(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、近年では、缶蓋を軽量化するために、缶蓋材を薄肉化することが検討されている。このため、特許文献1に記載の缶蓋のように、カール部の端縁の肉厚を薄くすることも限界があり、薄切屑の発生を抑えることが難しくなっている。また、缶蓋材を薄肉化するだけではなく、従来よりもカール部の最大外周位置から先端までの径方向長さ(カール幅)を小さくすることが検討されており、従来の製造方法や装置では、薄切屑の発生を防止することや、カール部を十分に巻き上げることが難しくなっている。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、缶蓋と缶胴の巻締め時に、薄切屑の発生を防止できるとともに、カール部の巻き上げ性を維持して良好な密封性を確保できる缶の巻締め方法、第1巻締めロール及び缶の巻締め装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従来よりもカール部のカール幅を小さくすると、カール部の端縁が第1巻締めロールの成形凹部に接触しやすくなり、先端が削り取られて薄切屑が生じ易くなる。このため、本発明者は、第1巻締めロールの成形凹部深さ(グルーブ深さ)を浅くして、巻締め開始時にカール部の端縁が成形凹部と接触することを回避することを検討したが、この場合には、カール部を十分に巻き上げることができないという別の問題が生じる結果となった。そこで、カール部の巻き上げ性を向上させるために、従来よりも成形凹部の幅(グルーブ幅)を小さくすることを検討した。しかし、成形凹部の幅を小さくしすぎると、フランジ部の先端が入り込みすぎることにより、カール部にダメージを与えて局所的な歪みを生じさせ、そのダメージ部分が起点となって二重巻締め部に亀裂を生ずるおそれがあることがわかった。
そこで、本発明者は、このような事情に鑑み、以下の解決方法とした。
【0010】
本発明は、径方向内側に巻き返されたカール部を備えた缶蓋を、缶胴の開口部に設けられたフランジ部に密着させて巻締める方法であって、前記缶蓋及び前記缶胴を前記缶胴の軸心方向に挟持するとともに前記軸心回りに回転させ、その径方向外方から、第1巻締めロールを摺接させて前記フランジ部と前記カール部とを巻き込んで巻き込み部を加工する巻き込み工程と、前記巻き込み工程によって加工された前記フランジ部及び前記カール部を第2巻締めロールを用いて径方向内方に向けて押圧して二重巻締め部を加工する潰し工程とを有し、前記第1巻締めロールは、その外周面に、前記第1巻締めロールの軸心方向上側に位置する上顎部と、該軸心方向下側に位置する下顎部と、前記上顎部と前記下顎部との間で前記巻き込み部の外周面を成形するための成形凹部とが周方向に沿って形成されており、前記巻き込み工程において、前記カール部と前記成形凹部との接触開始位置が、前記下顎部の最大外周位置から前記第1巻締めロールの軸心と平行に引いた垂線よりも該第1巻締めロールの径方向外側に設けられるとともに、前記第1巻締めロールの軸心に沿った断面における前記成形凹部の前記接触開始位置を有する円弧の線分中心における接線と、前記下顎部と前記成形凹部との接続点を通り前記第1巻締めロールの軸心と直交する線とがなす角度αが、15°以上30°以下の範囲内に設定されている。
【0011】
従来の第1巻締めロールでは、
図6に示すように、カール部14と成形凹部53との接触開始位置Sが、下顎部52の最大外周位置から第1巻締めロール50の軸心と平行に引いた垂線よりも径方向内側にあった。このため、カール部のカール幅が小さくなると、その分だけ成形凹部の深さが浅くなる。したがって、下顎部の最大外周位置よりも径方向内側で成形凹部とカール部とを接触させる従来の方法では、カール部を十分に巻き上げることが難しくなっていた。
この点、本発明の方法では、カール部の成形凹部との接触開始位置を、カール部の先端ではなく、カール部の中程の曲面とし、そのカール部と成形凹部の接触開始位置を下顎部の最大外周位置よりも径方向外側に配置することで、薄切屑の発生を防止できるとともに、カール部の巻き上げ性を維持して缶の良好な密封性を確保することができる。 また、接触開始位置を有する円弧の線分中心における接線と、下顎部と成形凹部との接続点と通る直交線とがなす角度αを15°以上30°以下として比較的緩やかな角度に形成することで、成形凹部とカール部との接触開始時において、カール部の中程の曲面を円滑に押し下げることができ、カール部とフランジ部とを十分に巻き込むことができる。したがって、カール部の巻き上げ性を維持でき、缶の良好な密封性を確保することができる。
【0012】
本発明の第1巻締めロールは、径方向内側に巻き返されたカール部を備えた缶蓋を、缶胴の開口部に設けられたフランジ部に密着させて巻締めて缶を成形する際に用いられるものであり、前記缶蓋は、前記カール部の前記缶蓋の軸心に平行な方向の距離であるカール高さCLが2.0mm以上2.4mm以下で、前記カール部の最大外周位置から先端までの径方向長さであるカール幅CDが0.7mm以上1.0mm以下に形成されるものであり、前記缶蓋及び前記缶胴に対して、径方向外方から摺接して前記フランジ部と前記カール部とを巻き込んで巻き込み部を加工する第1巻締めロールであって、外周面に、前記第1巻締めロールの軸心方向上側に位置する上顎部と、該軸心方向下側に位置する下顎部と、前記上顎部と前記下顎部との間で前記巻き込み部の外周面を成形するための成形凹部とが周方向に沿って形成され、前記成形凹部は、前記上顎部から前記下顎部にかけて複数の円弧面を連続的に繋げた形状とされるとともに、前記第1巻締めロールの軸心に沿った断面において、前記下顎部の最大外周位置から前記第1巻締めロールの軸心と平行に引いた垂線Zと前記成形凹部の下端点における接線を径方向外方に延長した仮想線Iとの交点P3から、前記垂線Zと前記成形凹部との交点P1までの軸心方向距離のグルーブ幅GLが1.84mm以上1.90mm以下に設けられ、前記垂線Zから前記成形凹部の最深位置までの径方向距離のグルーブ深さGDが1.02mm以上1.06mm以下に設けられており、前記交点P1から該交点P1を有する円弧の曲率中心までの線分をPCとしたときに、前記線分PCにおける前記第1巻締めロールの軸心と平行な高さ方向の距離SLが4.0mm以上5.0mm以下の範囲内に設定され、前記前記PCにおける前記第1巻締めロールの軸心と直交する方向の距離SWが1.5mm以上2.5mm以下の範囲内に設定されているとともに、前記成形凹部の前記交点P1を有する円弧の線分中心における接線と、前記下顎部と成形凹部との接続点を通り前記軸心と直交する線とがなす角度αが、15°以上30°以下の範囲内に設定されている。
【0013】
このように、グルーブ深さGDを浅く、かつグルーブ幅GLを小さく設定する対策がなされた第1巻締めロールにおいて、カール部のカール幅CDを小さくした缶蓋を巻締める際に、カール部の成形凹部との接触開始位置を、カール部の先端ではなく、カール部の中程の曲面とすることにより、カール部の先端で接触する場合と比較して、確実に摩擦抵抗を得ることができ、第1巻締めロールの回転を、早い段階で缶蓋及び缶胴に追従させることができる。そして、第1巻締めロールと缶蓋の回転速度が同一となった後にカール部の先端が接触したとしても、薄切屑が発生する危険性を大幅に低減することができる。
また、交点P1を有する円弧が、曲率半径が大きい円弧で形成されているので、カール部との接触面積を大きくすることができる。この接触位置を有する円弧の曲率半径が、カール部の曲率半径と同一か、又はそれ以上である場合に、特に効果的である。このため、第1巻締めロールの回転を、早い段階で缶蓋及び缶胴の回転に追従させることができるとともに、成形凹部とカール部との接触開始時において、カール部の中程の曲面を押し下げて、カール部とフランジ部とを円滑に巻き込むことができる。したがって、カール部の先端が成形凹部と接触する際の摩擦抵抗を軽減して薄切屑の発生を防止できるとともに、カール部の巻き上げ性を維持して缶の良好な密封性を確保することができる。 また、交点P1を有する円弧の線分中心における接線と、下顎部と成形凹部との接続点と通る直交線とがなす角度αを15°以上30°以下として比較的緩やかな角度に形成することで、成形凹部とカール部との接触開始時において、カール部の中程の曲面を円滑に押し下げることができ、カール部とフランジ部とを十分に巻き込むことができる。したがって、カール部の巻き上げ性を維持でき、缶の良好な密封性を確保することができる。
【0014】
本発明の缶の巻締め装置は、径方向内側に巻き返されたカール部を備えた缶蓋を、缶胴の開口部に設けられたフランジ部に密着させて巻締めて缶を成形する缶の巻締め装置であって、前記缶蓋は、前記カール部の前記缶蓋の軸心に平行な方向の距離であるカール高さCLが2.0mm以上2.4mm以下で、前記カール部の最大外周位置から先端までの径方向長さであるカール幅CDが0.7mm以上1.0mm以下に形成されるものであり、前記缶蓋に当接されるチャック部材と、前記缶胴を保持して軸心方向に上下動するリフターと、前記チャック部材及び前記リフターによって前記軸心方向に挟持され該軸心回りに回転する前記缶蓋及び前記缶胴に対して、径方向外方から摺接して前記フランジ部と前記カール部とを巻き込んで巻き込み部を加工する第1巻締めロールと、前記第1巻締めロールによって巻き込まれた前記フランジ部と前記カール部とをさらに径方向内方に向けて押圧して二重巻締め部を加工する第2巻締めロールとを備え、前記第1巻締めロールは、その軸心回りに回転自在に設けられるとともに、外周面に、前記第1巻締めロールの軸心方向上側に位置する上顎部と、該軸心方向下側に位置する下顎部と、前記上顎部と前記下顎部との間で前記巻き込み部の外周面を成形するための成形凹部とが周方向に沿って形成され、前記成形凹部は、前記上顎部から前記下顎部にかけて複数の円弧面を連続的に繋げた形状とされるとともに、前記第1巻締めロールの軸心に沿った断面において、前記下顎部の最大外周位置から前記第1巻締めロールの軸心と平行に引いた垂線Zと前記成形凹部の下端点における接線を径方向外方に延長した仮想線Iとの交点P3から、前記垂線Zと前記成形凹部との交点P1までの軸心方向距離のグルーブ幅GLが1.84mm以上1.90mm以下に設けられ、前記垂線Zから前記成形凹部の最深位置までの径方向距離のグルーブ深さGDが1.02mm以上1.06mm以下に設けられており、前記交点P1から該交点P1を有する円弧の曲率中心までの線分をPCとしたときに、前記線分PCにおける前記第1巻締めロールの軸心と平行な高さ方向の距離SLが4.0mm以上5.0mm以下の範囲内に設定され、前記前記PCにおける前記第1巻締めロールの軸心と直交する方向の距離SWが1.5mm以上2.5mm以下の範囲内に設定されているとともに、前記成形凹部の前記交点P1を有する円弧の線分中心における接線と、前記下顎部と成形凹部との接続点を通り前記軸心と直交する線とがなす角度αが、15°以上30°以下の範囲内に設定されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、カール部の成形凹部との接触開始位置を、カール部の先端ではなく、カール部の中程の曲面とし、そのカール部と成形凹部の接触開始位置を下顎部の最大外周位置よりも径方向外側に配置することで、薄切屑の発生を防止でき、カール部の巻き上げ性を維持して缶の良好な密封性を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図5に示す本実施形態の缶の巻締め装置100は、径方向内側に巻き返されたカール部14を備えた缶蓋10を、缶胴20の開口部に設けられたフランジ部23に密着させて巻締めることにより缶を成形する装置であり、
図3に示すように、缶胴20の開口端部に缶蓋10の周縁部が抱き合せられるように巻締められた二重巻締め構造を形成する。
【0018】
図5に、二重巻締めされる前の缶蓋10と缶胴20を示す。巻締め前の缶胴20は、アルミニウム合金製板材を広口のカップ状に打ち抜いた後、さらに絞りしごき加工(DI加工)することにより形成され、ストレートの有底円筒状の胴体部21と、胴体部21の上部を縮径して設けられるテーパ状の縮径部21aと、この縮径部21aの上端に設けられる首部22を介して、半径方向外方に広がるフランジ部23とが形成された形状である。なお、このフランジ部23の板厚は、0.16mm以上0.20mm以下とされる。
【0019】
一方、巻締め前の缶蓋10は、アルミニウム合金製板材をプレス成形することにより形成され、中心部に設けられる缶胴20の首部22より小径の円形のパネル部11と、このパネル部11の外縁に環状溝を形成するカウンターシンク部12を介して上方に延びて形成されるチャックウォール部13と、このチャックウォール部13の上端から半径方向外方に延びながら外周縁が内側にカールされたカール部14とが形成された形状である。なお、カール部14の板厚は、0.205mm以上0.225mm以下とされる。また、図示は省略するが、カール部14の内面にはコンパウンドが塗布されている。
【0020】
例えば本実施形態では、缶蓋10の公称径が204の缶蓋10を用いており、この缶蓋10は、
図1(a)に示すカール部14のカール高さCL(缶蓋10の軸心Xに平行な方向の距離)が2.0mm以上2.4mm以下、このカール部14の最大外周位置から先端までの径方向長さCD(換言すると、カール幅CD)が0.7mm以上1.0mm以下、板厚が0.205mm以上0.225mm以下に形成される。特に、缶蓋の軽量化を目的として二重巻締め部を小さく成形するために用いる缶蓋は、カール幅CDを0.7mm以上0.85mm以下と短く設けられることから、巻き上げ性が悪くなる。このため、この巻き上げ性を改善するために、後述する本発明の第1巻締めロール50が有効である。
【0021】
そして、この缶蓋10と缶胴20とを巻締めるための缶の巻締め装置100は、図示は省略するが、巻締め機本体のターレットに、
図5に示す巻締めユニット30が周方向に間隔を開けて複数組設けられた構成とされており、ターレットの旋回により、周方向に移動しつつ缶蓋10及び缶胴20を受け入れて、これらを挟持した状態で、缶胴20のフランジ部23と缶蓋10のカール部14とを巻締めるようになっている。
【0022】
巻締めユニット30は、缶蓋10に当接して缶胴20に被せた缶蓋10を上方から押さえるチャック部材41と、缶胴20を保持して上下移動するリフター45と、このチャック部材41とリフター45との間に挟持された状態で回転させられる缶蓋10及び缶胴20に径方向外方から摺接して巻締め加工を行う第1巻締めロール50及び第2巻締めロール60とを備える。
【0023】
リフター45は、缶胴1が載置されるリフタープレート46、及びこのリフタープレート46を上方に付勢するスプリング等を保持したホルダー部47が備えられており、巻締め機本体のターレットとともに旋回することにより、巻締め機本体に固定状態のリング状カム(図示略)に沿って移動しながら
図5に矢印Aで示すように上下移動し、矢印B1で示すように自身の軸心X回りに回転駆動させられる構成である。
【0024】
チャック部材41は、リフター45と同一の軸心X上に配置され、全体としてスリーブ状に形成される。また、チャック部材41の下部の外周面には、巻締め時に第1巻締めロール50及び第2巻締めロール60から加えられる半径方向内方に向けた押圧力を缶蓋10のチャックウォール部13の内側で支持するウォール面43が、チャック部材41の軸心Xに対して上方に向かうにしたがって漸次拡径する方向に傾斜して形成されており、そのウォール面43の下方に、缶蓋10のカウンターシンク部12に嵌合する環状突出部42が形成されている。なお、このチャック部材41は、その上部が巻締め機本体のターレットに回転自在に支持されているとともに、ターレットの旋回に伴い、巻締め機本体のラックにピニオンギヤが係合して矢印B2で示すように回転駆動されるようになっている。
なお、これらチャック部材41とリフター45とは、同期して軸心X回りに回転駆動される。
【0025】
第1巻締めロール50及び第2巻締めロール60は、外周面に成形凹部53,63が周方向に沿って形成され、チャック部材41に対して
図5の矢印E,Fで示すように半径方向に離間接近するとともに、自身の軸心Y1,Y2の回りに回転自在に支持されており、リフター45とチャック部材41との間に挟持されて回転している缶胴20のフランジ部23上の缶蓋10のカール部14に径方向外方から順番に接近して成形しながら巻締めるようになっている。
【0026】
そして、第1巻締めロール50は、チャック部材41とリフター45とによって挟持された缶蓋10及び缶胴20に対してその径方向外方から摺接することにより、缶蓋10のカール部14と缶胴20のフランジ部23とを径方向外方に巻き込んだ巻き込み部15(
図2参照)を加工するものである。
第1巻締めロール50は、概略円板状をなし、自身の軸心Y1回りに回転自在に支持されており、外周面に、軸心Y1方向上側に位置する上顎部51と、軸心Y1方向下側に位置する下顎部52と、これら上顎部51と下顎部52との間で巻き込み部15の外周面を成形するための成形凹部53とが、周方向に沿って形成されている。
【0027】
本実施形態の第1巻締めロール50においては、
図1及び
図4に示すように、上顎部51が第1巻締めロール50の径方向外方に大きく突出して設けられ、下顎部52が上顎部51よりも第1巻締めロール50の径方向内方に後退して設けられている。また、成形凹部53は、
図4に示すように、上顎部51から下顎部52にかけて3つの円弧面54〜56を連続的に繋げた形状とされており、軸心Y1に沿った断面において、上顎部51に隣接する最初の円弧面(半径R1の円弧面)を第1円弧面54、次の円弧面(半径R2の円弧面)を第2円弧面55、成形凹部53内の最も下方に位置する円弧面(半径R3の円弧面)を第3円弧面56としている。また、下顎部52は、第1巻締めロール50の径方向外方に突出する円弧面52aと、この円弧面52aと成形凹部53内の最も下方に位置する第3円弧面56との間を接続する直線部57とを繋げた形状とされている。また、この直線部57は、
図4に示すように、第1巻締めロール50の軸心Y1に沿った断面において、成形凹部53の第3円弧面56と下顎部52の円弧面52a上を結ぶ接線とされている。そして、直線部57は、軸心Y1と直交する直交線Hに対して角度βで傾斜して設けられており、成形凹部53の上縁部(上顎部51側)と下縁部(下顎部52側)とは、第1巻締めロール50の径方向外方に向かうにしたがって互いに離間するように構成されている。
なお、下顎部52の直線部57を設けることなく、第3円弧面56と下顎部52の円弧面52aとを直接接続することもできる。
【0028】
また、成形凹部53の表面は、缶蓋10及び缶胴20の回転力を第1巻締めロール50に確実に伝達できるように、ショットピーニング等の表面処理を施すことにより、その表面粗さが最大高さでRmax1.0以上、望ましくはRmax1.0以上3.0以下に設定されている。このように、ショットピーニング処理等により表面処理を行うことで、缶蓋10との接触時における成形凹部53の表面の摩擦力が増加し、表面処理を行わない場合よりも早く第1巻締めロール50の回転速度を缶蓋10の回転速度に同期させることができる。
なお、
図4に示す符号C2は第2円弧面55の曲率中心、符号C3は第3円弧面56の曲率中心である。
【0029】
また、この場合の成形凹部53のグルーブ幅GLは、直線部57の下端側を、下顎部52の最大外周位置から軸心Y1と平行に引いた垂線Zまで延ばした仮想線I(
図4に破線で示す。)を引き、この仮想線Iと垂線Zとの交点であるP3から、垂線Zと成形凹部53との交点であるP1までの軸心方向距離(軸心Y1に平行な方向の距離)とされる。また、グルーブ深さGDは、垂線Zから成形凹部53の最深位置までの径方向距離(垂線Zと直交する方向の距離)とされる。
【0030】
具体的には、上述したようにカール部14のカール高さCLが2.0mm以上2.4mm以下とされ、カール幅CDが0.7mm以上1.0mm以下(特に0.7mm以上0.85mm以下)とされる公称径が204の缶蓋10を巻締めるための第1巻締めロール50は、グルーブ幅GLが1.84mm以上1.90mm以下とされ、グルーブ深さGDが1.02mm以上1.06mm以下に設けられる。
また、垂線Zと成形凹部53との交点P1から交点P1を有する円弧の曲率中心までの線分、すなわち本実施形態では、交点P1から第1円弧面54の半径R1をなす円弧の曲率中心C1までの線分をPCとしたときに、線分PCにおける第1巻締めロール50の軸心Y1と平行な高さ方向の距離SL(軸心方向距離)が4.0mm以上5.0mm以下の範囲内に設定され、線分PCにおける第1巻締めロール50の軸心Y1と直交する方向の距離SW(径方向距離)が1.5mm以上2.5mm以下の範囲内に設定される。
そして、第1円弧面54の半径R1をなす円弧の線分中心Mにおける接線Tと、下顎部52と成形凹部53との接続点P2を通り第1巻締めロール50の軸心Y1と直交する直交線Hとがなす角度αが、15°以上30°以下の範囲内に設定されており、比較的緩やかな角度に形成される。
なお、本実施形態では、缶蓋10及び缶胴20の軸心Xと第1巻締めロール50の軸心Y1とが互いに平行に配設されている。
【0031】
そして、この第1巻締めロール50は、
図4に缶蓋10のカール部14を二点鎖線で示すように、巻締め時において第1巻締めロール50を摺接させる際に、成形凹部53と缶蓋10のカール部14との接触開始位置Sが、垂線Zよりも第1巻締めロール50の径方向外側に設けられている。この成形凹部53の接触開始位置Sを有する円弧は、本実施形態では第1円弧面54の半径R1をなす円弧であり、上述したように、この円弧の線分中心Mにおける接線Tと、下顎部52と成形凹部53との接続点P2を通り第1巻締めロール50の軸心Y1と直交する直交線Hとがなす角度αが、15°以上30°以下の範囲内に設定されている。
【0032】
第2巻締めロール60は、第1巻締めロール50によって径方向内方に巻き込むように加工された缶蓋10のカール部14と缶胴20のフランジ部23とを径方向内方へと押圧して潰し加工を行い、
図3に示す最終的な二重巻締め部16の外周面を形成するものである。
第2巻締めロール60は、
図5に示すように、概略円板状をなし、外周面に、上顎部61と下顎部62との間で二重巻締め部16を形成するための成形凹部63が周方向に沿う溝状に設けられており、缶蓋10及び缶胴20の軸心Xに平行な自身の軸心Y2を中心に回転自在な構成とされる。
【0033】
そして、このように構成された缶の巻締め装置100を用いた缶の製造方法について説明する。なお、この巻締め加工によって、缶蓋10及び缶胴20は部分的に変形するが、以下の説明では、缶蓋10及び缶胴20については、巻締め前、巻締め途中、巻締め後において同一符号を付している。
【0034】
まず、
図5に示すようにリフター45に載せた缶胴20のフランジ部23に、
図1(a)に示すように缶蓋10のカール部14を被せ、その上方からチャック部材41を缶蓋10に嵌合して、チャック部材41とリフター45との間で缶蓋10と缶胴20とを挟んで軸心X方向に挟持するとともに、軸心X回りに回転させる。そして、これらの径方向外方から、第1巻締めロール50を摺接させて、缶蓋10のカール部14と缶胴20のフランジ部23とを巻き込んで、巻き込み部15を加工する(巻き込み工程)。
【0035】
具体的には、缶蓋10及び缶胴20の径方向外方から第1巻締めロール50を
図1(a)の矢印で示すように接近させることにより、第1巻締めロール50の成形凹部53に缶蓋10のカール部14と缶胴20のフランジ部23とを挿入する。ここで、第1巻締めロール50の成形凹部53と缶蓋10のカール部14との接触開始位置Sは垂線Zよりも径方向外側にあり、カール部14の中程の曲面が成形凹部53と最初に摺接する。このため、カール部14の曲面が円滑に押し下げられ、成形凹部53に沿って案内される。したがって、
図1(b)に示す第1巻締めロール50が一回転した時点において、カール部14の先端を内側に向けて巻き込んだ状態にすることができる。さらに、成形凹部53に沿って缶蓋10のカール部14と缶胴20のフランジ部23とが内側に一体にカールされ、カール部14がフランジ部23の外方から鉤状に折り返しながら抱合せるようにして巻き込まれ、最終的には、
図2に示すように、巻き込み部15が形成される。
【0036】
次いで、第1巻締めロール50を巻き込み部15から径方向外方に離間させ、第1巻締めロール50による加工(巻き込み工程)が終了した後で、
図2の矢印で示すように、第2巻締めロール60を径方向外方側から巻き込み部15に接近させ、巻き込み部15をさらに径方向内方に向けて押し潰すように押圧して、
図3に示すように二重巻締め部16を加工する(潰し工程)。
このとき、缶蓋10のカウンターシンク部12にはチャック部材41の環状突出部42が嵌合しており、このチャック部材41の外周面のウォール面43が缶蓋10のチャックウォール部13を缶蓋10の径方向内側から支持し、このウォール面43と第2巻締めロール60との間に缶蓋10と缶胴20とが挟み込まれる。これにより、コンパウンド(図示略)を缶蓋10と缶胴20との間に圧縮状態に介在させた二重巻締め部16が形成され、缶蓋10が缶胴20のフランジ部23に装着される。
【0037】
このような構成とされた本実施形態の缶の巻締め装置100、第1巻締めロール50及び缶の巻締め方法では、カール幅CD(カール部14の最大外周位置から先端までの径方向長さ)を0.7mm以上1.0mm以下(特に0.7mm以上0.85mm以下)と小さくした缶蓋10において、第1巻締めロール50の成形凹部53の深さ(グルーブ深さGD)を浅くした場合であっても、カール部14の成形凹部53との接触開始位置Sを、カール部14の先端ではなく、カール部14の中程の曲面として、そのカール部14と成形凹部53の接触開始位置Sを下顎部52の最大外周位置よりも径方向外側に配置する。これにより、成形凹部53とカール部14との接触開始時において、カール部14の先端が成形凹部53と接触することがないので、薄切屑の発生を防止できるとともに、カール部14の巻き上げ性を維持して缶の良好な密封性を確保することができる。
【0038】
また、第1巻締めロール50の成形凹部53は、接触開始位置Sを有する円弧(第1円弧面54)と垂線Zとの交点P1から、その円弧の曲率中心C1までの線分をPCとしたときに、その線分PCにおける第1巻締めロール50の軸心Y1と平行な高さ方向の距離SLが4.0mm以上5.0mm以下の範囲内に設定され、軸心Y1と直交する方向の距離SWが1.5mm以上2.5mm以下の範囲内に設定され、接触開始位置Sを有する円弧が、曲率半径が大きい円弧で形成されている。このため、カール部14との接触面積を大きくすることができ、第1巻締めロール50の回転を、早い段階で缶蓋10及び缶胴20の回転に追従させることができるとともに、成形凹部53とカール部14との接触開始時において、カール部14の中程の曲面を押し下げて、カール部14とフランジ部23とを円滑に巻き込むことができる。したがって、カール部14の先端が成形凹部53と接触する際の摩擦抵抗を軽減して、薄切屑の発生を防止できるとともに、カール部14の巻き上げ性を維持して、缶の良好な密封性を確保することができる。
【0039】
また、第1巻締めロール50の軸心Y1に沿った断面において、接触開始位置Sを有する円弧(第1円弧面54)の線分中心Mにおける接線Tと、下顎部52と成形凹部53との接続点P2と通る直交線Hとがなす角度αを15°以上30°以下として比較的緩やかな角度に形成することにより、成形凹部53とカール部14との接触開始時において、カール部14の中程の曲面を円滑に押し下げることができ、カール部14とフランジ部23とを十分に巻き込むことができる。したがって、カール部14の巻き上げ性を良好に維持でき、缶の良好な密封性を確保することができる。
なお、角度αが15°未満では、フランジ部23の先端が入り込みすぎることにより、カール部14にダメージを与えて局所的な歪みを生じさせ、そのダメージ部分が起点となって二重巻締め部16に亀裂を生ずるおそれがある。一方、角度αが30°を超える場合では、カール部14の巻き上げ性が低下し、カール部14とフランジ部23とを十分に巻き込むことが難しくなる。
【実施例】
【0040】
次に、本発明の効果を確認するために行った比較実験の結果について説明する。なお、以下の説明でも、便宜のため、上記実施形態で使用した符号を付して説明する。
缶蓋10は、公称径が204のものであり、アルミニウム合金板を成形して、カール部14のカール高さCLが2.0mm以上2.4mm以下、カール幅CDが0.7mm以上1.0mm以下、板厚が0.205mm以上0.225mm以下に形成されたものを使用した。また、缶胴20には、アルミニウム合金板を成形し、フランジ部23の幅FWが2.0mm以上2.5mm以下、板厚が0.16mm以上0.20mm以下に形成されたものを使用した。
【0041】
そして、缶胴20にガスボリューム2.7の内溶液(水)を充填して缶蓋10を巻締め、飲料缶を作製した。その際、表1に示すように第1円弧面54の曲率中心C1から交点P1までの軸心方向距離SL及び径方向距離SWを変更した第1巻締めロール50と、表2に示すように成形凹部53のグルーブ幅GL及びグルーブ深さGDを変更した第1巻締めロール50と、表3に示すように角度αを変更した第1巻締めロール50とを用いて、形状の異なる第1巻締めロール50により巻締めた飲料缶を20缶ずつ作製した。
【0042】
また、缶蓋10のカール部14と第1巻締めロール50の成形凹部53との接触開始位置Sは、下顎部52の最大外周位置(垂線Z)よりも外側になるようにして缶蓋10の巻締めを行った。巻締め速度としては、2000缶/分に相当する速度とした。
表1に、第1円弧面54の曲率中心C1から交点P1までの軸心方向距離SL及び径方向距離SWを変更した第1巻締めロール50により巻締めた各飲料缶についての評価結果を示す。また、表2に、グルーブ幅GL及びグルーブ深さGDを変更した第1巻締めロール50により巻締めた各飲料缶についての評価結果を示す。表3に、角度αを変更した第1巻締めロール50により巻締めた各飲料缶についての評価結果を示す。
【0043】
表1では、この表1に示すように、第1円弧面54の曲率中心C1からP1点までの軸心方向距離SL及び径方向距離SWを変更した第1巻締めロール50を用いて巻締めた各飲料缶について観察を行い、(a)薄切屑、及び(b)リバースリンクルの有無を評価するとともに、(c)カバーフック寸法を測定した。また、表1では、角度αを19°、グルーブ幅GLを1.87mm、グルーブ深さGDを1.04mmにして各第1巻締めロール50を形成した。
表2では、この表2に示すように、グルーブ幅GL及びグルーブ深さGDを変更した第1巻締めロール50を用いて巻締めた各飲料缶について観察を行い、(a)薄切屑、(b)リバースリンクル、(d)カットシームの有無を評価するとともに、各飲料缶について落下試験を行い(e)落下漏れの評価を行った。また、表2では、角度αを19°、軸心方向距離SLを4.5mm、径方向距離SWを2.0mmに設定して各第1巻締めロール50を形成した。
表3では、この表3に示すように、角度αを変更した第1巻締めロール50を用いて巻締めた各飲料缶について観察を行い、(a)薄切屑、(b)リバースリンクル、(d)カットシームの有無を評価するとともに、各飲料缶について落下試験を行い(e)落下漏れの評価を行った。また、表3では、角度αを変更した各第1巻締めロール50は、それぞれグルーブ幅GLを1.87mm、グルーブ深さGDを1.04mm、軸心方向距離SLを4.5mm、径方向距離SWを2.0mmに設定した。
【0044】
薄切屑は、巻締め時に発生する糸状のアルミニウム片のことであり、この薄切屑の評価については、第1巻締めロール50がその軸心Y1回りに回転しないように固定した状態とし、この最も薄切屑が発生しやすい状態で缶蓋10の巻締めを行うことにより、過酷試験を実施した。この場合、第1巻締めロール50は、巻締め開始時だけでなく、巻締め開始後においても回転することがないので、巻締め時にカール部14の先端が成形凹部53と接触することで、常に薄切屑が発生しやすい条件となっている。そして、この過酷試験において、薄切屑が発生した缶数を表1又は表2に記載するとともに、20缶中1缶でも薄切屑が発生した条件を不合格「×」とし、薄切屑が発生しなかった条件(缶数0)を合格「○」とした。
【0045】
また、リバースリンクルは、缶胴20を突き破って孔あきを生じたもの、又はその可能性が高い突起状のシワが生じているものである。このリバースリンクルの評価については、巻き込み部15の半径方向の厚みが通常よりも小さくなるように、第1巻締めロール50の半径方向への移動量(押込み量)を大きく設定し、リバースリンクルが発生しやすい状態で缶蓋10の巻締めをすることにより、過酷試験を実施した。この過酷試験において、リバースリンクルが発生した缶数を表1又は表2に記載するとともに、20缶中1缶でもリバースリンクルが発生した条件を不合格「×」とし、リバースリンクルが発生しなかった条件(缶数0)を合格「○」とした。
【0046】
カットシームは、缶軸(軸心X)方向において、二重巻締め部16の中央部より下側の外周部に周方向に生じた亀裂のことである。このカットシームの評価についても、巻き込み部15の半径方向の厚みが通常よりも小さくなるように、第1巻締めロール50の半径方向への移動量(押込み量)を大きく設定し、カットシームが発生しやすい状態で缶蓋10の巻締めをすることにより、過酷試験を実施した。この過酷試験において、カットシームが発生した缶数を表1に記載するとともに、20缶中1缶でもカットシームが発生した条件を不合格「×」とし、カットシームが発生しなかった条件(缶数0)を合格「○」とした。
【0047】
そして、落下漏れの評価は、上述したように、ガスボリューム2.7で内圧をかけた状態で巻締めた飲料缶を、缶蓋10を下に向けた倒立姿勢で、80cmの高さから鉄板の上に落下させる過酷試験を実施し、内容物の漏れの有無を確認することにより行った。内容物の漏れが発生した缶数を表1に記載するとともに、20缶中1缶でも漏れが発生した条件を不合格「×」とし、漏れが発生しなかった条件(缶数0)を合格「○」とした。
【0048】
カバーフックは、二重巻締め部16内の缶蓋10のカール部先端の曲がり込みの長さ(
図3に示す長さCH)のことである。このカバーフックの評価については、リフター45とチャック部材41とで缶軸方向に挟み込む軸力を、通常よりも高く設定して、カバーフックの寸法が長くなりやすい状態で缶蓋10の巻締めをすることにより、過酷試験を実施した。このカバーフックの寸法が、1.50mm以上2.00mm以下の範囲内であるかを評価した。カバーフックの評価は、カバーフック寸法が、1.50mm未満又は2.00mmを超えて上記範囲外となった飲料缶の缶数を表2に記載するとともに、20缶中1缶でもカバーフック寸法が範囲外となった条件を不合格「×」とし、20缶全てのカバーフック寸法が範囲内となった条件を合格「○」とした。
【0049】
このように、上記の(a)薄切屑、(b)リバースリンクル、(c)カバーフック寸法、(d)カットシーム、(e)落下漏れの各評価は、製品として問題なく使用できる基準よりも過酷な条件のもとで、試験を行った。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
表1の評価結果から明らかなように、製品基準よりも過酷な条件のもとで行った試験においても、軸心方向距離SLが4.0mm以上5.0mm以下の範囲内に設定され、径方向距離SWが1.5mm以上2.5mm以下の範囲内に設定された第1巻締めロール50で巻締めを行った飲料缶については、薄切屑は発生しなかった。また、リバースリンクルを発生させることなく、カバーフック寸法を規定範囲内で成形でき、缶の良好な密封性を確保できることが確認できた。
【0054】
また、表2の評価結果からわかるように、グルーブ幅GLを1.84mm以上1.90mm以下、グルーブ深さGDを1.02mm以上1.06mm以下とした第1巻締めロール50で巻締めを行った飲料缶については、薄切屑は発生しなかった。また、リバースリンクル及びカットシームを発生させることなく、落下試験での漏れも発生せず、缶の良好な密封性を確保できることが確認できた。
この場合、グルーブ幅GLが小さいと(表2では1.81mmの場合)、缶胴20のボディフック部が入り込み過ぎて、カットシームが生じ易くなっており、逆にグルーブ幅GLが大きいと(表2では1.93mmの場合)、巻き上げ性が悪くなりリバースリンクルが生じたり、カバーフック寸法を規定範囲内で成形できなかったりと巻き上げ不良を引き起こしやすくなった。また、グルーブ深さGDが浅い場合にも(表2では、1.00mmの場合)、巻き上げ性が悪くなり巻き上げ不良を引き起こしやすくなり、グルーブ深さGDが深い場合には(表2では、1.08mmの場合)、薄切屑が発生しやすい傾向が見られた。
【0055】
そして、表3の評価結果においても、カール部14との接触開始位置Sを有する円弧(第1円弧面54)の線分中心Mにおける接線Tと、下顎部52と成形凹部53との接続点P2を通り、第1巻締めロール50の軸心Y1に対する直交線Hとがなす角度αを15°以上30°以下とした第1巻締めロール50により巻締めを行った飲料缶については、薄切屑は発生しなかった。また、リバースリンクル及びカットシームを発生させることなく、落下試験での漏れも発生せず、缶の良好な密封性を確保できることが確認できた。
また、角度αが小さくなると(表3では、10°の場合)、巻き上げ性が低下する傾向があり、角度αが大きくなると(表3では、35°の場合)、薄切屑が発生しやすい傾向が見られた。
【0056】
また、上記の(a)薄切屑、(b)リバースリンクル、(c)カバーフック寸法、(d)カットシーム、(e)落下漏れの各評価は、製品として問題なく使用できる基準よりも過酷な条件のもとで行った結果であり、このように過酷な条件により評価をした場合であっても、軸心方向距離SLを4.0mm以上5.0mm以下、径方向距離SWを1.5mm以上2.5mm以下の範囲内に設定すること、成形凹部53のグルーブ幅GLを1.84mm以上1.90mm以下、グルーブ深さGDを1.02mm以上1.06mm以下に設定すること、また、この条件に加えて角度αを15°以上30°以下に設定することで、確実に薄切屑の発生を防止できるとともに、カール部14の巻き上げ性を維持して良好な密封性を確保できることが確認できた。なお、これらの範囲を外れて設定された巻締めロール50により巻締めを行った飲料缶であっても、製品としては、実使用に問題があるものではない。
【0057】
なお、本発明は、前記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。