【実施例】
【0012】
(実施例1)
以下に、ガスセンサにかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例のガスセンサ1は、酸素を含むガスGにおける、特定ガス成分の濃度を測定するものである。ガスセンサ1は、
図1、
図2に示すごとく、固体電解質体2、拡散抵抗体3、ガス室101、基準ガス室102、ポンプセル41、モニタセル42、センサセル43及びヒータ6を備えている。
固体電解質体2は、酸素イオン伝導性を有しており、平板形状に形成されている。拡散抵抗体3は、ガスGの流速を低下させて所定の流量で通過させる多孔質体から形成されている。ガス室101は、固体電解質体2の一方の表面である第1主面201の側に形成されており、拡散抵抗体3を通過するガスGが導入される空間として形成されている。基準ガス室102は、固体電解質体2の他方の表面である第2主面202の側に形成されており、基準ガスAが導入される空間として形成されている。固体電解質体2の第2主面202には、基準ガスAとしての大気に曝される基準電極24が設けられている。
【0013】
ポンプセル41は、固体電解質体2の第1主面201に、ガスGに曝されるポンプ電極21を有している。ポンプセル41は、ポンプ電極21と基準電極24との間に電圧を印加して、ガス室101におけるガスG中の酸素濃度を調整するよう構成されている。
モニタセル42は、固体電解質体2の第1主面201であって、ガスGの流れ方向Fにおけるポンプ電極21の配置位置よりも下流側の位置に、ガスGに曝されるモニタ電極22を有している。モニタセル42は、モニタ電極22と基準電極24との間に流れる酸素イオン電流に基づいて、ガス室101におけるガスG中の酸素濃度を検出するよう構成されている。
【0014】
センサセル43は、固体電解質体2の第1主面201であって、ガスGの流れ方向Fに垂直な方向においてモニタ電極22の配置位置と並ぶ位置に、ガスGに曝されるセンサ電極23を有している。センサセル43は、センサ電極23と基準電極24との間に流れる酸素イオン電流に基づいて、ガス室101におけるガスG中の特定ガス成分濃度を検出するために用いられる。
ヒータ6は、固体電解質体2を加熱するものであり、基準ガス室102を介して固体電解質体(2)に対向して配置されている。
図2、
図3に示すごとく、ガス室101は、固体電解質体2、固体電解質体2に積層された絶縁体51,52及び拡散抵抗体3によって囲まれて形成されている。ポンプ電極21、モニタ電極22及びセンサ電極23が固体電解質体2に設けられた位置において、ガスGの流れ方向Fに直交する幅方向Wにおける、ガス室101の空間幅W0は一定になっている。
【0015】
図3に示すごとく、ポンプ電極21の幅方向Wの中心位置O1に対する、モニタ電極22とセンサ電極23との隙間Sの幅方向Wの中心位置O2のずれ量ΔX1は、ポンプ電極21の幅をW1としたとき、ΔX1≦1/4W1の関係を有している。また、ポンプ電極21の幅方向Wの中心位置O1からの、モニタ電極22の側面221の位置及びセンサ電極23の側面231の位置ΔY1は、ΔY1≦1/2W1の関係を有している。
【0016】
以下に、本例のガスセンサ1につき、
図1〜
図6を参照して詳説する。
本例のガスセンサ1は、カバー内に配置された状態で、自動車の排気管内において使用される。また、ガスGは排気管を通過する排ガスであり、ガスセンサ1は、排ガス中の特定ガス成分としてのNOx(窒素酸化物)の濃度を検出するために用いられる。
固体電解質体2は、酸素イオン伝導性を有するジルコニアの基板である。ポンプ電極21、モニタ電極22及びセンサ電極23は、固体電解質体2における、ガスGに曝される側の第1主面201に一定の厚みで設けられている。基準電極24は、固体電解質体2における、基準ガスAに曝される側の第2主面202に一定の厚みで設けられている。本例の基準電極24は、固体電解質体2においてポンプ電極21、モニタ電極22及びセンサ電極23が位置する領域の全体の裏側の位置に設けられている。基準電極24は、ポンプ電極21、モニタ電極22及びセンサ電極23の全体に対して1つ設ける以外にも、ポンプ電極21、モニタ電極22及びセンサ電極23のそれぞれの裏側の位置に分散させて、3つ設けることもできる。
【0017】
基準電極24は、固体電解質体2の第1主面201にポンプ電極21、モニタ電極22及びセンサ電極23が形成された領域のほぼ全面に対して、固体電解質体2を挟んで対向して形成されていることが望ましい。言い換えれば、基準電極24を厚み方向Tに投影した領域内に、ポンプ電極21、モニタ電極22及びセンサ電極23の全体がほぼ含まれていることが望ましい。
【0018】
図1、
図2に示すごとく、固体電解質体2のガスG側の第1主面201には、拡散抵抗体3と、アルミナからなる平板状の基板である第1の絶縁体51とが積層されている。拡散抵抗体3及び第1の絶縁体51の表面には、アルミナからなる平板状の基板である第2の絶縁体52が積層されている。拡散抵抗体3は、ガスセンサ1におけるガスGの流れ方向Fとなる長手方向の上流側端部に配置されている。第1の絶縁体51は、固体電解質体2のガスG側の第1主面201において、ポンプ電極21、モニタ電極22及びセンサ電極23を三方から囲むように、長手方向の下流側端部及び幅方向Wの両側の端部に設けられている。ガス室101は、固体電解質体2と第2の絶縁体52との間において、拡散抵抗体3及び第1の絶縁体51によって、固体電解質体2のガスG側の第1主面201の四方が囲まれて形成されている。ポンプ電極21、モニタ電極22及びセンサ電極23が固体電解質体2に設けられた位置において、ガス室101の、流れ方向F及び幅方向Wに直交する厚み方向Tにおける空間高さは一定になっている。
【0019】
図1、
図2に示すごとく、固体電解質体2の基準ガスA側の第2主面202には、アルミナからなる平板状の基板である第3の絶縁体53が積層されている。第3の絶縁体53は、固体電解質体2の基準ガスA側の第2主面202において、基準電極24を三方から囲むように、長手方向の上流側端部及び幅方向Wの両側の端部に設けられている。
また、ヒータ6は、固体電解質体2を加熱するとともに、固体電解質体2に設けられたポンプ電極21、モニタ電極22及びセンサ電極23を加熱する。ヒータ6は、平板状に形成されており、第3の絶縁体53に積層されている。ヒータ6は、第3の絶縁体53の表面に積層された第4の絶縁体61と、第4の絶縁体61に設けられ、通電が行われる通電体62とを有している。第4の絶縁体61は、2枚の絶縁プレート611によって通電体62を挟み込んでいる。
【0020】
基準ガス室102は、固体電解質体2と第4の絶縁体61との間において、第3の絶縁体53によって、固体電解質体2の基準ガスA側の第2主面202の、上流側端部及び幅方向Wの両側の端部の三方が囲まれて形成されている。
図4に示すごとく、通電体62は、外部の通電手段が接続される一対の電極部621と、該一対の電極部621同士を繋ぎ、一対の電極部621に印加される電圧によって通電されて発熱する発熱部622とを有している。
【0021】
発熱部622の断面積は、電極部621の断面積よりも小さい。そして、発熱部622の単位長さ当たりの抵抗値は、電極部621の単位長さ当たりの抵抗値よりも大きい。そのため、一対の電極部621から通電体62へ通電するときには、ジュール熱により主に発熱部622が発熱する。そして、発熱部622の発熱によって、ポンプ電極21、モニタ電極22及びセンサ電極23が所望の作動温度まで昇温される。
【0022】
発熱部622の膜厚と電極部621の膜厚とを同じにする場合には、発熱部622のパターン線幅は、電極部621のパターン線幅に比べて、例えば1/4程度の幅に形成される。発熱部622の膜厚を電極部621の膜厚よりも小さくすること、又は発熱部622を構成する材料の比抵抗を、電極部621を構成する材料の比抵抗よりも大きくすることによっても、発熱部622の抵抗値を電極部621の抵抗値よりも大きくすることができる。また、発熱部622の抵抗値は、パターン線幅、膜厚、材料の組成等を異ならせる手法を合わせて、電極部621の抵抗値よりも大きくすることができる。
発熱部622の抵抗値は、通電体62の全体の抵抗値における50%以上の割合を占める。発熱部622は、ポンプ電極21、モニタ電極22及びセンサ電極23が設けられた固体電解質体2の平面領域の全体が、第4の絶縁体61の表面に厚み方向Tに投影された位置に設けられている。
【0023】
図1に示すごとく、ヒータ6の第4の絶縁体61及び通電体62は、固体電解質体2に対して平行に配置されており、通電体62は、ポンプ電極21、モニタ電極22及びセンサ電極23に対して平行に配置されている。そして、ガスセンサ1の流れ方向F及び幅方向Wに直交する厚み方向Tにおいて、ポンプ電極21の表面から発熱部622の表面までの距離D1、モニタ電極22の表面から発熱部622の表面までの距離D2、及びセンサ電極23の表面から発熱部622の表面までの距離D3はほぼ同等になっている。これにより、ポンプ電極21、モニタ電極22及びセンサ電極23のそれぞれを発熱部622に接近させることができる。なお、ポンプ電極21の表面から発熱部622の表面までの距離D1、モニタ電極22の表面から発熱部622の表面までの距離D2、及びセンサ電極23の表面から発熱部622の表面までの距離D3は、若干異なっていてもよく、より具体的には±10%までは異なっていてもよい。
【0024】
また、ポンプ電極21を含むポンプセル41には、モニタ電極22を含むモニタセル42及びセンサ電極23を含むセンサセル43に比べて多くの酸素イオン電流が流れる。そのため、モニタ電極22及びセンサ電極23に比べてポンプ電極21が若干加熱されやすくなるよう、発熱部622の発熱中心をポンプ電極21側に偏って配置している。これにより、ポンプ電極21の温度が、モニタ電極22の温度及びセンサ電極23の温度に比べて若干高くなるようにしている。
こうして、ヒータ6の発熱部622によって、ポンプ電極21、モニタ電極22及びセンサ電極23の温度を、それぞれ容易に最適な温度に制御することができる。
【0025】
ガスセンサ1の幅方向Wにおいて、モニタ電極22の幅A1とセンサ電極23の幅A2とは、ほぼ同等になっている。また、本例のモニタ電極22の面積とセンサ電極23の面積とは、ほぼ同等になっている。なお、モニタ電極22の幅A1とセンサ電極23の幅A2とは、若干異なっていてもよく、より具体的には±10%までは異なっていてもよい。また、モニタ電極22の面積とセンサ電極23の面積とは、若干異なっていてもよく、より具体的には±10%までは異なっていてもよい。
ポンプ電極21の下流側端面は、幅方向Wに平行になっており、モニタ電極22及びセンサ電極23の上流側端面も、幅方向Wに平行になっている。そして、ガスセンサ1の流れ方向Fにおいて、ポンプ電極21の下流側端面からモニタ電極22の上流側端面までの距離B1と、ポンプ電極21の下流側端面からセンサ電極23の上流側端面までの距離B2とは、ほぼ同等になっている。なお、ポンプ電極21の下流側端面からモニタ電極22の上流側端面までの距離B1と、ポンプ電極21の下流側端面からセンサ電極23の上流側端面までの距離B2とは、若干異なっていてもよく、より具体的には±10%までは異なっていてもよい。
【0026】
モニタ電極22は、ガスG中の特定ガス成分(NOx)を分解しない電極であり、センサ電極23は、ガスG中の特定ガス成分を分解可能な電極である。モニタセル42においては、酸素濃度に依存して酸素イオン電流が検出される一方、センサセル43においては、酸素濃度及びNOx濃度に依存して酸素イオン電流が検出される。そして、ガスセンサ1においては、センサセル43によって検出される酸素イオン電流から、モニタセル42によって検出される酸素イオン電流が差し引かれることにより、ガスG中の特定ガス成分の濃度が検出される。
【0027】
本例のガスセンサ1は、ポンプ電極21、モニタ電極22、センサ電極23及び基準電極24の全てを同じ固体電解質体2に設けており、ガス室101の空間幅W0を一定にした特殊な構造を有するものである。そして、この特殊な構造のガスセンサ1において、ガス室101における、ポンプ電極21の配置位置を通過した後のガスGの流れに対する、モニタ電極22とセンサ電極23との配置条件をできるだけ同等にしている。
【0028】
このようなガスセンサ1の構造においては、ポンプ電極21の幅方向Wの中心位置O1に対する、モニタ電極22とセンサ電極23との隙間Sの幅方向Wの中心位置O2のずれ量ΔX1の規定が重要となる。具体的には、ずれ量ΔX1は、ポンプ電極21の幅をW1としたとき、ΔX1≦1/4W1の関係を有している。また、ポンプ電極21の幅方向Wの中心位置O1に対する、モニタ電極22の側面221の位置及びセンサ電極23の側面231の位置ΔY1は、ΔY1≦1/2W1の関係を有している。言い換えれば、モニタ電極22の側面221の位置は、ポンプ電極21の側面211の位置と同じ又はポンプ電極21の側面211の位置よりも内側に位置しており、センサ電極23の側面231の位置は、ポンプ電極21の側面211の位置と同じ又はポンプ電極21の側面211の位置よりも内側に位置している。
【0029】
これにより、ずれ量ΔX1、及び中心位置O1からの各側面221,231の位置ΔY1の許容範囲を定めることができる。そして、ポンプ電極21の配置位置を通過した後のガスGが、モニタ電極22とセンサ電極23とにできるだけ同等に接触するようにすることができる。そのため、モニタ電極22とセンサ電極23とにおいて、ガスG中の残留酸素を分解する量をできるだけ同等にすることができる。
それ故、本例のガスセンサ1によれば、特定ガス成分濃度の検出精度を向上させることができる。
【0030】
また、上記距離B1と上記距離B2を同じにすることにより、モニタ電極22とセンサ電極23とにおける、ガスG中の残留酸素の分解量が同等になるようにすることができる。また、この距離B1及び距離B2の両方が十分に長くなると、モニタ電極22とセンサ電極23とに生じる、ガスG中の残留酸素の影響が小さくなる。ただし、ただし、距離B1及び距離B2の両方が十分に長くなると、ガスセンサ1が長手方向に長くなってしまい、応答性遅延など他特性に対して悪影響を及ぼす。そのため、距離B1及距離B2は、0.1〜3.0mmの範囲内で決定することが好ましい。
【0031】
図5には、ずれ量ΔX1と、ガスセンサ1による特定ガス成分濃度の検出誤差の比との関係を示す。同図においては、ずれ量ΔX1が0(ゼロ)の場合の検出誤差を基準値(1倍)として、ずれ量ΔX1が変化したときの検出誤差の基準値に対する増加比(倍)を示す。また、ガスGの酸素濃度が20%の場合について示す。同図に示すごとく、ずれ量ΔX1が1/8W1を超える付近から検出誤差は徐々に増加し、ずれ量ΔX1が1/4W1を超える付近から検出誤差は急激に増加していることがわかる。
【0032】
例えば、モニタ電極22が幅方向Wの中心側に位置し、センサ電極23が幅方向Wの外側に位置することになると、ガスG中の残留酸素は、センサ電極23に比べてモニタ電極22の方がより多く分解しやすくなると考えられる。この場合、残留酸素によってモニタセル42とセンサセル43とに流れる酸素イオン電流の量が異なり、ガスセンサ1による検出誤差が大きくなる。
ずれ量ΔX1は、モニタ電極22及びセンサ電極23の幅方向Wの幅が、ポンプ電極21の幅方向Wの幅の1/4未満まで小さくなれば、ΔY1≦1/2W1の関係が満たされる範囲で1/4W1以下まで許容される。このことより、ずれ量ΔX1は、ΔX1≦1/4W1の関係を有していることが好ましく、ΔX1≦1/8W1の関係を有していることがさらに好ましいといえる。
【0033】
図6には、ポンプ電極21の幅方向Wの中心位置O1からの、モニタ電極22又はセンサ電極23の側面221,231の位置ΔY1と、ガスセンサ1による特定ガス成分濃度の検出誤差の比との関係を示す。同図においては、モニタ電極22の側面221の位置がポンプ電極21の側面211の位置と同じ場合の検出誤差を基準値(1倍)として、側面221,231の位置ΔY1が変化したときの検出誤差の基準値に対する増加比(倍)を示す。また、ガスGの酸素濃度が20%の場合について示す。同図に示すごとく、中心位置O1からの側面221,231の位置ΔY1が、1/2W1を超える付近から検出誤差は増加していることがわかる。この理由は、上記ずれ量ΔX1の場合と同様に考える。このことより、中心位置O1からの側面221,231の位置ΔY1は、ΔY1≦1/2W1の関係を有していることが好ましいといえる。
【0034】
(実施例2)
本例のガスセンサ1においては、モニタ電極22とセンサ電極23との隙間Sの中心位置のずれ量ΔX2を、ヒータ6における発熱部622との関係で規定している。
具体的には、
図7に示すごとく、ガスセンサ1の幅方向Wにおいて、発熱部622の中心位置O3に対する、モニタ電極22とセンサ電極23との隙間Sの中心位置O4のずれ量ΔX2は、発熱部622の幅方向Wの全体幅をW2としたとき、ΔX2≦1/4W2の関係を有している。
【0035】
また、ガスセンサ1の幅方向Wにおいて、発熱部622の中心位置O3からの、モニタ電極22の側面221の位置及びセンサ電極23の側面231の位置ΔY2は、ΔY2≦1/2W2の関係を有している。言い換えれば、モニタ電極22の側面221の位置は、発熱部622の側面623の位置と同じ又は発熱部622の側面623の位置よりも内側に位置しており、センサ電極23の側面231の位置は、発熱部622の側面623の位置と同じ又は発熱部622の側面623の位置よりも内側に位置している(
図6参照)。
【0036】
ここで、本例のヒータ6の構造は、上記実施例1の
図4に示したものと同じである。そして、同図に示したように、ポンプ電極21の中心位置O1と、発熱部622の中心位置O3とは、いずれもガスセンサ1の幅方向Wの中心位置にある。
また、ポンプ電極21の幅方向Wの幅W1と発熱部622の幅方向Wの全体幅W2とは、W1≦W2の関係を有している。これにより、ガスセンサ1の幅方向Wにおける温度分布を極力減らし、発熱部622による電子伝導がモニタ電極22とセンサ電極23とに与える影響の差を減らすことができる。
【0037】
本例のガスセンサ1も、上記実施例1の場合と同様の特殊な構造を有するものである。そして、この特殊な構造のガスセンサ1において、ヒータ6の発熱部622の配置位置に対する、モニタ電極22とセンサ電極23との配置条件をできるだけ同等にしている。具体的には、このような特殊な構造のガスセンサ1において、ずれ量ΔX2がΔX2≦1/4W2の関係を有し、中心位置O3からの各側面221,231の位置ΔY2がΔY2≦1/2W2の関係を有している。
【0038】
これにより、ずれ量ΔX2、及び中心位置O3からの各側面221,231の位置ΔY2の許容範囲を定めることができる。そして、固体電解質体2の温度に依存する、発熱部622からの電子伝導の影響が、モニタ電極22とセンサ電極23とにできるだけ同等に生じるようにすることができる。なお、モニタ電極22とセンサ電極23とがそれぞれ電子伝導の影響を受けると、モニタセル42及びセンサセル43にそれぞれ微小な電流が流れることになる。この微小な電流の検出は、センサセル43における酸素イオン電流とモニタセル42における酸素イオン電流との差分を取って特定ガス成分濃度を求める際に、互いに打ち消し合うことができる。そして、この微小な電流が特定ガス成分濃度の検出に与える影響をほとんどなくすことができる。
それ故、本例のガスセンサ1によっても、特定ガス成分濃度の検出精度を向上させることができる。
【0039】
また、本例のガスセンサ1も、上記実施例1に示したΔX1≦1/4W1の関係及びΔY1≦1/2W1の関係を有していることが好ましい。
本例のガスセンサ1のその他の構成及び図中の符号は上記実施例1と同様であり、本例のその他の作用効果は、上記実施例1と同様である。
【0040】
図8には、ずれ量ΔX2と、ガスセンサ1による特定ガス成分濃度の検出誤差の比との関係を示す。同図においては、ずれ量ΔX2が0(ゼロ)の場合の検出誤差を基準値(1倍)として、ずれ量ΔX2が変化したときの検出誤差の基準値に対する増加比(倍)を示す。また、ガスGの酸素濃度が20%の場合について示す。同図に示すごとく、ずれ量ΔX2が1/8W2を超える付近から検出誤差は徐々に増加し、ずれ量ΔX2が1/4W2を超える付近から検出誤差は急激に増加していることがわかる。
【0041】
例えば、モニタ電極22が幅方向Wの中心側に位置し、センサ電極23が幅方向Wの外側に位置することになると、モニタ電極22の方がセンサ電極23に比べて温度が高くなり、電子伝導の影響を、センサ電極23に比べてモニタ電極22が強く受けることになると考えられる。この場合、電子伝導による微小な電流が、センサセル43における酸素イオン電流に与える影響と、モニタセル42における酸素イオン電流に与える影響とを互いに打ち消し合うことができず、ガスセンサ1による検出誤差が大きくなる。
ずれ量ΔX2は、モニタ電極22及びセンサ電極23の幅方向Wの幅が、発熱部622の幅方向Wの幅の1/4未満まで小さくなれば、ΔY2≦1/2W2の関係が満たされる範囲で1/4W2以下まで許容される。このことより、ずれ量ΔX2は、ΔX2≦1/4W2の関係を有していることが好ましく、ΔX2≦1/8W2の関係を有していることがさらに好ましいといえる。
【0042】
図9には、発熱部622の幅方向Wの中心位置O3からのモニタ電極22又はセンサ電極23の側面221,231の位置ΔY2と、ガスセンサ1による特定ガス成分濃度の検出誤差の比との関係を示す。同図においては、モニタ電極22の側面221の位置が発熱部622の側面623の位置と同じ場合の検出誤差を基準値(1倍)として、側面221,231の位置ΔY2が変化したときの検出誤差の基準値に対する増加比(倍)を示す。
【0043】
また、同図においては、ガスGの酸素濃度が20%の場合について示す。同図に示すごとく、側面221,231の位置ΔY2が、1/2W2を超える付近から検出誤差は増加していることがわかる。この理由は、上記ずれ量ΔX2の場合と同様に考える。このことより、側面の位置ΔY2は、ΔY2≦1/2W2の関係を有していることが好ましいといえる。
なお、発熱部622は、ガスセンサ1の幅方向Wにおいて略対称に形成されていればよい。発熱部622の中心位置O3は、幅方向Wの対称線に相当する。発熱部622は、例えば、
図10に示すようなパターンで形成することができる。この場合においても、作用効果は上記実施例2と同様である。
【0044】
(実施例3)
本例は、
図11に示すごとく、ガス室101が、ポンプ電極21が配置された第1ガス室103と、モニタ電極22及びセンサ電極23が配置された第2ガス室104と、第1ガス室103と第2ガス室104との間に位置する狭小空間105とによって形成された場合について示す。
狭小空間105の幅方向Wにおける空間幅W3は、第1ガス室103の幅方向Wにおける空間幅W0’、及び第2ガス室104の幅方向Wにおける空間幅W0’’に比べて狭くなっている。第1ガス室103の空間幅W0’と第2ガス室104の空間幅W0’’とはほぼ同じである。
【0045】
本例のガスセンサ1においては、ガス室101における狭小空間105を通過した後のガスGの流れに対する、モニタ電極22とセンサ電極23との配置条件をできるだけ同等にしている。そして、ガスセンサ1の幅方向Wにおいて、狭小空間105の中心位置O5に対する、モニタ電極22とセンサ電極23との隙間Sの中心位置O6のずれ量ΔX3は、ΔX3≦1/4W3の関係を有している。これにより、ずれ量ΔX3の許容範囲を定めることができる。そして、ポンプ電極21の配置位置から狭小空間105を通過した後のガスGが、モニタ電極22とセンサ電極23とにできるだけ同等に接触するようにすることができる。そのため、モニタ電極22とセンサ電極23とにおいて、ガスG中の残留酸素を分解する量をできるだけ同等にすることができる。
それ故、本例のガスセンサ1によっても、特定ガス成分濃度の検出精度を向上させることができる。
【0046】
また、本例のガスセンサ1も、上記実施例1に示したΔX1≦1/4W1の関係及びΔY1≦1/2W1の関係を有していることが好ましい。さらに、上記実施例2に示したΔX2≦1/4W2の関係及びΔY2≦1/2W2の関係を有していることが好ましい。
本例のガスセンサ1のその他の構成及び図中の符号は上記実施例1、2と同様であり、本例のその他の作用効果は、上記実施例1、2と同様である。
【0047】
図12には、ずれ量ΔX3と、ガスセンサ1による特定ガス成分濃度の検出誤差の比との関係を示す。同図においては、ずれ量ΔX3が0(ゼロ)の場合の検出誤差を基準値(1倍)として、ずれ量ΔX3が変化したときの検出誤差の基準値に対する増加比(倍)を示す。また、ガスGの酸素濃度が20%の場合について示す。同図に示すごとく、ずれ量ΔX3が1/8W3を超える付近から検出誤差は徐々に増加し、ずれ量ΔX3が1/4W3を超える付近から検出誤差は急激に増加していることがわかる。
【0048】
例えば、モニタ電極22が狭小空間105の幅方向Wの中心側に位置し、センサ電極23が幅方向Wの外側に位置することになると、ガスG中の残留酸素は、センサ電極23に比べてモニタ電極22の方がより多く分解しやすくなると考えられる。この場合、残留酸素によってモニタセル42とセンサセル43とに流れる酸素イオン電流の量が異なり、ガスセンサ1による検出誤差が大きくなる。
このことより、ずれ量ΔX3は、ΔX3≦1/4W3の関係を有していることが好ましく、ΔX3≦1/8W3の関係を有していることがさらに好ましいといえる。
【0049】
(実施例4)
本例は、
図13、
図14に示すごとく、ガスセンサ1が上記実施例1の構成に加えて、第2ポンプセル45を有している場合について示す。
第2ポンプセル45は、固体電解質体2のガス室101側の第1主面201に、ガスGに曝される第2ポンプ電極25を有している。第2ポンプ電極25は、固体電解質体2の第1主面201において、ポンプ電極21とモニタ電極22及びセンサ電極23との間に配置されている。なお、ポンプセル41におけるポンプ電極21が第1ポンプ電極となる。
【0050】
第2ポンプセル45は、第2ポンプ電極25と基準電極24との間に電圧を印加して、ガス室101におけるガスG中の酸素濃度を調整するよう構成されている。ガス室101においては、第1ポンプセル41と第2ポンプセル45とによって、2段階にガスG中の酸素濃度が調整される。
本例のガスセンサ1においては、ガス室101におけるガスG中の酸素濃度は、始めにポンプセル41によって調整され、その後、第2ポンプセル45によってさらに精密に調整される。そのため、モニタ電極22及びセンサ電極23に到達するガスG中の酸素濃度を、より精密に制御することができ、ガスセンサ1の検出誤差をより小さくすることができる。
【0051】
本例のガスセンサ1においては、モニタ電極22及びセンサ電極23に到達するガスG中の酸素濃度は、最終的に第2ポンプセル45によって調整されており、第2ポンプ電極25の幅方向Wの中心位置がO1となる。そして、第2ポンプ電極25の幅をW1としたとき、モニタ電極22とセンサ電極23との隙間Sの幅方向Wの中心位置O2のずれ量ΔX1は、ΔX1≦1/4W1の関係を有している。また、第2ポンプ電極25の幅方向Wの中心位置O1に対する、モニタ電極22の側面221の位置及びセンサ電極23の側面231の位置ΔY1は、ΔY1≦1/2W1の関係を有している。
言い換えれば、モニタ電極22の側面221の位置は、第2ポンプ電極25の側面251の位置と同じ又は第2ポンプ電極25の側面251の位置よりも内側に位置しており、センサ電極23の側面231の位置は、第2ポンプ電極25の側面251の位置と同じ又は第2ポンプ電極25の側面251の位置よりも内側に位置している。
【0052】
本例においては、第2ポンプ電極25の配置位置を通過した後のガスGが、モニタ電極22とセンサ電極23とにできるだけ同等に接触するようにすることができる。そのため、モニタ電極22とセンサ電極23とにおいて、ガスG中の残留酸素を分解する量をできるだけ同等にすることができる。
本例のガスセンサ1のその他の構成及び図中の符号は上記実施例1、2と同様であり、本例のその他の作用効果は、上記実施例1、2と同様である。
【0053】
(実施例5)
本例は、
図15、
図16に示すごとく、ガスセンサ1が上記実施例1の構成に加えて、ポンプ制御セル46を有している場合について示す。
ポンプ制御セル46は、固体電解質体2のガス室101側の第1主面201に、ガスGに曝されるポンプ制御電極26を有している。ポンプ制御電極26は、固体電解質体2の第1主面201において、ポンプ電極21とモニタ電極22及びセンサ電極23との間に配置されている。
【0054】
ポンプ制御セル46は、ポンプ制御電極26と基準電極24との間に発生する起電力から、ガス室101におけるガスG中の酸素濃度を検出するよう構成されている。本例のガスセンサ1においては、ガス室101におけるガスG中の酸素濃度は、ポンプ制御セル46に発生する起電力が所定の値になるようにポンプセル41を制御することによって調整される。ポンプ制御電極26は、ガスGの流れ方向において、モニタ電極22及びセンサ電極23が配置された位置の直前の位置に配置されている。そのため、本例においては、モニタ電極22及びセンサ電極23に到達するガスG中の酸素濃度をより精密に制御することができ、ガスセンサ1における検出誤差をより小さくすることができる。
【0055】
本例のガスセンサ1においては、モニタ電極22及びセンサ電極23に到達するガスG中の酸素濃度は、最終的にポンプ制御セル46によって調整されており、ポンプ制御電極26の幅方向Wの中心位置がO1となる。そして、ポンプ制御電極26の幅をW1としたとき、モニタ電極22とセンサ電極23との隙間Sの幅方向Wの中心位置O2のずれ量ΔX1は、ΔX1≦1/4W1の関係を有している。また、ポンプ制御電極26の幅方向Wの中心位置O1に対する、モニタ電極22の側面221の位置及びセンサ電極23の側面231の位置ΔY1は、ΔY1≦1/2W1の関係を有している。
【0056】
本例においては、ポンプ制御電極26の配置位置を通過した後のガスGが、モニタ電極22とセンサ電極23とにできるだけ同等に接触するようにすることができる。そのため、モニタ電極22とセンサ電極23とにおいて、ガスG中の残留酸素を分解する量をできるだけ同等にすることができる。
本例のガスセンサ1のその他の構成及び図中の符号は上記実施例1、2と同様であり、本例のその他の作用効果は、上記実施例1、2と同様である。