(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、増殖性疾患の治療又は予防のための、それを必要とする対象への個別投与、同時投与又は逐次投与に有用な、(a)B−Raf阻害薬、(b)EGFR阻害薬、及び場合によっては(c)PI3K阻害薬を含む治療用組合せに関する。
【0013】
【化2】
のB−Raf阻害薬又は医薬として許容されるその塩(以下、「化合物A」と称する)、
(b)EGFR阻害薬、及び場合によっては
(c)PI3K阻害薬、特に選択的PI3Kα阻害薬
を含む治療用組合せに関する。
【0014】
本発明はとりわけ、EGFR阻害薬がチロシンキナーゼ阻害薬、例えば、エルロチニブ又はゲフィチニブ、とりわけエルロチニブ(erolitinib)である治療用組合せ、及びとりわけ、EGFR阻害薬がモノクローナル抗体、例えば、セツキシマブ又はパニツムマブ、とりわけセツキシマブである治療用組合せに関する。
【0015】
PI3K阻害薬は、当技術分野において公知である。場合によるPI3K阻害薬はとりわけ、選択的PI3K−α阻害薬、すなわち、WO2010/029082に記載されている2−カルボキサミドシクロアミノ尿素誘導体、特に式(I)
【0017】
【化4】
からなる群から選択されるヘテロアリールを表し、
R1は、以下の置換基:(1)非置換である又は置換されている、好ましくは置換されているC1〜C7−アルキル(ここで、前記置換基は、以下の部分:重水素、フルオロの1個若しくは複数、好ましくは1〜9個、又は以下の部分C3〜C5−シクロアルキルの1〜2個から独立して選択される);(2)場合によって置換されているC3〜C5−シクロアルキル(前記置換基は、以下の部分:重水素、C1〜C4−アルキル(好ましくはメチル)、フルオロ、シアノ、アミノカルボニルの1個又は複数、好ましくは1〜4個から独立して選択される);(3)場合によって置換されているフェニル(ここで、前記置換基は、以下の部分:重水素、ハロ、シアノ、C1〜C7−アルキル、C1〜C7−アルキルアミノ、ジ(C1〜C7−アルキル)アミノ、C1〜C7−アルキルアミノカルボニル、ジ(C1〜C7−アルキル)アミノカルボニル、C1〜C7−アルコキシの1個又は複数、好ましくは1〜2個から独立して選択される);(4)場合によって一置換又は二置換されているアミン(ここで、前記置換基は、以下の部分:重水素、C1〜C7−アルキル(これは、非置換であるか、又は重水素、フルオロ、クロロ、ヒドロキシからなる群から選択される1個若しくは複数の置換基で置換されている)、フェニルスルホニル(これは、非置換であるか、又は1個若しくは複数の、好ましくは1個のC1〜C7−アルキル、C1〜C7−アルコキシ、ジ(C1〜C7−アルキル)アミノ−C1〜C7−アルコキシで置換されている)から独立して選択される);(5)置換されているスルホニル(ここで、前記置換基は、以下の部分:C1〜C7−アルキル(これは、非置換であるか、又は重水素、フルオロからなる群から選択される1個又は複数の置換基で置換されている)、ピロリジノ(これは、非置換であるか、又は重水素、ヒドロキシ、オキソからなる群から選択される1個又は複数の置換基、特に1個のオキソで置換されている)から選択される);(6)フルオロ、クロロの1つを表し、
R2は、水素を表し、
R3は、(1)水素、(2)フルオロ、クロロ、(3)場合によって置換されているメチル(ここで、前記置換基は、以下の部分:重水素、フルオロ、クロロ、ジメチルアミノの1個又は複数、好ましくは1〜3個から独立して選択される)を表す]
の化合物である。
【0018】
式Iの化合物の定義において使用する基及び記号は、WO2010/029082に開示されている意味を有する。
【0019】
好ましいPI3K阻害薬は、WO2010/029082に明確に記載されている化合物である。本発明の非常に好ましい選択的PI3K−α阻害薬は、式
【0020】
【化5】
の(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)又は医薬として許容されるその塩(本明細書中で、「化合物B」と称する)である。
【0021】
以下において、化合物AとEGFR阻害薬との2剤組合せ、化合物AとEGFR阻害薬と式IのPI3K阻害薬との3剤組合せ、より特定すると、化合物Aとセツキシマブとの2剤組合せ、及び化合物Aとセツキシマブと化合物Bとの3剤組合せを、本発明の組合せと称するものとする。
【0022】
本発明は特に、増殖性疾患の治療又は予防のための、それを必要とする対象への個別投与、同時投与又は逐次投与に有用な本発明の組合せに関する。
【0023】
本発明はまた、それを必要とする対象における増殖性疾患の治療又は予防用の医薬組成物又は医薬品の調製に使用するための本発明の組合せに関する。
【0024】
本発明はさらに、増殖性疾患の治療又は予防用の医薬組成物又は医薬品の調製のための、本発明の組合せの使用に関する。
【0025】
本発明は、増殖性疾患を有する対象を治療する方法であって、増殖性疾患に対して共同で治療有効量で本発明の組合せを前記対象に投与するステップを含む方法に関する。
【0026】
本発明はさらに、増殖性疾患の進行遅延又は治療に使用するための、治療薬としての本発明の組合せを同時投与、個別投与又は逐次投与のための使用説明書と共に含む商用パッケージを提供する。
【0027】
本明細書中で使用する一般的な用語は、特に明記しない限り、以下の意味で定義する:
【0028】
本明細書中において、用語「含む(comprising)」及び「含む(including)」は、特に断りのない限り、オープンエンドで非限定的な意味で使用する。
【0029】
用語「1つ(1種又は1個)の(a又はan)」及び「the」は、本発明の記載との関連において(とりわけ、添付した特許請求の範囲との関連において)、本明細書中で特に断りのない限り又は明らかに文脈と矛盾することがない限り、単数及び複数の両方を網羅すると解釈すべきである。化合物、塩などに対して複数形を用いる場合は、これは、単一の化合物、塩なども意味すると解釈する。
【0030】
本明細書中で使用する「組合せ」、「治療用組合せ」又は「組合せ医薬」は、1つの単位剤形内の固定した組合せ、又は組合せパートナーが協同効果、例えば、相乗効果を示すことを可能にする時間間隔内で、化合物A及び化合物Bを独立して同時に若しくは個別に投与し得る併用投与のためのキットオブパーツのいずれかを定義する。
【0031】
本明細書中において、用語「医薬組成物」は、対象、例えば、哺乳動物又はヒトに投与される少なくとも1種の治療薬を含有する混合物又は溶液であって、哺乳動物に悪影響を及ぼす特定の疾患又は状態を予防又は治療するためのものを指すと定義する。
【0032】
本明細書中において、用語「医薬として許容される」は、健全な医学的判断の範囲内で、対象、例えば、哺乳動物又はヒトの組織との接触に好適であり、過度の毒性、刺激、アレルギー反応及び問題となる他の合併症を伴わない化合物、材料、組成物及び/又は剤形であって、妥当なベネフィット/リスク比に相応するものを指すと定義する。
【0033】
本明細書中において、用語「組合せ調製物(combined preparation)」はとりわけ、前記で定義した組合せパートナー(a)及び(b)を、独立して、又は区別される量の組合せパートナー(a)及び(b)を含む異なる固定した組合せを用いて、すなわち、同時に又は異なる時点に投薬できるという意味の「キットオブパーツ」を指すと定義する。その場合、キットオブパーツの部分は、例えば、同時に投与することもできるし、又は時間をずらして、すなわち、キットオブパーツの任意の部分に対して異なる時点で且つ等しい若しくは異なる時間間隔で投与することもできる。組合せ調製物中の、投与される組合せパートナー(a)対組合せパートナー(b)の総量比は、例えば、治療される患者サブポピュレーションの要求又は個々の患者の要求に対処するために、変更することができる。
【0034】
本明細書中で使用する用語「同時投与」又は「併用投与」は、選択された治療薬を個々の患者に投与することを包含すると定義し、作用剤が必ずしも、同一の投与経路によって又は同時に投与されるとは限らない治療レジメンを含むことを意図する。
【0035】
本明細書中で使用する用語「治療する」又は「治療」は、対象の少なくとも1つの症状を軽減、低減若しくは緩和するか又は疾患の進行を遅延させる治療を含む。例えば、治療は、障害の1つ若しくはいくつかの症状の減少、又は障害、例えば、がんの完全な根絶であることができる。本発明の意味の範囲内では、用語「治療する」はまた、阻止、発症(すなわち、疾患の臨床症状が現れる前の期間)の遅延、及び/又は疾患の発現若しくは悪化のリスクの低減を指す。本明細書中において、用語「保護する」は、対象における疾患の発現又は継続若しくは増悪を、予防、遅延若しくは治療すること又は必要に応じてその全てを意味するのに使用する。
【0036】
用語「共同で治療的に活性な」又は「共同治療効果」は、治療薬の投与を、個別に(時間的にずらして、とりわけ配列特異的な方法で)、治療薬が好ましくは(prefer)、治療される温血動物、とりわけヒトにおいて、(好ましくは相乗的な)相互作用(共同治療効果)を依然として示すような時間間隔で、行い得ることを意味する。それに該当するか否かは、なかんずく、血中レベルを追跡し、少なくともある一定の時間間隔の間、治療されるヒトの血液中に両化合物が存在することを示すことによって、判定できる。
【0037】
治療薬の組合せの「医薬として有効な量」又は「臨床的に有効な量」又は「治療有効量」という用語は、組合せで治療される障害を、臨床的に観察可能なベースラインの徴候及び症状よりも、観察可能な程度に改善するのに十分な量である。
【0038】
本明細書中で使用する用語「対象」又は「患者」は、がん又は直接的若しくは間接的にがんを伴うあらゆる障害を患う可能性がある又はそれで苦しんでいる動物を含む。対象の例としては、哺乳動物、例えば、ヒト、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ウサギ、ラット及び遺伝子導入非ヒト動物が挙げられる。好ましい実施形態において、対象は、ヒト、例えば、がんを患っている、がんを患うリスクがある、又は潜在的にがんを患う可能性があるヒトである。
【0039】
用語「およそ」又は「約」は、所与の値又は範囲の10%以内、より好ましくは5%以内の意味を有する。
【0040】
化合物A及び/又は化合物Bは、遊離形態又は医薬として許容される塩の形態で投与できる。
【0041】
本明細書中で使用する「医薬として許容される塩」は、特に断りのない限り、本発明の化合物中に存在し得る酸性基及び塩基性基の塩を含む。塩基性の本発明の化合物は、種々の無機酸及び有機酸と様々な塩を形成できる。本発明のこのような塩基性化合物の医薬として許容される酸付加塩の調製に使用できる酸は、無毒性の酸付加塩、すなわち、医薬として許容される陰イオンを含む塩、例えば、酢酸塩、安息香酸塩、臭化物塩、塩化物塩、クエン酸塩、フマル酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化物塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩及び酒石酸塩を形成するものである。
【0042】
特に明記しない限り若しくは明細書によって明確に示されない限り、又は該当しないのでなければ、本発明の組合せにおいて有用な治療薬への言及には、化合物の遊離塩基及び化合物の医薬として許容される全ての塩が含まれる。
【0043】
本発明は特に、それを必要とする対象において増殖性疾患を治療又は予防するのに有用な本発明の組合せに関する。本発明のこの実施形態において、本発明の組合せは、有効量の化合物Aと有効量のEGFR阻害薬、例えば、モノクローナル抗体EGFR阻害薬、とりわけセツキシマブ又はパニツムマブ、とりわけセツキシマブとを含む併用療法を対象に施すことを含む、増殖性疾患の治療又は予防に使用される。好ましくは、これらの作用剤は、組み合わされた場合に有益な効果をもたらす、治療的に有効な投与量で投与する。投与は、個別投与、同時投与又は逐次投与であることができる。
【0044】
本発明はさらに、それを必要とする対象における増殖性疾患の治療又は予防に有用な本発明の組合せに関する。本発明のこの実施形態において、本発明の組合せは、有効量の化合物Aと、有効量のEGFR阻害薬、例えば、モノクローナル抗体EGFR阻害薬、とりわけセツキシマブ又はパニツムマブ、とりわけセツキシマブと、有効量の選択的PI3K−α阻害薬、とりわけ式Iの化合物、好ましくは化合物合Bとを含む3剤併用療法を対象に施すことを含む、増殖性疾患の治療又は予防に使用される。好ましくは、これらの作用剤は、組み合わされた場合に有益な効果をもたらす、治療的に有効な投与量で投与する。投与は、個別投与、同時投与及び/又は逐次投与であることができる。
【0045】
したがって、本発明は最も特定すると、
(a)式
【0046】
【化6】
のB−Raf阻害薬又は医薬として許容されるその塩と、
(b)セツキシマブであるEGFR阻害薬と
の組合せに関する。
【0048】
【化7】
のB−Raf阻害薬又は医薬として許容されるその塩と、
(b)セツキシマブであるEGFR阻害薬と、
(c)式IのPI3K阻害薬、とりわけ式
【0049】
【化8】
のPI3K阻害薬と
の3剤組合せに関する。
【0050】
一実施形態において、増殖性疾患はがんである。本明細書中において、用語「がん」は、全ての固形腫瘍及び血液学的悪性疾患を含む広範囲の腫瘍を意味するのに使用する。このような腫瘍の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定するものではない:以下の良性又は悪性腫瘍:脳、肺(特に、小細胞肺がん及び非小細胞肺がん)、扁平上皮細胞、膀胱、胃、膵臓、乳房、頭頸部、腎臓(renal)、腎臓(kidney)、尿管、卵巣、前立腺、結腸直腸、食道、精巣、婦人科(例えば、子宮肉腫、卵管、子宮内膜、子宮頸部、膣又は外陰部の癌)、甲状腺、膵臓、骨、皮膚、黒色腫、子宮、卵巣、直腸、肛門、結腸、精巣、ホジキン病、食道、小腸、内分泌系(例えば、甲状腺、副甲状腺又は副腎)、軟部組織の肉腫、尿道、陰茎、白血病、リンパ腫、中枢神経系の新生物、肉腫、骨髄腫、胆道、肝臓、神経線維腫症、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)及びカポジ肉腫。
【0051】
本発明のさらなる実施形態において、増殖性疾患は、黒色腫、肺がん(非小細胞肺がん(NSCLC)を含む)、結腸直腸がん(CRC)、乳がん、腎臓がん、例えば、腎細胞癌(RCC)、肝がん、子宮内膜がん、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)、甲状腺がん、特に甲状腺乳頭がん、膵臓がん、神経線維腫症又は肝臓癌などである。
【0052】
本発明のさらなる実施形態において、増殖性疾患は固形腫瘍である。用語「固形腫瘍」はとりわけ、黒色腫、乳がん、卵巣がん、結腸直腸がん、並びに一般的には胃腸管、子宮頸がん、肺がん(小細胞肺がん及び非小細胞肺がんを含む)、頭頸部がん、膀胱がん、前立腺がん又はカポジ肉腫を意味する。本組合せは、固体腫瘍及びまた液性腫瘍の成長を阻害する。さらに、腫瘍型及び使用する特定の組合せによっては、腫瘍体積の減少を達成できる。本明細書中に開示した本発明の組合せは、腫瘍の転移拡散及び微小転移巣の成長又は発現の予防にも適する。本明細書中に開示した本発明の組合せは、予後不良患者、とりわけ、転移性黒色腫、結腸直腸がん又は膵臓がんを有するこのような予後不良患者の治療に好適である。
【0053】
さらなる一実施形態において、増殖性疾患は、黒色腫又は結腸直腸がん、特に結腸直腸がんである。
【0054】
本発明の組合せは、RAS/RAF/MEKシグナル伝達経路における遺伝子変化、例えば、B−Raf変異又は遺伝子増幅などのあるがんの治療に特に有用である。
【0055】
重要な一実施形態において、治療されるがんは、B−Raf変異を特徴とし、例えば、B−Raf変異結腸直腸がんである。特に、B−Raf変異は、V600変異、例えば、V600E、V600K又はV600G変異である。
【0056】
したがって、本発明は特に、B−Raf変異を特徴とする結腸直腸がんの治療方法であって、本発明の組合せの治療有効量を、それを必要とする患者に投与するステップを含む方法に関する。
【0057】
より特定すると、本発明は、B−Raf変異を特徴とする結腸直腸がんの治療方法であって、
(a)式
【0058】
【化9】
のB−Raf阻害薬又は医薬として許容されるその塩と、
(b)セツキシマブであるEGFR阻害薬と
の組合せの治療有効量を投与するステップを含む、方法に関する。
【0059】
さらに、本発明は特に、B−Raf変異を特徴とする結腸直腸がんの治療方法であって、
(a)式
【0060】
【化10】
のB−Raf阻害薬又は医薬として許容されるその塩と、
(b)セツキシマブであるEGFR阻害薬と、
(c)式IのPI3K阻害薬、とりわけ式
【0061】
【化11】
のPI3K阻害薬と
の3剤組合せの治療有効量を投与するステップを含む、方法に関する。
【0062】
これらの方法のそれぞれの重要な実施形態において、B−Raf変異は、V600変異、例えば、V600E、V600K又はV600G変異である。
【0063】
増殖性疾患の性質は、多因子性である。場合によっては、異なる作用機序を有する薬物を、組み合わせてもよい。しかし、異なる作用機序を有する治療薬の組合せを考慮するだけでは、必ずしも有利な効果を有する組合せが得られるとは限らない。
【0064】
本発明の組合せ医薬の投与は、本発明の組合せ中に使用する治療薬を1つだけ適用する単剤療法と比較して、例えば、症状の緩和、進行遅延又は阻害に関する、例えば、有益な効果、例えば、相乗的治療効果をもたらすだけでなく、驚くべきさらなる有益な効果、例えば、より少ない副作用、より持続的な反応、クオリティオブライフの改善又は罹患率の低下をもたらすことができる。
【0065】
さらなる利益は、本発明の組合せの治療薬をより低用量で使用できること、例えば、必要な投与量が多くの場合より少ないだけでなく、投与量の適用頻度がより少ないか、又は組合せパートナーの1つのみで観察される副作用の発生率を減少させるために使用できることである。これは、治療される患者の欲望及び要求に合致する。
【0066】
確立された試験モデルによって、本発明の組合せが上述の有益な効果をもたらすことを示すことができる。当業者ならば、このような有益な効果を証明するのに妥当な試験モデルを選択することが十分に可能である。本発明の組合せの薬理活性は、例えば、本質的に以下に記載する臨床試験又は動物モデルにおいて実証できる。
【0067】
1つ又は複数の成分の間の相乗的相互作用を判定して、治療を必要とする患者に種々のw/w比範囲及び用量にわたって成分を投与することによって、効果を得るための最適範囲及び効果を得るための各成分の絶対用量範囲を明確に測定できる。ヒトについては、患者に対する臨床試験の実施は複雑でコストがかかるため、この形態の試験を相乗作用の一次モデルとして使用することは実用的でない場合がある。しかし、1つの種における相乗作用の観察は他の種における効果を予測でき、本明細書中に記載したような動物モデルが相乗効果の測定のために存在し、このような研究の結果を使用して、薬物動態学的/薬力学的方法を適用することによって、他の種において必要とされる有効用量比範囲及び絶対用量並びに血漿濃度を予測することもできる。腫瘍モデルと人間で認められる効果との間の立証された相関関係は、例えば、異種移植モデルによって又は適切な細胞株において、動物での相乗作用を実証できることを示唆する。
【0068】
化合物Aは一般に、10mg〜1000mg/日、例えば、50mg〜450mg/日又は100mg〜400mg/日の範囲の用量で経口投与される。一日量は、1日1回(qd)又は1日2回(bid)のスケジュールで投与することができる。
【0069】
ERBUTUX(登録商標)ブランドのセツキシマブの処方情報は、これを、最初に120分間の静脈内注入として400mg/m
2の用量で投与し、続いて、週用量250mg/m
2で60分かけて注入することを指示している。セツキシマブは、本組合せに使用する場合には、処方情報に従って投与する。しかし、用量低減も可能である。したがって、本発明によれば、セツキシマブは、最初に200〜400mg/m
2の用量で、続いて125〜250mg/m
2の週用量で投与する。
【0070】
化合物Bは一般に、30mg〜450mg/日、例えば、100〜400mg/日の範囲の用量で経口投与される。一日量は、1日1回又は1日2回のスケジュールで投与することができる。
【0071】
本発明の一目的は、増殖性疾患に対して共同で治療的に有効な本発明の組合せを含む医薬組成物を提供することである。この組成物において、組合せパートナーである化合物A及び/又は化合物Bは、任意の好適な経路によって、単一製剤又は単位剤形で投与することもできるし、同時であるが個別に投与することもできるし、逐次投与することもできる。好ましくは、化合物A及び化合物Bの経口剤形を、同時であるが個別に投与する。
【0072】
モノクローナル抗体EGFR阻害薬は、典型的には静脈内注入として個別に、好ましくは、EGFR阻害薬がセツキシマブである場合には週1回のスケジュールで投与する。
【0073】
一実施形態において、本発明はまた、それを必要とする対象における増殖性疾患の治療又は予防用の医薬組成物又は医薬品の調製に使用するための本発明の組合せに関する。
【0074】
本発明の組合せの個々の組合せパートナーは、療法中の異なる時点で個別に、又は分割された又は単一の組合せ形態で同時に投与することができる。したがって、本発明は、このような同時又は交互治療レジメンの全てを包含すると理解するべきであり、用語「投与する」はそれに応じて解釈すべきである。
【0075】
本発明の組合せに使用する組合せパートナーのそれぞれの有効投与量は、使用する個々の化合物又は医薬組成物、投与方法、治療される状態、及び治療される状態の重症度によって異なり得る。したがって、本発明の組合せの投与レジメンは、投与経路並びに患者の腎及び肝機能を含む種々の因子に応じて選択する。通常の技術を有する臨床医又は医師ならば、状態を緩和し、状態を打ち消し又は状態の進行を阻止するのに必要な単一の治療薬の有効量を容易に決定及び処方できる。
【0076】
毒性を伴わずに効果をもたらす本発明の組合せの組合せパートナー(a)及び(b)の最適比、個々の投与量及び併用投与量並びに濃度は、標的部位の治療薬利用能の動態に基づき、当業者に知られている方法を用いて決定する。
【0077】
組合せパートナーのそれぞれの有効投与量は、組合せ中の他方の化合物(1種又は複数)と比較して、一方の化合物(1種又は複数)のより高頻度の投与を必要とすることもある。したがって、適切な投薬を可能にするために、パック入りの医薬製品は、化合物の組合せを含有する1種又は複数の剤形、及び化合物の組合せのうちの1つを含有するが組合せのうちの他の化合物(1種又は複数)は含有しない1種又は複数の剤形を含むことができる。
【0078】
本発明の組合せ中に使用する組合せパートナーを、単剤として市販されている形態で適用する場合、それらの投与量及び投与方法は、本明細書中で特に言及しない限り、各市販薬物の添付文書に示されている情報に従うことができる。
【0079】
増殖性疾患の治療のための各組合せパートナーの最適投与量は、公知の方法を用いて各個人に対して経験的に決定することができ、これは、種々の因子、例えば、これらに限定するものではないが、疾患の進行度;個人の年齢、体重、全身の健康状態、性別及び食習慣;投与の時間及び経路;並びに個人が摂取している他の医薬品によって決まるであろう。最適投与量は、当技術分野で周知のルーチン検査及び手順を用いて確定できる。
【0080】
担体材料と組み合わせて単一剤形を生成することができる各組合せパートナーの量は、治療される個人及び個々の投与方法によって異なるであろう。一部の実施形態において、本明細書中に記載した作用剤の組合せを含有する単位剤形は、組合せの各作用剤を、その作用剤の単独投与の際に典型的に投与される量で含有するであろう。
【0081】
投与頻度は、使用する化合物及び治療又は予防される個々の状態によって異なる可能性がある。患者は一般に、治療又は予防される状態に好適な、当業者によく知られているアッセイを用いて、治療有効性についてモニターすることができる。
【0082】
本発明は、増殖性疾患を有する対象を治療する方法であって、増殖性疾患に対して共同で治療有効量で本発明の組合せを前記対象に投与するステップを含む方法に関する。特に、本発明の組合せで治療される増殖性疾患は、結腸直腸がん、特にB−Raf変異結腸直腸がん、例えば、V600 B−Raf変異結腸直腸がんである。さらに、治療は、手術又は放射線療法を含むことができる。
【0083】
本発明はさらに、増殖性疾患、特にがん、特にB−Raf変異結腸直腸がん、例えば、V600 B−Raf変異結腸直腸がんの治療に使用するための本発明の組合せに関する。
【0084】
本発明はさらに、それを必要とする患者における増殖性疾患の進行遅延又は治療に使用するための、治療薬としての本発明の組合せを同時投与、個別投与又は逐次投与のための使用説明書と共に含む、商用パッケージを提供する。
【0085】
以下の実施例は、前述した本発明を例示するが、本発明の範囲を限定することを決して意図するものではない。本発明の組合せ医薬の有益な効果はまた、当業者に試験モデルとして知られている他の試験モデルによって測定することができる。
【実施例1】
【0086】
これは、B−Raf変異転移性結腸直腸がん(mCRC)を有する患者約124名を登録する、多施設共同非盲検フェーズIb用量漸増及び無作為化フェーズII試験である。
【0087】
フェーズIb(n〜24)の目標は、セツキシマブとの組合せ(2剤組合せ)における化合物Aの最大耐量(MTD)及び/又はフェーズII推奨用量(RP2D)、並びに化合物B及びセツキシマブとの組合せ(3剤組合せ)における化合物AのMTD及び/又はRP2Dを決定することである。用量漸増の第1段階において、2剤組合せのMTD/RP2Dが特定されるまで、患者コホートを2剤組合せで治療する。次いで、用量漸増の第2段階において、3剤組合せのMTD/RP2Dが特定されるまで、患者コホートを3剤組合せで治療する。
【0088】
フェーズII(n〜100)は、2剤組合せ及び3剤組合せの臨床効果を評価し、さらに、薬物組合せの安全性を特徴付ける。疾患進行、許容されない毒性、インフォームドコンセントの撤回又は死亡が起きるまで、治療を28日周期で実施する。
【0089】
腫瘍反応は、RECISTガイドライン第1.1版に従って治験責任医師が局所的に評価する。各患者を、スクリーニング/ベースラインにおいて腫瘍病変の可能性がある全ての部位について、試験治療開始から疾患進行まで6週間毎に評価する。スクリーニング/ベースライン画像評価は、治療開始から21日以内に行うことができる。試験中の腫瘍評価は、ベースライン後の最初の腫瘍評価を除いて、±7日のウインドウを有する。ベースライン後の最初の腫瘍評価は、治療開始の6週間(+7日のウインドウが許容される)後に行うべきである。患者が疾患進行以外の何らかの理由で中止し且つ最終腫瘍評価がこの日より21日超前に行われている場合には、治療終了時(±3日)に腫瘍評価を行う。疾患進行以外の理由によって試験治療を中止する、試験のフェーズII部分に含まれる患者については、月1回電話により経過観察し、疾患進行若しくはその後の抗新生物療法の開始又は死亡のいずれか早い方の日まで、6週間(±7日)毎に腫瘍評価を行うべきである。
【0090】
分子プレスクリーニング
試験のスクリーニングフェーズに移行するためには、患者は、KRAS野生型ステータス及びBRAF V600変異について記入済みの証拠書類を有していなければならない。KRAS野生型ステータス及びBRAF V600変異は、局所的に新鮮な腫瘍生検材料(好ましい)又は入手可能な最新の保存腫瘍試料で得るべきである。試験に関連するいずれの分子プレスクリーニング法の前にも、分子プレスクリーニングについてのインフォームドコンセントに署名しなければならない(変異ステータスが本試験以外で既に評価された場合適用せず)。
【0091】
治療期間
治療期間は周期1の1日目に始まる。フェーズIIにおいては、試験治療は、無作為化後1週間以内に開始する。試験治療は28日周期中に実施し、疾患進行、許容されない毒性、インフォームドコンセントの撤回又は死亡まで継続する。
【0092】
治療終了(EOT)
EOT時来診は、試験治療の最終実施後14日以内に行われる(セクション7.1.5)。時期尚早に中止せざるを得なかったとしても、参加患者は全てこの来診を完了しなければならない。
【0093】
経過観察期間
経過観察期間は、治療終了時来診後に始まり、生存経過観察を含む全ての経過観察評価が完了するまで続く。
【0094】
集団
a)患者集団
試験の両フェーズ、フェーズIb及びフェーズIIは、野生型KRAS及びBRAF V600変異を内包する転移性結腸直腸がん(mCRC)のある成人患者であって、抗新生物療法の前歴があるのにもかかわらず疾患が進行している、又はさらなる有効な標準的療法を利用できない成人患者において行う。
【0095】
本試験に登録された患者は、並行する治験薬又は治験医療機器の試験への参加が認められない。加えて、本試験を完了した患者を、2回目の治療過程のために再登録してはならない。
【0096】
b)組み入れ基準
本試験の組み入れ適格患者は、以下の基準を全て満たさなければならない:
1.投薬開始時(フェーズIb)又は無作為化時(フェーズII)の年齢が18才以上
2.転移性結腸直腸がん(mCRC)の組織学的又は細胞学的証拠
3.少なくとも1つの以前の標準治療(standard of care)レジメン後の進行又はイリノテカンに基づくレジメンに不耐性
4.KRAS野生型及びBRAF V600E変異又は他の全てのBRAF V600変異についての記入済みの証拠書類
5.フェーズIIのみ:ベースラインの新鮮な腫瘍生検材料
6.RECIST第1.1版によって判定された、測定可能な疾患のエビデンス
注:以前の放射線療法又は他の局所療法(例えば、経皮アブレーション)の部位における病変は、病変進行が療法以後に記録されていないならば、測定可能とみなすべきではない。
7.平均余命が3カ月以上
8.ECOGパフォーマンスステータスが2以下
9.妊娠可能性のある全ての女性における試験治療の初回投与前72時間以内における血清妊娠検査が陰性
10.インフォームドコンセント用紙を理解し且つそれに自発的に署名することが可能、及び試験の来診スケジュール及び他のプロトコール要求事項に従うことが可能。書面でのインフォームドコンセントは、スクリーニング法の前に入手しなければならない。
【0097】
c)除外基準
本試験の適格患者は、以下の基準に合致してはならない:
1.フェーズIIのみ:セツキシマブ、パニツムマブ及び/又は他のEGFR阻害薬による以前の治療
2.フェーズIIのみ:RAF阻害薬、PI3K阻害薬及び/又はMEK阻害薬による以前の治療
3.症候性又は未治療の軟膜疾患
4.症候性脳転移。コルチコステロイド療法を受けない状態で無症候性であるこれらの状態について以前に治療された又は治療されていない患者は、登録を認める。脳転移は、画像法による検証で安定でなければならない(例えば、スクリーニング時に完了している脳MRI又はCTが、進行性脳転移についての最新エビデンスを示していない)。患者は、酵素誘導性抗てんかん薬を投与されていてはならない。
5.インスリン治療を必要する且つ/又は臨床徴候を有する若しくは空腹時血糖が140mg/dL/7.8mmol/L以上である、糖尿病患者、臨床的に重篤な妊娠糖尿病の既往歴がある患者、或いはステロイド誘発性糖尿病の記録がある患者
6.既知の急性又は慢性膵炎
7.以下のいずれかを含む臨床的に重篤な心臓病:
・ 治療を必要するうっ血性心不全(NYHAグレード≧2)、MUGAスキャン若しくはエコーによって測定されたLVEFが45%未満、又はコントロール不良の高血圧症(WHO−ISHガイドライン参照のこと)
・ 臨床的に重篤な心室性不整脈又は心房細動の既往歴又は存在
・ 臨床的に重篤な安静時徐脈
・ 試験薬開始前3カ月以内における不安定狭心症
・ 試験薬開始前3カ月以内における急性心筋梗塞(AMI)
・ QTcFが480ミリ秒超
8.スクリーニング/ベースラインにおいて以下の臨床検査値のいずれかを有する患者:
・ 好中球絶対数(ANC)が1,500/mm
3[1.5×10
9/L]未満
・ 血小板が100,000/mm
3[100×10
9/L]未満
・ ヘモグロビンが9.0g/dL未満
・ 血清クレアチニンが1.5×ULN超又は計算された若しくは直接測定されたCrClが50%LLN(正常下限)未満
・ 血清総ビリルビンが1.5×ULN超
・ AST/SGOT及び/若しくはALT/SGPTが2.5×ULN超、又は肝転移が見られる場合には、5×ULN超
9.経口化合物A/化合物Bの吸収を著しく変えるおそれがある、胃腸(GI)機能の障害又はGI疾患(例えば、潰瘍性疾患、コントロール不良の嘔気、嘔吐、下痢、吸収不良症候群、小腸切除)。
10.以前の又は併発している悪性疾患。例外:適切に治療された皮膚の基底細胞がん若しくは扁平上皮細胞がん;治癒的に治療された若しくは治験登録前少なくとも3年間に再発のエビデンスがない子宮頸部上皮内癌;又は治癒的に治療された若しくは治験登録前少なくとも3年間に再発のエビデンスがない他の固形腫瘍。
11.妊娠女性又は保育中(授乳中)の女性(妊娠は、hCG臨床検査陽性(>5mIU/mL)によって確認される、受胎後から妊娠期間終了までの女性の状態と定義する)。
妊娠可能性のある女性(生理的に妊娠し得る全ての女性と定義される)は、本試験全体にわたって及び試験薬中止後3カ月間にわたって極めて有効な避妊方法を用いるのでなければ、本試験に参加させてはいけない。極めて有効な避妊方法としては、以下が挙げられる:
・ 全禁欲
・ 男性又は女性の不妊手術
・ 以下の任意の2つの組合せ(a+b又はa+c又はb+c)
a.経口、注入又は埋め込みによるホルモン避妊法の使用
b.子宮内避妊器具(IUD)又は子宮内システム(IUS)の留置
c.バリアー避妊法:コンドーム又は閉鎖キャップ(ペッサリー又は子宮頸管/膣円蓋キャップ)と殺精子フォーム剤/ゲル剤/フィルム剤/クリーム剤/腟坐剤との併用
閉経後女性は、本試験への参加を認める。以下の場合は、女性は、閉経後である又は妊娠可能性がないとみなす:適切な臨床プロフィール(例えば、適切な年齢、血管運動症状の既往歴)と共に12カ月間の自然無月経(自発的無月経)がある若しくは血清卵胞刺激ホルモン(FSH)レベル40mIU/mL超と共に6カ月間の自発的無月経がある場合、又は外科的両側卵巣摘出を受けている(子宮摘出と共に又は子宮摘出は行わずに)若しくはスクリーニングの少なくとも6週間前に卵管結紮を受けている場合。卵巣摘出単独の場合は、女性の生殖ステータスがホルモンレベルの経過観察評価によって確認されている場合のみ、その女性は妊娠可能性がないとみなす。
12.性的に活発な男性は、薬物を摂取中及び治療停止後3カ月間にわたって、性交中にコンドームを使用しなければならず、この期間において子どもの父親となるべきでない。精液を介した薬物の送達を防ぐために、精管切除が行われた男性も、コンドームの使用が必要である。
13.一過性脳虚血発作、脳血管性偶発症状(cerebrovascular accident)、深在性静脈血栓症又は肺塞栓症を含む血栓塞栓性又は脳血管性事象の、過去6カ月以内の既往歴。
14.試験薬の開始前4週間以内(ニトロソ尿素、マイトマイシンCの場合は6週間以内)に放射線療法(骨髄予備能の30%超を含む)、化学療法、生物学的療法(例えば、抗体)を受けたことがある患者、又は小分子治療薬若しくは治験薬で、試験薬の開始前の、その治験薬の半減期の5倍以内(又は半減期が不明の場合は4週間以内)の期間において連続的又は断続的に治療されたことがある患者、又はこのような療法の副作用(脱毛症以外)から回復していない患者。
15.試験薬開始前の最後の2週間以内に何らかの大手術を受けた患者、又は以前の手術から十分に回復していないであろう患者
16.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)への感染が分かっている
17.試験への参加若しくは試験薬の投与に関連してリスクを増加させる可能性がある、又は試験結果の解釈の妨げになり且つ治験責任医師の判断で患者が本試験に不適となる、他の重度、急性若しくは慢性の医学的若しくは精神医学的状態又は検査所見の異常。
【0098】
2)治療
a)試験治療
本試験において使用する治験薬は、化合物A及び化合物Bである。本試験で使用する他の薬物は、セツキシマブである。
試験治療は以下の通りである:
・ 2剤組合せ:化合物A及びセツキシマブ
・ 3剤組合せ:化合物A、化合物B及びセツキシマブ
【0099】
i)投薬レジメン
患者は、以下のレジメンの1つに割り付ける(フェーズIb)か、又は無作為化する(フェーズII)。
・ 2剤組合せ:化合物A(1日1回又は1日2回)及びセツキシマブ(週1回(QW))
・ 3剤組合せ:化合物A(1日1回又は1日2回)、化合物B(1日1回又は1日2回)及びセツキシマブ(週1回)
【0100】
【表1】
【0101】
化合物A又は化合物A+化合物Bの投与のための指示
化合物A及び化合物Bは、体重又は体表面積によるのではなく、均一の固定用量として、1日のスケジュール通りに(1日1回(QD))経口投与する。進行中の試験からの新しいエビデンスにより、1日2回(BID)レジメン(1つ又は複数)が好ましい可能性があることが示された場合には、本試験のフェーズIb部分において新しいコホートを利用できるようにすることによって、化合物A及び/又は化合物BのBIDレジメンをセツキシマブと組み合わせて検討することができる。各薬物のフェーズII部分に対しては、単一のRP2D及びスケジュールを選択する。
【0102】
・ 1日1回の投薬(QD投薬):朝、軽めの朝食(例えば、グレープフルーツベースでないジュース、トースト及びジャム)を終えてから約1時間後に、化合物Aのカプセル剤(及び該当する場合には、化合物Bの錠剤)を、大きいコップ1杯の水(約250ml)と共に連日服用し、服用は毎日ほぼ同時刻とするよう、患者に指示すべきである。患者は、投与後1時間絶食し続けるべきである。患者が朝にその用量を服用するのを忘れた場合には、飲み忘れ後6時間以内にその用量を服用すべきである。6時間より長時間が経過した場合には、その日はその用量を摂取せず、患者は次の予定された用量での治療を継続すべきである。何らかの理由で朝食を摂取しなかった場合であっても、患者は、予定された朝の用量をコップ1杯の水と共に服用すべきである。完全なPKサンプリングの日にこのことが起こった場合には、eCRFにそれを記録すべきである。
【0103】
・ 1日2回の投薬(BID投薬):化合物A(及び該当する場合には、化合物B)の用量を、12±2時間の間隔を空けて摂取すべきである。朝、軽めの朝食を終えてから約1時間後に及び晩、軽い食事又はスナックを摂ってから約1時間後に、用量を大きいコップ1杯の水(約250ml)と共に連日服用し、服用は毎日ほぼ同時刻とするよう、患者に指示する。患者は、投与後1時間絶食し続けるべきである。何らかの理由で、夕食を摂取できない場合であっても、患者は、予定された晩の用量をコップ1杯の水と共に服用すべきである。2種の経口薬物(化合物A、化合物B)のうち一方のみを1日2回投与する場合には、朝は、両方の薬物を一緒に服用させるべきであり、晩は、1日2回投与される薬物のみを服用させるべきである。
【0104】
・ 用量は、採血がクリニックで予定されている日を除いて毎日、ほぼ同時刻に服用すべきであるが、採血がクリニックで予定されている日は、患者は朝の用量をクリニックで服用すべきである。
【0105】
・ 化合物A及び化合物Bは、3剤組合せに割り付けられた/無作為化された患者に対して、同時刻に投薬する。
【0106】
・ 採血がクリニックで予定されている日は、患者は、クリニックにおいて治験責任医師又は被指名人の管理下で経口試験薬を服用する。他の全ての日は、患者は自宅で経口試験薬を服用する。
【0107】
・ 空腹時血漿グルコースのモニタリング:空腹時血漿グルコースのモニタリングの日には、患者は、採血前少なくとも8時間にわたって一晩絶食しなければならない。空腹時血漿グルコースは、セツキシマブ前投薬と同日に何らかのステロイドを投与する場合にはステロイドの投与前に、採取しなければならない。空腹時血漿グルコースが取られた後は、軽い朝食を摂ってもよい。化合物A(及び該当する場合には、化合物B)は、朝食の1時間後に投与することができる。患者は、化合物A(及び該当する場合には、化合物B)の投与後1時間は絶食を続けるべきである。
【0108】
・ PKサンプリング:PKサンプリングの日には、患者は、低摂食状態(light fed conditions)を実現するために軽食前少なくとも8時間にわたって一晩絶食させなければならない。投薬前のPK試料は、化合物A(及び該当する場合には、化合物B)の摂取直前に採取すべきである。
【0109】
・ 各来診時に、施設責任者(responsible site personnel)は、適切な用量の各試験薬が投与されることを確実にし、その後の投薬に妥当な量の試験薬(1種又は複数)を患者に与える。使用しなかった試験薬は、各来診時に施設に返すよう患者に指示する。
【0110】
・ カプセル剤/錠剤は、噛んだり砕いたりせずに、丸ごと飲み込むよう、患者に指示する。
【0111】
・ 飲み忘れた用量はいずれも省略すべきであり、予定されている次の投薬中又は後日(いずれに該当するとしても)に代替投与したり補ったりすべきではない。
【0112】
・ 試験薬はCYP3A4と潜在的な相互作用があるため、全試験期間を通じて、好ましくは試験薬の初回投与前7日間は、患者は、グレープフルーツ、ザクロ、スターフルーツ、セビリアオレンジ又はそれぞれの果汁を含有する製品の摂取を避けなければならない。オレンジジュースの摂取は認められる。
【0113】
・ 治療中に嘔吐が起こる場合には、予定されている次の用量まで患者の再投薬は認められない。いかなる嘔吐及び/又は下痢(又は排便頻度の増加)も、その発生及び頻度をeCRFのAE部分に書き留めなければならない。加えて、完全なPKサンプリングの日に、その日の投薬後最初の4時間以内の嘔吐のあらゆるエピソードの発症時間を、相当するDose Administration Record PK eCRFに書き留めなければならない。
【0114】
・ 治験責任医師又は施設責任者は、プロトコール通りに試験薬を服用するよう患者に指示すべきである(患者に服薬遵守を促すべきである)。試験中における、処方され患者に分配される全ての投与量並びに全ての用量変更及び飲み忘れた全ての用量は、Dosage Administration Record eCRFに記録しなければならない。治験薬使用記録(drug accountability)は、定期的に行わなければならない。使用しなかった試験薬は、各周期の終わりに施設に返すよう患者に指示する。施設責任者は、各来診時に適切な用量の各試験薬が投与されることを確実にし、その後の投薬の妥当な量の薬物を患者に与える。
【0115】
セツキシマブの投与
セツキシマブは、試験施設において施設基準に従って、週1回、各周期の1、8、15及び22日(±3日)目に静脈内投与する。前投薬は、セツキシマブ注入の30分前に、施設基準に従って記載された通りに行う。セツキシマブの初回投与用量(周期1の1日目)は、120分の静脈内注入として400mg/m
2であり、続いて、週用量250mg/m
2を60分間にわたって注入する。注入速度は、10mg/分を超えるべきでない。注入中及び注入終了後少なくとも1時間は、綿密なモニタリングが必要である。
【0116】
セツキシマブが投与されている間に注入反応が起こった場合は、直ちに注入をやめ、患者を綿密にモニタリングし、施設基準に沿って治療すべきである。
【0117】
薬物投与の順序
上部消化管(GI管)のpHを変える可能性がある前投薬は、化合物A及び/又は化合物Bの溶解度、したがって、そのバイオアベイラビリティを変える可能性がある。これらの作用剤としては、プロトンポンプ阻害剤(例えば、オメプラゾール)、H2拮抗薬(例えば、ラニチジン)及び制酸薬が挙げられるが、これらに限定するものではない。したがって、化合物A(及び該当する場合には、化合物B)の経口投薬は、セツキシマブ及びその前投薬(好ましくはH1拮抗薬(例えば、ジフェンヒドラミン)とデキサメタゾン(10mgIV)の組合せに基づくべきである)の前に行う。化合物A(及び該当する場合には、化合物B)投与の時点からセツキシマブ前投薬の実施までは、最低1時間が経過しなければならない。セツキシマブ注入は、前投薬の0.5時間後(すなわち、化合物A/化合物B摂取の1.5時間後)に行うことが推奨される。
【0118】
治療継続期間
許容されない毒性、疾患進行を経験するまで及び/又は治験責任医師の裁量で若しくは同意の撤回で治療が中止されるまで、患者は試験薬による治療を継続できる。
【0119】
用量漸増ガイドライン
開始用量の理論的根拠
(1)2剤組合せ
2剤組合せ試験薬の開始用量は、化合物Aが1日1回100mg、セツキシマブが静脈内注入として初回量400mg/m
2(周期1の1日目)及びその後の週用量250mg/m
2とする。これらの開始用量は、ヒトにおいて進行中の化合物Aについての最初の試験から入手可能なデータに基づき、転移性結腸直腸がんためのセツキシマブの推奨用量は、セツキシマブのラベルに準じる。単剤としての化合物A及びセツキシマブの用量−DLT(用量制限毒性)関係に関するその時点で入手可能な全ての情報、並びに組合せの毒性が予測できないことを考慮すると、DLT率の事前分布は、提示した開始用量の組合せは、過量投与制御を伴う用量漸増(escalation with overdose control)(EWOC)基準を満たすことを示している。
【0120】
(2)3剤組合せ
3剤組合せにおける化合物A、化合物B及びセツキシマブの開始用量は、3つの薬物全てに関して入手可能な全データに基づく。化合物A及びセツキシマブはそれぞれ、2剤組合せの測定されたMTD/RP2Dの50%及び100%で投与する。化合物Bの開始用量は、1日1回100mgと見積もられ、これは、フェーズI臨床試験中に特定された、固形腫瘍患者に投与された化合物Bの単剤MTDの25%である。
【0121】
PKレベルでのDDIは、化合物Bとセツキシマブの間で予想されない。化合物AはBCRPの阻害薬であって、化合物Bは、BCRPの基質であるので、化合物Aと同時投与した場合、化合物Bの曝露が増加する可能性がある。前臨床的に(ラットADMEにおいて58%)及び臨床的に観察された良好なバイオアベイラビリティを所与として、化合物B曝露の考えられる最大の増加は、60%未満と予想される。したがって、十分な安全域を設けるために、化合物Bの開始用量は、1日1回100mgに設定する。加えて、化合物Bは、CYP3A4の時間依存的な阻害薬である。化合物Aは、主にCYP3A4によって代謝される。食品医薬品局(FDA)推奨の機構静的モデルによれば、1日1回100mgの用量の化合物Bは、化合物Aと併用投与される場合、化合物Aの血漿AUCを最大3倍増加させる可能性がある。化合物Bを加えた場合の化合物A曝露の潜在的増加を軽減するために、3剤組合せ(化合物A、化合物B、セツキシマブ)中の化合物Aの初回量は、前述のように2剤組合せにおいて特定されたそのMTD/RP2Dの50%まで低減する。加えて、インライフPK解析によるPKの迅速評価を、3剤組合せの用量漸増段階で実施して、化合物A及び化合物Bの1日目及び8日目のPKをモニターし、用量漸増の決定を報告する。万一、DDI効果が観察され且つそれが化合物Aの過剰曝露を示唆する場合には、化合物Aの用量低減を実施することがある。
【0122】
最初の患者に3剤組合せを投薬する前に、ベイズモデルは、2剤組合せの用量漸増段階からの最新データで更新して、化合物A及び化合物Bの提示された開始用量が、2剤組合せから特定された用量のセツキシマブが投与された場合に依然として適切である(すなわち、EWOC基準を満たす)ことを確認する。提示された開始用量が基準を満たさない場合には、EWOC基準を満たすより低用量の組合せを使用する。
【0123】
暫定的用量レベル
下記表は、本試験中に評価し得る2剤(化合物A、セツキシマブ)組合せ及び3剤(化合物A、化合物B、セツキシマブ)組合せの試験治療に関する開始用量及び暫定的用量レベルを記載している。セツキシマブの用量は漸増するのではなく、減少させることがある。最適な安全性及び忍容性データ、薬物動態データ並びに薬力学的データを提供するためにこのような変更が必要と判断される場合には、その時点で指定されていない追加の用量レベルを登録すること、及び既に試験された用量レベルで追加の患者を登録することが可能である。
【0124】
試験のフェーズIb部分のいかなる時点においても、化合物A及び/又は化合物Bに関する他の臨床試験から新たに出現したデータから、1日2回の投薬レジメンの化合物A及び/又は化合物Bのレジメンが好ましいはずであることが示された場合には、1日2回の投薬レジメン(1つ又は複数)を評価するコホートを、試験のフェーズIb部分において検討することができる。1日2回に変更する決定がなされた場合には、初回の総一日量(1日2回の場合には、2分割用量として投与される)は、単一の一日量として忍容性が良好であることがあらかじめ分かっている用量であり、MTD未満であり、BLRMによって認められている。
【0125】
化合物A及び化合物Bの、以前の単剤試験において決定されたMTD/RP2Dを超える用量レベルは、本試験では評価しない。
【0126】
【表2】
【0127】
【表3】
【実施例2】
【0128】
化合物AとPI3Kα特異的阻害薬である化合物B又はEGFR阻害薬であるエルロチニブのいずれか一方との併用の、BRAF変異CRC由来細胞株の増殖に対する効果を調べる。いずれの組合せも、それぞれ7/8及び6/9の細胞株において活性な化合物A/化合物Bの対及び化合物A/エルロチニブの対で試験した細胞の大部分で増殖を相乗的に阻害した。組合せは、PI3Kα遺伝子の変異対立遺伝子及び野生型対立遺伝子の両方を内包する細胞において活性であった。試験した全ての細胞株において、化合物Aのみが有意な単剤活性を示したが、PI3Kαの活性化変異又はPTENの欠失がある細胞株は、3つの化合物全てに概して不応性であった。最後に、化合物Aと化合物Bとの相乗作用は維持されたが、EGFR阻害抗体であるセツキシマブを第3の作用剤として加えた場合には、抗増殖効果の全体的な強度が増加した。まとめると、これらのデータは、化合物AとEGFR又はPI3Kαの阻害薬のいずれかとの組合せを支持している。さらに、これらの結果は、3種の阻害薬型全てを同時に加えることによって追加の利益を得ることができることを示唆している。
【0129】
【表4】
【0130】
9つのBRAF変異CRC由来細胞株における増殖に対する、RAF阻害薬(化合物A)、PI3Kα阻害薬(化合物B)及びEGFR阻害薬(エルロチニブ、セツキシマブ)の単剤及び組合せの効果。BRAFV600Kバリアントを発現するMDST8を除く全ての細胞株は、BRAFV600Eタンパク質を発現する。PI3Kα遺伝子における既知の又は推定上の活性化変異を内包する細胞に(
*)を、PTENの欠失がある細胞に(#)が付けてある。細胞増殖は、72時間のCell Titer−Glo(商標)アッセイにおいて測定した。示した結果は全て、少なくとも三重反復の測定の結果である。示したのは、各化合物に関する単剤IC50値及び各組合せに関する相乗作用スコア測定値である(Lehar J、Krueger AS、Avery Wら(2009年)、「相乗的な薬物の組み合わせは治療的意味のある選択性を改善する傾向がある(Synergistic drug combinations tend to improve therapeutically relevant selectivity)」、Nat Biotechnol 27、659〜666頁に記載)。相互作用は、観察されるスコアが2.0以上であるとき相乗的と判断した。3剤組合せの相乗作用測定については、化合物Aと化合物Bとの相乗作用は、固定濃度のセツキシマブ(50nM)の存在下で標準的な用量マトリックス形式で測定した。
【実施例3】
【0131】
B−RAF阻害薬(化合物A)、PI3K−α阻害薬(化合物B)及びセツキシマブの間の治療的相互作用の評価は、皮下HT−29ヒト結腸直腸腺癌異種移植モデルにおいて行う。細胞は、V600E変異B−RAF(BRAFにおいて1799T>A)、P449T変異PI3K−α(PIK3CAにおいて1345C>A)並びにAPCにおける点変異及び挿入に関してはヘテロ接合性であること;並びにSMAD4及びTP53における点変異に関してはホモ接合性であることが報告された。変化が新生物形成と高頻度に関連する59種の他の遺伝子において、発癌可能性があるさらなる変異は認められなかった。
【0132】
化合物Aは、室温で保管し、脱イオン水中0.5%カルボキシメチルセルロース(CMC)及び0.5%Tween(登録商標)80(ビヒクル1)に2.0mg/mLで懸濁させた。新鮮な懸濁液を2週間毎に調製し、室温で保管した。
【0133】
化合物Bは4℃で保管し、脱イオン水中0.5%メチルセルロース(ビヒクル2)に2.5mg/mLで懸濁させた。新鮮な懸濁液を週1回調製し、4℃で保管した。
【0134】
セツキシマブ(ERBITUX(登録商標)、ImClone/Bristol Myers Squibb、2mg/mL、ロット番号10COO39SA)を、試験の初めに分注し、4℃で保管し、新鮮なアリコートを各投薬日に使用した。
【0135】
3mg/mLのパクリタキセル投薬溶液は、各治療日に、施設内で調製したパクリタキセル原液(エタノール50%:Cremophor(登録商標)EL 50%中30mg/mLパクリタキセル)のアリコートを水中5%デキストロースで10倍希釈することによって、新しく調製した。投薬溶液は、1つの群について一度に新しく調製した。
【0136】
各作用剤は、単一用量レベルで個々に並びに2剤組合せ及び3剤組合せで投与した。投与は、皮下腫瘍が定着している雌ヌードマウスにおいて1日目(D1)に開始した。試験期間中、体重(BW)及び健康状態をモニターし、腫瘍体積を週2回測定した。D29に化合物Aの最終投薬の4時間後及び24時間後に動物を安楽死させ、各時点で群当たり3匹の動物から腫瘍を収集した。効果は、D1とD29の間の平均腫瘍体積変化から判定した。Prismにより、試験結果が、P>0.05において有意でない(ns)、0.01<P≦0.05において有意である(「
*」で表す)、0.001<P≦0.01において非常に有意である(「
**」)、及びP≦0.001において極めて有意である(「
***」)と集計される。結果を下記表に報告する。
【0137】
【表5】
【0138】
治療効果は、化合物Aの投薬完了日であるD29に判定した。統計分析のために、D1(投薬開始)と終了点の日との腫瘍体積の差ΔTVを動物毎に測定した。各治療群について、終了点の日の反応を、以下の関係式:
T/C(%)=100×ΔT/ΔC (ΔT>0の場合)
T/T0(%)=100×ΔT/T0 (ΔT<0の場合)
[式中、
ΔT=(終了点の日における治療群の平均腫瘍体積)−(D1における治療群の平均腫瘍体積)、
ΔC=(終了点の日における対照群の平均腫瘍体積)−(D1における対照群の平均腫瘍体積)、
T0=D1における治療群の平均腫瘍体積]
の1つによって計算した。
【0139】
負のT/T0値は、1群当たりの正味の腫瘍縮小を表す。40%以下のT/C値は、潜在的治療活性を示唆する。
【0140】
併用療法(群5〜8)に対する反応
群5では、化合物Aは、化合物Bとの2剤組合せにおいて、ΔT 366mm
3という結果をもたらした。これは、T/C 39%及び有意でない腫瘍成長阻害中央値に相当する。この組合せは、群2における化合物Aの単剤療法及び群3における化合物Bの単剤療法を、有意でないが改善した。
【0141】
群6では、化合物Aは、セツキシマブとの2剤組合せにおいて、ΔT 114mm
3という結果をもたらした。これは、T/C 12%及び有意な阻害(P<0.01)に相当する。この組合せは、群2における化合物A単剤療法及び群4におけるセツキシマブ単剤療法を有意に改善した(P<0.01)。
【0142】
群7では、化合物Bは、セツキシマブとの2剤組合せにおいて、ΔT 459mm
3という結果をもたらした。これは、T/C 49%及び有意でない阻害に相当する。この組合せは、群3における化合物Bの単剤療法及び群4におけるセツキシマブの単剤療法を、有意でないが改善した。
【0143】
化合物A、化合物B及びセツキシマブの3剤組合せである群8は、ΔT −3mm
3という結果をもたらした。これは、T/T0 −2%及び有意な活性(P<0.001)に相当する。この治療は、群2における化合物Aの単剤療法(P<0.001)、群3における化合物Bの単剤療法(P<0.01)、及び群4におけるセツキシマブの単剤療法(P<0.001)を有意に改善した。加えて、この組合せは、群5における化合物A/化合物Bの2剤組合せ及び群7における化合物B/セツキシマブの2剤組合せを有意に改善し(P<0.01)、群6における化合物A/セツキシマブの2剤組合せを、有意でないが改善した。