特許第6342607号(P6342607)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6342607
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】通気靴
(51)【国際特許分類】
   A43B 7/08 20060101AFI20180604BHJP
   A43B 13/20 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   A43B7/08
   A43B13/20 Z
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-248019(P2012-248019)
(22)【出願日】2012年11月12日
(65)【公開番号】特開2014-94198(P2014-94198A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】390010571
【氏名又は名称】株式会社リーガルコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100076369
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正治
(74)【代理人】
【識別番号】100144749
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正英
(72)【発明者】
【氏名】加藤 修
(72)【発明者】
【氏名】竹島 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】若松 隆行
【審査官】 栗山 卓也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第02441879(US,A)
【文献】 特開昭59−055201(JP,A)
【文献】 特開平10−085002(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3110882(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 7/08
A43B 7/06
A43B 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、表底と、表底の踵側に取り付けられた積上げと、積上げの下に取り付けられた化粧と、アッパーを備え、靴の内部に通気機構を備えた通気靴であって、
前記表底は少なくともその表面に通気溝を備え、
前記通気溝は踵側から爪先側に細長の溝であり、この溝は表底の表面に開口しており、
前記積上げは前記表底の踵側の形状と略同じ形状の板状であり、その略中央部に、その板厚方向に貫通するエアーホールを備えており、
前記化粧は積上げと略同じ輪郭形状の板状のベースの略中央部に可動部を備え、ベースと可動部は異なる材質製であり、可動部はベースの略中央部の可動部取付け箇所に面接触可能な肉厚の板状であり、ベースの可動部取付け箇所の内側に、ベースに囲われてベースに固定されており、固定された可動部は、可動部底面がベースの底面よりも外側に突出しており、可動部底面に外力が加わると肉厚方向内側に変形し、当該外力が開放されると肉厚方向外側に復元可能な可撓性を備えており、
前記化粧のベースが前記表底の踵側底面に固定された積上げの裏側に固定され、その固定は化粧の可動部が積上げのエアーホールの下に位置するように配置固定されて、可動部はその底面に外力が付加されると肉厚方向内側に変形して、前記エアーホールに空気を送ることができ、その空気がエアーホール‐表底の通気溝‐靴の内部に排出され、可動部が前記外力の開放により肉厚方向外側に復元すると、少なくとも靴内の空気が前記表底の通気溝を通ってエアーホール側に吸引され、
歩行により前記外力の付加と開放が繰り返されると、前記変形と復元が繰り返されて前記空気の排気と吸引が繰り返されるようにした、
ことを特徴とする通気靴。
【請求項2】
請求項記載の通気靴において、
表底の上面側に、連通部を備えた中底を備え、
前記中底の連通部が少なくとも表底の通気溝と連通するように配置されて、エアーホール‐表底の通気溝‐中底の連通部‐靴内が連通する、
ことを特徴とする通気靴。
【請求項3】
請求項記載の通気靴において、
中底の裏面側に通気性のある中物を備え、
中物はメッシュ状又はハニカム構造であって通気性を備え、
積上げのエアーホール‐表底の通気溝‐通気性ある中物‐中底の連通部‐靴内が連通する、
ことを特徴とする通気靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行により靴内の空気が排出され、外部の空気が吸引される(吸排気される)通気性のある靴(通気靴)に使用する化粧(トップリフト)と、化粧を備えた通気靴に関するものである。
【背景技術】
【0002】
靴の開発においては、靴内部の通気性の確保と防水性(防湿性)の確保という二つの課題がある。従来、通気性を確保するための靴として、表底に通気溝を備えたものが提案されている(特許文献1)。特許文献1に開示された靴は、化粧の中央部に、化粧と別体成型されたダイヤフラムが設けられ、歩行に伴うダイヤフラムの圧縮と復元(上下動)によって、空気室−空気入口の経路で靴内への空気の送り出し(排出)と、その逆の経路での空気入口―空気室への空気の吸入が行われるように構成されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3110882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記特許文献1記載のダイヤフラムが設けられた化粧は、靴の中で最も摩耗しやすい部分の一つであり、化粧の摩耗によって、ダイヤフラムと化粧との接合部分から水が浸入して防水性を確保できないおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、靴内部の通気性(吸排気)を高めることができる化粧と、通気性と防水性の双方を兼ね備えた通気靴を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の通気靴に使用される化粧は、靴の内部に通気機構を備えた通気靴の表底の踵側に取付ける化粧であって、前記化粧は表底の踵側底面又は当該踵側底面に取付ける積上げの底面に重ねて固定するベースと、前記表底の踵側に形成された通気孔又は積上げに形成されたエアーホールに宛がわれる可動部を備え、前記可動部はベースの一部にベースと一体に成型され、当該可動部の底面はベースの底面よりも外側に突出し、前記可動部は前記底面に外力が加わると肉厚方向内側に変形し、当該外力が開放されると外側に復元可能な可撓性を備えたものである。前記化粧は、可動部の上面(表面)の全部又は一部に窪んだ凹部を備えたものとすることができる。
【0007】
本発明の通気靴は、表底の踵側に化粧を備え、内部に通気機構を備えた通気靴であって、前記表底は少なくともその表面に通気溝を備え、前記化粧はベースと可動部を備えた前記化粧であり、前記化粧のベースが表底の踵側に重ねて固定されて、可動部が表底の踵側に形成された通気孔の下に宛がわれ、前記可動部は外力が加わると表底の通気孔側に変形して、少なくとも当該通気孔内の空気が靴内に排出され、前記外力が開放されると復元して、少なくとも靴内の空気が前記通気孔側に吸引され、前記外力の付加と開放が繰り返されると、前記変形と復元が繰り返されて空気が吸排出されるものである。
【0008】
本発明の通気靴は、表底の踵側に化粧を備え、内部に通気機構を備えた通気靴であって、前記表底は少なくともその表面に通気溝を備え、前記化粧はベースと可動部を備えた前記化粧であり、前記化粧のベースが表底の踵側に配置された積上げの底面に固定されて、可動部が積上げに形成されたエアーホールの下に宛がわれ、前記可動部は外力が加わると前記エアーホール側に変形して、少なくとも当該連通孔内の空気が靴内に排出され、前記外力が開放されると復元して、少なくとも靴内の空気が前記エアーホール側に吸引され、前記外力の付加と開放が繰り返されると、前記変形と復元が繰り返されて空気が吸排出されるものである。
【0009】
前記通気靴は、表底の上面側に連通部を備えた中底を備え、前記中底の連通部が少なくとも表底の通気孔と連通するように配置されたものとすることもできる。これら通気靴は、表底の上面側に通気性のある中物を備えたものとすることもできる。中物の上には連通部を備えた中底や中底の代用となる他のものを配置することもできるが、場合によってはそれらを設けなくともよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の化粧には、次のような効果がある。
(1)ベースと可動部が一体成型されているため、ベースと可動部の境界部分から水が浸入せず、防水性の高い化粧となる。
(2)可動部がその底面に加わる外力によって内側に変形してダイヤフラムの効果を奏するため、靴の表底又は表底の踵側に取付けられた積上げの底に取付ければ、化粧上方側にある空気を靴内に排出できる。
(3)可動部の上面側に凹部がある場合は、凹部が空気溜まりにもなるため、給排気量が多くなる。
【0011】
本発明の通気靴には、次のような効果がある。
(1)ベースと可動部が一体成型されている化粧が取付けられているため、ベースと可動部の間に隙間がなく、化粧から靴内に水が浸入するおそれがなく、靴底の防水性(防湿性)を確保することができる。
(2)可動部が、歩行により可動部底面に加わる外力によって変形して靴内が給排気されるので、歩行する度に靴内が通気される。
(3)可動部の上面側に凹部を備えた化粧を使用した場合は、給排気量が多くなり、靴内の通気性が一層向上する。
(4)エアーホールを備えた積上げを使用した場合も給排気量が多くなり、靴内の通気性が一段と向上する。
(5)表底の上に通気性のある中物を設けた場合、中物内も空気溜まりとなるため通気性が良くなる。中物の上に通気部を備えた中底を配置すれば、表底と中底との間の通気性が向上する。
(6)中物の上に通気部を備えた中底や中底に代わる他のものを配置すれば、中物が表底の上で位置ずれせず安定し、靴を履いても違和感がなく、むしろ中物の弾性でクッション性が向上するので、履き心地が良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の化粧を備えた通気靴の一例を示す分解斜視図。
図2】(a)は本発明の化粧を備えた通気靴の一例を示す縦断面図、(b)は図1のB−B断面図、(c)は本発明の化粧の他例を示すものであって半円状の可動部を化粧の中央部分に対向配置した場合の底面図、(d)は本発明の化粧の他例を示すものであって扇状の可動部を化粧の中央部分に円形に配置した場合の底面図、(e)は本発明の化粧の他例を示すものであって小さな円形の可動部を二つ以上(四つ)設けた場合の底面図。
図3】(a)は本発明の化粧の一例を示す底面斜視図、(b)は(a)の底面図、(c)は可動部を湾曲状に突出させた場合の縦断面図、(d)は可動部を平面状に突出させた場合の縦断面図、(e)はベースと積上げを兼用構造とした場合の縦断面図。
図4】(a)は本発明の化粧の他例を示す底面図、(b)は(a)のC−C断面図、(c)は(a)のD−D断面図。
図5】(a)は中入れ底を設けた場合の図1のA−A断面図、(b)は中入れ底を設けない場合の図1のA−A断面図。
図6】本発明の通気靴の空気の流れの一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態)
本発明の化粧及び通気靴の一例を、図面を参照して説明する。本願の通気靴20は化粧1を備えているものであればどのような製法で作られた靴であってもよいが、ここでは、ウェルトセメント製法で製造された紳士靴を一例に説明する。以下に示す形状、構造、材質等はあくまでも一例であり、前記課題を解決可能な限り、それ以外の形状、構造、材質等であってもよい。
【0014】
図1に示す通気靴20は化粧1と積上げ2と本底(表底)3と中物4とふまず芯(シャンク)5と中底6とアッパー7を備えている。これら部材のうち、化粧1は積上げ2の底面に、積上げ2は表底3の底面に夫々接着固定され、シャンク5は中底6の裏面に接着剤や固定具等で固定されており、中物4は表底3と中底6との間に配置されている。なお、図示は省略してあるが、この通気靴20には前記部材の他に、先芯や月型芯(カウンター)といった通常の紳士靴に設けられている各種部材を設けることもできる。また、表底3と中底6の間には、必要に応じて、中底6とほぼ同じ形状で、中底6よりも薄く、中底6と同じ位置に通気孔19を備えた中入れ底18を設けることもできる。中入れ底18は発泡ゴム製、不織布製といった各種材質製のものを用いることができる。中入れ底18は、接着剤によって表底3に固定することができる。
【0015】
前記化粧1は、図1図2(a)〜(e)、図3(a)〜(e)、図4(a)(b)及び図6に示すようにベース8と可動部9を備えている。ベース8はその肉厚方向に凹凸変形し難い(可撓性が乏しい)が、可動部9はその肉厚方向に凹凸変形し易い可撓性がある(フレキシブルである)。ベース8及び可動部9をゴム製或いは樹脂製とする場合、可動部9をベース8よりも軟質材製にして変形し易くするとか、可動部9がベース8よりも硬質の場合は可動部9をベース8よりも肉薄の板状にして変形し易くすることができる。図1に示す例では、可動部9の形状を底面視略円形にしてあるが、形状は底面視矩形とか他の形状とすることもできる。可動部9は図2(a)(b)、図3(c)〜(e)及び図4(b)に示すように、その底面9aがベース8の底面8aよりも外側(下側)に突出している。可動部9はその底面9aに外側から外力が付加されると、化粧1の肉厚方向に弾性変形し、外力が開放されると元の突出位置に復元するようにしてある。可動部9の下方への突出寸法は任意に設計することができるが、ベース8の底面8aから1〜2mm程度とするのが好ましい。1mm以下だと可動部9の変形による空気圧が弱く、2mm以上だと靴に取付けて歩行すると使用者が異物感を感じやすくなる。この数値はあくまでも一例であり、この数値に限定されるものではない。可動部9の突出形状は、図2(a)(b)、図3(c)(e)、図4(b)及び図6のような湾曲状(球面状)とすることも、図3(d)のような矩形状とすることもできる。
【0016】
図2(a)、図3(c)〜(e)、図4(b)及び図6に示すように、可動部9の表面(上面)9bは凹状に窪ませてあり、その凹状の窪み部分(凹部)10に空気が溜まるようにしてある。凹部10の深さや曲率は可動部9や化粧1の大きさ(寸法)又は形状などに応じて適宜設計することができる。凹部10は必要に応じて設ければよく、図2(b)に示すように平坦でもよい。可動部9はベース8よりも肉薄にしておくことも、肉厚にしておくこともできる。肉薄にする場合、例えば、その厚さを4mm程度とすることができる。
【0017】
ベース8と可動部9は、例えば、天然ゴム(NR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)に、補強用のホワイトカーボン(二酸化珪素と炭素を混合したもの)を混合した材料製とすることができる。SBR(合成ゴム)として、例えば、旭化成ケミカルズ株式会社製のアサプレン(登録商標。スチレンとブタジエンのブロックコポリマー。)を用いることができる。ベース8と可動部9の硬度は、前記素材の混合比率や素材の硬度等を変えることによって調節することができ、例えば、ベース8の硬度をJIS A規格 84度(HS84)、可動部9の硬度をJIS A規格 50度(HS50)とするとか、これとは逆にベース8の硬度をJIS A規格 50度(HS50)、可動部9の硬度をJIS A規格84度(HS84)とすることもできる。この数値は一例であり、硬度はこれ以外であってもよい。
【0018】
図1では、化粧1の中央部分に可動部9を設けてあるが、可動部9はこの位置以外に設けることもでき、例えば、化粧1の外側後部に設けることができる。通常、歩行時には踵の外側が最初に地面に接触し(接地し)、その後、踵の内側方向と足先方向に向けて滑らかに接地するため、最初に接地する化粧1の外側後部に設けることによって、可動部9の底面9aに外力が加わりやすくなり、靴内部での空気の流れがスムーズになる。
【0019】
可動部9は一つの化粧1に二以上設けることもできる。例えば、図2(c)に示すように半円状の可動部9を二つ離して化粧1の中央部分に対向配置するとか、図2(d)に示すように円形の1/4の扇形の可動部9を離して円形(ほぼ円形)に配置するとか、図2(e)に示すように小さな円形の可動部9を複数(図では四個であるが、二個以上)設けることもできる。可動部9の形状は円形状や半円状、扇状以外であってもよく、例えば、四角形や三角形等の多角形や星形などの形状とすることもできる。
【0020】
図1に示す積上げ2は、化粧1と表底3の間に設けられる部材であり、その中央部に、積上げ2の肉厚方向に貫通するエアーホール11が設けられている。図示する例ではエアーホール11はひょうたん型であるが、この形状は円形や多角形といった他の形状とすることもできる。積上げ2は接着剤、両面テープ、ステープル、釘等によって表底3の底面に固定してある。積上げ2は各種材質製とすることができ、例えば、革、EVAスポンジ、ポリウレタン(PU)、サーモプラスチックラバー(TPR)、ABS(強化プラスチック)製とすることができる。化粧1と表底3の間に積上げ2を設ける代わりに、図3(e)に示すようにベース8の上部を可動部9の表面側9bよりも上方に突出させ、その突出部8b間の空隙をエアーホール11とすることもできる。
【0021】
前記表底3は地面に接触する底材であり、踵側の中央部に肉厚方向に貫通する通気孔12が設けられている。表底3はこの通気孔12が前記積上げ2のエアーホール11と連通するようにして積上げ2に固定されている。表底3の上面3aには多数本の通気溝13が表底3の長手方向に沿って形成され(図1)、それら複数本の通気溝13が表底3の長手方向中央付近で合流して通気孔12に連通されている。通気溝13の深さ、幅、本数は任意に設計することができるが、いずれの場合も空気が通りやすい(流通可能な)深さや幅とするのが好ましい。複数本の通気溝13は外側広がりに斜めに設けることもできる。表底3は各種材質製とすることができ、積上げ2と同様、革、EVAスポンジ、ポリウレタン(PU)、サーモプラスチックラバー(TPR)製、またはゴム製等とすることができる。前記表底3は前記構造以外のものでもよく、例えば、踵部分が裏面側に突出したユニットソールなどであってもよい。
【0022】
前記中物4は通気性を備えたものであり、通気溝13から送り出される空気が通過可能な通孔を備えている。図示した中物4は方形であり、表底3の先方寄り(踏み込み部分)に設けられているが、中物4の形状や大きさはそれに限られず、例えば、中底6と同じ形状やサイズであってもよい。中物4は通気性があればメッシュ状、ハニカム構造、その他の適宜構造、材質製であってもよく、例えば、株式会社ユニチカテクノス製のキュービックアイ(登録商標)、東洋紡株式会社製のBREATHAIR(登録商標)、旭化成せんい株式会社製のFUSION(登録商標)などを用いることができる。
【0023】
前記中底6は表底3の上面側に設けるものであり、踵部6aと踏み込み部6bの夫々には、通気用の小孔(連通部)14が複数個設けられている。小孔14の数、大きさ、形状は中底6の大きさや形状などに応じて任意に設計することができる。小孔14の代わりに貫通溝などを設けることもできる。中底6には豚革製のものなどを用いることができるが、豚革製以外のものであってもよい。
【0024】
図1及び図5(a)(b)に示すように、中底6の裏面側には細革(ウェルト)16を取付けるためのリブ15が設けられ、その内側に中物4が配置される。リブ15は細革16を用いる製法(例えば、ウェルトセメント製法やグッドイヤーウェルト製法)で紳士靴を製造する際に設ければよく、細革16を用いない製法で製造する場合には設ける必要はない。中底6の裏面側の踵寄りにはシャンク5が設けられ、足のふまずアーチ部の荷重を支持し、形状を保持できるようにしてある。
【0025】
図1及び図5(a)(b)に示すアッパー7は、甲革7aや裏革7bなどを縫い合わせたものであり、既存のものを用いることができる。
【0026】
(作用)
本発明の通気靴20における空気の流れの一例を、図6を参照して説明する。図6は本発明の通気靴20に足F(二点鎖線)を入れた状態を示したものである。歩行に伴って可動部9の底面9aが地面に接地すると、可動部9に外力がかかり、エアーホール11内及び凹部10に溜まっている空気が、積上げ2のエアーホール11−通気孔12−表底3の通気溝13を通って靴の先方側に流れ、中物4−中底6の小孔14から靴内に流れ、足Fとアッパー7の間を通って履き口Wから外部へ排出される。通気孔12を通過した空気は、中底6の踵部6a側の小孔14から外部へ排出されることもある。
【0027】
歩行に伴って可動部9の底面9aが地面から離れると、可動部9は元の位置まで復元し、それに伴って新たな空気が靴の履き口Wから足Fの収容部分V−中底6の小孔14−中物4−表底3の通気溝13−通気孔12−積上げ2のエアーホール11の順に吸引(吸気)される。履き口Wから吸引された空気は、中底6の小孔14を通過後、直接通気孔12及びエアーホール11に吸引されることもある。
【0028】
歩行の繰り返しにより、可動部9の押し込みと戻りが繰り返され、それに伴って前記排気や吸気が行われるため、靴の内部(特に収容部分V)が常に通気性の良い状態になり、長時間靴を履き続けても靴内が湿気過剰にならず、足蒸れし難く、快適に着用できる。
【0029】
本発明の化粧1や通気靴20は、紳士靴に限らず、ウォーキングシューズ等にも利用できる。ウォーキングシューズのような屈曲性に靴底が望まれる靴の場合は、前記中底6やシャンク5等は不要である。使用部材、それらの形状、構造、寸法、取付け位置、取付け方法等は靴の用途、種類に応じて設計変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
前記実施形態では、ウェルトセメント製法で製造された紳士靴を一例として説明しているが、本発明の化粧は、他の製法(例えば、グッドイヤーウェルト製法、マッケイ製法、ステッチダウン製法、ノルウェージャン製法、セメント製法、バルカナイズド製法など)で製造される紳士靴に設けることもできる。
【符号の説明】
【0031】
1 化粧
2 積上げ
3 表底
3a (表底の)上面
4 中物
5 シャンク
6 中底
6a 踵部
6b 踏み込み部
7 アッパー
7a 甲革
7b 裏革
8 ベース
8a (ベースの)底面
8b (ベースの)突出部
9 可動部
9a (可動部の)底面
9b (可動部の)表面側
10 凹部
11 エアーホール
12 通気孔
13 通気溝
14 小孔(連通部)
15 リブ
16 細革(ウェルト)
18 中入れ底
19 (中入れ底の)通気孔
20 通気靴
F 足
V 収容部分
W 履き口
図1
図2
図3
図4
図5
図6