特許第6342267号(P6342267)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6342267
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】医療機器通信システム、医療機器
(51)【国際特許分類】
   A61H 31/00 20060101AFI20180604BHJP
   A61N 1/39 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   A61H31/00
   A61N1/39
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-180020(P2014-180020)
(22)【出願日】2014年9月4日
(65)【公開番号】特開2016-52444(P2016-52444A)
(43)【公開日】2016年4月14日
【審査請求日】2017年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170911
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 啓太
(72)【発明者】
【氏名】若林 勤
(72)【発明者】
【氏名】吉田 達雄
(72)【発明者】
【氏名】秋山 直人
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 弘行
【審査官】 村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−056203(JP,A)
【文献】 特開2008−237879(JP,A)
【文献】 特開2012−148092(JP,A)
【文献】 特表2010−515546(JP,A)
【文献】 特開2009−103824(JP,A)
【文献】 特表2013−542787(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0226204(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0052032(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0199212(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0358048(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 31/00
A61N 1/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1医療機器と第2医療機器を備えた医療機器通信システムであって、
前記第1医療機器は、前記第2医療機器との通信接続を確立して通信を行う第1通信手段と、前記第1医療機器の制御を行う第1制御手段と、前記第1制御手段の制御に基づいて音の出力を行う第1音出力手段と、を備え、
前記第2医療機器は、前記第1医療機器との通信接続を確立して通信を行う第2通信手段と、前記第2医療機器の制御を行う第2制御手段と、前記第2制御手段の制御に基づいて前記第1音出力手段とは異なる音の報知を行う第2音出力手段と、を備え、
前記第2制御手段は、前記第1及び前記第2通信手段による通信接続の確立後の所定のタイミングに、前記第2音出力手段からのの出力の停止やボリュームダウンを含む制御を行い
前記第1制御手段は、前記所定のタイミング後に前記第1音出力手段からの音の出力を継続する、医療機器通信システム。
【請求項2】
前記第2医療機器は、視覚的な報知を行う第2表示手段を備える、
ことを特徴とする請求項に記載の医療機器通信システム。
【請求項3】
前記第1医療機器と前記第2医療機器は、時間情報を同期させている、ことを特徴とする請求項に記載の医療機器通信システム。
【請求項4】
前記第1通信手段は、前記第1音出力手段が報知する理想的な胸骨圧迫のペースを示す胸骨圧迫タイミング情報を前記第2通信手段に通知し、
前記第2制御手段は、前記第2通信手段に通知された前記胸骨圧迫タイミング情報に基づいて前記第2表示手段が視覚的報知を行うように制御する、
ことを特徴とする請求項に記載の医療機器通信システム。
【請求項5】
前記第1通信手段は、所定の治療行為を行うタイミングを示す治療タイミング情報を前記第2通信手段に通知し、
前記第2制御手段は、前記第2通信手段に通知された前記治療タイミング情報に基づいて、前記第1医療機器が治療行為を行っている間には前記第2表示手段が視覚的報知を行わないように制御する、
ことを特徴とする請求項または請求項に記載の医療機器通信システム
【請求項6】
前記第1通信手段は、前記第1医療機器が前記所定の治療行為を行った後に治療終了情報を前記第2通信手段に通知し、
前記第2制御手段は、前記第2通信手段に通知された前記治療終了情報に基づいて、前記第2表示手段による視覚的報知を再開するように制御する、
ことを特徴とする請求項に記載の医療機器通信システム。
【請求項7】
前記第1制御手段は、前記所定の治療行為により救助対象者の状態が改善したか否かを判定し、
前記第1通信手段は、前記第1制御手段が前記救助対象者の状態が改善したと判定した場合に、表示処理の停止要求を前記第2通信手段に送信し、
前記第2制御手段は、前記第2通信手段に通知された前記停止要求に応じて、前記第2表示手段による視覚的報知を停止するように制御する、
ことを特徴とする請求項または請求項に記載の医療機器通信システム。
【請求項8】
前記第1医療機器は、救助対象者に対して電気的な刺激を与える除細動器であり、
前記第2医療機器は、前記救助対象者の胸部と救助者の手の間に配置されて胸骨圧迫を補助するCPR(Cardio Pulmonary Resuscitation:心肺蘇生法)補助装置である、
ことを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の医療機器通信システム。
【請求項9】
音の出力を行う他医療機器と通信して動作する医療機器であって、
前記他医療機器との通信接続を確立して通信を行う通信手段と、自装置の制御を行う制御手段と、前記制御手段の制御に基づいて前記他医療機器とは異なるの出力を行う音出力手段と、を備え、
前記制御手段は、前記他医療機器との通信接続の確立をし、前記他医療機器が音を出力する際に、前記音出力手段からのの出力の停止やボリュームダウンを含む制御を行う、医療機器。
【請求項10】
音の出力を行う他医療機器と通信して動作する医療機器であって、
前記他医療機器との通信接続を確立して通信を行う通信手段と、自装置の制御を行う制御手段と、前記他医療機器とは異なる音の出力を行う音出力手段と、を備え、
前記制御手段は、前記通信手段が前記他医療機器との通信接続を確立した後に、前記他医療機器が音出力停止やボリュームダウンを含む制御をしている場合に、前記音出力手段からの音出力を可能に制御する、医療機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療機器通信システム、及び医療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
CPR(Cardio Pulmonary Resuscitation:心肺蘇生法)は、救急医療では必須の手技であり、その適否が救助対象者(患者)の生死にかかわっている。CPRを行う場合、救助者は胸部の上の胸骨を圧迫する。CPRは救助対象者の生死に関わるため、救助対象者の胸部と救助者の手の間に配置されて胸骨圧迫を補助する装置(以下、CPR補助装置と呼称する。)が開発されている。CPR補助装置は、胸骨に適切な時間間隔で適切な力が加わっているかを検知し、検知に応じて救助者に対して適切な報知(「圧迫の深さが十分ではない。」、「圧迫のタイミングが遅すぎる。」等)を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2013−542814号公報
【特許文献2】特開2010−528722号公報
【特許文献3】国際公開第2012/073900号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のCPR補助装置は、AED(Automated External Defibrillator)や除細動器をはじめとする他の医療機器と同時に使用する機会が多い。CPR補助装置と医療機器が相互に協調して動作することにより、適切な救助処置を実現することができる。
【0005】
例えば特許文献1には、複数の除細動間の通信に関する技術が開示されている。同様に特許文献2には、CPR補助装置と除細動器との間の通信に関する技術が開示されている。
【0006】
医療の現場や医療訓練の場面では、多くの医療機器が同時に使用されることが想定される。例えば大規模災害(例えばビル火災等)が生じた場合、多くのCPR補助装置やAED(または除細動器)が同時に使用されるケースが想定される。また心肺蘇生法の講習会等では、多くのCPR補助装置やAED(または除細動器)が同時に使用される。
【0007】
このような環境下で医療機器間(例えばCPR補助装置とAED)が通信して動作する場合、各医療機器から出力される音声ガイダンスにより救助者が混乱してしまうケースがある。
【0008】
なお、この音ガイダンスの混在の問題は、CPR補助装置とAEDが連携して動作する場合だけではなく、様々な種類の医療機器が連携して動作する場合に生じる共通のものである。
【0009】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、複数の医療機器が同時に使用される場合であってもユーザ(救助者)が混乱することなく救助処置を行うことができる医療機器通信システム、及び医療機器を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる医療機器通信システムの一態様は、
第1医療機器と第2医療機器を備えた医療機器通信システムであって、
前記第1医療機器は、前記第2医療機器との通信接続を確立して通信を行う第1通信手段と、前記第1医療機器の制御を行う第1制御手段と、を備え、
前記第2医療機器は、前記第1医療機器との通信接続を確立して通信を行う第2通信手段と、前記第2医療機器の制御を行う第2制御手段と、前記第2制御手段の制御に基づいて音報知を行う第2音出力手段と、を備え、
前記第2制御手段は、前記第1及び前記第2通信手段による通信接続の確立後の所定のタイミングに、前記第2音出力手段の音出力を制御する、ものである。
【0011】
上述の構成では、第1通信手段と第2通信手段との間で通信接続を確立した後には、第2医療機器からの音出力を制御する。これにより、音出力による混乱を回避することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、複数の医療機器が同時に使用される場合であってもユーザ(救助者)が混乱することなく救助処置を行うことができる医療機器通信システム、及び医療機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1にかかる医療機器通信システム1のブロック図である。
図2】実施の形態1にかかる除細動器10とCPR補助装置20の処理フローを示す図である。
図3】実施の形態1にかかる除細動器10とCPR補助装置20の処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施の形態1>
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は本実施の形態にかかる医療機器通信システム1の構成を示すブロック図である。医療機器通信システム1は、除細動器10及びCPR(Cardio Pulmonary Resuscitation:心肺蘇生法)補助装置20を有する。なお除細動器10及びCPR補助装置20は、医療機器の例示である。除細動器10及びCPR補助装置20は、双方向的にデータ通信を行う装置である。
【0015】
除細動器10は、通信手段11、制御手段12、音出力手段13、及び表示手段14を有する。CPR補助装置20は、通信手段21、制御手段22、音出力手段23、及び表示手段24を備える。なお除細動器10は、図示しない入力手段(例えば筐体表面に設けられた各種のボタンやツマミ)や記憶手段(各種のプログラムや音データを格納する二次記憶装置)等も有する。同様にCPR補助装置20は、記憶手段(各種のプログラムや音データを格納する二次記憶装置)等も有する。また除細動器10は、救助対象者の生体に接触する電極や充電を行うコンデンサ等も備えている。
【0016】
はじめに除細動器10の各処理部の動作について説明する。通信手段11は、他の医療機器(この場合にはCPR補助装置20)との通信接続を確立し、通信接続を確立した装置間でのデータの送受信を行う。通信手段11は、例えばBluetooth(登録商標)等の近距離通信技術を実装した通信インターフェイスであれば良い。
【0017】
制御手段12は、除細動器10の各種の動作制御を行う。制御手段12は、CPU(Central Processing Unit)及び各種の回路(A/Dコンバータ等)によって実現される。制御手段12は、救助対象者に電気ショックを与えるためのエネルギー充電/放電の制御、表示手段14の表示制御等を行う。これに加えて制御手段12は、音出力手段13からの音出力制御を行う。以下の説明において「音」とは、所謂音声ガイダンスに加えてビープ音等も含む概念である。当該音出力制御の詳細については、図2及び図3を参照して後述する。
【0018】
音出力手段13は、例えばスピーカーであり、除細動器10の動作に応じて任意音を出力する。例えば音出力手段13は、除細動器10の動作に応じて「充電中です。」、「離れてください。」、「胸骨圧迫を再開してください。」といった音を出力する。また音出力手段13は、胸骨圧迫を行うべき場合に、胸骨圧迫の理想的なペース音を出力する。
【0019】
表示手段14は、制御手段12の制御に応じて、除細動器10の動作状態やユーザに対する操作指示等を表示する(視覚的な報知を行う)。表示手段14は、例えば液晶ディスプレイ(LCD)及び当該ディスプレイを制御する各種の回路等から構成される。
【0020】
続いてCPR補助装置20について説明する。CPR補助装置20は、救助対象者の胸部(好適には胸骨の直上)と救助者の手の間に配置されて胸骨圧迫を補助する装置である。なお救助対象者とは、人間の傷病者(または患者とも表現される。)に加えてマネキン等も含む概念である。すなわちCPR補助装置20は、実際の心肺蘇生の場面で用いられてもよく、心肺蘇生のトレーニング時に用いられてもよい。CPR補助装置20は、内部に図示しないセンサを有する。当該センサは、押圧された場合と押圧解放された場合に生じる変位を検出して制御手段22に供給する。
【0021】
通信手段21は、他の医療機器(この場合には除細動器10)との通信接続を確立し、通信接続を確立した装置間でのデータの送受信を行う。通信手段21は、通信手段11と同様に、例えばBluetooth(登録商標)等の近距離通信技術を実装した通信インターフェイスであれば良い。通信手段21と通信手段11の通信接続の確立は、例えばBluetooth(登録商標)のペアリングによって実現すればよい。また通信手段21と通信手段11は、通信接続を確立した後にお互いの時刻情報を同期させる。同期手法は、任意の手法を用いればよい。
【0022】
制御手段22は、CPR補助装置20の全体的な制御を行う。制御手段22は、CPU(Central Processing Unit)及び各種の回路によって実現される。制御手段22には、胸骨圧迫の実行時に上述のセンサから変位が入力される。
【0023】
制御手段22は、上述のセンサが検出した変位に基づいて救助対象者に与えられた胸骨圧迫の圧迫深度や圧迫速度を検出する。また制御手段22は、記憶手段(図示せず)に格納された理想的な圧迫深度や圧迫速度を読み出す。そして制御手段22は、読み出した圧迫深度と、現在行われている圧迫深度と、を比較して現在の圧迫深度が適切であるかを判定する。同様に制御手段22は、読み出した圧迫速度と、現在行われている圧迫速度と、を比較して現在の圧迫速度が適切であるかを判定する。
【0024】
なお制御手段22による胸骨圧迫の圧迫深度及び圧迫速度の検出や判定手法は、例えば特許文献3に記載の手法と同等であればよい。
【0025】
制御手段22は、圧迫速度や圧迫深度が適切であるか否かを、音出力手段23を介して報知する。しかしながら制御手段22は、除細動器10との通信接続が確立した後には音出力手段23からの音出力が除細動器10の状態に応じて停止されるように制御する。この音出力制御については、図2及び図3を参照して後述する。
【0026】
音出力手段23は、制御手段22からの制御に応じてガイダンス音を出力する。例えば音出力手段23は、CPR補助装置20を用いた胸骨圧迫に応じて「もっと強く押してください。」、「もっと弱く押してください。」、「もっとゆっくり押してください。」、「もっと速く押してください。」といったガイダンス音を出力する。しかしながら音出力手段23は、前述のように除細動器10との通信接続が確立した後には、除細動器10の状態に応じて音出力を停止する。詳細は図2及び図3を参照して後述する。
【0027】
表示手段24は、制御手段22からの制御に応じて、CPR補助装置20のユーザに対するインストラクション等を視覚的に伝える(視覚的な報知を行う)。表示手段24は、例えばランプや小型液晶ディスプレイと、当該ランプ等を制御する回路等と、から構成される。例えば表示手段24は、最も理想的な胸骨圧迫のペースに合わせてランプを点滅させる。表示手段24による表示は、除細動器10との通信接続の確立後には特殊な制御が行われる。当該制御は、図2及び図3を参照して後述する。
【0028】
図2を参照して除細動器10とCPR補助装置20の音及び表示制御を説明する。除細動器10内の通信手段11とCPR補助装置20内の通信手段21は、通信接続を確立し、時刻情報の同期を行う(S11)。通信接続が確立した後にCPR補助装置20内の制御手段22は、音出力手段23からのガイダンス音の出力を除細動器10の状態に応じて停止する(S12)。例えば除細動器10が電極を介して救助対象者と接続されている状態や実際に心電図解析を開始している状態、等である場合にはCPR補助装置20の出力音を停止する。なお、CPR補助装置20の音を停止すべきタイミング(除細動器10の所定状態)を、救助者が適宜定義できるようになっていてもよい。以下の説明では、S12の時点において除細動器10と救助対象者が電極を介して接続されているため、音出力手段23からの音出力が停止されるものとする。除細動器10内の制御手段12は、音出力手段23からの出力音が停止している間に音出力手段13が引き続き音の出力が可能な状態に制御する。これにより音出力手段13は、引き続きガイダンス音(理想的な胸骨圧迫のペースを示す音)の出力を行う。
【0029】
除細動器10内の通信手段11は、CPR補助装置20に対して理想的な胸骨圧迫のペースを示す胸骨圧迫タイミング情報を通知する(S13)。胸骨圧迫タイミング情報とは、例えば「2014年4月14日13:XX:YYからZ秒毎に胸骨圧迫のペース音を出力する。」といった情報を含む。なお胸骨圧迫タイミング情報は当該フォーマットに限られず、どのタイミングで除細動器10から音出力が行われているかを把握できるものであればよい。この胸骨圧迫タイミング情報に従って、CPR補助装置20内の制御手段22は、表示手段24の表示制御を行う(S14)。例えば理想的な胸骨圧迫ペース情報に従って表示手段24はランプを点滅させる。
【0030】
除細動器10内の制御手段12は、救助対象者の心電図解析等を行う。制御手段12が除細動を行うと判定した場合、通信手段11は治療タイミング情報をCPR補助装置20に通知する(S15)。
【0031】
CPR補助装置20内の通信手段21は、治療タイミング情報を受信する(S15)。治療タイミング情報とは、治療行為(本例では除細動)を行うタイミングを示す情報である。治療タイミング情報は、胸骨圧迫タイミング情報と略同様のフォーマットを持つ情報であり、例えば「2014年4月14日13:YY:ZZから除細動のための心電図解析を行う」といった情報である。これに応じて制御手段22は、表示手段24からの表示(視覚的報知)を中断する(S16)。例えば制御手段22は、表示手段24によるランプの点滅を中断する。
【0032】
除細動器10内の制御手段12は、除細動を行う。除細動を行った後に、除細動器10内の通信手段11は、治療終了情報をCPR補助装置20に送信する(S17)。なお当該治療終了情報(S17)は、単に除細動を行ったことを伝えるものだけではなく、胸骨圧迫のタイミング(「2014年4月14日13:XX:YYからZ秒毎に胸骨圧迫のペース音を出力する。」)も合わせて通知するものである。これに応じてCPR補助装置20内の制御手段22は、表示手段24の表示を再開する(S18)。
【0033】
続いて図3を参照して、除細動器10とCPR補助装置20の音出力及び表示の具体例を説明する。図3において、図2と同様の符号が付されている処理は図2と同様のものとする。
【0034】
除細動器10内の通信手段11は、理想的な胸骨圧迫のペースを示す胸骨圧迫タイミング情報をCPR補助装置20に通知する(S13)。除細動器10内の制御手段12は、音出力手段13に理想的な胸骨圧迫のペース音を出力させる。例えば音出力手段13は、「ピッ」「ピッ」「ピッ」といった音を出力する。
【0035】
CPR補助装置20内の通信手段21は、胸骨圧迫タイミング情報を受信する(S13)。そして制御手段22は、この胸骨圧迫タイミング情報に基づいて表示手段24が表示を行うように制御する。ここで除細動器10とCPR補助装置20は時刻同期がなされている。制御手段22は、除細動器10の音の出力タイミングと同期するように、胸骨圧迫タイミング情報に従って表示手段24の表示タイミングを調整する。例えば除細動器10が「ピッ」「ピッ」「ピッ」という音を出力するタイミングと、CPR補助装置20の筐体上のランプが光るタイミングと、は略一致する。
【0036】
除細動器10の制御手段12は、救助対象者に対して除細動を行うかを判定するために、救助対象者の心電図を調べる。その際に制御手段12は、音出力手段13から「離れてください。」といったようなガイダンス音を出力させる。そして、通信手段11はCPR補助装置20に治療タイミング情報を通知する(S15)。
【0037】
CPR補助装置20内の通信手段21は、治療タイミング情報を受信する(S15)。除細動器10がこれから心電図を調べるため、制御手段22は表示手段24からの表示(例えばランプ点滅)を停止させる(S16)。すなわち心電図を調べて治療を行っている場合には、表示手段24はランプ点滅等の表示を行わない(S16)。
【0038】
除細動器10は、心電図解析の結果から除細動を行う場合にはエネルギーを充電し、充電後に救助対象者に対して除細動を行う。除細動器10内の通信手段11は、除細動を行った後に治療終了情報を送信する(S17)。
【0039】
治療終了情報を送信した後に、除細動器10内の制御手段12は、音出力手段13からの理想的な胸骨圧迫ペースの出力を再開する。例えば音出力手段13は、「ピッ」「ピッ」「ピッ」という音を出力する
【0040】
CPR補助装置20内の通信手段21は、治療終了情報を受信する(S17)。その後に制御手段22は、この治療終了情報に従って表示手段24の表示を行う。ここで除細動器10とCPR補助装置20は時刻同期がなされているため、除細動器10の音出力のタイミングとCPR補助装置20の表示のタイミングは略一致する。例えば除細動器10が「ピッ」「ピッ」「ピッ」という音を出力するタイミングと、CPR補助装置20の筐体上のランプが光るタイミングと、は略一致する。
【0041】
なお図2及び図3の処理フローはあくまでも一例であり、これを変形したものであってもよい。例えば音を停止する処理(S12)と胸骨圧迫タイミング情報を通知する処理(S13)は順序が逆であってもよく、略同時に実行されてもよい。
【0042】
続いて本実施の形態にかかる医療機器通信システムの効果について説明する。除細動器10とCPR補助装置20との通信接続を確立した後には、CPR補助装置20からの除細動器10の状態に応じて音出力が停止する。これにより、CPR補助装置20からの音出力による混乱を避けることができる。
【0043】
また除細動器10は、CPR補助装置20の音出力が停止している間も音出力(例えば図3における「ピッ」「ピッ」)を継続している。除細動器10からのみ音出力がされるため、救助者は混乱することなく、かつ音出力を参照しながら治療(この場合には胸骨圧迫)を行うことができる。従来のように除細動器10とCPR補助装置20が音出力を共に制限することなく動作する場合、除細動器10が「離れてください。」と出力しているにもかかわらず、CPR補助装置20が「もっと強く胸骨圧迫をしてください。」と出力するといった状態が生じ得る。本実施の形態にかかる医療機器通信システム1は、除細動器10のみが音出力を行うため、このような状況を回避することができる。
【0044】
またCPR補助装置20は、出力音を停止している間も表示手段24による表示(胸骨圧迫のペース表示)を継続して行う。これにより救助者は、手元に置かれるCPR補助装置20から視覚的に胸骨圧迫の理想的なタイミングを把握することができる。
【0045】
また除細動器10による音出力のタイミングと、CPR補助装置20による表示のタイミングと、は同期している(略同時となっている)。例えば図3において除細動器10による「ピッ」「ピッ」という音出力のタイミングとCPR補助装置20の表示点滅タイミングは略同一となる。これにより救助者は、音と表示のガイダンスが混在する状態であっても混乱することなく理想的な胸骨圧迫を行うことができる。
【0046】
更に除細動器10が除細動を行う場合、CPR補助装置20は胸骨圧迫を促す表示ガイダンスを停止する(図2図3のS16)。これにより、除細動が行われるようなタイミングで胸骨圧迫を促す表示ガイダンスを停止することができ、安全に胸骨圧迫を行うことができる。
【0047】
また除細動器10による除細動が終了した後に、CPR補助装置20は胸骨圧迫を促す表示ガイダンスを再開する(図2図3のS17及びS18)。これにより、除細動が終了した後に速やかに適切な胸骨圧迫を行うことができる状態となる。
【0048】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0049】
例えば、図2及び図3では除細動を行った後にCPR補助装置20は、表示処理を再開するもの(S18)として説明したが必ずしもこれに限られない。除細動器10は、救助対象者の心電図等を参照して正常な心臓動作となった場合(状態が改善したと判定した場合)、CPR補助装置20に対して表示処理を停止するような停止要求を出力してもよい。CPR補助装置20内の制御手段22は、この停止要求に応じて表示手段24による表示を停止する。これにより、救助対象者が除細動によって救出されたにも関わらず、胸骨圧迫を促すようなガイダンスが継続するといった状況を回避することができる。
【0050】
ここで特許請求の範囲における医療機器通信システムの各処理手段等と図1の構成との略対応関係について説明する。第1医療機器は、除細動器10と略対応する。第2医療機器は、CPR補助装置20と略対応する。第1通信手段は、通信手段11と略対応する。第1制御手段は、制御手段12と略対応する。第1音出力手段は、音出力手段13と略対応する。第2通信手段は、通信手段21と略対応する。第2制御手段は、制御手段22と略対応する。第2音出力手段は、音出力手段23と略対応する。第2表示手段は、表示手段24と略対応する。
【0051】
なお上述の説明においてCPR補助装置20は、除細動器10の状態に応じて音出力を停止するものとして説明したが、出力音のボリュームを小さくするようにしても、効果は薄れるものの十分に有用であり、本発明の一例に含まれる。すなわちCPR補助装置20は、音出力を制御するものであれば良い。
【0052】
また上述の説明ではCPR補助装置20は、除細動器10との接続後に、除細動器10の状態に応じて音を停止(制御)するものとしたが必ずしもこれに限られない。例えばCPR補助装置20は、除細動器10との接続確立のすぐ後(または一定時間後)に音を停止(制御)するようにしてもよい。すなわちCPR補助装置20は、除細動器10との接続後の所定のタイミング(除細動器10が所定状態になったタイミング、除細動器10が所定状態となってから一定時間後のタイミング、接続確立後すぐ後のタイミング、接続確立の一定時間後のタイミング等を含む)に、音を停止(制御)するものであればよい。
【0053】
また音ガイダンスの混在によるユーザの混乱という問題は、他の種類の医療機器同士が連携して動作する場合にも生じ得る。そのため上述の医療機器通信システム1の動作(一方装置の音を停止するという動作)は、他の任意の医療機器が連携して動作するシステムにも応用することができる。用途や医療機器の組み合わせによっては、CPR補助装置の音が優先的に出力されるケースも勿論有り得る。
【符号の説明】
【0054】
1 医療機器通信システム
10 除細動器
11、21 通信手段
12、22 制御手段
13、23 音出力手段
14、24 表示手段
20 CPR(Cardio Pulmonary Resuscitation:心肺蘇生法)補助装置
図1
図2
図3