(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、柄部と除雪部との取付状態や、柄部と把手部との取付状態が、製造誤差や長期使用等によって緩んでしまっている場合には、除雪作業に際して該接続部位にがたつきが発生し、作業性の低下を招いたり、接続部位の変形や破損のリスクを高めたりしてしまうことが懸念される。
【0005】
本発明は、上記例示した問題点等を解決するためになされたものであって、その目的は、除雪作業性の向上、及び、強度の向上を図ることのできる除雪具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0007】
手段1.略棒状の柄部と、
前記柄部の下端部に設けられる除雪部と、
前記柄部の上端部に設けられる把手部とを備え、
積もった雪を前記除雪部の機能面で前方に押して運ぶことのできる除雪具において、
前記柄部と、前記除雪部と、前記把手部とが、樹脂によって一体的に形成され、
前記柄部から、前記柄部の長手方向に対して交差する方向、かつ、前記機能面又はその裏面の法線方向を含む方向に突出する補強部が設けられて
おり、
前記補強部は、前記柄部から離間する把持部を備え、かつ、
前記補強部は、
前記補強部の延在方向に沿って延び、断面略円弧状、又は、断面略コ字状をなす補強ベース部と、
前記補強ベース部の内側に形成される空間に形成されたリブとを備えており、
前記補強ベース部は、前記柄部と対向する側とは反対側に開口しており、
前記柄部は、
前記柄部の延在方向に沿って延び、断面略円弧状、又は、断面略コ字状のベース部と、
前記ベース部の内側に形成される空間に形成されたリブとを備えており、
前記柄部のうち少なくとも前記補強部の前記把持部と対向して延びている部位に関し、前記ベース部は、前記補強部と対向する側とは反対側に開口していることを特徴とする除雪具。
【0008】
手段1によれば、柄部と、除雪部と、把手部とが樹脂によって一体的に形成されているため、柄部と除雪部との接続部位や、柄部と把手部との接続部位におけるがたつきの発生を回避することができる。従って、接続部位ががたついて除雪具が持ち難くなったり(除雪作業に際して力を掛け難くなったり)、接続部位の変形や破損のリスクが高まったりする等といった接続部位のがたつきに起因する各種不具合を払拭することができ、除雪作業性の向上や、耐久性の向上等を図ることができる。さらに、柄部、除雪部、及び、把手部が別体で構成される場合に比べ、製造に際しての組立作業を省略することができるとともに、パーツ管理がし易く、製造作業性の向上、製造コストの低減等を図ることができる。
【0009】
また、除雪作業に際して応力のかかり易い柄部というのは、作業者が手で握る部位でもあり、使用中の損傷等があってはならない。このため、一般に、柄部は、鉄パイプや木の棒等で構成されることが多い。しかしながら、柄部を金属製や木製とする場合には、重量化、高コスト化等を招くことが懸念される。この点、本手段1では、柄部に対応して補強部が設けられていることから、柄部を樹脂製としても、該柄部において十分な強度を確保することができる。従って、柄部の損傷等を抑制しつつ、軽量化や低コスト化等を図ることができる。また、例えば、除雪作業に際して、柄部から、該柄部の長手方向に対して交差する方向に突出した補強部に対し、手や腕の一部をあてがったり、補強部を握ったりすることで、除雪具(柄部)の回転を防止することができる。
【0010】
加えて、補強部が、柄部から、柄部の長手方向に対して交差する方向、かつ、機能面又はその裏面の法線方向を含む方向に突出するように構成されていることで、積もった雪を機能面で前方に押す、又は、積もった雪を機能面に載せて持ち上げる際の応力に対する強度を効果的に高めることができる。
【0011】
また、補強部の把持部と、柄部との間が離間していることから、除雪作業に際し、両者間に手を差し入れて、補強部の把持部又は柄部を握ることが可能となる。つまり、例えば、柄部に対して単にリブ状の補強部を突出させるだけで、両者間に開口部等の隙間が形成されない場合には、該部位が太くなって非常に握り難くなってしまったり、或いは、かかる状況を避けるべく、補強部の位置を好適に設定することができなくなってしまったりすることが懸念される。その点、本手段のように、両者間に隙間が形成されることによって、補強部の把持部、又は、柄部のうち把持部との対向部位を単独で比較的容易に握ることができることから、かかる懸念を払拭することができる。従って、効果的に強度の向上を図りつつ、補強部が形成されている部位の持ち易さの向上、ひいては、除雪作業性の向上、及び、除雪具の運搬性の向上を図ることができる。
【0012】
特に、補強部が、柄部から除雪部の機能面の法線方向を含む方向(前方)に向けて突出している場合には、除雪具を寝かせ気味の姿勢にして積もった雪を機能面ですくう等の作業を行う場合に、柄部よりも上方に位置することとなる補強部の把持部を握ることができる。この場合、柄部を直接握る場合に比べ、柄部を所定の角度に寝かせるまでに膝や腰などを屈める量を少なくすることができ、身体への負担を軽減させることができる。また、補強部を直接握ることで、除雪作業中の除雪具(柄部)の回転を比較的容易かつ確実に防止することができる。
【0013】
また、補強部を構成する材料の使用量を抑制しつつ、補強部の強度を効果的に向上させることができる。従って、補強部の強度を確保しつつ、軽量化等を図ることができる。特に、後記する手段4のように、補強部を柄部と樹脂で一体的に形成する場合においては、成形性を確保した上で、補強部の十分な強度を得ることができる。
【0014】
また、前記補強ベース部は、前記柄部と対向する側とは反対側に開口しているので、補強部の把持部と、柄部との間に手を差し入れて、補強部の把持部を握る場合の持ち易さを向上させることができる。また、補強部の把持部と、柄部との間に手を差し入れて、柄部を握る場合であっても、補強部の把持部と、柄部との間に手を差し入れる際に、手や指先などがリブに当たったり、引っ掛かったりしてしまうといった事態を回避することができる。
【0015】
また、柄部を構成する樹脂材料の使用量を抑制しつつ、成形性を確保した上で、柄部の強度を効果的に向上させることができる。従って、柄部を、除雪部及び把手部と樹脂で一体形成する構成であっても、柄部の強度を確保しつつ、軽量化等を図ることができる。
【0016】
また、前記柄部のうち少なくとも前記補強部の前記把持部と対向して延びている部位に関し、前記ベース部は、前記補強部と対向する側とは反対側に開口しているので、補強部の把持部と、柄部との間に手を差し入れて、柄部を握る場合の持ち易さを向上させることができる。また、補強部の把持部と、柄部との間に手を差し入れて、補強部を握る場合であっても、補強部の把持部と、柄部との間に手を差し入れる際に、手や指先などがリブに当たったり、引っ掛かったりしてしまうといった事態を回避することができる。
【0017】
手段2.前記補強部
の前記把持部は
、前記柄部に対して平行するようにして延びていることを特徴とする手段1に記載の除雪具。
【0018】
手段3.前記除雪部は、除雪作業に際して積もった雪の下方に潜り込まされるすくい部を備え、
少なくとも前記すくい部の表面によって前記機能面が構成され、
前記柄部の下端部は、前記すくい部の裏面側において、前記すくい部と連接するようにして前記除雪部と接続されていることを特徴とする手段1又は2に記載の除雪具。
【0019】
手段3によれば、例えば、柄部を、除雪部のうち、すくい部から離間した位置に接続した場合に比べ、すくい部に雪を載せてすくい上げた場合に、すくい部を柄部で支持し易くなる上、すくい部の強度の向上をも図ることができる。また、柄部からの力をすくい部へ掛け易くなり、すくい部を積もった雪の下方に潜り込ませる作業性の向上、ひいては、積もった雪を前方に押して運ぶ作業性の向上等を図ることができる。
【0020】
また、本手段3の構成を採用することで、除雪部と柄部との間の力の伝達が好適に行われることから、除雪部と、柄部との接続部位に対してより大きな力が作用することが懸念される。この点、上記手段1に記載のように、柄部と除雪部とが一体形成されていることによって、該接続部位における強度の向上が図られるとともに、応力の集中が抑制され、該接続部位における変形や損傷等を抑制することができる。
【0021】
手段4.前記補強部は、前記柄部と一体的に形成されていることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の除雪具。
【0022】
手段4によれば、補強部と柄部との接続部位における強度の向上を図ることができる。また、補強部が別体で構成されるような場合、すなわち、除雪具が複数の部材で構成される場合に比べ、製造作業性の向上、製造コストの低減等を図ることができるといった作用効果がより一層奏されることとなる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、一実施形態について図面を参照して説明する。
図1〜
図3等に示すように、積もった雪を除去する場合に使用される除雪具1は、真っ直ぐに延びる略棒状の柄部2と、柄部2の下端部に設けられる除雪部3と、柄部2の上端部に設けられる把手部4とを備え、路面等に積もった雪を除雪部3の機能面6で前方に押して運ぶことができるように構成されている。本実施形態では、柄部2と、除雪部3と、把手部4とが、ポリプロピレンによって一体的に形成されている。尚、柄部2が鉛直方向に延び、かつ、除雪部3が下側に位置する姿勢を除雪具1の「起立姿勢」と称し、起立姿勢においては、柄部2に対して直交する方向のうち、機能面6が向いている方向を「前方」とする。
【0025】
除雪部3は、除雪具1を起立姿勢とした状態において、正面視略矩形状をなすすくい部11と、すくい部11の上縁部から前方に延出する返し部12と、すくい部11の左右の側縁部から前方に延出する側壁13とを備えている。本実施形態のすくい部11は、後方に凸となる縦断面略円弧状をなしている。また、返し部12、及び、側壁13は、すくい部11に対して約90度程度傾いている。但し、返し部12のうち、すくい部11との連接部位については、両者間を比較的滑らかに連続させるようにして湾曲形成されている。尚、すくい部11の曲率は、当該連接部位の曲率よりも小さく構成されている。
【0026】
また、例えば、路面の除雪作業に際しては、除雪具1を寝かせ気味の姿勢としたまま、路面に沿って除雪具1を前方の積雪へ押し込むことで、すくい部11が積雪の下方に潜り込まされることとなり、結果として、雪がすくい部11にすくわれた格好となる。さらに、(除雪具1の角度等にもよるが)除雪具1をその姿勢のまま前方に押し込むことによって、すくい部11によってすくわれた雪が、すくい部11上を柄部2側へ相対的に変位する(すくい部11をせり上がっていく)こととなる。やがて、該雪がすくい部11の上端部に立設された返し部12に当接すると、それ以上の柄部2側への相対変位が規制されるようになっている。尚、本実施形態では、すくい部11の表面(前面)、及び、すくい部11の表面と連接する返し部12の湾曲面によって機能面6が構成されている。
【0027】
また、
図4、
図5等に示すように、柄部2の下端部は、除雪部3に対し、返し部12の裏面側において、除雪部3の左右方向中央部を含み、かつ、すくい部11の上端部(
図4では右側の端部、
図5では左側の端部)を含む範囲と連接するようにして接続されている。さらに、柄部2の長手方向に対するすくい部11の先端部の角度が−30度〜45度の範囲内(本例では、例えば、約0度〜25度)となるように構成されている。尚、本実施形態では、機能面6を上向きにして除雪具1を平らな床面に寝かせて置いた場合、除雪部3(すくい部11)の下縁部近傍部位と、把手部4とが接地するが、柄部2は接地しない構成となっている。
【0028】
また、
図1等に示すように、除雪部3には、除雪具1を起立姿勢とした状態において前方に突出し、すくい部11から返し部12にかけて上下方向に延在する断面略コ字状の凸条部15が設けられている。本実施形態では、凸条部15は、左右方向において互いに所定距離を隔てて5本設けられている。さらに、複数の凸条部15のなかには除雪具1の左右方向中央部に対応して設けられたものがあり、当該凸条部15の裏面側に対して柄部2の下端部の少なくとも一部が接続されている(
図3等参照)。尚、すくい部11の表面(前面)には、凸条部15を除く部位において、除雪具1を起立姿勢とした状態において前方に突出するエンボス部16(小さな突起)が複数設けられている。
【0029】
加えて、
図2等に示すように、柄部2と除雪部3との接続部位を補強するべく、柄部2のうち後述する補強部8よりも若干除雪部3側に位置した部位から柄部2の下端部までの部位と、除雪部3のうち左右方向において、除雪部3の左右側辺部よりも若干除雪部3の中央側に位置した部位から柄部2までの部位との間を連結する略三角板状の補助連結部18が左右一対で設けられている。補助連結部18は、柄部2の長手方向と平行するようにして延在しており、本実施形態では、除雪具1を起立姿勢とした状態における柄部2の前縁部に補助連結部18が連結されている。このため、除雪具1を起立姿勢とした状態における柄部2の前端部と、補助連結部18の前面とが面一となっている。
【0030】
尚、
図3に示すように、除雪具1を起立姿勢とした状態における補助連結部18の後面側には、補助連結部18のうち柄部2及び除雪部3のどちらにも連接していない辺部から後方に突出する縁補強リブ19aや、当該縁補強リブ19aと除雪部3との間を連結する連結補強リブ19bが設けられているが、
図2に示すように、補助連結部18の前面側には、補助連結部18の前面と除雪部3との間を連結する三角板状の比較的小さな三角補強リブ19cのみが設けられている。
【0031】
また、把手部4は、除雪具1を起立姿勢とした状態において前後に開口する略D字状をなしており、柄部2の長手方向に対して直交する方向に延びる略円筒状の握り部20を備えている。
【0032】
さて、本実施形態では、除雪具1を起立姿勢とした状態において柄部2から前方に突出する補強部8が設けられている。補強部8は、柄部2から離間するとともに、柄部2に対して平行に延びる把持部21と、把持部21の上端部及び下端部と、柄部2との間をそれぞれ連結する上連結部22及び下連結部23とを備えている。さらに、本実施形態では、補強部8についてもポリプロピレンによりなり、柄部2に対し一体的に形成されている。
【0033】
また、上連結部22及び下連結部23は、柄部2の長手方向に直交する方向に対して傾斜して延びている。さらに、
図1、
図4等に示すように、補強部8(上連結部22、把持部21、及び、下連結部23)は、補強部8の延在方向に沿って一続きに延びる断面略円弧状の補強ベース部24と、補強ベース部24の内側に形成される空間を補強ベース部24の延在方向において複数に仕切るようにして形成された補強内リブ25とを備えている。本実施形態の補強ベース部24は、上連結部22、把持部21、及び、下連結部23のいずれの部位においても、内径及び外径がほぼ一定となっている。さらに、補強内リブ25は、上連結部22、把持部21、及び、下連結部23のいずれに形成されたものであっても、柄部2の長手方向に対して直交する方向に延びている。
【0034】
また、
図5等に示すように、補強ベース部24は、柄部2と対向する側とは反対側に開口している。つまり、補強部8の把持部21と、柄部2との間に手を差し入れて、補強部8の把持部21を握る場合、基本的に、掌は、補強内リブ25には当接せず、補強ベース部24に当接することとなる。
【0035】
さらに、
図3、
図4に示すように、本実施形態では、柄部2についても、柄部2の延在方向(長手方向)に沿って柄部2の上端部から下端部にかけて延びる断面略円弧状のベース部31と、ベース部31の内側に形成される空間をベース部31の延在方向に沿って複数に仕切るようにして形成された内リブ32とを備えている。加えて、柄部2については、ベース部31の内側において、ベース部31の長手方向に沿ってベース部31の上端部から下端部にかけて延びる縦リブ33を備えている。
【0036】
また、
図5等に示すように、ベース部31は、補強部8の把持部21と対向する側とは反対側に開口している。つまり、補強部8の把持部21と、柄部2との間に手を差し入れて、柄部2を握る場合、基本的に、掌は、内リブ32には当接せず、ベース部31に当接することとなる。
【0037】
加えて、上連結部22の下面を支持した場合の除雪具1の重心は、当該上連結部22よりも下方に位置しており、上連結部22の下面を支持した場合の除雪具1を、除雪部3が下向きとなる姿勢(起立姿勢に近い姿勢)で安定させることができる。従って、上連結部22の下面を支持しつつ、補強部8や柄部2を持つことによって、把手部4を持つ場合よりも除雪具1を短く持つ場合の除雪具1の持ち運び易さを向上させることができる。
【0038】
以上詳述したように、本実施形態によれば、柄部2と、除雪部3と、把手部4とが樹脂によって一体的に形成されている。このため、柄部2と除雪部3との接続部位や、柄部2と把手部4との接続部位におけるがたつきの発生を回避することができる。従って、接続部位ががたついて除雪具1が持ち難くなったり(除雪作業に際して力を掛け難くなったり)、接続部位の変形や破損のリスクが高まったりする等の接続部位のがたつきに起因する各種不具合を払拭することができ、除雪作業性の向上や、耐久性の向上等を図ることができる。さらに、柄部2、除雪部3、及び、把手部4が別体で構成される場合に比べ、製造に際しての組立作業を省略することができるとともに、パーツ管理がし易く、製造作業性の向上、製造コストの低減等を図ることができる。
【0039】
また、除雪作業に際して応力のかかり易い柄部2というのは、作業者が手で握る部位でもあり、使用中の損傷等があってはならない。このため、一般に、柄部2は、鉄パイプや木の棒等で構成されることが多い。しかしながら、柄部2を金属製や木製とする場合には、重量化、高コスト化等を招くことが懸念される。この点、本実施形態では、柄部2に対応して補強部8が設けられていることから、柄部2を樹脂製としても、該柄部2において十分な強度を確保することができる。従って、柄部2の損傷等を抑制しつつ、軽量化や低コスト化等を図ることができる。特に、本実施形態では、補強部8についても、柄部2と一体的に形成されていることから、かかる作用効果がより一層顕著に奏されることとなる。
【0040】
さらに、補強部8は、柄部2から離間するとともに、柄部2に対して略平行に延びる把持部21と、把持部21の上端部及び下端部と、柄部2との間を連結する上連結部22及び下連結部23を備えている。このように、補強部8の把持部21と、柄部2との間が離間していることによって、除雪作業に際し、両者間に手を差し入れて、補強部8の把持部21又は柄部2を握ることが可能となる。つまり、例えば、柄部2に対して単にリブ状の補強部を突出させるだけで、両者間に開口部等の隙間が形成されない場合には、該部位が太くなって非常に握り難くなってしまったり、或いは、かかる状況を避けるべく、補強部8の位置を好適に設定することができなくなってしまったりすることが懸念される。その点、本実施形態のように、両者間に隙間が形成されることによって、補強部8の把持部21、又は、柄部2のうち把持部21との対向部位を単独で比較的容易に握ることができることから、かかる懸念を払拭することができる。従って、効果的に強度の向上を図りつつ、補強部8が形成されている部位の持ち易さの向上、ひいては、除雪作業性の向上、及び、除雪具1の運搬性の向上を図ることができる。
【0041】
特に、本実施形態では、補強部8が、除雪具1を起立姿勢とした状態において柄部2から前方に突出するようにして設けられている。このため、除雪具1を寝かせ気味の姿勢にして積もった雪を機能面6ですくう等の作業を行う場合に、柄部2よりも上方に位置することとなる補強部8の把持部21を握ることができる。この場合、柄部2を直接握る場合に比べ、柄部2を所定の角度に寝かせるまでに膝や腰などを屈める量を少なくすることができ、身体への負担を軽減させることができる。また、補強部8を直接握ることで、除雪作業中の除雪具1(柄部2)の回転を比較的容易かつ確実に防止することができる。加えて、補強部8が、除雪具1を起立姿勢とした状態において柄部2から前方に突出するようにして設けられていることで、積もった雪を機能面6で前方に押す、又は、積もった雪を機能面6に載せて持ち上げる際の応力に対する強度を効果的に高めることができる。
【0042】
また、本実施形態では、柄部2の下端部が、返し部12の裏面側において、すくい部11と連接するようにして接続されている。このため、例えば、柄部2を、除雪部3のうち、すくい部11から離間した位置に接続した場合に比べ、すくい部11に雪を載せてすくい上げた場合に、すくい部11を柄部2で支持し易くなる上、すくい部11の強度の向上をも図ることができる。さらに、柄部2からの力をすくい部11へ掛け易くなり、すくい部11を積もった雪の下方に潜り込ませる作業性の向上、ひいては、積もった雪を前方に押して運ぶ作業性の向上等を図ることができる。
【0043】
尚、すくい部11と柄部2とを直接的に接続する構成を採用することで、除雪部3と柄部2との間の力の伝達が好適に行われることから、除雪部3と、柄部2との接続部位に対してより大きな力が作用することが懸念される。この点、上記のように、柄部2と除雪部3とが一体形成されていることによって、該接続部位における強度の向上が図られるとともに、応力の集中が抑制され、該接続部位における変形や損傷等を抑制することができる。
【0044】
また、補強部8は、補強部8の延在方向に沿って延びる断面略円弧状の補強ベース部24と、補強ベース部24の内側に形成される空間を補強ベース部24の延在方向において複数に仕切るようにして形成された補強内リブ25とを備えている。かかる構成を採用することにより、補強部8を構成する材料の使用量を抑制しつつ、補強部8の強度を効果的に向上させることができる。従って、補強部8の強度を確保しつつ、軽量化等を図ることができる。特に、本実施形態のように、補強部8を柄部2と樹脂で一体的に形成する場合においては、成形性を確保した上で、補強部の十分な強度を得ることができる。
【0045】
さらに、補強ベース部24は、柄部2と対向する側とは反対側に開口している。つまり、補強部8の把持部21と、柄部2との間に手を差し入れて、補強部8の把持部21を握る場合の持ち易さを向上させることができる。また、補強部8の把持部21と、柄部2との間に手を差し入れて、柄部2を握る場合であっても、補強部8の把持部21と、柄部2との間に手を差し入れる際に、手や指先などが補強内リブ25に当たったり、引っ掛かったりしてしまうといった事態を回避することができる。
【0046】
加えて、柄部2は、柄部2の延在方向に沿って延びる断面略円弧状のベース部31と、ベース部31の内側に形成される空間をベース部31の延在方向において複数に仕切るようにして形成された内リブ32と、ベース部31の内側において、ベース部31の長手方向に沿ってベース部31の上端部から下端部にかけて延びる縦リブ33とを備えている。かかる構成を採用することにより、柄部2を構成する樹脂材料の使用量を抑制しつつ、成形性を確保した上で、柄部2の強度を効果的に向上させることができる。従って、柄部2を、除雪部3及び把手部4と樹脂で一体形成する構成であっても、柄部2の強度を確保しつつ、軽量化等を図ることができる。
【0047】
さらに、ベース部31は、補強部8と対向する側とは反対側に開口している。つまり、補強部8の把持部21と、柄部2との間に手を差し入れて、柄部2を握る場合の持ち易さを向上させることができる。また、補強部8の把持部21と、柄部2との間に手を差し入れて、補強部8を握る場合であっても、補強部8の把持部21と、柄部2との間に手を差し入れる際に、手や指先などが内リブ32に当たったり、引っ掛かったりしてしまうといった事態を回避することができる。
【0048】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0049】
(a)上記実施形態において、補強部8の構成については特に限定されるものではなく、例えば、
図6〜
図8に示すように、補強部8の内側において、補強部8の延在方向に沿って補強部8の延在方向全域に延びる補強縦リブ41を設けることとしてもよい。また、把持部21の長さは特に限定されるものではなく、例えば、
図6、
図7に示すように、上記実施形態の除雪具1よりも、上連結部22の位置を下方に設定することとしてもよい。尚、
図7に示すように、補助連結部18の前面(
図7では上側を向いている面)を柄部2の前縁部よりも後方に位置させるように構成してもよいが、除雪作業に際して補助連結部18の前面に雪が積もってしまうことを抑制するべく、上記実施形態のように、補助連結部18の前面と、柄部2の前縁部とを面一にすることが望ましい。
【0050】
(b)上記実施形態では、補強部8が、除雪具1が起立姿勢にある状態において柄部2から前方に突出するようにして設けられているが、かかる構成に代えて、又は、加えて、除雪具1が起立姿勢にある状態において柄部2から後方に突出する補強部を設けることとしてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、補強部8の把持部21の上端部と下端部とがそれぞれ上連結部22及び下連結部23によって柄部2と連結されているが、特にかかる構成に限定されるものではない。例えば、補強部8及び柄部2の強度をより一層向上させるべく、把持部21の上下方向中間位置と柄部2との間を連結する連結部を設けてもよい。さらに、例えば、除雪具1を縦向きにして持ち歩いたり、立て掛けたりする際に、把持部21の上部に環状体を引っ掛けることができるように、上連結部22は、把持部21の上端部よりも若干下方に位置する部位と柄部2との間を連結することとしてもよい。
【0052】
加えて、上記実施形態では、補強部8において柄部2から離間する把持部21を備えているが、特にかかる構成に限定されるものではなく、例えば、除雪具1が起立姿勢にある状態において、柄部2から前方又は後方に突出し、柄部2の長手方向に延在するリブ状の補強部を設けることとしてもよい。尚、例えば、かかるリブ状の補強部に対して、左右に貫通する孔や、左方又は右方に凹む凹部を形成することによって、上記実施形態と同様に補強部8と柄部2との間に隙間が形成され、かかる隙間に手を差し入れて、補強部8又は柄部2を掴むことができるようになる。
【0053】
また、補強部8の補強ベース部24や、柄部2のベース部31は断面略円弧状でなくてもよく、例えば、断面略コ字状としてもよい。また、補強ベース部24は柄部2と対向する側とは反対側に開口し、ベース部31は補強部8の把持部21と対向する側とは反対側に開口しているが、特にかかる構成に限定されるものではない。但し、除雪作業等に際しての把持部21や柄部2の持ち易さを考慮すると、上記のように開口形成され、作業者が、補強内リブ25や内リブ32ではなく、補強ベース部24やベース部31に掌を当てて握ることができるように構成されることが望ましい。尚、柄部2については、少なくとも補強部8と対向する部位においてベース部31が補強部8と対向する側とは反対側に開口するように構成されることで、かかる作用効果が奏されることから、柄部2のうち上連結部22よりも上方に位置する部位や、下連結部23よりも下方に位置する部位に関しては、補強ベース部24と同じ側である前方や、左右の側方に開口するように構成してもよい。
【0054】
(c)上記実施形態におけるすくい部11の形状は特に限定されるものではなく、例えば、略平板状に構成してもよいし、正面視台形状に構成してもよい。また、すくい部11と、返し部12との境界部位の角度や形状についても特に限定されるものではなく、両者間の境界部を湾曲形状としなくてもよい。さらに、返し部12や側壁13を省略することとしてもよい。但し、すくい部11の柄部2の長手方向における幅を極力短くしつつ、除雪作業に際して、すくい部11にすくわれた雪が柄部2側に脱落しないように、返し部12を設けることが望ましい。特に、上記実施形態では、成形の都合上、すくい部11を柄部2の上端部側に延長させることが困難であるため、かかる作用効果がより一層奏されることとなる。加えて、凸条部15やエンボス部16の数、配置、形状等は特に限定されるものではなく、適宜設定可能である。尚、凸条部15やエンボス部16を省略することも可能である。
【0055】
(d)上記実施形態では、除雪具1はポリプロピレンにより構成されているが、ポリカーボネート、ポリエチレン、PET、ポリアミド等その他の樹脂材料により構成されることとしてもよい。また、上記実施形態では、柄部2、除雪部3、把手部4、及び、補強部8が一体的に形成されているが、少なくとも柄部2、除雪部3、及び、把手部4が一体的に形成されていればよい。当該構成を採用する場合、補強部8は樹脂以外の材料、例えば、金属等で構成され、ねじ等の取付具で取付けられることとしてもよい。