(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記出力調整部材は、前記リール本体に対して、前記回転停止位置と前記最大出力位置との間で回転可能に支持され、回転操作で前記モータの出力を調整可能である、請求項5に記載の電動リールのモータ制御装置。
前記複数のしきい値は、前記出力調整部材を前記回転停止位置から前記最大出力位置に向けて出力増加方向に移動させたとき用いられる出力増加しきい値と、前記出力増加方向と反対の出力減少方向に移動させたときに用いられ、前記出力増加しきい値よりも前記所定距離だけ前記回転停止位置側に離反して設定された出力減少しきい値と、をそれぞれ有する、請求項7に記載の電動リールのモータ制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1実施形態>
<電動リールの全体構成>
図1、
図2、
図3、
図4、
図5及び
図7において、本発明の一実施形態による電動リール100は、外部電源から供給された電力により駆動されるとともに、手巻きの両軸受リールとしても使用可能な小型の電動リールである。また、電動リール100は糸繰り出し長さ又は糸巻取長さに応じて仕掛けの水深を表示する水深表示機能を有するリールである。なお、電動リール100は、外部電源なしに、手巻きの両軸受リールとして使用する場合に、水深表示機能を駆動するための内部電源を有している。
【0023】
電動リール100は、釣り竿に装着可能であり水深表示部4を有するリール本体1と、ハンドル2と、スプール10と、クラッチ操作部材11と、モータ12(
図2、
図7参照)と、スプール駆動機構13(
図5参照)と、クラッチ機構16(
図3参照)と、制御システム27(
図7参照)と、を備える。制御システム27は、モータ制御装置の一例である。
【0024】
ハンドル2は、リール本体1に回転可能に設けられる。スプール10は、リール本体1に回転可能に設けられる。クラッチ操作部材11は、クラッチ機構16をオンオフ操作するためのものであり、リール本体1の後部に移動可能に設けられる。モータ12は、リール本体1に設けられ、スプール10を回転駆動する。スプール駆動機構13は、ハンドル2及びモータ12の駆動力に応じてスプール10を駆動する。クラッチ機構16は、ハンドル2の回転及びモータ12の駆動力をスプール10に伝達可能なクラッチオン状態と、ハンドル2の回転及びモータ12の駆動力をスプール10に伝達不能なクラッチオフ状態と、にクラッチ操作部材11の操作によって切換可能である。制御システム27は、出力調整部材5と、リール制御部70と、位置検出部33と、を備える。リール制御部70は、
図13に示すように、モータ12の出力を調整するモータ制御部84と、後述する水深表示部4を制御する表示制御部86と、を有する。
【0025】
出力調整部材5は、リール本体1に回転可能に設けられる。出力調整部材5は、モータ12の回転が停止する回転停止位置からモータ12の出力が最大となる最大出力位置の間で回転する。出力調整部材5は、回転位置に応じてモータ12の出力を調整するための部材である。位置検出部33は、出力調整部材5の回転位置を検出するために設けられる。位置検出部33は、
図7に示すように、検出子34と、位相検出部35と、を有する。リール制御部70のモータ制御部84は、モータ12の出力を、出力調整部材5の回転動位置に応じて複数段階に調整する。例えば、スプール10の回転速度が出力調整部材5の回転位置に応じて複数段階に調整される。また、例えば、釣り糸に作用する張力が出力調整部材5の回転位置に応じて複数の段階に調整される。
【0026】
<リール本体>
リール本体1は、フレーム7と、第1側カバー8aと、第2側カバー8bと、前カバー9(
図7参照)と、前述した水深表示部4と、備える。フレーム7は、例えば合成樹脂又は金属製の一体形成された部材である。フレーム7は、第1側板7aと、第2側板7bと、第1側板7aと第2側板7bとを連結する第1連結部材7c、第2連結部材7d及び第3連結部材7eと、を有する。第2側板7bは、第1側板7aと左右方向(
図3左右方向)に間隔を隔てて配置される。第1側カバー8aは、フレーム7のハンドル2装着側を覆う。第2側カバー8bは、フレーム7のハンドル2装着側と逆側を覆う。前カバー9は、フレーム7の前部を覆う。
【0027】
第1側板7aは、側板本体19aと、側板本体19aと間隔を隔てて配置され、各種の機構を装着するための機構装着板19bを有する。側板本体19aは、
図5に示すように、ボス部19cを有する。ボス部19cには、ブッシュ65が回転不能に装着されている。機構装着板19bは、以下に示す各種の機構を装着するために設けられる。機構装着板19bは、側板本体19aの外側面にネジ止め固定されている。
図3及び
図5に示すように、側板本体19aと第1側カバー8aとの間に、スプール駆動機構13と、クラッチ機構16を制御するクラッチ制御機構20と、スプール10の糸繰り出し方向の回転を制動するドラグ機構23(
図5参照)と、が設けられている。第1側カバー8aには、スプール10を制動するキャスティングコントロール機構21(
図3参照)が設けられている。キャスティングコントロール機構21は、後述するスプール軸14の両端を押圧してスプール10の回転を制動する機構である。
【0028】
第1側板7aと第2側板7bとの間には、スプール10と、クラッチ機構16と、スプール10に釣り糸を均一に巻き付けるためのレベルワインド機構22と、が設けられている。レベルワインド機構22は、
図7に示すように、交差する螺旋状溝が形成されたトラバースカム軸63と、トラバースカム軸63の回転によってスプール10の前方でスプール軸14と平行な軸方向に往復移動する釣り糸ガイド64と、を有する。トラバースカム軸63のハンドル2側の端部は、
図5に示すように、ブッシュ65を介してボス部19cに回転自在に支持される。
【0029】
第2側板7bには、
図3に示すように、スプール10が通過可能な円形開口7fが形成されている。円形開口7fには、スプール10のスプール軸14の第1端(
図3左端)を回転自在に支持するスプール支持部17が芯出しされて装着されている。スプール支持部17は、第2側板7bの外側面にネジ止め固定されている。スプール支持部17には、スプール軸14の第1端を支持する第1軸受18aが収納される。
【0030】
第1連結部材7cは、第1側板7a及び第2側板7bの下部を連結する。第2連結部材7dはスプール10の前部を連結する。第1連結部材7cは、板状の部分であり、その左右方向の略中央部分に釣り竿に取り付けるための釣り竿装着部7gが一体形成されている。なお、釣り竿装着部7gは、フレーム7と別体であってもよい。第2連結部材7dは、概ね円筒状の部分であり、その内部にモータ12(
図2及び
図7参照)が収容されている。第3連結部材7eは、リール本体1の後部を連結する円弧状に湾曲した概ね板状の部分である。
【0031】
第1側カバー8aには、
図2に示すように、駆動軸30を回転自在に支持するための第1ボス部8cが外方に突出して形成されている。第1ボス部8cの後方には、スプール軸14の第2端を支持する第2ボス部8dが外方に突出して形成されている。
【0032】
第2側カバー8bは、第2側板7bの外縁部に例えばねジ止めされている。第2側カバー8bの前部下面には、
図3に示すように、電源ケーブル接続用のコネクタ15が下向きに装着されている。
【0033】
ハンドル2は、第1側カバー8a側に設けられている。ハンドル2は、
図1及び
図2に示すように、ハンドルアーム2aと、ハンドルアーム2aの先端に装着されたハンドル把手2bと、を有している。ハンドル2は、第1側板7a側に装着される。ハンドル2は、リール本体1に回転自在に支持された駆動軸30に一体回転可能に連結される。
【0034】
前カバー9は、第1側板7a及び第2側板7bの前部外側面の上下2箇所で、例えばねジ止め固定されている。前カバー9には、釣り糸通過用の横長の開口(図示せず)が形成されている。前カバー9は、水深表示部4の後述するケース部材36の前下面を覆う。
【0035】
水深表示部4は、釣り糸の先端に装着可能な仕掛けの水深を表示可能である。水深表示部4は、
図1及び
図7に示すように、第1側板7a及び第2側板7bの上部に載置されるケース部材36を有する。ケース部材36は、第1側板7a及び第2側板7bの外側面にネジ止め固定される。水深表示部4は、表示操作を行うための複数(例えば3つ)の操作ボタンを有するスイッチ操作部6を有する。
【0036】
ケース部材36の内部には、
図7に示すように、制御システム27を構成するリール制御部70と、水深表示用の液晶ディスプレイからなる表示器72と、主回路基板74aと、副回路基板74bと、モータ駆動回路76と、が収納されている。リール制御部70は、例えば、マイクロコンピュータによって構成される。主回路基板74aには、表示器72と、リール制御部70と、モータ駆動回路76と、が搭載される。副回路基板74bには、位相検出部35が搭載される。副回路基板74bは、主回路基板74aと電気的に接続される。
【0037】
ケース部材36は、両側がそれぞれ第1側板7a及び第2側板7bに沿って後方に延びている。
図4に示すように、ケース部材36の第1側板7a側の後部には、下部が開口する基板収容空間36fが形成される。この基板収容空間36fに副回路基板74bが収容される。ケース部材36の第2側板7b側の後部は、第2側板7bの上部及び第2側カバー8bの上部を覆っている。
【0038】
<スプール>
スプール10は、スプール軸14に一体回転可能に装着されている。スプール10は、
図3に示すように、筒状の糸巻胴部10aと、糸巻胴部10aの両側に一体形成された大径の第1フランジ部10b及び第2フランジ部10cと、を有している。第1フランジ部10bは、第1側板7a側に設けられ、第2フランジ部10cは第2側板7b側に設けられる。スプール軸14は、糸巻胴部10aの内周部に圧入等の適宜の固定手段により固定されている。
【0039】
スプール軸14の第1端(
図3左端)は、前述したようにスプール支持部17において第1軸受18aにより支持されている。スプール軸14の第2端(
図3右端)は、第1側カバー8aの第2ボス部8dに第2軸受18bにより支持されている。
【0040】
スプール軸14のスプール固定部分より第2軸受18b側には、クラッチ機構16を構成するクラッチピン16aが径方向を貫通して装着されている。
【0041】
<クラッチ機構>
クラッチ機構16は、
図3に示すように、クラッチピン16aと、ピニオンギア32の
図3左側端面に径方向に沿って十字に凹んで形成されたクラッチ凹部16bと、を有している。ピニオンギア32は、クラッチ機構16を構成するとともに、スプール駆動機構13の後述する第1回転伝達機構24を構成している。ピニオンギア32は、スプール軸14方向に沿って、
図3に示すクラッチオン位置とクラッチオン位置より右側のクラッチオフ位置との間で移動する。クラッチオン位置では、クラッチピン16aがクラッチ凹部16bに係合してピニオンギア32の回転がスプール軸14に伝達され、クラッチ機構16は、クラッチオン状態になる。このクラッチオン状態では、ピニオンギア32とスプール軸14とが一体回転可能になる。また、クラッチオフ位置では、クラッチ凹部16bがクラッチピン16aから離反してピニオンギア32の回転がスプール軸14に伝達されない。このため、クラッチ機構16は、クラッチオフ状態になり、スプール10は自由回転可能になる。
【0042】
<クラッチ制御機構>
クラッチ制御機構20は、クラッチ操作部材11の
図7に実線で示すクラッチオン位置と
図7に二点鎖線で示すクラッチオフ位置との間の揺動によりクラッチ機構16をクラッチオン状態とクラッチオフ状態とに切り換えるために設けられる。クラッチ制御機構20は、
図5に示すように、スプール軸14回りに第1位置と第2位置とに回転するクラッチカム40と、クラッチカム40に係合するクラッチヨーク41と、クラッチカム40とクラッチ操作部材11とを連結するクラッチプレート42と、を有する。クラッチプレート42は、クラッチカム40と一体的に回転する。クラッチカム40は、機構装着板19bに回転自在に支持される。クラッチカム40は、回転によってクラッチヨーク41を移動させるための一対のカム部40aを有する。
【0043】
クラッチヨーク41は、ピニオンギア32をスプール軸方向にクラッチオフ位置とクラッチオン位置に移動させるために設けられる。クラッチヨーク41は、クラッチカム40のカム部40aに係合するカム受け部(図示せず)と、ピニオンギア32に係合する円弧部41aを有し、クラッチカム40が第1位置から第2位置に回転すると、クラッチオン位置からスプール軸方向外方(
図5右側)のクラッチオフ位置に移動する。これにより、ピニオンギア32が軸方向外方(
図5右側)に移動し、ピニオンギア32とクラッチピン16aとの係合が解除され、クラッチ機構16がクラッチオフ状態になる。クラッチヨーク41は、機構装着板19bに装着された一対のガイド軸49によって軸方向に案内される。クラッチヨーク41は、ガイド軸49に装着された一対のコイルばね44によってクラッチオン位置に向けて付勢される。したがって、クラッチカム40が第2位置から第1位置に回転すると、クラッチヨーク41は、クラッチオフ位置からクラッチオン位置に戻り、ピニオンギア32がクラッチオン位置に戻る。なお、クラッチカム40の第2位置から第1位置への復帰動作は、図示しないクラッチ戻し機構によって、クラッチオフ状態でのハンドル2の糸巻取方向に回転によっても実現される。
【0044】
クラッチプレート42は、クラッチ操作部材11の揺動によってクラッチカム40を回転させるために設けられる。クラッチプレート42は、例えば金属板を折り曲げて形成される。クラッチプレート42は、クラッチカム40に係合する係合部42aと、係合部42aから径方向の延びた後にクラッチ操作部材11に向けて折れ曲がる装着部42bと、を有する。係合部42aは、クラッチカム40の回転に連動して回転する。装着部42bは、クラッチ操作部材11に固定される。
【0045】
<クラッチ操作部材>
クラッチ操作部材11は、クラッチ機構16をクラッチオン状態とクラッチオフ状態とに切り換え操作するためのものである。クラッチ操作部材11は、
図7に示すように、第1側板7aと第2側板7bとの間でリール本体1の後部に釣り竿装着部7gに対して接近及び離反する方向に移動可能に設けられる。この実施形態では、クラッチ操作部材11は、スプール10の軸回りに揺動可能に設けられる。クラッチ操作部材11は、
図7に実線で示すクラッチオン位置と、二点鎖線で示すクラッチオフ位置と、の間で揺動する。第1側板7aの後部及び第2側板7bの後部の内側面には、
図5に示すように、第1接触板43a及び第2接触板43bが各別に装着される。第1接触板43a及び第2接触板43bは、ポリアセタール等の摺動性が高い合成樹脂製の部材である。第1接触板43a及び第2接触板43bは、第1側板7a及び第2側板7bに各別に着脱可能に嵌め込まれている。
【0046】
<スプール駆動機構>
スプール駆動機構13は、スプール10を糸巻取方向に駆動する。また、巻取時にスプール10にドラグ力を発生させて釣り糸の切断を防止する。スプール駆動機構13は、
図8に示すように、図示しないローラクラッチの形態の逆転防止部によって糸巻取方向の回転が禁止されたモータ12と、第1回転伝達機構24と、第2回転伝達機構25と、を備えている。第1回転伝達機構24は、モータ12の回転を減速してスプール10に伝達する。第2回転伝達機構25は、ハンドル2の回転を、第1回転伝達機構24を介して増速してスプール10に伝達する。
【0047】
第1回転伝達機構24は、
図8に示すように、モータ12の出力軸に連結された図示しない遊星減速機構を有する。遊星減速機構のケース26の内側面には、図示しない内歯ギアが形成され、内歯ギアの出力がケース26の外周面に形成された第1ギア部材60によってスプール10に伝達される。具体的には、第1回転伝達機構24は、第1ギア部材60と、第1ギア部材60に噛み合う第2ギア部材61と、第2ギア部材61に噛み合うピニオンギア32と、をさらに有する。第2ギア部材61及びピニオンギア32は、
図5に示すように、機構装着板19bと側板本体19aとの外側面との間に配置されている。第2ギア部材61は、第1ギア部材60の回転をピニオンギア32に回転方向を整合させて伝達するための中間ギアである。第2ギア部材61は、側板本体19aのボス部19c及び機構装着板19bに転がり軸受を介して回転自在に支持されている。
図5及び
図8に示すように、第2ギア部材61には、トラバースカム軸63が一体回転可能に連結されている。トラバースカム軸63の第1側板7a側の端部には、非円形部63aが形成され、第2ギア部材61は、非円形部63aに係合してトラバースカム軸63を回転させる。
【0048】
ピニオンギア32は、側板本体19aに装着された第3軸受18cにより第1側板7aにスプール軸14回りに回転自在かつ軸方向移動自在に装着されている。ピニオンギア32は、クラッチ制御機構20により制御されて軸方向にクラッチオン位置とクラッチオフ位置との間でスプール軸14の外周側を移動する。ピニオンギア32は、クラッチヨーク41に係合してスプール軸14方向に移動する。
【0049】
第2回転伝達機構25は、
図5及び
図8に示すように、ハンドル2が一体回転可能に連結された駆動軸30と、駆動ギア31と、第3ギア部材62と、ドラグ機構23と、を有している。
【0050】
駆動軸30は、
図5に示すように、機構装着板19b及び第1側カバー8aの第1ボス部8cに回転自在に支持されている。駆動軸30は、ローラ型のワンウェイクラッチ37により第1側カバー8aの第1ボス部8cに支持されている。駆動軸30は、ワンウェイクラッチ37により糸繰り出し方向の回転が禁止されている。駆動ギア31は、駆動軸30に回転自在に装着されている。駆動ギア31は、ドラグ機構23により糸繰り出し方向の回転が制動される。これにより、スプール10の糸繰り出し方向の回転が制動される。
【0051】
第3ギア部材62は、ハンドル2の回転をスプール10に伝達するために設けられている。第3ギア部材62は、遊星減速機構のキャリアに一体回転可能に連結されている。第3ギア部材62は、駆動ギア31に噛み合い、ハンドル2の回転を遊星減速機構のキャリアに伝達する。キャリアに伝達された回転は、第1ギア部材60及び第2ギア部材61を介してピニオンギア32に伝達される。第3ギア部材62から第2ギア部材61までの減速比は概ね「1」である。
【0052】
ドラグ機構23は、
図5に示すように、ワンウェイクラッチ37の内輪37aに一体回転可能に連結されかつ内輪37aによって押圧されるドラグ板38を有する。ドラグ板38は、駆動軸30に一体回転可能に連結される。ドラグ板38は、ドラグ座金39を介して駆動ギア31を押圧する。ドラグ機構23の制動力(ドラグ板38を押圧する押圧力)は、駆動軸30に螺合するスタードラグ3によって調整される。
【0053】
<出力調整部材>
出力調整部材5は、モータ12の出力を複数段階に調整操作するためにリール本体1に設けられる。
図12にグラフによって出力調整部材5の移動位置(回転角度)とモータ出力との関係を示す。
図12では、縦軸にモータ出力を、横軸に出力調整部材5の移動位置をとっている。また、各段階の数値をかっこ付き数字によって示している。さらに、
図12では、モータ12の出力を減少させる方向及び増加させる方向を矢印で示し、出力が減少する方向を増加する方向によりも太い線で図示する。
【0054】
図12に示すように、出力調整部材5は、モータ12の回転を停止させる回転停止位置と、最大出力位置との間で回転可能である。出力調整部材5は、この実施形態では、モータ12の出力を1段から31段(M段の一例)の31段階(M段階の一例)に調整可能である。なお、モータ12の回転停止位置でから最大出力位置(31段)までの回転角度は、後述するように、例えば100度である。出力調整部材5の操作範囲は、例えば100度であるため、各段階の移動距離(移動角度)は、おおむね3度である。
【0055】
モータ制御部84は、出力調整部材5の移動位置に応じて、N(Nは自然数)段と(N+1)段との少なくとも2段階にモータ12の出力を調整可能である。この実施形態では、前述したように1段からから31段までの31段階にモータ12の出力を調整可能である。この実施形態では、1段から31段の各段において、(N−1)段、N段及び(N+1)段における、増加しきい値及び減少しきい値の移動位置について以下に説明する。なお、各段階の出力の増加量及び減少量は、この実施形態では、全ての段階で同じである。
回転停止位置から最大出力位置に向かう出力増加方向に出力調整部材5を操作すると、それぞれの段階の出力増加しきい値T(N)Uの回転位置でモータ12の出力が1段階増加するようにモータ制御部84がモータ12を制御する。また、最大出力位置から回転停止位置に向かう出力減少方向に出力調整部材5を操作すると、それぞれの段階の出力減少しきい値T(N)Dの回転位置でモータ12の出力が1段階減少するようにモータ制御部84がモータ12を制御する。
【0056】
出力調整部材5のN段から(N+1)段への移動に応じて、モータ制御部84がモータ12の出力を増加させる第N出力増加しきい値(増加位置)T(N)Uと、(N+1)段からN段への移動に応じて、モータ制御部84がモータ12の出力を減少させる第N出力減少位しきい値(減少位置)T(N)Dと、が出力調整部材5の移動方向に所定距離PRD離反して設けられる。
【0057】
また、出力調整部材5のN段から(N−1)段への移動に応じて、モータ制御部84がモータ12の出力を減少させる第(N−1)出力減少しきい値(減少位置)T(N−1)Dと、(N−1)段からN段への移動に応じて、モータ制御部84がモータ12の出力を増加させる第(N−1)出力増加しきい値(増加位置)T(N−1)Uと、が出力調整部材5の移動方向に所定距離PRD離反して設けられる。
【0058】
さらに、各段の出力増加しきい値T(N)U及び出力減少しきい値T(N)Dは、それぞれ同じ移動距離SDで並べて配置される。所定距離PRDと各段の移動距離SDは、この実施形態では同じである。また、出力増加しきい値T(N)Uは、1段階高い出力減少しきい値T(N+1)Dと同じ回転位置である。したがって、各段階で出力が上昇する折れ線が、出力が減少する折れ線よりも一段階だけ最大出力位置側にシフトしている。
【0059】
上記のようにしきい値が設定されると、出力調整部材5が回転停止位置から最大出力位置に向けて操作される場合、各段階の出力増加しきい値T(N)U毎に出力が段階的に増加する。また、出力調整部材5が最大出力位置から回転停止位置に向けて操作される場合、各段階の出力減少しきい値T(N)D毎に出力が段階的に減少する。これらの場合は、段階毎の移動距離SDでモータ12の出力が増減する。
【0060】
一方、出力調整部材5が、(N−1)段からN段に操作された後に再度(N−1)段に操作される場合、移動位置が(N−1)段の出力増加しきい値T(N−1)Uを超えると、出力が一段階増加してN段の出力になる。そして、N段の出力に調整された状態で出力調整部材5が(N−1)段に操作されると、(N−1)段の出力増加しきい値T(N−1)Uを超えてさらに(N−1)段の出力減少しきい値T(N−1)Dを超えると、出力が一段階減少して(N−1)段の出力に戻る。
【0061】
また、出力調整部材5が、N段から(N−1)段に操作された後に再度N段に操作される場合、移動位置が(N−1)段の出力減少しきい値T(N−1)Dを超えると、出力が一段階減少して(N−1)段の出力になる。(N−1)段の出力に調整された状態で出力調整部材5がN段に操作されると、(N−1)段の出力減少しきい値T(N−1)Dを超えてさらに(N−1)段の出力増加しきい値T(N−1)Uを超えると、出力が一段階増加してN段の出力に戻る。
【0062】
このように、ある段階から一段階増加又は減少する操作を行った後に、元の段階に戻す操作を行うときの出力調整部材5の移動距離が、出力増加方向及び出力減少方向に連続的に操作する場合の出力調整部材5の移動距離よりも長くなる。
【0063】
また、出力増加しきい値T(N)Uを、1段階高い出力減少しきい値T(N+1)Dと同じ回転位置に配置すると、N段において、第N出力減少しきい値T(N)Dが第N出力増加しきい値T(N)Uよりも出力調整部材5の回転停止位置側に配置される。これにより、モータ12の出力を増加させる操作を行うと、意志に反して出力が減少しにくくなり、モータ12の出力を減少させる操作を行うと、意志に反して出力が増加しにくくなる。
【0064】
出力調整部材5は、
図2に示すように、第1側板7aの側板本体19aと第1側カバー8aとの間に設けられる。この実施形態では、
図4及び
図6に示すように、出力調整部材5は、水深表示部4のケース部材36の後部の外側面に立設された支持軸36aに回転自在に装着される。出力調整部材5は、第1側(
図4左側)がケース部材36に対向して配置される。第2側(
図4右側)は、第1側カバー8aに対向して配置される。
【0065】
出力調整部材5は、支持軸36aに装着された状態で第1側板7aと第1側カバー8aの間に配置される。出力調整部材5は、第1側(
図4左側)がケース部材36に対向して配置される。第2側(
図4右側)は、第1側カバー8aに対向して配置される。
【0066】
支持軸36aは、先端面に出力調整部材5をねじ部材54が螺合する雌ねじ穴36bを有する。ねじ部材54は、出力調整部材5を支持軸36aに対して抜け止めするために設けられる。ねじ部材54は大径の頭部54aを有する。
【0067】
回転規制部55は、出力調整部材5の操作開始位置からの回転を規制するとともに、出力調整部材5の操作開始位置への回転を規制する。操作開始位置は、出力調整部材5によってモータ12を係止させる位置である。モータ12の回転を停止させるための位置である。回転規制部55は、ケース部材36に設けられる係合部56と、出力調整部材5に設けられた位置決めピン57と、を有する。係合部56は、支持軸36aの周囲において、ケース部材36の外側面に形成された、一対の円弧凹部36cと、一対の係合凹部36dと、突出部36eと、を有する。一対の円弧凹部36cと、一対の係合凹部36dは、それぞれ180°間隔を隔てて形成されている。係合凹部36dは、球状に凹んで形成され、円弧凹部36cと隣接して配置される。係合凹部36dは、操作開始位置に対応して設けられる。円弧凹部36cは、出力調整部材5の回転中心Cと同芯の円弧で形成され、出力調整部材5の回転角度に対応して設けられる。出力調整部材5の回転角度、すなわち、操作範囲ROは、例えば、80°から120°の範囲である。第1実施形態では、操作範囲ROは100°である。ただし、出力調整部材5の操作範囲ROは、これに限定されない。突出部36eは、係合凹部36dと円弧凹部36cとの間に、係合凹部36d及び円弧凹部36cよりも突出して形成される。突出部36eは、出力調整部材5の回転を規制するために設けられる。
【0068】
出力調整部材5の回転角度が大きい方がモータ12の出力調整の1段階ごとに割り振ることができる移動範囲(回転範囲)が大きくなるため、出力の調整操作を各段階で安定して行える。しかし、出力調整部材5の回転角度を大きくし過ぎると、複数段階にわたる操作を迅速に行いにくい。また、リール本体の形状によっては回転角度を大きくできない場合がある。これらの制約の中で最大限の角度に出力調整部材5の回転角度を設定するのが好ましい。
【0069】
出力調整部材5は、例えば合成樹脂製の概ね環状の部材である。出力調整部材5は、
図6に示すように、外周面に径方向に突出する操作突起5aを有する。操作突起5aを除く出力調整部材5の外周面には、滑り止めのための軸方向に沿った多数の溝5bが周方向に間隔を隔てて形成される。出力調整部材5の外側面には、出力調整部材5の回転範囲を規制するための規制突起5cが軸方向に突出して形成される。第1側カバー8aは、出力調整部材5を第1側カバー8aよりも突出させるための平面視矩形形状の開口8eを有している。規制突起5cは、開口8eの内側面に接触して出力調整部材5の回転範囲を規制する。
【0070】
図9に示すように、出力調整部材5のケース部材36と対向する内側面には、検出子34を収容する一対の検出子収容部5dと、出力調整部材5を操作開始位置に位置決めするための一対の位置決めピン57を収容する一対の位置決め収容部5eと、が周方向に間隔を隔てて形成される。一対の検出子収容部5dと、一対の位置決め収容部5eは、それぞれ180°間隔で円形に凹んで形成される。
【0071】
図6に示すように、位置決めピン57は、一対の位置決め収容部5eに進退自在に装着される。位置決めピン57は、一対のコイルばね58によってケース部材36に向けて付勢される。コイルばね58は、位置決め収容部5eに収容される。位置決めピン57は半球形状の頭部57aを有し、頭部57aが係合凹部36d及び円弧凹部36cに係合する。この位置決めピン57及び係合凹部36dを設けることにより、出力調整部材5が操作開始位置に確実に位置決めされる。また、係合凹部36dと円弧凹部36cの間に突出部36eが形成されるため、操作開始位置に位置決めされた出力調整部材5が、使用者の意志に反して調整開始位置から回転しにくくなる。これにより、モータ12が不意に回転しにくくなる。
【0072】
出力調整部材5は、
図4に示すように、中心部に形成され、支持軸36aに第1弾性部材46及び第2弾性部材47を介して回転自在に支持される貫通孔5fを有する。また出力調整部材5は、貫通孔5fの第1側に形成された第1接触面5gと、第2側に形成された第2接触面5hと、を有する。第1接触面5gは、第1弾性部材46と接触及び摺動する。第2接触面5hは、第2弾性部材47と接触及び摺動する。第1接触面5gは、リール本体1を構成するケース部材36と支持軸36aとのいずれに対しても傾斜したテーパ面である。第2接触面5hは、ねじ部材54の頭部54aと支持軸36aとのいずれに対しても傾斜したテーパ面である。第1実施形態では、テーパ面は、支持軸36aに対して30度から60度、好ましくは、40度から50度傾いてコーン状に形成される。
【0073】
第1弾性部材46及び第2弾性部材47は、例えば、NBR(ニトリルブタジエンゴム)又はシリコーンゴム製のOリングを用いている。第1弾性部材46は、出力調整部材5の第1側で、ケース部材36の外側面、出力調整部材5及び支持軸36aの間にそれぞれ直接又は間接的に接触して配置される。第1実施形態では、第1弾性部材46は、第1ワッシャ部材50を介してケース部材36に間接的に接触する。また、第1弾性部材46は、支持軸36a及び第1接触面5gには直接に接触する。第2弾性部材47は、出力調整部材5の第2側で、ねじ部材54の頭部54a、出力調整部材5及び支持軸36aの間にそれぞれ直接又は間接的に接触して配置される。第1実施形態では、第2弾性部材47は、第2ワッシャ部材52を介して頭部54aに間接的に接触する。また、第2弾性部材47は、支持軸36a及び第2接触面5hには直接に接触する。
【0074】
<検出子>
検出子34は、
図4、
図6及び
図9に示すように、出力調整部材5に装着される。具体的には、前述したように出力調整部材5の一対の検出子収容部5dに接着等の適宜の固定手段によって固定される。検出子34は、一対の検出子収容部5dに各別に固定される第1磁石34aと第2磁石34bとを有する。第1磁石34a及び第2磁石34bは、それぞれ出力調整部材5の軸方向に沿って着磁される。第2磁石34bは、第1磁石34aと逆方向に着磁される。この実施形態では、第1磁石34aは、ケース部材36に対向する側がN極に着磁され、検出子収容部5dの底面側がS極に着磁される。反対に第2磁石34bは、ケース部材36に対向する側がS極に着磁され、検出子収容部5dの底面側がN極に着磁される。このように軸方向着磁の第1磁石34aと第2磁石34bを磁束方向が逆になるように配置することによって、径方向着磁の磁石と同じに反応する検出子34を、軸方向着磁の簡素な第1磁石34a及び第2磁石34bによって得ることができる。
【0075】
<位相検出部>
位相検出部35は、前述したように水深表示部4のケース部材36の内部に配置された副回路基板74bに搭載されるホール素子35aである。ホール素子35aは、
図10に示すように、出力調整部材5の回転中心Cに合わせて配置される。このようにホール素子35aを配置することによって、第1磁石34aと第2磁石34bとによって生じる磁束方向の変化をホール素子35aが検出可能になる。この結果、ホール素子35aを用いて、出力調整部材5の回転によって変化する磁束方向を検出して出力調整部材5の回転位相を検出できる。ホール素子35aは、
図10に示すように、径方向着磁の検出子34のN極がホール素子35aに例えば半円形で表示されたマーク35b側にあるときを0°とすると、検出子34が0°の位置において、
図11に示すように出力電圧が最小になる。検出子34が0°から反時計回りにホール素子35aに対して相対回転すると、出力電圧が徐々に上昇し、360°に近づくと出力電圧が最大になり、0°に戻るとまた最小にもどる。これにより、0°から360°までの範囲で出力調整部材5の回転位相をホール素子35aによって検出できる。この実施形態では、例えば、50°から150°程度の範囲でホール素子35aの出力電圧を用いている。ただし、ホール素子35aの出力電圧の角度範囲は、これに限定されない。例えば、230°から330°の範囲等、ホール素子35aの出力特性に応じて適宜選択可能である。
【0076】
<制御系>
図13に示すように、制御システム27のリール制御部70は、モータ12及び表示器72を制御する。リール制御部70は、CPU(中央演算ユニット)を含むマイクロコンピュータによって構成される。リール制御部70には、位相検出部35としてのホール素子35aと、スイッチ操作部6の各スイッチと、スプールセンサ78とが接続されている。また、リール制御部70には制御対象としての表示器72と、モータ駆動回路76と、ブザー80と、他の入出力部82と、が接続されている。スプールセンサ78は、スプール10の回転に連動して回転する図示しない磁石を検出する一対のリードスイッチ(又はホール素子)を有する。一対のリードスイッチはスプール10の回転方向に並べて配置されている。この実施形態では、一対のリードスイッチは、リール本体1のスプール支持部17に設けられる。スプールセンサ78によって、スプール10の回転数(回転位置)及び回転方向を検出できる。モータ駆動回路76は、モータ12をPWM(パルス幅変調)駆動する。すなわち、デューティ比を変化させてモータ12を駆動する。ブザー80は、ケース部材36の内部に収納される。ブザー80は仕掛けが棚位置に到達したり、海底に到達したりすると鳴動する。他の入出力部82は、例えば無線通信部などから構成される。
【0077】
リール制御部70は、ソフトウェアで実現される機能構成として、モータ12を、モータ駆動回路76を介して制御するモータ制御部84と、表示器72を制御する表示制御部86と、を有する。電動リール100は、出力調整部材5の操作によってスプール10の回転速度を31段階に調整可能な速度制御モードと、スプール10に巻き付けられる釣り糸に作用する張力を31段階に調整可能な張力制御モードとを有している。これらは、スイッチ操作部6のスイッチ操作によって切り換え可能である。モータ制御部84は、出力値増加処理と出力減少処理において、各段階で出力調整部材5の異なる位置で出力を変更する。この変更の位置は、前述したように、所定距離PRD離反して配置された出力増加しきい値と出力減少しきい値とによって判断する。
【0078】
<電動リールの操作>
このように構成された電動リール100では、釣りを行うときは、釣り人は釣り竿を持つ手の親指によってクラッチ操作部材11を押し下げ操作する。これにより、クラッチ機構16がクラッチオン状態からクラッチオフ状態に切り換わり、スプール10が自由回転状態になり、仕掛けの自重によって釣り糸が海中に繰り出される。
【0079】
仕掛けに魚が掛かって釣り糸を巻きとるときには、釣り竿を持つ手の親指の先でクラッチ操作部材11を押し上げ操作する。クラッチ操作部材11を押し上げ操作すると、クラッチ機構16がクラッチオン状態に切り換わり、ハンドル2及びモータ12によってスプール10を糸巻取方向に回転させることができる。
【0080】
モータ12により釣り糸を巻きとるときには、釣り竿を持つ手又はハンドル2を操作する手で出力調整部材5を操作する。このとき、出力調整部材5が第1側板7aと第1側カバー8aの間に配置されているため、リール本体1の後部に配置されたクラッチ操作部材11と出力調整部材5とが近くに配置される。このため、サミング操作して手の指先で出力調整部材5を操作できる。このため、出力調整部材5とクラッチ操作部材11とを連携して操作しやすくなる。また、キャスティングが進行して釣り糸の巻き付け量が少なくなると、クラッチ操作部材11を介してサミング操作を行えるので、キャスティング中のサミング操作を釣り糸の巻き付け量にかかわらず安定して行える。
【0081】
出力調整部材5を回転操作すると、検出子34が出力調整部材5とともに回転し、位相検出部35のホール素子35aの出力電圧が変化する。この出力電圧の変化によってリール制御部70は、出力調整部材5の回転角度を検出し、出力増加しきい値及び出力減少しきい値によって、段階毎にモータ駆動回路76を制御して、モータ12の出力を出力調整部材5の回転位置に応じて調整する。このとき、各段階において、出力減少しきい値が出力増加しきい値と所定距離PRD離れて設定されているため、出力調整部材5が微小に移動しても、使用者の意志に反してモータ12の出力が変化しにくくなる。しかも、出力調整部材5を操作してないときに、位置検出部33の出力が変動しても、使用者の意志に反してモータ12の出力が変化しにくくなる。
【0082】
また、出力減少しきい値が出力増加しきい値よりも回転停止位置側に設けられているため、モータ12の出力を増加させる操作を行うと、意志に反して出力が減少しにくくなり、モータ12の出力を減少させる操作を行うと、意志に反して出力が増加しにくくなる。
【0083】
<第1実施形態の変形例1>
図14において、第1実施形態の変形例1では出力減少しきい値と出力増加しきい値との所定距離PRDと、各段階の移動距離SDとが異なり、移動距離SDが所定距離PRDよりも大きい。したがって、一段階高い段階の出力減少しきい値が出力増加しきい値よりも最大出力位置側に離反して設けられる。このため、出力調整部材5の微小な移動又は位置検出部33の出力の変動によるモータ出力の変化がさらに生じにくくなる。
【0084】
<第1実施形態の変形例2>
図15において、第1実施形態の変形例2では出力減少しきい値と出力増加しきい値との所定距離PRDと、各段階の移動距離SDとが異なり、移動距離SDが所定距離PRDよりも小さい。したがって、一段階高い段階の出力減少しきい値が出力増加しきい値よりも回転停止位置側に離反して設けられる。このため、出力調整部材5の微小な移動又は位置検出部33の出力の変動によるモータ出力の変化がさらに生じにくくなる。
このような変形例1及び2であっても、上記実施形態と同様な作用効果を奏する。
【0085】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0086】
(a)上記実施形態では、出力調整部材5を第1側板7aと第1側カバー8aの間に配置したが、本発明はこれに限定されない。
図16おいて、他の実施形態による電動リール200では、出力調整部材105がリール本体1に含まれるケース部材136の後部に設けられる。ケース部材136は、後部に出力調整部材105を収納可能な収納凹部136gを有する。図示しない支持軸は、ケース部材136に両端支持される。このように、ケース部材136の後部に装着される出力調整部材105であってもよい。また、出力調整部材が第1側カバー8a又は第2側カバー8bの外側面に揺動可能に設けられるレバー形状であってもよい。さらに出力調整部材は直線的に移動するものであってもよい。この場合、可変抵抗、リニアスケール、磁石とホール素子等によって出力調整部材の移動位置を検出してもよい。
【0087】
(b)上記実施形態では、位相検出部35としてホール素子35aを例示したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、磁気抵抗により出力が変化する磁気抵抗素子(MR素子)を用いてもよい。
【0088】
(c)上記実施形態では、モータ12がリール本体1に設けられる電動リール100を例に本発明を説明したが、本発明はこれに限定されない。モータがスプール内に配置される電動リールにも本発明を適用できる。
【0089】
(d)上記実施形態では、各段階の出力減少しきい値を出力増加しきい値よりも回転停止位置側に配置したが、各段階の出力減少しきい値を出力増加しきい値よりも最大出力位置側に配置してもよい。
【0090】
(e)上記実施形態では、しきい値として出力増加しきい値と出力減少しきい値とを用いたが、本発明はこれに限定されない。しきい値としては、各段階で一つだけ用い、それ各段階のしきい値と、そのしきい値に所定の値(距離)を加算又は減算した値と、を用いてもよい。
【0091】
<特徴>
上記実施形態は、下記のように表現可能である。
【0092】
(A)電動リール100の制御システム27は、リール本体1に対して回転可能なスプール10を駆動するモータ12を制御する。制御システム27は、出力調整部材5と、モータ制御部84と、を備える。出力調整部材5は、リール本体1に回転可能に設けられ、モータ12の出力を調整するための部材である。モータ制御部84は、出力調整部材5の移動位置に応じて、N(Nは自然数)段と(N+1)段との少なくとも2段階にモータ12の出力を調整可能である。出力調整部材5のN段から(N+1)段への移動に応じて、モータ制御部84がモータ12の出力を増加させる第N増加位置と、(N+1)段からN段への移動に応じて、モータ制御部84がモータ12の出力を減少させる第N減少位置と、が出力調整部材5の移動方向に所定距離PRD離反している。
【0093】
この電動リール100の制御システム27では、N段から(N+1)段にモータ12の出力を増加させる第N増加位置と、(N+1)段からN段にモータ12の出力を減少させる第N減少位置とが異なる移動位置にある。このように第N増加位置と第N減少位置とが異なる移動位置にあるため、出力調整部材5が微小に移動しても、N段から(N+1)段への出力の増加、又は(N+1)段からN段への出力の減少処理が行われにくくなる。これにより、出力調整部材5の同じ移動位置において出力調整部材5が微小に移動しても、使用者の意志に反した出力制御が行われにくくなる。しかも、出力調整部材5を操作してないときに、位置検出部33の出力が変動しても、使用者の意志に反してモータ12の出力が変化しにくくなる。
【0094】
(B)モータ制御部84は、(N−1)段と、N段と、(N+1)段の少なくとも3段階にモータ12の出力を調整可能であってもよい。出力調整部材5のN段から(N−1)段への移動に応じて、モータ制御部84がモータ12の出力を減少させる第(N−1)減少位置と、(N−1)段からN段への移動に応じて、モータ制御部84がモータ12の出力を増加させる第(N−1)増加位置と、が出力調整部材5の移動方向に所定距離PRD離反している。
【0095】
この場合には、第N増加位置と第N減少位置及び第(N−1)増加位置と第(N−1)減少位置がそれぞれ同じ所定距離PRD離反して配置されるので、モータ12の出力を変化させるための出力調整部材5の移動位置を等間隔に配置でき、モータ12の出力制御を簡素化できる。
【0096】
(C)所定距離PRDは、N段の移動距離SDと実質的に同じ距離であってもよい。この場合には、N段の出力調整部材5の移動距離SDと、第N増加位置及び第N減少位置又は第(N−1)増加位置と第(N−1)減少位置との間の所定距離PRDが同じ距離であるので、モータ12の出力を増減する従来の移動位置をシフトさせてそれぞれの増加位置を及び減少位置を設定できる。これにより、出力調整部材5の出力を変更する移動位置の及びその数があまり増加せず、制御の僅かな変更で、使用者の意志に反した出力制御が行われにくくなる。
【0097】
(D)第N減少位置及び第(N−1)増加位置が実質的に同じ移動位置であってもよい。この場合には、出力を減少させる第N減少位置が出力を増加させる第(N−1)増加位置と同じ位置であるので、N段において、第N減少位置が第N増加位置よりも出力調整部材5の移動開始位置(例えば、モータ12の回転停止位置)側に配置される。これにより、モータ12の出力を増加させる操作を行うと、意志に反して出力が減少しにくくなり、モータ12の出力を減少させる操作を行うと、意志に反して出力が増加しにくくなる。
【0098】
(E)出力調整部材5は、モータ12が回転を停止する回転停止位置とモータ12の出力が最大となる最大出力位置との間でリール本体1に移動可能に設けられてもよい。モータ制御部84は、モータ12の出力を、少なくとも1段からM(MはNよりも大きい自然数)段までの複数段階で調整可能である。この場合には、モータ12の出力を多段階に制御できる。
【0099】
(G)制御システム27は、出力調整部材5の移動位置を検出する位置検出部33をさらに備えてもよい。モータ制御部84は、位置検出部33が検出した移動位置と、複数段階に対応して設定された複数のしきい値と、を比較することによって、複数段階のいずれの段階に出力調整部材5が操作されたかを判断する。この場合には、たとえば、それぞれの段階のしきい値に対して前述した所定距離PRDに応じた値を加算又は減算することによって、位置検出部33の検出結果に応じて、それぞれの段階のモータ12の出力の増加又は減少制御を行える。
【0100】
(H)複数のしきい値は、出力調整部材5を回転停止位置から最大出力位置に向けて出力増加方向に移動させたとき用いられる出力増加しきい値T(N)Uと、出力増加方向と反対の出力減少方向に移動させたときに用いられ、出力増加しきい値T(N)Uよりも所定距離PRDだけ回転停止位置側に離反して設定された出力減少しきい値T(N)Dと、をそれぞれ有してもよい。この場合には、複数のしきい値が出力増加しきい値T(N)Uと、所定距離PRDだけ回転停止位置側の出力減少しきい値T(N)Dとを有するので、それぞれの段階の増加位置及び減少位置を個別に設定できる。
【0101】
(I)出力増加しきい値T(N)Uは、一段階だけ出力増加方向側の段階の出力減少しきい値T(N+1)Dと同じ値に設定されてもよい。この場合には、モータ12の出力増加方向への操作を行うと、意志に反して出力が減少しにくくなり、出力減少方向への操作を行うと、意志に反して出力が増加しにくくなる。
【0102】
(J)位置検出部33は、リール本体1及び出力調整部材5の一方に設けられる検出子34と、リール本体1及び出力調整部材5の他方に設けられ、検出子34との相対的な回転位相を検出可能な位相検出部35と、を有してもよい。
【0103】
(K)位相検出部35は、リール本体1に設けられてもよい。この場合には、電気的に動作する位相検出部35がリール本体1に設けられるので、位相検出部35を回路基板(例えば、副回路基板74b)に配置でき、出力調整部材5の取付部分の体積の増加をさらに抑えることができる。
【0104】
(L)位相検出部35は、検出子の回転位相を検出可能なホール素子35aであってもよい。この場合には、回路基板に実装可能なホール素子35aによって検出子34の回転位相を検出するので、出力調整部材5の取付部分の体積の増加をさらに抑えることができる。また、同じ回転位相でホール素子35aの出力が変動しても、使用者の意志に反した出力制御が行われにくくなる。