rの変化を抑えることができる。また、定常偏差をなくすことができ有効電力Pwfを目標値Pwf_refに近づけることができる。
【0045】
また、制御量演算部125は、有効電力制御量Pwf_rが予め設定されたウィンドファーム有効電力出力の最小最大の範囲内に入るようリミッタを備えている。無効電力出力最大は、ポテンシャル推定部11で得たポテンシャルPwf_poを設定する。このため、有効電力制御量Pwf_rは、ポテンシャルPwf_po未満の値となる。
【0046】
無効電力制御量演算部122は、制御タイミング調整部124と、制御量演算部126とを備える。
【0047】
制御タイミング調整部124は、無効電力の制御量Qwf_rのタイミングの調整を行う。制御タイミング調整部124には、ウィンドファームの無効電力目標値Qwf_refと、ウィンドファームの無効電力Qwfとの差分であるΔQwfが入力する。制御タイミング調整部124は、ΔQwf1に対してゲインの調整、遅れ位相補償、一次遅れ処理、アンチハント処理を行い、遅延成分の補償を行ったΔPwf2を求める。
【0048】
図4に示す様に制御タイミング調整部124は、制御タイミング調整部123と同様の構成を有する。制御タイミング調整部123とは、ゲイン調整部129a、第1の遅れ位相補償部129b1、第2の遅れ位相補償部129b2、第1の一次遅れ処理部129c1、第2の一次遅れ処理部129c2、アンチハント部129dにおけるゲイン及び時定数が異なる。
【0049】
ゲイン調整部129aのゲインはK1qである。また、第1の遅れ位相補償部129b1の伝達関数は以下の式(6)で表され、また、第2の遅れ位相補償部129b2の伝達関数は以下の式(7)で表される。T1q及びT2qは、第1の遅れ位相の時定数、ならびに、T3q及びT4qは第2の遅れ位相の時定数である。
[式6]
[式7]
【0050】
第1の一次遅れ処理部129c1、第2の一次遅れ処理部129c2、及びアンチハント部129dの伝達関数は、以下の式(8)(9)(10)で表される。T5qは、第1の一次遅れの時定数、T6は第2の一次遅れの時定数、ならびに、K2qはアンチハントのゲインであり、T7qはアンチハントの時定数である。
[式8]
[式9]
[式10]
【0051】
制御量演算部126は、遅延成分の補償を行った偏差ΔQwf2を基に、ウィンドファーム出力の無効電力目標値Qwf_refに追従するような無効電力制御量Qwf_rを演算する。無効電力目標値Qwf_refに追従する無効電力制御量Qwf_rは、比例ゲインKPq1と積分ゲインKlq1とするPI制御により求めることができる。この際、無効電力制御量Qwf_rが予め設定されたウィンドファーム無効電力の最小最大±Qwf_limitの範囲内に入るようリミッタを備えている。無効電力の最小最大値±Qwf_limitは、風力発電装置100(1〜n)の定格の合計値Swf_VAと有効電力目標値Pwf_refから以下の式(11)で算出される。
[式11]
【0052】
以上のような構成の有効電力制御量演算部121で算出した有効電力の制御量Pwf_r、及び無効電力制御量演算部122で算出した無効電力の制御量Qwf_rは、制御量分配部13に対して出力される。
【0053】
(制御量分配部13について)
制御量分配部13は、有効電力の制御量Pwf_r及び無効電力の制御量Qwf_rを制御量毎に異なる分配ゲインに基づき分配する。分配した制御量は、各風力発電装置100(1〜n)に対して伝送される。
【0054】
制御量分配部13は、有効電力の制御量Pwf_rをウィンドファームの風力発電装置100(1〜n)の内、制御量の分配が行える風力発電装置100(1〜N)に対してのみ制御量の分配を行う。Nは、ウィンドファーム内の風力発電装置100の数から、制御量の分配を行えない風力発電装置100の数を引いた値である。
図5に示す様に、制御量分配部13には、有効電力の制御量Pwf_r、分配可能な風力発電装置の台数N、各風力発電装置のポテンシャルPw1〜n*、各風力発電装置の有効電力出力Pw1〜n、各風力発電装置100(1〜n)への分配可否信号が入力する。
【0055】
制御量分配部13では、有効電力の制御量Pwf_rを分配するための分配ゲインGdp1〜nを設定する。分配ゲインGdp1〜nは、各風力発電装置のポテンシャルPw1〜n*と、各風力発電装置の有効電力出力Pw1〜nとの差分を考慮して算出され、分配ゲインGdp1〜nは、余裕のある風力発電装置への分配ゲインを上げ、一方、余裕のない風力発電装置の分配ゲインを下げる。分配ゲインGdp1〜nの合計は、分配可能な風力発電装置の数Nとなる。分配対象外の風力発電装置の、有効電力の制御量は0とする。
【0056】
また、
図6に示す様に、制御量分配部13は、無効電力の制御量Qwf_rの分配する分配ゲインGdq1〜nを設定するために、有効電力の制御量Qwf_r、分配可能な風力発電装置の台数N、各風力発電装置の定格容量Sw_r1〜n、各風力発電装置の無効電力出力Qw1〜n、各風力発電装置の有効電力出力Pw1〜n、各風力発電装置100(1〜n)への分配可否信号が入力する。
【0057】
分配ゲインGdq1〜nは、各風力発電装置の定格容量Swr1〜nと、皮相電力Swr1〜nとの差分を考慮して算出される。分配ゲインGdq1〜nは、無効電力出力に余裕がある風力発電装置への分配ゲインを上げ、一方、余裕のない風力発電装置の分配ゲインを下げる。各風力発電装置の皮相電力Swr1〜nは、各風力発電装置の有効電力の出力Pw1〜nと、無効電力の出力Qw1〜nとから算出する。分配ゲインGdq1〜nの合計は、分配可能な風力発電装置の数Nとなるように制御する。分配対象外の風力発電装置の、無効電力の制御量は0とする。
【0058】
[1−2.作用]
以上のような構成を有する本実施形態のウィンドファームの出力制御装置では、ウィンドファームの出力点で検出した検出データと、制御目標値とに基づいてウィンドファームの全体の制御量を決定する。そして、ウィンドファームの全体の制御量に基づいて、各風力発電装置100(1〜n)の制御量の演算を行う。ウィンドファームの全体の制御量の演算の際には、制御タイミングの調整を行う。以下では、ウィンドファームの全体の制御量の演算、制御タイミングの調整、制御量の分配に分けて説明する。
【0059】
(ウィンドファームの全体の制御量の演算について)
ウィンドファームの出力制御装置では、各風力発電装置100(1〜n)の出力の制御を、ウィンドファーム全体の制御量に基づいて行う。
【0060】
(1)ウィンドファームの有効電力Pwf_rの制御量の演算
ウィンドファームの有効電力の制御量Pwf_rの演算は、ウィンドファームの有効電力目標値Pwf_refと、ウィンドファームの有効電力Pwfと、ポテンシャルPwf_poとにより行う。
図7は、有効電力の制御量Pwf_rの演算の工程を示したフローチャートであり、
図8は、有効電力の制御量Pwf_rの演算を行う有効電力制御量演算部121の概略図である。
【0061】
ウィンドファームの全体の有効電力の制御量Pwfの演算においては、初めに有効電力目標値Pwf_refの設定を行う。有効電力目標値Pwf_refは、予め設定された値や、入力部14や系統運用システム15からの目標値により設定される(STEP101)。
【0062】
次に、ウィンドファーム全体の有効電力Pwfを検出する。有効電力Pwfは、供給電力データ検出部5が検出した連系点の有効電力Pwfを使用する(STEP102)。
【0063】
さらに、ウィンドファームの有効電力Pwfと有効電力目標値Pwf_refとの偏差ΔPwf1に対して、ゲイン調整、遅れ位相補償、一次遅れ処理、アンチハントを行い偏差ΔPwf1に含まれる遅延成分の補償を行う(STEP103)。
【0064】
遅延成分の補償を行った偏差ΔPwf2に基づいて、ウィンドファーム出力の有効電力目標値Pwf_refに追従するような有効電力制御量Pwf_rを演算する。有効電力目標値Pwf_refに追従する有効電力制御量Pwf_rは、比例ゲインKPp1と積分ゲインKlp1とするPI制御により求めることができる。この際、有効電力制御量Pwf_rが予め設定されたウィンドファーム有効電力出力の最小最大の範囲内に入るようリミッタを備えている。無効電力出力最大は、例えばポテンシャル推定部11で得たポテンシャルPwf_poを設定する。(STEP104)。
【0065】
以上の
図7の手順に示すように、ウィンドファームの有効電力Pwfと有効電力目標値Pwf_refとから有効電力制御量Pwf_rが演算される。
【0066】
(2)ウィンドファームの無効電力の制御量Qwf_rの演算
ウィンドファームの無効電力の制御量Qwf_rの演算は、ウィンドファームの無効電力目標値Qwf_refと、ウィンドファームの無効電力Qwfと、無効電力の最小最大値±Qwf_limitとにより行う。
図9は、有効電力制御におけるフローチャートであり、
図10は、無効電力の制御量Qwf_rの演算を行う無効電力制御量演算部122の概略図である。
【0067】
ウィンドファームの全体の無効電力の制御量Qwf_rの演算においては、初めに無効電力目標値Qwf_refの設定を行う。無効電力目標値Qwf_refは、予め設定された値や、入力部14や系統運用システム15からの目標値により設定される(STEP111)。
【0068】
次に、ウィンドファーム全体の無効電力Qwfを検出する。無効電力Qwfは、供給電力データ検出部5が検出した連系点の無効電力Qwfを使用する(STEP112)。
【0069】
さらに、ウィンドファームの無効電力Qwfと無効電力目標値Qwf_refとの偏差ΔQwf1に対して、ゲイン調整、遅れ位相補償、一次遅れ処理、アンチハントを行い偏差Qwf1に含まれる遅延成分の補償を行う(STEP113)。
【0070】
遅延成分の補償を行った偏差ΔQwf2に基づいて、ウィンドファーム出力の無効電力目標値Qwf_refに追従するような無効電力制御量Qwf_rを演算する。無効電力目標値Qwf_refに追従する無効電力制御量Qwf_rは、比例ゲインKPq1と積分ゲインKlq1とするPI制御により求めることができる。この際、無効電力制御量Qwf_rが予め設定されたウィンドファーム有効電力出力の最小最大の範囲内に入るようリミッタを備えている。無効電力出力最大値±Qwf_limitは、ポテンシャルPwf_poを超えない有効電力目標値Pwf_refとに基づいて算出される。(STEP114)。
【0071】
以上の
図9の手順に示すように、ウィンドファームの無効電力Qwfと無効電力目標値Qwf_refとから無効電力制御量Qwf_rが演算される。
【0072】
(制御タイミングの調整について)
ウィンドファームの制御量における制御タイミングの調整は、有効電力制御量及び無効電力制御量の演算に合わせて行う。偏差ΔPwf1に含まれる遅延成分及び偏差ΔQwf1に含まれる遅延成分を補償することで、有効電力の制御量Pwf_r、及び無効電力の制御量Qwf_rにおける制御のタイミングの調整を行う。
【0073】
制御量演算部12の各制御部は、風により時々刻々と変動する各風力発電装置100(1〜100)の出力可能なポテンシャルの合計を超えないようウィンドファームの制御量の演算している。制御量演算部12での制御量の演算に必要なデータは、連結点に設けられた供給電力データ検出部5から制御量演算部12に伝送されている。これらのデータを伝送する際には、伝送遅れが生じる。また、制御量演算部12での制御量を演算することで発生する遅延も含まれる。
【0074】
制御タイミング調整部123,124では、制御量の演算結果に含まれる伝送遅れや、演算の際に生じた遅延の分の補償を行い、制御タイミングの調整を行う。これにより、制御量に基づく制御を、演算時に想定したタイミングで行う。
【0075】
図11は、有効電力の制御量を演算する場合の制御タイミング調整の工程を示すフローチャートである。遅延成分の補償は、初めに、ウィンドファームの有効電力Pwfと有効電力目標値Pwf_refとの偏差ΔPwfを算出する(STEP121)。そして、算出した偏差ΔPwfのゲインの調整を行う(STEP122)。
【0076】
ゲインを行った偏差ΔPwf1の遅れ位相の補償を行う。この位相遅れ補償は、位相遅れの原因が2つ考えられる場合には、それぞれの要因による位相遅れを補償する時定数を有する伝達関数を用いて補償を行う(STEP123)。
【0077】
次に、位相の補償を行った偏差ΔPwf1の一次遅れ処理を行う(STEP124)。一次遅れ処理も、一次遅れ要素が2つ考えられる場合には、それぞれの一次遅れ要素に対応する時定数を有する伝達関数を用いて補償を行う(STEP125,126)。そして、一次遅れ処理を行った偏差ΔPwfにおける系統間の相互作用による振動を行う(STEP127)。そして、アンチハントを行った偏差ΔPwfにおける振動の影響が一定範囲内か判定する(STEP127)。一定範囲内であれば、偏差ΔPwf1の遅延成分の補償を終了する。一定範囲外であれば、ゲイン調整、遅れ位相補償、一次遅れ処理、アンチハントの伝達関数を調整し、再度、偏差ΔPwf1の遅延成分の補償を行う。
【0078】
以上の
図11の手順に示すように、ウィンドファームの有効電力Pwfと有効電力目標値Pwf_refとの偏差ΔPwf1における遅延成分を除去することで、制御量Pwf_rの制御タイミングの調整を行う。
【0079】
以上では、有効電力の制御量Pwf_rの制御タイミングの調整について説明したが、無効電力の制御量Qwf_rの制御タイミングの調整も、偏差ΔQwf1における遅延成分を補償するゲインや伝達関数を使用することで、同様の手順で行うことができる。
【0080】
(制御量の分配について)
本実施形態のウィンドファームの出力制御装置では、制御タイミングの調整を行った電力制御量Pwf_r、及びQwf_rを、各風力発電装置100(1〜n)に分配することで、各風力発電装置100(1〜n)における制御量Pref_1〜n及びQref_1〜nを決定する。制御量の分配は、電力制御量Pwf_r、及びQwf_rに対して、それぞれ異なる分配ゲインを算出し、その分配ゲインに基づいて決定する。
【0081】
(1)ウィンドファームの有効電力の制御量Pwf_rの分配について
図12を用いて本実施形態における制御量分配部13の動作を説明する。制御量分配部13は、制御量演算部12で決定した有効電力の制御量Pwf_rを、各風力発電装置100(1〜n)に分配するための分配ゲインGdp1〜nを決定する。分配ゲインGdp1〜nは、各風力発電装置100(1〜n)の発電量の余力に基づいて決定する。制御量分配部13では、決定した分配ゲインGdp1〜nに基づいて、風力発電装置100(1〜n)毎の制御量Pref_1〜nを調整し、その制御量Pref_1〜nを制御配線2を介して各風力発電装置100に対して出力する。各風力発電装置100では、制御量Pref_1〜nに基づいて発電を行う。
【0082】
制御量分配部13での分配の手順は、次の通りである。
各風力発電装置100(1〜n)における発電装置データ検出部108の検出値(Pinv1,…,Pinvn,β1,…,βn,Δω1,…,Δωn)から推定して得た各風力発電装置100のポテンシャルPw1*〜Pw n*と各風力発電装置100(1〜n)の有効電力値(Pw1,…,Pwn)との差を求める。瞬動予備力についても考慮する場合は、さらに瞬動予備力を差し引く。
【0083】
風力発電装置100のなかで、差分が大きな風力発電装置100(1〜n)について、制御量分配部13は、有効電力出力を増やす指令を送信する。この出力は、予め設定された加速ゲインKdpに基づく。分配ゲインの合計(Gdp1+Gdp2+・・・+Gdpn)はnになるように制御する。nは、風力発電装置の数である。Tdpは制御周期、ΔGdp_minとΔGdp_maxは、分配ゲインの上下限制約である。ここで、Kdpは分配する大きさを調整する係数である。ΔGdp_maxは最大分配ゲインとΔGdp_minは最小分配ゲインは、各風力発電装置100へ与える分配ゲインがある一定以上大きくなったり、小さくなったりしすぎないように設定する。
【0084】
具体的には、次のような処理を行う。
(1)風力発電装置100のポテンシャルPw1*〜Pw n*から各風力発電装置100の出力の有効電力値(Pw1,…,Pwn)を差し引き、さらに瞬動予備力を差し引き、各風力発電装置100の出力余力を求める。
(2)制御周期ごとに各風力発電装置100の余力の積分を全て合計し、ウィンドファーム内の風力発電装置100の台数nで除した結果を、各風力発電装置100の余力から差し引くことで、余力の大きな風力発電装置100へ多くの制御量を負担させるゲインを決定する。
(3)この結果を(1)に加えて分配ゲインGdp1〜nとする。このとき、分配ゲインGdp1〜nの合計は、風力発電装置100の全台数nとなる。
(4)なお、ΔGdp_maxとΔGdp_minに制約されたとき、分配ゲインがnとなるようにするために、1を加えるステップ(3)の前にステップ(2)の結果を差し引いておく。
【0085】
制御量分配部13では、決定した分配ゲインGdp1〜nと、制御量演算部12で決定した制御量Pwf_rに基づいて、各風力発電装置100(1〜n)の制御量Pref_1〜nを決定する。各風力発電装置100(1〜n)は、分配された制御量Pref_1〜nに基づき、ピッチ角制御部106と交直変換器制御部107によって出力を制御する。ピッチ角制御部106では、風力発電装置100のブレード部101のピッチ角を変化させることによって風のエネルギーを逃がし、有効電力出力を変化させる。交直変換器制御部107では発電装置の出力をコンバータ部104でいったん直流へ変換し、インバータ部105で有効電力出力と無効電力出力を制御する。
【0086】
(2)ウィンドファームの無効電力の制御量Qwf_rの分配について
図13を用いて本実施形態における制御量分配部13の動作を説明する。制御量分配部13は、制御量演算部12で決定した無効電力の制御量Qwf_rを、各風力発電装置100(1〜n)に分配するための分配ゲインGdq1〜nを決定する。分配ゲインGdq1〜nは、各風力発電装置100(1〜n)の発電量の余力に基づいて決定する。制御量分配部13では、決定した分配ゲインGdq1〜nに基づいて、風力発電装置100(1〜n)毎の制御量Qref_1〜nを調整し、その制御量Qref_1〜nを制御配線2を介して各風力発電装置100に対して出力する。各風力発電装置100では、制御量Qref_1〜nに基づいて発電を行う。
【0087】
制御量分配部13での分配の手順は、次の通りである。
各風力発電装置100(1〜n)の有効電力検出値(Pw1,…,Pwn)と、無効電力検出値(Qw1,…,Qwn)から出力可能な無効電力を求める。出力可能な無効電力と風力発電装置100の定格容量(Swr1〜n)との差が大きな風力発電装置100の無効電力出力指令を予め設定された加速ゲインKdqで増やす。分配ゲインの合計(Gdq1+Gdq2+・・・+Gdqn)はnになるように制御する。Tdqは制御周期、ΔGdq_minとΔGdq_maxは、分配ゲインの上下限制約である。ここで、Kdqは、Kdpと同様に分配する大きさを調整する係数である。ΔGdq_maxは分配ゲインの最大値であり、ΔGdq_minは分配ゲインの最小値である。このΔGdq_maxとΔGdq_minとの間に分配ゲインが収まるように、各風力発電装置100(1〜n)へ与える分配ゲインGdq1〜nを設定する。
【0088】
具体的には、
(1)風力発電装置100(1〜n)の有効電力検出値(Pw1,…,Pwn)と、無効電力検出値(Qw1,…,Qwn)から出力可能な無効電力を求め、風力発電装置100の定格容量(Swr1〜n)を差し引く。
(2)制御周期ごとに各風力発電装置100の無効電力の積分を全て合計し、風力発電装置100の台数で除した結果を各風力発電装置100の無効電力から差し引くことで、無効電力の小さな風力発電装置100の無効電力制御量を負担させるゲインを決定する。
(3)この結果を(1)に加えて分配ゲインGdq1〜nとする。このとき、分配ゲインの合計Gdq1〜nは、風力発電装置100の全台数nとなる。
(4)ΔGdq_maxとΔGdq_minに制約されたとき、分配ゲインがnとなるようにするために、1を加えるステップ(3)の前にステップ(2)の結果を差し引いておく。
【0089】
以上により、その時の風の状態に応じて各風力発電装置100が出力可能な範囲で効率よく、ウィンドファーム無効電力出力を目標値に追従させることが可能となる。
【0090】
[1−3.効果]
以上のような構成及び作用を有する本実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
(1)有効電力及び無効電力の制御量の演算結果に含まれるデータの伝送遅れや、演算による遅延成分を補償し、制御タイミングの調整を行うことができる。遅延成分について考慮がされていない制御量に基づいて制御を行うと、伝送遅れで生じた遅延や演算の際に生じた遅延の分、制御タイミングがずれることとなる。その場合、時刻T1における制御量を制御量A1と算出し、その制御量A1に基づいて時刻T1に制御を行おうとした場合、実際には時刻T1で制御を行うことができず、遅延の分遅れた時刻T2に制御量A1で制御を行うこととなる。
【0091】
そのため、時刻T1と時刻T2で風の条件が異なっている場合は、制御量Aで制御を行ったとしても適正な制御を行うことができず、制御過多や制御不足が起る。特に、制御量が不足する場合には、制御後の出力値が一定とならずハンチングしたり、許容値を超えるオーバーシュートを起こす可能性もある。
【0092】
本実施形態によれば、制御量の演算結果に含まれる伝送遅れで生じた遅延や演算の際に生じた遅延の分の補償を行い、制御タイミングの調整を行う。これにより、演算した制御量に基づく制御を、演算時に想定したタイミングで行うことが可能となる。
【0093】
(2)本実施形態によれば、演算した制御量に基づく制御を、演算時に想定したタイミングで行うことができ、各風力発電装置100の出力可能な電力を超えない範囲で、ウィンドファームの出力量を、その時の風の状態に応じて各風力発電装置100が出力可能な範囲で制御量を分配し、ウィンドファーム全体として効率の良い運転が可能となる。
【0094】
(3)ウィンドファーム有効電力出力を目標値に追従させることによって、風の変動抑制すること、計画運転を行うこと、系統運用システムからの指令を受けて系統周波数調整に寄与することなどの効果がある。
【0095】
(4)本実施形態では、制御タイミング調整部123,124において、偏差ΔPwf1及びΔQwf1に対して、ゲイン調整、遅れ位相補償、一次遅れ処理、アンチハントを行うことで遅延成分の補償を行ったが、いずれかの処理のみで遅延成分の補償を行うこともできる。また、ゲイン調整、遅れ位相補償、一次遅れ処理、アンチハントを行う回数についても自由に設定することができる。すなわち、位相の遅れの原因となる要素が複数ある場合には、その数に合わせて遅れ位相補償を行っても良い。これにより、位相遅れの原因となる要素に合わせた遅延成分の補償を行うことが可能となる。
【0096】
(5)制御タイミング調整部123,124において、偏差ΔPwf1及びΔQwf1に対して、遅延成分の補償を行ったが、ウィンドファームの有効電力Pwf、及びウィンドファームの有効電力目標値Pwf_refごとに遅延成分の補償をしても良い。これにより、遅延を発生させる要因を限定しやすくさせることができるため、ゲイン調整、遅れ位相補償、一次遅れ処理における伝達関数を設定しやすくすることができる。
【0097】
(6)本実施形態は、出力制御装置1を制御するコンピュータをプログラムで制御することでも実現できる。この場合のハードウェアやプログラムの実現態様は各種変更可能である。例えば、出力制御装置1には、プログラムを記憶するための記憶部を備え、その記憶部にアプリケーションプログラム(以下、単に、アプリと呼ぶ)をインストールすることを可能とする。このアプリにより、有効電力の制御量Pwf_r、無効電力の制御量Qwf_rの演算、及び、各制御量に含まれる遅延成分の補償を行う。これらの処理に必要な設定、演算式、パラメータ等は、アプリに含まれ、これらをあらかじめ記憶部に記憶しておく。この記憶部としては、内蔵の若しくはリムーバブルなメモリを使用することができる。また、本実施形態は、上記のようなプログラム、そのようなプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記憶媒体としても把握できる。
【0098】
[2.第2実施形態]
[2−1.構成]
ウィンドファームの出力制御装置の第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態における有効電力目標値Pwf_ref、及び無効電力目標値Qwf_refの設定方法を変更したものである。本実施形態では、有効電力目標値Pwf_refや有効電力目標値Qwf_refを、風力発電装置100(1〜n)で検出したデータや、ウィンドファームの連結点で検出したデータに基づいて算出する。
図14は、本実施形態に係るウィンドファームの出力制御装置を示すブロック図である。なお、第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0099】
図14に示す様に、本実施形態の有効電力制御量演算部121は、周波数制御部130、瞬動予備力保持制御部131、出力変化速度保持制御部132とを更に備える。
【0100】
周波数制御部130では、ウィンドファーム出力の連結点における周波数の目標値f_refと、ウィンドファーム出力の連結点における周波数fとの周波数の偏差Δfに基づいて、周波数変動が一定範囲内に収まるようなウィンドファーム出力の有効電力目標値Pwf_ref1を演算する。
【0101】
瞬動予備力保持制御部131は、ウィンドファームの出力の有効電力の目標値Pwf_refに、目標値Psr_refの瞬動予備力を保持させるために必要なウィンドファーム出力の有効電力目標値Pwf_ref2を演算する。
【0102】
瞬動予備力保持制御部132は、周波数制御部130で演算した有効電力Pwf_ref1と、瞬動予備力保持制御部131で演算した有効電力Pwf_ref2とを加算した有効電力Pwf_ref3における時間Tdの刻みの出力変化速度が、予め設定した範囲±DPT_refを超過しないよう制御を行う。瞬動予備力保持制御部132は、出力変化速度を保持した有効電力目標値Pwf_ref3を有効電力制御の目標値Pwf_refとする。
【0103】
図13に示す様に、本実施形態の無効電力制御量演算部122は、定無効電力制御部133、定皮相電力制御部134、定力率制御部135及び定電圧制御部136とを更に備える。無効電力制御量演算部122は、無効電力目標値制御量Qwf_refを、定無効電力制御部133、定皮相電力制御部134及び定力率制御部135でのいずれかの演算結果に基づき決定する。
【0104】
定無効電力制御部133は、予め設定された目標値Qwf_ref0を入力し、無効電力の目標値目標値Qwf_ref0とする。
【0105】
定皮相電力制御部134は、有効電力目標値Pwf_refと皮相電力目標値SwfVA_refから、式(12)によって無効電力目標値Qwf_ref1の算出を行う。
[式12]
【0106】
定力率制御部135は、有効電力目標値Pwf_refと力率目標値Pf_refとから式(13)により無効電力目標値Qwf_ref2の算出を行う。
[式13]
【0107】
無効電力制御量演算部122は、無効電力目標値Qwf_ref0〜2のいずれかを選択し、無効電力目標値Qwf_refとする。
【0108】
また、定電圧制御部136は、連系点におけるウィンドファーム電圧目標値Vwf_refと検出値Vwfとの偏差ΔVwfに基づいて、ウィンドファーム出力の無効電力Qwfが一定範囲に収まるような無効電力目標値Qwf_r1を演算する。
【0109】
[2−2.作用]
以上のような構成を有する本実施形態のウィンドファームの出力制御装置では、ウィンドファームの出力点で検出した検出データと、風力発電装置100(1〜n)で検出したデータとに基づいてウィンドファームの全体の制御量を演算する。このウィンドファームの全体の制御量の演算の際には、前記実施形態と同様に、遅延成分の補償を行うことで制御タイミングの調整を行う。以下では、ウィンドファームの全体の制御量の演算について説明する。
【0110】
(ウィンドファームの全体の制御量の演算について)
(1)ウィンドファームの有効電力の目標値Pwf_refの設定
ウィンドファームの全体の有効電力の目標値Pwf_refは、周波数制御部130、瞬動予備力保持制御部131、出力変化速度保持制御部132での演算結果により設定する。
【0111】
周波数制御部130の動作を説明する。
図15に示す様に、周波数制御部130は、ウィンドファーム出力の連結点における周波数の目標値f_refと、ウィンドファーム出力の連結点における周波数fとの周波数の偏差Δfを算出する。この偏差Δfに対して、Aを上限、Bを下限とする不感帯を設定する。偏差Δfが不感帯を超える大きさの場合には、その偏差Δfと、調定率Kgに基づき、偏差Δfを解消するのに必要なウィンドファーム出力の有効電力Pwf_ref1を演算する。この調定率Kgは、予め設定された定数である。
【0112】
偏差Δfを解消するために必要な有効電力Pwf_ref1の演算には、比例ゲインKfと、積分ゲインKf1を用いたPI制御を用いることができる。また、有効電力Pwf_ref1が、周波数制御の制御上限FC_maxと、周波数制御の制御下限FC_minの間となるように演算する。
【0113】
瞬動予備力保持制御部131の動作を説明する。瞬動予備力保持制御131は、ウィンドファーム内の各風力発電装置100(1〜n)のポテンシャルPw1〜n*を算出し、そのポテンシャルPw1〜n*の和を算出することでウィンドファーム全体のポテンシャルPwf_poを算出する。次に、ウィンドファーム全体のポテンシャルPwf_poから予め設定されたウィンドファームの瞬動予備力Psr_refを差し引き、有効電力目標値Pwf_refを算出する。さらに、有効電力目標値Pwf_refが、予め設定されたウィンドファームの最小最大Pwf_limit_minとPwf_limit_maxとなるように演算する。
【0114】
出力変化速度保持制御部132の動作を説明する。出力変化速度保持制御部132は、有効電力Pwf_ref1と、有効電力Pwf_ref2とを加算した有効電力Pwf_ref3より有効電力の目標値Pwf_refの設定を行う。
【0115】
出力変化速度保持制御部132は、有効電力目標値Pwf_ref3の時間Td毎の変化速度を検出する。有効電力目標値Pwf_ref3の時間Tdの刻みの出力変化速度が、予め設定した範囲±DPT_refを超過しないよう制御を行う。出力変化速度保持制御部132は、出力変化速度を保持した有効電力目標値Pwf_ref3を有効電力制御の目標値Pwf_refとする。
【0116】
(2)ウィンドファームの無効電力の目標値Qwf_refの設定
ウィンドファームの全体の無効電力の目標値制御量Qwf_refは、定無効電力制御部133、定皮相電力制御部134、定力率制御部135での演算結果により設定する。
【0117】
定無効電力制御部133の動作を説明する。
図16に示すように、無効電力を一定の値の範囲に制御する場合は、予め設定された目標値Qwf_ref0を無効電力の目標値Qwf_refと設定する。定無効電力制御部133における定無効電力制御では、電圧上昇を抑制し電力品質を維持するため、変換器容量制約の範囲内で無効電力一定制御を行う。
【0118】
定皮相電力制御部134において、皮相電力を一定の範囲内に制御する場合は、有効電力目標値Pwf_refと皮相電力目標値SwfVA_refから無効電力目標値Qwf_ref1を算出し、これを無効電力制御の目標値Qwf_refと設定する。定皮相電力制御部134における定皮相電力制御では、トランス等の機器寿命確保のため、皮相電力が一定となるように有効電力の変化に応じて無効電力を調整する。
【0119】
定力率制御部135において、定力率制御として力率を一定の範囲内に制御する場合は、有効電力目標値Pwf_refと力率目標値Pf_refから無効電力目標値Qwf_ref2を設定する。定力率制御部135における定力率制御では、系統側の力率を改善するため、有効電力の変化に応じて、力率一定となるように無効電力を調整する。
【0120】
(3)定電圧制御による無効電力制御量Qwf_r1の設定
また、本実施形態では、定電圧制御部136により、無効電力制御量Qwf_r1を求め、
目標値制御量Qwf_refとウィンドファームの無効電力のQwfとの差分より求めた無効電力制御量Qwf_rと選択させることもできる。
【0121】
定電圧制御部136では、連系点におけるウィンドファーム電圧目標値Vwf_refと検出値Vwfとの偏差を小さくする制御量の演算を行う。電圧制御部136は、ウィンドファーム出力の連結点における電圧目標値Vwf_refと、ウィンドファーム出力の連結点における電圧の検出値Vwfとの偏差ΔVwfを算出する。この偏差偏差ΔVwfに対して、Aを上限、Bを下限とする不感帯を設定する。偏差ΔVwfが不感帯を超える大きさの場合には、その偏差ΔVwfを解消するために必要な必要なウィンドファーム出力の無効電力Qwf_rを演算する。この調定率Kgは、予め設定された定数である。
【0122】
偏差ΔVwfを解消するために必要な無効電力Qwf_r1の演算には、比例ゲインKPvと、積分ゲインKlv/sを用いたPI制御を用いることができる。また、無効電力Qwf_rが、予め設定されたウィンドファームの出力可能な無効電力の最大値Qwf_limit_maxと、ウィンドファームの出力可能な無効電力の最小値Qwf_limit_minの間となるように演算する。
【0123】
[2−3.効果]
以上のような構成及び作用を有する本実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加えで、以下の様な効果を奏することができる。
【0124】
(1)ウィンドファームの周波数制御によって、水力・火力発電機と同等に系統周波数調整に寄与することができる。
(2)ウィンドファームは出力変化速度が決められた値よりも大きくならないように受電点の有効電力を制御することが可能となり、各風力発電装置100の回転数が上限を超過させない、商用系統への連系時に速い変動を流出させない、という効果がある。
(3)ウィンドファームは瞬動予備力を保持し、かつ出力変化速度が決められた値よりも大きくならないように受電点の有効電力を制御することが可能となるため、連系する商用系統で事故等の擾乱が発生した場合に、系統への供給電力を増加できるため、ウィンドファームを系統安定化へ貢献させることができる。
(4)ウィンドファーム無効電力出力を目標値に追従させることによって、定皮相電力制御はトランス等の機器寿命確保、定無効電力制御は電圧上昇を抑制し電力品質の維持、定力率制御は系統側の力率改善、といった効果がある。
(5)可能最大無効電力出力の範囲内で,ウィンドファーム連系点の電圧を一定範囲内に維持することにより、ウィンドファームが連系する商用系統側へ、風の変動による電圧変動の影響を及ぼさないように電力供給を行うことができるという効果がある。
【0125】
また、本実施形態では、ウィンドファームの有効電力の目標値Pwf_refを設定するために、周波数制御部130、瞬動予備力保持制御部131、出力変化速度保持制御部132を組み合わせて演算を行ったが、この組み合わせはこれに限らない。また、無効電力の目標値Qwf_refを、定無効電力制御部133、定皮相電力制御部134、定力率制御部135での演算結果より選択したが、選択の方法はこれに限らない。すなわち、定無効電力制御部133、定皮相電力制御部134の演算結果から選択する構成でも、定皮相電力制御部134のみの選択結果を無効電力の目標値Qwf_refとする構成でもよい。これにより、ユーザのニーズに合わせた制御を行うことが可能となる。
【0126】
[3.他の実施形態]
なお、本明細書においては、本発明に係る複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。具体的には、制御量分配部において、有効電力の分配量の制御量と無効電力の制御量を同時に行うことも本発明に包含される。この場合は、ポテンシャル=有効電力の制御量+無効電力の制御量として制御を行う。また、ポテンシャル=有効電力の制御量+無効電力+瞬動予備力の制御量としても良い。このような実施形態では、第1,2の実施形態の作用効果を併せ持つことができる。
【0127】
また、第2実施形態において、周波数制御部130、瞬動予備力保持制御部131、出力変化速度保持制御部132、定無効電力制御部133、定皮相電力制御部134、定力率制御部135、及び電圧制御部136においての制御方法について記載したが、他の方法により、有効電力、瞬動予備力、無効電力、電圧の制御を行うことも本発明に包含される。また、出力変化速度の保持方法についても同様である。
【0128】
以上のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。