(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記無機フィラーの含有量が上記シロキサン変性ポリイミド100質量部に対して10質量部以上100質量部以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のカバーレイ。
絶縁性及び可撓性を有するベースフィルムと、このベースフィルムの少なくとも一方の面側に積層され、LED実装用のランド部を含む導電パターンとを備えるフレキシブルプリント配線板であって、
上記ベースフィルム及び導電パターンを含む積層体における導電パターン側面に積層される請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のカバーレイを備えるフレキシブルプリント配線板。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本発明の実施形態の説明]
本発明の一態様に係るカバーレイは、絶縁性及び可撓性を有するカバーフィルム及びこのカバーフィルムの一方の面に積層される接着層を備え、LED実装用のランド部を有するフレキシブルプリント配線板の少なくとも一方の面側に積層されるカバーレイであって、上記カバーフィルムが光反射性を有し、上記接着層が、シロキサン変性ポリイミド、エポキシ樹脂及び無機フィラーを含有し、上記シロキサン変性ポリイミドの重量平均分子量(Mw)が25,000以上150,000以下である。
【0013】
当該カバーレイは、接着層がエポキシ樹脂を含有することで、接着層の耐熱性、特にリフロー耐熱性が向上するものと考えられる。エポキシ樹脂を含有することで接着層の耐熱性が向上する理由は明確ではないが、エポキシ樹脂がシロキサン変性ポリイミドマトリクス中で単独で硬化するか、若しくはエポキシ樹脂が硬化の際にシロキサン変性ポリイミドの末端のカルボン酸やアミンと反応することによって緩く架橋されるためであると考えられる。また、かかるエポキシ樹脂による架橋により、接着層の耐湿性及び機械的強度が向上するものと考えられる。
【0014】
さらに、接着層がシロキサン変性ポリイミドとして重量平均分子量(Mw)が特定範囲のものを含有することで、シロキサン変性ポリイミドの凝集を抑制できる。そのため、接着層は、このようなシロキサン変性ポリイミドを含むことでシロキサン変性ポリイミドの凝集に起因する剥離強度の低下を抑制できる。その結果、接着層の耐熱性を改善することが可能となる。また、上記接着層が無機フィラーを含有することで、機械的強度及び剥離強度がより向上する。
【0015】
加えて、上記接着層は、エポキシ樹脂による架橋、変性ポリイミドの凝集防止等によって、耐マイグレーション性が向上する。すなわち、接着層は、メッキ層を有する導電パターンの表面に形成される場合、メッキ成分の接着層への移行(マイグレーション)を抑制することができる。その結果、マイグレーションに起因する接着層の剥離強度の低下、脆弱化、白化等の色移りなどの発生を抑制できる。
【0016】
これらの結果、当該カバーレイは、LEDをフレキシブルプリント配線板に実装する半田リフロー時の破損及び劣化を低減できる。また、当該カバーレイは、LED点灯時の耐熱性にも優れるため、当該カバーレイが積層されるフレキシブルプリント配線板の寿命を延ばすことができる。さらに、当該カバーレイは、カバーフィルムが光反射性を有することで、LEDが発する光の利用効率を高め、当該カバーレイを用いたLEDモジュールの輝度を向上することができる。
【0017】
上記カバーフィルムが、基材層と、この基材層の他方の面側に積層される反射層とを含むとよい。このように、カバーフィルムが基材層と反射層とを含むことで、接着層とカバーフィルムとの高い接着強度とカバーフィルムの光反射性とを容易に両立できる。
【0018】
上記反射層が、白色顔料とこの白色顔料のバインダーとを含有するとよい。このように、反射層が白色顔料とバインダーと含有することで、反射層の光反射性を容易に調節できる。
【0019】
上記シロキサン変性ポリイミドが下記式(1)で表される第1構造単位及び下記式(2)で表される第2構造単位を含むとよい。
【化1】
(式(1)及び式(2)中、Arは、4価の芳香族テトラカルボン酸残基である。
式(1)中、R
1は、2価のジアミンシロキサン残基である。
式(2)中、R
2は、2価の芳香族ジアミン残基である。
上記式(1)中、mは、上記シロキサン変性ポリイミドの全構造単位における上記第1構造単位のモル比率を表し、0.35以上0.65以下である。
上記式(2)中、nは、上記シロキサン変性ポリイミドの全構造単位における上記第2構造単位のモル比率を表し、0.35以上0.65以下である。
但し、mとnとの合計が1を超える場合はない。)
【0020】
上記シロキサン変性ポリイミドは、上記式(1)及び式(2)で表される構造単位の比率が、それぞれ下記式(1)及び式(2)で表される構造単位の比率が、それぞれ0.35以上0.75以下及び0.25以上0.65以下、すなわち分子中のシロキサン残基の数が芳香族ジアミン残基と同程度とされている。このように接着層におけるシロキサン変性ポリイミドにおいて、耐熱性等の特性を低下させ得るシロキサン残基が過剰に含まれなくすることで、シロキサン残基に起因する接着層の耐熱性等の低下を抑制できる。
【0021】
上記無機フィラーの含有量としては、上記シロキサン変性ポリイミド100質量部に対して10質量部以上100質量部以下が好ましい。このように無機フィラーの含有量を上記範囲とすることで、無機フィラーを配合することによる効果、すなわち接着層の機械的強度、剥離強度等の向上効果をより高められる。
【0022】
上記無機フィラーの平均粒径としては、2μm以上50μm以下が好ましい。このように無機フィラーの平均粒径を上記範囲とすることで、接着層ひいては当該カバーレイの耐熱性等の特性がより向上する。
【0023】
上記無機フィラーが板状であることが好ましく、上記無機フィラーのアスペクト比としては1以上100以下が好ましい。このように無機フィラーのアスペクト比を上記範囲とすることで、接着層ひいては当該カバーレイの耐熱性等の特性がより向上する。
【0024】
上記エポキシ樹脂の含有量としては、上記シロキサン変性ポリイミド100質量部に対して50質量部以下が好ましい。このようにエポキシ樹脂の含有量を上記範囲とすることで、エポキシ樹脂によりシロキサン変性ポリイミドを好適に架橋し、当該カバーレイの接着層の耐熱性、機械的強度等の特性がより向上するものと考えられる。エポキシ樹脂成分の過剰な添加は、接着層の長期耐熱信頼性を低下させるものと考えられるためである。
【0025】
上記接着層がフェノール樹脂をさらに含有するとよい。このように接着層がフェノール樹脂を含有することで、このフェノール樹脂によりエポキシ樹脂を架橋等により硬化させることができ、エポキシ樹脂がシロキサン変性ポリイミドを架橋することによって得られる耐熱性、機械的強度等の向上効果と相俟って、接着層の耐熱性、機械的強度等がより向上する。
【0026】
また、本発明の一態様に係るフレキシブルプリント配線板は、絶縁性及び可撓性を有するベースフィルムと、このベースフィルムの少なくとも一方の面側に積層され、LED実装用のランド部を含む導電パターンとを備えるフレキシブルプリント配線板であって、上記ベースフィルム及び導電パターンを含む積層体における導電パターン側面に積層される上記カバーレイを備える。
【0027】
当該フレキシブルプリント配線板は、当該カバーレイを備え、カバーフィルムと導電パターン等とを接着する接着層が特定の化合物を含有するため、耐熱性に優れる。そのため、ベアチップタイプのLEDの実装で高温でのリフローが必要とされる場合でも、カバーレイの破損及び劣化が低減できる。また、当該フレキシブルプリント配線板は、LED点灯時の耐熱性にも優れると共に、カバーフィルムが光反射性を有することで、LEDが発する光の利用効率を高めることができる。
【0028】
上記導電パターンが、ベース導体と、このベース導体における外表面の少なくとも一部に形成される1以上の表面処理層とを有し、上記1以上の表面処理層の主成分がニッケル(Ni)、スズ(Sn)、金(Au)又はアルミニウム(Al)であるとよい。このように導電パターンが上記主成分を含む表面処理層を有することで、導電パターンからの導電成分の漏出及び導電パターンの導電成分に対する反応性成分の導電パターンへの拡散を抑制することができる。このように表面処理層により導電パターンからの導電成分の漏出を抑制することで、導電パターンの脆弱化を抑制することができる。また、表面処理層により導電パターンへの上記反応性成分の拡散を抑制することで、この反応性成分と導電パターンの導電成分との反応が抑制され、導電パターンの脆弱化を抑制することができる。その結果、導電パターンと接着層との密着性が改善されることで耐熱性が向上する。特に、接着層が耐マイグレーション性に優れることから、導電パターンがニッケル(Ni)等により表面処理層が形成される場合であっても、マイグレーションに起因する接着層の剥離強度の低下、脆弱化、白化等の色移りなどの発生を抑制できる。
【0029】
当該フレキシブルプリント配線板は、85℃、85%RHの空気中に1,000時間放置した後の上記カバーフィルムと導電パターンとの剥離強度としては3.4N/cm以上が好ましい。このような特性を持つことで、高温高湿の環境下においても好適に使用することができる。
【0030】
また、本発明の一態様に係るLEDモジュールは、当該フレキシブルプリント配線板及びこのフレキシブルプリント配線板の上記ランド部に実装されるLEDを備える。
【0031】
当該LEDモジュールは、当該カバーレイを備え、カバーフィルムと導電パターン等とを接着する接着層が特定の化合物を含有するため、耐熱性に優れる。そのため、ベアチップタイプのLEDの実装で高温でのリフローが必要とされる場合でも、カバーレイの破損及び劣化が低減できる。また、当該LEDモジュールは、LED点灯時の耐熱性にも優れると共に、カバーフィルムが光反射性を有することで、LEDが発する光の利用効率を高めることができる。
【0032】
ここで、「重量平均分子量(Mw)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量であり、例えば以下の測定条件により測定される値である。
【0033】
測定装置:東ソー社の「HLC−8220GPC」
カラム:GMH−HR−H
移動相:N−メチル−2−ピロリドン
カラム温度:40℃
流速:0.5mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:10μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0034】
「主成分」とは、最も含有量が多い成分であり、例えば含有量が50質量%以上の成分をいう。以下において「主成分」という場合も同様である。また、「1以上の表面処理層の主成分」とは、表面処理層が単層の場合には、この表面処理層の主成分であり、表面処理層が複数層の場合には、各表面処理層の主成分をいう。「剥離強度」は、JIS−K−6854−2:1999「接着剤−はく離接着強さ試験方法−第2部:180度はく離」に準じて測定されるピール強度である。このピール強度は、例えば島津製作所社の引張試験機「オートグラフAG−IS」を用いて測定することができる。なお、カバーフィルムと導電パターンとの剥離強度とは、カバーフィルムと、パターニングしていない導体(例えば銅箔)との剥離強度である。
【0035】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の実施形態にかかるカバーレイ、フレキシブルプリント配線板及びLEDモジュールについて説明する。なお、本実施形態において「表側」とは、フレキシブルプリント配線板の導電パターンが積層される側を指すものであり、フレキシブルプリント配線板の使用状態における表裏を示すものではない。
【0036】
[カバーレイ]
図1の当該カバーレイ1は、カバーフィルム2及びこのカバーフィルム2の裏面に積層される接着層3を備える。当該カバーレイ1は、LED実装用のランド部を有するフレキシブルプリント配線板の少なくとも一方の面側に積層される。
【0037】
<カバーフィルム>
カバーフィルム2は、絶縁性、可撓性及び光反射性を有する。また、カバーフィルム2は、接着層3の表面側に積層される基材層2aと、この基材層2aの表面側に積層される反射層2bとを含む。
【0038】
カバーフィルム2の全光線反射率の下限としては、70%が好ましく、90%がより好ましい。カバーフィルム2の全光線反射率が上記下限未満の場合、当該カバーレイ1の光反射性が不十分となるおそれがある。なお、全光線反射率とは、JIS−K−7375(2008)に準拠して測定される値である。
【0039】
(基材層)
基材層2aの主成分としては、例えばポリイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、熱可塑性ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、フッ素樹脂、液晶ポリマー等が挙げられる。特に、耐熱性の観点からポリイミドが好ましい。なお、この基材層2aには、主成分以外の他の樹脂、耐候剤、帯電防止剤等が含有されていてもよい。
【0040】
基材層2aの平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、基材層2aの平均厚さの上限としては、100μmが好ましく、50μmがより好ましい。基材層2aの平均厚さが上記下限未満の場合、当該カバーレイ1の強度が低下するおそれがある。逆に、基材層2aの平均厚さが上記上限を超えると、当該カバーレイ1の厚さが不必要に増加するおそれがある。
【0041】
ここで、「平均厚さ」とは、任意の十点において測定した厚さの平均値をいう。なお、以下において他の部材等に対して「平均厚さ」という場合にも同様に定義される。
【0042】
(反射層)
反射層2bは、光を鏡面反射する層である。反射層2bは、白色顔料とこの白色顔料のバインダーとを含有する。
【0043】
上記白色顔料としては、酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、マグネシア、チッ化アルミニウム、チッ化ホウ素(六方晶立方晶)、チタン酸バリウム、カオリン、シリカ、タルク、粉末マイカ、粉末ガラス、粉末アルミニウム、粉末ニッケル、炭酸カルシウム等を用いることができる。これらの中でも、遮蔽力の大きい酸化チタン、及び絶縁性の高い微粉末シリカがより好ましく、これらを併用することがさらに好ましい。両者を併用することで、絶縁性と反射性とを共に向上することができる。上記酸化チタンとしては、アナターゼ型酸化チタンやルチル型酸化チタンが挙げられる。この中でも近紫外LED及び青色LEDの波長を反射するアナターゼ型酸化チタンがより好ましい。また、上記微粉末シリカとしては、結晶性シリカ、溶融性シリカ、及び煙霧性シリカが挙げられ、煙霧性シリカが好ましい。
【0044】
なお、酸化チタン表面をAl、Al
2O
3、ZnO、ZrO
2、SiO
2等で処理すると、酸化チタンと光触媒との組合せによる有機質の酸化分解反応を抑制することができるため、当該カバーレイ1の寿命を延ばすことができる。
【0045】
白色顔料の平均粒径の下限としては、0.05μmが好ましく、0.1μmがより好ましく、0.5μmがさらに好ましい。一方、白色顔料の平均粒径の上限としては、50μmが好ましく、30μmがより好ましく、10μmがさらに好ましい。白色顔料の平均粒径が上記下限未満の場合、反射層2bの遮蔽性が低下し、光反射性が不十分となるおそれがある。逆に、白色顔料の平均粒径が上記上限を超える場合、白色顔料の緻密性が低下し、反射層2bの光反射性が不十分となるおそれがある。なお、「平均粒径」とは、レーザ回折法で測定した累積分布から算出されるメディアン径(D50)である。
【0046】
上記バインダーとしては、例えば上記基材層2aの主成分として例示した樹脂の他、エラストマーを用いることができるが、耐熱性に優れるシリコーンゴムが特に好ましい。
【0047】
上記シリコーンゴムとしては、光や熱による分解や変質を引き起こし難い安定な三次元架橋シリコーンゴムが好ましく、さらに非環状のジメチルシロキシ繰返単位を主鎖中に主成分として含むものがより好ましい。このようなシリコーンゴムとしては、例えば粘度の温度依存性が少ないジメチルシリコーンゴムが挙げられる。ジメチルシリコーンゴムを含有する組成物は、狭ピッチのパターンで塗工することができる。
【0048】
上記三次元架橋は、酸素原子及び/又は架橋性官能基を介して架橋している状態をいう。シリコーンゴムの架橋剤としては、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、白金族金属系触媒含有ポリシロキサン、過酸化物等が挙げられる。また、架橋は、加熱、加湿、紫外線照射、加圧等により行うことができる。酸素原子及び/又は架橋性官能基を介して、同一主鎖の次の繰返単位又は別の主鎖の繰返単位のSi原子に結合して三次元架橋したシリコーンゴムは、ポリ(ジメチルシロキサン)構造を主鎖とし、ポリ(ジアルキルシロキサン)構造、ポリ(ジフェニルシロキサン)のようなポリ(ジアリールシロキサン)構造、架橋性官能基由来架橋基含有シロキサン構造等を部分的に有していてもよい。
【0049】
シリコーンゴムの重合度としては5,000以上100,000以下が好ましく、平均分子量としては40万以上80万以下が好ましい。
【0050】
バインダー100質量部に対する白色顔料の含有量の下限としては、3質量部が好ましく、10質量部がより好ましい。一方、白色顔料の含有量の上限としては、500質量部が好ましく、200質量部がより好ましい。白色顔料の含有量が上記上限を超える場合、反射層2bの強度や基材層2aとの接着強度が低下するおそれがある。逆に、白色顔料の含有量が上記下限未満の場合、反射層2bの光反射性が不十分となるおそれがある。
【0051】
また、反射層2bは、白色顔料及びバインダー以外に他の樹脂や添加剤が含有されていてもよい。例えば、チッ化アルミニウム、チッ化ホウ素(六方晶又は立方晶)、アルミナ等を含有させることで、反射層2bの熱伝導性を向上させることができる。また、炭酸亜鉛のような補強材を添加してもよい。
【0052】
反射層2bの平均厚さの上限としては、100μmが好ましく、50μmがより好ましい。一方、反射層2bの平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。反射層2bの平均厚さが上記上限を超えると、当該カバーレイ1の厚さが不必要に増加するおそれがある。逆に、反射層2bの平均厚さが上記下限未満の場合、反射層2bが破損し易くなるおそれがある。
【0053】
<接着層>
接着層3は、カバーフィルム2の裏面に積層される。
【0054】
接着層3の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、接着層3の平均厚さの上限としては、100μmが好ましく、75μmがより好ましい。接着層3の平均厚さが上記下限未満の場合、当該カバーレイ1の接着強度が不十分となるおそれがある。逆に、接着層3の平均厚さが上記上限を超えると、当該カバーレイ1を積層したプリント配線板のリフロー炉による半田付けの際などに接着層3中の残留溶剤が気化することでボイドが多数形成され、剥離強度の低下や外観不良を引き起こす可能性が高くなる。
【0055】
接着層3は、シロキサン変性ポリイミド、エポキシ樹脂及び無機フィラーを含有する。この接着層3は、好適成分としてフェノール樹脂を含有していてもよく、本発明の効果を損なわない範囲において、他の任意成分を含有していてもよい。
【0056】
(シロキサン変性ポリイミド)
上記シロキサン変性ポリイミドは、接着層3における主たる接着成分である。このシロキサン変性ポリイミドは、シロキサン骨格を有する構造単位を含むポリイミドである。シロキサン変性ポリイミドとしては、例えば下記式(1)で表される第1構造単位及び下記式(2)で表される第2構造単位を含むものが好ましい。
【0058】
式(1)及び式(2)中、Arは、4価の芳香族テトラカルボン酸残基である。
式(1)中、R
1は、2価のジアミンシロキサン残基である。
式(2)中、R
2は、2価の芳香族ジアミン残基である。
【0059】
上記Arで表される4価の芳香族テトラカルボン酸残基としては、例えば下記の式(3)又は式(4)で表される4価の基が挙げられる。
【0061】
式(4)中、Wは、単結合、炭素数1〜15の2価の炭化水素基、−O−、−S−、−CO−、−SO
2−、−NH−、又は−CONH−である。これらの中でも、Wとしては炭素数1〜15の2価の炭化水素基、単結合及び−O−が好ましい。
【0062】
上記Wで表される炭素数1〜15の2価の炭化水素基としては、例えば炭素数1〜15の直鎖状又は分岐状の2価の鎖状炭化水素基、炭素数3〜15の2価の脂環式炭化水素基、炭素数6〜10の2価の芳香族炭化水素基、或いはこれらの基を組み合わせた2価の基等が挙げられる。
【0063】
上記R
1で表される2価のジアミンシロキサン残基は、シロキサン結合(−Si−O−Si−)を有する基である。このシロキサン結合の割合を増加させることによって、可塑剤の配合量を少なくしても接着層3に十分な柔軟性を付与することができる。上記2価のジアミンシロキサン残基としては、例えば下記の式(5)で表される2価の基が挙げられる。
【0065】
式(5)中、R
3及びR
4は、独立して、単結合又は酸素原子を含有していてもよい2価の有機基である。R
5〜R
8は、独立して、炭素数1〜6の炭化水素基である。aは、上記ジアミンシロキサン残基におけるシロキサン単位(−SiR
5R
6−O−)の平均繰り返し数を表し、1〜20の整数である。aが1より小さいと接着層3の柔軟性が低下するおそれがある。一方、aが20を超えると接着層3の接着性が低下するおそれがある。かかる点から、aとしては、5〜15の整数が好ましい。
【0066】
上記R
2で表される2価の芳香族ジアミン残基としては、例えば下記の式(6)〜式(8)で表される2価の基が挙げられる。
【0068】
式(6)〜式(8)中、R
9は、独立して、炭素数1〜6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基である。Zは、単結合、炭素数1〜15の2価の炭化水素基、−O−、−S−、−CO−、−SO
2−、−NH−又は−CONH−である。bは、0〜4の整数である。
【0069】
上記式(1)中のmは、上記シロキサン変性ポリイミドの全構造単位における上記第1構造単位のモル比率を表し、0.35以上0.75以下である。上記式(2)中のnは、上記シロキサン変性ポリイミドの全構造単位における上記第2構造単位のモル比率を表し、0.25以上0.65以下である。但し、mとnとの合計が1を超える場合はない。mが0.75を超えると(nが0.25未満であると)、接着層3の耐熱性が低下するおそれがある。また、接着層3の透湿性が増すことが原因で、高温高湿下において剥離強度が低下し易くなるおそれがある。一方、mが0.35未満であると(nが0.65を超えると)、シロキサン変性ポリイミド中のシロキサン結合の割合が小さくなって接着層3に十分な柔軟性を付与することができないおそれがある。また、接着層3を形成する接着剤組成物の低温での流動性が低下するおそれがある。さらに、mが0.35未満であると(nが0.65を超えると)、接着層3の熱膨張率が大きくなることで、カバーフィルム2との熱膨張率の差が大きくなるため、接着層3を形成するときの接着剤組成物の塗工又は乾燥時に熱膨張率の差に起因してカバーフィルム2が反り易く、作業性が低下するおそれがある。
【0070】
シロキサン変性ポリイミドの重量平均分子量(Mw)は、25,000以上150,000以下である。上記重量平均分子量(Mw)の下限としては、40,000がより好ましく、50,000がさらに好ましい。上記重量平均分子量(Mw)の上限としては125,000がより好ましく、90,000がさらに好ましい。シロキサン変性ポリイミドの重量平均分子量(Mw)が上記下限未満であると、接着層3を形成するときの接着剤組成物の凝集力が低下するため十分な剥離強度を確保できないおそれがある。また、リフロー時に接着層3の弾性率が低いことが原因で接着層3に残存する溶剤により膨れが生じるおそれがある。一方、シロキサン変性ポリイミドの重量平均分子量(Mw)が上記上限を超えると、シロキサン変性ポリイミドの分子鎖の凝集が生じ易くなり、剥離強度が低下するおそれがある。
【0071】
(シロキサン変性ポリイミドの合成方法)
シロキサン変性ポリイミドは、酸二無水物成分とジアミノシロキサンを含むジアミン成分との縮合物として合成することができる。具体的には、シロキサン変性ポリイミドは、酸二無水物成分及びジアミン成分を有機溶媒に添加した反応溶液を用いてポリアミック酸溶液を生成させた後、加熱閉環(イミド化)させることにより重合体溶液として調製できる。
【0072】
上記酸二無水物成分としては、例えば芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0073】
上記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えばオキシジフタル酸二無水物が挙げられる。オキシジフタル酸二無水物としては、例えば4,4’−オキシジフタル酸二無水物(別名;5,5’−オキシビス−1,3−イソベンゾフランジオン)(ODPA)、3,3’−オキシジフタル酸二無水物、3,4’−オキシジフタル酸二無水物等が挙げられる。例示した芳香族テトラカルボン酸二無水物は、単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0074】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としてはさらに、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)等が挙げられる。これらは単独で使用しても2種以上を併用してもよく、中でも、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)は、低価格であり、ある程度の柔軟性を有するので好ましい。
【0075】
上記ジアミン成分としては、例えばジアミノシロキサン、芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0076】
上記ジアミノシロキサンとしては、上記式(5)で表されるジアミノシロキサン残基の2つの末端にアミノ基が結合したものが挙げられる。ジアミン成分としてジアミノシロキサンを用いることで、ポリイミド中にシロキサン骨格を導入することができる。これにより、ジアミノシロキサン残基によりポリイミドに可溶性が付与される。その結果、接着層3とプリント配線板等との密着性が向上する。
【0077】
ジアミノシロキサンとしては、下記式(9)〜式(13)で表されるものが好ましく、これらの中でも式(9)で表されるジアミノシロキサンがより好ましい。下記式(9)〜式(13)で表されるジアミノシロキサンは、単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0079】
式(9)〜式(13)中、aは、上記式(5)と同義である。
【0080】
上記芳香族ジアミンとしては、例えば2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン(BAPP)、2,2’−ジビニル−4,4’−ジアミノビフェニル(VAB)、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−TB)、2,2’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’,6,6’−テトラメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジフェニル−4,4’−ジアミノビフェニル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン等が挙げられる。これらの中でも、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン(BAPP)、2,2’−ジビニル−4,4’−ジアミノビフェニル(VAB)、及び2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−TB)が好ましい。例示した芳香族ジアミンは、単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0081】
反応溶液における芳香族テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分(ジアミノシロキサン及び芳香族ジアミン)との配合比は、略等モル比、例えば45:55以上55:45以下とされる。ジアミノシロキサンと芳香族ジアミンとの配合比(モル比)は、35:65以上65:35以下である。ジアミノシロキサンと芳香族ジアミンとの配合比(モル比)を上記範囲とすることで、シロキサン変性ポリイミド中におけるシロキサン残基の数が芳香族ジアミン残基と同程度とされる。そのため、シロキサン変性ポリイミドにおいて、短期耐熱性を低下させ得るシロキサン残基が多くなり過ぎることが抑制され、接着層3の短期耐熱性を向上させることができる。
【0082】
上記シロキサン変性ポリイミドの合成に使用する有機溶媒としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチル−2−ピロリドン、2−ブタノン、ジメチルスホキシド、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、キシレン、トルエン等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用しても2種以上併用して使用してもよい。
【0083】
反応溶液における有機溶媒の含有量は、この反応溶液から生成されるポリアミック酸溶液中のポリアミック酸の含有量が一定範囲となる値が好ましい。ポリアミック酸の含有量の下限としては、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。一方、ポリアミック酸の含有量の上限としては、50質量%が好ましく、40質量%がより好ましい。
【0084】
ポリアミック酸の生成反応の条件は、反応溶液の温度が0℃以上100℃以下、反応時間が30分以上24時間以下とされる。
【0085】
ポリアミック酸溶液は、通常そのまま使用することができるが、必要に応じて濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換して使用してもよい。
【0086】
ポリアミック酸のイミド化は、例えばポリアミック酸溶液を80℃以上400℃以下の温度で1時間以上24時間以下の間加熱することで行われる。
【0087】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂は、接着層3の耐熱性、機械的強度等を向上させるものである。これは、エポキシ樹脂がシロキサン変性ポリイミドマトリクス中で単独で硬化するか、若しくはエポキシ樹脂が硬化する際にシロキサン変性ポリイミド末端のカルボン酸やアミンと反応することによってシロキサン変性ポリイミドを緩く架橋するためであると推定される。このエポキシ樹脂でシロキサン変性ポリイミドを架橋することにより、接着層3を形成する接着剤組成物の凝集力が大きくなり、接着層3の耐熱性、機械的強度等が向上するものと推察される。また同様に、高温高湿下における剥離強度の保持力も向上するが、これには凝集力の向上による透湿の抑制や、ポリイミドに比較して低い吸水率が影響しているものと推察される。
【0088】
このようなエポキシ樹脂としては、一分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂であれば特に制限ない。エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、アクリル酸変性エポキシ樹脂(エポキシアクリレート)、リン含有エポキシ樹脂、これらのハロゲン化物(臭素化エポキシ樹脂等)や水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂が耐熱性及び低吸湿性の観点から好ましい。例示したエポキシ樹脂は、単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0089】
上記フェノールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば「jER152」、「jER154」(以上、ジャパンエポキシレジン社)、「EPPN−201−L」(日本化薬社)、「エピクロンN−740」、「エピクロンN−770」(以上、DIC社)、「エポトートYDPN−638」(新日鉄住金化学社)等が挙げられる。
【0090】
上記クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば「EOCN−1020」、「EOCN−102S」、「EOCN−103S」、「EOCN−104S」(以上、日本化薬社)、「エピクロンN−660」、「エピクロンN−670」、「エピクロンN−680」、「エピクロンN−695」(以上、DIC社)等が挙げられる。
【0091】
ノボラック型エポキシ樹脂の中でも、常温で固体であり、軟化点が120℃以下のエポキシ樹脂が、シロキサン変性ポリイミドの耐熱性向上の観点から好ましい。
【0092】
エポキシ樹脂の上記シロキサン変性ポリイミド100質量部に対する配合量の下限としては、1質量部が好ましく、3質量部がより好ましく、5質量部がさらに好ましい。一方、上記配合量の上限としては、50質量部が好ましく、40質量部がより好ましく、20質量部がさらに好ましい。エポキシ樹脂の配合量が上記下限未満であると、上記シロキサン変性ポリイミドを十分に架橋することができず、耐熱性及び透湿抑制性を十分に改善できないおそれがある。逆に、エポキシ樹脂の配合量が上記上限を超えると、未架橋のエポキシ樹脂の割合が増え、却って耐熱性が低下するおそれがある。
【0093】
(無機フィラー)
無機フィラーは、プリント配線板等に対する剥離強度、機械的強度等を向上させるものである。
【0094】
上記無機フィラーとしては、例えばタルク、シリカ、アルミナ、炭化ケイ素、炭化ホウ素、チタンカーバイド、タングステンカーバイド、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、マイカ、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム等が挙げられる。
【0095】
無機フィラーの形態としては、例えば板状、球状、針状、繊維状、不定形等が挙げられる。中でも、無機フィラーの形態としては、板状が好ましい。
【0096】
無機フィラーが板状等である場合において、無機フィラーのアスペクト比の下限としては、1が好ましく、5がより好ましく、8がさらに好ましい。一方、無機フィラーのアスペクト比の上限としては、100が好ましく、75がより好ましく、40がさらに好ましい。無機フィラーのアスペクト比が上記下限未満であると、剥離強度を十分に向上させることができないおそれがある。逆に、無機フィラーのアスペクト比が上記上限を超えると、接着層3が脆弱化すると推定され、剥離強度が低下するおそれがある。
【0097】
無機フィラーの平均粒径の下限としては、2μmが好ましく、5μmがより好ましく、10μmがさらに好ましい。一方、上記平均粒径の上限としては、50μmが好ましく、40μmがより好ましく、30μmがさらに好ましい。上記平均粒径が上記下限未満であると、剥離強度を十分に向上させることができないおそれがある。逆に、上記平均粒径が上記上限を超えると、接着層3が脆弱化し剥離強度が低下するおそれがある。
【0098】
無機フィラーの含有量の下限としては、シロキサン変性ポリイミド100質量部に対して10質量部が好ましく、20質量部がより好ましい。一方、無機フィラーの含有量の上限としては、100質量部が好ましく、70質量部がより好ましく、50質量部がさらに好ましい。上記配合量が上記下限未満であると、剥離強度を十分に向上させることができないおそれがある。逆に、上記配合量が上記上限を超えると、接着層3が脆弱化し剥離強度が低下するおそれがある。
【0099】
(フェノール樹脂)
フェノール樹脂は、エポキシ樹脂を架橋するものである。このフェノール樹脂には、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂の他、キシレン樹脂、レゾルシン樹脂、レゾルシン変性フェノール樹脂、クレゾール変性フェノール樹脂、アルキルフェノール変性樹脂等が含まれる。このフェノール樹脂は、例えばフェノール成分とアルデヒド成分とから合成することができる。
【0100】
上記フェノール成分としては、例えばフェノールの他、クレゾール、キシレノール、イソプロピルフェノール等のアルキルフェノール;レゾルシン等の二価のフェノール;p−ビニルフェノール等のビニルフェノールなどが挙げられる。これらのフェノール成分は、単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0101】
上記アルデヒド成分としては、ホルムアルデヒドの他、アセトアルデヒド、フルフラールなどのアルデヒド基含有化合物が挙げられる。これらのアルデヒド成分は、単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0102】
フェノール樹脂の市販品としては、例えば、
「スミカノール610」(田岡化学工業社);
「タマノル1010R」、「タマノル100S」、「タマノル510」、「タマノル7509」、「タマノル7705」(以上、荒川化学工業社);
「ショウノールCKM−1634」、「ショウノールCKM−1636」、「ショウノールCKM−1737」、「ショウノールCKM−1282」、「ショウノールCKM−904」、「ショウノールCKM−907」、「ショウノールCKM−908」、「ショウノールCKM−983」、「ショウノールCKM−2400」、「ショウノールCKM−941」、「ショウノールCKM−2103」、「ショウノールCKM−2432」、「ショウノールCKM−5254」、「BKM−2620」、「BRP−5904」、「RM−0909」、「BLS−2030」、「BLS−3574」、「BLS−3122」、「BLS−362」、「BLS−356」、「BLS−3135」、「CLS−3940」、「CLS−3950」、「BRS−324」、「BRS−621」、「BLL−3085」、「BRL−113」、「BRL−114」、「BRL−117」、「BRL−134」、「BRL−274」、「BRL−2584」、「BRL−112A」、「BRL−120Z」、「CKS−3898」(以上、昭和電工社);
「SP−460B」、「SP103H」、「HRJ−1367」(以上、スケネクタディーケミカル社);
「レジトップPL2211」(群栄化学工業社);
「PR−HF−3」、「PR−53194」、「PR−53195」(住友ベークライト社);
「ニカノールPR1440」、「ニカノールL」、「ニカノールP100」(フドー社);
「プライオーフェン5010」、「プライオーフェン503」、「TD−447」(DIC社)等が挙げられる。
【0103】
接着層3は、フェノール樹脂に加えて、又はフェノール樹脂に代えて他の硬化剤を含有してもよい。
【0104】
上記他の硬化剤としては、公知のものを使用することができ、例えばポリアミン系硬化剤、酸二無水物系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、三フッ化ホウ素アミン錯塩、芳香族ジアミン系硬化剤、カルボン酸系硬化剤、メラミン樹脂等が挙げられる。これらの硬化剤は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0105】
ポリアミン系硬化剤としては、例えばジエチレントリアミン、テトラエチレンテトラミン等の脂肪族アミン系硬化剤;イソホロンジアミン等の脂環式アミン系硬化剤;ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミン等の芳香族アミン系硬化剤などが挙げられる。
【0106】
酸二無水物系硬化剤としては、例えば無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリト酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0107】
イミダゾール系硬化剤としては、例えばメチルイミダゾール、フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール等が挙げられる。
【0108】
接着層3を形成するための接着剤組成物における硬化剤の含有量は、目的とする硬化の程度等に応じて決定すればよい。硬化剤の含有量の下限としては、エポキシ樹脂100質量部に対して、1質量部が好ましく、5質量部がより好ましく、10質量部がさらに好ましい。一方、上記含有量の上限としては、100質量部が好ましく、90質量部がより好ましい。この硬化剤の含有量が上記下限未満であるとシロキサン変性ポリイミドの耐熱性が十分に向上しないおそれがある。逆に、上記硬化剤の含有量が上記上限を超えると、硬化剤の含有量に比して耐熱性の向上効果が見込めずコスト高となるおそれがある。
【0109】
(任意成分)
任意成分としては、可塑剤、難燃剤、難燃助剤、顔料、酸化防止剤、隠蔽剤、滑剤、加工安定剤、発泡剤、カップリング剤等が挙げられる。
【0110】
上記可塑剤としては、例えば、
トリメチルホスヘート、トリエチルホスヘート、トリブチルホスヘート、トリ−2−エチルヘキシルホスヘート、トリブトキシエチルホスヘート、トリオレイルホスヘート、トリフェニルホスヘート、トリクレジルホスヘート、トリキシレニルホスヘート、クレジルジフェニルホスヘート、キシレニルジフェニルホスヘート、2−エチルヘキシルジフェニルホスヘート等のリン酸エステル系可塑剤;
アジピン酸1,3ブチレングリコール類等のポリエステル系可塑剤;
ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−n −オクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソノニルフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート等のフタル酸エステル系可塑剤;
ジメチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジブチルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジブチルジグリコールアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、メチル−アセチルリシノレート等の脂肪酸エステル系可塑剤などが挙げられる。これらの可塑剤は、単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0111】
上記難燃剤は、接着層3に難燃性を付与するものである。難燃剤としては、例えば、
塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリフェニル、パークロルペンタシクロデカン等の塩素系難燃剤;
エチレンビスペンタブロモベンゼン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、テトラブロモエタン、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモビフェニルエーテル、テトラブロモ無水フタル酸、ポリジブロモフェニレンオキサイド、ヘキサブロモシクロデカン、臭化アンモニウム等の臭素系難燃剤;
トリアリルホスフェート、アルキルアリルホスフェート、アルキルホスフェート、ジメチルホスフォネート、ホスフォリネート、ハロゲン化ホスフォリネートエステル、トリメチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(2−クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリス(ブロモクロロプロピル)ホスフェート、ビス(2,3ジブロモプロピル)2,3ジクロロプロピルホスフェート、ビス(クロロプロピル)モノオクチルホスフェート、ポリホスホネート、ポリホスフェート、芳香族ポリホスフェート、ジブロモネオペンチルグリコール、トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミ等のリン酸エステル又はリン化合物;
ホスホネート型ポリオール、ホスフェート型ポリオール、ハロゲン元素等のポリオール類;
水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、三酸化アンチモン、三塩化アンチモン、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アンチモン、ホウ酸、モリブテン酸アンチモン、酸化モリブテン、リン・窒素化合物、カルシウム・アルミニウムシリケート、ジルコニウム化合物、錫化合物、ドーソナイト、アルミン酸カルシウム水和物、酸化銅、金属銅粉、炭酸カルシウム、メタホウ酸バリウム等の金属粉又は無機化合物;
メラミンシアヌレート、トリアジン、イソシアヌレート、尿素、グアニジン等の窒素化合物;
シリコーン系ポリマー、フェロセン、フマール酸、マレイン酸等のその他の化合物などが挙げられる。これらの中でも、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤等のハロゲン系難燃剤が好ましい。臭素系難燃剤及び塩素系難燃剤は単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0112】
上記難燃助剤は、接着層3の難燃性をより向上させるものである。難燃助剤としては、三酸化アンチモン等が挙げられる。
【0113】
上記顔料は、接着層3を着色するものである。顔料としては、公知の種々のものを使用することができ、例えば酸化チタン等が挙げられる。
【0114】
上記酸化防止剤は、接着層3の酸化を防止するものである。酸化防止剤としては、公知の種々のものを使用することができ、例えばフェノール系酸化防止剤が挙げられる。
【0115】
接着層3に任意成分を配合する場合、ポリイミド樹脂100質量部に対する任意成分の合計含有量の下限としては、1質量部が好ましく、2質量部がより好ましい。一方、上記合計含有量の上限としては、10質量部が好ましく、7質量部がより好ましい。
【0116】
<難燃性>
当該カバーレイ1は、UL−94 VTM−0を満たす難燃性を有することが好ましい。接着層3がある程度の難燃性を有することで、当該カバーレイ1がVTM−0の難燃性を満たし、それにより当該カバーレイ1を使用するプリント配線板等に難燃性を付与することができる。ここで、UL−94 VTM−0の難燃試験は、例えば以下の標準サンプルを用いて行うことができる。
【0117】
標準サンプル構造:ポリイミドフィルム/接着層/ポリイミドフィルムの積層体
ポリイミドフィルム:東レ・デュポン社の「カプトン100H」(平均厚さ25μm)
接着層の平均厚さ:35μm
標準サンプルの作製方法:ポリイミドフィルム、接着層及びポリイミドフィルムを積層し加熱加圧して接着する。接着条件としては、例えば加圧力を3MPa、加熱温度を180℃、加圧時間を45分とすることができる。
【0118】
<カバーレイの製造方法>
当該カバーレイ1の製造方法としては特に限定されず、カバーフィルム2の裏面に接着剤組成物を塗布し乾燥させることで接着層3を形成する方法、カバーフィルム2と接着層3とをプレスにより圧着する方法、カバーフィルム2と接着層3とを共押出する方法等が挙げられる。また、カバーフィルム2の製造方法としては、基材層2aに反射層2bの形成組成物を塗付する方法、基材層2aと反射層2bとを共押出する方法等が挙げられる。さらに、基材層2aと反射層2bと接着層3とを共押出してもよい。
【0119】
[フレキシブルプリント配線板]
図2のフレキシブルプリント配線板10は、ベースフィルム4、このベースフィルム4の表面側に積層され、LED実装用のランド部5aを含む導電パターン5及び当該カバーレイ1を備える。当該カバーレイ1は、ベースフィルム4及び導電パターン5を含む積層体における導電パターン5側面(表面)に積層される。
【0120】
<ベースフィルム>
ベースフィルム4は絶縁性及び可撓性を有する。このベースフィルム4の主成分としては、例えばポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、フッ素樹脂、液晶ポリマー等が挙げられ、可撓性及び強度の観点からポリイミドが好ましい。ベースフィルム4は、ポリイミド等の例示した樹脂以外の他の樹脂、帯電防止剤等が含有されていてもよい。
【0121】
ベースフィルム4の平均厚さの下限としては、特に限定されないが、3μmが好ましく、5μmがより好ましく、10μmがさらに好ましい。一方、上記平均厚さの上限としては、特に限定されないが、200μmが好ましく、150μmがより好ましく、100μmがさらに好ましい。ベースフィルム4の平均厚さが上記下限未満であると、絶縁性及び機械的強度が不十分となるおそれがある。一方、ベースフィルム4の平均厚さが上記上限を超えると、当該フレキシブルプリント配線板10の厚さが大きくなりすぎるおそれがあると共に、ベースフィルム4の可撓性が不十分となるおそれがある。
【0122】
<導電パターン>
導電パターン5は、ベースフィルム4の表面側に直接又は接着剤を介して積層されるものである。導電パターン5は、ベース導体とこのベース導体における外表面の少なくとも一部に形成される表面処理層とを有している。
【0123】
(ベース導体)
ベース導体は、例えば銅、アルミニウム等の金属箔をエッチングすることによって所望のパターンに形成されている。このベース導体の平均厚さの下限としては、特に限定はないが、2μmが好ましく、5μmがより好ましい。一方、ベース導体の平均厚さの上限としては、特に限定はないが、100μmが好ましく、75μmがより好ましい。この平均厚さが上記下限未満であると、導通性が不十分となるおそれがある。逆に、上記平均厚さが上記上限を超えると、可撓性が低下するおそれがあると共に薄型化の要請に反するおそれがある。
【0124】
(表面処理層)
表面処理層は、ベース導体からの導電成分の漏出、又はベース導体への導電成分に対する反応性成分(酸素、硫黄等)の拡散を防止するものである。すなわち、表面処理層は、耐油性を向上させる役割も果たす。この表面処理層は、ベース導体の表面を被覆しており、ベース導体の側面を一連に被覆していてもよい。表面処理層の材質としては、ベース導体からの導電成分の漏出又はベース導体への反応性成分の拡散を防止できるものであれば特に限定されず、例えば金属、樹脂、セラミック、それらの混合物等が挙げられる。中でも、表面処理層の材質としては、Ni、Sn、Au、及びAlが好ましい。表面処理層は、単層として形成しても、複数層として形成してもよい。
【0125】
表面処理層の平均厚さの下限としては、特に限定はないが、0.01μmが好ましく、0.03μmがより好ましく、0.05μmがさらに好ましい。一方、表面処理層の平均厚さの上限としては、特に限定はないが、6μmが好ましく、1μmがより好ましく、0.5μmがさらに好ましい。表面処理層の平均厚さが上記下限未満であると、銅等のベース導体の導電成分の漏出及びベース導体への反応性成分の拡散の防止が十分でないおそれがある。逆に、上記平均厚さが上限を超えると、厚さの増加によるコスト上昇に比して、これに見合うだけのベース導体からの導電成分の漏出及びベース導体への反応性成分の拡散の防止の効果の上積みを期待できないおそれがある。なお、「表面処理層の平均厚さ」とは、表面処理層が複数層の場合、表面処理層全体の平均厚さを意味する。
【0126】
なお、表面処理層を形成することに代えてベース導体の表面にカッパーブライトで防錆処理を施してもよい。ここで、カッパーブライトは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の水溶性高分子を、イソプロピルアルコール及びヒドロキシ酪酸に溶解したものである。このような防錆処理を施すことで、ベース導体の表面にはポリオキシエチレンアルキルエーテル等の水溶性高分子が付着することが予想される。ポリオキシエチレンアルキルエーテル等が付着したベース導体は、従来の接着剤を使用すると耐熱性が低下する。これに対して、ベース導体に防錆処理を施した場合、後述の接着層3の耐熱性を良好に維持できる。
【0127】
(ランド部)
ランド部5aは、導電パターン5がカバーレイ1に覆われずに露出した部分であり、この部分にLEDの端子が接続される。つまり、ランド部5aに対応する位置に、カバーレイ1は開孔を有する。
【0128】
ランド部5aへのLEDの実装は、例えば半田リフロー、異方性導電フィルムや異方性導電ペーストを用いる熱圧着等により行うことができる。但し、当該フレキシブルプリント配線板10は、当該カバーレイ1が耐熱性に優れるため、半田リフローで実装を行うことで接続信頼性を高めることができる。
【0129】
<剥離強度>
当該フレキシブルプリント配線板10を85℃、85%RH(相対湿度)の空気中に1,000時間放置した後のカバーフィルム2と導電パターン5との剥離強度の下限としては、3.4N/cmが好ましい。上記剥離強度が上記下限未満の場合、高温高湿環境下において当該フレキシブルプリント配線板10が破損しやすくなるおそれがある。
【0130】
[フレキシブルプリント配線板の製造方法]
次に、当該フレキシブルプリント配線板10を製造する方法について、
図3A,3Bを参照しつつ説明する。当該フレキシブルプリント配線板10の製造方法は、絶縁性及び可撓性を有するベースフィルム4を用い、このベースフィルム4の表面側に積層される導電パターン5を形成する工程、及びベースフィルム4の導電パターン5が積層される側の面にカバーレイ1を積層する工程を備える。
【0131】
<導電パターン形成工程>
導電パターン形成工程においては、
図3Aに示すようにベースフィルム4に銅箔(銅膜)を積層した銅張積層板を用い、銅箔をパターニングすることで所定の平面形状のベース導体を形成した後、このベース導体にNiメッキにより表面処理層を形成する。
【0132】
(銅張積層板)
上記銅張積層板は、ベースフィルム4に銅箔を積層したものである。ベースフィルム4に銅箔を積層する方法としては、例えばベースフィルム4に接着剤を用いて銅箔を貼り合わせる接着法、銅箔上にベースフィルム4の材料である樹脂組成物を塗布するキャスト法、ベースフィルム4上にスパッタリングや蒸着法等で厚さ数nmの薄い導電層(シード層)を形成した後、このシード層上に電解メッキで金属層を形成するスパッタ/メッキ法、金属箔を熱プレスで貼り付けるラミネート法等が挙げられる。
【0133】
銅箔の平均厚さの下限としては、特に限定はないが、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、銅箔の平均厚さの上限としては、特に限定はないが、100μmが好ましく、75μmがより好ましい。特に車載用途等の大電流を流すことが必要な場合は、銅箔の平均厚さは、25μm以上100μm以下が望ましい。この平均厚さが上記下限未満であると、導通性が不十分となるおそれがある。逆に上記平均厚さが上記上限を超えると、可撓性が低下するおそれがあると共に薄型化の要請に反するおそれがある。
【0134】
(パターニング)
銅箔のパターニングは、公知の方法、例えばフォトエッチングにより行うことができる。フォトエッチングは、銅箔の表面に所定のパターンを有するレジスト膜を形成した後に、レジスト膜から露出する導体層をエッチング液で溶解させ、レジスト膜を除去することにより行われる。
【0135】
(表面処理層の形成)
表面処理層は、例えばメッキ処理、熱CVD、プラズマCVD等の化学蒸着法、スパッタリング、イオンプレーティング等の物理蒸着法、ガス式溶射、電気的溶射等の溶射法などによって形成される。この表面処理層は、ベース導体にNi又はSnのメッキ処理を施すことにより形成すること、又はAlを蒸着することにより形成することが好ましい。
【0136】
メッキ処理としては、電解メッキ及び無電解メッキを用いることができる。無電解メッキを用いれば簡便かつ確実に表面処理層の厚さを均一にすることができる。一方、電解メッキを用いることで、緻密な表面処理層を形成することができ、またベース導体の側面にも簡便に表面処理層を設けることができる。特に、薄くて均一な厚さの表面処理層を安価な設備でメッキできることから、無電解メッキを用いることが好ましい。
【0137】
このように表面処理層をメッキ処理で形成することにより、低コストで適当な厚さを有すると共に、効果的にベース導体からの導電成分の漏出及びベース導体の反応性成分の拡散を防止できる表面処理層を形成することができる。
【0138】
また、メッキの種類としては、例えばNiメッキ、Snメッキ、Auメッキ、半田メッキ等が挙げられる。これらの中で、Niメッキ又はSnメッキが好ましい。Niメッキ又はSnメッキを用いることで、容易に表面処理層を形成できる。また、当該フレキシブルプリント配線板10は、その製造時においてリフロー炉による半田付け等の高温工程を経ることを想定していることから、耐熱性に優れるNiメッキがより好ましい。
【0139】
上記メッキ処理は複数回行ってもよい。また、メッキ処理を複数回行う場合、複数回のメッキ処理はそれぞれ異なる種類のメッキとすることが好ましい。このような複数回のメッキ処理としては、例えばベース導体の表面にNiメッキを施した後、さらにAuメッキを施すものが挙げられる。
【0140】
なお、上述のように、表面処理層を形成することに代えてベース導体の表面にカッパーブライトで防錆処理を施してもよい。このようにベース導体に防錆処理を施した場合であっても、接着層3の耐熱性は良好に維持される。
【0141】
<カバーレイ積層工程>
カバーレイ積層工程において、まず、カバーレイ1の接着層3側をベースフィルム4及び導電パターン5に対向させた状態で載置する。続いて、ベースフィルム4及び導電パターン5と共にカバーレイ1を加熱し接着層3を硬化させる。この加熱温度としては120℃以上200℃以下が好ましく、加熱時間としては1分以上60分以下が好ましい。加熱温度及び加熱時間を上記範囲とすることで、接着層3の接着性を効果的に発揮できると共にベースフィルム4等の変質を抑制することができる。加熱方法としては、特に限定されず、例えば熱プレス、オーブン、ホットプレート等の加熱手段を用いて加熱する方法等が挙げられ、熱プレスによる加圧加熱が好ましい。
【0142】
なお、上記カバーレイ積層工程において、カバーレイ1のランド部5aに対応する箇所に予め開口等を設けておくことで、カバーレイ1の積層後にLEDの実装領域を露出させる。ただし、
図3Bに示すように、カバーレイ1をベースフィルム4及び導電パターン5に積層してから開口を形成してもよい。
【0143】
[LEDモジュール]
図4のLEDモジュールは、フレキシブルプリント配線板10、このフレキシブルプリント配線板10のランド部5aに実装されるLED6、及びフレキシブルプリント配線板10の裏面側に積層される放熱基材7を備える。
【0144】
<LED>
LED6は、フレキシブルプリント配線板10の複数のランド部5aに実装される。このLED6としては、多色発光タイプ又は単色発光タイプで、チップ型又は合成樹脂等でパッケージされた表面実装型の発光ダイオードを用いることができる。LED6は、半田6aによってランド部5aへ接続される。
【0145】
当該フレキシブルプリント配線板10へのLED6の半田リフローによる実装時の加熱温度の下限としては、用いる半田の種類によるが一般的に、250℃が好ましく、300℃が好ましい。一方、上記加熱温度の上限としては、350℃が好ましく、330℃がより好ましい。上記加熱温度が上記下限未満の場合、当該フレキシブルプリント配線板10とLED6とが十分に接合されないおそれがある。逆に、上記加熱温度が上記上限を超えると、加熱により当該フレキシブルプリント配線板10等が破損又は劣化するおそれがある。
【0146】
当該フレキシブルプリント配線板10へのLED6の半田リフローによる実装時の加熱時間の下限としては、30秒が好ましく、45秒がより好ましい。一方、上記加熱時間の上限としては、2分が好ましく、90秒がより好ましい。上記加熱時間が上記下限未満の場合、当該フレキシブルプリント配線板10とLED6とが十分に接合されないおそれがある。逆に、上記加熱時間が上記上限を超えると、加熱により当該フレキシブルプリント配線板10等が破損又は劣化するおそれがある。
【0147】
上記半田リフローによる実装時の加熱温度及び加熱時間は、用いる半田等の種類に応じ適宜変更可能であるが、本発明のフレキシブルプリント配線板は通常の汎用フレキシブルプリント配線板と比べ接着層3の耐熱性が高いため、より高温及び長時間の半田リフローを行うことができる。
【0148】
<放熱基材>
放熱基材7は、高い熱伝導率を有する部材であり、LED6が発する熱を逃がして放熱する機能を有する。放熱基材7の形状は、例えば板状、ブロック状等とすることができる。放熱基材7は例えば熱伝導性接着剤を介してフレキシブルプリント配線板10のベースフィルム4の裏面に積層される。
【0149】
放熱基材7の材質としては、例えば金属、セラミックス、カーボン等が挙げられ、これらの中でも金属が好適に用いられる。放熱基材7を形成する金属としては、例えばアルミニウム、マグネシウム、銅、鉄、ニッケル、モリブデン、タングステン等を用いることができる。これらの中でも伝熱性、加工性及び軽量性に優れるアルミニウム又はその合金が特に好ましい。
【0150】
放熱基材7の材質をアルミニウム又はアルミニウム合金とする場合、熱伝導性基材が表面にアルマイトを有するとよい。このように放熱基材7の表面をアルマイト処理することで、放熱基材7の耐久性ひいては耐電圧性を高めることができる。アルマイトの平均厚さとしては、例えば10μm以上100μm以下が好ましい。
【0151】
放熱基材7を板状とする場合の平均厚さの下限としては、0.3mmが好ましく、0.5mmがより好ましい。一方、放熱基材7の平均厚さの上限としては、5mmが好ましく、3mmがより好ましい。放熱基材7の平均厚さが上記下限に満たない場合、放熱基材7の強度が不十分となるおそれがある。逆に、放熱基材7の平均厚さが上記上限を超える場合、放熱基材7の加工が困難になるおそれがあるほか、当該LEDモジュールの重量や体積が不必要に大きくなるおそれがある。
【0152】
放熱基材7の熱伝導率の下限としては、100W/mKが好ましく、200W/mKがより好ましい。放熱基材7の熱伝導率が上記下限に満たない場合、当該LEDモジュールの放熱効果が不十分となるおそれがある。
【0153】
<利点>
当該カバーレイ1は、接着層3がエポキシ樹脂を含有することで、接着層3の耐熱性、特にリフロー耐熱性が向上するものと考えられる。エポキシ樹脂を含有することで接着層3の耐熱性が向上する理由は明確ではないが、エポキシ樹脂がシロキサン変性ポリイミドマトリクス中で単独で硬化するか、若しくはエポキシ樹脂が硬化の際にシロキサン変性ポリイミドの末端のカルボン酸やアミンと反応することによって緩く架橋されるためであると考えられる。また、かかるエポキシ樹脂による架橋により、接着層3の耐湿性及び機械的強度が向上するものと考えられる。
【0154】
さらに、接着層3がシロキサン変性ポリイミドとして重量平均分子量(Mw)が特定範囲のものを含有することで、シロキサン変性ポリイミドの凝集を抑制できる。そのため、接着層3は、このようなシロキサン変性ポリイミドを含むことでシロキサン変性ポリイミドの凝集に起因する剥離強度の低下を抑制でき、接着層3の耐熱性を改善することが可能となる。また、上記接着層3が無機フィラーを含有することで、機械的強度及び剥離強度がより向上する。
【0155】
加えて、上記接着層3は、エポキシ樹脂による架橋、変性ポリイミドの凝集防止等によって、耐マイグレーション性が向上する。すなわち、接着層3は、プリント配線板のメッキ層を有する導電パターン5の表面に積層される場合、メッキ成分の接着層3への移行(マイグレーション)を抑制することができる。その結果、マイグレーションに起因する接着層3の剥離強度の低下、脆弱化、白化等の色移りなどの発生を抑制できる。
【0156】
これらの結果、当該カバーレイ1は、LED6をフレキシブルプリント配線板10に実装する際の劣化を低減できる。よって、当該カバーレイ1はLED6の高熱を生じる実装方法に適し、高い短時間での耐熱性を有すると共に、LED6とフレキシブルプリント配線板10との接続信頼性にも優れる。また、上記カバーフィルム2が光反射性を有することで、当該カバーレイ1はLED6が発する光を効率良く分散できる。
【0157】
従って、当該カバーレイ1を備える当該フレキシブルプリント配線板10及び当該LEDモジュールは、ベアチップタイプのLEDの実装で高温でのリフローが必要とされる場合でも、カバーレイの破損及び劣化が低減できると共に、LED6が発する光の利用効率を高めることができる。
【0158】
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0159】
上記実施形態では、カバーレイのカバーフィルムが基材層と反射層とを含む構成としたが、カバーフィルムは単層で構成されてもよい。この場合、カバーフィルムは例えば上記実施形態の基材層に白色顔料を含有させたもので形成できる。
【0160】
カバーフィルムが単層の場合のカバーフィルムの光線反射率及び白色顔料の含有量は、上記実施形態の反射層と同様とすることができる。
【0161】
カバーフィルムが単層の場合のカバーフィルムの平均厚さの下限としては、特に限定されないが、3μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、カバーフィルムの平均厚さの上限としては、特に限定されないが、500μmが好ましく、150μmがより好ましい。カバーフィルムの平均厚さが上記下限未満であると、導電パターン等の保護が不十分となるおそれがあると共に、カバーフィルムに絶縁性が求められる場合には絶縁性が不十分となるおそれがある。逆に、カバーフィルムの平均厚さが上記上限を超えると、導電パターン等の保護効果の上積みが少なくなるおそれがあると共に、カバーフィルムの可撓性が不十分となるおそれがある。
【0162】
当該フレキシブルプリント配線板は、片面に導電パターンが形成される片面プリント配線板に限らず、両面に導電パターンが形成される両面プリント配線板であってもよく、複数層の導電パターンが積層される多層プリント配線板であってもよい。
【0163】
当該フレキシブルプリント配線板は、導電パターンにおける表面処理層を省略したものであってもよい。
【実施例】
【0164】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0165】
[シロキサン変性ポリイミドの合成]
酸無水物成分及びジアミン成分の種類及び配合比を表1に示す通りとし、以下に示す方法によりシロキサン変性ポリイミド(A1)〜(A8)を合成した。
【0166】
<合成例1>(シロキサン変性ポリイミド(A1)の合成)
有機溶媒としてのN−メチル−2−ピロリドンとキシレンとの1:1混合溶媒(質量比)に、酸無水物としての3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、芳香族ジアミンとしての2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン(BAPP)及びシロキサンジアミンとしての上記式(9)で表わされるアミン当量が420g/eqの化合物(PSA)を1.0:0.4:0.6のモル比で添加して反応溶液を得た。なお、反応溶液における有機溶媒の配合量は、シロキサン変性ポリイミド前駆体溶液中のポリアミド樹脂の含有量が30質量%となる量に設定した。
【0167】
上記反応溶液の温度を180℃として16時間反応させてシロキサン変性ポリイミド前駆体をイミド化することでシロキサン変性ポリイミド(A1)を含む重合体溶液を得た。
【0168】
得られたシロキサン変性ポリイミド溶液中のシロキサン変性ポリイミドの重量平均分子量(Mw)は、92,000であった。なお、重量平均分子量(Mw)の定義及び測定方法は上述した通りである。
【0169】
<合成例2>(シロキサン変性ポリイミド(A2)の合成)
反応溶液の温度として180℃で14時間反応させることでポリアミック酸を生成させてシロキサン変性ポリイミド前駆体溶液を得た以外は合成例1と同様にし、シロキサン変性ポリイミド(A2)を含む重合体溶液を得た。なお、シロキサン変性ポリイミド(A2)の重量平均分子量(Mw)は、75,000であった。
【0170】
<合成例3>(シロキサン変性ポリイミド(A3)の合成)
有機溶媒としてのN−メチル−2−ピロリドンとキシレンとの1:1混合溶媒(質量比)に、酸無水物としての3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、芳香族ジアミンとしての2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン(BAPP)及びシロキサンジアミンとしての上記式(9)で表わされるアミン当量が420g/eqの化合物(PSA)を1.0:0.6:0.4のモル比で添加して反応溶液を得た。なお、反応溶液における有機溶媒の配合量は、シロキサン変性ポリアミドの含有量が30質量%となる量に設定した。
【0171】
上記反応溶液の温度を180℃として10時間反応させてシロキサン変性ポリイミド前駆体をイミド化することでシロキサン変性ポリイミド(A3)を含む重合体溶液を得た。なお、シロキサン変性ポリイミド(A3)の重量平均分子量(Mw)は、42,000であった。
【0172】
<合成例4>(シロキサン変性ポリイミド(A4)の合成)
有機溶媒としてのN−メチル−2−ピロリドンとキシレンとの1:1混合溶媒(質量比)に、酸無水物としての3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、芳香族ジアミンとしての2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン(BAPP)及びシロキサンジアミンとしての上記式(9)で表わされるアミン当量が420g/eqの化合物(PSA)を1.0:0.5:0.5のモル比で添加して反応溶液を得た。なお、反応溶液における有機溶媒の配合量は、シロキサン変性ポリイミド前駆体溶液中のポリアミド樹脂の含有量が30質量%となる量に設定した。
【0173】
上記反応溶液の温度を180℃として13時間反応させてシロキサン変性ポリイミド前駆体をイミド化することでシロキサン変性ポリイミド(A4)を含む重合体溶液を得た。なお、シロキサン変性ポリイミド(A4)の重量平均分子量(Mw)は、64,000であった。
【0174】
<合成例5>(シロキサン変性ポリイミド(A5)の合成)
有機溶媒としてのN−メチル−2−ピロリドンとキシレンとの1:1混合溶媒(質量比)に、酸無水物としての4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)、芳香族ジアミンとしての2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン(BAPP)及びシロキサンジアミンとしての上記式(9)で表わされるアミン当量が420g/eqの化合物(PSA)を1.0:0.5:0.5のモル比で添加して反応溶液を得た。なお、反応溶液における有機溶媒の配合量は、シロキサン変性ポリアミドの含有量が30質量%となる量に設定した。
【0175】
上記反応溶液の温度を180℃として10時間反応させてシロキサン変性ポリイミド前駆体をイミド化することでシロキサン変性ポリイミド(A5)を含む重合体溶液を得た。なお、シロキサン変性ポリイミド(A5)の重量平均分子量(Mw)は、45,000であった。
【0176】
<合成例6>(シロキサン変性ポリイミド(A6)の合成)
有機溶媒としてのN−メチル−2−ピロリドンとキシレンとの1:1混合溶媒(質量比)に、酸無水物としての3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、芳香族ジアミンとしての2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン(BAPP)及びシロキサンジアミンとしての上記式(9)で表わされるアミン当量が420g/eqの化合物(PSA)を1.0:0.4:0.6のモル比で添加して反応溶液を得た。なお、反応溶液における有機溶媒の配合量は、シロキサン変性ポリアミド含有量が30質量%となる量に設定した。
【0177】
上記反応溶液の温度を180℃として12時間反応させてシロキサン変性ポリイミドを含む重合体溶液を得た。なお、シロキサン変性ポリイミド(A6)の重量平均分子量(Mw)は、56,000であった。
【0178】
<合成例7>(シロキサン変性ポリイミド(A7)の合成)
有機溶媒としてのN−メチル−2−ピロリドンとキシレンとの1:1混合溶媒(質量比)に、酸無水物としての3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、芳香族ジアミンとしての2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン(BAPP)及びシロキサンジアミンとしての上記式(9)で表わされるアミン当量が420g/eqの化合物(PSA)を1.0:0.3:0.7のモル比で添加して反応溶液を得た。なお、反応溶液における有機溶媒の配合量は、シロキサン変性ポリイミド前駆体溶液中のポリアミック酸の含有量が30質量%となる量に設定した。
【0179】
上記反応溶液の温度を180℃として16時間反応させてシロキサン変性ポリイミドを含む重合体溶液を得た。なお、シロキサン変性ポリイミド(A7)の重量平均分子量(Mw)は、77,000であった。
【0180】
<合成例8>(シロキサン変性ポリイミド(A8)の合成)
有機溶媒としてのN−メチル−2−ピロリドンとキシレンとの1:1混合溶媒(質量比)に、酸無水物としての3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、芳香族ジアミンとしての2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン(BAPP)及びシロキサンジアミンとしての上記式(9)で表わされるアミン当量が420g/eqの化合物(PSA)を1.0:0.4:0.6のモル比で添加して反応溶液を得た。なお、反応溶液における有機溶媒の配合量は、シロキサン変性ポリイミド含有量が30重量%となる量に設定した。
【0181】
上記反応溶液の温度を180℃として8時間反応させてシロキサン変性ポリイミドを含む重合体溶液を得た。なお、シロキサン変性ポリイミド(A8)の重量平均分子量(Mw)は、29,000であった。
【0182】
【表1】
【0183】
[接着剤組成物の調製]
<実施例1>
溶媒としてのN−メチル−2−ピロリドンとキシレンとの1:1混合溶媒(質量比)に溶解したシロキサン変性ポリイミド(A1)100質量部(固形分相当量)、無機フィラーとしてのタルク(日本タルク社の「MICRO ACE K1」:平均粒径8μm)45質量部、エポキシ樹脂(DIC社の「EPICLON N695」(軟化点90℃〜100℃、エポキシ等量209g/eq〜219g/eq))4質量部、及び硬化剤としてのフェノール樹脂(日本化薬社の「GPH−65」)3質量部を混合することで接着剤組成物を得た。
【0184】
<実施例2〜4及び比較例1〜8>
下記表2に示す種類及び含有量の成分を用いた以外は、実施例1と同様に操作し、接着剤組成物を調製した。なお、表2中の「−」は、該当する成分を配合しなかったことを示す。
【0185】
【表2】
【0186】
[評価試料の作製]
評価試料としては、下記方法に従い、
図5に示す両面銅張積層板(評価試料1)、
図6に示すカバーフィルム付銅張積層板(評価試料2)、この評価試料2の銅箔にニッケルメッキ処理を施したカバーフィルム付銅張積層板(評価試料3)、及び
図7に示す孔付き片面銅張積層板(評価試料4)を作製した。
【0187】
<評価試料1>
図5の評価試料1は、厚さが45μm〜55mとなるように接着剤組成物を塗工した2枚の銅箔(平均厚さ35μm)により、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社の「カプトン100H」;平均厚さ25μm)を、加圧力を3MPa、加熱温度を180℃、加圧時間を45分として熱圧着することで作製した。また、銅箔としては、カッパーブライトで防錆処理したものを用いた。この防錆処理は、水溶性高分子であるポリオキシエチレンアルキルエーテルをイソプロピルアルコール及びヒドロキシ酪酸に溶解させた防錆溶液を用いて行った。なお、接着剤組成物は両面で同じものを使用した。
【0188】
<評価試料2>
図6の評価試料2は、ポリイミドフィルム東レ・デュポン社の「カプトン100H」に厚さが45μm〜55μmとなるように接着剤組成物を塗工したカバーフィルムを、表面にカッパーブライト処理を施した平均厚さ35μmの銅箔からなる銅張積層板に貼着することで作製した。カバーフィルムの貼着は、加圧力を3MPa、加熱温度を180℃、加圧時間を45分として熱圧着することで行った。なお、銅張積層板としては、平均厚さ35μmの銅箔と平均厚さ25μmのポリイミドフィルム(カプトン100H)をエポキシ樹脂系の接着剤で貼り合わせたものを使用した。なお、銅箔表面は評価試料1と同様にカッパーブライトで防錆処理している。
【0189】
<評価試料3>
評価試料3は、
図6の評価試料2の作製において、銅張積層板に無電解ニッケルメッキ処理を施すことで銅箔表面に平均厚さが0.1μmの表面処理層を形成した以外は、評価試料2と同様にして作製した。
【0190】
<評価試料4>
図7の評価試料4の作製に当たっては、まず、ポリイミドフィルム東レ・デュポン社の「カプトン100H」に厚さ45μm〜55μmとなるように接着剤組成物を塗工したカバーフィルムを形成した。次いで、このカバーフィルムに直径1.5mmの円形孔を開けた後、表面にカッパーブライト処理を施した平均厚さ35μmの銅箔からなる銅張積層板にカバーフィルムを載置して加圧加熱して接着層を硬化させることで評価試料4を作製した。上記加圧加熱は加圧力を3MPa、加熱温度を180℃、加圧時間を45分として熱圧着することで行った。なお、銅箔としては、評価試料1と同様な手法によりカッパーブライトで防錆処理したものを用いた。
【0191】
[評価]
実施例1〜4及び比較例1〜8の接着剤組成物を使用した評価試料1〜4について、下記の手法に従い、剥離強度、リフロー耐熱性及び流れ出しの評価を実施した。評価結果を表3に示す。なお、表3における評価項目の「−」は、未評価である(評価できなかった)ことを意味する。また、表中の(*)はATFオイルの染み込みが確認されたことを意味する。
【0192】
<剥離強度>
剥離強度は、以下の5つの条件で、JIS−K−6854−2:1999「接着剤−はく離接着強さ試験方法−第2部:180度はく離」に準じてピール強度として測定した。この剥離強度は、島津製作所社の引張試験機「オートグラフAG−IS」を用いて測定した。なお、剥離強度の測定においては、評価試料2又は評価試料3の銅張積層板の端部の全体を挟むと共に、ポリイミドフィルムを固定して引きはがし力を作用させることで測定した。
【0193】
剥離強度1:評価試料2を作製した初期の常温での剥離強度
剥離強度2:評価試料2を150℃で1,000時間放置した後の常温での剥離強度
剥離強度3:ニッケルメッキ処理を施した評価試料3を、150℃で1,000時間放置した後の常温での剥離強度
剥離強度4:評価試料2をトヨタ自動車社のATFオイル「トヨタ純正オートフルード(WS)」に浸漬した状態とし、150℃で1,000時間放置した後の常温での剥離強度
剥離強度5:評価試料2を作製した初期の150℃での剥離強度
剥離強度6:評価試料1を85℃、85%で1,000時間放置した後の常温での剥離強度
【0194】
<リフロー耐熱性>
リフロー耐熱性は、評価試料1又は評価試料2を260℃の恒温槽に1分放置した後に変形の有無を確認することで評価した。評価基準は、以下の通りである。なお、表3におけるリフロー耐熱性1は評価試料1を用いた結果であり、リフロー耐熱性2は評価試料2を用いた結果である。
A:変形が認められない。
B:変形が認められる。
【0195】
<流れ出し>
流れ出しは、円形孔を形成した評価試料4について、平面視における円形孔の内面からの接着剤の流出距離d(
図8参照)を測定することで評価した。なお、接着剤組成物には、流出距離が200μm未満であることが通常求められる。
【0196】
【表3】
【0197】
表3から明らかなように、実施例1〜4の接着剤組成物を使用した評価試料は、比較例1〜8の接着剤組成物を使用した評価試料に比べて、剥離強度が高く、リフロー耐熱性に優れていた。具体的には、実施例1〜4の接着剤組成物を使用した評価試料2は初期剥離強度に相当する剥離強度1及び5の評価、並びに長期剥離強度に相当する剥離強度2及び3の評価について特に問題はないと共に、実施例1〜4の接着剤組成物を使用した評価試料4は長期耐油性に相当する剥離強度4の評価について特に問題はなかった。
【0198】
また、実施例1〜4の接着剤組成物を使用した評価試料1及び2は、リフロー耐熱性1の評価に優れる傾向があった。このリフロー耐熱性1に使用した評価試料1は、ポリイミドフィルムの両面に接着層を介して銅箔を積層した構造のものである(
図5参照)。そのため、評価試料1は、接着層組成物に含まれる溶媒がリフロー時に気体となったときに、この気体が接着層から排出され難いことから、気体が接着層に残存する、いわゆるポップコーン現象により剥離強度が低下しやすい構造を有する。従って、実施例1〜4の接着剤組成物を使用した評価試料1は、リフロー時のポップコーン現象の発生が抑止された結果、剥離強度に優れているものと考えられる。
【0199】
<参考例1〜4>
参考例1〜4の接着剤組成物は、無機フィラーとして表4に示す平均粒径及びアスペクト比のものを用いた以外は比較例3と同様にして調製した。なお、表4に示す無機フィラーB1〜B5は下記の通りである。
【0200】
B1:日本タルク社の「MICRO ACE K1」
B2:日本タルク社の「MICRO ACE P8」
B3:日本タルク社の「GAT−40」
B4:日本タルク社の「MICRO ACE P2」
B5:日本ミストロン社の「ミストロンベーパータルク」
【0201】
この接着剤組成物を用いて評価試料1〜4を作製し、上述した剥離強度及びリフロー耐熱性を評価した。評価結果については表4に示した。この表4には比較例3の評価結果を同時に示した。
【0202】
【表4】
【0203】
表4から明らかなように、参考例1〜4の接着剤組成物を使用した評価試料1〜4は、剥離強度1、2及びリフロー耐熱性2が比較例3と同程度又はそれ以上であった。そのため、平均粒径及びアスペクト比が参考例1〜4の範囲である無機フィラーを、実施例1〜4の接着剤組成物に配合した場合、実施例1〜4の接着剤組成物を使用した評価試料1〜4と同程度かそれ以上の剥離強度や耐熱性が得られるものと推察される。
【0204】
<短時間での耐熱性>
(実施例5)
平均厚さ25μmのポリイミドフィルム(カプトン100H)に実施例4の接着剤組成物を平均厚さ35μmとなるように塗工し、銅張積層板に熱貼着することでカバーフィルム付銅張積層板を得た。上記熱貼着時の加圧力は3MPa、加熱温度は180℃、加圧時間は45分であった。なお、銅張積層板としては、平均厚さ35μmの銅箔をカッパーブライトで防錆処理し、平均厚さ25μmのポリイミドフィルム(カプトン100H)をエポキシ樹脂系の接着剤で貼り合わせたものを使用した。
【0205】
(比較例9)
実施例4の接着剤組成物に代えてエポキシ樹脂系の接着剤を用いたほかは、上記実施例5と同様にして、カバーフィルム付銅張積層板を得た。
【0206】
実施例5及び比較例9のカバーフィルム付銅張積層板を120℃で60分ベーキングした後、溶融半田液(錫63モル%、鉛37モル%)に60秒浸漬させ、カバーフィルムと銅張積層板間の接着層における気泡の発生の有無を肉眼で観察し以下の評価を行った。この評価結果を表5に示す。
A:気泡が生じていない。
B:気泡が生じている。
【0207】
【表5】
【0208】
表5に示すように、実施例5のカバーフィルム付銅貼積層板では、340℃の半田液に60秒浸漬させた場合であっても接着層に気泡が生じておらず、高い短時間での耐熱性を有する。一方、比較例9では320℃の半田液に60秒浸漬させると接着層中に気泡を生じ、短時間での耐熱性に劣ることが分かる。
【0209】
また、バインダーとしてシリコーンゴム、白色顔料としてアナターゼ酸化チタンを混合した白インクを、基材層としての平均厚さ12.5μmのポリイミドフィルム(カプトン100H)に塗工及び硬化し、平均厚さ30μmの反射層を形成した。この基材層及び反射層を備えるカバーフィルムに実施例1の接着剤組成物を塗工し、乾燥することで平均厚さ25μmの接着層を形成し、白色カバーレイを製造した。この白色カバーレイをフレキシブルプリント配線板に接着し、このフレキシブルプリント配線板にLEDモジュールを実装した。白色カバーレイとフレキシブルプリント配線板との接着及びLEDモジュール実装時に、白色カバーレイが加熱されたが、白色カバーレイの破損は生じていなかった。