(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6342236
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】入力支援装置、入力支援システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 17/24 20060101AFI20180604BHJP
G06F 17/27 20060101ALI20180604BHJP
G06F 3/048 20130101ALI20180604BHJP
【FI】
G06F17/24
G06F17/27 630
G06F3/048
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-136207(P2014-136207)
(22)【出願日】2014年7月1日
(65)【公開番号】特開2016-14987(P2016-14987A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2017年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】萩谷 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】堀内 俊治
【審査官】
長 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−250378(JP,A)
【文献】
特開2005−032111(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0195388(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0310723(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/20−28
G06F 3/048
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
文字入力時のユーザの躓きを検出し、文字入力の支援を行なう入力支援装置であって、
入力中の文字列に応じて予測変換を行ない、候補単語群を出力する候補単語予測部と、
前記出力された候補単語群に含まれる各候補単語の出現累計値を取得し、候補単語毎に保持する候補単語群保持部と、
前記各候補単語の出現累計値に基づいて、候補単語の選択操作についてのユーザの躓きを検出する躓き検出部と、
前記検出された躓きに対応したアドバイスの提示を行なうアドバイス提示部と、を備え、
前記躓き検出部は、出現累計値が第1の閾値以上である候補単語のうち、いずれか一つの候補単語がユーザにより選択された時点での当該候補単語の表示時間を取得し、前記表示時間が第2の閾値以上である場合に、躓きとして検出することを特徴とする入力支援装置。
【請求項2】
文字入力時のユーザの躓きを検出し、文字入力の支援を行なう入力支援装置であって、
入力中の文字列に応じて予測変換を行ない、候補単語群を出力する候補単語予測部と、
前記出力された候補単語群に含まれる各候補単語の出現累計値を取得し、候補単語毎に保持する候補単語群保持部と、
前記各候補単語の出現累計値に基づいて、候補単語の選択操作についてのユーザの躓きを検出する躓き検出部と、
前記検出された躓きに対応したアドバイスの提示を行なうアドバイス提示部と、を備え、
前記躓き検出部は、前記候補単語群のうち、いずれか一つの候補単語がユーザにより選択された場合、前記選択された候補単語との類似度が第3の閾値以上である候補単語の出現累計値を取得し、前記類似度が第3の閾値以上である候補単語の出現累計値が第1の閾値以上である場合に、躓きとして検出することを特徴とする入力支援装置。
【請求項3】
文字入力時のユーザの躓きを検出し、文字入力の支援を行なう入力支援装置であって、
入力中の文字列に応じて予測変換を行ない、候補単語群を出力する候補単語予測部と、
前記出力された候補単語群に含まれる各候補単語の出現累計値を取得し、候補単語毎に保持する候補単語群保持部と、
前記各候補単語の出現累計値に基づいて、候補単語の選択操作についてのユーザの躓きを検出する躓き検出部と、
前記検出された躓きに対応したアドバイスの提示を行なうアドバイス提示部と、を備え、
前記躓き検出部は、候補単語の出現累計値が第1の閾値以上である場合に、躓きとして検出し、
前記躓き検出部は、入力中の文字列または候補単語の文字数に応じて前記第1の閾値を変更することを特徴とする入力支援装置。
【請求項4】
文字入力時のユーザの躓きを検出し、文字入力の支援を行なう入力支援装置であって、
入力中の文字列に応じて予測変換を行ない、候補単語群を出力する候補単語予測部と、
前記出力された候補単語群に含まれる各候補単語の出現累計値を取得し、候補単語毎に保持する候補単語群保持部と、
前記各候補単語の出現累計値に基づいて、候補単語の選択操作についてのユーザの躓きを検出する躓き検出部と、
前記検出された躓きに対応したアドバイスの提示を行なうアドバイス提示部と、を備え、
前記躓き検出部は、候補単語の出現累計値が第1の閾値以上である場合に、躓きとして検出し、
前記躓き検出部は、入力中の文字列または候補単語の文字数が第4の閾値以上である単語を検出の対象とすることを特徴とする入力支援装置。
【請求項5】
前記躓き検出部は、入力中の文字列または候補単語の文字数に応じて前記第1の閾値を変更することを特徴とする請求項1または請求項2記載の入力支援装置。
【請求項6】
前記躓き検出部は、入力中の文字列または候補単語の文字数が第4の閾値以上である単語を検出の対象とすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の入力支援装置。
【請求項7】
前記候補単語群保持部は、前記候補単語群に含まれる各候補単語の出現累計値を、機械学習によって取得することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の入力支援装置。
【請求項8】
前記躓き検出部は、ユーザの入力スキルを示す情報を取得し、前記情報によって示される入力スキルが第5の閾値以下である場合に、躓きの検出を行なうことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の入力支援装置。
【請求項9】
サーバ装置と端末装置とから構成され、文字入力時のユーザの躓きを検出し、文字入力の支援を行なう入力支援システムであって、
前記端末装置は、
ユーザからの入力を受け付ける入力部と、
情報を画面に表示する表示部と、を備え、
前記サーバ装置は、
前記端末装置から入力中の文字列に応じて予測変換を行ない、候補単語群を出力する候補単語予測部と、
前記出力された候補単語群に含まれる各候補単語の出現累計値を取得し、候補単語毎に保持する候補単語群保持部と、
前記各候補単語の出現累計値に基づいて、候補単語の選択操作についてのユーザの躓きを検出する躓き検出部と、
前記端末装置に対し、前記検出された躓きに対応したアドバイスの提示を行なうアドバイス提示部と、を備え、
前記躓き検出部は、出現累計値が第1の閾値以上である候補単語のうち、いずれか一つの候補単語がユーザにより選択された時点での当該候補単語の表示時間を取得し、前記表示時間が第2の閾値以上である場合に、躓きとして検出することを特徴とする入力支援システム。
【請求項10】
文字入力時のユーザの躓きを検出し、文字入力の支援を行なう入力支援装置のプログラムであって、
入力中の文字列に応じて予測変換を行ない、候補単語群を出力する処理と、
前記出力された候補単語群に含まれる各候補単語の出現累計値を取得し、候補単語毎に保持する処理と、
前記各候補単語の出現累計値に基づいて、候補単語の選択操作についてのユーザの躓きを検出する処理と、
前記検出された躓きに対応したアドバイスの提示を行なう処理と、の一連の処理をコンピュータに実行させ、
前記ユーザの躓きを検出する処理は、出現累計値が第1の閾値以上である候補単語のうち、いずれか一つの候補単語がユーザにより選択された時点での当該候補単語の表示時間を取得し、前記表示時間が第2の閾値以上である場合に、躓きとして検出することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文字入力時のユーザの躓きを検出し、文字入力の支援を行なう技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistant)などの端末装置では、文字入力は頻度の高い操作となっている。ところが、この文字入力は、端末装置の操作に不慣れなユーザにとっては、複雑で容易でない操作となっている。特許文献1では、タイピングゲームによって、ある入力タスクをユーザに与え、入力中の操作の正確さや入力速度を測定し、ゲームにフィードバックする技術が開示されている。
【0003】
また、特許文献2や特許文献3に開示されている技術では、文字入力には限らず、画面の表示時間や有効キーの割合、すなわち、ユーザが操作面を操作したときに、その操作が受け付けられた割合などに応じて、ユーザの操作の習熟度を判断する。そして、習熟度が低い場合は、操作チュートリアルの表示や、GUIパターンを変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−234113号公報
【特許文献2】特開2014−016781号公報
【特許文献3】特開2010−102465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、携帯端末が備える文字入力装置は、ユーザが現在入力中の文字列に対して、前方一致などで文字列を補完する機能を有する。また、日本語入力では、形態素などの区切りを予測し、候補単語や候補単語列を表示する機能を有する。これらの機能は、ユーザの入力を補助する点で有効である。
【0006】
しかしながら、操作に不慣れなユーザは、すぐにこれらの機能を使いこなすことが困難な場合が多い。前者に関しては、キーを押すことに集中しすぎて、所望の文字が候補として挙がっているにも関わらず気付かず、入力が完了した後の選択または決定の際に初めて気が付く場合がある。このようなユーザの文字入力における躓きを検出し、アドバイスを提示することができれば、操作に不慣れなユーザでも簡易に文字入力を行なうことができるようになると考えられる。
【0007】
上記の特許文献1では、ユーザの操作に対し、フィードバックをする技術が開示されているが、この特許文献1では、タイピングのみに着目しており、文字やガイドに沿ってタイピングすることは想定しているが、候補単語をどのように使うかについては着目していない。また、特許文献2および特許文献3においては、速度や時間という物理量を用いているが、オブジェクト操作にのみ言及している。文字入力、特に候補単語選択に関するアドバイスを提示する場合は、物理量だけでなく、言語的な情報も必須である。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、候補単語選択操作のスキル・躓きを検出し、アドバイスを提示することによって、操作に不慣れなユーザに対し、適切な操作をするように促すことができる入力支援装置、入力支援システムおよびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の入力支援装置は、文字入力時のユーザの躓きを検出し、文字入力の支援を行なう入力支援装置であって、入力中の文字列に応じて予測変換を行ない、候補単語群を出力する候補単語予測部と、前記出力された候補単語群に含まれる各候補単語の出現累計値を取得し、候補単語毎に保持する候補単語群保持部と、前記各候補単語の出現累計値に基づいて、候補単語の選択操作についてのユーザの躓きを検出する躓き検出部と、前記検出された躓きに対応したアドバイスの提示を行なうアドバイス提示部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
このように、入力中の文字列に応じて予測変換を行ない、候補単語群を出力し、出力された候補単語群に含まれる各候補単語の出現累計値を取得し、候補単語毎に保持し、各候補単語の出現累計値に基づいて、候補単語の選択操作についてのユーザの躓きを検出し、検出された躓きに対応したアドバイスの提示を行なうので、候補単語が何度も提示されているのに気が付かないユーザに対して、候補単語の活用を促すことが可能となる。その結果、操作に不慣れなユーザであっても、文字入力操作を容易に行なうことができるようになる。
【0011】
(2)また、本発明の入力支援装置において、前記躓き検出部は、候補単語の出現累計値が第1の閾値以上である場合に、躓きとして検出することを特徴とする。
【0012】
このように、候補単語の出現累計値が第1の閾値以上である場合に、躓きとして検出するので、候補単語が一定回数以上表示されているのにこれが見逃されていることをユーザに気付かせることが可能となる。
【0013】
(3)また、本発明の入力支援装置において、前記躓き検出部は、出現累計値が前記第1の閾値以上である候補単語のうち、いずれか一つの候補単語がユーザにより選択された時点での当該候補単語の表示時間を取得し、前記表示時間が第2の閾値以上である場合に、躓きとして検出することを特徴とする。
【0014】
このように、出現累計値が第1の閾値以上である候補単語のうち、いずれか一つの候補単語がユーザにより選択された時点での当該候補単語の表示時間を取得し、表示時間が第2の閾値以上である場合に、躓きとして検出するので、トグル入力のように、短時間で表示が消える候補単語については、躓き検出の対象外とし、候補単語が一定時間以上表示されているのにこれが見逃されていることをユーザに気付かせることが可能となる。
【0015】
(4)また、本発明の入力支援装置において、前記躓き検出部は、前記候補単語群のうち、いずれか一つの候補単語がユーザにより選択された場合、前記選択された候補単語との類似度が第3の閾値以上である候補単語の出現累計値を取得し、前記類似度が第3の閾値以上である候補単語の出現累計値が第4の閾値以上である場合に、躓きとして検出することを特徴とする。
【0016】
このように、候補単語群のうち、いずれか一つの候補単語がユーザにより選択された場合、選択された候補単語との類似度が第3の閾値以上である候補単語の出現累計値を取得し、類似度が第3の閾値以上である候補単語の出現累計値が第4の閾値以上である場合に、躓きとして検出するので、類似度が一定値以上の候補単語が一定回数以上表示されているのにこれが見逃されていることをユーザに気付かせることが可能となる。
【0017】
(5)また、本発明の入力支援装置において、前記躓き検出部は、入力中の文字列または候補単語の文字数に応じて前記第1の閾値を変更することを特徴とする。
【0018】
このように、入力中の文字列または候補単語の文字数に応じて第1の閾値を変更するので、躓き検出における誤検出を回避することが可能となる。すなわち、文字数が少ない文字列ほど、躓きを誤る可能性が高いため、入力中の文字列または候補単語の文字数が一定数以上の単語のみを検出の対象とすることで、検出精度を高めることが可能となる。
【0019】
(6)また、本発明の入力支援装置において、前記躓き検出部は、入力中の文字列または候補単語の文字数が第5の閾値以上である単語を検出の対象とすることを特徴とする。
【0020】
このように、入力中の文字列または候補単語の文字数が第5の閾値以上である単語を検出の対象とするので、躓き検出における誤検出を回避することが可能となる。すなわち、文字数が少ない文字列ほど、躓きを誤る可能性が高いため、入力中の文字列または候補単語の文字数が一定数以上の単語のみを検出の対象とすることで、検出精度を高めることが可能となる。
【0021】
(7)また、本発明の入力支援装置において、前記候補単語群保持部は、前記候補単語群に含まれる各候補単語の出現累計値を、機械学習によって取得することを特徴とする。
【0022】
このように、候補単語群に含まれる各候補単語の出現累計値を、機械学習によって取得するので、候補単語が何度も提示されているのに気が付かないユーザに対して、候補単語の活用を促すことが可能となる。
【0023】
(8)また、本発明の入力支援装置において、前記躓き検出部は、ユーザの入力スキルを示す情報を取得し、前記情報によって示される入力スキルが第6の閾値以上である場合に、躓きの検出を行なうことを特徴とする。
【0024】
このように、ユーザの入力スキルを示す情報を取得し、情報によって示される入力スキルが第6の閾値以上である場合に、躓きの検出を行なうので、ユーザのスキルが高い場合は、躓き検出の対象外とする一方、アドバイスが必要なユーザに対して文字入力の支援を行なうことが可能となる。
【0025】
(9)また、本発明の入力支援システムは、サーバ装置と端末装置とから構成され、文字入力時のユーザの躓きを検出し、文字入力の支援を行なう入力支援システムであって、前記端末装置は、ユーザからの入力を受け付ける入力部と、情報を画面に表示する表示部と、を備え、前記サーバ装置は、前記端末装置から入力中の文字列に応じて予測変換を行ない、候補単語群を出力する候補単語予測部と、前記出力された候補単語群に含まれる各候補単語の出現累計値を取得し、候補単語毎に保持する候補単語群保持部と、前記各候補単語の出現累計値に基づいて、候補単語の選択操作についてのユーザの躓きを検出する躓き検出部と、前記端末装置に対し、前記検出された躓きに対応したアドバイスの提示を行なうアドバイス提示部と、を備えることを特徴とする。
【0026】
このように、入力中の文字列に応じて予測変換を行ない、候補単語群を出力し、出力された候補単語群に含まれる各候補単語の出現累計値を取得し、候補単語毎に保持し、各候補単語の出現累計値に基づいて、候補単語の選択操作についてのユーザの躓きを検出し、検出された躓きに対応したアドバイスの提示を行なうので、候補単語が何度も提示されているのに気が付かないユーザに対して、候補単語の活用を促すことが可能となる。その結果、操作に不慣れなユーザであっても、文字入力操作を容易に行なうことができるようになる。
【0027】
(10)また、本発明のプログラムは、文字入力時のユーザの躓きを検出し、文字入力の支援を行なう入力支援装置のプログラムであって、入力中の文字列に応じて予測変換を行ない、候補単語群を出力する処理と、前記出力された候補単語群に含まれる各候補単語の出現累計値を取得し、候補単語毎に保持する処理と、前記各候補単語の出現累計値に基づいて、候補単語の選択操作についてのユーザの躓きを検出する処理と、前記検出された躓きに対応したアドバイスの提示を行なう処理と、の一連の処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0028】
このように、入力中の文字列に応じて予測変換を行ない、候補単語群を出力し、出力された候補単語群に含まれる各候補単語の出現累計値を取得し、候補単語毎に保持し、各候補単語の出現累計値に基づいて、候補単語の選択操作についてのユーザの躓きを検出し、検出された躓きに対応したアドバイスの提示を行なうので、候補単語が何度も提示されているのに気が付かないユーザに対して、候補単語の活用を促すことが可能となる。その結果、操作に不慣れなユーザであっても、文字入力操作を容易に行なうことができるようになる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、候補単語が何度も提示されているのに気が付かないユーザに対して、候補単語の活用を促すことが可能となる。その結果、操作に不慣れなユーザであっても、文字入力操作を容易に行なうことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本実施形態に係る入力支援装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態に係る入力支援装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図4】押下回数、入力文字および文字列との対応関係を示すテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明者らは、文字入力を支援するために、候補単語が表示されているにもかかわらず、文字入力操作に不慣れなユーザはこれに気が付かず、文字入力をうまく実行できていないことに着目し、文字入力時のユーザの躓きを検出し、表示されている候補単語を活用するようアドバイスを与えることによって、文字入力の支援を効果的に行なうことができることを見出し、本発明をするに至った。
【0032】
すなわち、本発明の入力支援装置は、文字入力時のユーザの躓きを検出し、文字入力の支援を行なう入力支援装置であって、入力中の文字列に応じて予測変換を行ない、候補単語群を出力する候補単語予測部と、前記出力された候補単語群に含まれる各候補単語の出現累計値を取得し、候補単語毎に保持する候補単語群保持部と、前記各候補単語の出現累計値に基づいて、候補単語の選択操作についてのユーザの躓きを検出する躓き検出部と、前記検出された躓きに対応したアドバイスの提示を行なうアドバイス提示部と、を備えることを特徴とする。
【0033】
これにより、本発明者らは、候補単語が何度も提示されているのに気が付かないユーザに対して、候補単語の活用を促すことを可能とした。また、その結果、操作に不慣れなユーザが、文字入力操作を容易に行なうことを可能とした。以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0034】
図1は、本実施形態に係る入力支援装置の概略構成を示すブロック図である。この入力支援装置は、文章入力の操作性向上のために、候補単語の使用の分析により、躓きを検出し、フィードバックを提示する機能を有する。なお、本実施形態では、スマートフォンにおけるタッチパネル操作を想定しているが、本発明は、これに限定されるわけではなく、ハードキーを備えた端末装置に適用することも可能である。
図1において、制御部1は、各構成要素の制御を行なう。入力部としてのキーボード3は、座標情報と、キーボード上のキー(文字)の対応関係が定義されたキーボードを表示し、ユーザがタッチした入力座標または、タッチしてから話すまでの入力座標時系列を取得する。
【0035】
文字列表示部5は、入力中の文字およびユーザの操作により確定した文字を表示する。入力中文字列格納部7は、入力中の文字列を格納する。候補単語予測部9は、表示されている文字列に対し、予測変換を行ない、候補単語表示部11に送信する。ここでは、例として、単語の場合について説明を下記で行なうが、本発明は、単語に限定されるわけではない。
【0036】
候補単語表示部11は、候補単語予測部9で抽出した単語を表示する。候補単語群保持部13は、候補単語表示部11に表示された候補単語列と、その累計、時刻、表示されていた時間を保持する。候補単語選択躓き検出部15は、候補単語群保持部13と、ユーザが選択または決定した文字からの情報に基づいて、候補単語選択に関するユーザの利用傾向を分析する。躓き回数保持部17は、ユーザによる躓きの回数を保持する。アドバイス提示部19は、候補単語選択躓き検出部15の結果に基づいて、ユーザにアドバイスを表示する。
【0037】
図2は、本実施形態に係る入力支援装置の動作例を示すフローチャートである。まず、文字の入力があったかどうかを判断し(ステップS1)、入力が無い場合は、この判断を繰り返す。一方、ステップS1において、文字の入力があった場合は、入力を検知し(ステップS2)、入力中の文字列を入力中文字列格納部7に格納する(ステップS3)。次に、候補単語予測部9において、候補単語の予測を行ない(ステップS4)、候補単語群保持部13に保存する(ステップS5)。
【0038】
次に、ユーザがいずれかの候補単語を選択したかどうかを判断し(ステップS6)、ユーザがいずれの候補単語も選択しない場合は、ステップS1に遷移する。一方、ステップS6において、ユーザがいずれかの候補単語を選択した場合は、候補単語選択躓き検出を行なう(ステップS7)。そして、ユーザの躓きを検出したかどうかを判断し(ステップS8)、ユーザの躓きを検出しない場合は、ステップS1に遷移する。一方、ステップS8において、ユーザの躓きを検出した場合は、次に、検出頻度(候補単語の出現累積値)が、閾値εよりも大きいかどうかを判断し(ステップS9)、検出頻度が閾値εより大きくない場合は、ステップS1に遷移する。一方、ステップS9において、検出頻度が閾値εより大きい場合は、アドバイスを提示し(ステップS10)、ステップS1に遷移する。
【実施例1】
【0039】
まず、文字入力の例について説明する。
図3は、端末装置の画面表示例を示す図である。
図3に示したレイアウトで、トグル入力(「お」を入力する場合「あ」を5回押下)の日本語入力キーボードでの例を挙げる。
【0040】
「ありがとう」を入力するときに、文字列表示部5と、入力中文字列格納部7に送られる文字は
図4に示されるように、「あ」→「あら」→「あり」→「ありか」→ … →「ありがとう」と変化していく。同時に、これらの文字列が入力中文字列格納部7から候補単語予測部9に送られる。これにより、
図5に示すように、入力中の文字列に対し、候補単語群を以下のように変換する。
【0041】
「あ」:明日、あの、ある、朝
「あら」:新た、あらゆる、嵐山、アラーム
「あり」:ありがとう、あります、あり、ありがち
「ありか」:ありがとう、ありがち、有難い、ありか
「ありかとう」:ありがとう、有り難う、有難う、アリガトウ
【0042】
同時に、候補単語群保持部13は、各文字列の累計、時刻、表示されていた時間を格納する。
【0043】
次に、候補単語選択躓き検出について説明する。ユーザが、候補単語群の中から単語を選択すると、選択された単語が文字列表示部5に反映される。上記の例のように、全ての文字を入力する前に、所望の候補単語が表示されることは少なくないが、早めに選択する方が文字入力効率が高いと考えられるため、ユーザが選択した単語と、候補単語群保持部13の情報から候補単語選択の躓き分析をする。
【0044】
具体的には、ある一連の文字列の入力開始から、候補を選択もしくは決定した時点で、ユーザが所望の候補が出ているのにユーザが気づいていないケースを“躓き”として検出する。そしてその検出結果をアドバイス提示部19に送る。以下、躓き検出条件を例示する。
【0045】
<検出条件1>
入力開始をしてから単語を決定/選択するまでに、選択された単語と同様の単語が候補に複数回出現した場合、ユーザが所望の単語に気が付いていない可能性が高いと考えられる。例えば、
図5では、最終的には「ありがとう」が選択された単語であるが、「あり」と入力された時点で候補単語に「ありがとう」が表示されており、その後に「ありか」、「ありが」と入力を続けても「ありがとう」という単語が表示され続け、その出現回数(=出現累計値)は増加していく。
【0046】
そこで、選択した単語と一致した候補単語の出現累計値がある閾値λ以上の場合、躓きとして検出する。この閾値λは、第1の閾値に対応する。
【0047】
<検出条件2>
選択した単語と一致した候補単語のうち、表示されている時間がある閾値(第2の閾値)以上の候補単語の出現累計値がλ以上の場合、躓きとして検出する。
【0048】
<検出条件3>
上記の条件のうち、選択した単語との一致ではなくて、選択した単語との編集距離(レーベンシュタイン距離)がある閾値以内、もしくは、ある方法により定義された文字の類似度がある閾値(第3の閾値)以上の候補単語の出現累計値がλ(第4の閾値)以上の場合、躓きとして検出する。
【0049】
<検出条件4>
上記の検出条件1〜3は、ユーザが単語を選択した後に躓きを検出することを想定して、検出に用いる対象の単語は、選択した単語に関わるものである。しかしながら、候補単語が選択される前でも、入力に対応して表示される候補単語群の中で出現累計値が多い場合、その候補単語がユーザ所望のものである可能性が高いと考えられる。
【0050】
例えば、
図4のように、「ありがとう」と入力する場合において「ありがとう」という候補は「あり」「ありか」「ありが」の時点で出現し、出現累計値は3となる。この場合、「ありがとう」と最終的に選択される可能性は高いと考えられる。そこで、入力途中(候補単語を選択する前)に、候補単語群の中で累計値が上位N個の単語を対象とし、出現累計値がλ(第1の閾値)以上の場合、躓きとして検出する。また、辞書内に単語の頻出度やスコアなどが記載されて出力される場合もあるが、そのような場合は、その値を用いてもよい。例えば、出現累計値と頻出度の積などである。
【0051】
<検出条件5>
上記の検出条件1〜4については、文字数が少ないものほど、躓きの誤検出をする可能性がある。そのため文字数によって閾値λ(第1の閾値)を変更する、もしくはある文字数M(第5の閾値)以上の語のみに対象を制限する。
【0052】
<検出条件6>
候補単語選択躓き検出は、機械学習を基に学習されたものであってもよい。つまり、例えば、教師ありの機械学習を考えると、多くのログデータを集めて、文字列長と出現累計値、候補単語予測部からのスコアなどの系列に対し、入力効率が悪いか否かについて、ラベル付をし、SVM(Support Vector Machine)などで学習する方法が挙げられる。
【0053】
<検出条件7>
上記の方法のうち、ユーザの入力スキルがある一定(第6の閾値)以下の場合に限り、躓きとして検出する。入力スキルの判定は、手法は問わないが、例えば、1文字目の入力開始から最後の文字が入力されるまでの入力速度WPM(Word Per Minute)や誤り率によって何段階かに定める方法がある。
【0054】
例えば、あるi段階の基準となる入力速度をWPM
iとし、ユーザ操作により取得した入力速度をwpmとすると、スキルは、次式を満たすi段階のスキルと判別する方法がある。
WPM
i≦wpm<WPM
i+1
【0055】
もしくは、入力時系列とそこから算出できる特徴量、例えば、オブジェクトの中心からの距離の平均値やその分散、操作の間隔、頻度(キーボードアプリであればキー=オブジェクト)などから複数段階のスキルを定義したスキルモデルにより判別することができる。スキルモデルは、パターンマッチングでも機械学習(例えば、マルチクラスSVMなど)を用いてもよい。
【0056】
(アドバイス提示)
候補単語選択躓き検出によって躓きと検出された回数がある閾値ε以上の場合に、ユーザにアドバイスを提示する。
図6に画面例を記載する。
図6に示したように、画面に重畳して表示してもよいが、重畳せずに、他の領域、もしくは画面での提示でもよい。
【0057】
(その他)
アドバイス提示に対する対応、例えばアドバイスに対するフィードバックボタンを用意し適切か判断したり、アドバイス画面の表示時間や注目度などに基づいて、上記検出やアドバイスが適切か否かを判別し、閾値の変更や、機械学習の再学習を行なったりしてもよい。
【0058】
以上説明したように、候補単語が何度も提示されているのに気が付かないユーザに対して、候補単語の活用を促すことが可能となる。その結果、操作に不慣れなユーザであっても、文字入力操作を容易に行なうことができるようになる。
【符号の説明】
【0059】
1 制御部
3 キーボード
5 文字列表示部
7 入力中文字列格納部
9 候補単語予測部
11 候補単語表示部
13 候補単語群保持部
15 候補単語選択躓き検出部
17 躓き回数保持部
19 アドバイス提示部