(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6342374
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】遠心ファン
(51)【国際特許分類】
F04D 29/62 20060101AFI20180604BHJP
F04D 29/42 20060101ALI20180604BHJP
F04D 29/28 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
F04D29/62 C
F04D29/42 K
F04D29/42 M
F04D29/28 C
F04D29/28 N
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-209004(P2015-209004)
(22)【出願日】2015年10月23日
(65)【公開番号】特開2017-82607(P2017-82607A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2017年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】山田 卓司
(72)【発明者】
【氏名】松原 真朗
【審査官】
谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−140922(JP,A)
【文献】
特開昭63−215900(JP,A)
【文献】
特開2012−207600(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0086762(US,A1)
【文献】
特開2013−024208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/62
F04D 29/28
F04D 29/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングの内部にインペラを収納し、該インペラの回転に伴って吸い込み口から吸入した空気を吹き出し口から前記ケーシングの外方に向けて排出する遠心ファンにおいて、
前記ケーシングは上ケーシングと下ケーシングから構成され、前記上ケーシングと前記下ケーシングの間に介装された支柱を備え、前記ケーシングの側面であって、前記支柱の間に吹き出し口が形成され、
前記上ケーシングに形成された前記吸い込み口の周縁には軸方向上方に突出する環状の突起部が形成され、
前記上ケーシングの前記環状の突起部は前記上ケーシングの上面より軸方向上方に突出しており、
前記環状の突起部の外周側に位置する前記上面には複数の凹部が形成されると共に、該凹部の間にはリブが形成され、
前記上ケーシングの前記環状の突起部の下面には環状の溝が形成され、
前記インペラを構成する部材の一部である環状のシュラウドに形成された環状の突起部が前記溝の中に位置している
ことを特徴とする遠心ファン。
【請求項2】
前記環状のシュラウドの上面には、段部および傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の遠心ファン。
【請求項3】
前記環状の溝と前記環状のシュラウドに形成された前記環状の突起部との間に、ラビリンスシール構造が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の遠心ファン。
【請求項4】
前記環状のシュラウドに形成された前記環状の突起部が前記環状のシュラウドの軸方向上端に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の遠心ファン。
【請求項5】
前記環状のシュラウドに形成された前記環状の突起部が前記環状のシュラウドの上面の前記段部、または前記傾斜面のいずれかに形成されていることを特徴とする請求項2に記載の遠心ファン。
【請求項6】
前記上ケーシングの前記環状の突起部の径方向の幅は、前記環状のシュラウドに形成された前記段部、もしくは前記傾斜面の位置まで有していることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一項に記載の遠心ファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遠心ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
家電機器、OA機器、産業機器の冷却、換気、空調や、車両用の空調、送風などに広く用いられている送風機として、遠心ファンが知られている。従来の遠心ファンとして、ケーシングが上ケーシングと下ケーシングとからなり、上ケーシングと下ケーシングの間にインペラを収納し、インペラの回転に伴って吸い込み口から吸入した空気を上ケーシングと下ケーシングの間の側面に形成された吹き出し口から外方に向けて排出する遠心ファンが知られている(例えば、特許文献1参照)。
図4は、特許文献1に記載の遠心ファン100で、四角形のケーシング120が上ケーシング121と下ケーシング122からなり、上ケーシング121と下ケーシング122の間にインペラ130を収納している。インペラ130は環状のシュラウド131を備えている。インペラ130の高速回転により、吸込み口110から吸い込まれた空気は、羽根135の間を通過してインペラ130の外周から外方に吹き出され、上ケーシング121と下ケーシング122の間の側面に形成された吹出し口111から外方に向けて排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−207600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された遠心ファンを他の装置や機器の筺体に取り付ける構造について、特許文献1にその具体的な構造は記載されていない。この種のファンでは、通常、上ケーシングに径方向外方に延在するフランジを複数箇所形成し、フランジに形成した貫通穴にボルトやねじ等を挿通することで、ファンを装置や機器の筺体に締結する構造が採用される。しかしながら、遠心ファンの位置決め精度が求められる場合、ボルトやねじ等を挿通し、装置や機器の筺体に締結する構造のみでは、位置決め作業が容易ではなく、高精度な位置決めは容易ではない。
【0005】
以上のような背景において、本発明は、装置や機器への取り付け時の位置合わせが容易にでき、位置決め精度を向上することができる遠心ファンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、ケーシングの内部にインペラを収納し、該インペラの回転に伴って吸い込み口から吸入した空気を吹き出し口から
前記ケーシングの外方に向けて排出する遠心ファンにおいて、
前記ケーシングは上ケーシングと下ケーシングから構成され、前記上ケーシングと前記下ケーシングの間に介装された支柱を備え、前記ケーシングの側面であって、前記支柱の間に吹き出し口が形成され、前記
上ケーシングに形成された前記吸い込み口の周縁には軸方向上方に突出する環状の突起部が形成され、
前記上ケーシングの前記環状の突起部は前記
上ケーシングの上面より軸方向上方に突出して
おり、前記環状の突起部の外周側に位置する前記上面には複数の凹部が形成されると共に、該凹部の間にはリブが形成され、前記上ケーシングの前記環状の突起部の下面には環状の溝が形成され、前記インペラを構成する部材の一部である環状のシュラウドに形成された環状の突起部が前記溝の中に位置していることを特徴とする遠心ファンである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記環状のシュラウドの上面には、段部および傾斜面が形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項
1または2に記載の発明において、前記環状の溝と前記環状のシュラウドに形成された前記環状の突起部との間に、ラビリンスシール構造が形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項
1乃至3のいずれか一項に記載の発明において、前記環状のシュラウドに形成された前記環状の突起部が前記環状のシュラウドの軸方向上端に形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記環状のシュラウドに形成された前記環状の突起部が前記環状のシュラウドの上面の段部、または傾斜面のいずれかに形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項
2乃至5のいずれか一項に記載の発明において、
前記上ケーシングの前記環状の突起部の径方向の幅は、前記環状のシュラウドに形成された前記段部、もしくは前記傾斜面の位置まで有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、装置や機器への取り付け時の位置合わせが容易にでき、位置決め精度を向上することができる遠心ファンが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1)遠心ファンの構造
図1は、実施形態の遠心ファンの分解斜視図である。
図2は、
図1に示す遠心ファンの断面図である。
図3は、
図2に示す遠心ファンの部分拡大図である。
図2には、実施形態の遠心ファン1が示されている。遠心ファン1の基本構造は、特許文献1に記載された構造と略同じで、ケーシング2を備えている。ケーシング2は、上ケーシング3と下ケーシング4から構成され、上ケーシング3と下ケーシング4の間にインペラ8(
図1参照)を収納している。
【0015】
インペラ8の回転に伴って吸い込み口35から吸入した空気は、羽根10の間を通過して上ケーシング3と下ケーシング4の間に介装された支柱7を除いた側面に形成された吹き出し口36からケーシング2の外方(径外側の方向)に向けて排出される。インペラ8は、アウターロータ型のブラシレスDCモータであるモータ21によって駆動され回転する。モータ21は、モータベース5に形成した凹部5aの底面に装着されている。
【0016】
図3に示すように、モータ21は、ステータ22を備えている。ステータ22は、薄板状のコアを所定枚数、積層してなるステータコア23と、ステータコア23の軸方向両側から装着された上インシュレータ24aと下インシュレータ24bからなるインシュレータ24と、インシュレータ24を介してステータコア23のティースに巻回されたコイル25とから構成されている。
【0017】
ステータコア23を構成する薄板状のコアは、環状ヨークから径外方に延在する複数のティース(
図3では6個のティースを有している)を備えている。ステータコア23の中央に形成された開口には、軸受保持部26が嵌合しており、軸受保持部26の外側にステータ22が配設された構造を有している。軸受保持部26の内側には軸受27、28が装着され、シャフト16が回転可能に支持されている。また、下インシュレータ24bには回路基板30が装着され、回路基板30は、凹部5aの中に収納されている。
【0018】
ロータ15は、シャフト16と、シャフト16に装着されたボス17部と、ボス部17に装着されたカップ状態のロータヨーク18と、ロータヨーク18の内側に固着された環状のマグネット19と、から構成されている。ロータヨーク18は、ボス部17にカシメ固着されている。
【0019】
ロータヨーク18の外周にはインペラ8がフランジ20を利用して結合されている。
図1に示すように、インペラ8は、環状のシュラウド9と、複数の羽根10と、円板状の主板11から構成されており、羽根10と主板11は樹脂の一体成形にて形成されている。羽根10は、主板11から軸方向に立設し、回転方向に対して後向きに湾曲傾斜した形状を有し、回転方向に対して後向き羽根(いわゆる、ターボ型)となっている。羽根10は全て同じ形状である。羽根10と環状のシュラウド9とは、超音波溶着にて接合されている。
【0020】
環状のシュラウド9の上面は2箇所の段部を有し、各段部は平面で、各段部の間は傾斜面を形成し、環状のシュラウド9の軸方向上端には環状の突起部9aが形成されている。この段部の平面によって羽根10と環状のシュラウド9とを超音波溶着で結合する際、超音波溶着機の電極を当て易くしている。環状のシュラウド9の軸方向上端に形成された環状の突起部9aの頂部は上ケーシング3の下面に形成された環状の凹部(溝)3cの中に位置し、上ケーシング3で覆われている。
【0021】
インペラ8の主板11は、内周側と外周側との間に傾斜面11aを有している。つまり、インペラ8の内周側は軸方向上方に位置し、インペラ8の外周側は軸方向下方に位置し、この内周側と外周側との間に傾斜面11aを有している。
【0022】
インペラ8とロータ15との結合は、以下のようにして行われる。まず、環状のフランジ20をロータヨーク18の外周面に、例えば抵抗溶接にて溶着する。次に、フランジ20に主板11を固定する。フランジ20の内周側の下面には一体成形にて形成したピン(図示省略)が形成されており、このピンをフランジ20に形成した貫通穴に嵌合させ、ピンの先端を熱で潰して熱カシメすることでフランジ20に主板11が固定される。こうして、ロータ15にインペラ8が装着される。
【0023】
上ケーシング3の中央には吸い込み口35となる開口が形成され、開口の周縁には軸方向上方に突出する環状の突起部3bが形成されており、環状の突起部3bの外周側であって、上ケーシング3の上面側には複数の凹部3a(肉盗み部分)が形成されており、凹部3aの間には放射状に複数のリブが形成されている(
図1参照)。上ケーシング3と下ケーシング4の結合は、上ケーシング3と下ケーシング4の間に支柱7を介装し、支柱7をねじ等の締結材で締結することで行われている。具体的には、支柱7は上ケーシング3と樹脂の一体成形にて形成されており、支柱7には下孔が形成されている。そして、支柱7を下ケーシング4(ベースプレート6)の貫通孔6d(
図1参照)に貫通させ、貫通孔5dを介してタッピングねじ40を支柱7の上記下孔に捩じ込むことで上ケーシング3と下ケーシング4の結合が行われている。なお、締結手段はこれに限定されず、例えば、下ケーシング4側からねじ(またはボルト)を支柱7の貫通穴に挿通し、上ケーシング3側からナットで固定する構成であってもよい。
【0024】
下ケーシング4は、金属製(例えば、鉄板)のモータベース5と、樹脂製のベースプレート6とから構成されており、両者を重ね合わせて下ケーシング4が形成されている。モータ21は、モータベース5に形成した凹部5aの底面に装着される。ベースプレート6の外周端の4箇所には、下方に延在する側部6a(
図1参照)が形成されており、この側部6aの内側がモータベース5の4辺の外周に当接し、位置決めがされている。
【0025】
回路基板30には、モータ21を駆動制御するための部品や制御ICなどの電子部品31が実装されている。ここで、限られた空間で回路基板30に実装された電子部品31とインペラ8との接触を防止するために、主板11には傾斜面11aが形成されており、この傾斜面11aの位置に電子部品31の一部が収容される。このため、電子部品31とインペラ8との接触が防止できると共に、軸方向の薄型化が図れる。
【0026】
(2)特徴
上ケーシング3の中央には吸い込み口35となる開口が形成され、開口の周縁には軸方向上方に突出する環状の突起部3bが形成されており、この環状の突起部3bは上ケーシング3の上面より上方に突出している。遠心ファン1を他の装置や機器の筺体に取り付ける際、この環状の突起部3bをインローとして嵌合することによって、装置や機器への取り付け時の位置合わせが容易にでき、位置決め精度を向上できる。また、筺体に形成する開口の寸法も遠心ファン1の取り付け時のバラツキを考慮する必要がない。
【0027】
上ケーシング3の環状の突起部3bの下面には環状の凹部(溝)3cが形成されており、環状シュラウド9の軸方向上端に形成された環状の突起部9aの頂部は上ケーシング3の下面に形成された環状の凹部(溝)3cの中に位置している。この構造において、環状の突起部9aは、上ケーシング3で覆われている。そして、環状のシュラウド9の突起部9aの側面と上ケーシング3との間に形成された隙間でラビリンスシール構造が構成されている。このラビリンス構造によりインペラ外周から吹き出された空気の一部が吸い込み口35の方向に逆流することが抑制される。
【0028】
また、上ケーシング3の環状の突起部3bの下面にラビリンス構造を構成しているが、上ケーシング3の環状の突起部3bを装置や機器への取り付け時のインローとして用いるため、環状の突起部3bは装置や機器の中に位置する。このため、遠心ファン1の軸方向の高さは実質的には上ケーシング3の上面までの高さとなり、実効高さを低くすることができる。
【0029】
環状の突起部3bの径方向の幅は特に限定されるものではなく、その幅は環状のシュラウド9の上面に形成された吸い込み口35側に位置する段部、もしくは2箇所の段部の間に形成された傾斜面の位置まで有したものであってもよい。
【0030】
環状のシュラウド9の突起部9aは軸方向上端に形成されているが、これに限定されるものではなく、吸い込み口35側に位置する段部に形成、もしくは2箇所の段部の間に形成された傾斜面の位置に形成してもよい。
【0031】
そして、上ケーシング3の突起部3bの下面に形成される環状の凹部(溝)3cは環状のシュラウド9に形成された環状の突起部9aに対応する位置に形成され、環状の突起部9aの頂部は環状の凹部(溝)3cの中に位置する。
【0032】
環状の突起部3bをインローとして用いる以外に、他の部材(例えば、カバー等)を取り付けるための箇所として、この環状の突起3bを用いてもよいし、位置決め用として用いても勿論よい。
【符号の説明】
【0033】
1…遠心ファン、2…ケーシング、3…上ケーシング、3a…凹部、3b…環状突起部、3c…環状の凹部、4…下ケーシング、5…モータベース、5a…凹部、5d…貫通孔、6…ベースプレート、6a…側部、6d…貫通孔、7…支柱、8…インペラ、9…シュラウド、9a…突起部、10…羽根、11…主板、11a…傾斜面、15…ロータ、16…シャフト、17…ボス部、18…ロータヨーク、19…マグネット、20…フランジ、21…モータ、22…ステータ、23…ステータコア、24…インシュレータ、24a…上インシュレータ、24b…下インシュレータ、25…コイル、26…軸受保持部、27…軸受、28…軸受、30…回路基板、31…電子部品、35…吸い込み口、36…吹き出し口。