(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記蓄熱用水槽が、低温側に配置される溢れ堰と高温側に配置される潜り堰とからなる堰部を内部に配置して、低温側から高温側に亘って当該堰部を介して連通する複数の蓄熱用水槽部を内部に区画形成して構成され、
前記雑用水取出手段が、前記複数の蓄熱用水槽部の夫々に対して低温側又は高温側から順に蓄熱用水を取り出すと共に、水位が前記潜り堰の下端よりも所定高さ分上の水位に到達した時点で空状態であるとして蓄熱用水の取り出しを終了する請求項3に記載の貯水システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
災害時における排水の貯留のために専用の汚水槽を設置するためには、比較的大掛かりな工事と費用が必要となる。また、設置スペースの制約があるため、長期に亘る下水道の断絶に対応できるような十分な容量の汚水槽を設置するのは困難である。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、貯水システムにおいて、地震などの上下水道が断絶するような災害時において、トイレ洗浄用水などに用いられる雑用水の十分な確保に加えて、トイレ排水などの排水の貯留とその有効貯留量の拡大を図ることができる技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、
水を貯留可能な水槽部と、
災害時において、前記水槽部に貯留されている貯留水を取り出して、当該取り出した貯留水を雑用水として供給する雑用水取出手段とを備えた貯水システムであって、
災害時において、前記雑用水取出手段により貯留水が取り出されて
前記水槽部が空状態となったときに、当該水槽部からの前記雑用水取出手段による貯留水の取り出しを停止した上で、当該空状態となった前記水槽部に、受け入れた排水を投入
して、当該水槽部を汚水槽として利用する排水投入手段を備えた点にある。
【0008】
本特徴構成によれば、上記雑用水取出手段により、災害時において建物に設けられた各種水槽部に貯留されている貯留水を取り出して、この取り出した貯留水をトイレ洗浄用水などに用いられる雑用水として利用に供することができる。
更に、このような水槽部からの貯留水の取り出しを継続すれば、当該水槽部の状態は貯留水の残量が0又は少量の空状態となる。そこで、空状態となった水槽部を有効利用するべく、上記排水投入手段により、空状態となった水槽部に対して、トイレなどの排水発生部から受け入れた排水を投入し、下水道が復旧するまでの間排水を貯留させることができる。
以上のように、本発明に係る貯水システムによれば、地震などの上下水道が断絶するような災害時において、水を貯留する各種水槽部を所謂雑用水槽として利用する形態で、トイレ洗浄用水などに用いられる雑用水を十分に確保でき、加えて、空状態となった水槽部を所謂汚水槽として利用する形態で、排水の貯留とその有効貯留量の拡大を図ることができる。
【0009】
本発明の第2特徴構成は、
前記水槽部を複数備え、
前記雑用水取出手段が、当該複数の水槽部の夫々に対して、順次空状態となるまで貯留水を取り出す点にある。
【0010】
本特徴構成によれば、上記雑用水取出手段により、複数の水槽部に対し、雑用水として利用される貯留水の取り出しを順次空状態となるまで行うので、貯留水の取り出しを開始してから早期に空状態の水槽部を確保することができる。よって、空状態の水槽部に対する上記排水投入手段による排水の投入を早期に開始することができる。
【0011】
本発明の第3特徴構成は、
蓄熱用水を貯留する蓄熱用水槽部を前記水槽部として内部に形成してなる蓄熱用水槽を備え、
前記雑用水取出手段が、災害時において、前記蓄熱用水槽部に貯留されている蓄熱用水を取り出して、当該取り出した蓄熱用水を雑用水として供給し、
前記排水投入手段が、災害時において、前記雑用水取出手段により蓄熱用水が取り出されて空状態となった前記蓄熱用水槽部に、受け入れた排水を投入する点にある。
【0012】
本特徴構成によれば、地震などの上下水道が断絶するような災害時において、冷水又は温水などの蓄熱用水を貯留する蓄熱用水槽部を所謂雑用水槽として利用する形態で、トイレ洗浄用水などに用いられる雑用水を十分に確保でき、加えて、空状態となった蓄熱用水槽部を所謂汚水槽として利用する形態で、排水の貯留とその有効貯留量の拡大を図ることができる。
そして、このように既存の蓄熱用水槽を所謂雑用水槽及び汚水槽として利用することができるため、設置スペースの制約を受けることなく、災害時において確保可能な雑用水量と排水の有効貯留量との拡大を図ることができる。
【0013】
本発明の第4特徴構成は、
前記蓄熱用水槽が、低温側に配置される溢れ堰と高温側に配置される潜り堰とからなる堰部を内部に配置して、低温側から高温側に亘って当該堰部を介して連通する複数の蓄熱用水槽部を内部に区画形成して構成され、
前記雑用水取出手段が、前記複数の蓄熱用水槽部の夫々に対して低温側又は高温側から順に蓄熱用水を取り出すと共に、水位が前記潜り堰の下端よりも所定高さ分上の水位に到達した時点で空状態であるとして蓄熱用水の取り出しを終了する点にある。
【0014】
本特徴構成によれば、複数の蓄熱用水槽部に対し、上記雑用水取出手段により、雑用水として利用される蓄熱用水の取り出しを順次空状態となるまで行うので、蓄熱用水の取り出しを開始してから早期に空状態の蓄熱用水槽部を確保することができる。よって、空状態の蓄熱用水槽部に対する上記排水投入手段による排水の投入を早期に開始することができる。
更に、蓄熱用水槽が、溢れ堰と潜り堰とからなる堰部により複数の蓄熱用水槽部を内部に区画形成してなる所謂潜り堰方式の蓄熱用水槽である場合には、複数の蓄熱用水槽部に対する上記雑用水取出手段による蓄熱用水の取り出しを、低温側から高温側にかけて又は高温側から低温側にかけて順に行う。そして、蓄熱用水槽部の蓄熱用水の残量を0とするまで蓄熱用水を取り出すのではなく、水位が前記潜り堰の下端よりも所定高さ分上の水位に到達した時点、即ち蓄熱用水に対する潜り堰の下端の水没状態が維持されている時点で、空状態であると判断して、蓄熱用水の取り出しを終了する。すると、潜り堰の下端が常に蓄熱用水の水位以下に維持されるので、その箇所において互いに隣接する夫々の蓄熱用水槽部の雰囲気を遮断する所謂水封状態を形成することができる。よって、排水が投入される蓄熱用水槽部側の臭気や発生ガスが、蓄熱用水が雑用水として取り出される蓄熱用水槽部側へ流出することを防止することができる。
【0015】
本発明の第5特徴構成は、
前記水槽部と同等又はそれ以上の容量を有し、受け入れた排水が投入されて貯留可能な汚水槽を備え、
前記排水投入手段が、前記汚水槽が満水状態となった時点で前記水槽部への排水の投入を開始する点にある。
【0016】
即ち、災害時では、雑用水がトイレ洗浄用水などとして消費された後にそれが排水となって排出されるため、雑用水の消費量と排水の排出量は略同等となる。
従って、本特徴構成によれば、災害時において、水槽部と同等又はそれ以上の容量を有する汚水槽が満水状態となった時点では、その汚水槽の容量と同等の貯留水が水槽部から取り出されて雑用水として消費されることになるので、その汚水槽よりも小さい容量の水槽部は確実に空状態となる。よって、汚水槽に貯留しきれなかった排水については、確実に、排水投入手段により空状態の水槽部に投入し、下水道が復旧するまでの間排水を貯留させることができる。
【0017】
本発明の第6特徴構成は、
前記水槽部が、建物の地下躯体に設けられている点にある。
【0018】
本特徴構成によれば、地下躯体に設けた水槽部を所謂雑用水槽及び汚水槽として利用することができるため、設置スペースの制約を受けることなく、災害時において確保可能な雑用水量と排水の有効貯留量との拡大を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態としての貯水システム100について
図1−
図7に基づいて説明する。
尚、
図1は、貯水システム100の通常時に選択される通常運転モードでの運転状態を示し、
図2−
図6は、災害時に選択される災害運転モードでの時系列的な運転状態の変化を示している。
図7は、下水道復旧時に選択される復旧運転モードでの運転状態を示す。また、
図1−7において、通水状態の管路は太実線で表し、非通水状態の管路は細実線で表す。
【0021】
〔全体構成〕
図1を参照して、本実施形態の示す貯水システム100は、詳細については後述するが、この貯水システム100には、水を貯留可能な水槽部Aとしての蓄熱用水槽部11−16を有する蓄熱用水槽1と、雑用水を貯留可能な雑用水槽30と、排水を貯留可能な汚水槽40との夫々の水槽が、設置スペースの制約が少ない施設の地下躯体を利用する形態で設けられている。
更に、弁やポンプなどの各種補機の作動を制御するコンピュータからなる制御装置60が設けられており、この制御装置60が利用者による操作に基づいて各種補機の作動制御を行うことにより、通常運転モードと災害運転モードとを択一的に選択可能に構成されている。
【0022】
更に、この貯水システム100は、雑用水取出手段B及び汚水投入手段Cを備えることにより、
図2−
図6に示すように、地震などの上下水道が断絶するような災害時において、手動又は自動で、運転モードを通常運転モードから災害運転モードへ切り替えることによって、トイレ洗浄用水や冷却塔補給水などに用いられる雑用水の十分な確保に加えて、トイレ排水やその他雑排水などの排水の貯留とその有効貯留量の拡大を図ることができる給排水システムとして機能する。
以下、蓄熱用水槽1、雑用水槽30、汚水槽40、雑用水取出手段B、及び排水投入手段Cの夫々の詳細構成、並びに、災害運転モードでの運転状態の詳細について順に説明を加える。
【0023】
〔蓄熱用水槽1〕
図1を参照して、貯水システム100が備える水槽部Aは、施設の地下躯体に設けられた既存の蓄熱用水槽1の内部に形成された複数の蓄熱用水槽11−16として設けられている。
この蓄熱用水槽1は、低温側(
図1において左側)に配置される溢れ堰19と高温側(
図1において右側)に配置される潜り堰18とからなる堰部20を内部に配置して、低温側から高温側に亘って当該堰部20を介して連通する複数の蓄熱用水槽部11−16を内部に区画形成してなる所謂潜り堰方式の蓄熱用水槽として構成されている。尚、本実施形態では、6個の蓄熱用水槽部11−16を設けたが、その数については適宜変更可能である。
【0024】
かかる蓄熱用水槽1は、
図1に示すように、通常運転モードにおいて、蓄熱用水槽部11−16と冷水チラーやボイラーなどの熱源機2との間で蓄熱用水を循環させて、当該熱源機2による蓄熱用水の冷却を行う蓄熱運転と、蓄熱用水槽部11−16と冷房設備や暖房設備などの熱交換器6との間で蓄熱用水を循環させて、当該熱交換器6による蓄熱用水の放熱を行うための放熱運転とを適宜実行する。
【0025】
詳しくは、本実施形態の蓄熱用水槽1は冷水を貯留する冷水蓄熱槽として構成されており、熱源機2は水を冷却して冷水を生成する冷水チラーなどとして構成され、熱交換器6は冷水との熱交換器により冷房設備などに利用する冷熱を取り出す冷却器などとして構成されている。
そして、上記蓄熱運転では、ポンプ5が作動することにより、最も高温側の蓄熱用水槽部16の水面付近に貯留されている高温の蓄熱用水が、高温側管路4を通じて熱源機2に導入される。同時に、当該熱源機2で冷却されて低温(例えば1−5℃程度)となった蓄熱用水が冷水として、低温側管路3を通じて最も低温側の蓄熱用水槽部11の底部付近に導入される。
一方、上記放熱運転では、ポンプ9が作動することにより、最も低温側の蓄熱用水槽部11の底部付近に貯留されている低温の蓄熱用水が冷水として、冷温側管路8を通じて熱交換器6に導入される。同時に、当該熱交換器6で冷熱を放出して高温(例えば常温程度)となった蓄熱用水が、高温側管路7を通じて最も高温側の蓄熱用水槽部16の水面付近に導入される。
【0026】
低温側の蓄熱用水槽部11において、蓄熱運転による低温の蓄熱用水の導入量が放熱運転による蓄熱用水の取出量よりも多いことにより、低温の蓄熱用水が増加する場合には、互いに連通する複数の蓄熱用水槽部11−16において蓄熱用水が堰部20を介して低温側から高温側へ移動することになる。
逆に、高温側の蓄熱用水槽部16において、放熱運転による高温の蓄熱用水の導入量が蓄熱運転による蓄熱用水の取出量よりも多いことにより、高温の蓄熱用水が増加する場合には、互いに連通する複数の蓄熱用水槽部11−16において、高温の蓄熱用水の増加に伴い、蓄熱用水が堰部20を介して高温側から低温側へ移動することになる。
【0027】
そして、溢れ堰19を低温側に有すると共に潜り堰18を高温側に有する堰部20において、蓄熱用水が低温側から高温側へ移動する場合には、低温側に面する槽の水面付近に存在する比較的高温で比重の小さい蓄熱用水が高温側に面する槽の底部付近に導入される。
逆に、同堰部20において、蓄熱用水が高温側から低温側へ移動する場合には、高温側に面する槽の底部付近に存在する比較的低温で比重の大きい蓄熱用水が低温側に面する槽の水面付近に導入されることになる。
【0028】
従って、各蓄熱用水槽11−16において、比較的高温の蓄熱用水は常に水面付近で流入出し、比較的低温の蓄熱用水は常に底部付近で流入出することになるので、その槽内に温度成層が形成された場合にはそれを維持することができる。
更に、互いに連通する複数の蓄熱用水槽11−16において、低温で比重が大きい蓄熱用水は常に低温側(
図1において左側)に存在し、一方、高温で比重が小さい蓄熱用水は常に高温側(
図1において右側)に存在するというように、低温側から高温側に亘って温度成層を形成する状態で蓄熱用水が貯留されることになる。
【0029】
更に、各蓄熱用水槽11−16には、水位を検出可能な水位センサ29が設けられており、この水位センサ29の検出結果は制御装置60に入力されて各種運転制御に利用される。
【0030】
〔雑用水槽30〕
雑用水槽30は、雑用水を一時的に貯留するべく、雑用水を投入するための管路として、上水道、中水道、又は工業用水道(以下「上水道など」と呼ぶ)に通じる水道接続管路39と、後述する貯留水取出手段Bとして機能して蓄熱用水槽部11−16に通じる貯留水取出管路31とが接続されている。そして、
図1に示すように、上水道などが断絶していない通常時の通常運転モードにおいては、上水道などから供給された水が水道接続管路39を通じて雑用水として投入され、一方、
図2−
図5に示すように、上水道などが断絶している災害時の災害運転モードにおいては、所定の蓄熱用水槽部11−16から取り出された貯留水が貯留水取出管路31を通じて雑用水として投入されることになる。
【0031】
雑用水槽30の底部には、トイレや冷却塔などに通じる雑用水供給管路38が接続されている。そして、
図1−
図6に示すように、通常運転モード及び災害運転モードの夫々において、雑用水管路38に設けられたポンプ37が作動して、雑用水槽30に貯留されている雑用水が、雑用水供給管路38を通じて各雑用水利用箇所に供給され、トイレ洗浄用水などとして利用される。
尚、雑用水槽30には、水位を検出可能な水位センサ35が設けられており、この水位センサ35の検出結果は制御装置60に入力されて各種運転制御に利用される。
雑用水槽30の容量は、上記各蓄熱用水槽部11−16の容量よりも若干大きいものとされている。
【0032】
〔汚水槽40〕
汚水槽40は、排水を一時的に貯留するべく、排水を投入するための管路として、トイレなどの各排水発生箇所に通じる排水管路41が接続されている。そして、通常運転モード及び災害運転モードの夫々において、各排水発生箇所から供給された排水が排水管路41を通じて投入される。
【0033】
汚水槽40の底部には、下水道に通じる下水管路43と、後述する排水投入手段Cとして機能して蓄熱用水槽部11−16に通じる排水移送管路46とが接続されている。そして、
図1に示すように、下水道が断絶していない通常時の通常運転モードにおいては、下水管路43に設けられたポンプ42が作動して、汚水槽40に貯留されている排水が、下水管路43を通じて下水道に放出されることになる。
一方、
図3−
図6に示すように、下水道が断絶している災害時の災害運転モードにおいては、排水移送管路46に設けられたポンプ47が作動して、汚水槽40に貯留されている排水が、排水移送管路46を通じて所定の蓄熱用水槽部11−16に投入されることになる。
【0034】
尚、汚水槽40には、水位を検出可能な水位センサ45が設けられており、この水位センサ45の検出結果は制御装置60に入力されて各種運転制御に利用される。
汚水槽40の容量は、上記各蓄熱用水槽部11−16の容量よりも若干大きいものとされている。
【0035】
〔雑用水取出手段B〕
雑用水取出手段Bは、
図2−
図5に示すように、上水道が断絶している災害時に選択される災害運転モードにおいて、水槽部Aとしての複数の蓄熱用水槽部11−16に貯留されている貯留水を取り出して、当該取り出した貯留水を、雑用水として供給する手段として構成されている。
【0036】
具体的に、雑用水取出手段Bは、蓄熱用水槽部11−16から取り出した貯留水を雑用水槽30に導く貯留水取出管路31と、当該貯留水取出管路31に設けられて貯留水を雑用水槽30に向けて送出するポンプ32と、複数の蓄熱用水槽部11−16の夫々における底部に接続されて各蓄熱用水槽部11−16の底部から貯留水取出管路31への貯留水の通流を断続可能な開閉弁21−26と、このポンプ32及び開閉弁21−26の作動を制御する制御装置60とで構成されている。
【0037】
即ち、災害運転モードでは、制御装置60がポンプ32を作動させた状態で開閉弁21−26の何れかを開弁することで、その開弁された開閉弁21−26に対応する蓄熱用水槽部11−16の貯留水が貯留水取出管路31に取り出され、その取り出された貯留水が雑用水槽30で一時的に貯留された後に、雑用水供給管路38を通じてトイレ洗浄用水などとして各雑用水利用箇所に供給されることになる。
【0038】
この雑用水取出手段Bは、災害運転モードにおいて、複数の蓄熱用水槽部11−16の夫々に対して低温側の蓄熱用水槽部11から高温側の蓄熱用水槽部16にかけて順に空状態となるまで貯留水を取り出すように構成されている。
即ち、災害運転モードでの運転開始直後においては、
図2に示すように、最も低温側の蓄熱用水槽部11に対応する開閉弁21を開弁することで、当該蓄熱用水槽部11の貯留水が貯留水取出管路31を通じて取り出されて雑用水として利用される。
その後、水位センサ29の検出結果から蓄熱用水槽部11が空状態であると判断したときには、
図3に示すように、その開弁していた開閉弁21を閉弁すると共に、その蓄熱用水槽部11に対して高温側に隣接する蓄熱用水槽部12に対応する開閉弁22を開弁することで、当該蓄熱用水槽部12の貯留水が貯留水取出管路31を通じて取り出されて雑用水として利用される。
【0039】
その後においても、水位センサ29の検出結果から蓄熱用水槽部12が空状態であると判断したときには、
図4に示すように、その開弁していた開閉弁22を閉弁すると共に、その蓄熱用水槽部12に対して高温側に隣接する蓄熱用水槽部13に対応する開閉弁23を開弁することで、当該蓄熱用水槽部13の貯留水が貯留水取出管路31を通じて取り出されて雑用水として利用される。
その後、水位センサ29の検出結果から蓄熱用水槽部13が空状態であると判断したときには、
図5に示すように、その開弁していた開閉弁23を閉弁すると共に、その蓄熱用水槽部13に対して高温側に隣接する蓄熱用水槽部14に対応する開閉弁24を開弁することで、当該蓄熱用水槽部14の貯留水が貯留水取出管路31を通じて取り出される。
更に、蓄熱用水水槽部15、16についても同様に順次貯留水を取り出して雑用水として利用されることになる。
【0040】
雑用水取出手段Bは、
図4及び
図5に示すように、少なくとも最も低温側の蓄熱用水槽部11と最も高温側の蓄熱用水槽部16とを除く中間の蓄熱用水槽部12−15に対して、水位センサ29で検出される水位が潜り堰18の下端よりも所定高さ分上の水位に到達した時点で空状態であると判断して、蓄熱用水の取り出しを終了するように構成されている。
すると、空状態となった中間の蓄熱用水槽部12−15では、潜り堰18の下端が常に蓄熱用水の水位以下に維持されるので、その潜り堰18において互いに隣接する水槽部間の雰囲気を遮断する所謂水封状態が形成されることになる。よって、後述する排水投入手段Cにより排水が投入された蓄熱用水槽部側の臭気や発生ガスが、雑用水取出手段Bにより蓄熱用水が雑用水として取り出される蓄熱用水槽部側へ流出することが防止されることになる。
尚、この空状態と判断する水位については、潜り堰の下端よりも数センチ程度の所定高さ分上の水位としているが、この所定高さは、潜り堰の下端の水没状態が維持される範囲内で適宜調整可能である。
【0041】
〔排水投入手段C〕
排水投入手段Cは、
図4−
図6に示すように、下水道が断絶している災害時に選択される災害運転モードにおいて、雑用水取出手段Bにより蓄熱用水が取り出されて空状態となった蓄熱用水槽部11−16に、受け入れた排水を投入する手段として構成されている。
【0042】
具体的に、排水投入手段Cは、汚水槽40から取り出した排水を最も低温側の蓄熱用水槽部11に導く排水移送管路46と、当該排水移送管路46に設けられて排水を蓄熱用水槽部11に向けて送出するポンプ47と、このポンプ47の作動を制御する制御装置60とで構成されている。
即ち、災害運転モードでは、制御装置60は、蓄熱用水槽部11が空状態であることを水位センサ29で確認した上で、汚水槽40の水位が上限に到達し満水状態となったことを水位センサ45により検出した時点で、ポンプ47の作動が開始される。すると、
図4に示すように、汚水槽40に貯留されている排水が、排水移送管路46を通じて空状態となった蓄熱用水槽部11へ投入されて、下水道が復旧するまでの間貯留されることになる。
【0043】
災害時では、雑用水がトイレ洗浄用水などとして消費された後にそれが排水となって排出されるため、雑用水の消費量と排水の排出量は略同等となる。更に、汚水槽40の容量は蓄熱用水槽部11よりも若干大きいものとされていることから、汚水槽40が満水状態になるよりも前に、雑用水取出手段Bにより蓄熱用水が雑用水として取り出される蓄熱用水槽部11が空状態となる。
更に、雑用水槽30において、
図2に示すように、災害発生時点において水位センサ35で検出される水位が上限に達しておらず、貯留量に余裕がある場合には、
図3に示すように、水位センサ35で検出される水位が上限に達して満水状態となるまで、蓄熱用水槽部11−16からの蓄熱用水の取り出しを積極的に行って、当該蓄熱用水槽部11−16をできるだけ早い段階で空状態にして、早期に汚水投入手段Cによる排水の投入が許容される状態となる。
【0044】
その後において、汚水投入手段Cによる蓄熱用水槽部11への排水の投入を継続すると、先ず、
図4に示すように、蓄熱用水槽部11における汚水の水位が上昇するが、その後蓄熱用水槽部11が満水状態となった以降は、
図5に示すように、その汚水が溢れ堰19から溢れて次に空状態となった隣の蓄熱用水槽部12に投入されることになる。そして、排水投入量の増加に伴い、複数の蓄熱用水槽部11−16に対して低温側の蓄熱用水槽部11から高温側の蓄熱用水槽部16にかけて順に排水が投入されることになり、最終的には、
図6に示すように、すべての蓄熱用水槽部11−16に対して排水が投入されることになる。
以上のように、下水道が断絶する災害時において、汚水投入手段Cにより空状態となった蓄熱用水位部11−16に排水が投入されて、当該空状態となった蓄熱用水槽部11−16が所謂汚水槽として利用されるので、災害時の排水の貯留とその有効貯留量の拡大が図られることになる。
【0045】
このように、雑用水取出手段Bと汚水投入手段Cとは共に、複数の蓄熱用水槽部11−16に対して、雑用水の取り出しと汚水の投入とを低温側から順に行うように構成されている。更に、雑用水取出手段Bは、汚水投入手段Cに先立って雑用水の取り出しを行って、最も低温側の蓄熱用水槽部11を空状態にしている。更に、上述したように、災害時では雑用水の消費量と排水の排出量は略同等となる。
【0046】
以上のことから、複数の蓄熱用水槽部11−16において、低温側から順次行われる雑用水の取出対象となる雑用水取出対象水槽部に対して、低温部から順次行われる排水の投入対象となる汚水投入対象水槽部が決して追い着くことはなく、汚水投入対象水槽部が常に雑用水投入対象水槽部よりも低温側に位置する状態となる。更に、
図4及び
図5に示すように、それらの間には、常に、蓄熱用水の水位が潜り堰18の下端よりも若干上に維持されることで水封状態が形成された空状態の水槽部が存在することになるので、排水の臭気などが雑用水として取り出される蓄熱用水側に流入することが好適に防止されることになる。
【0047】
さらに、この貯水システム100は、下水道が復旧したときに、運転モードを所定の復旧運転モードに切り替えて、蓄熱用水槽部11−16に貯留されている排水を下水道に排出することができる。以下、その詳細について、
図7に基づいて説明を加える。
貯留水取出管路31におけるポンプ32と雑用水槽30との間から分岐して汚水槽40に接続された排水管路53が設けられている。また、この貯留水取出管路31と排水管路53との分岐部には、貯留水取出管路31の雑用水槽30側に配置された開閉弁50と、排水管路53側に配置された開閉弁51とが設けられている。
そして、下水道が復旧したときには復旧運転モードでの運転が行われ、この復旧運転モードでは、制御装置60が、排水管路53に設けられた開閉弁51と貯留水取出管路31の各蓄熱用水槽部11−16側に設けられた開閉弁21−26とを開弁すると共に、貯留水取出管路31の雑用水槽30に設けられた開閉弁50を閉弁した状態で、ポンプ32を作動させる。
すると、各蓄熱用水槽部11−16に貯留されている排水が、貯留水取出管路31及び排水管路53を通じて汚水槽40に投入された後に、下水道に放出されることになる。その後、排水が取り出されて空状態となった各蓄熱用水槽11−16を適宜洗浄した上で、蓄熱用水槽1が通常の蓄熱用途で利用されることになる。
尚、このような復旧運転モードでの運転については、下水道復旧時において各蓄熱用水槽部11−16に貯留した排水を下水道へ排出する場合のみではなく、通常時において各蓄熱用水槽部11−16に貯留されている蓄熱用水を下水道へ排出して当該蓄熱用水の入れ替えを行う場合や、各蓄熱用水槽部11−16に洗浄のための投入された洗浄水を下水道へ排出する場合などにも利用できる。
また、図示は省略するが、各蓄熱用水槽部11−16の底部における貯留水取出管路31の接続部には、排水の残留を最小限にするために、釜場(排水を集めるための凹部)を設けることができる。
【0048】
〔その他の実施形態〕
(1)上記実施形態では、蓄熱用水槽1は冷水を貯留する冷水蓄熱槽として構成したが、別に、温水を貯留する温水蓄熱用として構成しても構わない。
蓄熱用水槽1を温水蓄熱槽として構成する場合には、
図1を参照して、熱源機2は水を加熱して温水を生成するボイラーなどとして構成され、熱交換器6は温水との熱交換器により暖房設備や給湯設備など利用する温熱を取り出す加熱器などとして構成される。
そして、この場合の上記蓄熱運転では、低温側管路3に設けられたポンプ(図示せず)が作動することにより、最も低温側の蓄熱用水槽部11の底部付近に貯留されている低温の蓄熱用水が、低温側管路3を通じて熱源機2に導入される。同時に、当該熱源機2で加熱されて高温となった蓄熱用水が温水として、高温側管路4を通じて最も高温側の蓄熱用水槽部16の水面付近に導入される。
一方、上記放熱運転では、高温側管路7に設けられたポンプ(図示せず)が作動することにより、最も高温側の蓄熱用水槽部16の水面付近に貯留されている高温の蓄熱用水が温水として、高温側管路7を通じて熱交換器6に導入される。同時に、当該熱交換器6で温熱を放出して低温となった蓄熱用水が、低温側管路8を通じて最も低温側の蓄熱用水槽部11の底部付近に導入される。
【0049】
(2)上記実施形態では、雑用水取出手段Bと汚水投入手段Cとは、複数の蓄熱用水槽部11−16に対して、雑用水の取り出しと汚水の投入とを低温側から順に行うように構成されている。高温側から順に行うなど、適宜、雑用水の取り出しと汚水の投入の順番を変更しても構わない。
【0050】
(3)上記実施形態では、水槽部Aとして複数の蓄熱用水槽部11−16を設けた例を示したが、かかる水槽部Aは単数でも構わない。この場合、雑用水取出手段Bにより一の水槽部Aから貯留水を雑用水として取り出し、その水槽部Aが空状態となった時点で、雑用水取出手段Bによる雑用水の取り出しを停止した上で、その空状態となった水槽部Aに対して汚水投入手段Cによる排水の投入を開始することになる。
【0051】
(4)上記実施形態では、蓄熱用水槽部11−16の水位が潜り堰18の下端よりも若干上の水位に到達した時点で空状態であると判断したが、空状態であると判断する水位については適宜変更可能であり、当然水位が0となった状態を空状態であると判断しても構わない。
【0052】
(5)上記実施形態では、蓄熱用水槽1の内部に形成された蓄熱用水槽部11−16を、雑用水取出手段Bによる貯留水の取り出しと汚水投入手段Cによる汚水の投入とを行うための水槽部Aとして利用したが、他にも、雨水を貯留する雑用水槽部などのような別の形態の水槽部Aを利用しても構わない。
例えば、
図8に示す貯水システム100’のように、上記実施形態において水槽部A(11−16)とは別に設けた雑用水槽30(
図1等参照)を省略したり、上記実施形態において蓄熱機能を有する蓄熱用水槽1(
図1等参照)を、蓄熱機能を有さない雑用水槽1’として構成することもできる。
尚、
図8に示す雑用水槽1’は、上記実施形態で説明した蓄熱用水槽1と略同様の構成を採用しており、当該同様の構成については同じ符号を付す。
そして、かかる貯水システム100’では、上下水道が断絶していない通常時の通常運転モードにおいて、上水道などから水道接続管路39を通じて供給された水が一方側(
図8の左方側)に配置された水槽部11に投入され、同時に、他方側(
図8の右方側)に配置された水槽部16から開閉弁26を介して貯留水取出管路31に取り出された貯留水が雑用水として利用される。
一方、上下水道が断絶している災害時の災害運転モードでは、上記実施形態(
図2−
図6参照)と同様に、複数の水槽部11−16に対して、雑用水の取り出しと汚水の投入とを一方側から順に行われる。
また、この貯水システム100’の復旧運転モードでは、ポンプ32が停止してポンプ55が作動することにより、蓄熱用水槽部11−16に貯留されている排水が、貯留水取出管路31におけるポンプ32の上流側から分岐して汚水槽40に接続された排水管路56を通じて汚水槽40に投入された後に、下水道に放出されることになる。
【0053】
(6)上記実施形態では、堰部20を介して複数の蓄熱用水槽部1を連通させてなる所謂潜り堰方式の蓄熱用水槽1を利用したが、例えば複数の蓄熱用水槽部1を連通管で連通させてなる連通管方式など、別の方式の蓄熱用水槽を利用しても構わない。
【0054】
(7)上記実施形態では、蓄熱用水槽部1並びに雑用水槽30及び汚水槽40について、設置スペースの制約が少ない施設の地下躯体を利用する形態で設けた例を説明したが、別に敷地内に設置された水タンクを利用するなど、地下躯体を利用しなくても構わない。
【0055】
(8)上記実施形態では、雑用水取出手段Bを構成するにあたり、開閉弁21−26及びポンプ32を設けた貯留水取出管路31を予め設置しておき、災害時においてポンプ32を作動させた状態で開閉弁21−26を開弁することで、各蓄熱用水槽部11−16の貯留水を雑用水として取り出すように構成したが、別に、これら貯留水取出管路31などを予め設置しておくことなく、災害時において、仮設ポンプをマンホールから各蓄熱用水槽部11−16に投入し、当該仮設ポンプを作動させることにより各蓄熱用水槽部11−16から貯留水を雑用水として取り出すように構成しても構わない。
また、このように貯留水の取出しに仮設ポンプを利用する場合には、下水道が復旧した後に各蓄熱用水槽部11−16に貯留されている排水を下水道に排出する際にも、この仮設ポンプを利用することができる。