(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アナライザ及びポラライザを有する落射型偏光顕微鏡を用い、アナライザに対するポラライザの角度を0°とした水平ニコルの状態で石炭試料を撮像した第1画像と、アナライザに対するポラライザの角度を80°以上且つ90°以下とした状態で前記第1画像と同部位を撮像した第2画像と、を記憶部に記憶するステップと、
前記第1画像および前記第2画像を論理和演算し、論理和演算で生成された画像をグレースケール化したモノクロ画像を生成するステップと、
前記モノクロ画像を構成する複数の画素のうち、予め定められた基準輝度値よりも明るい輝度の画素が高輝度成分に対応する画素であると識別するステップと、
を含むことを特徴とする石炭における高輝度成分を識別する方法。
前記高輝度成分に対応する画素が隣接することによって当該複数の画素で構成される一連の画素群を認識し、認識した一連の画素群に関するパラメータを算出して出力するステップを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
アナライザ及びポラライザを有する落射型偏光顕微鏡を用い、アナライザに対するポラライザの角度を0°とした水平ニコルの状態で石炭試料を撮像した第1画像と、アナライザに対するポラライザの角度を80°以上且つ90°以下とした状態で前記第1画像と同部位を撮像した第2画像と、を記憶する記憶部と、
前記第1画像および前記第2画像を論理和演算し、論理和演算で新たな画像を生成する論理和演算部と、
前記論理和演算部で生成された画像をグレースケール化したモノクロ画像を生成するモノクロ画像生成部と、
前記モノクロ画像生成部で生成された前記モノクロ画像を構成する複数の画素のうち、予め定められた基準輝度値よりも明るい輝度の画素が高輝度成分に対応する画素であると識別する識別部と、を備えることを特徴とする石炭における高輝度成分を識別する装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記非特許文献1及び一般的な分析方法であるJIS M8816では、顕微鏡で得られた画像を人が目視し、経験に基づきイナーチニット組織であるかを識別することが記載又は規定されている。測定者が目視確認で識別し、イナーチニット組織と認識した部位にマーキングするので、解析に長時間を要するうえ、更に測定者によって判別基準が異なり、再現性が低いという問題がある。
【0008】
一方、特許文献1のようなX線CT装置を用いる場合には、JIS M8816に規定される顕微鏡を使用する方法とは言えないうえ、X線CT装置が必要となる等コストが増大してしまう。
【0009】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は
、顕微鏡を用いる方法であって、測定者による識別精度のバラツキを無くし且つ解析時間を短縮可能な、石炭分析方法、石炭分析装置及びコンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0011】
本発明の石炭分析方法は、アナライザ及びポラライザを有する落射型偏光顕微鏡を用い、アナライザに対するポラライザの角度を0°とした水平ニコルの状態で石炭試料を撮像した第1画像と、アナライザに対するポラライザの角度を80°以上且つ90°以下とした状態で前記第1画像と同部位を撮像した第2画像と、を記憶部に記憶するステップと、前記第1画像および前記第2画像を論理和演算し、論理和演算で生成された画像をグレースケール化したモノクロ画像を生成するステップと、前記モノクロ画像を構成する複数の画素のうち、予め定められた基準輝度値よりも明るい輝度の画素が高輝度成分に対応する画素であると識別するステップと、を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の石炭分析装置は、アナライザ及びポラライザを有する落射型偏光顕微鏡を用い、アナライザに対するポラライザの角度を0°とした水平ニコルの状態で石炭試料を撮像した第1画像と、アナライザに対するポラライザの角度を80°以上且つ90°以下とした状態で前記第1画像と同部位を撮像した第2画像と、を記憶する記憶部と、前記第1画像および前記第2画像を論理和演算し、論理和演算で新たな画像を生成する論理和演算部と、
前記論理和演算部で生成された画像をグレースケール化したモノクロ画像を生成するモノクロ画像生成部と、前記モノクロ画像生成部で生成された前記モノクロ画像を構成する複数の画素のうち、予め定められた基準輝度値よりも明るい輝度の画素が高輝度成分に対応する画素であると識別する識別部と、を備える。
【0013】
本発明のコンピュータプログラムは、上記方法を構成する各ステップをコンピュータに実行させるプログラムである。
【0014】
水平ニコルの状態で撮像した第1画像は、全体的に輝度の高く明るい画像であり、人の目で観察しやすい。しかし、輝度ヒストグラムが滑らかな分布となり、石炭成分の性質に応じた明暗がはっきりせず、輝度を指標としてイナーチニット組織などの高輝度成分であるかを自動で識別することができない。
アナライザに対するポラライザの角度を80°以上且つ90°以下とした状態で撮像した第2画像は、イナーチニット組織が光りやすく、その他の組織が暗くなるという石炭成分の性質に応じて明暗が顕著となる。しかし、画像全体が暗く、輝度ヒストグラムの分布幅が狭いので、輝度を指標としてイナーチニット組織などの高輝度成分であるかを自動で識別することができない。
これらに対し、上記方法、装置及びコンピュータプログラムによれば、
2つの画像のうち輝度の高い部分を顕著にする論理和演算を第1画像と第2画像に施すことで、画像全体が明るく且つ石炭成分の性質に応じて明暗が顕著な画像を生成でき、当該画像から輝度値に応じて高輝度成分であるか否かを自動で判定することが可能となる。したがって、標準規格に基づく方法であって且つ自動で識別できるので、測定者による識別精度のバラツキを無くし且つ解析時間が短縮可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
本実施形態の石炭分析方法は、アナライザ(検光子)及びポラライザ(偏光子)を有する落射型偏光顕微鏡を用い、石炭試料に照射した光の反射光から試料の顕微鏡画像を得て、コンピュータにおいて画像処理を実行し、石炭における高輝度成分を自動で識別する方法である。本実施形態の石炭分析装置は、上記方法を使用する際に用いる装置である。本明細書において「高輝度成分」はイナーチニット組織及び鉱物を意味する。本実施形態では、イナーチニット組織を識別することを主たる例として説明する。
【0018】
<石炭分析装置>
図1に示すように、石炭分析装置1は、記憶部10と、入力部11と、論理和演算部12と、モノクロ画像生成部13と、識別部14と、マーキング部15と、画像群認識部16と、出力部17と、を有する。これら各部10〜17は、CPU、メモリ、各種インターフェイス等を備えたパソコン等の情報処理装置においてCPUが予め記憶されている図示しない処理ルーチンを実行することによりソフトウェア及びハードウェアが協働して実現される。
【0019】
図1に示す記憶部10は、第1画像と、第2画像とを記憶する。入力部11は、顕微鏡で撮像された第1画像及び第2画像を装置1(コンピュータ)に取り込み、記憶部10に記憶させる。入力部11は、例えば顕微鏡と装置1とを接続して、顕微鏡で撮像した画像を自動的に記憶部10に記憶するように構成してもよいし、ユーザからの操作をトリガーとして、装置1に接続した記憶媒体や通信ネットワークを介して画像データを取り込み、記憶部10に記憶するように構成してもよい。また、記憶部10には、高輝度成分であるか否かを判定するための指標となる基準輝度値が予め設定(記憶)されている。基準輝度値はユーザによって事前に登録される。
【0020】
第1画像は、アナライザ及びポラライザを有する落射型偏光顕微鏡を用い、アナライザに対するポラライザの角度を0°とした水平ニコルの状態で石炭試料を撮像した画像である。第2画像は、アナライザに対するポラライザの角度を80°以上且つ90°以下とした状態で第1画像と同部位を撮像した画像である。
【0021】
図2の上部は、第1画像の例を示し、
図2の下部は、第1画像をグレースケール化した際の輝度ヒストグラムを示す。
図2は、石炭化度(ビトリニット平均反射率)Roが0.8である或る石炭銘柄を用いた試料の顕微鏡画像及びその輝度ヒストグラムである。JIS M8816に従い試料は粉砕石炭を樹脂で固めて研磨している。図中の左下の黒い塊は樹脂である。輝度ヒストグラムは、縦軸が画素の個数、横軸が輝度を示し、横軸において左側が暗く右側が明るい輝度を示す。
図2に示す通り、
輝度ヒストグラムにおけるピクセルの分布が広範囲であり、見た目でも明らかな通り明るい画像である。しかし、
輝度ヒストグラムの分布が滑らかであるので、輝度を指標として、高輝度成分であるか否かを自動で判断することはできない。
【0022】
図3の上部は、第2画像の例を示し、
図3の下部は、第2画像をグレースケール化した際の輝度ヒストグラムを示す。
図3の例は、アナライザに対するポラライザの角度を90°とした直交ニコルの状態で第1画像と同部位を撮像した画像である。
図3に示す通り、
輝度ヒストグラムにおけるピクセル分布が低輝度側に集まった狭い範囲にあり、見た目でも明らかな通り暗い画像である。輝度分布が狭いため、輝度を指標として、高輝度成分であるか否かを自動で判断することはできない。
【0023】
なお、
図2に示す第1画像及び
図3に示す第2画像は、出願図面の制約のためグレースケールであるが、実際はカラー画像である。カラー画像の色数は、例えば24bitが挙げられるが、カラー画像であれば、16bit、32bit等、種々変更可能である。
【0024】
図1に示す論理和演算部12は、
図2に示す第1画像および
図3に例示する第2画像を論理和演算し、論理和演算で新たな画像を生成する。論理和演算は、2つの画像のうち輝度の高い部分を顕著にする処理である。この新たな画像は、図示されていないが、第1画像および第2画像と同じ色数のカラー画像である。
【0025】
図1に示すモノクロ画像生成部13は、論理和演算部12で生成された新たな画像をグレースケール化したモノクロ画像(
図4参照)を生成する。モノクロ画像の色数は、例えば8bit(256色)が挙げられる。
図4に示す輝度ヒストグラムによれば、ピクセル分布が広範囲であり且つ山谷が明確に現れている。
【0026】
図1に示す識別部14は、
図4に例示するモノクロ画像を構成する複数の画素のうち、予め定められた基準輝度値よりも明るい輝度の画素が高輝度成分に対応する画素であると識別する。具体的には、
図4に例示するモノクロ画像を構成する全ての画素を参照し、参照した画素の輝度が予め定められた基準輝度値以上である場合には高輝度成分に対応する画素であると判定し、参照した画素の輝度が予め定められた輝度値よりも小さい場合には高輝度成分に対応する画素ではないと判定する。
図4の例では、基準輝度値に160が設定されており、輝度値160以上且つ255以下のピクセルが高輝度成分に対応する画素であると判断する。基準輝度値は、予め定められるが、その決定方法は、従来通り人の目で高輝度成分であるかを判定しておき、判定した画素の輝度が160以上であったこと、また、輝度値160付近に谷が明確に出現しており、輝度値160が高輝度成分とそれ以外の成分との境界としてふさわしいと判断して決定する。勿論、本実施形態では、輝度値160を基準輝度値としているが、その値は試料や撮像環境に応じて適宜変更される。標準輝度値を一度決定すれば、同じ銘柄で同じ撮像環境であれば、そのまま適用可能で、その後は、自動判定が可能となる。
【0027】
図1に示すマーキング部15は、
図4に示すモノクロ画素を構成する複数の画素のうち、高輝度成分に対応する画素にマーキングした画像に対応する画像を出力する。出力される画像は、上記モノクロ画像に着色した画像でもよく、
図5に示すように、高輝度成分の画素を第1色とし且つ高輝度成分以外の画素を第2色とした二値画像でもよい。
図5は、高輝度成分の画素を第1色とし、高輝度成分以外の画素を第2色とした二値画像の例である。出願書類の制約上、白黒の二値画像ではないが、グレーが高輝度成分の画素であり、黒がそれ以外の画素である。図中矢印は説明用に付したものである。マーキング部15は、装置の構成として適宜省略可能である。
【0028】
図1に示す画像群認識部16は、
図5においてグレーで示すように、高輝度成分に対応する画素が隣接することによって複数の画素で構成される一連の画素群を認識する。一連の画素群は、高輝度成分以外の画素で包囲されて島を形成している。認識するための具体的なアルゴリズムとしては、既知のラベリング処理を利用可能である。ラベリング処理は、二値化処理された画像において、第1色又は第2色の部分が連続した画像に同じ番号を割り振る処理で、同じ番号が振られた画素が一連の画素群であると識別できる。ラベルの方法として、4連結又は8連結のいずれを採用してもよい。4連結は、縦方向及び横方向に連続している画素を同じラベルにする方法であり、8連結は、縦方向、横方向及び斜め方向に連続している画素を同じラベルにする方法である。
【0029】
図1に示す出力部17は、画像群認識部16で認識した一連の画
素群に関するパラメータを算出して出力する。出力態様としては、ディスプレイに出力してもよいし、表計算ソフトなどの各種アプリケーションソフトに読取り可能なファイル形式で出力してもよい。一連の画素群に関するパラメータとして、一連の画素群の面積、最大長さ、個数、面積比等が挙げられる。本実施形態では、各々の一連の画素群の最大長さ(
図5にて白矢印で示す部分の長さ)を出力する。具体的には、第1画像及び第2画像の撮像条件(倍率など)に基づき一画素あたりの寸法値が定まるので、当該寸法値を用いて面積又は最大長さを算出する。出力部17は、個数、面積比等も出力することが挙げられる。勿論、出力する情報として、面積、最大長さ、個数、面積比に限定されるわけではない。画像群認識部16及び出力部17は、装置の構成として適宜省略可能である。
【0030】
<石炭分析方法>
上記装置1を用いた石炭分析方法を、
図6を用いて説明する。
【0031】
まず、ステップST1において、アナライザ及びポラライザを有する落射型偏光顕微鏡を用いて、石炭試料を撮像して第1画像及び第2画像を得る。第1画像は、アナライザに対するポラライザの角度を0°とした水平ニコルの状態で石炭試料を撮像した画像である。第2画像は、アナライザに対するポラライザの角度を80°以上且つ90°以下とした状態で第1画像と同部位を撮像した画像である。
【0032】
次のステップST2において、装置1は、第1画像及び第2画像を記憶部10に記憶する。次のステップST3において、論理和演算部12は、第1画像および第2画像を論理和演算し、新たな画像を生成する。次のステップST4において、モノクロ画像生成部13は、論理和演算部12が生成した画像をグレースケール化し、モノクロ画像を生成する。
【0033】
次に、識別部14が、ステップST5〜8の処理を実行することで、モノクロ画像を構成する複数の画素のうち、予め定められた基準輝度値よりも明るい画素が高輝度成分に対応する画像であると識別する。
【0034】
次のステップST9において、マーキング部15は、
図4に示すモノクロ画素を構成する複数の画素のうち、高輝度成分に対応する画素にマーキングした画像に対応する画像を出力する。次のステップST10において、画像群認識部16は、高輝度成分の画素から構成される一連の画素群(いわゆる島)を認識する。次のステップST11において、出力部17は、画像群認識部16が認識した一連の画素群に関するパラメータを算出して出力する。例えば
図5の例であれば、パラメータとして画素群の最大長さを出力し、左上の白矢印部分の島の最大長さが118μm、その下の矢印部分の島の最大長さが133μm、その右隣の矢印部分の島の最大長さが273μm、その右斜め上の矢印部分の島の最大長さが129μmというようにディスプレイ又はファイルとして出力される。なお、ステップST9〜10は、必要に応じて適宜省略可能である。勿論、出力部17が出力する情報として、面積、最大長さ、個数、面積比に限定されるわけではない。
【0035】
上記石炭分析装置1及び石炭分析方法の有効性について説明する。
【0036】
図5の画像は、上記石炭分析装置1を用いてモノクロ画像を生成し、当該モノクロ画像に基づいて装置1が高輝度成分(イナーチニット組織)と識別した部分をグレーで示す。
図7の画像は、同じ部位を撮像した第1画像を用いて、人の目で高輝度成分(イナーチニット組織)と識別した部分をグレーに着色した画像である。第1画像及び第2画像は、研磨後の石炭試料を偏光顕微鏡(DM2500P LEICA製)とCCDカメラ(DFC290H D LEICA製)およびアプリケーションソフト(Application Suite V3 LEICA製)を用いて、次の条件で撮像した画像である。勿論、アナライザとポラライザ角度以外は、顕微鏡や試料に応じて適宜変更が必要である。
偏光顕微鏡光源:光源強度は、標準試料Ro=1.027において光源強度を測定し、石炭試料に合わせて変更した。石炭化度Ro=0.8の石炭試料においては標準試料Ro=1.027で光源強度9450「Counts」、Ro=1.0の石炭試料においては標準試料Ro=1.027で光源強度7480「Counts」、Ro=1.3の石炭試料においては標準試料Ro=1.027で光源強度4270「Counts」とした。
偏光顕微鏡対物レンズ:20倍(総合倍率200倍)
露光:130.6ms
ゲイン:1.7x
彩度:1
.00
ガンマ:0.60
<第1画像>:アナライザ角度:0°、ポラライザ角度:0°
<第2画像>:アナライザ角度:0°、ポラライザ角度:90°
【0037】
自動判定による
図5と、目視判定による
図7を比較したところ、
図7では右下の矢印部分を大きなイナーチニット組織と識別しているが、
図5では小さく分散した組織と認識している点で相違しているが、主要部分はほぼ一致している。本実施形態の装置及び方法による自動識別の精度が高いことが分かる。なによりも一枚の顕微鏡画像だけでは、自動化に適した輝度ヒストグラムが得られず、自動化できなかったが、本実施形態では、第1画像及び第2画像を用いることで高輝度成分の識別を自動化できた。
【0038】
次に、第2画像についてアナライザ角度とポラライザ角度の最適角度を知るために、角度条件を異ならせた5つの画像を撮像し、本実施形態の装置及び方法で高輝度成分(イナーチニット組織)の識別を行った。
図8は、アナライザを0°としポラライザを90°として第2画像を撮像して識別を行った例を示す。
図9は、アナライザを0°としポラライザを80°として第2画像を撮像して識別を行った例を示す。
図10は、アナライザを0°としポラライザを70°として第2画像を撮像して識別を行った例を示す。
図11は、アナライザを0°としポラライザを60°として第2画像を撮像して識別を行った例を示す。
図12は、アナライザを0°としポラライザを10°として第2画像を撮像して識別を行った例を示す。
図8〜12の上部は、モノクロ画像のうち高輝度成分として認識した画素を白色に着色した画像を示す。
図8〜12の下部は、モノクロ画像の輝度ヒストグラムを示す。
【0039】
図8(ポラライザ角度90°)と
図9(ポラライザ角度80°)を比較したところ、
図9において若干であるがイナーチニット組織及び鉱物以外の組織の一部を高輝度成分として判別し、誤認識が発生したが、許容範囲であった。
図8及び
図9の輝度ヒストグラムを比較しても両者の波形が類似しており、ポラライザ角度80°でも多少のノイズが入るが、高輝度成分の識別が可能であることが判明した。
【0040】
図8及び
図9に対して、
図10〜12は、イナーチニット組織及び鉱物を含め画像の広範囲の部分を高輝度成分として誤判別し、実用できないことが分かった。
図8〜9の輝度ヒストグラムと、
図10〜12の輝度ヒストグラムを比較すれば、
図10〜12では、
図8〜9の輝度ヒストグラムの波形の特徴が完全に崩れて無くなっており、高輝度成分と識別するために必要な情報が失われていると考える。
【0041】
図8〜
図12によれば、第2画像は、アナライザに対してポラライザ角度は80°以上且つ90°以下の状態で撮像する必要があることが理解できる。勿論、アナライザに対してポラライザ角度を90°とした直交ニコルの状態で撮像して第2画像を得るのが好ましいことが理解できる。
【0042】
以上のように、本実施形態の石炭分析方法は、アナライザ及びポラライザを有する落射型偏光顕微鏡を用い、アナライザに対するポラライザの角度を0°とした水平ニコルの状態で石炭試料を撮像した第1画像と、アナライザに対するポラライザの角度を80°以上且つ90°以下とした状態で第1画像と同部位を撮像した第2画像と、を記憶部に記憶するステップ(ST1〜2)と、
第1画像および第2画像を論理和演算し、論理和演算で生成された画像をグレースケール化したモノクロ画像を生成するステップ(ST3,4)と、
モノクロ画像を構成する複数の画素のうち、予め定められた基準輝度値よりも明るい輝度の画素が高輝度成分に対応する画素であると識別するステップ(ST5〜8)と、
を含む。
【0043】
また、本実施形態の石炭分析装置1は、アナライザ及びポラライザを有する落射型偏光顕微鏡を用い、アナライザに対するポラライザの角度を0°とした水平ニコルの状態で石炭試料を撮像した第1画像と、アナライザに対するポラライザの角度を80°以上且つ90°以下とした状態で前記第1画像と同部位を撮像した第2画像と、を記憶する記憶部10と、
第1画像および第2画像を論理和演算し、論理和演算で新たな画像を生成する論理和演算部12と、
論理和演算部12で生成された画像をグレースケール化したモノクロ画像を生成するモノクロ画像生成部13と、
モノクロ画像生成部13で生成された前記モノクロ画像を構成する複数の画素のうち、予め定められた基準輝度値よりも明るい輝度の画素が高輝度成分に対応する画素であると識別する識別部14と、を備える。
【0044】
図2に例示するように、水平ニコルの状態で撮像した第1画像は、全体的に輝度の高く明るい画像であり、人の目で観察しやすい。しかし、輝度ヒストグラムが滑らかな分布となり、石炭成分の性質に応じた明暗がはっきりせず、輝度を指標としてイナーチニット組織などの高輝度成分であるかを自動で識別することができない。
図3に例示するように、アナライザに対するポラライザの角度を80°以上且つ90°以下とした状態で撮像した第2画像は、イナーチニット組織が光りやすく、その他の組織が暗くなるという石炭成分の性質に応じて明暗が顕著となる。しかし、画像全体が暗く、輝度ヒストグラムの分布幅が狭いので、輝度を指標としてイナーチニット組織などの高輝度成分であるかを自動で識別することができない。
これらに対し、上記本実施形態の方法及び装置によれば、2つの画像のうち輝度の高い部分を顕著にする論理和演算を第1画像と第2画像に施すことで、画像全体が明るく且つ石炭成分の性質に応じて明暗が顕著な画像を生成でき、当該画像から輝度値に応じて高輝度成分であるか否かを自動で判定することが可能となる。したがって、標準規格に基づく方法であって且つ自動で識別できるので、測定者による識別精度のバラツキを無くし且つ解析時間が短縮可能となる。
【0045】
本実施形態の方法及び装置では、第2画像は、アナライザに対するポラライザの角度を90°とした直交ニコルの状態で撮像された画像であるのが好ましい。アナライザに対するポラライザの角度が80°である場合に比べてノイズが少なく、高精度な識別が可能になる。
【0046】
本実施形態の方法は、モノクロ画像を構成する複数の画素のうち、高輝度成分に対応する画素にマーキングした画像に対応する画像を出力するステップ(ST9)を含む。
本実施形態の装置は、モノクロ画像を構成する複数の画素のうち、高輝度成分に対応する画素にマーキングした画像に対応する画像を出力するマーキング部15を備える。
この方法及び装置によれば、識別結果を人の目で分かりやすい画像として提供でき、利便性が向上する。
【0047】
本実施形態の方法は、高輝度成分に対応する画素が隣接することによって当該複数の画素で構成される一連の画素群を認識し、認識した一連の画素群に関するパラメータを算出して出力するステップ(ST10、11)を含む。
本実施形態の装置は、高輝度成分に対応する画素が隣接することによって当該複数の画素で構成される一連の画素群を認識する画像群認識部16と、画像群認識部16が認識した一連の画素群に関するパラメータを算出して出力する出力部17と、を有する。
この方法及び装置によれば、高輝度成分に対するパラメータを容易に知ることができるので、石炭分析の利便性を向上させることが可能となる。
【0048】
本実施形態のコンピュータプログラムは、上記方法を構成する各ステップをコンピュータに実行させるプログラムである。
【0049】
本実施形態の記憶媒体は、上記コンピュータプログラムを記憶したコンピュータに読取り可能な記憶媒体である。このプログラムを実行することによっても、上記方法の奏する作用効果を得ることが可能となる。言い換えると、上記装置は、上記方法を使用しているとも言える。
【0050】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0051】
例えば、
図1に示す各部10〜17は、所定プログラムをコンピュータのCPUで実行することで実現しているが、各部を専用メモリや専用回路で構成してもよい。
【0052】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。