(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
水素含有水としての水素水や炭酸水素水は、水素に二酸化炭素を加えた混合ガスを原料水にファインバブル分散処理して製造される。つまり、この製造方法は
図1に示したような工程を有し、貯留した原料水(原料水供給n1)中でファインバブルを生成して原料水中にファインバブルを分散させ(ファインバブル分散処理n2)、水素と二酸化炭素のファインバブルが存在する状態を作り(ファインバブル存在n3)、水素の溶解を図る(混合ガス溶解n4)。つまり水素と二酸化炭素を、ファインバブルを用いて原料水に導入する。
【0027】
原料水には、たとえば上水、飲料水、飲料可能な自然水、気体吸蔵物質を含有した水などを、水素含有水の用途に応じて使用できる。
【0028】
ファインバブルを生成させる装置としては、ファインバブルの生成が可能なすべての方式のものが使える。たとえば、バブルせん断方式、加圧溶解方式、多孔質方式などのファインバブル生成器がある。
【0029】
ファインバブル分散処理は、原料水中の溶存水素濃度が所望の濃度になるまで行う。好ましくは、原料水の溶存水素濃度の過飽和状態を作出するまで行う。過飽和状態の溶存水素濃度は、原料水の成分や量、水温、ファインバブル供給量(流量)、混合ガス中の水素濃度などのファインバブル生成条件に基づく溶存水素濃度の安定値よりも高い値まで上昇する。
【0030】
溶存水素濃度の上昇は、原料水の溶存水素濃度を溶存水素計で測定したり、溶存二酸化炭素濃度を溶存二酸化炭素計やガスクロマトグラフィー、化学滴定などで測定したりして検出できる。
【0031】
過飽和状態作出後は、溶存水素濃度が安定値よりも高い値を示している時にファインバブル分散処理を終了する。ファインバブル分散処理の終了は、溶存水素濃度の上昇を検出した信号に基づいて電気的な制御でファインバブルを生成させる装置を停止したり、装置やその取り付け構造によっては原料水の中から取り出したりして行う。
【0032】
原料水中に分散したファインバブルは、水素を大量に溶解する。溶存水素濃度が高いので、時間が経過して溶存水素濃度が下がっても、溶存水素濃度の比較的高い状態が持続する。
【0033】
前述のような方法で水素水または炭酸水素水を製造したときの実験結果を次に示す。
【0034】
[実験1]
この実験では、水素に混合するガスの種別と水素濃度による溶存水素濃度の違いを確認した。
【0035】
実験は、タンク内に40Lの原料水を貯留し、原料水中でファインバブル生成器によりファインバブルを生成した。ファインバブルの生成条件は次のとおりである。
【0036】
ファインバブル生成器:株式会社Ligaric製 ナノバブル生成装置「バヴィタス」(登録商標。以下同じ) HYK−15−SD (以下「バヴィタス」という)
原料水:脱イオン水
水温:18±2℃
流量:800cc/min
使用する混合ガス種:水素と二酸化炭素の混合ガス、水素と窒素の混合ガス
混合ガスの水素濃度:4%、8.3%、20%、50%
溶存水素濃度計:東亜デーケーケー株式会社製 DH35−A
なお、水素濃度が8.3%の混合ガスについては、水素と二酸化炭素の混合ガスについてのみ行った。水素濃度8.3%は、ISO10156;1996による水素と二酸化炭素の可燃性ガスと判断される爆発下限未満である。
【0037】
ファインバブル生成器を駆動すると、原料水の溶存水素濃度は上昇し、駆動の継続より、ファインバブル生成条件に応じて一定の安定値になる。このようなファインバブル生成器運転中の溶存水素濃度と、溶存水素濃度が安定値になってから運転を停止した後の溶存水素濃度を溶存水素濃度計で測定した。
【0038】
この結果、表1のような結果が得られた。表1中、「H
2濃度」は混合ガスの水素濃度、「混合ガス種」は水素に混合したガスの種類、「安定値」はファインバブル生成器運転中の安定値、「DH激減」はDH、すなわち溶存水素濃度(Dissolved Hydrogen)の激減がファインバブル生成器運転停止後にあったか否か(あった場合には丸印)、「DHの減少値」は「DH激減」により減少した溶存水濃度、「DH半減期」は溶存水素濃度がファインバブル生成器の運転停止から安定値の半分になるまでの時間である。
【0039】
【表1】
表1のうち安定値をグラフに表したものが
図2である。
図2に示すように、いずれの混合ガスの場合でも水素濃度が高いほど、溶存水素濃度の安定値は高くなることがわかる。また、水素に二酸化炭素を混合した混合ガスの方が、窒素を混合した混合ガスよりも高い安定値が得られる。しかもその溶存水素濃度は、水素水の溶存水素濃度の目安とされる0.1ppmを、水素濃度が低い4%の場合でも超えている。
【0040】
そこで、水素濃度が4%の場合の溶存水素濃度の変化を分析したところ、
図3のグラフに示したような特徴が確認できた。
【0041】
水素と窒素の混合ガスの場合には溶存水素濃度が安定値になった後、前述のように(表1参照)溶存水素濃度の激減(DH激減)が発現し、その後、溶存水素濃度は徐々に減少するだけであるが、水素と二酸化炭素の混合ガスの場合には
図3に示したように、溶存水素濃度が安定値(0.114ppm)となる前に安定値の3倍ほど高い溶存水素濃度(0.302ppm)となる現象がみられる。このような高濃度になる値を以下、「ピーク値」という。ピーク値が発現した後、溶存水素量は安定値まで降下し、その後DHの激減はなく、緩やかな曲線を描いて徐々に低下する。
【0042】
混合ガスの水素濃度が4%のもののほか、8.3%、20%、50%の混合ガスについても分析した結果を表にしたものが表2である。分析は、「安定値からの半減期」、「ピーク値からの半減期」、「0.1ppm以上の維持時間」についても行った。
【0043】
【表2】
また、溶存水濃度のピーク値と安定値について、グラフに表すと
図4のようになる。表2、
図4からわかるように、水素と二酸化炭素の混合ガスの場合には、いずれの水素濃度の場合でもピーク値がみられる。一方、水素と窒素の混合ガスの場合には、いずれの水素濃度の場合においてもピーク値はみられない。
【0044】
溶存水素濃度の持続期間については、表2からわかるように、ピーク値からの半減期は、水素と二酸化炭素の混合ガスの場合、水素濃度が4%のものでも20%のものでも、安定値からの半減期に比べて短いものの、0.1ppm以上の維持時間は、水素濃度が4%のものでも20%のものでも、ピーク値からの維持時間のほうが安定値からの維持時間よりも長い。水素濃度4%の場合には、安定値からの維持時間が48.5分であるのに対して、ピーク値からの維持時間が250分と、0.1ppmを維持できる時間は約5倍も長い。
【0045】
このような結果を得たので、水素濃度4%の水素と二酸化炭素の混合ガスでファインバブル分散処理をして、溶存水素濃度のピーク値においてファインバブル分散処理を終了する実験を行った。
【0046】
ファインバブル分散処理を終了した後の溶存水素濃度の変化を測定してみたところ、
図3のグラフに示すような結果が得られた。
【0047】
すなわち、ピーク値の高濃度状態から徐々に溶存水素濃度が低下するものの、300分を経過しても、安定値になるまでファインバブル処理を行ったものよりも、高い溶存水素濃度を維持していることがわかる。つまり、ファインバブル分散処理を溶存水素濃度のピーク値において終了すると、溶存水素濃度の持続性が高い。
【0048】
[実験2]
この実験では、溶存水素濃度についてのファインバブル分散処理の流量依存性について確認した。
【0049】
実験は、実験1の場合と同じく、タンク内に40Lの原料水を貯留し、原料水中でファインバブル生成器によりファインバブルを生成した。ファインバブルの生成条件は次のとおりである。
【0050】
ファインバブル生成器:株式会社Ligaric製 ナノバブル生成装置「バヴィタス」 HYK−15−SD
原料水:脱イオン水
水温:18±2℃
流量:300cc/min、800cc/min、1300cc/min、1800cc/min
使用する混合ガス種:水素と二酸化炭素の混合ガス
混合ガスの水素濃度:4%
溶存水素濃度計:東亜デーケーケー株式会社製 DH35−A
この結果、表3、
図5のような結果が得られた。すなわち単位時間当たりの流量が多いほど、溶存水濃度のピーク値も安定値も上昇する。ファインバブル分散処理を、より短時間で大量に激しく行う方が高いピーク値と安定値を得られることがわかる。
【0051】
【表3】
[実験3]
この実験では、ファインバブル分散処理の有効性について確認した。
【0052】
実験は、実験1の場合と同じく、タンク内に40Lの原料水を貯留し、原料水中でファインバブル生成器によりファインバブルを生成した。比較例として、ファインバブル生成器に代えてエアストーンを用いたエアレーションを行った。ファインバブルの生成とエアレーションの条件は次のとおりである。
【0053】
ファインバブル生成
・ファインバブル生成器:株式会社Ligaric製 ナノバブル生成装置「バヴィタス」 HYK−15−SD
・・ガス流量:800cc/min
・・水量:26L/min
・ファインバブル生成器:ニッタ株式会社製 気液せん断方式マイクロバブル発生器「泡多郎」(登録商標。以下同じ) BL12AA−12−D4(直接操作タイプ) (以下「泡多郎」という)
・・ガス流量:30cc/min
・・水量:3L/min
エアレーション
・エアストーン:市販の水槽用のエアストーン
・・エアの供給量:5000cc/min
原料水:脱イオン水
水温:18±2℃
使用する混合ガス種:水素と二酸化炭素の混合ガス
混合ガスの水素濃度:4%
溶存水素濃度計:東亜デーケーケー株式会社製 DH35−A
なお、「バヴィタス」と「泡多郎」は、共にバブルせん断方式でファインバブルを生成するものであるが、「泡多郎」は「バヴィタス」よりも小型である。
【0054】
この結果、表4、
図6のような結果が得られた。すなわちファインバブル生成を行うバヴィタスと泡多郎を用いた場合には溶存水素濃度が0.3ppmほどの高いピーク値が得られるが、エアストーンを用いた場合には0.1ppmにも満たない極低い値にとどまる。安定値については、泡多郎ではバヴィタスに比べて値は低いが、それでもエアストーンの場合よりも高い。
【0055】
【表4】
このような結果から、溶存水素濃度の高いピーク値を出すためにはファインバブル分散処理が有効であることがわかる。
【0056】
[実験4]
この実験では、ファインバブルの生成方式による違いがあるかについて確認した。
【0057】
前述の「バヴィタス」と「泡多郎」は能力の差はあるが、いずれもバブルせん断方式でファインバブルを生成するものであった。加圧溶解方式のものでも前述と同様にピーク値が出現し、高い溶存水素濃度が得られるかを確認した。
【0058】
実験は、実験1の場合と同じく、タンク内に40Lの原料水を貯留し、原料水中でファインバブル生成器によりファインバブルを生成した。ファインバブル生成器として、前述の「バヴィタス」および「泡多郎」に加えて、加圧溶解方式のファインバブル生成器(シグマテクノロジー有限会社製)(以下「シグマ」という)を使用した。
【0059】
ファインバブルの生成条件は次のとおりである。
【0060】
・株式会社Ligaric製 ナノバブル生成装置「バヴィタス」 HYK−15−SD
・・ガス流量:800cc/min
・・水量:26L/min
・ニッタ株式会社製 気液せん断方式マイクロバブル発生器「泡多郎」 BL12AA−12−D4(直接操作タイプ)
・・ガス流量:30cc/min
・・水量:3L/min
・シグマテクノロジー有限会社製 ナノバブル発生装置 ΣPM−15KYC
・・ガス流量:500cc/min
・・水量:4L/min
原料水:脱イオン水
水温:18±2℃
使用する混合ガス種:水素と二酸化炭素の混合ガス
混合ガスの水素濃度:4%
溶存水素濃度計:東亜デーケーケー株式会社製 DH35−A
この結果、
図7に示したような結果が得られた。ファインバブルの生成能力に違いがあるため単純に比較はできないものの、加圧溶解方式で生成されたファインバブルを利用した場合でもピーク値が出現することがわかる。多孔質方式で生成されるファインバブルでも同様に、ピーク値を出現させることができると予想できる。
【0061】
[実験5]
この実験では、溶存水素濃度と溶存二酸化炭素濃度の関係を調べた。
【0062】
実験は、実験1の場合と同じく、タンク内に40Lの原料水を貯留し、原料水中でファインバブル生成器によりファインバブルを生成した。ファインバブル生成器として、前述の「バヴィタス」および「泡多郎」を使用した。使用する混合ガスは水素と二酸化炭素の混合ガスで、水素濃度は8.3%とした。これは、前述したようにISO10156;1996による水素と二酸化炭素の混合ガスの爆発下限である。
【0063】
また参考のため、水素濃度が4%、20%である混合ガスについても実験を行った。ただし、これらの濃度の混合ガスは「泡多郎」のみを使用した。
【0064】
ファインバブルの生成条件は次のとおりである。
【0065】
・株式会社Ligaric製 ナノバブル生成装置「バヴィタス」 HYK−15−SD
・・ガス流量:800cc/min
・・水量:26L/min
・ニッタ株式会社製 気液せん断方式マイクロバブル発生器「泡多郎」BL12AA−12−D4(直接操作タイプ)
・・ガス流量:30cc/min
・・水量:3L/min
原料水:脱イオン水
水温:18±2℃
溶存水素濃度計:東亜デーケーケー株式会社製 DH35−A
溶存二酸化炭素濃度測定方法:水酸化バリウムを用いた滴定
この結果、
図8に示したような結果が得られた。溶存水素濃度の上昇と溶存二酸化炭素濃度の上昇との間には関係があることがわかる。各水素濃度の混合ガスにおいて溶存水素濃度の安定値を超える溶存水素濃度が発現するのは、溶存二酸化炭素濃度がおよそ200ppm〜1000ppmに位置する場合であり、その中間にあるほど、溶存水素濃度が高いことがわかる。
【0066】
このため、溶存水濃度の上昇や溶存水素濃度がピーク値に到達したか否かは、原料水の溶存二酸化炭素濃度を測定することで判断できることがわかる。
【0067】
[実験6]
この実験では、原料水が気体を吸蔵する物質を有する場合の効果の違いを確認した。
【0068】
実験は、実験1の場合と同じく、タンク内に40Lの原料水を貯留し、原料水中でファインバブル生成器によりファインバブルを生成した。
【0069】
ファインバブルの生成条件は次のとおりである。
【0070】
ファインバブル生成器:株式会社Ligaric製 ナノバブル生成装置「バヴィタス」 HYK−15−SD
原料水:脱イオン水、富士の湧水株式会社製「富士の湧水」(登録商標)
水温:18±2℃
流量:800cc/min
使用する混合ガス種:水素と二酸化炭素の混合ガス
混合ガスの水素濃度:4%
溶存水素濃度計:東亜デーケーケー株式会社製 DH35−A
「富士の湧水」は、気体を吸蔵する物質であるバナジウムを多く含む。バナジウムの他にも、マグネシウム、カルシウム、ナトリウムなどの気体吸蔵物質を含む。これらの気体吸蔵物質は人体が摂取しても無害である。
【0071】
参考までにあげると、「富士の湧水」の成分は、100mlあたり、ナトリウムが0.53mg、カルシウムが0.62mg、マグネシウムが.021mg、カリウムが0.10mg、バナジウムが80μg/Lで、硬度は24mg/L、pHは8.4である。
【0072】
この結果、表5、
図9に示したような結果が得られた。脱イオン水に比べて、「富士の湧水」の方が、溶存水素濃度のピーク値も安定値も高いことがわかる。気体吸蔵物質が溶存水素濃度を高めることに貢献していると考えられる。
【0073】
【表5】
このような結果は、水素濃度が違っても変わらないことであるのかを確認すべく、水素ガス100%の場合で同じ実験を行ったところ、その安定値は、表6に示すようなものとなった。
【0074】
【表6】
水素濃度が高い場合でも、「富士の湧水」の方が脱イオン水よりも高い溶存水素濃度の安定値を得られることがわかる。
【0075】
以上のような結果から、水素と二酸化炭素の混合ガスを原料水中でファインバブル分散処理すれば、溶存水素濃度が高い水素水や炭酸水素水が得られるということがわかる。溶存水素濃度は、ファインバブル分散処理の供給量(流量)が多ければ多いほど、また混合ガスの水素濃度が高ければ高いほど、高くなる。しかし、混合ガスの水素濃度は、安全とされる4%であっても、0.3ppmに近い溶存水素濃度とすることができ、溶存水素濃度がピーク値またはその近傍にあるときにファインバブル分散処理を終了すれば、水素水または炭酸水素水は、より長時間にわたって0.1ppmを超える溶存水素濃度を持続する。
【0076】
前述のような製造方法を実現するウォーターサーバー型の水素含有水製造装置(以下「水素水サーバー」という)11を、
図10に示す。
【0077】
水素水サーバー11は、原料水を充填したウォーターボトル12を接続する接続部12aと、ウォーターボトル12から供給される原料水を貯留する冷水タンク13と、冷水タンク14に原料水を供給する原料水供給路14と、冷水タンク13内に貯留された原料水のうち上部側の原料水が供給される温水タンク15と、冷水タンク13に設けられたファインバブル生成器16と、ファインバブル生成器16に混合ガスを供給するガス供給部17と、冷水タンク13内の原料水をファインバブル生成器16に循環させる循環路18と、原料水供給路14および循環路18に原料水を流す循環ポンプ19を有する。
【0078】
前述の接続部12aは水素水サーバー11の上部に設けられ、この接続部12aにウォーターボトル12が着脱可能に取り付けられる。接続部12aからは、ウォーターボトル12の原料水を、接続部12aより下に設けられた前述の冷水タンク13に供給する原料水供給路14がのびている。
【0079】
原水供給路14の接続部12a側の端部には、原水供給路14を開閉する電磁弁14aが設けられている。原水供給路14は、途中に前述の循環ポンプ19が設けられ、この循環ポンプ19の導入路19aまでを上流側部41、循環ポンプ19の導出路19bから先を下流側部42とした構成で、上流側部41と導入部19a、導出部19bと下流側部42との間はそれぞれ電磁三方弁14b,14cが設けられている。また下流側部42における冷水タンク13側の部分に、脱気部43が形成されている。
【0080】
この脱気部43は、原料水供給部14を通って冷水タンク13に供給される原料水から真空引きにより溶存気体を抜く部分で、脱気モジュール43aと真空ポンプ43bと排気路43cを有している。原料水供給部14における脱気部43と冷水タンク13との間には電磁弁14dが備えられている。
【0081】
冷水タンク13は、供給された原料水を冷却するとともに、原料水にファインバブル分散処理をして水素水を製造する部分である。同時に冷水タンク13は、前述の温水タンク15に原料水を流入させる部分でもある。このため冷水タンク13内には、冷水タンク13内を上下に仕切るバッフル板31が設けられ、バッフル板31の中央からは接続管32が垂設されている。接続管32は温水タンク15内に入り、接続管32の下端は温水タンク15の底に近い位置まで延びている。接続管32の上端にはチェックバルブ32aが設けられ、冷水タンク13から温水タンク15への原料水の流入は許容する一方、温水タンク15側から冷水タンク13側への原料水の流れを規制する。
【0082】
バッフル板31より上方には、冷水タンク13の天井面から回転可能に支持されたフロート33が設けられ、冷水タンク13内の原料水が所定量より減ると、冷水タンク13における原料水供給路14の供給口14eが開いて、原料水が供給されるように構成されている。
【0083】
また冷水タンク13のバッフル板31より下方の外周面には、原料水を冷却する冷却器34が設けられている。冷水タンク13の底にはユースポイントに冷水を供給する冷水供給路35と、前述の循環路18の一端が設けられている。冷水タンク13内におけるバッフル板31より下の部分には、循環路18の他端が接続されたファインバブル生成器16が備えられている。
【0084】
循環路18は、冷水タンク13の底から延びて循環ポンプ19の導入路19aの電磁三方弁14bに接続される上流側部81と、循環ポンプ19の導出路19bの電磁三方弁14cから延びてファインバブル生成器16に接続される下流側部82を有する。
【0085】
循環路18の上流側部81には、温水タンク15の底から延びる温水供給路83が電磁三方弁84を介して接続されている。温水供給路83は、冷水タンク13を殺菌洗浄するときに温水を供給するための流路として用いることができる。
【0086】
ファインバブル生成器16としては、前述例のようなバブルせん断方式、加圧溶解方式または多孔質方式などの装置を使用できる。
【0087】
このファインバブル生成器16に混合ガスを供給するため、ファインバブル生成器16には前述のガス供給部17が接続されている。
【0088】
ガス供給部17は、水素と二酸化炭素を混合してファインバブル生成器16に供給するものである。ガス供給部17は、水素が充填された水素容器71と、二酸化炭素が充填された二酸化炭素容器72と、これらの容器71,72からあらかじめ定められた一定量の水素ガスまたは二酸化炭素ガスを取り出す定量ベローズ73,74を備え、定量ベローズ73,74の先には電磁弁17a,17bを介して混合のためのミキサ75を備える。
【0089】
ミキサ75の先には電磁弁17cを介して、容積が可変で気体を貯める貯気ベローズ76を備えている。貯気ベローズ76の先には、ファインバブル生成器16に延びる混合ガス供給路77が設けられている。この混合ガス供給路77の貯気ベローズ76側の位置には手動弁17dが設けられ、この手動弁17dよりも下流側の部位と冷水タンク13の天井面との間に、冷水タンク13から逃げる混合ガスを回収する回収路78が設けられている。これにより、貯気ベローズ76とファインバブル生成器16と冷水タンク13との間を閉じた状態とすることができる。
【0090】
冷水タンク13には、水位計36と、原料水の溶存水素濃度や溶存二酸化炭素濃度、水温などの必要情報を取得できるようにすべく溶存水素濃度計や温度計などの複数の必要な測定器(図示せず)を備えた測定部37が設けられている。この測定部37は、循環ポンプ19や真空ポンプ43b、電磁弁14a,14d,17a,17b,17c、電磁三方弁14b,14c,84などの各部材と共に、図示しない制御部に接続される。測定部37による測定は、冷水タンク13内の原料水をチューブポンプ38で汲み出して行われる。
【0091】
温水タンク15は冷水タンク13の下方に備えられ、下部の外周面には加熱器51が取り付けられている。温水タンク15の上面には、ユースポイントに温水を供給する温水供給路52が設けられている。温水供給路52と冷水供給路35の間と、温水タンク15と冷水タンク13の間は、それぞれ電磁弁55a,56aを有する第1バイパス路55、第2バイパス路56で接続されている。
【0092】
このような構成の水素水サーバー11では、次のようにして水素水または炭酸水素水が製造される。
まず、原料水供給路14に原料水を流せるように(
図10の細線の矢印参照)、循環ポンプ19の導入路19aと導出路19bの端部の電磁三方弁14b,14cを切り替えて、循環ポンプ19を駆動し、ウォーターボトル12の原料水を脱気モジュール43aに供給する。脱気モジュール43aは真空ポンプ43bの駆動により原料水から空気を除去する。脱気された原料水は電磁弁14dの開放により冷水タンク13に供給される。
【0093】
原料水は、まず冷水タンク13のバッフル板31よりも下に貯まってから、バッフル板31よりも上に上昇する。バッフル板31よりも上の原料水は、連結管32を通って温水タンク15内に流下し、温水タンク15を満たす。
【0094】
温水タンク15が満タンになり冷水タンク13の水が所定量になると、フロート33が上がって供給口14eが閉じられ、原料水の供給は停止する。
【0095】
その後、ファインバブル分散処理を開始する。つまり冷水タンク13内の原料水を循環路18に流せるように(
図10の破線の矢印参照)、循環ポンプ19の導入路19aと導出路19bの端部の電磁三方弁14b,14cを切り替えて、循環ポンプ19を駆動し、冷水タンク13内の原料水を循環路18に流してファインバブル生成器16に送り込む。同時に、ガス供給部17を駆動して、所望混合率の水素と二酸化炭素の混合ガスをファインバブル生成器16に供給する。水素と二酸化炭素の混合率は適宜設定される。
【0096】
原料水の循環と混合ガスの供給により、ファインバブル生成器16からは水素と二酸化炭素のファインバブルが冷水タンク13の原料水中に生成される。原料水中に発生したファインバブルは、すぐに消えることなく原料水中に分散して広がり、存在する。これによって、水素と二酸化炭素は水に溶解する。
【0097】
冷水タンク13内の原料水は冷却器34によって冷却されているので、水素は溶解しやすい。
【0098】
ファインバブル分散処理中に、測定部37で原料水の溶存水素濃度と溶存二酸化炭素濃度の少なくともいずれか一方を測定し、ファインバブル生成条件に応じて得られる溶存水素量の安定値を超えた過飽和状態になっていることを検出する。この時点でファインバブル分散処理を終了してもよいが、検出の結果、ピーク値であって、極大点により近い溶存水素濃度になった時に、ファインバブル分散処理を終了するのが好ましい。
【0099】
ファインバブル分散処理の終了後、原料水中の混合ガスは徐々に抜けるものの、冷水タンク13から回収路78を通って貯気ベローズ76に貯まるので、外部に漏れることはない。このため、混合ガスの消費を抑えることができる。また、冷水タンク13の上部空間に混合ガスしかない状態をつくることができるので、水素水からの混合ガスの抜けを抑制することもできる。
【0100】
このようにして製造された水素水は、溶解した水素と二酸化炭素を含んでおり、冷水供給路35を通してユースポイントに供給され、飲用に供される。
【0101】
前述の実験から明らかなように、水素水の溶存水素濃度は高く、その高さと貯気ベローズ76と回収路78を有する構造ゆえに、溶存水素濃度の高い状態を維持できる。しかも、そのために混合ガスの水素濃度を極端に高める必要はなく、4%であっても、0.1ppmを超える溶存水素濃度を得られ、持続性もある。
【0102】
また、原料水に対してあらかじめ脱気を行うので、溶存水素濃度と溶存二酸化炭素濃度を高めることもできる。
【0103】
混合ガスの供給は、水素容器と二酸化炭素容器から所望量のガスを供給し混合して行うので、製造のたびに所望の溶存水素濃度の水素含有水を製造できる。
【0104】
溶存水素濃度の上昇を溶存二酸化炭素濃度に基づいて検出する場合には、測定のための機器が安価であるので、水素水サーバー11の製造コストを抑えることができる。
【0105】
この発明の構成と、前述の一形態の構成との対応において、
この発明のタンクは、前述の冷水タンクに対応し、
以下同様に、
ファインバルブ分散処理手段は、ファインバブル生成器に対応し、
溶存濃度測定手段は、測定部における溶存水素濃度または溶存二酸化炭素濃度を測定する機器に対応するも、
この発明は前述の構成のみに限定されるものではなく、その他の構成を採用することもできる。
【0106】
たとえば、ガス供給部の混合ガスは、予め混合して容器に充填されたものを使用してもよい。
【0107】
ファインバブル分散処理の制御は、溶存水素濃度や溶存二酸化炭素濃度の測定結果に基づいて行うほか、ファインバブル生成条件に基づいて演算して得られる駆動時間によって制御することもできる。
【0108】
水素含有水製造装置はウォーターサーバー型のものに限らず、たとえば工業的に製造する装置であってもよい。