(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6342382
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】消臭剤
(51)【国際特許分類】
A61L 9/01 20060101AFI20180604BHJP
C11B 9/00 20060101ALN20180604BHJP
【FI】
A61L9/01 H
!C11B9/00 G
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-253168(P2015-253168)
(22)【出願日】2015年12月25日
(65)【公開番号】特開2017-113354(P2017-113354A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2017年2月14日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ・平成27年9月5日「第59回 香料・テルペンおよび精油化学に関する討論会講演要旨集」
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594104445
【氏名又は名称】リリース科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089462
【弁理士】
【氏名又は名称】溝上 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100129827
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 進
(72)【発明者】
【氏名】邊見 篤史
(72)【発明者】
【氏名】杉野 努
(72)【発明者】
【氏名】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】奥原 正國
【審査官】
松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−133490(JP,A)
【文献】
特開2007−068625(JP,A)
【文献】
特開平04−030857(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/147200(WO,A1)
【文献】
特開平05−043454(JP,A)
【文献】
特開2003−325648(JP,A)
【文献】
勝原 淳,悪臭に対するスマキング剤の効果と化学構造,香料,1972年 8月,No.102,p.25〜28
【文献】
特許庁公報 13(2001)−23[7349] 周知慣用技術集(香料) 第III部 香粧品用香料,2001年 6月15日,p.639〜646
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/01
C11B 9/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジメチルトリスルフィド、2−ノネナール、イソ吉草酸、ジメチルジスルフィド、アリルメチルスルフィド、及びアリルメルカプタン、の臭気ガス濃度を同時に減退させるための、1,4−シネオール、又は1,8−シネオールを成分とする消臭剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数種の悪臭の成分を同時に不活性化することのできる消臭剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生活空間における悪臭としては様々なものがある。悪臭は発生要因や成分が異なるので、例えばある悪臭成分を不活性化(例えば吸着除去して臭わなくする)しようとしても、およそ1種又は2種程度の同種あるいは同属の悪臭(成分)にしか対応できなかった。
【0003】
このため、従来では、様々な悪臭に幅広く対処するために、いわゆるマスキング(より強く良い臭いを用いて悪臭を目立たなくする)効果に頼ったものが、例えば特開2003−190264号公報(特許文献1)、特開2003−137758号公報(特許文献2)など多数存在する。
【0004】
しかしながら、これら従来の手法は、上記のとおり、マスキング効果によるものであったため、様々な悪臭に対して、それら悪臭が目立たなくなるようにより強い別の(良い)臭いで覆うことで対処しているに過ぎず、不活性化して根源を断っているわけではない。したがって、場合によっては、マスキング用の臭いと悪臭とが混ざり合ってより不快な臭いが生じる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−190264号公報
【特許文献2】特開2003−137758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題は、従来では、数種の悪臭に対してはマスキングによって対処するしかないが、マスキングによって悪臭と混ざってより不快な臭いが生じる点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の消臭剤は、ジメチルトリスルフィド、2−ノネナール、イソ吉草酸、ジメチルジスルフィド、アリルメチルスルフィド、及びアリルメルカプタン、の臭気ガス濃度を減退させる
ための、1,4−シネオール、又は1,8−シネオールを成分とするものである。
【発明の効果】
【0008】
上記構成によれば、後述する実験結果のとおり、悪臭とされる気体(又はガス)の全てではないが、効果の高い順に、食品の混合臭でいわゆる沢庵臭の主成分、癌の患部から発生する臭いで日常生活空間とはやや離れるがいわゆる病院臭の主成分の一つとされる「ジメチルトリスルフィド」、胸部や頭部の臭いでいわゆる加齢臭の主成分とされる「2−ノネナール」、足裏の臭いでいわゆる(蒸れた)靴下臭の主成分とされる「イソ吉草酸」、呼気の臭いでいわゆる腐敗キャベツ臭の主成分とされる「ジメチルジスルフィド」、同じく呼気の臭いでいわゆるニンニク臭の主成分とされる「アリルメルカプタン」、「アリルメチルスルフィド」といった6種の悪臭源を不活性化することができ、幅広く対応させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1はアンモニアに対する本発明の消臭効果を確認するために行った実験の結果を示す表である。
【
図2】
図2はトリメチルアミンに対する本発明の消臭効果を確認するために行った実験の結果を示す表である。
【
図3】
図3は酢酸に対する本発明の消臭効果を確認するために行った実験の結果を示す表である。
【
図4】
図4はイソ吉草酸に対する本発明の消臭効果を確認するために行った実験の結果を示す表である。
【
図5】
図5はアセトアルデヒドに対する本発明の消臭効果を確認するために行った実験の結果を示す表である。
【
図6】
図6は2−ノネナールに対する本発明の消臭効果を確認するために行った実験の結果を示す表である。
【
図7】
図7はアリルメルカプタンに対する本発明の消臭効果を確認するために行った実験の結果を示す表である。
【
図8】
図8はメチルメルカプタンに対する本発明の消臭効果を確認するために行った実験の結果を示す表である。
【
図9】
図9は硫化水素に対する本発明の消臭効果を確認するために行った実験の結果を示す表である。
【
図10】
図10はアリルメチルスルフィドに対する本発明の消臭効果を確認するために行った実験の結果を示す表である。
【
図11】
図11はジメチルジスルフィドに対する本発明の消臭効果を確認するために行った実験の結果を示す表である。
【
図12】
図12はジメチルトリスルフィドに対する本発明の消臭効果を確認するために行った実験の結果を示す表である。
【
図13】
図13は本発明の消臭効果を確認するために行った実験データをまとめた表である。
【
図14】
図14は本発明の効果を確認するために、その消臭効果を他の消臭物質(ワレモコウ抽出物および柿抽出物)と比較した実験結果をまとめた表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の消臭剤は、数種の悪臭を同時に対処するという目的を、1,4−シネオール、又は1,8−シネオールを主原料とすることで達成した。
【0011】
1,4−シネオールはアオモジ(Listsea cubeba(Lour.) Pers)の精油に含まれ、1,8−シネオールはユーカリ(Eucalyptus polybractea R.T. Baker)の精油に含まれている物質であり、清涼感のある香りを有し、一般的には鎮咳剤、(吸入剤として用いられることがある)抗ウイルス剤として使用され、人体への安全性は、低毒性、非刺激性、非感作性とされている。
【0012】
したがって、例えば本発明の消臭剤を服用、口腔内噴霧、飲用等によって使用したとしても、その使用が適切であれば、人体の健康に大きな影響はないと思われる。なお、1,4−シネオール、1,8−シネオールは、それ自体に清涼感のある(樟脳のような)臭いを有するが、この臭いで悪臭がマスキングされているわけではない。この点について、以下に説明する実験によってその効果を説明する。
【実施例】
【0013】
(対応可能な悪臭について)
実験は、1,8−シネオールを0,1g、0,2g、0,3gとしたサンプル1,2,3と、1,4−シネオール0,1g、0,2g、0,3gとしたサンプル4,5,6をそれぞれ挿入したフラスコに、各々、アンモニア、トリメチルアミン、酢酸、アセトアルデヒド、メチルメルカプタン、ジメチルトリスルフィド、アリルメルカプタン、アリルメチルスルフィド、2−ノネナール、イソ吉草酸、ジメチルジスルフィド、硫化水素を添加して密封し、1時間室温で静置後、ヘッドスペースガスを採取して、北川式ガス採取器AP−20及びガスクロマトグラフィー(FID,FPD)を用いて臭気ガス濃度を測定し、測定値から臭気濃度の減退率(%)を算出した。それぞれの結果を
図1〜
図12に、この結果に対する結論を
図13に、それぞれ示す。
【0014】
以上の結果(
図13)から、0.2gの1,8−シネオール及び1,4−シネオールを用いることで、実用消臭率を50%以上とした場合、順に、ジメチルトリスルフィド(95%)、2−ノネナール(95%)、イソ吉草酸(75%)、ジメチルジスルフィド(90%)、アリルメチルスルフィド(80%)、アリルメルカプタン(65%)で、6種の悪臭に対して「不活性化」が可能であることが判明した。
【0015】
(他の消臭成分との比較)
次に、0.1gの1,8−シネオール(上記サンプル1)、0.1gの1,4−シネオール(上記サンプル4)、及び2−ノネナールに対する消臭効果が高いとされる特開2011−183019号記載のワレモコウの抽出物0.1g(比較例1)、アリルメチルスルフィドに対する消臭効果が高いとされる柿の抽出物0.1g(比較例2)について、抽出物0.1g(比較例2)の本願発明で不活性化が可能である、ジメチルトリスルフィド、2−ノネナール、イソ吉草酸、ジメチルジスルフィド、アリルメチルスルフィド、アリルメルカプタン(
図13の結果順)の6種に対する消臭効果を比較した。なお、実験手法は上記と同様である。この結果を
図14に示す。
【0016】
比較例1では0.1gにおいてワレモコウ抽出物がイソ吉草酸に対して、本実験の実用消臭率の条件を満たすことが判明したほか、ワレモコウ抽出物は2−ノネナールよりもイソ吉草酸とアリルメルカプタンに対して消臭率が高いことが判明した。しかし、比較例1はワレモコウ抽出物は本願発明のサンプル1、4よりイソ吉草酸、2−ノネナールに対する消臭効果が劣っていることが、またワレモノコウ抽出物は比較例1では本願発明のサンプル4とアリルメルカプタンに対する消臭率は等しいことが判明した。
【0017】
比較例2は0.1gであれば、柿抽出物はアリルメルカプタンとイソ吉草酸の2種類の悪臭ガスに対して、本実験の実用消臭率の条件を満たすことが判明した。しかし、比較例2では、本願発明のサンプル1,4は、柿抽出物よりアリルメチルスルフィドに対する消臭効果が優っていることが判明した。
【0018】
以上の結果(
図14)から、0.1gの微量でも、1,4−シネオールは
図13に示した0.2gで実用消臭率の条件(消臭率50%以上)を満たした6種のうち、アリルメルカプタンを除く5種について、1,8−シネオールは6種について、不活性化できることが判明した。一方、比較例1,2は、
図13に示した0.2gで実用消臭率の条件(消臭率50%以上)を満たした6種のうち、それぞれ1種又は2種しか不活性化することができなかった。
【0019】
このように、本発明は、1,4−シネオール又は1,8−シネオールいずれか一方で、ジメチルトリスルフィド、2−ノネナール、イソ吉草酸、ジメチルジスルフィド、アリルメチルスルフィド、アリルメルカプタンを主成分とする悪臭を同時に不活性化(消臭)することができると共に、従来の個々の悪臭を不活性化することができる成分と比較しても微量でも高い消臭効率があることが判明した。
【0020】
また、H.Worthらは、文献J Asthma. 2012, 49(8):849-53.(Patients with asthma benefit from concomitant therapy with cineole: a placebo-controlled, double-blindtrial)において、喘息患者に200mgを1日3回、トータル600mgで半年間投与を続ける臨床試験を行っているが副作用はないようである、また、Xu. Jらは、文献Int J Clin Exp Pathol. 2014, 15;7(4):1495-501.(Acute and subacute toxicity study of 1,8-cineole in mice.)において、マウスを使った急性毒性試験ではLD50が3849mg/kgで毒性は非常に低いと、報告しており、これらに基づけば本発明の消臭剤は、(1,4−シネオール又は1,8−シネオール)シネオールを主成分としているので、適切な容量・用法に基づく、例えば生活空間に噴霧したり、口腔内に噴霧したり、服用又は飲用しても人体に悪影響は低いと思われ、安全かつ(生活空間の)幅広い悪臭についての消臭が期待できる。