特許第6342452号(P6342452)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6342452
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】低カロリーチョコレート組成物
(51)【国際特許分類】
   A23G 1/48 20060101AFI20180604BHJP
   A23G 1/32 20060101ALI20180604BHJP
   A23G 1/40 20060101ALI20180604BHJP
   A23G 1/44 20060101ALI20180604BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20180604BHJP
   A23L 33/125 20160101ALI20180604BHJP
   A23L 33/185 20160101ALI20180604BHJP
【FI】
   A23G1/48
   A23G1/32
   A23G1/40
   A23G1/44
   A23L33/105
   A23L33/125
   A23L33/185
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-133463(P2016-133463)
(22)【出願日】2016年7月5日
(65)【公開番号】特開2017-18096(P2017-18096A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2016年7月27日
(31)【優先権主張番号】特願2015-135767(P2015-135767)
(32)【優先日】2015年7月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 友規
【審査官】 小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5956669(JP,B2)
【文献】 国際公開第2011/107993(WO,A1)
【文献】 特開昭60−232058(JP,A)
【文献】 特開平05−260894(JP,A)
【文献】 特表2002−534072(JP,A)
【文献】 特開平07−079704(JP,A)
【文献】 特開平07−132047(JP,A)
【文献】 特開2012−244920(JP,A)
【文献】 特開2014−087321(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/133390(WO,A1)
【文献】 特開2009−143939(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/046486(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 1/00−9/52
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA(STN)
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチトールを含有するチョコレート組成物において、下記の(a)〜(c)の条件を全て満たす低カロリーチョコレート組成物。
(a)組成物全量に対して25〜55質量%のマルチトールを含有する。
(b)砂糖(X)とマルチトール(Y)の存在量の質量比(X):(Y)が1:3〜0:1である(ただし、(X):(Y)が0:1の場合を除く)
(c)オレウロペインを組成物全量に対して0.05〜0.5質量%含有する。
【請求項2】
組成物全量に対して砂糖の含有量が10質量%以下である請求項1に記載の低カロリーチョコレート組成物。
【請求項3】
オレウロペインの含有量が、組成物全量に対して0.05〜0.3質量%である請求項1または請求項2に記載の低カロリーチョコレート組成物。
【請求項4】
砂糖(X)とマルチトール(Y)の存在量の質量比(X):(Y)が7:33〜0:1である(ただし、(X):(Y)が0:1の場合を除く)請求項1〜3の何れか1項に記載の低カロリーチョコレート組成物。
【請求項5】
脂質含量が組成物全体に対して30質量%以下である請求項1〜4の何れか1項に記載の低カロリーチョコレート組成物。
【請求項6】
さらに、難消化性デキストリン、水溶性小麦タンパク、サラシノールおよびアミノレブリン酸およびその塩からなる群から選ばれる1種または2種以上の血糖値の上昇を穏やかにする成分を含有する請求項1〜5の何れか1項に記載の低カロリーチョコレート組成物。
【請求項7】
マルチトールを含有するチョコレート組成物において、下記の(a)〜(c)の条件を全て満たし、さらに、難消化性デキストリン、水溶性小麦タンパク、サラシノールおよびアミノレブリン酸およびその塩からなる群から選ばれる1種または2種以上の血糖値の上昇を穏やかにする成分を含有する低カロリーチョコレート組成物。
(a)組成物全量に対して25〜55質量%のマルチトールを含有する。
(b)砂糖(X)とマルチトール(Y)の存在量の質量比(X):(Y)が1:3〜0:1である。
(c)オレウロペインを組成物全量に対して0.05〜0.5質量%含有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、砂糖の一部をマルチトールに置換し、かつオレウロペインを高濃度含有するオリーブ葉抽出物を配合した低カロリーチョコレート組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ジャンクフードなどに代表される高い脂質含量を有する食品や砂糖や異性化糖などの糖を多量に含有する飲料やおやつが多く消費される現代社会において、世界的に肥満や糖尿病に罹患する人が増加しており社会問題化している。この対策として、肥満者や糖尿病患者、その前症状段階にある人に対して、食生活の質の改善や運動療法などの生活指導が普及しつつある。これら生活指導を受けている人にとって、栄養摂取の優先順位を考慮すると、一般的に嗜好性の高い菓子類、特に販売されている菓子類の多くに使用されているチョコレートやチョコレート系の菓子は飲食を避けるべきものである。しかし、一方、生活指導を受ける人にとって、栄養指導を遵守することは日常的に大きなストレスの負担がかかっており、精神衛生的の観点からこのストレスの緩和は重要な課題点の一つになっている。このストレスを緩和し、より高いQOLを得るための方策として、バランスの良い栄養摂取を実現しつつ食べることのできる低カロリーのチョコレート組成物の実現が望まれていた。
【0003】
通常、チョコレートはカカオマスに砂糖、カカオバターなどを配合して作られており、糖質や脂質の含有量が高い典型的な高カロリー食品である。特に、口中で溶解し独特の風味を与えるカカオマスと砂糖を併用したチョコレートは嗜好性が高いことが知られている。この特徴を生かしつつ、チョコレートのカロリーを低減させる検討が行なわれており、幾つかの提案がなされている。例えば、甘味料として高純度の結晶化マルチトール等を使用した低カロリーチョコレート(特許文献1)、糖質としてパラチニットを使用しレシチン等を入荷剤として使用した低カロリーチョコレート(特許文献2)、ココアバター、ココアニブ、およびエリスリトールとマルチトールの混合物を配合したチョコレート調合物(特許文献3)、甘味料としてマルチトール、ラクチトールおよびポリデキストロースを使用したダイエット用カロリー低減チョコレート(特許文献4)などが挙げられる。これらの提案は使用する砂糖を他の代替品に置換させる技術であるが、砂糖の大半を置換するとチョコレートとしての食味が大きく損なわれるため、「おいしく食べることのできるチョコレート」と「低カロリーのチョコレート」は両立することが出来なかった。このため、砂糖と同じくチョコレートにおいて高いカロリー源であるカカオマスやココアバターをカカオ以外の植物油脂類に置換し、かつ油脂含量を削減することでカロリーを低減したチョコレート加工品も提案されている。これらのチョコレートは低カロリーであるが、油脂の融点が相違するため口中に入れた際の口溶け感がチョコレートとは全く異なったり、食べた直後にチョコレートの香味が口中に広がるといった濃厚な食感が低下するなどの理由により、おいしいチョコレートを食べたという実感が得られなかった。そこで、「カカオの口溶け感」や「カカオ由来の独特の風味」が得られる嗜好品である低カロリーのチョコレートの実現が切望されていた。
【0004】
【特許文献1】特開平5−260894号公報
【特許文献2】特開平7−132047号公報
【特許文献3】特開8−242769号公報
【特許文献4】特表2002−534072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
砂糖の含有量を削減したチョコレートのもかかわらず、チョコレートとして違和感のない甘さの感じ方と「チョコレートの口溶け感」や「カカオ由来の独特の風味」を有する「おいしいチョコレートを食べたという感覚」が得られる低カロリーチョコレート組成物を提供する。具体的には、砂糖の過半量以上をマルチトールに置換し、更にはチョコレートに含まれる脂質量を削減したとしても、甘味の感じ方や口溶け感、食べた直後から口中に広がるチョコレートの香味が本来のチョコレートと遜色なく、摂取後においしいチョコレートを食べたという満足感が得られる低カロリーチョコレート組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らは、かかる事情に鑑み鋭意検討を重ねた結果、オレウロペインを配合し、かつ砂糖とマルチトールの存在比率を特定の範囲に設定することにより、食べたときのチョコレート感を損なうことなく大きくカロリーを削減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本願発明は、特に以下の項1〜7に記載の組成物を提供するものである。
項1.マルチトールを含有するチョコレート組成物において、下記の(a)〜(c)の条件を全て満たす低カロリーチョコレート組成物。
(a)組成物全量に対して25〜55質量%のマルチトールを含有する。
(b)砂糖(X)とマルチトール(Y)の存在量の質量比 X:Yが1:3〜0:1である。
(c)オレウロペインを組成物全量に対して0.01〜0.5質量%含有する。
項2.組成物全量に対して砂糖の含有量が10質量%以下である項1に記載の低カロリーチョコレート組成物。
項3.オレウロペインの含有量が、組成物全量に対して0.05〜0.3質量%である項1または項2に記載の低カロリーチョコレート組成物。
項4.質量比 X:Yが7:33〜0:1である。項1〜3の何れか1項に記載の低カロリーチョコレート組成物。
項5.脂質含量が組成物全体に対して30質量%以下である項1〜4の何れか1項に記載の低カロリーチョコレート組成物。
項6.さらに、難消化性デキストリン、水溶性小麦タンパク、サラシノールおよびアミノレブリン酸およびその塩からなる群から選ばれる1種または2種以上の血糖値の上昇を穏やかにする成分を含有する項1〜5の何れか1項に記載の低カロリーチョコレート組成物。
項7.ココアパウダーの配合量が10〜35質量%である項1〜6の何れか1項に記載の低カロリーチョコレート組成物。
【発明の効果】
【0008】
本願発明は、おいしいチョコレートの食味感を保持したままでカロリーを大幅に低減した嗜好性が高い低カロリーチョコレート組成物を提供することを可能とする。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に用いるオレウロペインは、フェノール系化合物の配糖体の一種であり、主にモクセイ科オリーブ属の植物の花、果皮、果実、葉、樹皮、根または種子を水または水・エタノール混液を用いて抽出することにより得られる。モクセイ科オリーブ属の植物としては、例えば、オリーブ(Oleaeuropaea Linne)やその同属種(Oleawelwitschii、Oleapaniculataなど)などが挙げられる。オリーブの品種の代表例としては、例えば、ネバディブロンコ、マンザニロ、ピクアル、ホジブランコ、アルベキナ、カタマラ、コロネイキ、ピッチョリーネ、パラゴン、ワッガベルダル、ミッション、ワシントン、ウエストオースラリアミッション、サウスオーストラリアベルダル、アザパ、バルネア、コルニカブラ、ゴルダル、フラントイオ、レッチーノ、チプレッシーノ、ルッカ、アスコラーナテレナ、コレッジョッラ、モロイオロ、ブラックイタリアン、コラティーナ、ヘレナ、ロシオーラ、ワンセブンセブン、エルグレコ、ハーディズマンモスなどを挙げることができる。本願でいうオレウロペインとは、オリーブ(特に、オリーブ葉)の抽出物を精製し、オレウロペインを少なくとも抽出物全量に対して20質量%以上含有するオリーブ抽出物の精製処理物を意味する。オリーブ葉におけるオレウロペインの含有量が低いと、効果を奏するだけのオレウロペインを配合した場合、オリーブ葉エキス中に多く含有するオレウロペイン以外のオリーブ葉由来の成分がチョコレートの香味を損なう恐れが高いため好ましくない。
【0010】
オレウロペインは前記に例示されるオリーブ(Oleaeuropaea Linne)やその同属種(Oleawelwitschii、Oleapaniculataなど)の果皮、果実、葉、樹皮、根または種子に含まれており、特に葉は他部位に比べ多量に含まれていることが知られている。従って、オレウロペインの抽出において、葉を主体とした植物体を用いることが好ましい。抽出溶媒としては、水、エタノールのほか、石油エーテル、ヘキサン、ブタノール、プロパノール、メタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールおよびこれら溶媒の混合液が挙げられるが、温水および水−エタノール混合液が好ましい。水−エタノール混合液の混合比(水:エタノール)は、体積比で好ましくは約100:1〜約1:200、より好ましくは約20:1〜約1:20であり、最も好ましくは約1:9〜1:1である。
【0011】
抽出方法については、その溶媒の温度や原料に対する溶媒の重量比率、または抽出時間についても、種々の原料および使用する溶媒に対しそれぞれを任意に設定することができる。また、抽出時の溶媒の温度は約−4℃〜約200℃の範囲であればよいが、約30℃〜約150℃が好ましく、約40℃〜約80℃がより好ましい。また、抽出にオリーブ葉を用いる場合は、特開2003−335693に開示されているように、比較的オレウロペイン含量が高い生葉を用いることが好ましい。具体的には、生葉を常圧または減圧下、65℃以下または85℃〜145℃の温度で一定時間乾燥することにより、オリーブ葉中のオレウロペイン含量を高めた処理を行った後にオレウロペインの抽出を行うことが好ましい。
【0012】
溶媒抽出で得られたオレウロペインは含有量が低いため、得られたオリーブ抽出物は、さらに濃縮や精製処理を行う。例えば、このようにオリーブ葉から溶媒抽出した粗抽出液の溶媒を留去させた後、スチレン−ジビニルベンゼン共重合樹脂(ダイアイオンHP20:三菱化学(株)社製)、アンバーライトXAD樹脂:ダウケミカル社製、デュオライトS樹脂:ダイアモンドシャムロック社製などの樹脂カラムに通し、減圧下で濃縮し、高温乾燥させることにより高濃度のオレウロペインを含有した抽出物を得ることができる。本発明で使用するオレウロペインは、このように濃縮・精製処理を行なうことで得られる粗精製物が含まれる。さらに、必要に応じて精製、濃縮、乾燥などの処理を行なうことにより、抽出物中のオレウロペインの含有量を高めたり、抽出物を配合した商品の品質(外観、香味など)の低下を抑制することができる。このような処理としては、例えば、酸(無機酸、有機酸等)またはアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、アンモニア等)の添加による分解、醗酵処理、微生物を用いた代謝変換処理、イオン交換樹脂や活性炭、ケイ藻土等による成分吸着、クロマトグラフィーを用いた分画、濾紙やメンブランフィルター、限外濾過膜などを用いた濾過、加圧または減圧、加温または冷却、スプレードライ、凍結乾燥、pH調整、脱臭、脱色、低温における静置処理後のろ過処理による夾雑物の除去、などが例示でき、これらを任意に選択して組合せた処理を行って、さらに高い濃度のオレウロペインを含有するオリーブ抽出物を得ることができる。本発明で用いることのできるオレウロペインは、精製や濃縮等の処理を行って得られたオレウロペインを抽出物全量に対して20質量%以上含有するオリーブ抽出物である。なお、オリーブエキスに含まれるオレウロペイン以外の夾雑物の影響を低減するため、オリーブ抽出物のオレウロペイン含有量は25質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることが最も好ましい。オレウロペインの含有量が低い抽出物を使用すると、効果を得るために十分なオレウロペインの量を低カロリーチョコレート組成物に配合できなかったり、多量に配合することにより、オリーブエキスに含まれるオレウロペイン以外の夾雑物が低カロリーチョコレートの味や風味に影響を与え、嗜好性を悪くする可能性があるため好ましくない。なお、本発明に用いるオレウロペインは市販されている原料を用いることもできる。例えば、オリーブ葉乾燥エキス(Frutarom Switzerland社製、オレウロペイン約20〜26%含有)、Oleuropein(Natac社製、オレウロペイン20%、22%若しくは40%含有)オリーブ葉エキス(バイオアクティブジャパン社製、オレウロペイン26%含有)オリーブ葉エキス(タマ生化学社製、オレウロペイン35%含有)、オピエース(エーザイフードケミカル社製、オレウロペイン35%含有)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
本発明の低カロリーチョコレート組成物は、摂取カロリーの制限を受ける人であっても食することが可能な程度に砂糖の含有量を減らすことで失われる「おいしいと感じるチョコレート本来の風味や食感」を、マルチトールとオレウロペインの配合により付与するものである。具体的には、少なくとも砂糖の配合量よりマルチトールの配合量を多く含有させる。マルチトールは、甘味強度が砂糖に比べて弱く、かつ甘みの感じ方も砂糖と大きく異なることから、「本来のチョコレートとは異質の甘み」となってしまうが、オレウロペインを含有させると、本来の甘みの感じ方に近く改善される。マルチトールとオレウロペインと併用することにより初めて「ビターチョコレートに似た食味感」を低カロリーチョコレート組成物に付与することができる。また、マルチトールの含有量は少なくとも25質量%にする必要がある一方、マルチトールの緩下剤作用に対して感受性の高い消費者も存在することから、チョコレートの摂取量を考慮すると組成物全量に対して55質量%程度より抑えることが好ましい。マルチトールの含有量は、組成物全量に対して、より好ましくは30〜50質量%であり、最も好ましくは35〜45質量%である。さらには、低カロリーチョコレート組成物における砂糖とマルチトールの含有比率を、砂糖(X)とマルチトール(Y)の質量比として、(X):(Y)=1:3よりマルチトールの存在比率が高いことが必要であり、(X):(Y)=7:33よりマルチトールの存在比率が高いことがより好ましい。以上により、本願の低カロリーチョコレート組成物の食感や食べた直後の香味の広がり感が大幅に改善され、かつ違和感のない甘さの感じ方やビターチョコレートを想起させる苦み感を付与できる。なお、スイートチョコレートのような「甘み感」を付与するため、公知の高度甘味料を配合することもできる。併用できる高度甘味料は本願効果を阻害しない限り特に限定されない。例えば、サッカリン、サッカリンナトリウム、アセスルファムカリウム、ステビアエキス、ステビオサイド、スクラロース、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、ソウマチン、アスパルチルフェニルアラニンメチルエステルが挙げられ、これらは単独若しくは組合せて使用できる。使用する高度甘味料の種類や配合量は、マルチトールの配合量やカカオ豆由来の原料の種類や配合量、加えて高度甘味料の種類により相違するため、本願の低カロリーチョコレート組成物の処方に応じて適宜決定する。
【0014】
オレウロペインは低カロリーチョコレート組成物全量に対して、0.01〜0.5質量%配合し、好ましくは0.05〜0.5質量%、より好ましくは0.1〜0.3質量%、最も好ましくは0.1〜0.3質量%配合する。0.05質量%より少ない場合、食べたときにチョコレートの香味の広がりに欠けるだけでなく、チョコレートの重厚な食感が得られないため好ましくない。一方、0.5質量%を超えて配合すると、食べた直後からチョコレートの苦味とは異なる質の強い苦味が感じられ、チョコレート感を大きく損ない、嗜好性も大幅に低下させる恐れがあるため好ましくない。
【0015】
チョコレートには、甘味料と共にカカオ由来の原料を主成分として配合する必要がある。カカオ由来の原料としては、カカオニブ、カカオマス、ココアバター、ココアケーキおよびココアパウダーが挙げられるが、主として、カカオマスとココアバターがチョコレートに使用されている。カカオニブとはカカオビーンズから殻部分を除去したものであり、カカオマスとはカカオニブを機械的方法で磨砕等の処理を行なったものである。ココアケーキやココアパウダーとは、カカオニブやカカオマスに脱脂処理等を行った後に得られるもので、ココアケーキを粉末化するとココアパウダーが得られる。ココアバターとは前記脱脂処理にて得られるカカオニブなどに含まれる油脂である。通常、カカオニブやカカオマスの過半量は油脂(ココアバター)で構成されており、ココアケーキやココアパウダーの油脂含有量は、カカオマスからの脱脂程度に左右され、任意に制御可能である。従って、用途に応じて、脂質含量の高いものから低いものまで様々な油脂含有量のカカオ由来の原料が存在する。例えば、油脂含量が20〜30質量%程度の高油脂含有タイプ、同8〜15質量%程度の低油脂含有タイプ、同8質量%未満の脱脂タイプなどが挙げられる。チョコレートの主原料はこれらカカオ由来の原料であり、特にカカオニブやカカオマスは、配合した組成物にチョコレート特有の香味を付与する重要な原料である。従って、本願発明においてもカカオ由来原料の配合を阻害するものではない。しかし、カカオ由来の原料は油脂含有量が極めて高いものが多いため、砂糖をマルチトールに置換して得られる組成物よりも低いカロリーのチョコレートを得ようとした場合は、カカオ由来の原料の配合量も削減する必要がある。
【0016】
カカオ由来の原料を削減する場合、まず、油脂含有量の高いココアバターを削減することが有効である。ココアバターを削減し、チョコレート組成物中の油脂含有量が低くなるとチョコレート感を失うことから、削減したココアバターの代わりにカカオ由来以外の植物油脂を配合することが好ましい。この場合、カロリーの低減が実現させるため、配合する植物油脂の配合量を削減したココアバターの量より少なくする必要がある。カカオ以外の由来の植物油脂は特に限定されない。例えば、大豆油、ナタネ油、コメ油、ヤシ油、パーム核油、パーム油、サフラワー油、トウモロコシ油、綿実油、ゴマ油、落花生油、オリーブ油、ヒマワリ油、マカデミアナッツ油、アーモンド油などが挙げられ、通常、複数の植物油脂を配合することが好ましい。本願で用いる本発明の低カロリーチョコレート組成物においては組成物全体に対する脂質含量を30質量%以下とする。好ましくは28質量%、最も好ましくは26質量%以下である。カカオ由来以外の植物油脂は、組成物中の脂質含量が前記の範囲内に留まる程度の量とすることが必要である。一方、脂質含量を極端に低くすれば組成物自体のカロリーを大幅に低減できるが、チョコレート感が失われるため、組成物中に含まれる脂質量は少なくとも20質量%以上、好ましくは23質量%以上、最も好ましくは24質量%以上必要である。ここにおいて油脂含量とは、「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について(平成11年4月26日付衛新第13号新開発食品保健対策室長通知)」に示されている測定方法を用いて得られる組成物中の脂質量を意味する。
【0017】
本願の低カロリーチョコレート組成物のカロリーをより一層低減させるためには、組成物に含有するカカオニブやカカオマス、ココアバターを削減する必要がある。カカオニブやカカオマスを削減すると、チョコレート特有の風味が大きく損なわれる可能性が高いため、風味を改善するため削減した量に応じてココアケーキやココアパウダーを配合することが好ましい。また、カカオマス等やカカオバターの削減量が多い場合は、チョコレート組成部中の油脂含有量が低くなりすぎ、食べたときの油脂感が乏しくなりチョコレートとは異なる食感になりやすいため、削減した油脂量に応じてカカオ由来以外の植物油脂を配合することが好ましい。ココアパウダーの配合量は、通常10〜35質量%であり、好ましくは15〜30質量%、より好ましくは15〜25質量%である。加えて、ココアパウダーと植物油脂の合計の配合量は、15〜60質量%、好ましくは25〜55質量%、より好ましくは35〜50質量%、最も好ましくは、40〜45質量%である。カカオ由来の油脂を削減すると、チョコレート本来の食べたときのイメージとは異なる食味に変わってしまう恐れがあるが、この場合でも、砂糖とマルチトールの含有量を質量比で、砂糖(X):マルチトール(Y)=1:3〜0:1の範囲に調整した上で、適当量のオレウロペインを配合するとチョコレートらしい風味を回復できる。もし、砂糖とマルチトールの含有量の質量比において砂糖の比率を高めると、前記効果が阻害される可能性があるため、好ましくない。これは、砂糖とマルチトールの甘味感が大きく異なるためだけでなく、チョコレートを食べたときに舌に感じる香味の経時的変化が砂糖とマルチトールで異なるため、チョコレートとしての味の統一感が失われることも要因と考えられる。
【0018】
本発明の低カロリーチョコレート組成物には、血糖値の上昇を緩和させる効果のある、難消化性デキストリン、水溶性小麦タンパク、サラシノールおよびアミノレブリン酸およびその塩からなる群から選ばれる1種または2種以上を配合することが好ましい。難消化性デキストリンとは、トウモロコシデンプンをα-アミラーゼやグルコアミラーゼによる酵素分解などの処理を行い得られる食物繊維成分である。水溶性小麦タンパクとは、小麦由来の等電点が7.3の可溶性タンパクである。サラシノールは、C9H18O9S2、分子量334、CAS番号2000399-47-9の化合物である。アミノレブリン酸は、C5H9NO3、分子量131、CAS番号106-60-5の化合物である。これらの中でも難消化性デキストリンが特に好ましい。
【0019】
本発明の低カロリーチョコレート組成物には、配合後の組成物中の脂質含量が30%を越えず、かつ本発明の効果を損なわない範囲であれば公知の食品原料を配合することができる。また、健康志向の食品としても使用できるため、例えば、健康の維持・向上に有用と考えられている、乾燥野菜、乾燥果実、木の実類、オリーブ以外の植物の抽出物、植物由来の配糖体やアグリコンなどを配合することも好ましい実施形態である。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。なお、以下特に断りのない限り「%」は「質量%」を示す。
【0021】
官能評価
表1に示した組成物を常法に従い調製し、専門パネル3名の官能評価で行なった。評価項目は、「香味のバランス」[1(非常に悪い)〜7(非常に良い)]、「チョコレート感の変化」[1(かなり感じる)〜7(全く感じない)]、「(チョコレートとして)異質な苦味の有無」[1(かなり感じる)〜7(全く感じない)]を7段階の絶対評価にて実施した。評価点は各々の平均値を求め、さらに被検体ごとに合計値を算出した。なお、カカオマス中のココアバター含有量は55質量%であり、オリーブ葉エキスAは、オレウロペインを全量に対して35質量%含有するオリーブ葉抽出物である。得られた結果を、表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
表1に示したとおり、砂糖を10質量%、マルチトールを30質量%含有する砂糖(X)とマルチトール(Y)の存在量の質量比(X):(Y)が1:3よりマルチトールの砂糖に対する存在比率が高いチョコレート組成物は良好な結果を示したが、砂糖がマルチトールの3分の1量以上に含まれるチョコレート組成物は全て本願効果が得られないことが分かった。なお、同様の評価を、オリーブ葉Aエキス配合量を0.375質量%に減じた処方で実施したが、各々の処方において、配合量が0.75質量%の場合とほぼ同じ結果を示すことを確認している。
【0024】
処方例
以下、本発明の低カロリーチョコレート組成物の処方例を示すが、これらの処方に限定されるものではない。なお、カカオマス中のココアバター含有量は55質量%、ココアパウダー中の油脂含有量は20質量%である。以下の配合量はいずれも「質量%」を示す。
【0025】
処方例1 チョコレート

成分 配 合 量
オリーブ葉抽出物B 0.2
マルチトール 25
砂糖 5
カカオマス 15
難消化性デキストリン 20
植物油脂混合物A 15
ココアパウダー 残 部
香料 適 量
合 計 100

植物油脂混合物A 大豆油、ナタネ油、コメ油とレシチンの混合物
オリーブ葉抽出物B オレウロペイン含有量25質量%
【0026】
処方例2 チョコレート

成分 配合量
オリーブ葉抽出物C 1
マルチトール 40
砂糖 10
カカオマス 5
植物油脂混合物B 20
ココアパウダー 20
香料 適量
イヌリン 残部
合 計 100

植物油脂混合物B ナタネ油、パーム油、コメ油とレシチンの混合物
オリーブ葉抽出物C オレウロペイン含有量30質量%
【0027】
処方例3 チョコレート

成分 配合量
オリーブ葉抽出物D 0.5
マルチトール 50
砂糖 5
カカオマス 10
植物油脂混合物A 15
ココアパウダー 15
アーモンド破砕物 2
ポリデキストロース 残部
合 計 100

オリーブ葉抽出物D オレウロペイン含有量20質量%
【0028】
処方例4 チョコレート

成分 配 合 量
オリーブ葉抽出物C 0.125
マルチトール 35
カカオマス 40
カカオバター 15
香料 適 量
イヌリン 残 部
合 計 100

オリーブ葉抽出物E オレウロペイン含有量40質量%
【0029】
処方例5 チョコレート

成分 配合量
オリーブ葉抽出物F 0.5
マルチトール 25
砂糖 1
スクラロース 0.01
カカオマス 5
植物油脂混合物B 20
ココアパウダー 15
サラシノール 4.8
香料 適 量
ポリデキストロース 残 部
合 計 100

植物油脂混合物B ナタネ油、パーム油、コメ油とレシチンの混合物
オリーブ葉抽出物F オレウロペイン含有量35質量%
【0030】
処方例6 チョコレート

成分 配合量
オリーブ葉抽出物G 0.5
マルチトール 35
カカオマス 15
植物油脂混合物A 15
ココアパウダー 15
アーモンド破砕物 2
5−アミノレブリン酸リン酸塩 0.075
ポリデキストロース 残部
合 計 100

オリーブ葉抽出物G オレウロペイン含有量28質量%
【0031】
処方例7 チョコレート
成分 配 合 量
オリーブ葉抽出物C 0.25
マルチトール 30
砂糖 5
カカオマス 35
カカオバター 10
香料 適 量
難消化性デキストリン 残 部
合 計 100

オリーブ葉抽出物E オレウロペイン含有量40質量%
【0032】
処方例8 チョコレート

成分 配 合 量
オリーブ葉抽出物F 0.25
マルチトール 35
カカオマス 20
難消化性デキストリン 30
ココアパウダー 残 部
香料 適 量
合 計 100

オリーブ葉抽出物F オレウロペイン含有量35質量%
【0033】
処方例9 チョコレート

成分 配合量
オリーブ葉抽出物F 0.5
マルチトール 45
スクラロース 0.01
カカオマス 10
植物油脂混合物B 20
ココアパウダー 15
水溶性小麦タンパク 1.8
香料 適 量
ポリデキストロース 残 部
合 計 100

オリーブ葉抽出物F オレウロペイン含有量35質量%