(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の射出成形装置においては、リンクピンの貫通孔に冷媒を流すタイミングは、ブッシュの交換時など、成形動作を行っていないときであり、成形動作中にリンクピンの貫通孔に冷媒を流すものではない。このため、成形動作中、特に型閉じ動作を高速で行っている最中に、リンクピンとブッシュとの摩擦熱により、リンクピンが膨張し、このため、リンクピンとブッシュとの間の摺動抵抗が増加したり、リンクピンやブッシュが摩耗したり、リンクピンとブッシュとの間でカジリなどの問題が生じるおそれがある。
【0006】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、成形動作中に、リンクピンとブッシュとの間で摺動抵抗が増加したり、摩耗が生じたり、カジリが生じたりせず、型閉じ動作を高速に行った場合でも、安定した型開閉動作を確保するとともに型開閉精度を維持することが可能な、開閉装置、成形装置および開閉装置の使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、受圧盤と、一方の金型を支持する固定プラテンと、前記固定プラテンに対向して設けられ、他方の金型を支持するとともに前記固定プラテンに対して進退自在に配置された可動プラテンと、一端が前記受圧盤に連結され、他端が前記可動プラテンに連結されたトグル機構と、前記受圧盤に設けられ、前記トグル機構を屈伸させる駆動装置と、制御装置とを備え、前記トグル機構は、複数のリンクと、前記リンクと前記可動プラテン、前記リンクと前記受圧盤、及び前記リンク同士をそれぞれ連結する複数のピンとを有し、前記複数のピンのうち少なくとも1つのピンは、貫通孔を有し、前記制御装置は、前記金型を用いて成形を行う成形動作中に、前記少なくとも1つのピンの前記貫通孔に冷媒を流すように制御する制御部を有していることを特徴とする開閉装置である。
【0008】
本発明は、前記少なくとも1つのピンの前記貫通孔の中心軸を、前記少なくとも1つのピンの中心軸からずらしたことを特徴とする開閉装置である。
【0009】
本発明は、開閉装置を備えたことを特徴とする成形装置である。
【0010】
本発明は、開閉装置の使用方法であって、前記開閉装置は、受圧盤と、一方の金型を支持する固定プラテンと、前記固定プラテンに対向して設けられ、他方の金型を支持するとともに前記固定プラテンに対して進退自在に配置された可動プラテンと、一端が前記受圧盤に連結され、他端が前記可動プラテンに連結されたトグル機構と、前記受圧盤に設けられ、前記トグル機構を屈伸させる駆動装置とを備えた開閉装置の使用方法であって、前記トグル機構は、複数のリンクと、前記リンクと前記可動プラテン、前記リンクと前記受圧盤、及び前記リンク同士をそれぞれ連結する複数のピンとを有し、前記複数のピンのうち少なくとも1つのピンは、貫通孔を有し、前記使用方法は、成形工程中に、前記少なくとも1つのピンの前記貫通孔に冷媒を流すことを特徴とする開閉装置の使用方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、金型を用いて成形を行う成形動作中に、リンクピンの貫通孔に冷媒を流す。これにより、成形動作中に、リンクピンとブッシュとの間で摺動抵抗が増加したり、摩耗が生じたり、カジリが生じたりせず、とりわけ型閉動作(型締動作)を高速で行った場合でも、安定した型開閉動作を確保するとともに型開閉精度を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、
図1乃至
図5を参照して説明する。
図1乃至
図5は、本発明の実施の形態を示す図である。図面は例示であり、説明のために特徴部を誇張することがあり、実物とは異なる場合がある。また、技術思想を逸脱しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。なお、以下の各図において、同一部分には同一の符号を付しており、一部詳細な説明を省略する場合がある。
【0014】
(本実施の形態の構成)
まず、
図1乃至
図3により、射出成形機(成形装置)の構成について説明する。
図1乃至
図3は、本実施の形態による射出成形機を示す図である。
【0015】
図1乃至
図3に示すように、射出成形機10は、射出装置20と、トグル式の型締装置(型開閉装置、開閉装置)30とを備えている。
【0016】
このうち射出装置20は、型締装置30に対して移動自在に配置されており、成形材料を型締装置30に支持された金型14内(より具体的には固定金型15および移動金型16内)に射出充填するものである。
【0017】
一方、型締装置30は、ベース31と、ベース31上に固定された受圧盤32と、ベース31に固定されるとともに固定金型(一方の金型、他方の金型)15を支持する固定プラテン33と、ベース31上で固定プラテン33に対向して設けられ、移動金型(他方の金型、一方の金型)16を支持するとともに固定プラテン33に対して進退自在に配置された可動プラテン34とを備えている。
【0018】
このうち固定プラテン33と受圧盤32とは、複数の(例えば4本の)タイバー35によって所定の間隔を空けて結合されている。可動プラテン34は、これらタイバー35の軸方向に摺動可能に設けられている。また、ベース31にはガイド部材36が設けられており、可動プラテン34は、ガイド部材36に沿って案内されるようになっている。
【0019】
また、可動プラテン34は、トグル機構37によってタイバー35の軸方向に摺動可能に移動される。トグル機構37は、その一端37aが受圧盤32に連結され、他端37bが可動プラテン34に連結されている。トグル機構37は、屈伸することにより、可動プラテン34をタイバー35の軸方向に摺動させる。また受圧盤32には、トグル機構37を屈伸させるための型開閉駆動装置(駆動装置)38(
図2参照)が設けられている。
【0020】
トグル機構37は、複数(本実施の形態では3つ)のトグルリンク(第1のトグルリンク41a、第2のトグルリンク41b及び第3のトグルリンク41c)と、第2のトグルリンク(リンク)41bと可動プラテン34、第1のトグルリンク(リンク)41aと受圧盤32、第3のトグルリンク(リンク)41cとクロスヘッド42、及びトグルリンク(リンク)41a〜41c同士をそれぞれ連結する複数のリンクピン(ピン)39a〜39eとを有している。
【0021】
具体的には、第1のトグルリンク41aは、その一端が受圧盤32の外端部32aにリンクピン39eを介して枢着されている。また、第2のトグルリンク41bは、その一端が第1のトグルリンク41aにリンクピン39cを介して枢着され、その他端が可動プラテン34の外端部34aにリンクピン39dを介して枢着されている。さらに、第3のトグルリンク41cは、その一端が第1のトグルリンク41aの中間部41dにリンクピン39bを介して枢着され、その他端がクロスヘッド42にリンクピン39aを介して枢着されている。
【0022】
なお、本実施の形態において、トグル機構37は、上側に2つ、下側に2つの計4つ設けられており、上側2つのトグル機構37と下側2つのトグル機構37とでは、その構成は上下対称となっていることを除き略同一である。
【0023】
型開閉駆動装置38は、回転運動を直線運動に変換するための機構であり、クロスヘッド42に組み込まれたボールナット43と、このボールナット43に螺合しているボールネジ軸44と、ボールネジ軸44を回転駆動させる電動モータ45とを有している。またボールネジ軸44の一端は、ベアリングケース部47内に設けられた不図示の軸受により回転可能に支持されている。さらに電動モータ45の駆動力は、ベルト・プーリ46を介してボールネジ軸44に伝達される。
【0024】
クロスヘッド42は、可動プラテン34側から見て略十字形状を有しており、上下にそれぞれ突出する上方アーム42aおよび下方アーム42bと、左右にそれぞれ突出する一対の側方アーム42c、42dとを有している。このうち上方アーム42aおよび下方アーム42bは、それぞれ上下に配置された第3のトグルリンク41cに連結されている。また、一対の側方アーム42c、42dには、それぞれクロスヘッドガイドバー(ガイドバー)48が貫通している。このクロスヘッドガイドバー48は、その両端が受圧盤32に固定されている(図示せず)。また、クロスヘッド42は、クロスヘッドガイドバー48に支持されている。
【0025】
ところで、本実施の形態において、リンクピン39c、39d、39eは、それぞれ互いに隣接する2つのトグル機構37の両方を横切るように延びており、各リンクピン39c、39d、39eは貫通孔51を有している。この各リンクピン39c、39d、39eの貫通孔51には、後述するように冷媒が流されるようになっている。
【0026】
図3は、リンクピン39c周辺の断面を示している。
図3に示すように、第1のトグルリンク41aは挿入孔41eを有し、第2のトグルリンク41bは挿入孔41fを有している。これら第1のトグルリンク41aの挿入孔41eと第2のトグルリンク41bの挿入孔41fには、リンクピン39cが挿入されている。また、第1のトグルリンク41aの挿入孔41eの領域で、第1のトグルリンク41aとリンクピン39cとが止めねじ56によって互いに固定されている。
【0027】
さらに、第2のトグルリンク41bの挿入孔41f内にはブシュ52が圧入されており、リンクピン39cは、ブシュ52内に挿入されている。各ブシュ52とリンクピン39cとは互いに高速で摺動するため、各ブシュ52とリンクピン39cとの間には隙間53が設けられている。この隙間53が大きすぎると、機械の精度が低下するおそれがある。一方、隙間53が小さすぎても摺動抵抗の増加や、摩耗やカジリなどの問題を生ずることがある。したがって、隙間53の大きさを略一定に保持することが好ましい。
【0028】
またリンクピン39cには、その内部を長手方向に貫通する貫通孔51が形成されている。この貫通孔51には、固定金型15および移動金型16を用いて成形を行う成形動作中に冷媒が流されるようになっている。この場合、貫通孔51は、その中心軸Cがリンクピン39cの中心軸Lに一致するように延びている。
【0029】
貫通孔51の一端に冷媒の入口51aが設けられ、貫通孔51の他端に冷媒の出口51bが設けられている。さらに貫通孔51の入口51aおよび出口51bは、それぞれ配管55を介して冷媒供給装置54に接続されている(
図1、
図2参照)。そして冷媒供給装置54からの冷媒が、配管55を介して貫通孔51の入口51aから供給され、この冷媒が貫通孔51を通過する。その後、冷媒は貫通孔51の出口51bから排出されて、配管55を介して冷媒供給装置54に戻されるようになっている。
【0030】
なお、冷媒としては、冷却水や液体窒素などの液体、又は空気などの気体であっても良い。また冷媒供給装置54としては、固定金型15および移動金型16を冷却するための冷却水供給装置を用いても良い。
【0031】
さらに、冷媒供給装置54は、射出成形機コントローラ50に接続されている。射出成形機コントローラ(制御装置)50は、例えば、CPU、ROM、RAM、外部記憶装置等を有するコンピュータを含んで構成されていても良い。この射出成形機コントローラ50は、入力された各種の情報に基づいて、射出装置20および型締装置30等を制御する。この場合、射出成形機コントローラ50は、射出成形機10全体を制御するコントローラ(制御部)を有しているが、少なくとも冷媒供給装置54を制御する制御部を有していれば良い。
【0032】
なお上記においては、第1のトグルリンク41aと第2のトグルリンク41bとを連結するリンクピン39cを例にとって説明したが、他のリンクピン39d、39eについても、その構成は略同様である。
【0033】
(本実施の形態の作用)
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0034】
まず、射出成形工程全体について簡単に説明する。
図4に示すように、本実施の形態による射出成形機10を用いて作製される成形品は、射出成形サイクル(成形工程)S100を行うことにより成形される。具体的には、射出成形サイクルS100は、型締工程S101、射出工程S102、計量及び冷却工程S103、型開き工程S104、製品取出工程S105を含み、これらの工程を順に繰り返すことで多数の成形品が作製される。
【0035】
次に、型締工程S101における本実施の形態の作用について説明する。型閉、型締する際、本実施の形態による型締装置30において、型開閉駆動装置38によってクロスヘッド42が前進してトグル機構37が伸展される。すなわち、電動モータ45が駆動することにより、ベルト・プーリ46を介してボールネジ軸44が所定方向に回動し、これによりボールナット43およびクロスヘッド42が固定プラテン33方向に前進する。これにより上側のトグル機構37が上方向に開くとともに下側のトグル機構37が下方向に開き、クロスヘッド42の移動がトグル機構37を介して可動プラテン34に伝達されて、固定金型15および移動金型16の型閉、型締がなされる。
【0036】
また、型開き工程S104において固定金型15および移動金型16を型開する際は、これとは逆に、型開閉駆動装置38によってクロスヘッド42が後退してトグル機構37が屈曲される。すなわち、電動モータ45が駆動することにより、ベルト・プーリ46を介してボールネジ軸44が型閉時と反対方向に回動し、これによりボールナット43およびクロスヘッド42が受圧盤32方向に後退する。ボールナット43を受圧盤32方向に後退させることで上側のトグル機構37が下方向に閉じるとともに下側のトグル機構37が上方向に閉じ、固定金型15および移動金型16の型開きがなされる。
【0037】
このように、本実施の形態において、型閉、型締が完了した状態で第1のトグルリンク41aおよび第2のトグルリンク41bが直線状となり、型開の際は、第1のトグルリンク41aおよび第2のトグルリンク41bがボールネジ軸44の軸線に向かって折れ曲がる、すなわち、内側に巻き込むように折れ曲がる構造となっている。
【0038】
ところで、成形動作中、とりわけ各射出成形サイクルS100の型締工程S101および型開き工程S104を行う間、トグル機構37の開閉に伴って、リンクピン39c〜39eとブシュ52は高速で摺動する。このため、とりわけ型締装置30の可動プラテン34をトグル機構37を介して高速で移動させている最中に、このリンクピン39c〜39eとブシュ52との摩擦熱により、リンクピン39c〜39eが膨張し、リンクピン39c〜39eとブシュ52との隙間53が小さくなることが考えられる(
図3参照)。このため、リンクピン39c〜39eとブシュ52との間で摺動抵抗が増加したり、摩耗が生じたり、カジリが生じたりするおそれがある。また、このように隙間53が小さくなった場合、摩擦抵抗が増大し、それに応じて発生する熱も増えるという悪循環に陥ることも想定される。
【0039】
これに対して本実施の形態においては、固定金型15および移動金型16を用いる成形動作中に、リンクピン39c〜39eの貫通孔51に冷媒を流すようになっている。すなわち、射出成形機コントローラ50によって制御されることにより、冷媒供給装置54が冷媒を供給し、冷媒が配管55を介して貫通孔51の入口51aから供給される。この冷媒は、貫通孔51を通過しながらリンクピン39c〜39eを冷却する。これにより摩擦熱が加わったリンクピン39c〜39eの温度が略一定に保持され、リンクピン39c〜39eの膨張が抑制される。その後、冷媒は、貫通孔51の出口51bから排出されて、配管55を介して冷媒供給装置54に戻される。
【0040】
このように、リンクピン39c〜39eに対して摩擦熱が加わった場合でも、リンクピン39c〜39eが冷媒によって冷却されているので、リンクピン39c〜39eの膨張が抑えられ、リンクピン39c〜39eとブシュ52との隙間53が一定に保持される。これにより、リンクピン39c〜39eとブシュ52との摺動抵抗が増加したり、リンクピン39c〜39eに摩耗やカジリなどが生じる不具合が防止される。
【0041】
なお、冷媒は、射出成形サイクル(成形工程)S100の間、常時連続的にリンクピン39c〜39eの貫通孔51に流しても良い。または、冷媒は、射出成形サイクル(成形工程)S100の間の一部、例えば、型締工程S101および型開き工程S104の間だけ流しても良い。
【0042】
あるいは、冷媒を流すタイミングは、電動モータ45のモータトルクが上昇したとき、又は射出装置20によるショット数が一定値に達したときなど、予め定められた一定の条件に達した時点としても良い。この場合、リンクピン39c〜39eの温度上昇を効果的に抑制することができる。さらに、リンクピン39c〜39e又はその周囲に、リンクピン39c〜39e又はその周囲の温度を測定するための温度センサ(図示せず)を予め設けておき、この温度センサの測定値が規定値を超えた場合に、冷媒を流すようにしても良い。この場合、リンクピン39c〜39eの温度をより正確に制御することができる。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態によれば、固定金型15および移動金型16を用いて成形を行う成形動作中に、リンクピン39c〜39eの貫通孔51に冷媒を流している。これにより、成形動作中に、リンクピン39c〜39eとブシュ52との間で摺動抵抗が増加したり、摩耗が生じたり、カジリが生じたりせず、とりわけ型締動作を高速に行った場合でも、安定した型開閉動作を確保するとともに型開閉精度を維持することができる。
【0044】
なお、上記において、リンクピン39c、39d、39eの貫通孔51に冷媒を流す場合を例にとって説明したが、これに限られるものではない。全てのリンクピン39a〜39eに貫通孔51を設け、この貫通孔51に冷媒を流しても良く、あるいは、リンクピン39a〜39eのうち一部にのみ貫通孔51を設け、冷媒を流しても良い。
【0045】
また、本実施の形態において、リンクピン39c、39d、39eの貫通孔51の中心軸Cが、リンクピン39c、39d、39eの中心軸Lに一致する場合を例にとって説明したが(
図3参照)、これに限られるものではない。例えば
図5に示すように、リンクピン39c、39d、39eの貫通孔51の中心軸Cを、リンクピン39c、39d、39eの中心軸Lからずらすようにしても良い。とりわけ、貫通孔51の中心軸Cをリンクピン39c、39d、39eの荷重面(より荷重が加わる面)側にずらすことが好ましい。例えば、リンクピン39dの貫通孔51の中心軸Cを受圧盤32側にずらしても良く、リンクピン39eの貫通孔51の中心軸Cを可動プラテン34側にずらしても良い。これにより、リンクピン39c、39d、39eのうち、より摩擦熱が生じやすい荷重面側を効果的に冷却することができる。
【0046】
なお、本実施の形態における成形装置としては、射出成形機に限られるものではない。例えば、ダイカストマシン等の金属成形機であってもよいし、他のプラスチック成形機であってもよい。
【0047】
上記実施の形態に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組み合わせることも可能である。あるいは、上記実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。