(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2元素含有ガスのプラズマの励起を開始する工程では、前記複数の基板のうち隣り合う所定のいずれか2枚の基板の中間位置が前記活性種供給口の中心位置を通過するタイミング、又はそのタイミングに対して所定時間だけ早いタイミング若しくは所定時間だけ遅れたタイミングにおいてプラズマ励起を開始し、
前記第2元素含有ガスのプラズマ励起を開始する工程における前記所定の2枚の基板と、前記第2元素含有ガスのプラズマ励起を停止する工程における前記所定の2枚の基板は同一の基板である、請求項4記載の半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<本発明の第1実施形態>
以下に、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
(1)基板処理装置の構成
まず、
図1および
図2を用い、本実施形態に係る基板処理装置10について説明する。
図1は、本実施形態にかかるクラスタ型の基板処理装置10の横断面図である。
図2は、本実施形態に係るクラスタ型の基板処理装置10の縦断面概略図である。
【0015】
なお、本発明が適用される基板処理装置10では、基板としてのウエハ200を搬送するキャリヤとしては、FOUP(Front Opening Unified Pod:以下、ポッドという。)100が使用されている。本実施形態にかかるクラスタ型の基板処理装置10の搬送装置は、真空側と大気側とに分かれている。
【0016】
また、以下の説明において、前後左右は
図1を基準とする。
図1に示されているX
1の方向を右、X
2の方向を左、Y
1の方向を前、Y
2の方向を後ろとする。
【0017】
(真空側の構成)
図1および
図2に示されているように、基板処理装置10は、真空状態などの大気圧未満の圧力(負圧)に耐え得る第1搬送室103を備えている。第1搬送室103の筐体101は平面視が例えば五角形であり、上下両端が閉塞した箱形状に形成されている。なお、以下で言う「平面視」とは、基板処理装置10の鉛直上側から鉛直下側をみたときのことをいう。
【0018】
第1搬送室103内には、負圧下で二枚のウエハ200を同時に移載出来る第1ウエハ移載機112が設けられている。ここで、第1ウエハ移載機112は、一枚のウエハ200を移載出来る物でも良い。第1ウエハ移載機112は、第1ウエハ移載機エレベータ115によって、第1搬送室103の気密性を維持しつつ昇降できるように構成されている。
【0019】
筐体101の五枚の側壁のうち前側に位置する側壁には、予備室(ロードロック室)122,123がそれぞれゲートバルブ126,127を介して連結されている。予備室122,123は、ウエハ200を搬入する機能とウエハ200を搬出する機能とを併用可能に構成され、それぞれ負圧に耐え得る構造で構成されている。
【0020】
さらに、予備室122,123内には基板支持台140により2枚のウエハ200を積み重ねるように置くことが可能である。予備室122,123には、ウエハ200の間に配置される隔壁板(中間プレート)141が設置される。
【0021】
第1搬送室103の筐体101の五枚の側壁のうち後ろ側(背面側)に位置する四枚の側壁には、基板に所望の処理を行う第1プロセスチャンバ202aと、第2プロセスチャンバ202b、第3プロセスチャンバ202c、第4プロセスチャンバ202dがゲートバルブ150、151、152、153を介してそれぞれ隣接して連結されている。第1プロセスチャンバ202aと、第2プロセスチャンバ202b、第3プロセスチャンバ202c、第4プロセスチャンバ202dについては、詳細を後述する。
【0022】
(大気側の構成)
予備室122,123の前側には、真空下および大気圧下の状態でウエハ200を搬送することができる第2搬送室121がゲートバルブ128、129を介して連結されている。第2搬送室121には、ウエハ200を移載する第2ウエハ移載機124が設けられている。第2ウエハ移載機124は第2搬送室121内に設置された第2ウエハ移載機エレベータ131によって昇降されるように構成されているとともに、リニアアクチュエータ132によって左右方向に往復移動されるように構成されている。
【0023】
第2搬送室121の左側にはノッチ合わせ装置106が設けられている。なお、ノッチ合わせ装置106は、オリエンテーションフラット合わせ装置であってもよい。また、第2搬送室121の上部にはクリーンエアを供給するクリーンユニット118が設けられている。
【0024】
第2搬送室121の筐体125の前側には、ウエハ200を第2搬送室121に対して搬入搬出するための基板搬入搬出口134と、ポッドオープナ108と、が設けられている。基板搬入搬出口134を挟んでポッドオープナ108と反対側、すなわち筐体125の外側には、ロードポート(IOステージ)105が設けられている。ポッドオープナ108は、ポッド100のキャップ100aを開閉すると共に基板搬入搬出口134を閉塞可能なクロージャ142と、クロージャ142を駆動する駆動機構136とを備えている。ロードポート105に載置されたポッド100のキャップ100aを開閉することにより、ポッド100に対するウエハ200の出し入れを可能にする。また、ポッド100は図示しない工程内搬送装置(OHTなど)によって、ロードポート105に対して、供給および排出されるようになっている。
【0025】
(2)プロセスチャンバの構成
続いて、本実施形態に係る処理炉としてのプロセスチャンバの構成について、主に
図3〜
図5を用いて説明する。
図3は、本実施形態に係る基板処理装置10が備えるプロセスチャンバの横断面概略図である。
図4は、本実施形態に係る基板処理装置10が備えるプロセスチャンバの縦断面概略図であり、
図3に示すプロセスチャンバのA−A’線断面図である。なお、A−A’線は、Aから反応容器203の中心を通ってA’に向かう線である。また、
図5は、本実施形態に係る基板処理装置10が備えるプロセスチャンバの上面概略図である。
【0026】
ここで、本実施形態では、例えば、第1プロセスチャンバ202a、第2プロセスチャンバ202b、第3プロセスチャンバ202c、第4プロセスチャンバ202dはそれぞれ同様に構成されている。以下では、第1プロセスチャンバ202a、第2プロセスチャンバ202b、第3プロセスチャンバ202c、第4プロセスチャンバ202dを、総称して「プロセスチャンバ202」とする。
【0027】
(処理室)
図3および
図4に示されているように、処理炉としてのプロセスチャンバ202は、円筒状の気密容器である反応容器203を備えている。反応容器203内には、ウエハ200を処理する処理室201が形成されている。
【0028】
反応容器203内の上側には、中心部から放射状に延びる4枚の仕切板205が設けられている。4枚の仕切板205は、処理室201内の天井部からサセプタ(基板載置台)217の直上までの空間を遮るように設けられている。これにより、4枚の仕切板205は、処理室201を、第1処理領域201a、第1パージ領域204a、第2処理領域201b、第2パージ領域204bに仕切るように構成されている。なお、第1処理領域201a、第1パージ領域204a、第2処理領域201b、第2パージ領域204bは、後述するサセプタ217の回転方向Rに沿って、この順番に配列するように構成されている。
【0029】
また、後述するように、第1処理領域201a内には第1元素を含有する第1元素含有ガスが供給され、第2処理領域201b内には第2元素を含む第2元素含有ガスが供給され、第1パージ領域204a内及び第2パージ領域204b内には、不活性ガスが供給されるように構成されている。
【0030】
ウエハ200が、第1処理領域201a、第1パージ領域204a、第2処理領域201b、第2パージ領域204bを通過する時間、すなわち、各領域でのウエハ200の処理時間は、第1処理領域201a、第1パージ領域204a、第2処理領域201b、第2パージ領域204bのそれぞれの面積に依存する。すなわち、各領域でのウエハ200の処理時間は、仕切板205の配置に依存する。ここでは、例えば、4枚の仕切板205は、平面視で反応容器203の中心に対して対称に配置されている。また、例えば、それぞれの仕切板205は、互いに90°の角度で配置されている。これにより、各領域でのウエハ200の処理時間は、略等しい。
【0031】
仕切板205の下端は、仕切板205がウエハ200に干渉しない程度にサセプタ217に近付けて配置されている。これにより、仕切板205とサセプタ217との間を通過するガスは少ない。よって、各領域内で異なるガスが混ざり合うことが抑制される。
【0032】
仕切板205の端部と反応容器203の側壁との間には、所定の幅の隙間が設けられており、この隙間をガスが通過できるように構成されている。この隙間を介し、第1パージ領域204a内及び第2パージ領域204b内から第1処理領域201a内及び第2処理領域201b内に向けて不活性ガスを噴出させるようにする。これにより、第1パージ領域204a内及び第2パージ領域204b内への第1元素含有ガス及び第2元素含有ガス等の処理ガスの侵入を抑制することができ、第1パージ領域204a内及び第2パージ領域204b内での処理ガスの反応を抑制することができるように構成されている。
【0033】
(サセプタ)
仕切板205の下側、すなわち反応容器203内の底側中央には、反応容器203の中心に回転軸の中心を有し、回転自在に構成された基板載置台としてのサセプタ217が設けられている。サセプタ217は、ウエハ200の金属汚染を低減することができるように、例えば、窒化アルミニウム(AlN)、セラミックス、石英等の非金属材料で形成されている。なお、サセプタ217は、反応容器203とは電気的に絶縁されている。
【0034】
サセプタ217は、反応容器203内にて、複数枚(本実施形態では例えば5枚)のウエハ200を同一面上に、かつ同一円周上に並べて支持するように構成されている。ここで、同一面上とは、完全な同一面に限られるものではなく、サセプタ217を上面から見たときに、複数枚のウエハ200が互いに重ならないように並べられていればよい。また、サセプタ217は、複数枚のウエハ200を回転方向に沿って並べて配置するように構成されている。
【0035】
サセプタ217表面におけるウエハ200の支持位置には、ウエハ載置部217bが設けられている。処理するウエハ200の枚数と同数のウエハ載置部217bがサセプタ217の中心から同心円上の位置に互いに等間隔(例えば72°の間隔)で配置されている。
【0036】
それぞれのウエハ載置部217bは、例えばサセプタ217の上面から見て円形状であり、側面から見て凹形状である。ウエハ載置部217bの直径はウエハ200の直径よりもわずかに大きくなるように構成することが好ましい。このウエハ載置部217b内にウエハ200を載置することにより、ウエハ200の位置決めを容易に行うことができ、また、サセプタ217の回転に伴う遠心力によりウエハ200がサセプタ217から飛び出してしまう等のウエハ200の位置ズレが発生することを抑制できる。
【0037】
サセプタ217には、サセプタ217を昇降させる昇降機構268が設けられている。サセプタ217の各ウエハ載置部217bの位置には、貫通孔217aが複数設けられている。上述の反応容器203の底面には、反応容器203内へのウエハ200の搬入・搬出時に、ウエハ200を突き上げて、ウエハ200の裏面を支持するウエハ突き上げピン266が複数設けられている。貫通孔217a及びウエハ突き上げピン266は、ウエハ突き上げピン266が上昇させられた時、又は昇降機構268によりサセプタ217が下降させられた時に、ウエハ突き上げピン266がサセプタ217とは非接触な状態で貫通孔217aを突き抜けるように、互いに配置されている。
【0038】
昇降機構268には、サセプタ217を回転させる回転機構267が設けられている。回転機構267の図示しない回転軸は、サセプタ217に接続されており、回転機構267を作動させることでサセプタ217を回転させることができるように構成されている。また、サセプタ217が回転することで、五つのウエハ載置部217bが一括して回転されるように構成されている。
【0039】
回転機構267には、後述するコントローラ300が、カップリング部267aを介して接続されている。カップリング部267aは、例えば回転側と固定側との間を金属ブラシ等により電気的に接続するスリップリング機構として構成されている。これにより、サセプタ217の回転が妨げられないようになっている。コントローラ300は、サセプタ217を所定の速度で所定時間回転させるように、回転機構267への通電具合を制御するように構成されている。
【0040】
上述したように、サセプタ217を回転させることにより、サセプタ217上に載置されたウエハ200は、第1処理領域201a、第1パージ領域204a、第2処理領域201b及び第2パージ領域204bをこの順番に通過することとなる。
【0041】
(加熱部)
サセプタ217の内部には、加熱部としてのヒータ218が一体的に埋め込まれており、ウエハ200を加熱できるように構成されている。ヒータ218に電力が供給されると、ウエハ200表面が所定温度(例えば室温〜1000℃程度)にまで加熱可能に構成されている。なお、ヒータ218は、サセプタ217に載置されたそれぞれのウエハ200を個別に加熱するように、同一面上に複数(例えば5つ)設けてもよい。
【0042】
サセプタ217には温度センサ274が設けられている。ヒータ218及び温度センサ274には、電力供給線222を介して、電力調整器224、ヒータ電源225、及び温度調整器223が電気的に接続されている。温度センサ274により検出された温度情報に基づいて、ヒータ218への通電具合が制御されるように構成されている。
【0043】
続いて、
図4および
図5を用いてプロセスチャンバ202のガス供給系について説明する。
【0044】
(第1元素含有ガス供給系)
反応容器203の天井部の中央部には、第1ガス導入部281が設けられている。第1ガス導入部281の上端には、第1ガス供給管231aの下流端が接続されている。第1ガス導入部281の第1処理領域201a側の側壁には、第1処理領域201aに開口する第1ガス噴出口251が設けられている。
【0045】
第1ガス供給管231aには、上流方向から順に、第1元素含有ガス供給源231b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)231c、及び開閉弁であるバルブ231dが設けられている。
【0046】
第1ガス供給管231aから、MFC231c、バルブ231d、第1元素含有ガス導入部281および第1ガス噴出口251を介して、第1元素含有ガスが第1処理領域201a内に供給される。
【0047】
また、第1ガス供給管231aのバルブ231dよりも下流側には、不活性ガス供給管234aの下流端が接続されている。不活性ガス供給管234aには、上流方向から順に、不活性ガス供給源234b、MFC234c、及びバルブ234dが設けられている。不活性ガス供給管234aからは、MFC234c、バルブ234d、第1ガス供給管231a、第1ガス導入部281及び第1ガス噴出口251を介して、不活性ガスが第1処理領域201a内に供給される。第1処理領域201a内に供給される不活性ガスは、第1元素含有ガスのキャリアガス或いは希釈ガスとして作用する。
【0048】
主に、第1ガス供給管231a、MFC231c、バルブ231d、第1ガス導入部281及び第1ガス噴出口251により、第1元素含有ガス供給系(第1ガス供給系、もしくは第1元素含有ガス供給部と呼んでもよい。)が構成される。なお、第1元素含有ガス供給源231bを第1元素含有ガス供給系に含めて考えてもよい。
【0049】
また、不活性ガス供給管234a、MFC234c、バルブ234dを第1元素含有ガス供給系に含めて考えても良い。
【0050】
第1元素含有ガスは、原料ガス(プリカーサ)、すなわち、処理ガスの一つである。
【0051】
ここで、第1元素は、例えばシリコン(Si)である。すなわち、第1元素含有ガスは、例えばシリコン含有ガスである。シリコン含有ガスとしては、例えばSiH
2(NH(C
4H
9))
2(ビス ターシャリ ブチル アミノ シラン、略称:BTBAS)ガスを用いることができる。なお、第1元素含有ガスは、常温常圧で固体、液体、及び気体のいずれであっても良い。第1元素含有ガスが常温常圧で液体の場合は、第1ガス供給源231bとマスフローコントローラ231cとの間に、図示しない気化器を設ければよい。ここでは気体として説明する。
【0052】
なお、シリコン含有ガスとしては、BTBASの他に、例えば有機シリコン材料であるヘキサメチルジシラザン(C
6H
19NSi
2、略称:HMDS)やトリシリルアミン((SiH
3)
3N、略称:TSA)等を用いることができる。これらのガスは、シリコンソースとして働く。また、第1元素含有ガスは、後述する第2元素含有ガスより粘着度(粘度)の高い材料が用いられる。
【0053】
(不活性ガス供給系)
反応容器203の天井部の中央部には、不活性ガス導入部282が設けられている。不活性ガス導入部282の第1パージ領域207a側および第2パージ領域207b側における側壁には、それぞれ第1パージ領域207aに開口する第1不活性ガス噴出口256、第2パージ領域207bに開口する第2不活性ガス噴出口257が設けられている。
【0054】
不活性ガス導入部282の上端には、第2ガス供給管232aの下流端が接続されている。第2ガス供給管232aには、上流方向から順に、不活性ガス供給源232b、MFC232c、及びバルブ232dが設けられている。第2ガス供給管232aからは、MFC232c、バルブ232d、不活性ガス導入部282、第1不活性ガス噴出口256及び第2不活性ガス噴出口257を介して、不活性ガスが第1パージ領域207a内及び第2パージ領域207b内にそれぞれ供給される。第1パージ領域207a内及び第2パージ領域207b内に供給される不活性ガスは、パージガスとして作用する。
【0055】
主に、第2ガス供給管232a、MFC232c、バルブ232d、不活性ガス導入部282、不活性ガス噴出口256、不活性ガス噴出口257により、不活性ガス供給系が構成される。なお、不活性ガス供給源232bを不活性ガス供給系(不活性ガス供給部と呼んでもよい)に含めて考えてもよい。
【0056】
ここで「不活性ガス」としては、例えば、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、アルゴン(Ar)ガス等の希ガスや窒素(N
2)ガスのうち少なくともいずれか一つを用いることができる。ここでは、不活性ガスは、N
2ガスを用いている。
【0057】
(第2元素含有ガス供給系)
反応容器203の天井部であって、第2処理領域201bの上方には、連通口203aが設けられている。連通口203aには後述するプラズマ生成室290が接続される(プラズマ生成室290の開口部を連通口203aとしてみなしてもよい)。さらにプラズマ生成室290の上部には、天井292に設けられた第2元素含有ガス噴出孔294b及びバッファ室294aが設けられている。バッファ室294aの上部には第2元素含有ガス導入孔292aが設けられており、第2元素含有ガスがバッファ室294a及び第2元素含有ガス噴出孔294bを介してプラズマ生成室290内に供給される。
【0058】
第2元素含有ガス導入孔292aには、第3ガス供給管233aの下流端が接続されている。第3ガス供給管233aには、上流方向から順に、第2元素含有ガス供給源233b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)233c、及び開閉弁であるバルブ233dが設けられている。
【0059】
第2元素含有ガス供給源233bから、MFC233c、バルブ233d、プラズマ生成室290、連通口203aを介して、第2元素含有ガスが第2処理領域201b内に供給される。
【0060】
また、第3ガス供給管233aのバルブ233dよりも下流側には、不活性ガス供給管235aの下流端が接続されている。不活性ガス供給管235aには、上流方向から順に、不活性ガス供給源235b、MFC235c、及びバルブ235dが設けられている。不活性ガス供給管235aからは、MFC235c、バルブ235d、第3ガス供給管233a、プラズマ生成室290、連通口203aを介して、不活性ガスが第2処理領域206b内に供給される。第2処理領域201b内に供給される不活性ガスは、第1処理領域201a内に供給される不活性ガスと同様に、キャリアガス或いは希釈ガスとして作用する。
【0061】
主に、第3ガス供給管233a、MFC233c、バルブ233d、第2元素含有ガス導入孔292aにより第2元素含有ガス供給系(第3ガス供給系、もしくは第2元素含有ガス供給部と呼んでもよい。)が構成される。なお、第2元素含有ガス供給源233bを第2元素含有ガス供給系に含めて考えてもよい。
【0062】
また、不活性ガス供給管235a、MFC235c、バルブ235dを第2元素含有ガス供給系に含めて考えても良い。
【0063】
第2元素含有ガスは、処理ガスの一つであり、反応ガスまたは改質ガスとして考えてもよい。後述するようにプラズマ状態となって、ウエハ200上に第1元素含有ガス(原料ガス)によって形成された第1層と反応するガスである。
【0064】
ここで、第2元素含有ガスは、第1元素と異なる第2元素を含有する。第2元素としては、例えば、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)のいずれか一つである。本実施形態では、第2元素含有ガスは、例えば酸素含有ガスであるとする。具体的には、酸素含有ガスとしては、酸素(O
2)ガスが用いられる。なお、酸素含有ガスとしては、オゾン(O
3)ガスや水蒸気(H
2O)を用いてもよい。また、第2元素含有ガスは、第1元素含有ガスより粘着度(粘度)の低い材料が用いられる。
【0065】
(排気系)
図4に示されているように、反応容器203の底部には、反応容器203内を排気する排気口240が設けられている。例えば排気口240は複数設けられ、第1処理領域206a、第1パージ領域207a、第2処理領域201bおよび第2パージ領域207bのそれぞれの底部に設けられている。
【0066】
各々の排気口240には、排気管241の上流端が接続されている。例えば、各々の排気口240に接続された排気管241は、下流側で一つに合流されている。排気管241の合流部分よりも下流側には、圧力センサ248、圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ243、および開閉弁としてのバルブ245を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されており、処理室201内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。APCバルブ243は、弁を開閉して処理室201内の真空排気や真空排気停止ができ、更に弁開度を調節して処理室201内の圧力を調整可能となっている開閉弁である。主に、排気管241、APCバルブ243及びバルブ245により排気系が構成される。なお、排気系(排気部とも呼ぶ。)には、圧力センサ248および真空ポンプ246を含めても良い。
【0067】
(プラズマ生成部)
図4及び
図5に示されているように、反応容器203の第2処理領域201bにおける天井部には、少なくとも反応容器203の半径方向においてウエハ200の基板径よりも長い開口部を有する連通口203aが設けられている。連通口203aの上部には、プラズマ生成室290が接続されている。プラズマ生成室290は側壁291及び天井292を有する。
【0068】
連通口203aは小判型形状、もしくは楕円形状であり、その長辺の方向(長軸の方向)は反応容器203の半径方向である。つまり、連通口203aの長辺の方向と、その直下を通過するウエハ200の移動方向Rは互いに垂直である。また、プラズマ生成室290の側壁291は連通口203aと同じ断面形状を有する筒状構造であり、外周にコイル293が巻かれている。側壁291は例えば石英で構成されている。連通口203aは、ウエハ200の外周が連通口203aの内側を通過する位置に配置される。
【0069】
プラズマ生成室290の上部(コイル293の上端より上部)には、導入されたガスをプラズマ生成室290内に均一に分散するためのガス分散構造294として、バッファ室294a及び第2元素含有ガス噴出孔294bが設けられる。また、バッファ室294aの上部には、第2元素含有ガス供給系に接続された第2元素含有ガス導入孔292aが設けられている。第2元素含有ガス導入孔292aからバッファ室294aに導入された第2元素含有ガスは、天井292に設けられた第2元素含有ガス噴出孔294bを介してプラズマ生成室290へ供給される。
【0070】
また、本実施形態では、第2元素含有ガス噴出孔294bは、プラズマ生成室290の天井292にはめ込まれた分散プレート294cの切欠き(溝)によって構成されている。
図6は天井290の水平方向の断面図である。
図6に示すように、天井292には拡散プレートをはめ込むためのくり抜き部が設けられており、そこに拡散プレート294cがはめ込まれている。拡散プレート294cには切欠き(溝)が複数(本実施形態では6個)設けられており、拡散プレート294cが天井292にはめ込まれることによって、天井292との間に第2元素含有ガス噴出孔294bを構成するスリットを形成している。なお、拡散プレート294cの形状は、本実施形態では天井292やバッファ室294aと同形状としているが、円形等の形状であってもよい。
【0071】
コイル293には、波形調整回路296、RFセンサ297、高周波電源298と周波数整合器299が接続される。コイル293は遮蔽板295に囲まれている。遮蔽板295は、コイル293から発生する電磁波等を遮断する。
【0072】
高周波電源298はコイル293に高周波電力を供給するものである。RFセンサ297は高周波電源298の出力側に設けられている。RFセンサ297は、供給される高周波の進行波や反射波の情報をモニタするものである。周波数整合器299は、RFセンサ297でモニタされた反射波の情報に基づいて、反射波が最小となるよう、高周波電源298を制御する。
【0073】
コイル293は、所定の波長の定在波を形成するため、一定波長モードで共振するように巻径、巻回ピッチ、巻数が設定される。すなわち、コイル293と隣接する波形調整回路296(後に詳述)を合わせた電気的長さは、高周波電源298から供給される電力の所定周波数における1波長の整数倍(1倍、2倍、…)に相当する長さに設定される。例えば、13.56MHzの場合1波長の長さは約22メートル、27.12MHzの場合1波長の長さは、約11メートル、54.24MHzの場合1波長の長さは約5.5メートルになる。
【0074】
コイル293の両端は電気的に接地されるが、コイル293の少なくとも一端は、装置の最初の設置の際又は処理条件の変更の際に当該共振コイルの電気的長さを微調整するため、可動タップを介して接地される。コイル293の他端は固定グランドに接続される。さらに、装置の最初の設置の際又は処理条件の変更の際にコイル293のインピーダンスを微調整するため、コイル293の接地された両端の間には、可動タップによって給電部が構成される。
【0075】
すなわち、コイル293は、電気的に接地されたグランド部を両端に備え且つ高周波電源298から電力供給される給電部を各グランド部の間に備えている。しかも、少なくとも一方のグランド部は、位置調整可能な可変式グランド部とされ、そして、給電部は、位置調整可能な可変式給電部とされる。コイル293が可変式グランド部及び可変式給電部を備えている場合には、後述するように、処理室201の共振周波数及び負荷インピーダンスを調整する際、より一層簡便に調整することができる。
プラズマの生成原理については後述する。
【0076】
遮蔽板295は、コイル293の外側への電磁波の漏れを遮蔽するとともに、共振回路を構成するのに必要な容量成分をコイル293との間に形成するために設けられる。遮蔽板295は、一般的には、アルミニウム合金、銅又は銅合金などの導電性材料を使用して円筒状に形成される。遮蔽板295は、コイル293の外周から、例えば5から150mm程度隔てて配置される。
【0077】
高周波電源298の出力側にはRFセンサ297が設置され、コイル293に向かう進行波、コイル293から反射する反射波等をモニタしている。RFセンサ297によってモニタされた反射波電力は、周波数整合器299に入力される。周波数整合器299は、反射波が最小となるよう周波数を制御する。
【0078】
主に、プラズマ生成室290、コイル293、波形調整回路296、RFセンサ297、周波数整合器299により、本実施形態に係るプラズマ生成部270が構成されている。尚、プラズマ生成部270として高周波電源298を含めても良い。
【0079】
ここで、本実施形態に係る装置のプラズマ生成原理および生成されるプラズマの性質について説明する。
【0080】
コイル293は、所定の波長の定在波を形成するため、全波長モードで共振する様に巻径、巻回ピッチ、巻数が設定される。すなわち、コイル293と周波数整合回路296を合わせた電気的長さは、高周波電源298から与えられる電力の所定周波数における1波長の整数倍(1倍,2倍,…)に設定される。
【0081】
具体的には、印加する電力や発生させる磁界強度または適用する装置の外形などを勘案し、コイル293は、例えば、800kHzから50MHz、0.5KWから5KWの高周波電力によって0.01ガウスから10ガウス程度の磁場を発生し得る様に、50mm2から300mm2 の有効断面積であって且つ200mmから500mmのコイル直径とされ、側壁291を形成する部屋の外周側に2から60回程度巻回される。なお、コイル293を構成する素材としては、銅パイプ、銅の薄板、アルミニウムパイプ、アルミニウム薄板、ポリマーベルトに銅またはアルミニウムを蒸着した素材などが使用される。
【0082】
また、コイル293の一端または両端は、当該共振コイルの電気的長さを設置の際に微調整し、共振特性を高周波電源298と略等しくするため、通常は可動タップを介して接地される。更に、位相及び逆位相電流がコイル293の電気的中点に関して対称に流れる様に、コイル293の一端(若しくは他端または両端)には波形調整回路296が挿入される。波形調整回路は、コイル293の端部を電気的に非接続状態とするか又は電気的に等価の状態に設定することにより開路に構成する。また、コイル293の端部は、チョーク直列抵抗によって非接地とし、固定基準電位に直流接続されてもよい。
【0083】
遮蔽板295は、コイル293の外側の電界を遮蔽すると共に、共振回路を構成するのに必要な容量成分(C成分)をコイル293との間に形成するために設けられる。遮蔽板295は、一般的には、アルミニウム合金、銅または銅合金などの導電性材料を使用して円筒状に構成される。遮蔽板295は、コイル293の外周から5から150mm程度隔てて配置される。そして、通常、遮蔽板295はコイル293の両端と電位が等しくなる様に接地されるが、コイル293の共振数を正確に設定するため、遮蔽板295の一端または両端は、タップ位置を調整可能とする。あるいは、共振数を正確に設定するために、コイル293と遮蔽板295の間にトリミングキャパシタンスを挿入しても良い。
【0084】
高周波電源298は、発振周波数および出力を規定するための高周波発振回路およびプリアンプを含む電源制御手段(コントロール回路)と、所定の出力に増幅するための増幅器(出力回路)とを備えている。電源制御手段は、操作パネルを通じて予め設定された周波数および電力に関する出力条件に基づいて増幅器を制御し、増幅器は、上記のコイル293に伝送線路を介して一定の高周波電力を供給する。
【0085】
ところで、コイル293によって構成されるプラズマ発生回路はRLCの並列共振回路で構成される。高周波電源298の波長とコイル293の電気的長さが同じ場合、コイル293の共振条件は、コイル293の容量成分や誘導成分によって作り出されるリアクタンス成分が相殺され、純抵抗になることである。しかしながら、上記プラズマ発生回路においては、プラズマを発生させた場合、コイル293の電圧部とプラズマとの間の容量結合、プラズマ生成室290内のプラズマの変動や、プラズマの励起状態により、実際の共振周波数が僅かながら変動する。
【0086】
そこで、本実施形態においては、プラズマ発生時のコイル293における共振のずれを電源側で補償するため、周波数整合器299は、プラズマが発生した際のコイル293からの反射波電力を検出して出力を補完する機能を有する。斯かる構成により、本発明の共振装置では、コイル293において一層正確に定在波を形成でき、容量結合の極めて少ないプラズマを発生させ得る。
【0087】
すなわち、上記の周波数整合器299は、プラズマが発生した際の前記のコイル293からの反射波電力を検出し、反射波電力が最小となる様に前記の所定周波を増加または減少させる。具体的には、周波数整合器299には、予め設定された発振周波数を補正する周波数制御回路が構成され、かつ、増幅器の出力側には、伝送線路における反射波電力を検出し、その電圧信号を周波数制御回路にフィードバックする周波数整合器299の一部としての反射波パワーメータが介装される。
【0088】
周波数制御回路は、反射波パワーメータからの電圧信号が入力され且つ当該電圧信号を周波数信号にデジタル変換するA/Dコンバータ、変換された反射波に相当する周波数信号の値と予め設定記憶された発振周波数の値とを加減算処理する演算処理回路、加減算処理して得られた周波数の値を電圧信号にアナログ変換するD/Aコンバータ、および、D/Aコンバータからの印加電圧に応じて発振する電圧制御発振器によって構成される。従って、周波数制御回路は、プラズマ点灯前はコイル293の無負荷共振周波数で発振し、プラズマ点灯後は反射電力が最小となる様に前記所定周波数を増加または減少させた周波数を発振し、結果的には、伝送線路における反射波がゼロとなる様に周波数信号を増幅器に与える。
【0089】
本実施形態においては、プラズマ生成室290の内部を例えば0.01から50Torrに減圧した後、前記の真空度を維持しつつプラズマ生成室290にプラズマ用ガス(本実施形態においては酸素ガス)を供給する。そして、高周波電源298からコイル293に例えば27.12MHz、2KWの高周波電力を供給すると、プラズマ生成室290の内部に誘導電界が生じ、その結果、供給されたガスがプラズマ生成室290においてプラズマ状態となる。
【0090】
高周波電源298に付設された周波数整合器299は、発生したプラズマの容量結合や誘導結合の変動によるコイル293における共振点のずれを高周波電源298側で補償する。すなわち、周波数整合器299のRFセンサ297は、プラズマの容量結合や誘導結合の変動による反射波電力を検出し、反射波電力が最小となる様に、反射波電力の発生要因である共振周波数のずれに相当する分だけ前記の所定周波を増減させ、プラズマ条件下におけるコイル293の共振周波数の高周波を増幅器に出力させる。
【0091】
換言すれば、本発明の共振装置においては、プラズマ発生時およびプラズマ生成条件の変動時のコイル293の共振点のずれに応じて、正確に共振する周波数の高周波を出力するため、コイル293で一層正確に定在波を形成できる。すなわち、コイル293においては、プラズマを含む当該共振器の実際の共振周波数の送電により、位相電圧と逆位相電圧が常に相殺される状態の定在波が形成され、コイルの電気的中点(電圧がゼロのノード)に最も高い位相電流が生起される。従って、上記の電気的中点において励起された誘導プラズマは、処理室壁や基板載置台との容量結合が殆どなく、プラズマ生成室290中には、電気的ポテンシャルの極めて低いプラズマを形成できる。
【0092】
(制御部)
次に、
図7を用い、本実施形態の制御部(制御手段)であるコントローラ300について説明する。
図7は、本実施形態で好適に用いられる基板処理装置10のコントローラの概略構成図である。
【0093】
図7に示されているように、制御部(制御手段)であるコントローラ300は、CPU(Central Processing Unit)301a、RAM(Random Access Memory)301b、記憶装置301c、I/Oポート301dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM301b、記憶装置301c、I/Oポート301dは、内部バス301eを介して、CPU301aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ300には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置302が接続されている。
【0094】
記憶装置301cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置301c内には、基板処理装置10の動作を制御する制御プログラムや、後述する成膜処理等の基板処理の手順や条件などが記載されたプロセスレシピが、読み出し可能に格納されている。なお、プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ300に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM301bは、CPU301aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0095】
I/Oポート301dは、上述のマスフローコントローラ231c、232c、233c、234c、235c、バルブ231d、232d、233d、234d、235d、圧力センサ248、APCバルブ243、真空ポンプ246、温度センサ249、RFセンサ297、周波数整合器299、高周波電源298、回転機構267、昇降機構268等に接続されている。なお、I/Oポート301dは、図示されていないヒータ218、電力調整器224、ヒータ電源225、及び温度調整器223にも接続されている。
【0096】
CPU301aは、記憶装置301cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置302からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置301cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。そして、CPU301aは、読み出したプロセスレシピの内容に沿うように、マスフローコントローラ231c、232c、233c、234c、235cによる各種ガスの流量調整動作、バルブ231d、232d、233d、234d、235dの開閉動作、APCバルブ243の開閉動作及び圧力センサ248に基づくAPCバルブ243による圧力調整動作、温度センサ274に基づくヒータ218の温度調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、回転機構267によるサセプタ217の回転および回転速度調節動作、昇降機構268によるサセプタ217の昇降動作、高周波電源298による電力供給および停止、周波数整合器299によるインピーダンス調整動作等を制御するように構成されている。
【0097】
なお、コントローラ300は、専用のコンピュータとして構成されている場合に限らず、汎用のコンピュータとして構成されていてもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)303を用意し、係る外部記憶装置303を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本実施形態に係るコントローラ300を構成することができる。なお、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置303を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用い、外部記憶装置303を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。なお、記憶装置301cや外部記憶装置303は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。なお、本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置301c単体のみを含む場合、外部記憶装置303単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
【0098】
(3)基板処理工程
続いて、本実施形態に係る半導体製造工程の一工程として、上述したプロセスチャンバ202を備える基板処理装置10を用いて製造される基板処理工程について説明する。
【0099】
まず、
図8及び
図9を用い、基板処理工程の概略について説明する。
図8は、本実施形態に係る基板処理工程を示すフロー図である。
図9は、本実施形態に係る改質工程のフロー図である。なお、以下の説明において、基板処理装置10のプロセスチャンバ202の構成各部の動作は、コントローラ300により制御される。
【0100】
ここでは、第1元素含有ガスとしてシリコン含有ガスであるBTBASガスを用い、第2元素含有ガスとして酸素含有ガスである酸素(O
2)ガスを用い、ウエハ200上に薄膜としてシリコン酸化膜を形成する例について説明する。また、例えば、ウエハ200上には、予め所定の膜が形成されていてもよい。また、ウエハ200または所定の膜には予め所定のパターンが形成されていてもよい。
【0101】
(基板搬入・載置工程S102)
例えば、最大25枚のウエハ200が収納されたポッド100が、工程内搬送装置によって搬送され、ロードポート105の上に載置される。ポッド100のキャップ100aがポッドオープナ108によって取り外され、ポッド100の基板出し入れ口が開放される。第2ウエハ移載機124は、ポッド100からウエハ200をピックアップして、ノッチ合わせ装置106上へ載置する。ノッチ合わせ装置106はウエハ200の位置調整を行う。第2ウエハ移載機124は、ウエハ200をノッチ合わせ装置106から大気圧の状態の予備室122内に搬入する。ゲートバルブ128が閉じられ、予備室122内が排気装置(図示せず)によって負圧に排気される。
【0102】
プロセスチャンバ202ではサセプタ217をウエハ200の搬送位置まで下降させることにより、サセプタ217の貫通孔217aにウエハ突き上げピン266を貫通させる。その結果、ウエハ突き上げピン266が、サセプタ217表面よりも所定の高さ分だけ突出した状態となる。続いて、所定のゲートバルブを開き、第1ウエハ移載機112を用いて、処理室201内に所定枚数(例えば5枚)のウエハ200(処理基板)を搬入する。そして、サセプタ217の図示しない回転軸を中心として、各ウエハ200が重ならないように、サセプタ217の回転方向に沿って載置する。これにより、ウエハ200は、サセプタ217の表面から突出したウエハ突き上げピン266上に水平姿勢で支持される。
【0103】
処理室201内にウエハ200を搬入したら、第1ウエハ移載機112をプロセスチャンバ202の外へ退避させ、所定のゲートバルブを閉じて反応容器203内を密閉する。その後、サセプタ217を上昇させることにより、サセプタ217に設けられた各載置部217b上にウエハ200を載置する。
【0104】
なお、ウエハ200を処理室201内に搬入する際には、排気系により処理室201内を排気しつつ、不活性ガス供給系から処理室201内に不活性ガスとしてのN
2ガスを供給することが好ましい。すなわち、真空ポンプ246を作動させAPCバルブ243を開けることにより処理室201内を排気した状態で、少なくとも第1不活性ガス供給系のバルブ234dを開けることにより、処理室201内にN
2ガスを供給することが好ましい。これにより、処理室201内へのパーティクルの侵入や、ウエハ200上へのパーティクルの付着を抑制することが可能となる。なお、さらに第1元素含有ガス供給系及び第2元素含有ガス供給系から不活性ガスを供給してもよい。また、真空ポンプ246は、少なくとも基板搬入・載置工程(S102)から後述する基板搬出工程(S106)が終了するまでの間は、常に作動させた状態とする。
【0105】
ウエハ200をサセプタ217の上に載置する際は、サセプタ217の内部に埋め込まれたヒータ218に電力を供給し、ウエハ200の表面が所定の温度となるよう制御される。ウエハ200の温度は、例えば室温以上700℃以下であり、好ましくは、室温以上であって200℃以下である。この際、ヒータ218の温度は、温度センサ274により検出された温度情報に基づいてヒータ218への通電具合を制御することによって調整される。
【0106】
なお、シリコンで構成されるウエハ200の加熱処理では、表面温度を750℃以上にまで加熱すると、ウエハ200の表面に形成されたソース領域やドレイン領域等に不純物の拡散が生じ、回路特性が劣化し、半導体デバイスの性能が低下してしまう場合がある。ウエハ200の温度を上述のように制限することにより、ウエハ200の表面に形成されたソース領域やドレイン領域における不純物の拡散、回路特性の劣化、半導体デバイスの性能の低下を抑制できる。
【0107】
また、後述するダブルパターニング法などのようにウエハ200の上にホトレジストパターンが形成された状態で、ホトレジストパターンの上に薄膜を形成する場合では、ウエハ200の温度が例えば200℃以上の高温であるときにホトレジストパターンが熱変化してしまう可能性がある。本実施形態では、低温で基板処理工程を行うことが可能であるため、ホトレジスト膜の劣化を抑制することができる。
【0108】
(薄膜形成工程S104)
次に、薄膜形成工程S104を行う。薄膜形成工程S104の基本的な流れについて説明し、本実施形態の特徴部分については詳細を後述する。
【0109】
薄膜形成工程S104では、第1処理領域201a内に第1元素含有ガスであるBTBASガスを供給し、第2処理領域201b内に第2元素含有ガスである酸素ガスを供給してウエハ200上にシリコン酸化膜を形成する。
【0110】
なお、薄膜形成工程S104では、基板搬入・載置工程S102後、継続して、排気部により処理室201内が排気されるとともに、不活性ガス供給系から第1パージ領域204a内および第2パージ領域204b内にパージガスとしてのN
2ガスが供給されている。
【0111】
(サセプタ回転開始S202)
まず、ウエハ200が各ウエハ載置部217bに載置されたら、回転機構267によってサセプタ217の回転を開始する。この際、サセプタ217の回転速度はコントローラ300によって制御される。サセプタ217の回転速度は例えば1回転/分以上100回転/分以下である。具体的には、回転速度は、例えば60回転/分である。サセプタ217を回転させることにより、ウエハ200は、第1処理領域201a、第1パージ領域204a、第2処理領域201b、第2パージ領域204bの順に移動を開始する。
【0112】
(ガス供給開始S204)
ウエハ200を加熱して所望とする温度に達し、サセプタ217が所望とする回転速度に到達したら、バルブ232dを開けて第1処理領域201a内にBTBASガスの供給を開始し、更にバルブ233dを開けて第2処理領域201b内に酸素ガスを供給する。
【0113】
このとき、BTBASガスの流量が所定の流量となるように、マスフローコントローラ231cを調整する。なお、BTBASガスの供給流量は、例えば100sccm以上5000sccm以下である。本実施形態では、後述する第3工程S210までBTBASガスを一定流量で流し続ける。
【0114】
なお、BTBASガスとともに、不活性ガス供給管234aを介してキャリアガスとして不活性ガスであるN
2ガスを流してもよい。
【0115】
また、酸素ガスの流量が所定の流量となるように、マスフローコントローラ233cを調整する。まず、第3ガス供給管233aから第2元素含有ガス導入孔292aを介してバッファ室294aへ酸素ガスを導入する。バッファ室294aでバッファされた酸素ガスは第2元素含有ガス噴出孔294bを介してプラズマ生成室290に供給される。第2元素含有ガス噴出孔294bを介して供給された酸素ガスは側壁291方向に拡散され、側壁291に沿ってコイル293の近傍に供給される。なお、酸素ガスの供給流量は、例えば100sccm以上5000sccm以下である。本実施形態では、後述するプラズマ生成停止S210まで酸素ガスを一定流量で流し続ける。
【0116】
また、APCバルブ243の弁開度を適正に調整することにより、処理室201内の圧力を、所定の圧力とする。
【0117】
なお、このガス供給開始S204のときから、ウエハ200の表面上に後述する所定の厚さを有するシリコン含有層が形成され始める。また、プラズマ生成室290におけるプラズマ生成開始までに酸素ガスの流量を安定させるため、遅くともBTBASガスがウエハ200の表面上に吸着してシリコン含有層を形成し始めてからウエハ200が1周するまでの間に、酸素ガスの供給を開始することが望ましい。
【0118】
(プラズマ生成開始S206)
次に、BTBASガスおよび酸素ガスの流量が安定したら、プラズマ生成部270により、第2処理領域201b上部において酸素ガスのプラズマ生成を開始する。言い換えれば、プラズマ生成部270のコイル293に高周波電力の供給を開始することによって、第2処理領域201bの上部空間であるプラズマ生成室290内において酸素ガスをプラズマ状態で励起する。
【0119】
具体的には、BTBASガス及び酸素ガスの流量と処理室201内の圧力が安定したら、コイル293に対して高周波電源298によって高周波電力の印加を開始する。これにより、プラズマ生成室290内に磁場が形成され、プラズマ生成室290内のコイル293の電気的中点に相当する高さ位置に側壁291に沿って誘導プラズマが励起される。プラズマ状の酸素ガスは解離し、酸素元素(O)を含む活性種、イオン等の反応種(以降、活性種等と呼ぶ)が生成される。
【0120】
前述したように、位相電圧と逆位相電圧が常に相殺される状態の定在波が形成され、コイルの電気的中点(電圧がゼロのノード)に最も高い位相電流が生起される。従って、上記の電気的中点において励起された誘導プラズマは、処理室壁や基板載置台との容量結合が殆どなく、プラズマ生成室290内には、電気的ポテンシャルの極めて低いプラズマを形成できる。
【0121】
さらに、上述の様に、高周波電源298に付設された電源制御手段がプラズマの容量結合や誘導結合の変動によるコイル293における共振点のずれを補償し、一層正確に定在波を形成すため、容量結合が殆どなく、より確実に電気的ポテンシャルの極めて低いプラズマをプラズマ生成空間中に形成できる。
【0122】
電気的ポテンシャルが極めて低いプラズマが生成されることから、プラズマ生成室290の壁や、基板載置台上にシースが発生を防ぐことができる。したがって、プラズマ中のイオンは加速されない。
【0123】
なお、プラズマ生成開始S206のときから、後述するように、酸素ガスのプラズマ励起により生成された活性種等によってシリコン含有層が改質され始める。
【0124】
(改質工程S208)
次に、プラズマ生成開始S206の後に、プラズマ生成部270によるプラズマ生成を継続し、ウエハ200の上にシリコン元素および酸素元素を含有するシリコン酸化膜を形成していく改質工程S208を行う。
【0125】
改質工程S208では、複数のウエハ200が、順次、第1処理領域201aと第2処理領域201bを所定回数交互に通過するようにサセプタ217が継続して回転している。具体的には、ウエハ200は、第1処理領域201a、第1パージ領域204a、第2処理領域201b、第2パージ領域204bの順に交互に通過する。これにより、ウエハ200には、BTBASガスの供給、不活性ガスの供給、プラズマ状態とされた酸素ガスの供給、不活性ガスの供給を1サイクルとして、このサイクルが順に実施される。
【0126】
以下、
図9を用い、改質工程S208の詳細を説明する。
【0127】
(第1処理領域通過S302)
ウエハ200が第1処理領域201aを通過するときに、BTBASガスがウエハ200に供給される。ウエハ200表面の上には、BTBASガスがウエハ200の上に接触することによって「第1元素含有層」としてのシリコン含有層が形成される。
【0128】
シリコン含有層は、例えば、処理室201内の圧力、BTBASガスの流量、サセプタ217の温度、第1処理領域201aの通過にかかる時間(第1処理領域201aでの処理時間)等に応じて、所定の厚さ及び所定の分布で形成される。
【0129】
(第1パージ領域通過S304)
次に、ウエハ200は、第1処理領域201aを通過した後に、サセプタ217の回転方向Rに移動して第1パージ領域204aに移動する。ウエハ200が第1パージ領域204aを通過するときに、第1処理領域201aにおいてウエハ200に結合できなかったシリコン成分が、不活性ガスによってウエハ200上から除去される。
【0130】
(第2処理領域通過S306)
次に、ウエハ200は、第1パージ領域204aを通過した後に、サセプタ217の回転方向Rに移動して第2処理領域201bに移動する。ここでウエハ200は、小判型形状もしくは楕円形状をした側壁291の水平断面(連通口203aと同一形状)の長辺方向と直交するように回転方向Rに移動しながらプラズマ生成室290の下方を通過する。
【0131】
プラズマ生成室290では前述のように側壁291に沿って誘導プラズマが形成されており、ウエハ200がプラズマ生成室290の下方を通過するときに、シリコン含有層が、プラズマ生成室290内におけるプラズマ励起によって発生した酸素元素を含む活性種等により改質される。
【0132】
ここで、シリコン含有層が酸素ガスのプラズマ生成に伴って改質されることにより、ウエハ200の上には、例えばシリコン元素および酸素元素を含有する層が形成される。以下、シリコン元素および酸素元素を含有する層を、単に「改質層」とする。
【0133】
改質層は、例えば、反応容器203内の圧力、酸素ガスの流量、サセプタ217の温度、プラズマ生成部270の電力供給具合等に応じて、所定の厚さ、所定の分布、シリコン含有層に対する所定の酸素成分等の侵入深さで形成される。
【0134】
以下において、改質層の上に形成されたシリコン含有層がさらに改質されるとき、例えば、改質層の上にさらに改質層が積層して形成されるとして説明する。なお、改質層の上に形成されたシリコン含有層がさらに改質されるときは、下側に位置する改質層と上側に積層される改質層との界面が形成されない場合や、下側に位置する改質層に酸素成分等が上側に積層される改質層を超えて侵入する場合を含む。
【0135】
(第2パージ領域通過S308)
次に、ウエハ200は第2処理領域201bを通過した後に、サセプタ217の回転方向Rに移動して第2パージ領域204bに移動する。ウエハ200が第2パージ領域204bを通過するときに、第2処理領域201bにおいてウエハ200に結合できなかった酸素成分が、不活性ガスによってウエハ200上から除去される。
【0136】
(判定S310)
この間、コントローラ300は、上記1サイクルを所定回数実施したか否かを判定する。具体的には、コントローラ300は、サセプタ217の回転数をカウントする。回転数そのものをカウントするのではなく、成膜処理が開始されてから(より具体的には、例えばプラズマ生成が開始されてから)の時間を計測することにより上記1サイクルを所定回数実施したか否かを判定してもよい。
【0137】
所定回数実施していないとき(S310でNoの場合)、さらにサセプタ217の回転を継続させて、シリコン含有ガスの供給S302、不活性ガスの供給S304、酸素ガスのプラズマ励起を用いた改質S306、不活性ガスの供給S308、のサイクルを繰り返す。所定回数実施したとき(S310でYesの場合)、改質工程S208を終了する。
【0138】
このように、第1元素含有ガスの供給S302、不活性ガスの供給S304、プラズマ励起とされた第2元素含有ガスを用いた改質S306、不活性ガスの供給S308、の1サイクルとして、所定回数繰り返す。
【0139】
(プラズマ生成停止S210)
次に、改質工程208の後に、プラズマ生成部270の電力供給を停止し、プラズマ生成を停止する。プラズマ生成部201の電力供給を停止した後でも、第1処理領域201aへの第1元素含有ガスの供給と、第2処理領域201bへの第2元素含有ガスの供給と、第1パージ領域204aおよび第2パージ領域204bへの不活性ガスの供給と、サセプタ217の回転と、を所定の期間継続する。
【0140】
このとき、プラズマ生成部206の電力供給を停止した後も、プラズマ中の活性種等は失活せずに所定の期間継続してプラズマが残存する。プラズマ生成部206の電力供給を停止した後、プラズマが密の状態からプラズマが疎の状態となっていき、プラズマ中の活性種等は失活する。
【0141】
(ガス供給停止S212)
プラズマ生成停止S210の後、少なくともバルブ232d及びバルブ233dを閉じ、第1元素含有ガス及び第2元素含有ガスの第1処理領域201a及び第2処理領域201bへの供給を停止する。
【0142】
(サセプタ回転停止S214)
ガス供給停止S212の後、サセプタ217の回転を停止する。以上により、薄膜形成工程S104が終了する。
【0143】
(基板搬出工程S106)
次に、サセプタ217を下降させ、サセプタ217の表面から突出させたウエハ突き上げピン266上にウエハ200を支持させる。その後、所定のゲートバルブを開き、第1ウエハ移載機112を用いてウエハ200を反応容器203の外へ搬出する。その後、基板処理工程を終了する場合は、不活性ガス供給系から処理室201内に不活性ガスを供給することを停止する。
【0144】
以上により、基板処理工程を終了する。なお、基板処理工程の終了後、クリーニングガス供給系から処理室201内にクリーニングガスを供給して、処理室201内をクリーニングしてもよい。
【0145】
(4)薄膜形成工程の詳細について
続いて、本実施形態に係る薄膜形成工程S104のうちプラズマ生成開始S206からプラズマ生成停止S210までについて、比較例と対比しながら詳細を説明する。
【0146】
(プラズマ生成開始S206における膜厚差発生について)
図20を用い、比較例の薄膜形成工程について説明する。
図20(a)および(b)は、比較例のプラズマ生成開始時におけるウエハ200’上の薄膜形成状態を示す模式的断面図である。
【0147】
比較例では、ガス供給開始(S204に相当する工程)により、例えば、ウエハ200’の上にはシリコン含有層803が形成されている。上述のように、シリコン含有層803は、シリコン含有ガス(BTBASガス)が分解されたシリコン成分802が付着し、シリコン含有層803が構成されているとする。
【0148】
次に、
図20(a)に示されているように、プラズマ生成部270’により、酸素ガスのプラズマ生成を開始する。この際、プラズマ生成室290’の下方には、プラズマ生成開始時に酸素元素の活性種等が供給される活性種領域801が生成される。活性種領域801では酸素元素の活性種等が他の領域に比べて高い密度で存在する。
【0149】
ここで、プラズマ生成部270’によってプラズマが着火されるときに、プラズマ生成室290’の直下をウエハ200’が通過している途中である場合がある。以下、プラズマ生成部270’によってプラズマが着火されるときに、複数のウエハ200’のうちプラズマ生成室290’の直下を初めて通過するウエハを「第1ウエハW
1’」とする。
【0150】
プラズマが着火されるとき、第1ウエハW
1’の面内において、プラズマ生成室290’の直下をすでに通過していた側はプラズマ励起により生じた活性種領域801に晒されない。一方、ウエハ200’がサセプタの回転方向R’に移動することにともなって、プラズマが着火されるときにプラズマ生成室290’の直下を通過し終わっていない側(言い換えれば、プラズマ生成室290’の直下から見て回転方向上流であって、プラズマが生成されるときにプラズマ生成室290’の直下を通過し終わっていない側)はプラズマ励起により生じた活性種領域801に晒されていく。このため、第1ウエハW
1’の全体が第2処理領域201bを通過した後には、第1ウエハW
1’の面内に活性種領域801に晒されなかった領域(非活性種曝露領域200a’)と活性種領域801に晒された領域(活性種曝露領域200b’)とが生じる。一方、第1ウエハW
1’以降にプラズマ生成室290’の直下を通過するウエハ200’は全面がプラズマ励起により生じた活性種等に晒されていく。
【0151】
非活性種曝露領域200a’は、シリコン含有層803の表面が露出したままである。一方で、活性種曝露領域200b’では、シリコン含有層803が、酸素ガスのプラズマ励起により生成された酸素を含む活性種等により改質される。活性種曝露領域200b’では、シリコン含有層803が改質されることによって、改質層805が形成される。
【0152】
このとき、第1ウエハW
1’の面内において、非活性種曝露領域200a’と活性種曝露領域200b’との間に、段差d
aが生じうる。段差d
aは、サセプタ217が一回転した際に形成される膜の厚さであり、例えば約1.8Å(0.18nm)程度である。また、サセプタ217上に載置された第1ウエハW
1’と、第1ウエハW
1’以外のウエハ200との間に、段差d
aに相当する層厚差が生じうる。
【0153】
その後、第1処理領域および第2処理領域にウエハ200’が所定回数交互に通過することにより、ウエハ200’の上にシリコン酸化膜が形成される。このとき、第1ウエハW
1’に形成された薄膜には、最初に形成された段差d
aに相当する膜厚差が残存する。
【0154】
このように、プラズマの生成が開始されたときに第1ウエハW
1’の面内に非活性種曝露領域200a’が生じたことに起因して、非活性種曝露領域200a’と活性種曝露領域200b’との間に、第1ウエハW
1’の面内において膜厚差が生じうる。また、第1ウエハW
1’と第1ウエハW
1’以外のウエハ200’との間に膜厚差が生じうる。
【0155】
しかし、近年では、例えば20nm以下の配線寸法が求められている。このため、上記のような僅かな膜厚差であっても、配線のパターン幅等の差が生じてしまう可能性がある。また、100Å以下程度の膜厚で成膜を行うことが求められる場合、上記のような膜厚差であっても、膜厚に対する膜厚差は相対的に大きくなるため、膜厚の均一性が損なわれるという問題もある。
【0156】
そこで、本実施形態では、ウエハ載置部217b上に載置されて移動する複数のウエハ200の位置とプラズマ生成室290の直下の位置が所定の位置関係になるタイミングでプラズマ生成部270によるプラズマを着火する(つまりプラズマ生成部270のコイル293に対する高周波電力の印加を開始する)。具体的には、例えば、隣り合うようにウエハ載置部217b上に載置された2枚のウエハ200の中間点がプラズマ生成室290の直下を通過するタイミングでプラズマ生成を開始する。詳細は後述する。
【0157】
これにより、上述の比較例における第1ウエハW
1’において非活性種曝露領域200a’と活性種曝露領域200b’が生じない。従って、段差d
aに相当する層厚差が生じるという比較例における問題を解消し、膜厚の均一性を改善することができる。
【0158】
以下、
図10を用い、本実施形態の薄膜形成工程S104の詳細について説明する。
図10は、本実施形態に係る基板処理シーケンスにおける各部の動作タイミングを示す図である。
【0159】
まず、ガス供給開始S204により、第1元素含有ガスであるBTBASガスと第2元素含有ガスである酸素ガスの供給が開始される。例えば、ウエハ200の上にBTBAS分子等が接触することによってシリコン含有層の形成が開始される。なお、本実施形態では不活性ガスを先行して供給している。
【0160】
次に、プラズマ生成開始S206において、プラズマ生成部270のコイル293に高周波電力が印加されることにより、酸素ガスのプラズマ生成を開始する(
図10プラズマ生成部On)。この際、第2処理領域201b内のプラズマ生成室290の下方には、酸素元素の活性種等が存在する活性種領域801が生成される。
【0161】
ここで、本実施形態では、上述の通り、隣り合うようにウエハ載置部217b上に載置された2枚のウエハ200の中間点がプラズマ生成室290の直下を通過するタイミングでプラズマ生成を開始する。
図11は、本実施形態における、プラズマ生成開始時のプラズマ生成室290(若しくは連通口203a)と、移動するウエハ200の位置関係を説明する図である。プラズマ生成室290の下方には酸素元素の活性種等が存在する活性種領域801が生成されている。
図11に示すように、本実施形態では、隣り合うようにウエハ載置部217b上に載置された2枚のウエハ200の中間点がプラズマ生成室290の直下を通過するタイミングでプラズマ生成を開始する。より具体的には、小判型形状若しくは楕円形状をしたプラズマ生成室290の長辺方向に沿った中心軸を、隣り合ったウエハ200‐1とウエハ200‐2の中間点が通過するタイミングでプラズマの生成を開始する。
本実施例では、プラズマ生成開始の時点において活性種領域801に晒されるウエハ200−1と200−2の領域の面積を最小にできるため、2つのウエハ面内において上述の比較例のような膜厚差の発生を低減することができる。
【0162】
また、プラズマ生成を開始するタイミングの他の実施形態の例としては、プラズマ生成開始S206におけるプラズマ生成部270によるプラズマ生成を開始するタイミングを、移動するウエハ200がプラズマ生成室290の直下を通過し終わったタイミングとする。
図12は、この他の実施形態における、プラズマ生成開始時のプラズマ生成室290(若しくは連通口203a)と移動するウエハ200の位置関係を説明する図である。
図12に示すように、この他の実施形態では、移動する複数のウエハ200のうち所定のウエハ200‐1がプラズマ生成室290の下方を通過し終わったタイミングでプラズマ生成を開始する。そして続くウエハ200‐2がプラズマ生成室290下方の活性種領域801に晒されることにより、シリコン含有膜の改質が行われていく。
【0163】
また、実際には、プラズマの生成を開始後、酸素の活性種等が生成されて第2処理領域201b内に供給されるまでには時間差がある。従って、上述の2つのタイミング例におけるタイミングよりも所定時間だけ早いタイミングでプラズマの生成を開始してもよい。
【0164】
なお、コントローラ300がプラズマ生成を開始するタイミングを決定する具体的な方法としては、例えば、回転機構267にサセプタ217の角度を検出する角度センサを設け、角度センサで検出されるサセプタ217の角度を基に、ウエハ載置部217b上に載置されて移動するウエハ200の位置とプラズマ生成室290の位置が上述のような所定の位置関係になる角度が検出されたタイミングでプラズマ生成を開始するように制御を行う。角度センサはサセプタ217が停止している所定の状態を角度0°として検出し、回転と共に角度0°〜360°を検出し、1回転した状態を再び角度0°として検出するものである。
また、他の方法として、コントローラ300は、サセプタ回転開始S202からの経過時間をカウントし、所定のウエハ200の位置とプラズマ生成室290の位置が上述のような所定の位置関係になるような所定の時間を経過するとプラズマ生成を開始するようにしてもよい。プラズマ生成を開始するまでの所定の時間は、例えば予め実験により取得しておくことができる。
【0165】
また、本実施形態におけるプラズマ生成部270のように、プラズマ生成室290やその連通口203aが特に小判型形状もしくは楕円形状であって、その長辺方向(長軸方向)が反応容器203の半径方向と一致するように配置されている場合、ウエハ200が移動する方向(サセプタ217の回転方向R)において、プラズマ生成室290の下方の活性種領域801の幅が短くなるため、プラズマ生成の開始タイミングを実施例のように制御することによって、プラズマ生成開始時にウエハ200に掛かる領域をより少なくすることができる。従って、プラズマ生成開始時に起因する膜厚差を低減するのに好適である。
つまり、本実施形態のように、プラズマ生成室290やその連通口203aの形状は、ウエハ200が移動する方向(サセプタ217の回転方向R)におけるプラズマ生成室290又は連通口203aの幅が短くなるように(より具体的には、反応容器203の半径方向におけるプラズマ生成室290又は連通口203aの幅よりも短くなるように)構成されるのが望ましい。
また、本実施形態におけるプラズマ生成部270は誘導結合プラズマ(ICP: Inductively Coupled Plasma)方式によりプラズマを生成するものであるが、これに限られず、例えば平行に配置された一対の棒状若しくは平板状の電極によってプラズマを励起する容量結合プラズマ(CCP: Capacitively Coupled Plasma)方式によりプラズマを生成するものであってもよい。この場合、第2処理領域201b内に設けられたプラズマ電極の近傍に、プラズマ励起により生成された活性種等を含むプラズマのシースが形成される。棒状若しくは平板状のプラズマ電極は反応容器203の半径方向に沿って配置されるのが望ましい。
より一般的には、プラズマ生成部により生成されるプラズマや活性種等が存在する領域の幅が、ウエハ200が移動する方向(サセプタ217の回転方向R)において短くなるように(より具体的には、反応容器203の半径方向における幅よりも短くなるように)構成されるのが望ましい。
【0166】
(プラズマ生成停止S210における膜厚差発生について)
次に、プラズマ生成停止S210において、プラズマ生成部270の電力供給を停止して、プラズマ中の活性種等が失活するときに、プラズマ生成室290の直下を最後に通過するウエハ200について、比較例と対比しながら詳細を説明する。プラズマ生成停止S210では、以下のようにしてプラズマ生成開始S206と逆の現象が生じうる。
【0167】
比較例では、プラズマ生成停止時において、ウエハが第2処理領域を通過するタイミングを調整することなく、プラズマが完全に消滅するタイミングがバラつく場合を考える。この場合、プラズマ生成部への高周波電力の供給を停止してプラズマ密度が大きく減衰する瞬間に、プラズマ生成部の直下をウエハが通過している途中であることがある。以下、プラズマ生成部による誘導プラズマが消滅し、それによって生じた活性種等が失活するときに、複数のウエハのうちプラズマ生成室の直下を最後に通過するウエハを「最終ウエハ」とする。
【0168】
プラズマにより生じた活性種等が失活するとき、最終ウエハの面内において、プラズマ生成室の直下をすでに通過していた側は活性種等が密の状態で晒された後である。一方、ウエハがサセプタの回転方向Rに移動することにともなって、活性種等が失活するときにプラズマ生成室の直下を通過する前だった領域は活性種等に晒されなくなる。このため、最終ウエハの全体が第2処理領域を通過した後には、最終ウエハの面内には活性種等に晒された領域(活性種曝露領域)と、活性種等に晒されなかった領域(非活性種曝露領域)と、が生じる。一方、最終ウエハよりも後にプラズマ生成部の直下を通過していくウエハは活性種等に晒されない。
【0169】
活性種等が失活するときに、最終ウエハの面内に非活性種曝露領域が生じたことに起因して、非活性種曝露領域と活性種曝露領域との間に、プラズマ生成開始S206の時と同様に、最終ウエハの面内における膜厚差(段差d
a)が生じうる。また、最終ウエハと最終ウエハ以外のウエハとの間にも膜厚差が生じうる。このように、プラズマ生成停止S210の時においても、プラズマ生成開始S206の時と逆の現象が生じうる。
【0170】
そこで、本実施形態では、ウエハ載置部217b上に載置されて移動する複数のウエハ200の位置とプラズマ生成室290の直下の位置が所定の位置関係になるタイミングでプラズマ生成部270によるプラズマ生成を停止する(つまりプラズマ生成部270のコイル293に対する高周波電力の印加を停止する)。具体的には、例えば、隣り合うようにウエハ載置部217b上に載置された2枚のウエハ200の中間点がプラズマ生成室290の直下を通過するタイミングでプラズマ生成を停止する。
【0171】
これにより、上述の比較例における最終ウエハにおいて非活性種曝露領域と活性種曝露領域が生じない。従って、ウエハの面内において層厚差が生じるという比較例における問題を解消し、ウエハ面内及び複数ウエハ間の膜厚の均一性を改善することができる。
【0172】
プラズマ生成停止S210における本実施形態の工程を詳述する。
【0173】
プラズマ生成停止S210において、プラズマ生成部270のコイル293に印加されていた高周波電力が停止されることにより、酸素ガスのプラズマ生成が停止される(
図10プラズマ生成部Off)。この際、第2処理領域201b内のプラズマ生成室290の下方に存在していた酸素元素の活性種等が失活する。
【0174】
ここで、本実施形態では、上述の通り、隣り合うようにウエハ載置部217b上に載置された2枚のウエハ200の中間点がプラズマ生成室290の直下を通過するタイミングでプラズマ生成を停止する。
図13は、本実施形態における、プラズマ生成停止時のプラズマ生成室290(若しくは連通口203a)と、移動するウエハ200の位置関係を説明する図である。プラズマ生成室290の下方では酸素元素の活性種等が失活し実質的に存在しない状態となっている。
図13に示すように、本実施形態では、小判型形状若しくは楕円形状をしたプラズマ生成室290の長辺方向に沿った中心軸を、隣り合ったウエハ200‐1とウエハ200‐2の中間点が通過するタイミングでプラズマの生成を停止する。
本実施形態では、プラズマ生成停止の時点において活性種等の失活が発生する領域に掛かるウエハ200−1と200−2の領域の面積を最小にできるため、2つのウエハ面内において上述の比較例のような膜厚差の発生を低減することができる。
【0175】
また、プラズマ生成を停止するタイミングの他の実施形態の例としては、例えば、
図14に示すように、プラズマ生成停止S210におけるプラズマ生成部270によるプラズマ生成を停止するタイミングを、移動するウエハ200がプラズマ生成室290の直下を通過し始める前のタイミングとする。
図14は、この他の実施形態における、プラズマ生成停止時のプラズマ生成室290(若しくは連通口203a)と、移動するウエハ200の位置関係を説明する図である。
図14に示すように、この他の実施形態では、移動する複数のウエハ200のうち所定のウエハ200‐2がプラズマ生成室290の下方を通過し始める前のタイミングでプラズマ生成を停止する。そしてウエハ200‐2およびそれ以降のウエハは活性種等に晒されなくなり、シリコン含有膜の改質は行われなくなる。
【0176】
また、実際には、プラズマの生成を停止後、酸素の活性種等が失活して第2処理領域201b内に実質的に存在しなくなるまでには時間差がある。従って、上述の2つのタイミング例におけるタイミングよりも所定時間だけ早いタイミングでプラズマの生成を停止してもよい。
【0177】
なお、コントローラ300がプラズマ生成を開始するタイミングを決定する具体的な方法は、プラズマ生成開始時と同様である。例えば、回転機構267にサセプタ217の角度を検出する角度センサを設け、角度センサで検出されるサセプタ217の角度を基に、ウエハ載置部217b上に載置されて移動するウエハ200の位置とプラズマ生成室290の位置が上述のような所定の位置関係になる角度が検出されたタイミングでプラズマ生成を停止するように制御を行う。
また、他の方法として、コントローラ300は、サセプタ回転開始S202からの経過時間をカウントし、所定のウエハ200の位置とプラズマ生成室290の位置が上述のような所定の位置関係になるような所定の時間を経過するとプラズマ生成を停止するようにしてもよい。プラズマ生成を停止するまでの所定の時間は、例えば予め実験により取得しておくことができる。
【0178】
また、本実施形態におけるプラズマ生成部270のように、プラズマ生成室290やその連通口203aが特に小判型形状もしくは楕円形状であって、その長辺方向(長軸方向)が反応容器203の半径方向と一致するように配置されている場合、ウエハ200が移動する方向(サセプタ217の回転方向R)において、プラズマ生成室290の下方の領域の幅が短くなるため、プラズマ生成の停止タイミングを実施例のように制御することによって、プラズマ生成停止時にウエハ200に掛かる領域をより少なくすることができる。従って、プラズマ生成停止時に起因する膜厚差を低減するのに好適である。
より一般的には、プラズマ生成部により生成されるプラズマや活性種等が存在する領域の幅が、ウエハ200が移動する方向(サセプタ217の回転方向R)において短くなるように(より具体的には、反応容器203の半径方向における幅よりも短くなるように)構成されるのが望ましい。
【0179】
なお、本実施形態では、プラズマ生成開始S206とプラズマ生成停止S210のいずれの工程においても、同一の隣り合う2枚のウエハ(ウエハ200−1とウエハ200−2)の間にプラズマ生成室290の直下が来るタイミングでプラズマ生成開始及び停止が行われる。これは、処理室203内のウエハ200全てに対して、同じ回数だけ第2処理領域201b内における改質処理が施されるようにするためである。しかしながら必ずしもこれに限られず、プラズマ生成開始S206とプラズマ生成停止S210のそれぞれの工程において、異なる隣り合うウエハの組合せが選択されてもよい。
【0180】
(5)本実施形態に係る効果
本実施形態に係る効果について、比較例との実験結果の比較に基づき説明する。
【0181】
図15は比較例における、プラズマ生成開始時とプラズマ生成停止時のそれぞれのタイミングにおけるウエハ200とプラズマ生成室290(又はその直下の領域)との位置関係を示す図である。ウエハ200−1’はプラズマ生成開始時にプラズマ生成室290の直下を通過しているウエハである。(便宜上、
図15ではプラズマ生成開始時のプラズマ生成室をプラズマ生成室290−1と表記している。)また、ウエハ200−2’はプラズマ生成停止時にプラズマ生成室290の直下を通過しているウエハである。(便宜上、
図15ではプラズマ生成停止時のプラズマ生成室をプラズマ生成室290−2と表記している。)
【0182】
図16は比較例における薄膜形成処理後のウエハの膜厚分布を示す図である。
図16において示されているように、比較例においては、プラズマ生成開始時にプラズマ生成室290−1の直下を通過するウエハ200−1’では、プラズマ生成室290−1の直下の位置を境界にして、面内に大きな膜厚差が生じていることが分かる。より具体的には、プラズマ生成室290−1の直下から見て回転方向Rの下流側の膜厚が薄くなり、上流側の膜厚が厚くなっていることが分かる。
同様に、比較例においては、プラズマ生成停止時にプラズマ生成室290−2の直下を通過するウエハ200−2’では、プラズマ生成室290−2の直下の位置を境界にして、面内に大きな膜厚差が生じていることが分かる。より具体的には、プラズマ生成室290−2の直下から見て回転方向Rの下流側の膜厚が厚くなり、上流側の膜厚が薄くなっていることが分かる。
【0183】
一方、
図17は本実施形態における薄膜形成処理後のウエハの膜厚分布を示す図である。本実施形態では、
図11に示すように、隣り合うようにウエハ載置部217b上に載置された2枚のウエハ200の中間点がプラズマ生成室290の直下を通過するタイミングでプラズマ生成を開始する。
図17において示されているように、本実施形態においては、ウエハ200−1において、比較例の結果と比較して面内の膜厚差の発生が抑制されていることが分かる。より具体的には、比較例のようにプラズマ生成室の直下の位置を境界とした膜厚差が発生していないことが分かる。また、ウエハ200−1と隣り合う上流側のウエハ200−2においても、大きな面内膜厚差は発生していないことが分かる。
同様に、本実施形態では、
図13に示すように、隣り合うようにウエハ載置部217b上に載置された2枚のウエハ200の中間点がプラズマ生成室290の直下を通過するタイミングでプラズマ生成を停止する。
図17において示されているように、本実施形態においては、ウエハ200−2において、比較例の結果と比較して面内の膜厚差の発生が抑制されていることが分かる。より具体的には、比較例のようにプラズマ生成室の直下の位置を境界とした膜厚差が発生していないことが分かる。また、ウエハ200−2と隣り合う下流側のウエハ200−1においても、大きな面内膜厚差は発生していないことが分かる。
【0184】
また、
図16及び
図17に示すように、比較例においては、ウエハ200−1’及びウエハ200−2’のそれぞれにおける面内膜厚差(最大値と最小値の差:Range)が1.6Å及び1.8Åであるのに対し、本実施形態においては、ウエハ200−1及びウエハ200−2のそれぞれにおける面内膜厚差が9.4Åと9.3Åとなっており、共に大きく改善している。
更に、図示していない他のウエハも含めた処理対象のウエハ(全5枚)のそれぞれの面内膜厚平均値(Average)は、比較例においては9.5〜10.8Åの範囲でバラつきが生じているのに対し、本実施形態においては9.3〜9.4Åの範囲となった。つまり、ウエハ間で比較した場合の膜厚差についても改善していることが分かった。
【0185】
なお、上述の比較例と本実施形態の実験におけるプロセス条件は以下の通りである。
・処理室圧力:120Pa
・ウエハ温度:200℃
・ガス流量:40sccm(BTBASガス)、3000sccm(酸素ガス)
・サセプタ回転速度:15rpm
【0186】
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
(a)本実施形態によれば、プラズマ生成開始S206では、ウエハ載置部217b上に載置されて移動する複数のウエハ200の位置とプラズマ生成室290の直下の位置が所定の位置関係になるタイミングでプラズマ生成部270によるプラズマ生成を開始する。
これにより、プラズマ生成開始S206の時点においてプラズマ生成室290の直下に生成される活性種領域801の位置とウエハ200の位置の関係を制御するので、プラズマ生成開始の前後で、同一ウエハの面内で活性種等に晒される領域と活性種等に晒されない領域の境界が生じないようにすることができる。つまり、同一ウエハの面内で活性種等により改質される領域と改質されない領域の間に生じる膜厚差(段差)がなくすことができ、併せてサセプタ217上に載置された複数のウエハ200間における膜厚を均一にすることができる。
【0187】
(b)本実施形態によれば、プラズマ生成開始S206では、隣り合うようにウエハ載置部217b上に載置された2枚のウエハ200の中間点がプラズマ生成室290の直下を通過するタイミングでプラズマ生成を開始する。本実施形態によれば、プラズマ生成開始の時点において、隣り合う2枚のウエハ面内で活性種領域801に晒される領域の面積を最小にできるため、2つのウエハそれぞれの面内において膜厚差の発生を低減することができる。
【0188】
(c)本実施形態によれば、プラズマ生成停止S210では、ウエハ載置部217b上に載置されて移動する複数のウエハ200の位置とプラズマ生成室290の直下の位置が所定の位置関係になるタイミングでプラズマ生成部270によるプラズマ生成を停止する。
これにより、プラズマ生成停止S210の時点においてプラズマ生成室290の直下で活性種等が失活する領域の位置とウエハ200の位置の関係を制御するので、プラズマ生成停止の前後で、同一ウエハの面内で活性種等に晒される領域と活性種等に晒されない領域の境界が生じないようにすることができる。つまり、同一ウエハの面内で活性種等により改質される領域と改質されない領域の間に生じる膜厚差(段差)がなくすことができ、併せてサセプタ217上に載置された複数のウエハ200間における膜厚を均一にすることができる。
【0189】
(d)本実施形態によれば、プラズマ生成停止S210では、隣り合うようにウエハ載置部217b上に載置された2枚のウエハ200の中間点がプラズマ生成室290の直下を通過するタイミングでプラズマ生成を停止する。本実施形態によれば、プラズマ生成停止の時点において、隣り合う2枚のウエハ面内で活性種等の失活が発生する領域に掛かる面積を最小にできるため、2つのウエハそれぞれの面内において膜厚差の発生を低減することができる。
【0190】
(e)本実施形態によれば、プラズマ生成開始S206とプラズマ生成停止S210のいずれの工程においても、同一の隣り合う2枚のウエハ(ウエハ200−1とウエハ200−2)の間にプラズマ生成室290の直下が来るタイミングでプラズマ生成開始及び停止を行う。本実施形態によれば、サセプタ217上に載置された複数のウエハ200の全てに対して、同じ回数だけ第2処理領域201b内における改質処理が施されるようにすることができる。従って、サセプタ217上に載置された複数のウエハ200間における膜厚を均一にすることができる。
【0191】
(f)本実施形態によれば、プラズマ生成室290やその連通口203aが特に小判型形状もしくは楕円形状であって、その長辺方向(長軸方向)が反応容器203の半径方向と一致するように配置される。本実施形態によれば、ウエハ200が移動する方向(サセプタ217の回転方向R)において、プラズマ生成室290の下方の領域の幅が短くなるため、プラズマ生成の開始又は停止のタイミングを本実施形態のように制御することによって、プラズマ生成開始時又は停止時にウエハ200に掛かる領域をより少なくすることができる。従って、プラズマ生成開始又は停止に起因する膜厚差を低減するのに好適である。
【0192】
(6)本実施形態の適用が有効な半導体装置の製造方法の一例
次に、半導体装置(半導体デバイス)の製造方法の一例として、大規模集積回路(Large Scale Integration;LSI)の製造工程の一工程について説明する。
【0193】
ここで、
図18を用い、ウエハ200上に狭いピッチのホトレジストパターンを形成する方法、いわゆる「ダブルパターニング法」について説明する。
図18(a)から(f)は、ダブルパターニング法による基板処理工程におけるウエハ400の断面図である。本実施形態は、ダブルパターニング法を用いる基板処理工程に特に有効である。
【0194】
(第1ホトレジストパターン形成工程)
例えば、ウエハ400の上には、微細加工の対象であるシリコン酸化膜600が形成されている。シリコン酸化膜600の上には、ハードマスク層601が形成されている。
【0195】
まず、
図18(a)に示されているように、ハードマスク層601上に、第1ホトレジスト膜602aを塗布する。次に、ウエハ400をベーキングする。
【0196】
次に、
図18(b)に示されているように、ArFエキシマ光源(193nm)やKrFエキシマ光源(248nm)等の光源により、マスクパターン等を用いて選択的露光および現像等を行う。これにより、第1ホトレジストパターン603aを形成する。
【0197】
(保護膜形成工程)
図18(c)に示されているように、基板処理装置10を用い、第1ホトレジストパターン603a上及びハードマスク層601上に、保護膜としてのシリコン酸化膜604を形成する。なお、シリコン酸化膜604は、犠牲酸化膜とも呼ばれる。これにより、後述する第2ホトレジスト膜602bを形成するときに、第1ホトレジストパターン603aを保護して、第1ホトレジストパターン603aの変形を抑制することができる。
【0198】
このとき、有機物である第1ホトレジストパターン603a上にシリコン酸化膜604を形成するため、第1ホトレジストパターン603aが熱変成しないように低温での基板処理が求められる。本実施形態では例えば200℃以下の低温で基板処理を行うことが可能である。したがって、本実施形態の基板処理装置10を用いた方法は特に有効である。
【0199】
(第2ホトレジストパターン形成工程)
次に、
図18(d)に示されているように、シリコン酸化膜604上に、第2ホトレジスト膜602bを塗布する。次に、ウエハ400をベーキングする。
【0200】
次に、
図18(e)に示されているように、ArFエキシマ光源(193nm)やKrFエキシマ光源(248nm)等の光源により、マスクパターン等を用いて選択的露光および現像等を行う。これにより、シリコン酸化膜604上のうち、第1ホトレジストパターン603aが形成された位置とは異なる位置に、第2ホトレジストパターン603bを形成する。例えば、隣接する二つの第1ホトレジストパターン603aの中央に、第2ホ
トレジストパターン603bを形成する。
【0201】
次に、
図18(f)に示されているように、第1ホトレジストパターン603aおよびハードマスク層601を覆うシリコン酸化膜604をエッチングにより除去する。
【0202】
このように、保護膜を用いて複数回のホトレジストパターンのパターニングを行うことにより(ダブルパターニング法)、一回のパターニングで得られるホトレジストパターンよりも微細な第1ホトレジストパターン603aおよび第2ホトレジストパターン603bが得られる。
【0203】
次に、第1ホトレジストパターン603aおよび第2ホトレジストパターン603bをマスクとして、ハードマスク層601をエッチングして、ハードマスクパターンを形成する。次に、ハードマスク層601をマスクとして、微細加工の対象であるシリコン酸化膜600をエッチングする。なお、このとき、第1ホトレジストパターン603aおよび第2ホトレジストパターン603bを除去しておいてもよいし、残しておいてもよい。以上により、例えば、シリコン酸化膜600に溝を形成する。さらに、シリコン酸化膜600の溝に、配線パターンの埋め込み等が行われる。
【0204】
(本実施形態との関係)
ここで、例えば、シリコン酸化膜600に形成された溝の幅や、各溝間の幅が略設計通りとなっていることが求められる。このとき、保護膜であるシリコン酸化膜604の膜厚分布が重要となる。
【0205】
例えば、一枚のウエハ400の面内においてシリコン酸化膜604の膜厚の差が生じている場合またはウエハ400間においてシリコン酸化膜604の膜厚の差が生じている場合に以下のような弊害が生じる可能性がある。例えば、所定のエッチング条件でシリコン酸化膜604をエッチングした際に、シリコン酸化膜604の膜厚が薄い部分がオーバーエッチングされてしまう可能性がある。これにより、シリコン酸化膜604の膜厚が薄い部分の近傍における第1ホトレジストパターン603aおよび第2ホトレジストパターン603bや、第2ホトレジストパターン603b直下のシリコン酸化膜604に、パターン幅の減少が生じてしまう可能性がある。このように線幅が減少した第1ホトレジストパターン603a、第2ホトレジストパターン603b、および第2ホトレジストパターン603b直下のシリコン酸化膜604により、ハードマスク層601およびシリコン酸化膜600をエッチングすると、シリコン酸化膜604の膜厚が薄い部分近傍におけるシリコン酸化膜600の溝幅が、シリコン酸化膜604の膜厚が厚い部分近傍におけるシリコン酸化膜600の溝幅と異なってしまう可能性がある。したがって、保護膜であるシリコン酸化膜604を形成するに際し、シリコン酸化膜604の膜厚を均一にすることが望まれる。
【0206】
近年の微細化加工では、20nm以下の配線寸法が求められている。したがって、保護膜であるシリコン酸化膜604の膜厚の差が数nm程度であっても、最終的に形成される配線幅に対して大きな比率を有するパターン幅の差が生じてしまう可能性がある。
【0207】
本実施形態によれば、プラズマ生成開始S206又はプラズマ生成停止S210の少なくともいずれかに起因して発生する同一ウエハ面内の膜厚差を低減できるので、ウエハ面内の一部のシリコン酸化膜604の膜厚だけが他の部分のシリコン酸化膜604の膜厚よりも薄くなるということを抑制することができる。また、本実施形態によれば、サセプタ217上の全てのウエハ200が同じ回数だけ改質処理されるように、プラズマ生成開始S206及びプラズマ生成停止S210のタイミングが制御されるので、一部のウエハ200上のシリコン酸化膜604の膜厚だけが他のウエハ200上のシリコン酸化膜604の膜厚よりも薄くなるということを抑制することができる。
【0208】
すなわち、同一ウエハ200の面内、およびサセプタ217上のウエハ200の間において、例えば同一のエッチング条件でシリコン酸化膜604をエッチングする際にパターン幅の差が生じることを抑制することができる。
【0209】
本実施形態は、このように膜厚の均一性が重要となるプロセスに対して特に好適である。
【0210】
(7)本実施形態の適用が有効な半導体装置の製造方法の他の一例
続いて、本実施形態の適用が有効な半導体装置(半導体デバイス)の製造方法の他の一例として、異なる膜種の成膜工程を交互に繰り返して基板上に積層膜を形成する方法について説明する。
【0211】
≪第1の積層膜形成方法の例≫
第1の例では、プロセスチャンバ202のうち、第1プロセスチャンバ202aと第2プロセスチャンバ202bを交互に用いて積層膜を形成する。ここで、第1プロセスチャンバ202aでは本実施形態による成膜方法にてシリコン酸化膜(SiO膜)の成膜を行い、第2プロセスチャンバ202bでは本実施形態による成膜方法にてチタン酸化膜(TiO膜)の成膜を行う。但し、本実施形態を適用した成膜方法を用いる場合であれば、これらの膜種の組合せには限定されない。また、いずれか一方の膜種の成膜において本実施形態の成膜方法を適用するものであってもよい。
【0212】
図19は、積層膜を形成するための本例に係る基板処理工程を示すフロー図である。
(基板搬入・載置工程S102’)
最初に第1プロセスチャンバ202aにウエハ200を載置する。本工程は、
図8の基板搬入・載置工程S102と同様である。
【0213】
(第1の薄膜形成工程S104−1)
続いて、第1プロセスチャンバ202aに載置したウエハ200上にシリコン酸化膜を成膜する工程を行う。本工程は、
図8の薄膜形成工程S104と同様である。
【0214】
(第1の基板移載工程S108)
続いて、第1プロセスチャンバ202aから、シリコン酸化膜が成膜されたウエハ200を、第1ウエハ移載機112を用いて第1搬送室103へ搬出し、さらに第2プロセスチャンバ202bに搬入、載置する。ウエハ200の搬出工程は、
図8の搬出工程S106と同様である。また、第2プロセスチャンバ202bへの搬入工程は、
図8の基板搬入・載置工程S102と同様である。
【0215】
(第2の薄膜形成工程S104−2)
続いて、第2プロセスチャンバ202bに載置したウエハ200上にチタン酸化膜を成膜する工程を行う。
【0216】
第1の薄膜形成工程S104−1では、
図8に示す薄膜形成工程S104によりシリコン酸化膜の成膜を行ったが、第2の薄膜形成工程S104−2では、同様の工程にてチタン酸化膜の成膜を行う。ここで、第2の薄膜形成工程S104−2では、チタン酸化膜を成膜するため、BTBASガスの代わりにチタン含有ガスとして四塩化チタン(TiCl
4)ガスを用いる。また、酸素含有ガスとしては同じく酸素(O2)ガスを用いる。用いるガスの種類以外の具体的な成膜工程については、シリコン酸化膜の成膜を行う薄膜形成工程S104と同様であるため説明を省略する。なお、チタン酸化膜を成膜する際のプロセス条件は、例えば以下の通りである。
・処理室圧力:120Pa
・ウエハ温度:200℃
・ガス流量:40sccm(TiCl
4ガス)、2000sccm(酸素ガス)
・サセプタ回転速度:15rpm
【0217】
ここで、第1の薄膜形成工程S104−1と第2の薄膜形成工程S104−2を行うことを1サイクルとする。
【0218】
(判定S320)
コントローラ300は、上記1サイクルが所定回数実施されたか否かを判定する。ここでコントローラ300は、所定回数実施されていないと判定した場合、続く第2の基板移載工程S110を行い、シリコン酸化膜とチタン酸化膜の成膜を引き続き行う。一方、所定回数実施されたと判定した場合、続く基板搬出工程S106’を行い、積層膜の成膜を行う工程を終了する。
【0219】
(第2の基板移載工程S110)
上述の通り、コントローラ300が、上記1サイクルが所定回数実施されていないと判定した場合、第2プロセスチャンバ202bから、チタン酸化膜が成膜されたウエハ200を、第1ウエハ移載機112を用いて第1搬送室103へ搬出し、さらに第1プロセスチャンバ202aに搬入、載置する。ウエハ200の搬出工程は、
図8の搬出工程S106と同様である。また、第1プロセスチャンバ202aへの搬入工程は、
図8の基板搬入・載置工程S102と同様である。
【0220】
(基板搬出工程S106’)
また、上述の通り、コントローラ300が、上記1サイクルが所定回数実施されたと判定した場合、第2プロセスチャンバ202bから、チタン酸化膜が成膜されたウエハ200を、第1ウエハ移載機112を用いて第1搬送室103へ搬出し、積層膜の成膜を行う工程を終了する。
【0221】
このように、第1プロセスチャンバ202aと第2プロセスチャンバ202bそれぞれにおいて、第1の薄膜形成工程S104−1と第2の薄膜形成工程S104−2を所定回数繰り返すことにより、ウエハ200上にシリコン酸化膜とチタン酸化膜の積層膜を形成する。所定回数は所望の積層膜の膜厚や積層数等によるが、例えば3回以上などが考えられる。
【0222】
≪第2の積層膜形成方法の例≫
また、第2の例では、プロセスチャンバ202のうち、第1プロセスチャンバ202aのみを用いて積層膜を形成する。積層される膜種は第1の例と同じくシリコン酸化膜(SiO膜)及びチタン酸化膜(TiO膜)である。具体的な構成は例えば以下の通りである。
【0223】
(基板搬入・載置工程)
最初に第1プロセスチャンバ202aにウエハ200を載置する。本工程は、
図8の基板搬入・載置工程S102と同様である。
【0224】
(第1の薄膜形成工程)
続いて、第1プロセスチャンバ202aに載置したウエハ200上にシリコン酸化膜を成膜する工程を行う。本工程は、
図8の薄膜形成工程S104と同様である。
【0225】
(第1の基板一時搬出工程)
続いて、第1プロセスチャンバ202aから、シリコン酸化膜が成膜されたウエハ200を、第1ウエハ移載機112を用いて第1搬送室103へ一時的に搬出する。
【0226】
(第1のパージ工程)
続いて、不活性ガス供給管234aから不活性ガスを供給し、第1ガス供給管231aの内部に残留したBTBASガスをパージする。
【0227】
(第1のプリコート工程)
続いて、第1のプリコート工程では、主にサセプタ217の表面をチタン酸化膜でプリコートする。プリコートの具体的な工程は、ウエハ200がサセプタ載置部217b上に載置されていないこと以外、上述の第1の例における第2の薄膜形成工程S104−2と同様である。すなわち、第1ガス供給管231aからTiCl
4ガスを第1処理領域201aに供給し、サセプタ217表面にチタン含有膜を形成する。サセプタ217表面に形成されたチタン含有膜は、サセプタ217が回転することにより第2処理領域201bを通過する。その際に、チタン含有膜は酸素元素の活性種等により酸化され、サセプタ217表面にチタン酸化膜が形成される。
なお、第2の例では、第1処理領域201aにTiCl
4ガスを供給するため、第1プロセスチャンバ202aは、第1ガス供給管231aに接続されたガス供給管、バルブ、MFC及びTiCl
4ガス供給源を別に備えている。
【0228】
(第1の基板搬入工程)
続いて、第1の基板一時搬出工程で第1搬送室103へ搬出されていたウエハ200を、第1プロセスチャンバ202aに載置する。
【0229】
(第2の薄膜形成工程)
続いて、第1プロセスチャンバ202aに載置したウエハ200上にチタン酸化膜を成膜する工程を行う。本工程は、上述の第1の例における第2の薄膜形成工程S104−2と同様の工程により、チタン酸化膜を成膜する。
【0230】
ここで、第1の薄膜形成工程と第2の薄膜形成工程を行うことを1サイクルとする。
【0231】
(判定S320)
コントローラ300は、上記1サイクルが所定回数実施されたか否かを判定する。ここでコントローラ300は、所定回数実施されていないと判定した場合、続く第2の基板一時搬出工程を行い、シリコン酸化膜とチタン酸化膜の成膜を引き続き行う。一方、所定回数実施されたと判定した場合、続く基板搬出工程を行い、積層膜の成膜を行う工程を終了する。
【0232】
(第2の基板一時搬出工程)
上述の通り、コントローラ300が、上記1サイクルが所定回数実施されていないと判定した場合、第1プロセスチャンバ202aから、チタン酸化膜が成膜されたウエハ200を、第1ウエハ移載機112を用いて第1搬送室103へ一時的に搬出する。
【0233】
(第2のパージ工程)
続いて、不活性ガス供給管234aから不活性ガスを供給し、第1ガス供給管231aの内部に残留したTiCl4ガスをパージする。
【0234】
(クリーニング工程)
続いて、クリーニングガス供給系から処理室201内にクリーニングガス(例えばNF
3ガス)を供給して、主にサセプタ217表面に付着した膜をクリーニングする。クリーニングガス供給系は、例えば、不活性ガス導入部282に接続され、クリーニングガス供給源からクリーニングガスを第1パージ領域204a及び第2パージ領域204bに供給するように構成されている。なお、クリーニング工程においてサセプタ217は回転しており、第1パージ領域204a及び第2パージ領域204bを通過することによってサセプタ217全体がクリーニングされる。
【0235】
(第2のプリコート工程)
続いて、第2のプリコート工程では、主にサセプタ217の表面をシリコン酸化膜でプリコートする。プリコートの具体的な工程は、ウエハ200がサセプタ載置部217b上に載置されていないこと以外、上述の第1の例における第1の薄膜形成工程S104−1(すなわち
図8の薄膜形成工程S104)と同様である。すなわち、第1ガス供給管231aからBTBASガスを第1処理領域201aに供給し、サセプタ217表面にシリコン含有膜を形成する。サセプタ217表面に形成されたシリコン含有膜は、サセプタ217が回転することにより第2処理領域201bを通過する。その際に、シリコン含有膜は酸素元素の活性種等により酸化され、サセプタ217表面にシリコン酸化膜が形成される。
【0236】
(基板搬出工程)
上述の通り、コントローラ300が、上記1サイクルが所定回数実施されたと判定した場合、第1プロセスチャンバ202aから、チタン酸化膜が成膜されたウエハ200を、第1ウエハ移載機112を用いて第1搬送室103へ搬出し、積層膜の成膜を行う工程を終了する。
【0237】
このように、第1プロセスチャンバ202aにおいて、第1の薄膜形成工程と第2の薄膜形成工程を所定回数繰り返すことにより、ウエハ200上にシリコン酸化膜とチタン酸化膜の積層膜を形成する。所定回数は所望の積層膜の膜厚や積層数等によるが、例えば3回以上などが考えられる。
【0238】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0239】
上述の実施形態では、反応容器203が4つの領域に分かれている場合について説明したが、それに限るものではない。対応する基板や形成する膜の種類によって、処理領域の数および配置を決定しても良い。
【0240】
なお、上述の実施形態では、各仕切板205の間の角度がそれぞれ90°である場合について説明したが、それに限るものではない。ウエハ200への各種ガスの供給時間(ウエハ200の処理時間)等を考慮して、例えば第2処理領域201bを形成する2枚の仕切板205の間の角度を大きくして、ウエハ200が第2処理領域201bを通過するのにかかる時間(処理時間)を長くする等、適宜変更してもよい。
【0241】
また、上述の実施形態では、各処理領域を仕切板205で仕切った場合について説明したが、それに限るものではない。処理室201が処理領域201a、201bのそれぞれに供給される処理ガスを混合させないように構成されていればよい。
【0242】
また、上述の実施形態では、仕切板205の端部と反応容器203の側壁との間に隙間が設けられており、処理室201内の圧力がそれぞれの領域において等しい場合について説明したが、それに限るものではない。第1処理領域201a、第1パージ領域204a、第2処理領域201b、第2パージ領域204bが気密に区分されていてもよい。すなわち、それぞれの領域内の圧力が互いに異なっていてもよい。
【0243】
また、上述の実施形態では、一つのプロセスチャンバ202で5枚のウエハ200を処理する場合について説明したが、それに限るものではない。一つのプロセスチャンバ202で、1枚のウエハ200を処理してもよく、5枚を超える枚数のウエハ200を処理してもよい。
【0244】
また、上述の実施形態では、予備室122または予備室123がウエハ200を搬入する機能とウエハ200を搬出する機能とを併用可能に構成されている場合について説明したが、それに限るものではない。予備室122および予備室123のいずれか一方を搬出用とし、他方を搬入用としてもよい。予備室122または予備室123を搬入用と搬出用を専用とすることによって、クロスコンタミネーションを低減することができ、併用とすることによって基板の搬送効率を向上させることができる。
【0245】
また、上述の実施形態では、同時に基板処理を行うのは1つのプロセスチャンバ202のみの場合についていて説明したが、それに限るものではない。各プロセスチャンバでの処理を並行して行ってもよい。
【0246】
また、上述の実施形態では、4つのプロセスチャンバ202がそれぞれ同様に構成されている場合について説明したが、それに限るものではない。各プロセスチャンバを異なる構成とし、各プロセスチャンバにおいてそれぞれ別の処理を行っても良い。
【0247】
また、上述の実施形態では、第1元素含有ガスとしてシリコン含有ガスを用い、第2元素含有ガスとして酸素含有ガスを用い、ウエハ200上にシリコン酸化膜を形成する場合について説明したが、それに限るものではない。第1元素含有ガスとして、例えばハフニウム(Hf)含有ガス、ジルコニウム(Zr)含有ガス、チタン(Ti)含有ガス、タンタル(Ta)含有ガスを用い、酸化ハフニウム膜(HfO膜)、酸化ジルコニウム(ZrO膜)、酸化チタン膜(TiO膜)、酸化タンタル膜(TaO膜)等のHigh−k膜等をウエハ200上に形成してもよい。また、第1元素含有ガスとして、例えばルテニウム(Ru)含有ガスやタングステン(W)含有ガスを用い、酸化ルテニウム膜(RuO膜)や酸化タングステン膜(WO膜)をウエハ200上に形成してもよい。
【0248】
また、上述の実施形態では、第2元素含有ガスとして、酸素含有ガスを用いる場合について説明したが、それに限るものではない。第2元素含有ガスとして、窒素含有ガスを用いてもよい。この場合、窒素含有ガスは、窒素(N
2)ガス、またはアンモニア(NH
3)ガス等を用いてもよい。
【0249】
また、上述の実施形態では、第2処理領域201bの上部に設けたプラズマ生成室290内に第2元素含有ガスを供給して、連通口302aを介してプラズマ励起で発生した活性種等を第2処理領域201b内に供給する場合について説明したが、それに限るものではない。反応容器の外でプラズマを生成するリモートプラズマ方法や、エネルギーレベルの高いオゾンを用いても良い。
【0250】
また、上述の実施形態では、不活性ガス導入部253を、第1パージ領域204aと第2パージ領域204bとで共用とした場合について説明したが、不活性ガス導入部は個別に設けてもよい。
【0251】
また、上記実施例においては、反応容器203の中央から処理室201内にそれぞれのガスを供給する場合について説明したが、それに限るものではない。例えば、第1元素含有ガスを供給するノズルが第1処理領域に設けられ、不活性ガスを供給するノズルがそれぞれ第1パージ領域および第2パージ領域に設けられていてもよい。
【0252】
また、上述の本実施形態では、昇降機構268を用い、サセプタ217を昇降させることで、ウエハ200を処理位置や搬送位置に移動させる場合について説明したが、それに限るものではない。ウエハ突き上げピン266が昇降することでウエハ200を処理位置や搬送位置に移動させてもよい。
【0253】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0254】
(付記1)
本発明の一態様によれば、
基板を処理する処理室内に回転自在に設けられた基板載置台上に、前記基板載置台の回転方向に沿って複数の基板を載置する工程と、
前記基板載置台を回転させ、前記基板載置台の回転方向に沿って前記処理室内に設けられた第1処理領域および第2処理領域に、それぞれ第1元素を含有する第1元素含有ガスおよび第2元素を含有する第2元素含有ガスの供給を開始する工程と、
前記第2処理領域に供給される前記第2元素含有ガスをプラズマ励起して前記第2元素を含む活性種若しくは反応種の少なくともいずれかを生成し、前記活性種若しくは反応種の少なくともいずれかを前記第2処理領域に設けられた活性種供給口を介して前記第2処理領域内に供給するプラズマ生成部において、前記第2元素含有ガスのプラズマ励起を開始する工程と、
前記基板載置台の回転によって前記複数の基板を順次前記第1処理領域と前記第2処理領域とを所定回数交互に通過させ、前記基板が前記第1処理領域を通過するときに前記基板の上に前記第1元素を含有する第1元素含有層を形成し、前記基板が前記第2処理領域を通過するときに前記第1元素含有層を、前記第2元素を含む活性種若しくは反応種の少なくともいずれかにより改質することにより、前記基板の上に前記第1元素および前記第2元素を含有する薄膜を形成する工程と、
を有し、
前記第2元素含有ガスのプラズマ励起を開始する工程では、前記基板載置台の回転方向に沿って移動する前記複数の基板と前記活性種供給口とが所定の位置関係になるタイミングにおいてプラズマ励起を開始する、
半導体装置の製造方法が提供される。
【0255】
(付記2)
本発明の他の態様によれば、
前記第2元素含有ガスのプラズマ励起を開始する工程では、前記複数の基板のうち隣り合う所定のいずれか2枚の基板の中間位置が、前記活性種供給口の中心位置を通過するタイミングにおいてプラズマ励起を開始する、
付記1記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0256】
(付記3)
前記第2元素含有ガスのプラズマ励起を開始する工程では、前記複数の基板のうち隣り合う所定のいずれか2枚の基板の中間位置が前記活性種供給口の中心位置を通過するタイミングに対して所定時間だけ早いタイミング若しくは所定時間だけ遅れたタイミングにおいてプラズマ励起を開始する、
付記1記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0257】
(付記4)
前記第2元素含有ガスのプラズマ励起を開始する工程では、前記複数の基板のうち所定のいずれか1枚が前記活性種供給口の近傍を通過し終わったタイミングにおいてプラズマ励起を開始する、付記1記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0258】
(付記5)
前記プラズマ生成部は、
前記第2元素含有ガスが供給されるプラズマ生成室と、前記プラズマ生成室の周囲に設けられ、高周波電力の印加を受けて前記プラズマ生成室内に供給された前記第2元素含有ガスをプラズマ励起するコイルと、を有し、
前記活性種供給口は、前記第2処理領域内を通過する前記複数の基板に対向するように前記第2処理領域の上部に設けられる、
付記1乃至4のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0259】
(付記6)
前記活性種供給口は前記プラズマ生成室の開口部により構成され、
前記プラズマ生成室の開口部は、前記複数の基板が移動する平面方向において小判型形状若しくは楕円形状であり、その長辺方向が前記複数の基板の移動方向と直交する方向を向くように設けられる、
付記5記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0260】
(付記7)
前記処理室は第1の処理室であり、
前記基板を処理する第2の処理室内に前記第1の処理室から搬出された前記基板を載置する工程と、
前記第1の処理室において前記基板上に形成された第1の薄膜上に、第1の薄膜とは異なる第2の薄膜を形成する工程と、
前記第2の処理室から前記基板を搬出する工程と、を有し、
前記第1の処理室における第1の薄膜形成と前記第1の処理室における第2の薄膜形成を所定回数繰り返し行う、
付記1記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0261】
(付記8)
本発明の他の態様によれば、
基板を処理する第1の処理室内に回転自在に設けられた基板載置台上に、前記基板載置台の回転方向に沿って複数の基板を載置する工程と、
前記基板載置台を回転させ、前記基板載置台の回転方向に沿って前記第1の処理室内に設けられた第1処理領域および第2処理領域に、それぞれ第1元素を含有する第1元素含有ガスおよび第2元素を含有する第2元素含有ガスの供給を開始する工程と、
前記第2処理領域に供給される前記第2元素含有ガスをプラズマ励起して前記第2元素を含む活性種若しくは反応種の少なくともいずれかを生成し、前記活性種若しくは反応種の少なくともいずれかを前記第2処理領域に設けられた活性種供給口を介して前記第2処理領域内に供給するプラズマ生成部において、前記第2元素含有ガスのプラズマ励起を開始する工程と、
前記基板載置台の回転によって前記複数の基板を順次前記第1処理領域と前記第2処理領域とを所定回数交互に通過させ、前記基板が前記第1処理領域を通過するときに前記基板の上に前記第1元素を含有する第1元素含有層を形成し、前記基板が前記第2処理領域を通過するときに前記第1元素含有層を、前記第2元素を含む活性種若しくは反応種の少なくともいずれかにより改質することにより、前記基板の上に前記第1元素および前記第2元素を含有する薄膜を形成する工程と、
前記基板を前記第1の処理室内から搬出する工程と、
基板を処理する第2の処理室内に回転自在に設けられた基板載置台上に、前記基板載置台の回転方向に沿って複数の基板を載置する工程と、
前記基板載置台を回転させ、前記基板載置台の回転方向に沿って前記第2の処理室内に設けられた第3処理領域および第4処理領域に、それぞれ第3元素を含有する第3元素含有ガスおよび第4元素を含有する第4元素含有ガスの供給を開始する工程と、
前記第4処理領域に供給される前記第4元素含有ガスをプラズマ励起して前記第4元素を含む活性種若しくは反応種の少なくともいずれかを生成し、前記活性種若しくは反応種の少なくともいずれかを前記第4処理領域に設けられた活性種供給口を介して前記第4処理領域内に供給するプラズマ生成部において、前記第4元素含有ガスのプラズマ励起を開始する工程と、
前記基板載置台の回転によって前記複数の基板を順次前記第3処理領域と前記第4処理領域とを所定回数交互に通過させ、前記基板が前記第3処理領域を通過するときに前記基板の上に前記第3元素を含有する第3元素含有層を形成し、前記基板が前記第4処理領域を通過するときに前記第3元素含有層を、前記第4元素を含む活性種若しくは反応種の少なくともいずれかにより改質することにより、前記基板の上に前記第3元素および前記第4元素を含有する薄膜を形成する工程と、
前記基板を前記第1の処理室内から搬出する工程と、
を有し、
前記第2元素含有ガスのプラズマ励起を開始する工程及び前記第4元素含有ガスのプラズマ励起を開始する工程では、前記基板載置台の回転方向に沿って移動する前記複数の基板と前記活性種供給口とが所定の位置関係になるタイミングにおいてプラズマ励起を開始する、
半導体装置の製造方法が提供される。
【0262】
(付記9)
前記第2元素と前記第4元素は同一の元素である、付記8記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0263】
(付記10)
本発明の他の態様によれば、
基板を処理する処理室内に回転自在に設けられた基板載置台上に、前記基板載置台の回転方向に沿って複数の基板を載置する工程と、
前記基板載置台を回転させ、前記基板載置台の回転方向に沿って前記処理室内に設けられた第1処理領域および第2処理領域に、それぞれ第1元素を含有する第1元素含有ガスおよび第2元素を含有する第2元素含有ガスの供給を開始する工程と、
前記第2処理領域に供給される前記第2元素含有ガスをプラズマ励起して前記第2元素を含む活性種若しくは反応種の少なくともいずれかを生成し、前記活性種若しくは反応種の少なくともいずれかを前記第2処理領域に設けられた活性種供給口を介して前記第2処理領域内に供給するプラズマ生成部において、前記第2元素含有ガスのプラズマ励起を開始する工程と、
前記基板載置台の回転によって前記複数の基板を順次前記第1処理領域と前記第2処理領域とを所定回数交互に通過させ、前記基板が前記第1処理領域を通過するときに前記基板の上に前記第1元素を含有する第1元素含有層を形成し、前記基板が前記第2処理領域を通過するときに前記第1元素含有層を、前記第2元素を含む活性種若しくは反応種の少なくともいずれかにより改質することにより、前記基板の上に前記第1元素および前記第2元素を含有する薄膜を形成する工程と、
前記プラズマ生成部において、前記第2元素含有ガスのプラズマ励起を停止する工程と、
を有し、
前記第2元素含有ガスのプラズマ励起を停止する工程では、前記基板載置台の回転方向に沿って移動する前記複数の基板と前記活性種供給口とが所定の位置関係になるタイミングにおいてプラズマ励起を停止する、
半導体装置の製造方法が提供される。
【0264】
(付記11)
前記第2元素含有ガスのプラズマ励起を停止する工程では、前記複数の基板のうち隣り合う所定のいずれか2枚の基板の中間位置が、前記活性種供給口の中心位置を通過するタイミングにおいてプラズマ励起を停止する、
付記10記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0265】
(付記12)
前記第2元素含有ガスのプラズマ励起を停止する工程では、前記複数の基板のうち隣り合う所定のいずれか2枚の基板の中間位置が前記活性種供給口の中心位置を通過するタイミングに対して所定時間だけ早いタイミング若しくは所定時間だけ遅れたタイミングにおいてプラズマ励起を停止する、付記10記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0266】
(付記13)
前記第2元素含有ガスのプラズマ励起を停止する工程では、前記複数の基板のうち所定のいずれか1枚が前記活性種供給口の近傍を通過し始める直前のタイミングにおいてプラズマ励起を停止する、付記10記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0267】
(付記14)
前記プラズマ生成部は、
前記第2元素含有ガスが供給されるプラズマ生成室と、前記プラズマ生成室の周囲に設けられ、高周波電力の印加を受けて前記プラズマ生成室内に供給された前記第2元素含有ガスをプラズマ励起するコイルと、を有し、
前記活性種供給口は、前記第2処理領域内を通過する前記複数の基板に対向するように前記第2処理領域の上部に設けられる、
付記10乃至13いずれか一つに記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0268】
(付記15)
前記活性種供給口は前記プラズマ生成室の開口部により構成され、
前記プラズマ生成室の開口部は、前記複数の基板が移動する平面方向において小判型形状若しくは楕円形状であり、その長辺方向が前記複数の基板の移動方向と直交する方向を向くように設けられる、
付記14記載の半導体装置の製造方法が提供されるが提供される。
【0269】
(付記16)
前記第2元素含有ガスのプラズマ励起を開始する工程では、前記基板載置台の回転方向に沿って移動する前記複数の基板と前記活性種供給口とが所定の位置関係になるタイミングにおいてプラズマ励起を開始する、
付記10乃至13のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0270】
(付記17)
前記第2元素含有ガスのプラズマ励起を開始する工程における前記複数の基板と前記活性種供給口との位置関係は、前記第2元素含有ガスのプラズマ励起を停止する工程における前記複数の基板と前記活性種供給口との位置関係と同一である、
付記10記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0271】
(付記18)
前記第2元素含有ガスのプラズマ励起を開始する工程では、前記複数の基板のうち隣り合う所定のいずれか2枚の基板の中間位置が、前記活性種供給口の中心位置を通過するタイミングにおいてプラズマ励起を開始し、
前記第2元素含有ガスのプラズマ励起を開始する工程における前記所定の2枚の基板と、前記第2元素含有ガスのプラズマ励起を停止する工程における前記所定の2枚の基板は同一の基板である、
付記11記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0272】
(付記19)
前記第2元素含有ガスのプラズマ励起を開始する工程では、前記複数の基板のうち隣り合う所定のいずれか2枚の基板の中間位置が前記活性種供給口の中心位置を通過するタイミングに対して所定時間だけ早いタイミング若しくは所定時間だけ遅れたタイミングにおいてプラズマ励起を開始し、
前記第2元素含有ガスのプラズマ励起を開始する工程における前記所定の2枚の基板と、前記第2元素含有ガスのプラズマ励起を停止する工程における前記所定の2枚の基板は同一の基板である、
付記12記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0273】
(付記20)
前記第2元素含有ガスのプラズマ励起を開始する工程では、前記複数の基板のうち所定のいずれか1枚が前記活性種供給口の近傍を通過し終わったタイミングにおいてプラズマ励起を開始し、
前記第2元素含有ガスのプラズマ励起を開始する工程における前記所定の1枚の基板は、前記第2元素含有ガスのプラズマ励起を停止する工程における前記所定の1枚の基板と隣り合う基板であって前記基板載置台の回転方向の下流側の基板である、
付記13記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0274】
(付記22)
本発明の更に他の態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記処理室内に回転自在に設けられ、回転方向に沿って複数の基板が載置される基板載置面を備えた基板載置台と、
前記基板載置台を回転させる回転機構と、
前記基板載置台の回転方向に沿って前記処理室内に設けられた、前記複数の基板を処理する第1処理領域および第2処理領域と、
前記第1処理領域に第1元素を含有する第1元素含有ガスを供給する第1元素含有ガス供給部と、
第2元素を含有する第2元素含有ガスをプラズマ励起して前記第2元素を含む活性種若しくは反応種の少なくともいずれかを生成するプラズマ生成部と、
前記プラズマ生成部に前記第2元素含有ガスを供給する第2元素含有ガス供給部と、
前記第2処理領域内に設けられ、前記プラズマ生成部で生成された前記活性種若しくは反応種の少なくともいずれかを前記第2処理領域内に供給する活性種供給口と、
前記基板載置台の回転方向に沿って移動する前記複数の基板と前記活性種供給口とが所定の位置関係になるタイミングにおいてプラズマ励起を開始又は停止の少なくとも一方を行うように前記プラズマ生成部を制御する制御部と、
を備える基板処理装置が提供されるが提供される。
【0275】
(付記23)
前記制御部は、
前記複数の基板のうち隣り合う所定のいずれか2枚の基板の中間位置が、前記活性種供給口の中心位置を通過するタイミングにおいてプラズマの励起を開始するように前記プラズマ生成部を制御する、
付記22記載の基板処理装置が提供される。
【0276】
(付記24)
前記制御部は、
前記複数の基板のうち隣り合う所定のいずれか2枚の基板の中間位置が前記活性種供給口の中心位置を通過するタイミングに対して、所定時間だけ早いタイミング若しくは所定時間だけ遅れたタイミングにおいてプラズマ励起を開始するように前記プラズマ生成部を制御する、
付記22記載の基板処理装置が提供される。
【0277】
(付記25)
前記制御部は、
前記複数の基板のうち所定のいずれか1枚が前記活性種供給口の近傍を通過し終わったタイミングにおいてプラズマ励起を開始するように前記プラズマ生成部を制御する、
付記22記載の基板処理装置が提供される。
【0278】
(付記26)
前記プラズマ生成部は、
前記第2元素含有ガスが供給されるプラズマ生成室と、前記プラズマ生成室の周囲に設けられ、高周波電力の印加を受けて前記プラズマ生成室内に供給された前記第2元素含有ガスをプラズマ励起するコイルと、を有し、
前記活性種供給口は、前記第2処理領域内を通過する前記複数の基板に対向するように前記第2処理領域の上部に設けられる、
付記22乃至25のいずれか一つに記載の基板処理装置が提供される。
【0279】
(付記27)
前記活性種供給口は前記プラズマ生成室の開口部により構成され、
前記プラズマ生成室の開口部は、前記複数の基板が移動する平面方向において小判型形状若しくは楕円形状であり、その長辺方向が前記複数の基板の移動方向と直交する方向を向くように設けられる、
付記26記載の基板処理装置が提供される。
【0280】
(付記28)
前記制御部は、
前記複数の基板のうち所定のいずれか1枚が前記活性種供給口の近傍を通過し始める直前のタイミングにおいてプラズマ励起を停止するようにプラズマ生成部を制御する、
付記22記載の基板処理装置が提供される。
【0281】
(付記29)
前記制御部は、
前記複数の基板のうち隣り合う所定のいずれか2枚の基板の中間位置が、前記活性種供給口の中心位置を通過するタイミングにおいてプラズマ励起を停止するようにプラズマ生成部を制御する、
付記22記載の基板処理装置が提供される。
【0282】
(付記30)
前記制御部は、
前記複数の基板のうち隣り合う所定のいずれか2枚の基板の中間位置が前記活性種供給口の中心位置を通過するタイミングに対して所定時間だけ早いタイミング若しくは所定時間だけ遅れたタイミングにおいてプラズマ励起を停止するようにプラズマ生成部を制御する、
付記22記載の基板処理装置が提供される。
【0283】
(付記31)
前記制御部は、前記回転機構を制御して前記基板載置台の回転を開始させ、前記第1元素含有ガス供給部および前記第2元素含有ガス供給部を制御して前記第1元素含有ガスおよび前記第2元素含有ガスの供給を開始させた後、前記プラズマ生成部によるプラズマ励起を開始する、付記22記載の基板処理装置が提供される。
【0284】
(付記32)
本発明の更に他の態様によれば、
基板を処理する処理室内に回転自在に設けられた基板載置台上に、前記基板載置台の回転方向に沿って複数の基板を載置する手順と、
前記基板載置台を回転させ、前記基板載置台の回転方向に沿って前記処理室内に設けられた第1処理領域および第2処理領域に、それぞれ第1元素を含有する第1元素含有ガスおよび第2元素を含有する第2元素含有ガスの供給を開始する手順と、
前記第2処理領域に供給される前記第2元素含有ガスをプラズマ励起して前記第2元素を含む活性種若しくは反応種の少なくともいずれかを生成し、前記活性種若しくは反応種の少なくともいずれかを前記第2処理領域に設けられた活性種供給口を介して前記第2処理領域内に供給するプラズマ生成部において、前記第2元素含有ガスのプラズマ励起を開始する手順と、
前記基板載置台の回転によって前記複数の基板を順次前記第1処理領域と前記第2処理領域とを所定回数交互に通過させ、前記基板が前記第1処理領域を通過するときに前記基板の上に前記第1元素を含有する第1元素含有層を形成し、前記基板が前記第2処理領域を通過するときに前記第1元素含有層を、前記第2元素を含む活性種若しくは反応種の少なくともいずれかにより改質することにより、前記基板の上に前記第1元素および前記第2元素を含有する薄膜を形成する手順と、をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記第2元素含有ガスのプラズマ励起を開始する手順では、前記基板載置台の回転方向に沿って移動する前記複数の基板と前記活性種供給口とが所定の位置関係になるタイミングにおいてプラズマ励起を開始するコンピュータプログラム、又は当該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。