特許第6342421号(P6342421)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6342421-X線造影剤の精製 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6342421
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】X線造影剤の精製
(51)【国際特許分類】
   C07C 231/24 20060101AFI20180604BHJP
   C07C 237/46 20060101ALI20180604BHJP
   A61K 49/04 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   C07C231/24
   C07C237/46
   A61K49/04 210
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-549398(P2015-549398)
(86)(22)【出願日】2013年11月19日
(65)【公表番号】特表2016-503054(P2016-503054A)
(43)【公表日】2016年2月1日
(86)【国際出願番号】US2013070699
(87)【国際公開番号】WO2014099214
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2016年11月14日
(31)【優先権主張番号】12198020.5
(32)【優先日】2012年12月19日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】396019387
【氏名又は名称】ジーイー・ヘルスケア・アクスイェ・セルスカプ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】セルヴェンカ,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】タニング,ミッケル
(72)【発明者】
【氏名】オルソン,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】グロガード,クリスティアン
【審査官】 水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表平06−506142(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/084926(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0021823(US,A1)
【文献】 特表2000−504735(JP,A)
【文献】 化学工学便覧,日本,丸善出版株式会社,2011年 9月20日,改訂七版,615−620頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非イオン性ヨウ素化二量体X線造影剤粗生成物の精製方法であって、
i)単量体化合物不純物及び塩が膜(M1)を通過し(透過液、P1)、非イオン性ヨウ素化二量体X線造影剤が膜(M1)上を通る(保持液、R1)ように、クロマトグラフィーを経ていない粗生成物の溶液を、カットオフサイズが1000〜1100Daの膜(M1)に流して、精製非イオン性ヨウ素化二量体X線造影剤を得る工程を含んでいて、非イオン性ヨウ素化二量体X線造影剤の分子量が1400〜1700Daであり、単量体化合物不純物の分子量が435〜900Daである、方法。
【請求項2】
非イオン性ヨウ素化二量体X線造影剤がイオホルミノール又はイオジキサノールである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程(i)の保持液(R1)を保持して回収する、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
得られる精製非イオン性ヨウ素化二量体X線造影剤が98%以上の純度をもつ、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項のいずれか1項記載の方法であって、
ii)塩がその膜(M2)を通過し(透過液、P2)、単量体化合物不純物がその膜(M2)上を通る(保持液、R2)ように、工程i)の透過液(P1)を別の膜(M2)に流して、保持液(R2)を保持する、第2の工程を含む方法。
【請求項6】
工程i)の透過液(P1)又は工程ii)の保持液(R2)を、当該方法の工程(i)の繰り返しによるもう1回の精製に付し、1回目で失われた非イオン性ヨウ素化二量体X線造影剤を回収する、請求項1乃至請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
工程i)の繰り返しの前に、保持液(R2)を、粗生成物に移して粗生成物と混合するか、或いは粗生成物の供給流と混合する、請求項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨウ素化X線造影剤の精製方法に関し、特にイオジキサノール及びイオホルミノール(Ioforminol)のような粗二量体造影剤の精製に関する。
【背景技術】
【0002】
2つのトリヨウ素化フェニル基を連結基で連結した化合物を原薬として含有するX線造影製剤は通常、二量体造影剤又は二量体と呼ばれる。この数年間、多種多様なヨウ素化二量体が提案されている。現在、ヨウ素化非イオン性二量体を原薬として有する造影製剤が、以下の化合物(造影剤)イオジキサノールを含有するVisipaque(商標)として上市されている。
【0003】
【化1】
本願出願人の国際公開第2009/008734号には、イオホルミノールと名付けられた新規な二量体造影剤が開示されている。この二量体造影剤の特性については、Chai et al.「Predicting cardiotoxicity propensity of the novel iodinated contrast medium GE−145:ventricular fibrillation during left coronary arteriography in pigs」,Acta Radiol,2010及びWistrand,L.G.,et al「GE−145,a new low−osmolar dimeric radiographic contrast medium」,Acta Radiol,2010に詳細に記載されている。ここではイオホルミノール(GE−145)は化合物1と呼ばれており、以下の構造を有する。
【0004】
【化2】
非イオン性X線造影製剤の製造は、化学薬品(原薬(API)、つまり造影剤)の製造と、その後の医薬製品(本明細書ではX線組成物又は造影製剤という。)への製剤化を含む。
【0005】
本願出願人の国際公開第2006/016815号には、イオジキサノールを調製するための可能な合成経路の概要について記載されている。そのスキームIに記載されている通り、イオジキサノールは、市販されている5−アミノ−N,N’−ビス−(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−2,4,6−トリヨード−イソフタルアミド(化合物B)から又はその化合物Bを経由して調製することができる。その遊離アミノ基を次いでアシル化してアセチル基とし、置換基のヒドロキシル基もアシル化によって保護し得る。最終工程で、最終中間体5−アセトアミド−N,N’−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)−2,4,6−トリヨード−イソフタルアミド(「化合物A」ともいう。)をエピクロロヒドリンのようなビスアルキル化剤と反応させて、二量体造影剤イオジキサノールを得る。同様に、本願出願人の国際公開第2009/008734号には、造影剤イオホルミノールを調製するための合成経路が記載されている。この薬品も、5−アミノ−N,N’−ビス−(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−2,4,6−トリヨード−イソフタルアミド(化合物B)から合成できる。イソフタルアミド化合物の遊離アミノ基をアシル化してホルミル基とし、置換基のヒドロキシル基もアシル化によって保護し得る。保護基を例えば加水分解で除去すると、N1,N3−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)−5−ホルミルアミノ−2,4,6−トリヨードイソフタルアミドが得られ、これを例えばエピクロロヒドリンのようなビスアルキル化剤と反応させると、二量体造影剤イオホルミノールが得られる。
【0006】
上述の二量体造影剤の調製のための合成工程の完了後、造影剤を含む粗生成物は、許容される医薬品純度とするための精製を必要とする。市販医薬品の場合、一次生産では、効率的及び経済的であること並びに米国薬局方で定められたもののような規制細目を満たす薬剤物質を生成することが重要である。加えて、二次生産のコストは造影剤の一次生産のコストに依存しており、この一次生産のコストは、一次生産における合成プロセス及び精製プロセスの効率に直接関連している。従って、造影剤の一次生産での各プロセスの最適化が重要である。イオホルミノール及びイオジキサノールの両方の化合物の場合、最も確認された合成経路は、単量体分子から合成の最終工程での二量体分子への変化を含み、粗生成物中の主な不純物が単量体化合物及び塩であることが確認されている。特にイオホルミノールの場合、合成された粗イオホルミノール製品は約2〜10%の単量体不純物を含み、この単量体不純物を除去する必要がある。
【0007】
粗イオジキサノール製品の純度は概して、わずか83〜84%のような75〜90%であり、このことは、要求品質内の製品を得るのに精製効果が非常に適している必要があることを意味する。同時に、イオジキサノールは大量に生産され、そのため、財務実績の観点からプロセスの収率は非常に重要である。
【0008】
粗X線製品のような粗生成物を精製するための幾つかの方法が記載されている。米国特許第5811581号明細書には、クロマトグラフィーカラムを使用する造影剤の精製方法が記載されている。液体クロマトグラフィーの使用は、特に関連コストの高さに起因して、工業プロセスでは不利である。より実行可能な精製方法は、例えば国際公開第2006/016815号に記載されている結晶化であることが分かっている。しかし、結晶化による精製には、長時間を要するとともに大規模な設備が必要であるのような課題もあり、ろ過及び洗浄前の不十分な沈殿を伴うプロセス中での収率の低下が特に不利である。結晶化は概して有機溶媒の還流及びその回収を含むであろうことから、結晶化はまた、エネルギー消費が高いという欠点も有する。本願出願人の米国特許出願公開第2001/0021828号明細書はイオジキサノールに関し、脱塩した及び脱溶媒した二量体化反応混合物からの中間体5−アセトアミド−N,N−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)−2,4,6−トリヨードイソフタルアミド(化合物A)の回収方法にも関する。この発明は、イオジキサノールの結晶化前に限外ろ過を使用して非晶質の化合物Aを回収する方法を含む。米国特許第5221485号明細書には、X線造影剤のような粗診断薬の精製の代替の又は代わりの方法としてのナノろ過の使用が開示されている。特に、逆浸透を使用して、エチレングリコール及びジメチルスルホキシドのような小分子量のプロセス不純物を除去することによる、単量体化合物である粗イオベルソールの精製方法が開示されている。本発明により解決すべき課題は、クロマトグラフィー及び結晶化を回避する、粗二量体X線造影剤の代替精製方法であって、単量体不純物が除去される代替精製方法の提供であると見なすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0021823号明細書
【発明の概要】
【0010】
高収率で粗二量体造影剤が精製され、結晶の結晶化が回避され、容易にスケールアップされる及び短時間で精製薬剤を生成する方法が求められている。今回、二量体X線造影剤の粗生成物から単量体化合物不純物及び塩を除去するために膜技術を使用する方法を見出した。
【0011】
そこで、第1の態様では、本発明は、二量体X線造影剤粗生成物の精製方法であって、
i)単量体化合物不純物及び塩が膜を通過し(透過液、P1)、二量体X線造影剤が膜面上を通る(保持液、R1)ように、粗生成物の溶液を膜(M1)に流す工程
を含んでいて、もって精製二量体X線造影剤を得る方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】単量体不純物及び塩から精製標品を分離することによって粗生成物を精製する第1の態様の方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
今回、大規模でも有用で工業的に実施できる方法を提供することができるという予想外の知見が得られ、本方法では、膜分離を使用することによって二量体造影剤から単量体不純物及び塩の両方を分離する。
【0014】
本発明の方法で精製される二量体X線造影剤粗生成物は、合成で得られる未精製の状態の生成物である。この粗生成物は好ましくは溶液の形態であり、溶媒は、合成経路の最終工程で使用する溶媒を含む。溶媒は、例えば水もしくはアルコール又はこれらの混合物であり、この溶媒は、水、2−メトキシエタノール、メタノール、プロピレングリコール、プロパノール及び1−メトキシ−プロパノールを含むことができる。粗生成物は、調製された二量体X線造影剤を主成分として含み、この二量体X線造影剤は、一般に少なくとも60%の量で存在するだろう。イオジキサノールの場合、粗生成物は概して、75〜90重量%のイオジキサノールを含む。加えて、粗生成物は単量体不純物を含み、概して3〜10重量%のイオヘキソールと0〜7重量%の、イオジキサノール用の化合物Aとを含む。イオホルミノールの場合、粗生成物は概して、75〜90重量%のイオホルミノールと2〜10重量%のような1〜25重量%の単量体不純物とを含む。
【0015】
二量体X線造影剤は、連結基で連結されている2個のトリヨウ素化アリール基を含む化合物であり、特に、1位、3位及び5位にヨウ素原子を有するアリール基を含む化合物、換言すると5−アミノ−イソフタル酸に由来する成分等を含む化合物が好ましい。化合物は、非イオン性ヨウ素化二量体X線造影化合物又はヨウ素化二量体X線造影剤を表す化合物のクラスを形成する。二量体造影剤の分子量は含まれる置換基に応じて変動するが、一般に約1400〜1700Daであるだろう。イオジキサノールの分子量は1550Daであり、イオホルミノールの分子量は1522Daである。一実施形態では、二量体X線造影剤は、次の式(I)の化合物である。
【0016】
R−N(R6)−X−N(R6)−R
式(I)
式中、
XはC3〜C8直鎖又は枝分れアルキレン基であって、1又は2つのCH2基が酸素原子、硫黄原子又はNR4基で適宜置換されていてもよく、上記アルキレン基は6個以下の−OR4基で適宜置換されていてもよく、
R4は水素原子又はC1〜C4直鎖もしくは枝分れアルキル基であり、
R6は水素原子又はアシル官能基であり、
各Rは独立に同一又は異なるもので、トリヨウ素化フェニル基、好ましくは2,4,6−トリヨウ素化フェニル基であって、さらに2つのR5基で置換されており、各R5は同一又は異なるもので、水素原子又は非イオン性親水性基を表すが、式(I)の化合物における少なくとも1つのR5基が親水性基であることを条件とする。
【0017】
Xは好ましくは直鎖C3〜C8アルキレン鎖であり、適宜1〜6個の−OR4基で置換されていてもよい。さらに好ましくは、Xは、少なくとも1つの−OR4基を有する直鎖C3〜C5アルキレン鎖であり、好ましくは少なくとも1つのヒドロキシル基が、橋かけ窒素原子に近接していない位置にあるものである。さらに好ましくは、アルキレン鎖は1〜3個のヒドロキシル基で置換されたものであり、さらに一段と好ましくは、1、2又は3個のヒドロキシル基で置換された直鎖プロピレン、ブチレン又はペンチレンである。特に好ましいX基は2−ヒドロキシプロピレン、2,3−ジヒドロキシブチレン、2,4−ジヒドロキシペンチレン及び2,3,4−トリヒドロキシペンチレンから選択され、最も好ましくはXは2−ヒドロキシプロピレンである。
【0018】
R4は好ましくは水素原子又はメチル基であり、最も好ましくは水素原子である。R6置換基は同一でも異なるものでもよく、好ましくは、R6は水素原子又は脂肪族有機酸、特にC1〜C5有機酸の残基であり、例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基及びバレリル基などである。ヒドロキシル化及びメトキシル化アシル基も可能である。特に好ましい実施形態では、R6基は独立にホルミル基又はアセチル基である。
【0019】
ヨウ素化基Rは各々同一でも異なるものでもよく、好ましくは、フェニル基の残りの3位及び5位が2つの基R5でさらに置換された2,4,6−トリヨウ素化フェニル基である。非イオン性親水性基R5は、水溶性を高めるために従前用いられてきた非イオン性基のいずれであってもよい。したがって、R5置換基は同一でも異なるものでもよく、エステル、アミド及びアミン基を含む非イオン性親水性基を表し、適宜、直鎖又は枝分れC1-10アルキル基、好ましくはC1-5アルキル基でさらに置換されていてもよいが、そのアルキル基も、酸素又は窒素原子基で適宜置換された1以上のCH2又はCH基を有していてもよい。R5置換基は、さらに、オキソ、ヒドロキシル、アミノ又はカルボキシル誘導体、硫黄及びリン原子で置換されたオキソから選択される1以上の基をさらに含んでいてもよい。直鎖又は枝分れアルキル基は各々、好ましくは1〜6個、さらに好ましくは1〜3個のヒドロキシ基を含む。したがって、さらに好ましい態様では、R5置換基は同一又は異なるもので、ポリヒドロキシC1-5アルキル、炭素原子数1〜5のヒドロキシアルコキシアルキル、及び炭素原子数1〜5のヒドロキシポリアルコキシアルキルであり、アミド結合又はカルバモイル結合、好ましくはアミド結合を介してヨウ素化フェニル基に結合している。
【0020】
以下に挙げる式のR5基が特に好ましい。
−CONH2
−CONHCH3
−CONH−CH2−CH2−OH、
−CONH−CH2−CH2−OCH3
−CONH−CH2−CHOH−CH2−OH、
−CONH−CH2−CHOCH3−CH2−OH、
−CONH−CH2−CHOH−CH2−OCH3
−CON(CH3)CH2−CHOH−CH2OH、
−CONH−CH−(CH2−OH)2
−CON−(CH2−CH2−OH)2
−CON−(CH2−CHOH−CH2−OH)2
−CONH−OCH3
−CON(CH2−CHOH−CH2−OH)(CH2−CH2−OH)、
−CONH−C(CH2−OH)2CH3
−CONH−C(CH2−OH)3、及び
−CONH−CH(CH2−OH)(CHOH−CH2−OH)、
−NH(COCH3)、
−N(COCH3)C1-3アルキル、
−N(COCH3)−モノ、ビス又はトリス−ヒドロキシC1-4アルキル、
−N(COCH2OH)−水素、モノ、ビス又はトリス−ヒドロキシC1-4アルキル、
−N(CO−CHOH−CH2OH)−水素、モノヒドロキシル化、ビスヒドロキシル化又はトリヒドロキシル化C1-4アルキル、
−N(CO−CHOH−CHOH−CH2OH)−水素、モノヒドロキシル化、ビスヒドロキシル化又はトリヒドロキシル化C1-4アルキル、
−N(CO−CH−(CH2OH)2)−水素、モノヒドロキシル化、ビスヒドロキシル化又はトリヒドロキシル化C1-4アルキル、及び
−N(COCH2OH)2
【0021】
さらに一段と好ましくは、R5基は同一又は異なるもので、式−CONH−CH2−CH2−OH、−CONH−CH2−CHOH−CH2−OH、−CON(CH3)CH2−CHOH−CH2OH、−CONH−CH−(CH2−OH)2及び−CON−(CH2−CH2−OH)2の1以上の基である。さらに一段と好ましくは、2つのR基は同一であり、各RにおけるR2基は同一又は異なるもので、−CONH−CH2−CH2−OH、−CONH−CH2−CHOH−CH2−OH、CON(CH3)CH2−CHOH−CH2OH、−CON−(CH2−CH2−OH)2及び−CONH−CH−(CH2−OH)2である。特に好ましい実施形態では、2つのR基は同一であって、R5基はすべて式−CONH−CH2−CHOH−CH2−OHである。
【0022】
最も好ましくは、二量体X線造影剤はイオジキサノール又はイオホルミノールであり、最も好ましくはイオホルミノールである。
【0023】
本発明の方法で除去される単量体化合物不純物は、アリール基を1つしか含まない化合物であり、特に、2位、4位及び6位にヨウ素原子を有するアリール基を1個含む化合物である。単量体化合物の分子量は900Da未満、例えば435〜900Daであり、大抵は650〜900Da、例えば700〜850Daである。単量体化合物不純物は、未反応出発物質、二量体X線造影剤の合成中間体、或いはこれらの副産物である。二量体X線造影剤がイオホルミノールである場合、主な不純物は以下の単量体化合物を含む。
【0024】
【化3】
二量体X線造影剤がイオジキサノールである場合、主な不純物は以下の単量体化合物を含む。
【0025】
【化4】
合成で得られる二量体X線造影剤粗生成物はまた、相当な量の塩も含有する。イオホルミノール及びイオジキサノールの場合、合成中に形成される主な塩は塩化ナトリウム(NaCl)である。塩素イオンの供給源は、例えば、イオジキサノール及びイオホルミノールの両方の調製の最終ビスアルキル化工程で使用することができるエピクロロヒドリン、並びにエピクロロヒドリンの添加前にpHを調整するために及び反応後の未反応物を沈殿させるために使用する塩酸である。ナトリウム陽イオンの供給源は、反応溶媒に中間体を溶解させるために使用する水酸化ナトリウムである。粗造影剤製品中の塩を本発明の方法で除去することができる。本発明の方法で除去することができるその他の塩は、例えばギ酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムである。当然のことながら、生成される塩は、造影剤の合成で使用する試薬、酸及び塩基の選択の影響を受けるだろう。
【0026】
現在、本発明の方法は、費用対効果が高い様式で、塩含有量と単量体不純物の含有量とを所望のレベルまで同時に低下させることが分かっている。この瞬間的方法中に失われる二量体造影剤はほんのごくわずかであり、従って、本方法は、費用対効果が高い様式で、高純度及び高収率の造影剤を提供する。本発明の方法の工程(i)の保持液(R1)を保持して回収し、この保持液(R1)は、精製二量体X線造影剤を含む。本方法の単一の工程により、二量体薬剤の許容される医薬品純度レベルが可能になる。本方法の単一の工程により、98.0%以上、好ましくは98.5%以上、最も好ましくは99.0%の純度を概して保持することができる。
【0027】
一実施形態では、粗生成物の溶液を、必要な純度を達成するまで膜(M1)に数回のサイクルで通す、又は一連の膜を使用してサイクルの回数を低減することができる。従って、保持液R1である、工程(i)で精製した製品を、粗生成物を含むタンクに戻し、この粗生成物と混合させて次のサイクルを実施することができる。ある数のサイクル後、精製二量体X線造影剤を、例えば粗生成物を最初に含んだタンクから取り出すことができる。精製造影剤は溶液であることから、精製保持液として、任意選択的に溶液の上方濃縮後に、溶液を単に沈殿させる及び蒸発させることができる、又は溶液を液体バルクとして保持して搬送することができる。本発明の方法を使用する場合、結晶化、ろ過及び結晶の洗浄は必要ない。さらに、本方法では更なる有機溶媒を使用せず、従って、粗X線造影剤製品を精製するためのその他の方法と比べて精製工程での有機溶媒の使用を排除しており、環境に優しい方法を提供する。更なる利点は、エネルギー消費が循環及び圧力発生に限定されることから、本方法ではエネルギー消費が低いこと、本方法では処理時間が短いこと、及び本方法のスケールアップが容易であるということである。結晶化を含む精製と比べて相当な処理時間が節約される。
【0028】
膜分離を使用して、単量体不純物及び塩を二量体造影剤化合物から分離する。使用する膜の材料はポリマー又はセラミックであるが、様々な材料を膜で使用することができる。膜(M1)のカットオフサイズ、即ち細孔径は950〜1200Daであり、さらに好ましくは1000〜1100Daであり、最も好ましくは約1000Daである。この特性を備える膜は、1000Da以上の公称分子量を有する有機種を排除することができる。従って、分子量が概して650〜900Daである単量体不純物及びより小さい塩は膜(M1、P1)を通過することができることから、この単量体不純物及び塩を二量体化合物から除去することができる。しかし、膜は完全に均一な細孔を有しないことから、及び二量体化合物のような化合物は異なる構造を有することができることから、多少の二量体造影剤化合物が単量体不純物と共に膜を通過するだろう。従って、二量体から単量体を分離する本方法のこの主な工程中に、多少の二量体化合物が失われる可能性がある。有用な膜の具体例は、1KDaのHydranautics 50であるが、Pall membrane及びInopor等から代替の同等膜が入手可能である。
【0029】
本発明の一実施形態では、本方法は、単量体不純物から塩を分離するために第2の工程ii)を含む。この実施形態では、単量体不純物及び塩を含む、工程i)の透過液(P1)を別の膜(M2)に通して、塩が膜を通過し(透過液、P2)、単量体化合物不純物は膜上を通り(保持液、R2)、保持液R2が保持される。この実施形態では、塩を単量体不純物から分離し、好ましくは単量体の溶液を上方濃縮する。工程ii)の保持液(R2)は単量体化合物不純物を含み、最初の工程において膜(M1)を通って漏出した少量部の二量体造影剤も含むことができる。
【0030】
二量体造影剤の高い全体的な収率を達成するために、透過液(P1)中の、又は工程ii)を実施している場合には保持液(R2)中の二量体化合物を回収しなければならない。本発明の更なる実施形態では、本方法の工程(i)を再び実施することにより、単量体不純物を主に含む工程i)の透過液(P1)、又は上方濃縮された単量体不純物を含む及び塩が除去されている工程ii)の保持液(R2)を再度精製にかける。好ましい実施形態では、単量体不純物を主に含む保持液(R2)を粗生成物に戻してこの粗生成物と混合させ、又は粗生成物の供給流と組み合わせ、結果としてこの供給流と混合させ、その結果、精製する粗生成物の次のバッチは前のバッチで失われた二量体造影剤を含んでおり、次いで工程i)を繰り返す。
【0031】
単量体不純物から塩を分離する第2の工程で使用する膜(M2)のカットオフサイズは80〜400Daであり、さらに好ましくは100〜300Daである。この特性を備える膜は、400Da以上の公称分子量を有する有機種を排除することができる。膜M2は好ましくは、塩の除去に使用するナノろ過膜である。従って、分子量が概して50〜80Daである塩は膜を容易に通過し、この塩を単量体不純物及び残余の二量体X線造影剤から除去することができる。本方法の第2の工程の透過液(P2)は塩を含み、従って低分子量の不純物を含む。この希釈された塩溶液を廃棄することができる。或いは、逆浸透膜を備える第3の膜システムを使用して、再循環及び再利用のために水を回収することができる。
【0032】
第2の工程の或いは二量体製品の残余の少量部を取り除いた又は保持した後の保持液R2の単量体不純物を、ヨウ素の回収に使用することができる、又は任意選択的な精製後に、X線造影剤の合成で使用することができる。
【0033】
本発明の方法で使用する設備は、互いに連結されている、二量体X線造影剤粗生成物の搬送用のタンク、粗生成物の供給流を供給するためのポンプ及び膜(M1)を少なくとも含む膜システムを含む。加えて、配管及びバルブが存在する。
【0034】
供給流の流量、圧力及び温度のようなプロセスパラメータは、容積効率及び時間効率並びに精製の選択性に影響を及ぼす可能性がある。精製する二量体X線造影剤の供給流の流量は概して、5〜15リットル/時間/m2の範囲であることができ、本方法で使用する温度は例えば10〜35℃である。中程度の流量により、良好な容積効率及び時間効率が得られるが、圧力を高め、結果として流量を増加させる場合、単量体と二量体との間の精製の選択性が改善される。
【0035】
本発明に係る精製X線造影剤を造影剤として使用することができ、従来の基剤及び賦形剤と共に製剤化して診断用造影製剤を作製することができる。従って、更なる態様から見ると、本発明は、例えば、任意選択的にプラズマイオンを添加した又は酸素を溶解させた注射用の水溶液中に、本発明の方法に従って精製した二量体造影剤、好ましくはイオホルミノール又はイオジキサノールを、1種以上の生理学的に許容される担体又は賦形剤と共に含む診断用組成物を提供する。本発明の造影剤組成物は、そのままで使用することができる濃度であることができる、又は投与前に希釈する濃縮型であることができる。従って、本発明は、X線造影検査での、本発明の方法で精製した造影剤及びこの造影剤を含有する診断用組成物の使用をさらに包含する。
【0036】
更なる態様では、本発明は、本発明の方法で得られるイオジキサノール又はイオホルミノールを提供し、得た製品は、例えば米国薬局方の細目により定められているもののような、所望の医薬品純度を満たす純度である。
【実施例】
【0037】
以下の非限定的な実施例を参照して本発明を説明する。
【0038】
実施例1:膜技術による粗イオホルミノール溶液の精製
撹拌タンク内の、93.8%イオホルミノール、3%単量体不純物、3%塩及び0.2%三量体不純物を含む粗生成物溶液を、1KDa膜のHydranautics 50を備える膜システムに供給し、二量体化合物イオホルミノールから単量体不純物及び塩を分離した。
【0039】
結果
最初の保持液の分析結果として、保持液は、99.27%のイオホルミノールと、わずか0.05%の1−ホルミルアミノ−3,5−ビス(2,3−ビス(ホルミルオキシ)プロパン−1−イルカルバモイル)2,4,6−トリヨードベンゼン(化合物B)と、0.14%のN1−N3−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)−5−ホルミルアミノ−2,4,6−トリヨードイソフタルアミド(化合物C)と、その他の不純物とからなり、不純物は合計で0.73%であった。
図1