(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ゴム組成物は、測定温度23℃での50%伸張時の引張応力(M50N)に対する測定温度100℃での50%伸張時の引張応力(M50H)の比(M50H/M50N)が1.0以上1.3以下である、請求項1に記載のランフラットタイヤ。
前記メルカプトベンゾイミダゾール化合物が、2−メルカプトベンゾイミダゾール又は、芳香環に少なくとも1個のアルキル置換基を有する2−メルカプトベンゾイミダゾール並びにそれらの金属塩から選択される少なくとも1種の2−メルカプトベンゾイミダゾール系化合物である、請求項1又は2に記載のランフラットタイヤ。
前記ゴム組成物が、芳香族第2級アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、硫黄系老化防止剤、及び亜リン酸エステル系老化防止剤からなる群から選択される少なくとも1種の老化防止剤とキノリン系老化防止剤とをさらに含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のランフラットタイヤ。
【背景技術】
【0002】
ランフラットタイヤとは、パンク等の障害によりタイヤ内部の空気圧が低下して0kPaになった状態でも、ある程度の距離を走行することのできる空気入りタイヤである。このような内圧が下がった状態でのランフラット走行を可能にするための技術として、サイドウォール部の内面にサイド補強ゴム部を設けてサイドウォール部を補強することが知られている。
【0003】
ランフラット走行時におけるタイヤの変形抑制のため、サイド補強ゴム部には、高硬度配合のゴム組成物が用いられることが多い(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、硬度が大きくなると抗張積が小さくなり、耐久効果を十分に発揮できなくなるという問題がある。
【0004】
本発明の発明者は、メルカプトベンズイミダゾール化合物を含有するゴム組成物を使用してサイド補強ゴム部を形成することにより、上記問題を解決し得るという知見を得た。
【0005】
ベンズイミダゾール化合物は、従来から老化防止剤として使用されており、近年では、これを用いてゴム組成物の低発熱性と耐摩耗性を両立させる試み等がなされている。
【0006】
例えば、特許文献2では、補強性充填剤とカルボキシル基等を有するベンズイミダゾール化合物を所定量使用したゴム組成物、及びこれをトレッド部及び/又はサイドウォール部に使用した空気入りタイヤが開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、2次老化防止剤及びキノリン系老化防止剤から選択された1種以上を含むタイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法が開示され、2次老化防止剤の例として2−メルカプトベンズイミダゾール、及びその亜鉛塩が記載されている。
【0008】
しかしながら、ランフラットタイヤにおいて、メルカプトベンズイミダゾール化合物を使用することにより、抗張積を低下させることなく高度を向上させ、ランフラット耐久性を向上させることについては、いずれの文献にも開示されていない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施形態に係るランフラットタイヤは、そのサイドウォール部にサイド補強ゴム部を有するものであって、そのサイド補強ゴム部が、メルカプトベンズイミダゾール化合物を所定量含有することによってランフラット耐久性が従来よりも向上したものである。
【0021】
本ゴム組成物において、ゴム成分としてのジエン系ゴムは、天然ゴム(NR)とポリブタジエンゴム(BR)とを含む。天然ゴム及びポリブタジエンゴムとしては、ゴム工業において一般に使用されているものを特に限定なく用いることができる。ゴム成分中における両者の配合比率は、特に限定されず、例えば、天然ゴムは20〜70質量%であってもよく、30〜60質量%であってもよい。ポリブタジエンゴムは30〜80質量%であってもよく、40〜70質量%であってもよい。天然ゴムの含有率を高めることにより、耐引裂性能を向上することができ、ポリブタジエンゴムの含有率を高めることにより、耐屈曲疲労性を向上することができる。
【0022】
ポリブタジエンゴムとしては、例えば、シス−1,4結合含有量が96%以上のブタジエンゴムを用いることができる。このようなシス含量の高いポリブタジエンゴムを用いることにより、低発熱性能を向上させることができ、ランフラット耐久性もより向上させることができる。シス含量の高いブタジエンゴムとしては、ネオジウム系触媒などの希土類元素系触媒を用いて合成したものが好ましい。
【0023】
ネオジウム系触媒を用いて合成したブタジエンゴムのミクロ構造としては、シス−1,4結合含有量が96%以上かつビニル基(1,2−ビニル結合)含有量が1.0%以下であることが好ましい。ここで、シス−1,4結合含有量及びビニル基含有量は、
1HNMRスペクトルの積分比により算出される値である。
【0024】
上記ゴム成分は、天然ゴムとポリブタジエンゴムのみで構成してもよいが、その他のジエン系ゴムを配合することもできる。その他のゴムとしては、特に限定されないが、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。
【0025】
本実施形態で用いるゴム組成物には、メルカプトベンゾイミダゾール化合物を含有させる。メルカプトベンゾイミダゾール化合物の具体例としては、2−メルカプトベンゾイミダゾール、又は芳香環に少なくとも1個のアルキル置換基を有する2−メルカプトベンゾイミダゾール、並びにそれらの金属塩が挙げられる。上記アルキル置換基の例としては、メチル基等が挙げられる。金属塩の例としては、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等が挙げられる。これらメルカプトベンゾイミダゾール化合物は1種を単独で使用することもでき、2種以上を使用することもできる。
【0026】
本実施形態で用いるゴム組成物におけるメルカプトベンゾイミダゾール化合物の含有量は、上記ジエン系ゴム100質量部に対し0.1〜4.0質量部の割合が好ましく、0.1〜3.0質量部がより好ましい。メルカプトベンゾイミダゾール化合物の含有量がジエン系ゴム100質量部に対し0.1質量部以上であれば、本発明の目的とするランフラット耐久性の向上が得られ、4.0質量部以下であれば、ゴム物性の全体的なバランスが良好となる。
【0027】
本実施形態で用いるゴム組成物は、上記ジエン系ゴムに加えて、フェノール系熱硬化性樹脂と、その硬化剤としてのメチレン供与体とをさらに含有することも好ましい。
【0028】
フェノール系熱硬化性樹脂としては、フェノール、レゾルシン、及びこれらのアルキル誘導体からなる群から選択された少なくとも1種のフェノール類化合物を、ホルムアルデヒドなどのアルデヒドで縮合してなる熱硬化性樹脂が用いられ、高硬度化を図ることができる。上記アルキル誘導体には、クレゾール、キシレノールといったメチル基誘導体の他、ノニルフェノール、オクチルフェノールといった比較的長鎖のアルキル基による誘導体が含まれる。フェノール系熱硬化性樹脂の具体例としては、フェノールとホルムアルデヒドを縮合してなる未変性フェノール樹脂(ストレートフェノール樹脂)、クレゾールやキシレノール、オクチルフェノール等のアルキルフェノールとホルムアルデヒドを縮合してなるアルキル置換フェノール樹脂、レゾルシンとホルムアルデヒドを縮合してなるレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシンとアルキルフェノールとホルムアルデヒドを縮合してなるレゾルシン−アルキルフェノール共縮合ホルムアルデヒド樹脂などの、各種ノボラック型フェノール樹脂が挙げられる。また、例えばカシューナッツ油、トール油、ロジン油、リノール油、オレイン酸及びリノレイン酸よりなる群から選択された少なくとも1種のオイルで変性されたオイル変性ノボラック型フェノール樹脂を用いることもできる。これらのフェノール系熱硬化性樹脂は、いずれか1種を用いることもでき、2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0029】
フェノール系熱硬化性樹脂の硬化剤として配合するメチレン供与体としては、ヘキサメチレンテトラミン及び/又はメラミン誘導体が用いられる。メラミン誘導体としては、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテル、及び多価メチロールメラミンからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。これらの中でも、メチレン供与体としては、ヘキサメトキシメチルメラミン及び/又はヘキサメチレンテトラミンが好ましく、より好ましくはヘキサメトキシメチルメラミンである。
【0030】
上記フェノール系熱硬化性樹脂の配合量は、特に限定されないが、上記ジエン系ゴム100質量部に対して1〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜10質量部である。また、
メチレン供与体の配合量は、特に限定されないが、上記ジエン系ゴム100質量部に対して0.2〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。
【0031】
但し、フェノール系熱硬化性樹脂の配合量(A)とメチレン供与体の配合量(B)との質量比A/Bは1.5以上であることが好ましく、2.0以上がより好ましく、2.5以上が更に好ましい。質量比A/Bの上限は、5.0以下であることが好ましく、4.0以下がより好ましい。両者を適切な割合で使用することにより、ゴムの架橋系に悪影響を及ぼすことなく、後述するM50H/M50Nの比を所望の範囲内に設定しやすくなり、ランフラット走行時の変形抑制効果を高めて、ランフラット耐久性をより向上させることができる。
【0032】
本実施形態で用いるゴム組成物は、測定温度23℃での50%伸張時の引張応力をM50Nとし、測定温度100℃での50%伸張時の引張応力をM50Hとして、両者の比であるM50H/M50Nが次の関係を満足することが好ましい。
1.0 ≦ M50H/M50N ≦ 1.3
【0033】
かかる物性を持つゴム組成物を用いることにより、通常走行時における走行性能を維持しつつ、ランフラット走行時におけるサイドウォール部の変形を抑えてランフラット耐久性をより向上させることができる。
【0034】
より詳細には、一般にランフラットタイヤのサイド補強ゴム部に用いられる高硬度配合のゴム組成物では、高温時に弾性率が低下するが、この関係を反転させて、ランフラット走行時に相当する高温(100℃)時における引張応力が、通常走行時に相当する常温(23℃)時における引張応力と同等以上であるゴム組成物を用いることが好ましい。
【0035】
この引っ張り応力の比、M50H/M50Nが1.0以上であると、ランフラット走行時における剛性低下を抑えて、ランフラット耐久性を向上させることができる。高温時の引張応力が常温時の引張応力よりも高いことがより好ましく、すなわちM50H/M50Nは1.1以上がより好ましい。一方、M50H/M50Nが大きすぎると、高温時での剛性が高くなりすぎてランフラット耐久性が却って損なわれるので、M50H/M50Nは、1.3以下であることが好ましく、1.2以下がより好ましい。
【0036】
上記ゴム組成物の100℃での50%伸張時の引張応力(M50H)は3.5MPa以上であることが好ましく、それにより高温時におけるサイドウォール部の剛性を高めて、ランフラット耐久性をより向上させることができる。M50Hの下限は、より好ましくは4.0MPa以上である。また、M50Hの上限は、特に限定されないが、5.5MPa以下であることが好ましく、5.3MPa以下がより好ましい。このような上限値に設定することにより、高温時に剛性が高くなりすぎてサイドウォール部がしなりにくくなることを抑えて、ランフラット耐久性をより向上させることができる。
【0037】
一方、このゴム組成物の23℃での50%伸張時の引張応力(M50N)も、特に限定されないが、通常走行時における走行性能を良好に維持するため、3.0〜5.0MPaであることが好ましく、3.5〜4.5MPaの範囲内がより好ましい。
【0038】
上記実施形態に係るゴム組成物には、上記メルカプトベンズイミダゾール化合物以外に、キノリン系老化防止剤と、キノリン系老化防止剤以外の少なくとも一種の老化防止剤を配合することも好ましい。これらの2種以上の老化防止剤を配合することにより、ランフラット耐久性をより向上させることができる。
【0039】
キノリン系老化防止剤としては、例えば、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体(TMDQ)、及び、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロ−キノリン(ETMDQ)からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0040】
キノリン系老化防止剤と併用する他の老化防止剤としては、例えば、芳香族第2級アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、硫黄系老化防止剤、及び亜リン酸エステル系老化防止剤からなる群から選択される少なくとも1種の老化防止剤が挙げられる。
【0041】
芳香族第2級アミン系老化防止剤としては、例えば、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(6PPD)、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(IPPD)、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(DPPD)、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン(DNPD)、N−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンなどのp−フェニレンジアミン系老化防止剤;p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(CD)、オクチル化ジフェニルアミン(ODPA)、スチレン化ジフェニルアミンなどのジフェニルアミン系老化防止剤;N−フェニル−1−ナフチルアミン(PAN)、N−フェニル−2−ナフチルアミン(PBN)等のナフチルアミン系老化防止剤などが挙げられる。これらはいずれか1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
フェノール系老化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(DTBMP)、スチレン化フェノール(SP)などのモノフェノール系老化防止剤;2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(MBMBP)、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)(MBETB)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(BBMTBP)、4,4’−チオ−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(TBMTBP)などのビスフェノール系老化防止剤;2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン(DBHQ)、2,5−ジ−tert−アミルハイドロキノン(DAHQ)などのハイドロキノン系老化防止剤などが挙げられる。これらはいずれか1種を用いることもでき、2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0043】
硫黄系老化防止剤としては、例えばジブチルジチオカルバミン酸ニッケルなどのジチオカルバミン酸塩系老化防止剤;1,3−ビス(ジメチルアミノプロピル)−2−チオ尿素、トリブチルチオ尿素などのチオウレア系老化防止剤;チオジプロピオン酸ジラウリルなどの有機チオ酸系などが挙げられる。なお、本発明でいう「老化防止剤」には、上記メルカプトベンズイミダゾール化合物は含まれないものとする。
【0044】
亜リン酸エステル系老化防止剤としては、例えば、トリス(ノニルフェニル)ホスファイトなどが挙げられる。これらについてもいずれか1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0045】
キノリン系老化防止剤と併用する他の老化防止剤としては、上記の中でも、芳香族第2級アミン系老化防止剤が好ましく、より好ましくはp−フェニレンジアミン系老化防止剤である。
【0046】
キノリン系老化防止剤の配合量は、ランフラット耐久性の向上効果を高めるために、老化防止剤の全配合量に対して20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上が更に好ましい。この比率の上限は、80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下がより好ましい。
【0047】
老化防止剤の全配合量、すなわちキノリン系老化防止剤とそれ以外の老化防止剤の配合量の合計は、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは1.5〜7質量部であり、更に好ましくは2〜5質量部である。キノリン系老化防止剤の配合量は、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、0.2〜8質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜4質量部である。
【0048】
上記実施形態に係るゴム組成物には、カーボンブラック及び/又はシリカなどの充填剤を配合することができる。充填剤の配合量は、上記ジエン系ゴム100質量部に対して20〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは30〜80質量部であり、更に好ましくは50〜70質量部である。充填剤としては、カーボンブラック単独、又はカーボンブラックとシリカのブレンドが好ましく、より好ましくはカーボンブラックである。なお、充填剤の種類及び配合量により、ゴム組成物の引張応力の値を調整することができる。
【0049】
カーボンブラックとしては、特に限定されず、例えば、ISAF級(N200番台)、HAF級(N300番台)、FEF級(N500番台)、GPF級(N600番台)(ともにASTMグレード)のものを用いることができ、より好ましくはFEF級のものである。
【0050】
実施形態に係るゴム組成物には、上記成分の他に、オイル、亜鉛華、ステアリン酸、ワックス、加硫剤、加硫促進剤など、タイヤ用ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。ここで、加硫剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などの硫黄成分が挙げられ、特に限定するものではないが、その配合量は上記ジエン系ゴム100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜8質量部であり、更に好ましくは1〜5質量部である。また、加硫促進剤の配合量としては、ジエン系ゴム100質量部に対して0.1〜7質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。なお、オイルは、その配合量が多いと、高温(100℃)時の引張応力が低くなり、M50H/M50Nの比が小さくなる傾向になるので、その配合量は少ないことが好ましく、特に限定するものではないが、例えば、オイルはジエン系ゴム100質量部に対して5質量部以下であることが好ましい。
【0051】
上記ゴム組成物は、通常に用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。
【0052】
以上よりなる実施形態に係るゴム組成物は、ジエン系ゴムにメルカプトベンズイミダゾール化合物を所定量含有すると共に、好ましくはフェノール系熱硬化性樹脂とメチレン供与体を所定の質量比で含有し、及び/又はキノリン系老化防止剤を含む2種以上の老化防止剤を含有するものであり、それにより高温時における引張応力が向上してM50H/M50Nの比が上記範囲内に設定した場合、ランフラット耐久性を特に顕著に改善することが可能となる。
【0053】
実施形態に係るランフラットタイヤでは、そのサイド補強ゴム部に上記ゴム組成物を用いる。
図1は、ランフラットタイヤの一例を示すタイヤの概略半断面図である。このタイヤは、トレッド部1と、その両端から半径方向内側に延びる左右一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2の内側端に設けられた左右一対のビード部3とからなる。一対のビード部3にはビードコア4が埋設され、この一対のビードコア4により両端が係止されるようにカーカスプライ5が埋設されている。カーカスプライ5は、ビードコア4の周りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返されており、カーカスプライ5の本体とその折返し部との間には、ビードコア4の径方向外周側に断面三角形状をなす硬質ゴム製のビードフィラー6が配されている。トレッド部1におけるカーカスプライ5の半径方向外側にはベルト7が埋設されており、ベルト7の外周にはベルト補強層8が設けられている。そして、サイドウォール部2には、その剛性を上げるために、サイドパッドとも称されるサイド補強ゴム部9が設けられている。サイド補強ゴム部9は、サイドウォール部2におけるカーカスプライ5のタイヤ内面側に配設されており、タイヤ子午線断面において三日月状の断面形状にて設けられている。
【0054】
本実施形態では、サイド補強ゴム部9が上記実施形態のゴム組成物により形成されており、常法に従い、例えば140〜180℃で加硫成形することにより、ランフラットタイヤが得られる。得られたランフラットタイヤは、上記実施形態のゴム組成物からなるサイド補強ゴム部9を有するため、通常走行時における走行性能(例えば、轍乗り越し性)を維持しつつ、ランフラット走行時におけるサイド補強ゴム部の変形を抑えてランフラット耐久性を向上させることができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合(質量部)に従い、まず、第1工程(ノンプロ混合工程)で、硫黄と加硫促進剤とメチレン供与体を除く成分を添加混合し(排出温度=160℃)、次いで、得られた混合物に、第2工程(ファイナル混合工程)で硫黄と加硫促進剤とメチレン供与体を添加混合して(排出温度=100℃)、サイド補強ゴム部用ゴム組成物を調製した。
【0057】
表1中の各成分の詳細は以下の通りである。
・NR:天然ゴム、RSS3号
・BR1:JSR(株)製「BR01」(シス−1,4結合含有量=95%)
・BR2:Nd−BR(ネオジウム系触媒で重合されたポリブタジエンゴム)、KUNHO PETROCHEMICAL社製「BR40」(シス−1,4結合含有量=98%)
・カーボンブラック:N550、東海カーボン(株)製「シーストSO」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS−20」
・フェノール系樹脂:オイル変性ノボラック型フェノール樹脂、住友ベークライト(株)製「スミライトレジンPR13349」
・亜鉛華:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華1号」
・老化防止剤1:N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、住友化学(株)製「アンチゲン6C」
・老化防止剤2:2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体(TMDQ)、川口化学工業(株)製「アンテージRD」
・加硫促進剤:スルフェンアミド系、大内新興化学工業(株)製「ノクセラーNS−P」
・メチレン供与体:ヘキサメトキシメチルメラミン、三井サイテック(株)製「CYREZ 964RPC」
・硫黄:四国化成工業(株)製「ミュークロンOT−20」
・化合物1:2−メルカプトベンズイミダゾール、川内化学工業(株)製「アンテージMB」
・化合物2:2−メルカプトベンズイミダゾールのZn塩、大内新興化学(株)製「ノクラックMBZ」
・化合物3:2−メルカプトメチルベンズイミダゾール、大内新興化学(株)製「ノクラックMMB」
【0058】
各ゴム組成物について、160℃で25分間加硫した厚さ2mmの試験片を用いて、23℃での50%伸張時の引張応力(M50N)と、100℃での50%伸張時の引張応力(M50H)を測定し、両者の比(M50H/M50N)を求めた。また、各ゴム組成物をサイド補強ゴム部に用いて、タイヤサイズ:225/45ZR18の乗用車用ラジアルタイヤ(ランフラットタイヤ)を常法により製造して、ランフラット耐久性及び轍乗り越し性を評価した。結果を表1に示す。各測定・評価方法は以下の通りである。
【0059】
・硬度:JIS K 6253に準拠して、タイプAデュロメータを使用して23℃で測定し、比較例1の値を100とした指数で示した
・抗張積:JIS K 6251に準拠して、室温23度にて引張試験を実施し、破断強度TB*破断伸びEBを抗張積とした。
・M50N:JIS K 6251に準拠し、ダンベル状3号形の試験片につき、室温23℃にて引張試験を実施し、50%伸長時の引張応力を求めた。
・M50H:JIS K 6251に準拠し、試験片(ダンベル状3号形)を1時間以上100℃の恒温槽で保持した後、恒温槽つきの引っ張り試験機にて、100℃の雰囲気下で引張試験を実施し、50%伸長時の引張応力を求めた。
・ランフラット耐久性:表面が平滑な鋼製で、直径1700mmのドラム試験機を用いた。タイヤ内圧0kPaで、荷重はロードインデックスに対応する負荷能力の65%とした。試験開始から5分で80km/hまで速度を上昇させた後、80km/hで故障が発生するまで走行させた。故障が発生するまでの走行距離を、比較例1のタイヤを100として指数表示した。数字が大きいほどランフラット耐久性が良好であることを示す。
【0060】
【表1】
【0061】
表1に示された結果から分かるように、メルカプトベンズイミダゾール化合物を所定量使用した実施例1〜6では、メルカプトベンズイミダゾール化合物を使用しなかったコントロールである比較例1に対し、いずれも硬度を低下させることなく、抗張積を向上させることができ、結果としてランフラット耐久性を大きく向上させることができた。
【0062】
これに対し、メルカプトベンズイミダゾール化合物を使用せず、かつフェノール樹脂/メチレン供与体が低い比較例2及びフェノール樹脂を使用しなかった比較例4、メルカプトベンズイミダゾール化合物過剰に使用した比較例3のいずれも、ランフラット耐久性に劣る結果となった。