特許第6342330号(P6342330)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6342330
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】フィルム及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/16 20060101AFI20180604BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20180604BHJP
   A61L 27/34 20060101ALI20180604BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20180604BHJP
   A61L 27/56 20060101ALI20180604BHJP
   A61L 31/04 20060101ALI20180604BHJP
   A61L 31/06 20060101ALI20180604BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20180604BHJP
   A61L 31/16 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   A61L27/16
   A61L27/18
   A61L27/34
   A61L27/54
   A61L27/56
   A61L31/04 110
   A61L31/06
   A61L31/14 400
   A61L31/16
【請求項の数】32
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-550441(P2014-550441)
(86)(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公表番号】特表2015-503403(P2015-503403A)
(43)【公表日】2015年2月2日
(86)【国際出願番号】US2012071708
(87)【国際公開番号】WO2013101867
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2015年12月25日
(31)【優先権主張番号】61/580,679
(32)【優先日】2011年12月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513164565
【氏名又は名称】シンセス・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Synthes GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アームブラスター・デビッド
(72)【発明者】
【氏名】ドワイヤー・ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】チョミン・ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】カー・ショーン
【審査官】 菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0038299(US,A1)
【文献】 特表2009−511196(JP,A)
【文献】 特開2002−058741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/16
A61L 27/18
A61L 27/34
A61L 27/54
A61L 27/56
A61L 31/04
A61L 31/06
A61L 31/14
A61L 31/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1表面及び相対する第2表面を有する植え込み用の可撓性ポリマーフィルムであって、前記可撓性ポリマーフィルムは、前記第1表面から前記第2表面まで延在する複数の開口部と、前記第1表面から突出する複数の隆起縁とを有し、これにより、前記複数の開口部それぞれが、前記複数の隆起縁の1つによって取り囲まれ、
前記可撓性ポリマーフィルムが生体再吸収性ポリマーを含み、
前記可撓性ポリマーフィルムが、20マイクロメートル未満の直径を有する複数の別個の溶出薬剤構成要素を含む、可撓性ポリマーフィルム。
【請求項2】
前記生体再吸収性ポリマーが、L−乳酸、D−乳酸、L−ラクチド、D−ラクチド、D,L−ラクチド、グリコリド、ラクトン、ラクタム、炭酸トリメチレン、環状炭酸エステル、環状エーテル、パラジオキサノン、β−ヒドロキシ酪酸、β−ヒドロキシプロピオン酸、β−ヒドロキシ吉草酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される反復単位を含む、請求項に記載の可撓性ポリマーフィルム。
【請求項3】
前記生体再吸収性ポリマーが、L−乳酸、D−乳酸、L−ラクチド、D−ラクチド、D,L−ラクチド、ε−カプロラクトン、炭酸トリメチレン、パラジオキサノン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される反復単位を含む、請求項に記載の可撓性ポリマーフィルム。
【請求項4】
前記生体再吸収性ポリマーが、グリコリド、炭酸トリメチレン、ラクチド及びカプロラクトンのコポリマーである、請求項に記載の可撓性ポリマーフィルム。
【請求項5】
前記第1表面が、前記複数の隆起縁の間に延在する連続的平面部分を含む、請求項1に記載の可撓性ポリマーフィルム。
【請求項6】
前記複数の隆起縁それぞれが、前記連続的平面部分から約0.1mm〜約1.0mm上に隆起している外側エッジを有する、請求項に記載の可撓性ポリマーフィルム。
【請求項7】
記可撓性ポリマーフィルムは、その植え込み後、異なる期間で、前記複数の別個の薬剤構成要素を溶出させるよう構成される、請求項1に記載の可撓性ポリマーフィルム。
【請求項8】
前記可撓性ポリマーフィルムをシースに形成するよう構成された少なくとも1つのシームを更に含む、請求項1に記載の可撓性ポリマーフィルム。
【請求項9】
前記可撓性ポリマーフィルムが、第1平面方向における第1引張強度、及び、前記第1平面方向に対して垂直である第2平面方向における第2引張強度を有し、前記第1引張強度は実質的に前記第2引張強度に等しい、請求項1に記載の可撓性ポリマーフィルム。
【請求項10】
前記可撓性ポリマーフィルムが、0.06mm以下の公称厚さを有する、請求項1に記載の可撓性ポリマーフィルム。
【請求項11】
前記第1表面が、前記第2表面の第2触感とは異なる第1触感を有する、請求項1に記載の可撓性ポリマーフィルム。
【請求項12】
植え込み用のポリマーフィルムを製造する方法であって、
溶媒、ポリマー及び薬剤を含むポリマー溶液を作成し、
前記ポリマー溶液を、成形型の底面から延出する複数の突出物を有する片側成形型に入れる工程であって、前記ポリマー溶液は、前記成形型全体に前記ポリマーが自然に流れるのを阻害する粘度によって特徴付けられる、工程と、
前記複数の突出物それぞれの周囲に前記ポリマー溶液を寄せて、前記複数の突出物それぞれの周囲にポリマー溶液のメニスカスを形成する工程と、
前記ポリマー溶液を固化させて前記ポリマーフィルムを形成し、前記ポリマー溶液のメニスカスを固化することにより隆起縁が前記複数の突出物それぞれの周囲に形成される工程と、を含む、方法。
【請求項13】
前記成形型が、前記複数の突出物それぞれの高さに実質的に等しい高さまで延出する周縁形状を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記寄せる工程が、前記周縁形状及び前記複数の突出物の上にわたって寄せ手段を引っ張ることにより、前記ポリマー溶液が前記複数の突出物の周囲及び前記成形型全体に流れ込むようにし、これにより前記ポリマー溶液が実質的に均一な厚さを有するようにする工程を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記突出物それぞれ、前記引っ張ることの後、その頂点実質的にポリマー溶液が存在しない外側表面を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記入れる工程が、前記ポリマー溶液の一部が前記周縁形状及び前記突出物の高さより上になるように、前記ポリマー溶液を前記成形型に吐出する工程を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリマー溶液が、90℃未満の温度で形成される、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記薬剤が、別個の薬剤単位を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリマー溶液を固化する工程が、前記ポリマー溶液の厚さを減少させる工程を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記成形型の底面から前記複数の突出物それぞれの頂点までの距離が、約0.3mm未満である、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記周縁形状が、成形型全領域を画定し、前記複数の突出物が、前記成形型全領域の少なくとも約15%の領域を画定する、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記成形型から前記形成されたポリマーフィルムを剥がす工程を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項23】
前記ポリマー溶液が、架橋可能プレポリマー溶液を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項24】
前記固化する工程が、紫外線照射、温度変化、重合触媒、可溶性架橋剤、又はこれらの組み合わせを前記ポリマー溶液に適用することによって、前記ポリマーを架橋させる工程を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項25】
前記ポリマー溶液が第1溶媒及びポリマーを含み、前記固化する工程が、前記第1溶媒が可溶であり、かつ前記ポリマー及び薬剤が可溶でない第2溶媒に、前記ポリマー溶液を曝し、それにより前記第1溶媒が前記ポリマー溶液から少なくとも実質的に除去され、前記ポリマーが前記薬剤を含んで固化するようにする工程を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項26】
前記複数の別個の溶出薬剤構成要素が、前記フィルムの表面と接触している第1の量の薬剤構成要素と前記フィルムの表面と接触していない第2の量の薬剤構成要素とを含む、請求項1に記載の可撓性ポリマーフィルム。
【請求項27】
前記複数の別個の溶出薬剤構成要素が、10マイクロメートル未満の直径を有する、請求項1に記載の可撓性ポリマーフィルム。
【請求項28】
前記複数の別個の溶出薬剤構成要素が、植え込みの際バースト放出を含む2段階放出プロセスで溶出されるように構成されている、請求項1に記載の可撓性ポリマーフィルム。
【請求項29】
前記バースト放出が、前記複数の別個の溶出薬剤構成要素の薬剤合計量の約20〜35%を含む、請求項28に記載の可撓性ポリマーフィルム。
【請求項30】
前記開口部が、約0.10〜約0.20の多孔率の前記可撓性ポリマーフィルムを与える、請求項1に記載の可撓性ポリマーフィルム。
【請求項31】
前記開口部が、約0.75mmの直径を有する、請求項1に記載の可撓性ポリマーフィルム。
【請求項32】
前記開口部が、約1.75mmの間隔で配置されている、請求項1に記載の可撓性ポリマーフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許仮出願第61/580,679号(2011年12月28日出願)「Films and Methods of Manufacture」の利益を主張するものであり、仮出願の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は一般に、フィルム(例えばポリマーフィルム)及び製造方法に関し、少なくともいくつかの実施形態では、医療用途用の有孔フィルム及び製造方法に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一実施形態では、第1表面及び相対する第2表面を有するフィルム(例えばポリマーフィルム)を含む可撓体が存在し、このフィルムは、第1表面から第2表面まで延在する複数の開口部と、第1表面から延出する複数の隆起縁とを有し、これにより、複数の開口部それぞれが、複数の隆起縁の1つによって取り囲まれる。好ましい一実施形態では、このフィルムはポリマー材料からなる(すなわちポリマーフィルムである)。一実施形態では、このポリマーフィルムは生体再吸収性ポリマーを含む。一実施形態では、この生体再吸収性ポリマーは、L−乳酸、D−乳酸、L−ラクチド、D−ラクチド、D,L−ラクチド、グリコリド、ラクトン、ラクタム、炭酸トリメチレン、環状炭酸エステル、環状エーテル、パラジオキサノン、β−ヒドロキシ酪酸、β−ヒドロキシプロピオン酸、β−ヒドロキシ吉草酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される反復単位を含む。一実施形態では、生体再吸収性ポリマーは、L−乳酸、D−乳酸、L−ラクチド、D−ラクチド、D,L−ラクチド、ε−カプロラクトン、炭酸トリメチレン、パラジオキサノン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される反復単位を含む。一実施形態では、この生体再吸収性ポリマーは、グリコリド、炭酸トリメチレン、ラクチド及びカプロラクトンのコポリマーである。
【0004】
一実施形態では、第1表面は、複数の延出した隆起縁の間に延在する連続的平面部分を含む。一実施形態では、この複数の延出した隆起縁はそれぞれ、連続的平面部分から約0.1mm〜約1.0mm上に隆起している外側エッジを有する。一実施形態では、このポリマーフィルムは、複数の別個の溶出薬剤構成要素を含み、このポリマーフィルムは、可撓体の植え込み後、異なる期間で、複数の別個の薬剤構成要素を溶出させるよう構成される。更なる一実施形態では、この可撓体は、ポリマーフィルムをシースに形成するよう構成された少なくとも1つのシームを含む。一実施形態では、このポリマーフィルムは、第1平面方向において第1引張強度、及び、この第1平面方向に対して垂直である第2平面方向において第2引張強度を有し、ここにおいて第1引張強度は第2引張強度と実質的に等しい。一実施形態では、このポリマーフィルムは0.06mm以下の公称厚さを有する。一実施形態では、この第1表面は、第2表面の第2触感とは異なる第1触感を有する。
【0005】
別の一実施形態では、ポリマーフィルムを製造する方法が存在し、この方法は、ポリマー溶液を成形型の底面から延出する複数の突出物を有する片側成形型に入れ、このポリマー溶液が成形型全体にポリマーが自然に流れるのを阻害する粘度によって特徴付けられる工程と、複数の突出物それぞれの周囲にポリマー溶液を寄せる(urging)工程と、このポリマー溶液を固化する工程とを含む。一実施形態では、この成形型は、複数の突出物それぞれの高さに実質的に等しい高さまで延出する周縁形状を含む。一実施形態では、この寄せる工程は、例えばブレード、バー、スキージ、又はローラーなどの寄せ手段を、周縁形状及び複数の突出物の上にわたって引っ張ることにより、ポリマー溶液が複数の突出物の周囲及び成形型全体に流れ込むようにし、これによりポリマー溶液が実質的に均一な厚さになるようにする工程を含む。一実施形態では、各突出物の表面には、この引っ張ることの後、実質的にポリマー溶液が存在しない。一実施形態では、この入れる工程には、ポリマー溶液の一部が周縁形状及び突出物の高さより上になるように、ポリマー溶液を成形型に吐出する工程が含まれる。
【0006】
一実施形態では、このポリマー溶液を固化する工程には、ポリマー溶液の厚さを減少させる工程が含まれる。一実施形態では、このポリマー溶液を固化する工程には、複数の突出物それぞれの周囲に、固化したポリマーのメニスカスを形成する工程が含まれる。一実施形態では、成形型の底面から複数の突出物それぞれの頂点までの距離は、約0.3mm未満である。一実施形態では、このポリマー溶液は薬剤を含む。一実施形態では、このポリマー溶液は、溶媒、ポリマー、及び薬剤を90℃未満の温度で組み合わせることによって形成される。一実施形態では、この周縁形状は、成形型の全領域を画定し、複数の突出物は、この成形型全領域の少なくとも約15%の領域を画定する。更なる一実施形態では、この方法は、成形型から薬剤溶出フィルムを剥がす工程を含む。
【0007】
一実施形態では、このポリマー溶液は、架橋可能プレポリマー溶液を含む。一実施形態では、この固化する工程は、紫外線照射、温度変化、重合触媒、可溶性架橋剤、又はこれらの組み合わせをポリマー溶液に適用することによって、ポリマーを架橋させる工程を含む。一実施形態では、このポリマー溶液には別個の薬剤単位が含まれる。一実施形態では、このポリマー溶液は第1溶媒及びポリマーを含み、この固化する工程には、第1溶媒が可溶であるがポリマー及び薬剤は可溶でない第2溶媒にこのポリマー溶液を曝し、それにより第1溶媒がポリマー溶液から少なくとも実質的に除去され、このポリマーが薬剤を含んで固化する工程が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
前述の「課題を解決するための手段」、並びに、ポリマーフィルム及び製造方法の実施形態の以下の詳述は、例示的な実施形態の添付図面と共に読むとよりよく理解されるであろう。ただし、本発明は、図示された精密な配置及び手段に限定されるものでないことは理解されるべきである。
【0009】
図面は以下の通りである。
図1A】本発明の代表的な一実施形態によるフィルム(この場合はポリマーフィルム)の一部分の拡大概略斜視図である。
図1B】本発明の代表的な一実施形態によるポリマーフィルムの開口部の60倍拡大写真である。
図2】それぞれ植え込み可能な医療用装置と組み合わせた、図1Bのポリマーフィルムから形成された3本の代表的なシースの平面図である。
図3A】本発明の代表的な一実施形態による成形型の一部分の斜視写真である。
図3B図3Aの成形型の上平面図である。
図3C図3Bの線C−Cでの、図3B成形型の断側面図である。
図3D図3Bに示されている成形型の角部分拡大図である。
図3E】線B−Bに沿った、図3Dに示されている成形型の拡大断面図である。
図3F図3Aの成形型の拡大斜視写真である。
図3G】本発明の別の代表的な一実施形態による成形型の拡大斜視写真である。
図4A図3Aの成形型にポリマーを加えた概略側断面図である。
図4B】成形型にわたってポリマーを引っ張る引張装置を示した、図4Aに示されている成形型の概略側断面図である。
図4C図4Aに示されている成形型の概略側断面図であり、成形型にわたって引っ張られ、固化してポリマーフィルムを形成した後のポリマーを示す。
図5】本発明の代表的な一実施形態による自動注型成形装置の斜視図である。
図6図5の自動注型成形装置の斜視図であり、ポリマーが成形型に添加される状態を示す。
図7図5の自動注型成形装置の斜視図であり、成形型にわたってポリマーを引っ張る引張装置を示す。
図8】本発明の別の代表的な一実施形態による成形型に添加されるポリマーの斜視図である。
図9図8の成形型の斜視図であり、成形型にわたってポリマーを引っ張る引張装置を示す。
図10図8の成形型の斜視図であり、成形型から除去されているポリマーフィルムを示す。
図11A】第1構成で示される、図1のポリマーフィルムを用いて形成されたシースの上平面図である。
図11B】第2構成で示される、図1のポリマーフィルムを用いて形成されたシースの上平面図である。
図11C】第3構成で示される、図1のポリマーフィルムを用いて形成されたシースの上平面図である。
図11D】第4構成で示される、図1のポリマーフィルムを用いて形成されたシースの上平面図である。
図11E図11Dにおける円B内の領域を示す。
図11F図11A〜11Dに示すもののようなシースのシームの拡大図である。
図12】本発明の代表的な一実施形態によるポリマーフィルムの降伏応力グラフである。
図13】本発明の代表的な一実施形態によるポリマーフィルムの降伏ひずみグラフである。
図14】本発明の代表的な一実施形態によるスリーブが生理食塩水溶液中に置かれたときの、経時的な薬剤放出速度を示すグラフである。
図15】本発明の代表的な一実施形態によるポリマーフィルムのインビトロ質量損失グラフである。
図16】本発明の代表的な一実施形態によるポリマーフィルムのインビトロ分子量損失グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
感染は、整形外科又は外傷外科において大きな課題である。無菌法及び消毒などの予防的対処を行っても、手術部位は依然として、局所的病原体が到達する部位であり、有毒性をもち、感染を起こす。
【0011】
植え込み可能な装置を抗生物質などの薬剤でコーティングすることは、これまで感染を低減するのに有効であった。しかしながら、インプラント及びその他の医療用装置の数が多く、寸法が大きく、形状が多様な場合、各装置をコーティングする場合の規制面、財務面、及びロジスティクス面の負担は膨大になる。鎮痛剤、抗新生物性薬、及び成長促進物質などの追加薬剤をコーティングに使用することを検討する場合は、この問題は更に増幅される。
【0012】
本発明の実施形態は、改善された有孔ポリマーフィルム及びその製造の新しい注型成形方法を目的とする。このフィルムは任意の用途に使用可能であるが、いくつかの実施形態では、植え込み可能な医療用装置と共に使用される。
【0013】
現在存在する有孔フィルムを形成する商業的方法は、一般に、第1工程として固体のフィルムを形成し、次いで第2工程としてフィルムに孔をパンチ又は切断することを伴う。本明細書に記述される少なくともいくつかの実施形態の一利点は、フィルムの穴又は開孔が、フィルムの形成と同時に形成されることである。これは、ポリマーフィルムが非常に薄くて、後続の取扱い又はプロセスによる損傷のリスクがある場合、あるいは、そのフィルムの厚さ及び/又は強度から、フィルムを損傷せずに従来の方法でパンチ又は切断することが困難となっている場合、有用であり得る。そのようなプロセスは、ポリマー溶液が後続の切断又はパンチ工程により損傷し得る薬剤又はその他の活性物質を含んでいる場合にも、有利であり得る。
【0014】
本発明の実施形態は、例えば、大量生産用に設計された典型的な連続プロセスである従来方法では少なすぎて経済的ではないと考えられるような量の注型成形フィルムを製造するのに有用であり得る。本発明の少なくともいくつかの実施形態の更なる利点は、注型成形シートに形成される孔が複雑な形状を有し得ることである。本発明の少なくともいくつかの実施形態の更なる利点は、フィルムの少なくとも片側が、非平面を有するよう形成できることであり、これはいくつかの実施形態では、摩擦を増大させ、改善された触感を提供する。本発明のこれらの利点は、他のものと共に、下記に詳しく記述される。
【0015】
図を詳細に参照すると、同様の参照番号は全体にわたって同様の構成要素を示しており、図1A及び1Bには、本発明の代表的な実施形態による、全般に10として指定されているポリマーフィルムと、全般に18として指定されている成形型とが示されている。
【0016】
図1Aの実施形態を参照すると、フィルム10(例えばポリマーフィルム)は、第1表面10a及び相対する第2表面10bを有する可撓体である。
【0017】
一実施形態では、フィルム10は生物学的適合性材料の薄い単シートから形成され得る。一実施形態では、フィルム10は2枚以上のシート材料からなる。好ましい一実施形態では、生物学的適合性材料は生体再吸収性である。医療用装置12(図2参照)と共に使用される実施形態では、フィルム10は、いくつかの実施形態では、生体内に植え込みされたときに経時的に溶解し、患者内に吸収され、医療用装置12のみが後に残る(例えば、医療用装置12は生体再吸収性材料で製造されていない場合)。医療用装置12は、更に、医療用装置12とフィルム10の両方が最終的に溶解する他の実施形態では、生体再吸収性材料で製造され得る。いくつかの実施形態では、フィルム10は、吸収性医療用装置12とは異なる速度(例えばより速い又はより遅い速度)で吸収されるよう構成され得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、生体再吸収性フィルム10は、非再吸収性メッシュに比べて利点を有する。例えば、非再吸収性メッシュは、密な線維性組織内に封入又は埋め込まれる可能性があり、あるいは長期的な異物曝露に伴うその他の問題を呈し得る。いくつかの実施形態では、フィルム10は部分的にのみ生体再吸収性である。
【0019】
生体再吸収性ポリマーは、例えば抗生物質などの薬剤の、明確なエンドポイントを備えた制御放出を提供するために使用することができる。抗生物質の連続的な長期にわたる存在は、抗生物質耐性細菌を発生させる条件を形成する可能性があるため、しばしば好ましくない。一実施形態では、フィルム10の完全な分解により、所定及び/又は選択可能な時間内で、薬剤が完全に放出されるようになる。一実施形態では、この薬剤放出は、フィルム10が完全に吸収されていない場合であっても、完全に放出、又は実質的に完全に放出され得る。
【0020】
フィルム10の吸収は、連続的放出段階における抗生物質の放出に影響を与え及び/又はこれを制御することができる。フィルムが分解すると、例えば、フィルムの浸透性が増大する可能性があり、より多くの薬剤が放出され得る。いくつかの実施形態では、使用されるポリマーは、可撓性である構造に適し、比較的高い引張り強度を有し、かつ溶液注型成形により処理され得るものでなければならない。一実施形態では、フィルム10は、グリコリド、ラクチド、カプロラクトン、及び炭酸トリメチレンの4種類のモノマーのうち1つ以上を含むコポリマーからなる。グリコリドが含まれ得、これは、フィルム10の分解を促進する効果を有し得る。ラクチドも含まれ得、これは、フィルム10の機械的強度増大の効果を有し得る。カプロラクトン及び炭酸トリメチレンを使用することができ、これは、フィルム10の可撓性増大の効果を有し得る。
【0021】
一実施形態では、生体再吸収性ポリマーには、PLA、PGA、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、TMC及びこれらのコポリマーのうち1つ以上が含まれる。一実施形態では、生体再吸収性ポリマーはグリコール酸、カプロラクトン、乳酸、及び炭酸トリメチレンのコポリマーから製造される。一実施形態では、生体再吸収性ポリマーは、約60%のグリコール酸、約20%のカプロラクトン、約10%の乳酸、及び約10%の炭酸トリメチレンのコポリマーから製造される。一実施形態では、生体再吸収性ポリマーは、L−乳酸、D−乳酸、L−ラクチド、D−ラクチド、D,L−ラクチド、グリコリド、ラクトン、ラクタム、炭酸トリメチレン、環状炭酸エステル、環状エーテル、パラジオキサノン、β−ヒドロキシ酪酸、β−ヒドロキシプロピオン酸、β−ヒドロキシ吉草酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される反復単位を含む。一実施形態では、生体再吸収性ポリマーは、L−乳酸、D−乳酸、L−ラクチド;D−ラクチド、D,L−ラクチド、ε−カプロラクトン、炭酸トリメチレン、パラジオキサノン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される反復単位を含む。一実施形態では、生体再吸収性ポリマーは、グリコリド、炭酸トリメチレン、ラクチド及びカプロラクトンのコポリマーである。フィルム10は、例えばアルギン酸塩、キトサン、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸塩、ゼイン及びその他などの天然バイオポリマーも含み得るか、又はこれらを代替的に含み得る。
【0022】
なおも図1Aを参照すると、フィルム10は、任意の好ましい寸法を有するよう構成することができ、これには、隆起縁14a(図1A及び図1Bで開口部14を取り巻くものとして示されている)を除く第1表面10aと第2表面10bとの間で測定される厚さhが含まれる。一実施形態では、フィルム10は、プレート12と固定のために使用されるねじとの間の機械的連結に干渉しないよう(例えば、フィルムがプレートとネジとの間にトラップされている場合など)、十分な薄さでなければならない。いくつかの実施形態では、厚さhはできる限り最小化される。一実施形態では、フィルム10の厚さは、フィルム10の分解によって医療用装置12(例えばプレート−ねじ構造体)との接合の顕著な緩みを生じないように選択される。
【0023】
いくつかの実施形態では、フィルム10の厚さhは約0.05mmである。いくつかの実施形態では、フィルム10の厚さhは約0.05mm以下である。いくつかの実施形態では、フィルム10の厚さhは約0.05mm未満である。いくつかの実施形態では、フィルム10の厚さhは約0.06mmである。いくつかの実施形態では、フィルム10の厚さhは約0.07mmである。いくつかの実施形態では、フィルム10の厚さhは約0.08mmである。いくつかの実施形態では、フィルム10の厚さhは約0.09mmである。いくつかの実施形態では、フィルム10の厚さhは約0.1mmである。いくつかの実施形態では、フィルム10の厚さhは約0.2mmである。いくつかの実施形態では、フィルム10の厚さhは約0.3mmである。いくつかの実施形態では、フィルム10の厚さhは約0.4mmである。いくつかの実施形態では、フィルム10の厚さhは約0.5mmである。
【0024】
一実施形態では、フィルム10の厚さhは、フィルム10全体にわたってほぼ均一である。いくつかの実施形態では、フィルム10は外周に沿って1つ以上のエッジに向かって先細である。いくつかの実施形態では、フィルム10の厚さhは、各領域の強度又は薬剤送達を制御するため、2つ以上の部分で異なっている。
【0025】
いくつかの実施形態では、フィルム10は、植え込み、ドリル穴開け、及びねじ配置などの機械的な力に耐えるのに十分な強度でなければならない。一実施形態では、フィルム10は、第1平面方向において第1引張強度、及び、この第1平面方向に対して垂直である第2平面方向において第2引張強度を有し、第1引張強度は第2引張強度と実質的に等しい。一実施形態では、フィルム10は、下記の表1〜3に列記されている強度特性を有する。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
【表3】
【0029】
一実施形態では、フィルム10は、約2%〜約4%の降伏点引張ひずみ(オフセット0.2%)、及び/又は約3%の平均引張ひずみを有する。一実施形態では、フィルム10は、約9MPa〜約14MPaの降伏点引張応力(オフセット0.2%)、及び/又は約12.5MPaの降伏点平均引張応力を有する。一実施形態では、フィルム10は、約25MPa〜約30MPaの最大負荷時引張応力、及び/又は約27MPaの最大負荷時平均引張応力を有する。一実施形態では、フィルム10は、約30%〜約215%の破断時引張ひずみ(標準)、及び/又は約89%の破断時平均引張ひずみを有する。一実施形態では、フィルム10は、約430MPa〜約750MPaの自動ヤング率、及び/又は約590MPaの平均自動ヤング率を有する。フィルム10は、前述の1つ以上の特性の組み合わせによって特徴付けることができる。
【0030】
図1A、1B、2及び11Eを参照すると、いくつかの実施形態では、フィルム10には複数の孔又は開口部14が含まれる。一実施形態では、開口部14によって、フィルム10を通した流体の通過又は移動が可能になる(例えば生体組織近くに植え込みされたとき)。いくつかの実施形態では、例えばフィルム10と医療用装置12との間に「デッドスペース」を形成しないようにするために、スリーブの一方の側から他方の側へ(内側から外側へ)と流体が流れるようにすることが重要であり得る。加えて、孔14があることにより、薬剤又は生物剤が、そのような孔がないスリーブに比べてポリマーから溶脱しやすいため、隣接する組織及び骨に、そのような材料のより均一な配分を有利に提供することができる。
【0031】
開口部14は、任意の寸法及び形状となるよう構成することができる。一実施形態では、開口部14は、実質的に円筒形の側壁により画定される。いくつかの実施形態では、開口部14は、内側に向いた凸面を有する側壁を有する。いくつかの実施形態では、内側に向いた凸面は、略放物線状である。開口部14は、断面が完全な円形である必要はなく、いくつかの実施形態では、卵形、楕円形、星形、又は菱形であり得る。いくつかの実施形態では、開口部14は1つ以上の頂点に向かって延在する。一実施形態では、そのような頂点は、使用中にフィルム10が裂けるのを促進する(例えば、弱い領域が開口部によって形成される場所で)。一実施形態では、開口部14は、内側表面10bから外側表面10aまでシート12を完全に貫通して延在する(図4C参照)。一実施形態では、薬剤放出を制御するため、又はフィルム10の初期強度を増大させるために、1つ以上の開口部14が、フィルム10を部分的にのみ貫通して延在する。
【0032】
開口部14は、フィルム10に任意の多孔率をもたらすよう構成され得る。一実施形態では、フィルム10の多孔率は約0.01超である。一実施形態では、フィルム10の多孔率は約0.02超である。一実施形態では、フィルム10の多孔率は約0.03超である。一実施形態では、フィルム10の多孔率は約0.04超である。一実施形態では、フィルム10の多孔率は約0.05超である。一実施形態では、フィルム10の多孔率は約0.06超である。一実施形態では、フィルム10の多孔率は約0.07超である。一実施形態では、フィルム10の多孔率は約0.08超である。一実施形態では、フィルム10の多孔率は約0.09超である。一実施形態では、フィルム10の多孔率は約0.10超である。一実施形態では、フィルム10の多孔率は約0.11超である。一実施形態では、フィルム10の多孔率は約0.12超である。一実施形態では、フィルム10の多孔率は約0.13超である。一実施形態では、フィルム10の多孔率は約0.15超である。一実施形態では、フィルム10の多孔率は約0.15超である。一実施形態では、フィルム10の多孔率は約0.16超である。一実施形態では、フィルム10の多孔率は約0.17超である。一実施形態では、フィルム10の多孔率は約0.18超である。一実施形態では、フィルム10の多孔率は約0.19超である。一実施形態では、フィルム10の多孔率は約0.20超である。
【0033】
図11Eを参照すると、一実施形態では、開口部14は約0.75mmの直径を有し、約1.75mmの間隔で配置されている。一実施形態では、開口部14は規則的な配列で配置されている(例えば図11Dに示されているように揃えられた行及び列)。一実施形態では、開口部14は不規則な配列で配置されている。
【0034】
図1A、1B及び4Cを参照すると、いくつかの実施形態では、各開口部14は、第1表面10aから延出している少なくとも1つの隆起縁14aに隣接している。各孔14の周囲にある隆起縁14aの利点としては、各孔14に補強又はグロメットを提供して、隆起縁14aのない同様の有孔フィルムよりも、フィルム10の機械的強度を効果的に増加させることが挙げられる。縁14aの利点には、第1表面10a上が非平滑な表面となることが挙げられ得る。そのような非平滑表面は、触感の点で、又は例えば、第1表面10aが別の表面と接触している場合に、フィルム10の第1表面10aの摩擦を増大(又は減少)させる目的で、有利であり得る。一実施形態では、縁14aは、フィルム10が表面(例えばインプラントの金属表面)に付着する傾向を低減し、これによりフィルム10で製造されたスリーブがインプラント上をより容易に滑るようになる。一実施形態では、縁14aはインプラントとフィルム10との間隔を引き離すものとして作用し、インプラントと接触するフィルム10の表面積を低減する。
【0035】
一実施形態では、第1表面10aは、複数の延出した隆起縁14aの間に延在する連続的平面部分を含む。一実施形態では、縁14aは実質的に、衝突クレーターの外側表面形状である。一実施形態では、縁14aは、連続的凹状表面を含む。一実施形態では、縁14aは、略放物線状凹状表面を含む。一実施形態では、1つ以上の縁14a(又は、いくつかの実施形態では、各縁14a)は凹状の外側表面と凸状の相対する内側表面とを有し、このいずれか又は両方が放物線状である。一実施形態では、縁14aはそれぞれ、第1表面10aの連続的平面部分から約0.1mm〜約1.0mm上に隆起したエッジを有する。一実施形態では、縁14aはそれぞれ、第1表面10aの連続的平面部分から約0.1mm上に隆起したエッジを有する。一実施形態では、縁14aはそれぞれ、第1表面10aの連続的平面部分から約0.2mm上に隆起したエッジを有する。一実施形態では、縁14aはそれぞれ、第1表面10aの連続的平面部分から約0.3mm上に隆起したエッジを有する。一実施形態では、縁14aはそれぞれ、第1表面10aの連続的平面部分から約0.4mm上に隆起したエッジを有する。一実施形態では、縁14aはそれぞれ、第1表面10aの連続的平面部分から約0.5mm上に隆起したエッジを有する。一実施形態では、縁14aはそれぞれ、第1表面10aの連続的平面部分から約0.6mm上に隆起したエッジを有する。一実施形態では、縁14aはそれぞれ、第1表面10aの連続的平面部分から約0.7mm上に隆起したエッジを有する。一実施形態では、縁14aはそれぞれ、第1表面10aの連続的平面部分から約0.8mm上に隆起したエッジを有する。一実施形態では、縁14aはそれぞれ、第1表面10aの連続的平面部分から約0.9mm上に隆起したエッジを有する。一実施形態では、縁14aはそれぞれ、第1表面10aの連続的平面部分から約1.0mm上に隆起したエッジを有する。
【0036】
一実施形態では、縁14aにより、第1表面10aは、縁14aのない第2表面10bの第2触感とは異なる第1触感を有する(例えば外科用手袋を着用している外科医が区別可能である)。一実施形態では、第1表面10aの1つ以上の領域における開口部14はそれぞれ、隆起縁14aにより取り囲まれ、第1表面10aの1つ以上の他の領域における開口部14は、それほど取り囲まれていない。一実施形態では、各隆起縁14aの高さh図4Cを参照)は均一である。一実施形態では、少なくとも1つの隆起縁14aは、少なくとも1つの他の縁14aとは異なる高さhを有する。一実施形態では、1つ以上の開口部14が、第1表面10aと第2表面10bの一方又は両方にある縁14aによって取り囲まれている。図1Aに示されているような一実施形態は、各開口部14を取り囲む単一の連続的縁14aを含み得る。この連続的縁は、他の1つの開口部に対し、又は開口部ごとに対し、実質的に均一の厚さ及び/又は実質的に均一の高さであり得る。開口部14は、ポリマーシートの全体又は少なくとも一部分にわたって均一間隔で配置することができる。他の実施形態では、ポリマーシートの少なくとも一部分が、少なくとも2つの異なる間隔構成で配置された開口部によって特徴付けられる。
【0037】
いくつかの実施形態では、フィルム10は、体内に送達するための1つ以上の薬剤又はその他の物質を含む。そのような薬剤には、抗菌剤、抗線維化剤、麻酔剤、及び抗炎症剤、並びにその他の分類の薬剤(例えばタンパク質、成長阻害剤などの生物剤)が挙げられるがこれらに制限されない。
【0038】
一実施形態では、フィルム10は抗生物質を含む。選択される抗生物質は、整形外科インプラント関連感染症に見られる細菌の多くに対して活性を有し得る。これらには、主にブドウ球菌、及びグラム陰性菌が含まれる。
【0039】
一実施形態では、選択される薬剤は、インプラントを製造するのに必要な製造プロセス中に安定でなければならない。一実施形態では、フィルム10はゲンタマイシンを含む。硫酸ゲンタマイシンは100℃超で熱的に安定であり、DMSO(これはいくつかの実施形態では製造プロセスで使用される)を含む有機溶媒に対して安定である。
【0040】
図4A〜4Cを参照すると、一実施形態では、フィルム10は複数の別個の溶出薬剤構成要素30を含む。一実施形態では、フィルム10は、複数の別個の薬剤構成要素30を、植え込み後、異なる期間で溶出させるよう構成される。一実施形態では、生体内でのゲンタマイシン溶出は、フィルム10が水又は体液に接触するとすぐに起こるバースト放出と、ポリマーの分解速度により制御される第2段階とを備える2段階プロセスである。いくつかの実施形態では、最初の植え込み時の創傷部位で細菌汚染を低減するためゲンタマイシンの初期バースト放出を行い、次に、生存しているいかなる細菌の成長も妨げるため、植え込み後数日〜数週間の期間でゲンタマイシンをより低い濃度で放出することが望ましい。一実施形態では、フィルム10は、フィルム10が生活組織に接触して植え込まれてから約1週間以内に、フィルム10に含まれている薬剤を最大約60パーセントまで溶出するよう構成される。一実施形態では、粒径及びポリマー分解速度の組み合わせが薬剤放出特性を制御し、望ましい2段階放出をもたらす。一実施形態では、薬剤は2〜3週間の期間にわたって放出される。他の実施形態では、薬剤はより短い又はより長い時間枠にわたって放出される。
【0041】
一実施形態では、これら2段階で放出される薬剤の相対的な量は、粒径によって制御される。一実施形態では、薬剤構成要素30はフィルム10全体にわたって均一に分散され、フィルム10の表面に接触している薬剤構成要素30は、フィルム10の表面に接触していない薬剤構成要素30よりも、より急速に溶解する。一実施形態では、植え込み時にフィルム10の表面に接触している薬剤構成要素30の量は、植え込み時にバーストとして放出されるよう構成される。一実施形態では、薬剤構成要素30の寸法が大きいほど、表面に接触する薬剤構成要素30の割合が高くなり、バースト放出も多くなる。この理由から、一実施形態では、薬剤構成要素30の寸法は、直径10マイクロメートル未満に抑えられ、これによりバースト放出を薬剤合計量の約20〜35%に低減させる。一実施形態では、薬剤構成要素30は直径20マイクロメートル未満である。
【0042】
一実施形態では、フィルム10は1つ以上の独立層から複数の薬剤を送達するよう構成され、この層のいくつかは薬剤を含んでいなくともよい。別の一実施形態では、フィルム10は、フィルム10からの異なる放出速度によりそれぞれ特徴付けられる複数の薬剤構成要素を含み得、これによって、第1薬剤は、第2薬剤の第2放出特性とは異なる第1放出特性に関連付けられる。
【0043】
図3A〜11Fを参照すると、本発明の代表的な実施形態によるフィルム10を製造する方法に使用される装置が示されている。
【0044】
一実施形態では、ポリマーフィルム10の製造方法は、薬剤送達膜として使用するためのポリマーフィルム10を製造するために開発された。一実施形態では、フィルム10は溶媒流延である。いくつかの実施形態では、溶媒流延法は、例えばインフレーション成形などの溶融プロセスの熱及び剪断により潜在的に損傷する可能性がある薬剤構成要素30を含むフィルム10の製造に有利である。パンチプレス(例えば、何百又は何千個もの穴、又は複雑な形状の穴を備えたもの)を使用したフィルムの製造もまた時間がかかり、高価であり得る。いくつかの実施形態では、溶媒と薬剤30とを最初に混合して十分に分散された懸濁液を形成し、次にポリマーをこの溶液に加える。
【0045】
いくつかの実施形態では、本明細書に記述されている方法によって、薄いフィルム10の形成と開口部14の形成とを単一の工程で行うことが可能になる。いくつかの実施形態では、本明細書に記述されている方法によって、形状及び配置を正確に制御された何千個もの開口部14を備え、フィルム厚さを正確に制御されたフィルム10が得られる。
【0046】
図3A〜3Gを参照すると、いくつかの実施形態では、フィルム10は成形型18を使用した注型成形物である。一実施形態では、成形型18には、開口部14を形成するための、成形型18の底面18aから延出している複数の突出物又は柱20が含まれる。一実施形態では、成形型18は、射出成形ポリプロピレンからなる。この成形型は、ポリマー(図3F参照)、ガラス、金属(図3G参照)又はセラミックスを含む、他の材料から製造することができる。一実施形態では、成形型18は2つ以上の材料からなる。例えば、成形型18は、注型成形フィルムの成形型への粘着を低減させる、及び/又は柱20を形成するため、ポリマーコーティングされた金属製の底部を有し得る。成形型内の空洞は、注型成形プロセス、圧縮成形プロセス、射出成形プロセス、化学エッチングプロセス、又は機械加工プロセスによって形成することができる。
【0047】
一実施形態では、成形型18は約0.25mmの空洞深さを含む。一実施形態では、成形型の底面18aから複数の柱20それぞれの頂点までの距離は、空洞深さ(すなわち、周縁壁22の高さ)に等しく、逆もまた同様である。一実施形態では、柱20はフィルム10の望ましい厚さよりも長い。一実施形態では、柱20は成形型18aの底面から0.3mm延出している。一実施形態では、柱20は成形型18aの底面から0.2mm延出している。一実施形態では、柱20は成形型18aの底面から0.25mm延出している。一実施形態では、柱20は成形型18aの底面から0.3mm延出している。一実施形態では、柱20は成形型18aの底面から0.35mm延出している。一実施形態では、柱20は成形型18aの底面から0.4mm延出している。一実施形態では、柱20は成形型18aの底面から0.45mm延出している。一実施形態では、柱20は成形型18aの底面から0.5mm延出している。
【0048】
一実施形態では、柱20は、上述のような、開口部14の選択された寸法、形状、パターン、及び配列を製造するよう配置される。一実施形態では、周縁形状又は周縁壁22は、成形型の全領域を画定し、複数の柱20は、フィルム10の開口孔領域に実質的に等しい又はこれに対応する領域を画定する。
【0049】
一実施形態では、成形型18は、成形型18の周縁壁22の少なくとも一部分の周囲に延在するトラフ24を含む。一実施形態では、トラフ24は、成形型18の周縁壁22全体の周囲に延在する。いくつかの実施形態では、トラフ24は、周縁壁22を超えて流れるか又は寄せられた過剰分のポリマーを保持する。一実施形態では、成形型18には、成形型18の少なくとも1つの外側エッジから横方向に延出する延長部40が含まれる。一実施形態では、延長部40は、成形型18内のポリマー溶液に接触することなく成形型18を把持及び操作するために提供されている。
【0050】
一実施形態では、成形型18に添加するためのポリマー溶液28が形成される。一実施形態では、ポリマー材料を高温のジメチルスルホキシド(DMSO)に溶媒対ポリマーの配分を4:1にして溶解し、薬剤の硫酸ゲンタマイシンを13重量%加える。一実施形態では、ポリマー溶液28は、90℃未満の温度のポリマー/溶媒混合物に薬剤単位30を導入することによって形成される。一実施形態では、ポリマー溶液28は、例えばポリウレタン、ポリフマレート、ポリメタクリレートなどの架橋可能なプレポリマーを含む。
【0051】
図4A、6及び8を参照すると、ポリマー溶液28を調製した後、ポリマー溶液28を片側成形型18内に入れる。いくつかの実施形態では、ポリマー溶液28の粘度及び/又は柱20の密度により、成形型18全体にポリマー28が自然に流れるのが実質的に阻害される。一実施形態では、ポリマー溶液28を成形型18に添加した後では、ポリマー溶液28の上面は、成形型空洞及び柱20の高さhよりも高い、成形型18の底部18aからの高さhである。
【0052】
図4B、7及び9を参照すると、ポリマー溶液28を成形型18に添加した後、一実施形態では、寄せ手段26を使用して、複数の柱20それぞれの周囲にポリマー溶液を寄せる。一実施形態では、寄せ手段26としては、スライドされるブレード、バー、スキージ、又はローラーが挙げられ、あるいは、成形型18を寄せ手段26に対して移動させて、周縁形状22及び柱の頂点20を横切させ、ポリマー溶液28を柱20の周囲及び成形型18全体へと流れさせて、これによりポリマー溶液28が実質的に均一な厚さとなるようにする。一実施形態では、成形型18にわたって寄せ手段26を引っ張ることにより、柱20の頂点から余剰な材料が取り除かれる。一実施形態では、各柱20の外側表面には、この引っ張ることの後、実質的にポリマー溶液28が存在しない。
【0053】
図4Cを参照すると、ポリマー溶液28が成形型18全体に引っ張られ又は広げられた後、ポリマー溶液28が固化してフィルム10が形成される。一実施形態では、成形型18を高温の溶媒乾燥炉に入れて溶媒を除去し、後に薄い注型成形フィルムを残す。一実施形態では、ポリマー溶液28は、紫外線照射、温度変化、重合触媒、可溶性架橋剤、又はこれらの組み合わせをポリマー溶液28に適用することによって、ポリマーを架橋させることにより、固化する。一実施形態では、この固化工程には、ポリマー溶液28の入った成形型18を第2溶媒に曝す工程が含まれる。例えば、ポリマー溶液28がポリマー、薬剤、及び第1溶媒を含む一実施形態では、第1溶媒は第2溶媒に可溶性であるが、ポリマー及び薬剤構成要素は第2溶媒に可溶性ではない。よって、ポリマー溶液28を第2溶媒に曝すことにより第1溶媒がポリマー溶液から除去されて、ポリマー及び薬剤生成物が残り、これが固化して、例えばフィルムを形成する。
【0054】
一実施形態では、ポリマー溶液の固化により、ポリマー溶液の厚さが、厚さhから厚さhに減少する。一実施形態では、ポリマー溶液の固化により、柱20に近接するポリマー溶液の厚さが、厚さhから厚さhに減少する。一実施形態では、柱20に近接するフィルム10の厚さhは、柱20間のフィルム10の厚さhよりも厚い。一実施形態では、縁14aは、ポリマー溶液28が固化してフィルム10になる間に、柱20それぞれの周囲にメニスカスを形成するポリマー溶液によって形成される。一実施形態では、メニスカス又は縁14aは、成形型18の高さ又は深さhとほぼ同じ高さhである。一実施形態では、縁14aの高さhは、柱20の材料及び形状の注意深い選択によって、又は、例えば潤滑材料(例えばフルオロポリマー又はシリコーン離型剤など)で柱20をコーティングすることによって、制御することができる。一実施形態では、縁14aの高さhは、ポリマー溶液の濃度によって制御される。
【0055】
図10を参照すると、ポリマー溶液28が固化した後、成形型18及びフィルムを炉から取り出し、冷まし、注型成形有孔フィルム10を成形型18から剥がす。
【0056】
図5〜7を参照すると、フィルム10の製造方法は、自動又は部分的自動の注型成形機42を含み得る。一実施形態では、自動注型成形装置には、1つ以上のプロセッサ及びメモリ(例えば1つ以上の不揮発性記憶装置)を有する1つ以上のコンピュータ44が含まれる。いくつかの実施形態では、メモリ、又はメモリのコンピュータ読み取り可能記憶媒体が、プログラム、モジュール及びデータ構造、又はこれらのサブセットを保存し、これによってプロセッサは、本明細書で開示される様々なシステム及び方法を制御及び実行する。一実施形態では、コンピュータ実行可能命令が保存されているコンピュータ読み取り可能記憶媒体は、プロセッサによって実行されると、本明細書に開示される1つ以上の方法を実行する。
【0057】
フィルム10は、別の方法によって製造することができる。一実施形態では、ポリマー溶液28は、支持ブロッター層を備えた有孔フィルム材料の上に注型成形され、次に有孔フィルムをブロッター層から除去して、注型成形シート内に穴が存在した箇所の注型成形溶液を除去する。そのようなプロセスと上述のプロセスとの違いの1つは、いくつかの実施形態では、開口部14の周囲に隆起縁を形成しないことである。
【0058】
別の一実施形態では、多孔性フィルムは、凍結乾燥法(lyophilazation)又はフリーズドライ法により形成することもできる。一実施形態では、ポリマー溶液の薄い固体フィルムを成形型で注型成形し、次にこの成形型を溶液の凝固点より下の温度まで冷却し、次に減圧下に置いて、フィルムから溶媒を除去する。いくつかの実施形態では、このプロセスはまた、上述のいくつかの実施形態で記述されたものよりずっと小さな細孔を生成する。
【0059】
一実施形態では、注型成形フィルムを形成するのに使用されるポリマー材料は、架橋可能なプレポリマー液であってよく、これを上述のようにフィルム成形型に流し込み、スキージをかけることにより成形型を充填しかつ余分な材料を除去し、続いて紫外線照射、温度、触媒、又はその他の手段によってその場で架橋させる。一実施形態では、このプロセスは上述のものと非常に似た最終生成物を生成することができるが、ただし、注型成形フィルムの最終的な厚さは、成形型の深さと近いか又は等しくなり、開口部14の周りにはメニスカス又は縁14aがほとんど又は全く現れない。
【0060】
別の一実施形態では、薄い多孔性フィルムは、スクリーン印刷プロセスによって形成することができる。一実施形態では、溶液の層を最終パターンでスクリーン印刷し、次いて乾燥させる。一実施形態では、これはずっと薄い層を生成するが、複数のポリマー層を他の層の上にスクリーン印刷して乾燥させることで所望のフィルム厚を構築することができる。
【0061】
別の一実施形態では、疎水性ポリマー(例えばシリコーンなど)から作られた所望の開孔形状のパターンを有するガラスプレートを使用して、上記と同様の注型成形プロセスを実施することができる。一実施形態では、ポリマー溶液の薄い層がプレート上に流し込まれると、ガラスとパターン形状ポリマーとの間の表面張力の違いにより、溶液がガラス表面上で濃縮され、パターンを有する疎水性ポリマー表面から引き離される。一実施形態では、次にこの溶液を乾燥させて、シリコーンポリマーと同じパターンの開孔を有する固体フィルムを形成する。一実施形態では、このプロセスは、上述のような架橋可能プレポリマー液を用いて実施することもできる。
【0062】
別の一実施形態では、薄い多孔性ポリマーフィルムは、両面成形型を使用して製造され、ポリマー溶媒溶液が成形型内に注入され、冷却されて溶液を固化する。一実施形態では、次に成形型を開いて片側を取り外し、冷却された溶液を空洞側に残す。一実施形態では、この冷却された溶液側を炉に入れて、ポリマー溶液を乾燥させ、フィルム10を形成する。
【0063】
図2及び11A〜11Dを参照すると、フィルム10を形成した後、フィルム10を成形して望ましい形状に形作る。一実施形態では、フィルム10は、医療用装置12の寸法及び形状に概ね一致するよう形成及び形作られる。いくつかの実施形態では、フィルム10は、シース又はスリーブ32、34、36、38に形成及び形作られる。
【0064】
図11A〜11Fを参照すると、スリーブ32、34、36、38には、フィルム10をシースに成形するよう構成された少なくとも1つのシーム16が含まれる。一実施形態では、スリーブ32、34、36、38は、外周の周りで第1フィルム10を第2フィルム10に接合させることにより形成される。一実施形態では、フィルム10は折り畳まれ、少なくとも部分的にそれ自体に対して固定される。例えば、フィルム10は、円筒に成形されて2つの相対するエッジを接合され得る。一実施形態では、第2表面10bは第1表面10aに重ね合わせられてシーム16を形成する。一実施形態では、第2表面10bは第2表面10bに重ね合わせられてシーム16を形成する。一実施形態では、シーム16は、フィルム10の重ね合わせ部分を加熱し、再固化することによって固定される。一実施形態では、スリーブ32、34、36、38の両端部は、医療用装置12の挿入のために開放されたままである。一実施形態では、1つ以上の端部が閉じられている。一実施形態では、ポリマーシートを最初に、望ましい寸法及び形状にしてから、スリーブ32、34、36、38を形成する。
【0065】
スリーブ32、34、36、38の他に、フィルム10は、いくつかの実施形態では、例えばヘルニア修復メッシュ、癒合バリヤ、軟組織補強、濾過膜、薬剤送達膜、骨移植片収容(例えば、脊椎固定術、又は長骨の部分的欠損移植において、骨移植片を定位置に保持するための)、又は創傷治療製品(包帯など)といった、他の医療用途に使用することができる。
【実施例】
【0066】
(実施例1):
代表的な一実施形態では、ヒツジへの植え込みによりインプラントが試験された。インプラントは金属プレートであって、外科的挿入及び骨への取り付けの直前に、管状の薄い(0.05〜0.08mm)透明なポリマースリーブが金属プレート上に注意深くかぶせられた。スリーブはぴったりとフィットして金属プレートの長さ全体を完全に覆ったが、プレートの両端部は開放されていた。スリーブは、全体に均等間隔で配置された直径1.5mmの開孔穴を備えた合成コポリエステル(グリコリド、カプロラクトン、炭酸トリメチレン、ラクチド)からなっていた。スリーブの一群は濃度1%のトリクロサン(2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル)を含み、スリーブの一群は濃度10%のゲンタマイシンを含み、及びスリーブの一群はトリクロサン(1%)とゲンタマイシン(10%)との組み合わせを含んでいた。ゲンタマイシン及びトリクロサンの濃度は、各化合物の治療濃度範囲を決定するインビトロ試験に基づいて選択された。
【0067】
疎水性のトリクロサンはポリマー中で完全な溶液であり、一方で親水性のゲンタマイシンは10〜20μmの小さな粒子として懸濁したままであった。インビトロ試験の結果、トリクロサンは、水に対する溶解度が低いことから、1〜3週間かけて、ゆっくりとしかこれらのフィルムから放出されず、初期バースト放出は最小限であることが示された。
【0068】
スリーブの表面に露出している、より水溶性の高いゲンタマイシンは、約50%が、挿入から24時間以内に隣接する組織へと放出された。ポリマーの奥部に封止されていた残りのゲンタマイシンは、よりゆっくりと溶解し、植え込み後2〜3週間かけて放出された。ポリマーは、手術から60日以内に加水分解により分解するよう設計された。
【0069】
抗菌剤あり又はなしのスリーブは、生体適合性であることが証明され、軟組織及び骨の治癒に対する影響が最小限で、金属インプラントに対して腐食性でないことが証明された。この実験の更なる詳細は、Vet Surg.の2012年1月12日の「Biodegradable Sleeves for Metal Implants to Prevent Implant−Associated Infection:An Experimental In Vivo Study in Sheep」(von Plocki SC、Armbruster D、Klein K、Kampf K、Zlinszky K、Hilbe M、Kronen P、Gruskin E、von Rechenberg B.)に見出すことができ、この全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0070】
(実施例2):
代表的な一実施形態では、フィルム10は下記の方法で製造される:
ゲンタマイシン水分含有量の測定:
硫酸ゲンタマイシン粉末の水分含有量は、乾燥減量法により測定される。約0.5グラムのゲンタマイシンをガラス瓶に計り取り、減圧下、110℃で3時間加熱してから、2回目の計量を行う。重量喪失が水分含有量として記録され、これが水分含有率の計算に使用される。
【0071】
溶液混合:
14.69グラムの硫酸ゲンタマイシン粉末を計り取り、上記で計算された水分含有率を補償する。これを、撹拌機を使用して、1L容器中のDMSO溶媒400gと混合する。この混合物を30分間撹拌して、ゲンタマイシンを均一に分散させる。グリコール酸、カプロラクトン、乳酸、及び炭酸トリメチレンモノマーを含む100gのコポリマーをこの懸濁液に加え、混合容器を65℃に加熱する。ポリマーが完全に溶解して溶液になるまで、混合を2時間続け、次にこの溶液温度を55℃に下げる。
【0072】
フィルム注型成形及び溶媒乾燥:
高密度ポリエチレン製の注型成形型及び引っ張りブレードを使用して、ポリマー溶液から薄い有孔フィルムを注型成形する。注型成形型及び引っ張りブレードは、アルカリ洗剤溶液を用いてあらかじめ洗浄し、自動CNC注型成形装置に搭載する。15mLのポリマー溶液をポリプロピレン製シリンジに吸い上げ、これを注型成形装置に搭載する。注型成形装置が自動的にこの溶液を注型成形型上に吐出し、プレードを成形型の表面にわたって引っ張る。ポリマー溶液で充填された成形型を、85℃の溶媒乾燥炉に約90分間入れて、フィルムを乾燥させる。成形型を乾燥炉から取り出し、2分以内にフィルムを成形型から剥がす。
【0073】
スリーブのシーリング:
特別に成形されたダイを備えたインパルス熱シールプレス機を使用して注型成形フィルムをシールし、スリーブの形状に切断する。2本の注型成形フィルムをプレス機に配置し、プレス機を圧力0.55MPa(80psi)で閉じ、200℃で4秒間加熱する。余剰のフィルム材料からスリーブを取り出し、適切な長さに切断する。シールされたスリーブを減圧下50℃で乾燥させ、生体吸収性ポリマーの分解を防ぐために防湿パッケージ内に密封する。
【0074】
本明細書の広義の発明概念から逸脱しないで上に示されかつ記載された例示的な実施形態に対して変更を行うことができることが当業者により認識されるであろう。従って、本発明は図示されかつ記載された例示的な実施形態に限定されないが、請求項により定義されるように本発明の精神及び範囲内の修正を網羅するように意図されることが理解される。例えば、例示的な実施形態の具体的な特徴は請求項に係る発明の一部であってもよいしそうでなくてもよい、また開示された実施形態の特徴は組み合わされてもよい。本明細書に特段の明記がない限り、用語「a」、「an」及び「the」は1つの要素に限定されるものでなく、「少なくとも1つの」を意味するものとして読まれるべきである。
【0075】
本発明の図面及び記載の少なくともいくつかは本発明の明確な理解のために適切である要素に焦点を合わせるように簡略化されてきたことは理解されるべきであるが、一方明確にするために、当業者が認める他の要素を取り除くことはまた本発明の一部分を構成してもよい。しかしながら、このような要素が当該技術分野において周知であるため、及びそれらが本発明のよりよい理解を必ずしも容易にするわけでないため、このような要素の記載は本明細書に提供されない。
【0076】
更に、本明細書に明記されている工程の特定の順序に依拠しないことの範囲内において、工程の特定の順序は請求項に対する制限と解釈されるべきでない。本発明の方法を対象とした請求項は、書かれた順序における工程の実行に限定されるべきでない、また当業者は工程が変わり得るものであってかつ本発明の精神及び範囲内に依然留まり得ることを容易に認識できる。
【0077】
〔実施の態様〕
(1) 第1表面及び相対する第2表面を有するポリマーフィルムを含む可撓体であって、前記ポリマーフィルムは、前記第1表面から前記第2表面まで延在する複数の開口部と、前記第1表面から突出する複数の隆起縁とを有し、これにより、前記複数の開口部それぞれが、前記複数の隆起縁の1つによって取り囲まれている、可撓体。
(2) 前記ポリマーフィルムが生体再吸収性ポリマーを含む、実施態様1に記載の可撓体。
(3) 前記生体再吸収性ポリマーが、L−乳酸、D−乳酸、L−ラクチド、D−ラクチド、D,L−ラクチド、グリコリド、ラクトン、ラクタム、炭酸トリメチレン、環状炭酸エステル、環状エーテル、パラジオキサノン、β−ヒドロキシ酪酸、β−ヒドロキシプロピオン酸、β−ヒドロキシ吉草酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される反復単位を含む、実施態様2に記載の可撓体。
(4) 前記生体再吸収性ポリマーが、L−乳酸、D−乳酸、L−ラクチド、D−ラクチド、D,L−ラクチド、ε−カプロラクトン、炭酸トリメチレン、パラジオキサノン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される反復単位を含む、実施態様2に記載の可撓体。
(5) 前記生体再吸収性ポリマーが、グリコリド、炭酸トリメチレン、ラクチド及びカプロラクトンのコポリマーである、実施態様2に記載の可撓体。
【0078】
(6) 前記第1表面が、前記複数の隆起縁の間に延在する連続的平面部分を含む、実施態様1に記載の可撓体。
(7) 前記複数の隆起縁それぞれが、前記連続的平面部分から約0.1mm〜約1.0mm上に隆起している外側エッジを有する、実施態様6に記載の可撓体。
(8) 前記ポリマーフィルムが、複数の別個の溶出薬剤構成要素を含み、前記ポリマーフィルムは、前記可撓体の植え込み後、異なる期間で、前記複数の別個の薬剤構成要素を溶出させるよう構成される、実施態様1に記載の可撓体。
(9) 前記ポリマーフィルムをシースに形成するよう構成された少なくとも1つのシームを更に含む、実施態様1に記載の可撓体。
(10) 前記ポリマーフィルムが、第1平面方向における第1引張強度、及び、前記第1平面方向に対して垂直である第2平面方向における第2引張強度を有し、前記第1引張強度は実質的に前記第2引張強度に等しい、実施態様1に記載の可撓体。
【0079】
(11) 前記ポリマーフィルムが、0.06mm以下の公称厚さを有する、実施態様1に記載の可撓体。
(12) 前記第1表面が、前記第2表面の第2触感とは異なる第1触感を有する、実施態様1に記載の可撓体。
(13) ポリマーフィルムを製造する方法であって、
ポリマー溶液を、成形型の底面から延出する複数の突出物を有する片側成形型に入れる工程であって、前記ポリマー溶液は、前記成形型全体に前記ポリマーが自然に流れるのを阻害する粘度によって特徴付けられる、工程と、
前記複数の突出物それぞれの周囲に前記ポリマー溶液を寄せる工程と、
前記ポリマー溶液を固化させる工程と、を含む、方法。
(14) 前記成形型が、前記複数の突出物それぞれの高さに実質的に等しい高さまで延出する周縁形状を含む、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記寄せる工程が、前記周縁形状及び前記複数の突出物の上にわたって寄せ手段(urging means)を引っ張ることにより、前記ポリマー溶液が前記複数の突出物の周囲及び前記成形型全体に流れ込むようにし、これにより前記ポリマー溶液が実質的に均一な厚さを有するようにする工程を含む、実施態様14に記載の方法。
【0080】
(16) 前記突出物それぞれの外側表面には、前記引っ張ることの後、実質的に前記ポリマー溶液が存在しない、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記入れる工程が、前記ポリマー溶液の一部が前記周縁形状及び前記突出物の高さより上になるように、前記ポリマー溶液を前記成形型に吐出する工程を含む、実施態様14に記載の方法。
(18) 前記ポリマー溶液が薬剤を含む、実施態様13に記載の方法。
(19) 前記ポリマー溶液が、溶媒、ポリマー、及び前記薬剤を90℃未満の温度で組み合わせることによって形成される、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記薬剤が、別個の薬剤単位を含む、実施態様18に記載の方法。
【0081】
(21) 前記ポリマー溶液を固化する工程が、前記ポリマー溶液の厚さを減少させる工程を含む、実施態様13に記載の方法。
(22) 前記ポリマー溶液を固化する工程が、前記複数の突出物それぞれの周囲に、固化したポリマーのメニスカスを形成する工程を含む、実施態様13に記載の方法。
(23) 前記成形型の底面から前記複数の突出物それぞれの頂点までの距離が、約0.3mm未満である、実施態様13に記載の方法。
(24) 前記周縁形状が、成形型全領域を画定し、前記複数の突出物が、前記成形型全領域の少なくとも約15%の領域を画定する、実施態様14に記載の方法。
(25) 前記成形型から薬剤溶出フィルムを剥がす工程を更に含む、実施態様13に記載の方法。
【0082】
(26) 前記ポリマー溶液が、架橋可能プレポリマー溶液を含む、実施態様13に記載の方法。
(27) 前記固化する工程が、紫外線照射、温度変化、重合触媒、可溶性架橋剤、又はこれらの組み合わせを前記ポリマー溶液に適用することによって、前記ポリマーを架橋させる工程を含む、実施態様13に記載の方法。
(28) 前記ポリマー溶液が第1溶媒及びポリマーを含み、前記固化する工程が、前記第1溶媒が可溶であり、かつ前記ポリマー及び薬剤が可溶でない第2溶媒に、前記ポリマー溶液を曝し、それにより前記第1溶媒が前記ポリマー溶液から少なくとも実質的に除去され、前記ポリマーが前記薬剤を含んで固化するようにする工程を含む、実施態様13に記載の方法。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図12
図13
図14
図15
図16