(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建具は、意匠性が考慮され、窓枠や框材をより小さくすることが求められている。このため、窓枠が有するレールのサイズも小さい方が望ましい。しかしながら、上述した建具のように、レールの中空部内に金属製の補強材を設ける場合には、補強材の断面を小さくし、また、レールの全長に亘るように細長く形成しなければならない。さらに、窓枠の製造時にはレールの小さな中空部に細長い補強材を挿入しなければならず、作業が煩雑であるという課題がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、火炎に晒されても下枠において火炎が貫通しにくく製造性に優れた枠体を有する建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本発明の建具は、複数の障子と、上方に突出し前記障子が支持されるとともに案内されるレールが見込み方向に並べて複数配置された合成樹脂製の下枠と、を有し、複数の前記レールのうちの見込み方向に隣り合う2つの前記レール間に、各々の前記レールと対向する2つの下枠突部対向壁を備えた難燃性または不燃性の下枠突部間補強材が前記下枠の長手方向に沿って設けられて
おり、前記下枠突部間補強材には、前記レールと前記下枠突部対向壁との間に、加熱されて発泡する加熱発泡材が各々設けられていることを特徴とする建具である。
【0007】
このような建具によれば、見込み方向に隣り合う2つのレール間に、当該レールに沿って難燃性または不燃性の下枠突部間補強材が設けられているので、例えば、レール内に補強材を設けなくとも、火炎に晒された際に下枠において火炎が貫通することを抑制することが可能である。特に、下枠突部間補強材は、2つのレールの各々と対向する2つの下枠突部対向壁を備えているので、見込み方向において下枠のいずれの側から火炎に晒されたとしても、2つの下枠突部対向壁により火炎と反対側のレールが火炎に晒されることを防止することが可能である。また、下枠突部間補強材は、隣り合う2つのレール間に設けられているので、レール内に設けるような煩雑な作業をすることなく、上方からレール間に載置するだけで備えることが可能である。このため、火炎に晒されても下枠において火炎が貫通しにくく製造性に優れた枠体を有する建具を提供することが可能である。
【0008】
また、下枠突部間補強材には、レールとの間に加熱発泡材が設けられているので、加熱された際に加熱発泡材が発泡することにより、レールおよび下枠突部間補強材の溶融を抑制することが可能である。
【0009】
かかる建具であって、前記下枠を有する枠体により形成される開口を、前記障子が閉塞した状態で、各々の前記レールに支持された前記障子が対向する召し合せ部の下に風止部材が設けられており、前記下枠突部間補強材は、前記レールに沿う方向において前記風止部材を挟んでその両側にそれぞれ設けられていることが望ましい。
このような建具によれば、下枠突部間補強材は、レールに沿う方向において風止部材を挟んでその両側にそれぞれ設けられているので、見込み方向に隣り合う2つの障子が対向する召し合せ部の下における気密性を確保しつつ、レールの溶融を抑制することが可能である。
【0010】
また、合成樹脂製の下枠と、前記下枠上に設けられる障子とを有する建具であって、前記下枠は、上方に突出し前記障子が長手方向に沿って案内されるレール、および、上方に突出し長手方向に沿って連なり前記レールと見込み方向に並べて設けられた上方突枠部を有し、前記レールと前記上方突枠部との間に、前記レールおよび前記上方突枠部の各々と対向する2つの下枠突部対向壁を備えた難燃性または不燃性の下枠突部間補強材が前記下枠の長手方向に沿って設けられて
おり、前記下枠突部間補強材には、前記レールおよび前記上方突枠部と前記下枠突部対向壁との間に、加熱されて発泡する加熱発泡材が各々設けられていることを特徴とする建具である。
【0011】
このような建具によれば、見込み方向に隣り合うレールと上方突枠部との間に、長手方向に沿って難燃性または不燃性の下枠突部間補強材が設けられているので、例えば、レール内に補強材を設けなくとも、火炎に晒された際に下枠において火炎が貫通することを抑制することが可能である。特に、下枠突部間補強材は、レールおよび上方突枠部の各々と対向する2つの下枠突部対向壁を備えているので、見込み方向において下枠のいずれの側から火炎に晒されたとしても、2つの下枠突部対向壁により火炎と反対側のレールおよび上方突枠部が火炎に晒されることを防止することが可能である。また、下枠突部間補強材は、隣り合うレールと上方突枠部との間に設けられているので、レール内に設けるような煩雑な作業をすることなく、上方からレールと上方突枠部との間に載置するだけで備えることが可能である。このため、火炎に晒されても下枠において火炎が貫通しにくく製造性に優れた枠体を有する建具を提供することが可能である。
【0012】
また、下枠突部間補強材には、レールおよび上方突枠部との間に加熱発泡材が設けられているので、加熱された際に加熱発泡材が発泡することにより、レール、上方突枠部および下枠突部間補強材の溶融を抑制することが可能である。
【0013】
かかる建具であって、前記下枠を有する枠体により形成される開口を、前記障子が閉塞した状態で、前記障子の戸尻側の部位の下に風止部材が設けられており、前記下枠突部間補強材は、少なくとも前記風止部材より戸先側に設けられていることが望ましい。
このような建具によれば、下枠突部間補強材は、少なくとも前記風止部材より戸先側に設けられているので、障子の戸尻側の部位の下における気密性を確保しつつ、少なくとも障子の下に位置するレールの溶融を抑制することが可能である。
【0014】
かかる建具であって、前記加熱発泡材は、前記下枠を有する枠体により形成される開口を、前記障子が閉塞した状態で、前記レールにおいて前記障子の下に位置する部位と対向する位置に設けられていることが望ましい。
このような建具によれば、レールにおいて障子の下に位置する部位と対向する位置に加熱発泡材が設けられているので、レールの全長に亘って加熱発泡材を設ける場合より、加熱発泡材の量を少なくすることが可能である。また、レールにおいて障子の下に位置する部位と対向する位置に加熱発泡材が設けられているので、加熱された際には少なくとも障子とレールとの間にて加熱発泡材が発泡して、レールおよび下枠突部間補強材の溶融を抑制する。このため、効率よく加熱発泡材を使用してレールおよび下枠突部間補強材の溶融を抑制することが可能である。
【0015】
かかる建具であって、前記下枠突部間補強材は、2つの前記下枠突部対向壁の上端部を繋ぐ上板部を有し、前記上板部は、前記障子が前記レールに支持された状態で、前記障子の下方に間隔を隔てて設けられていることが望ましい。
このような建具によれば、下枠突部間補強材が有する、2つの下枠突部対向壁の上端部を繋ぐ上板部は、障子がレールに支持された状態で障子の下方に設けられているので、たとえレールが溶融して障子が降下したとしても、下枠突部間補強材の上板部に障子が載置される。このため、障子が上板部に載置された後には、障子の更なる降下を防止することが可能である。また、上板部は、障子がレールに支持された状態で、障子の下方に間隔を隔てて設けられているので、レールに支持された状態では障子は下枠突部間補強材の上板部と干渉することなく、滑らかに移動することが可能である。
【0016】
かかる建具であって、前記下枠には、前記レールより下に長手方向に沿って下枠中空部が設けられており、前記下枠中空部には、難燃性または不燃性の下枠補強材が設けられており、前記下枠突部間補強材は、前記下枠補強材と連結されていることが望ましい。
このような建具によれば、たとえ下枠が溶融されたとしても下枠突部間補強材は下枠補強材に支持されるので、下枠突部間補強材が脱落することはなく、また下枠突部間補強材を下枠上に配置させておくことが可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、火炎に晒されても下枠において火炎が貫通しにくく製造性に優れた枠体を有する建具を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る建具について図面を参照して説明する。
本実施形態の建具は、
図1に示すように、内障子3および外障子4を備えた引違い窓用の建具1である。
【0020】
以下の説明においては、建物等に取り付けられた状態の建具1を室内側から見たときに、上下となる方向を上下方向、左右となる方向を左右方向、室内外方向である奥行き方向を見込み方向として示す。建具1の各部位であっても、また、建具1を構成する各部材については単体の状態であっても、建具1が取り付けられた状態で上下方向、左右方向、見込み方向等となる方向にて方向を特定して説明する。
【0021】
本実施形態の建具1は、矩形状に枠組みされた合成樹脂製の枠体10と、枠体10に沿って移動可能に設けられ、枠体10により形成され室内と室外とを連通する開口10aを閉塞可能な内障子3および外障子4と、を備えている。
【0022】
枠体10を構成し、障子3、4の下側に位置する下枠11には、
図2〜
図3に示すように、ほぼ水平面をなす下枠平面部111と、下枠平面部111から上方に突出し長手方向に沿って連なり障子3、4が支持されるとともに案内されるレール112、113が設けられている。下枠11に設けられた2本のレール112、113は、見込み方向において互いに間隔を隔てるとともに下枠11の長手方向に沿って設けられている。
【0023】
下枠11のレール112、113は、長手方向に沿うレール中空部を有している。レール112、113の上端には、障子3、4に設けられた合成樹脂製の戸車29が載置されて案内されつつ転動するレール金具12がレール112、113の全長に亘って嵌合されている。
【0024】
下枠11の下枠平面部111の下側には、長手方向に沿うとともに貫通する3つの下枠中空部11a、11b、11cが見込み方向に並べて設けられている。3つの下枠中空部11a、11b、11cは、外障子4を案内する外レール113より室外側に位置する外下枠中空部11aと、外レール113の下から内障子3を案内する内レール112の下に至る中下枠中空部11bと、内レール112の下から室内側に位置し躯体2上に位置する内下枠中空部11cと、である。すなわち、中下枠中空部11bは、外レール113の下から内レール112の下の一部に至るように形成されている。
【0025】
中下枠中空部11b内には、下枠補強材13が、下枠11の全長に渡り、中下枠中空部11bの見込み方向におけるほぼ全幅に亘って設けられている。下枠補強材13は、不燃性であるアルミニウム製の押し出し成形された中空部材であり、断面形状は中下枠中空部11bの内周面に沿うようなほぼ矩形状をなしている。
【0026】
下枠補強材13の上面における室外側の部位には、下方に窪み上方が開放された上凹部13aが設けられており、下枠補強材13において、中下枠中空部11bの室外側の部位11dと対向する部位には、室内側に窪み室外側に向かって開放された側凹部13bとが設けられている。上凹部13aの開放された上端部は、見込み方向の幅が上凹部13aの下端側より狭く、下枠補強材13の長手方向に沿うスリット状をなしている。側凹部13bの開放された室外側の端部は、上下方向の幅が側凹部13bの室内側より狭く、下枠補強材13の長手方向に沿うスリット状をなしている。
【0027】
上凹部13aと側凹部13bとには加熱発泡材としての熱膨張性黒鉛14が、下枠補強材13のほぼ全長に亘って挿入されている。熱膨張性黒鉛14は、その幅が、上凹部13aまたは側凹部13bの幅より僅かに狭く、かつ、スリット状に開放された部位の幅より広く形成されることにより、上凹部13aと側凹部13bとにそれぞれ、下枠11の端部側から長手方向に沿って挿入されるだけで下枠補強材13に保持され、加熱された際には、開放された上方または室外側に発泡するように構成されている。
枠体10は、躯体2に固定され、下枠11に設けられた下枠補強材13の下に位置して下枠11が下方から鉄製のブラケット15に支持されている。
【0028】
下枠11の内レール112と外レール113との間には、
図1に示す、内障子3および外障子4を閉じた状態にて対向する、内障子3の召合せ框31と外障子4の召合せ框41との間に位置する召し合せ部の下方に、
図4に示すように、内障子3と外障子4との下の空間を気密に閉塞すべく合成樹脂製の風止部材16が設けられている。すなわち、内レール112と外レール113との間の空間は、風止部材16により、内障子3および外障子4を閉じたときに内障子3の室外側に位置する内障子側空間11eと、外障子4の室内側に位置する外障子側空間11fとに分けられている。また、風止部材16と下枠11との間には熱膨張性黒鉛14が設けられている。
【0029】
内障子側空間11eと外障子側空間11fとには、内レール112および外レール113に沿う方向において風止部材16を挟んでその両側にそれぞれ下枠突部間補強材としてのレール間補強材17が設けられている。レール間補強材17は、不燃性であるアルミニウム製の押し出し成形された中空部材であり、同一の型にて押し出し成形された基材が、内障子側空間11eと外障子側空間11fの長さ合わせて切断されて形成されている。このため、各レール間補強材17は、内障子3および外障子4のストッパー18の下にも配置され、内障子側空間11eおよび外障子側空間11fの全長に亘って設けられている。
【0030】
レール間補強材17は、
図5に示すように、下枠11の下枠平面部111上に載置される下板部171と、下板部171の室内側の端部から上方に設けられ内レール112と対向する下枠突部対向壁としての内レール対向壁172と、下板部171の室外側の端部から上方に設けられ外レール113と対向する下枠突部対向壁としての外レール対向壁173と、内レール対向壁172の上端と外レール対向壁173の上端側とを室外側に向かって低くなるように繋ぐ上板部174とを有している。すなわち、レール間補強材17は、内レール112と対向する内レール対向壁172と、外レール113と対向する外レール対向壁173と、の2つの下枠突部対向壁を備えている。
【0031】
下板部171には、レール間補強材17の剛性を高めるため、室内側および室外側の部位が、見込み方向における中央部171aより僅かに高くなるような段差171bが設けられている。下板部171は、下枠平面部111に当接される中央部171aにて中下枠中空部11b内の下枠補強材13とビスまたはリベットにより連結されている。
【0032】
内レール対向壁172は対向する内レール112と、また、外レール対向壁173は対向する外レール113と各々間隔を隔てて配置されており、内レール対向壁172と外レール対向壁173の上下端からは、各々が対向するレール112、113側に向かって突出する突出部172a、173aが設けられている。
【0033】
内レール対向壁172の上下端に設けられた突出部172aの先端には、上下方向において互いに対向する側に突出する対向片172bが設けられ、外レール対向壁173の上下端に設けられた突出部173aの先端には、上下方向において互いに対向する側に突出する対向片173bが設けられている。すなわち、内レール対向壁172と上下の突出部172aとによりレール間補強材17の室内側の部位に室外側に窪み室内側に向かって開放された室内側凹部172cが設けられ、外レール対向壁173と上下の突出部173aとによりレール間補強材17の室外側の部位に室内側に窪み室外側に向かって開放された室外側凹部173cが設けられている。
【0034】
室内側凹部172cの開放された室内側の部位は、上下幅が室内側凹部172cの室外側の部位より狭く、レール間補強材17の長手方向に沿うスリット状をなしている。室外側凹部173cの開放された室外側の部位は、上下幅が室外側凹部173cの室内側の部位より狭く、レール間補強材17の長手方向に沿うスリット状をなしている。
【0035】
内レール対向壁172の上端に設けられた突出部172aと外レール対向壁173の上下端に設けられた突出部173aとには、対向片172b、173bと反対方向すなわち上方に突出する上突片172d、173dが設けられている。各々の上突片172d、173dは、内障子3および外障子4がレール112、113に支持された状態で、内障子3および外障子4の下框32、42に設けられレール112、113が挿入されるレール挿入部32a、42aの下、より具体的には、下框32、42のレール挿入部32a、42aを形成する部位32b、42bと各レール112、113との間の空間の下に位置するように構成されている。
【0036】
上板部174は、内レール対向壁172の上端に設けられた突出部172aと繋がり、内障子3および外障子4がレール112、113に支持された状態で、内障子3および外障子4の下端と上下方向に間隔を隔てるとともに、室外側に向かって高さが低くなる傾斜を有する上面を形成している。このため、上板部174は、外レール対向壁173の上端とは繋がっておらず、外レール対向壁173の上端より低い位置にて外レール対向壁173と繋がっている。このため、外レール対向壁173は、上板部174の室外側の端より上に突出している。
【0037】
内障子側空間11eに設けられるレール間補強材17と外障子側空間11fに設けられるレール間補強材17とには、内障子3および外障子4が開口10aを閉塞した状態で、いずれも対向するレール112、113において、障子3、4の下に位置する部位と対向する室内側凹部172cおよび室外側凹部173cに加熱発泡材としての熱膨張性黒鉛14が挿入されている。より具体的には、内障子側空間11eに設けられるレール間補強材17には、室内側凹部172cの全長に渡る部位に熱膨張性黒鉛14が挿入され、外障子側空間11fに設けられるレール間補強材17には、室外側凹部173cの全長に渡る部位に熱膨張性黒鉛14が挿入されている。
【0038】
各レール間補強材17に設けられる熱膨張性黒鉛14は、その幅が、室内側凹部172cまたは室外側凹部173cの上下方向の幅より僅かに狭く、かつ、スリット状に開放された部位の幅より広く形成されている。このため、室内側凹部172cと室外側凹部173cとにそれぞれ熱膨張性黒鉛14を挿入するだけでレール間補強材17に熱膨張性黒鉛14を備えることが可能であり、加熱された際には、開放された室内側または室外側に発泡するように構成されている。
【0039】
本実施形態の建具1によれば、見込み方向に隣り合う内レール112と外レール113との間に、内レール112および外レール113に沿ってアルミニウム製のレール間補強材17が設けられているので、レール112、113内に補強材が設けられていなくとも、火炎に晒された際に内レール112および外レール113の溶融を抑制することが可能である。特に、レール間補強材17は、2つのレール112、113の各々と対向する内レール対向壁172および外レール対向壁173を備えているので、見込み方向において下枠11のいずれの側から火炎に晒されたとしても、2つのレール対向壁172、173により、火炎と反対側のレール112、113が火炎に晒されることを防止することが可能である。
【0040】
また、レール間補強材17は、内レール112と外レール113との間に設けられているので、補強材をレール112、113内に設けるような煩雑な作業をすることなく、下枠11の上方から内レール112と外レール113との間に載置するだけで備えることが可能である。このため、火炎に晒されても内レール112および外レール113が溶融しにくく製造性に優れた枠体10を有する建具1を提供することが可能である。
【0041】
また、レール間補強材17は、軽量且つ加工性優れたアルミニウム製なので、軽量で製造性に優れたレール間補強材17を備えることが可能である。また、アルミニウムは鉄などと比較して溶融しやすいが、内レール対向壁172および外レール対向壁173との間に熱膨張性黒鉛14が設けられているので、加熱された際に熱膨張性黒鉛14が発泡することにより、内レール112、外レール113およびレール間補強材17の溶融を抑制することが可能である。
【0042】
また、内レール112と内レール対向壁172との間および外レール113と外レール対向壁173との間であって、内レール112および外レール113において各々障子3、4の下に位置する部位と対向する位置に熱膨張性黒鉛14が設けられているので、内レール112および外レール113の全長に亘って熱膨張性黒鉛14を設ける場合より、熱膨張性黒鉛14の量を少なくすることが可能である。そして、加熱された際には少なくとも障子3、4と内レール112および外レール113との間にて熱膨張性黒鉛14が発泡して、内レール112および外レール113およびレール間補強材17の溶融を抑制する。このため、効率よく熱膨張性黒鉛14を使用して内レール112および外レール113およびレール間補強材17の溶融を抑制することが可能である。
【0043】
また、レール間補強材17は、内レール112および外レール113に沿う方向において風止部材16を挟んでその両側にそれぞれ設けられているので、見込み方向に隣り合う内障子3および外障子4が対向する召し合せ部の下方における気密性を確保しつつ、内レール112および外レール113の溶融を抑制することが可能である。また、合成樹脂製の風止部材16と下枠11との間には熱膨張性黒鉛14が設けられているので、たとえ風止部材16が溶融したとしても、熱膨張性黒鉛14が膨張することにより室内外が貫通されてしまうことを防止することが可能である。
【0044】
また、レール間補強材17が有する、内レール対向壁172の上端と外レール対向壁173の上端側とを繋ぐ上板部174は、内障子3が内レール112に、外障子4が外レール113に支持された状態で内障子3および外障子4の下方に設けられているので、例えば、レール112、113が溶融するなどして内障子3および外障子4が降下した際には、内障子3および外障子4がレール間補強材17の上板部174上に載置され、内障子3および外障子4の更なる降下が規制される。このため、内障子3および外障子4が上板部174上に載置された後には、内障子3および外障子4の更なる降下を防止することが可能である。
【0045】
また、内障子3および外障子4がレール間補強材17上に載置された際には、レール間補強材17の上突片172d、173dがレール挿入部32a、42aに挿入されるので、内障子3および外障子4の見込み方向における移動をも防止することが可能である。また、レール間補強材17の上板部174は、内障子3および外障子4が内レール112および外レール113に支持された状態で、内障子3および外障子4の下方に間隔を隔てて設けられているので、内レール112および外レール113に支持された状態では内障子3および外障子4はレール間補強材17の上板部174と干渉することなく、滑らかに移動することが可能である。
【0046】
また、内レール112および外レール113より下に、長手方向に沿って設けられた中下枠中空部11b内に、難燃性または不燃性の下枠補強材13が設けられており、レール間補強材17が下枠補強材13と連結されているので、たとえ下枠11が溶融されたとしてもレール間補強材17は下枠補強材13に支持されるのでレール間補強材17は脱落することなく内障子3と外障子4との間に維持される。このため、火炎に晒された際に内レール112および外レール113がより、溶融しにくい建具1を提供することが可能である。
【0047】
上記実施形態においては、レール間補強材17において内レール112および外レール113の上に内障子3および外障子4が位置する部位と対向する位置に熱膨張性黒鉛14を設けた例について説明したが、これに限らず、
図6に示すように、レール間補強材17の内レール112および外レール113と対向する部位の全域に熱膨張性黒鉛14を設けても構わない。
【0048】
上記実施形態においては、レール間補強材17、下枠補強材13、を不燃性のアルミニウム製としたが、鉄、ステンレス等の不燃性の金属等は、もちろんのこと、難燃性の材料で構成しても構わない。
【0049】
上記実施形態においては、枠体10が上下にそれぞれ2本のレールを有し、内障子3と外障子4とを備えた建具1を例に挙げて説明したが、レールの数または障子の数は、これに限るものではない。3本以上のレール及び3枚以上の障子を備えている場合には、見込み方向に隣接する2本のレール間にレール間補強材が設けられる。また、内障子または外障子のいずれか一方が、本来障子が案内されるレールに支持された状態で枠体に固定されてFIX窓や袖壁を成すように構成された片引き窓用の建具であっても構わない。
【0050】
上記実施形態においては、下枠11に設けられて上方に突出し、長手方向に沿って連なって、内障子3および外障子4が案内されるレール112、113間に下枠突部間補強材としてのレール間補強材17が設けられている例について説明したが、下枠突部間補強材が設けられる位置は必ずしも2本のレール間でなくとも構わない。例えば、
図7、
図8に示すように、室外側に複層ガラス5が框30に囲まれたFIX窓6が、枠体10が形成する開口10aの一部を閉塞し、開口10aのFIX窓6にて閉塞されない部分を開閉自在に移動する内障子3が室内側に設けられた片引き窓用の建具1であっても構わない。
【0051】
このFIX窓6は、複層ガラス5を囲む框30の下框60が有する下框中空部60aに設けられた鉄製の保持金具20が、枠体10の下枠中空部11aに設けられ下枠11の全長に亘って設けられた下枠補強材13にビス止めされて固定されている。このとき、保持金具20は、下框60の全長に亘って設けられていなくとも良い。以下に、本発明の他の実施形態として片引き窓用の建具1について説明するが、上記実施形態と同一構成については図中で同符号を付して示し、その説明については省略する。
【0052】
片引き窓用の建具1の場合には、内障子3を案内する内レール112と、下枠11の下枠平面部111から上方に突出し内レール112と見込み方向に並べて設けられ、内障子3が移動する領域とFIX窓6が設けられる領域とを室内外方向において仕切る上方突枠部114との間に下枠突部間補強材19が設けられている。下枠突部間補強材19は、中下枠中空部11b内の下枠補強材13とビスまたはリベットにより連結されている。
【0053】
片引き窓用の建具1に設けられる下枠突部間補強材19は、不燃性であるアルミニウム製の押し出し成形された中空部材である。片引き窓用の建具1においては、内障子3が開口10aを閉塞した状態で、内障子3の戸尻側の部位の下に風止部材16が設けられており、下枠突部間補強材19は、内レール112に沿う方向において風止部材16を挟んでその両側にそれぞれ設けられている。ここで、下枠突部間補強材19は、FIX窓6側には必ずしも設けられていなくとも構わない。
【0054】
下枠突部間補強材19は、下枠11の下枠平面部111上に載置される下板部191と、下板部191の室内側の端部から上方に設けられ内レール112と対向する下枠突部対向壁としての内レール対向壁192と、下板部191の室外側の端部から上方に設けられ上方突枠部114と対向する下枠突部対向壁193と、内レール対向壁192の上端と下枠突部対向壁193の上端とを繋ぐ上板部194とを有している。
【0055】
内レール対向壁192は対向する内レール112と、また、下枠突部対向壁193は対向する上方突枠部114と各々間隔を隔てて配置されており、内レール対向壁192と下枠突部対向壁193の上下端からは、各々が対向するレール112または上方突枠部114側に向かって突出する突出部192a、193aが設けられている。
【0056】
内レール対向壁192の上下端に設けられた突出部192aの先端には、上下方向において互いに対向する側に突出する対向片192bが設けられ、下枠突部対向壁193の上下端に設けられた突出部193aの先端には、上下方向において互いに対向する側に突出する対向片193bが設けられている。すなわち、内レール対向壁192と上下の突出部192aとにより下枠突部間補強材19の室内側の部位に室外側に窪み室内側に向かって開放された室内側凹部192cが設けられ、下枠突部対向壁193と上下の突出部193aとにより下枠突部間補強材19の室外側の部位に室内側に窪み室外側に向かって開放された室外側凹部193cが設けられている。
【0057】
内障子3の下に設けられる下枠突部間補強材19の内レール112と対向する室内側凹部192cには全長に亘る部位に熱膨張性黒鉛14が挿入されており、FIX窓6と対向する位置に設けられる下枠突部間補強材19の上方突枠部114と対向する室外側凹部193cには全長に亘る部位に熱膨張性黒鉛14が挿入されている。
【0058】
このような片引き窓用の建具1の場合には、下枠突部間補強材19は、内レール112および上方突枠部114の各々と対向する内レール対向壁192および下枠突部対向壁193を備えているので、見込み方向において下枠11のいずれの側から火炎に晒されたとしても、内レール対向壁192および下枠突部対向壁193により、火炎と反対側に位置する内レール112および上方突枠部114が火炎に晒されることを防止することが可能である。
【0059】
また、下枠突部間補強材19は、内レール112と上方突枠部114との間に設けられているので、補強材をレール112内に設けるような煩雑な作業をすることなく、下枠11の上方から内レール112と上方突枠部114との間に載置するだけで備えることが可能である。このため、火炎に晒されても内レール112および上方突枠部114が溶融しにくく製造性に優れた枠体10を有する建具1を提供することが可能である。
【0060】
上記実施形態においては、内障子3および外障子4を4本の框材が框組みされている障子を例に挙げて説明したが、これに限るものではない。例えば、パネル状の部材にて形成された障子であっても構わない。
【0061】
また、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。